JP4831027B2 - 繊維、ゴム補強コード、ならびに補強ゴム - Google Patents

繊維、ゴム補強コード、ならびに補強ゴム Download PDF

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本発明は、乾熱処理を施されても高弾性率であると共に、接着剤やゴムとの接着性に優れるポリアミド56繊維に関する。そして該ポリアミド56繊維を用いてなるゴム補強コード、ならびに該補強コードを含んでなる補強ゴムに関するものである。
最近、地球的規模での環境に対する意識向上に伴い、非石油由来の繊維素材の開発が切望されている。従来の汎用プラスチックは石油資源を主原料としていることから、石油資源が将来枯渇すること、また石油資源の大量消費により生じる地球温暖化が大きな問題として採り上げられている。
二酸化炭素を大気中から取り込み成長する植物資源を原料とすることで、二酸化炭素の循環により地球温暖化を抑制できることが期待できるとともに、資源枯渇の問題も解決できる可能性がある。このため近年では、植物資源を出発点とするプラスチック、すなわちバイオマス由来のプラスチック(以下、バイオマスプラと記載)に注目が集まっている。例えばバイオマスプラの代表的なものとして、ポリ乳酸等の脂肪族ポリエステルの研究・開発が活発化しているが、力学特性や耐熱性などの諸特性が、従来のポリエステル繊維、あるいはポリアミド繊維と比べて低く、用途がかなり制限されるものであった。
例えば、合成繊維の使用量が多く、高い耐久性が要求される用途として、ゴム補強コードがある。中でも、タイヤコードの市場は極めて大きい。このような大型用途に用いられる合成繊維を、バイオマスプラで置き換えることが期待されている。ゴム補強コードとしては上記の特性にバランスよく優れる点で、ポリアミドやポリエステルからなるコードが用いられており、近年ではさらなるコード特性の向上が求められている。
例えば、ポリアミドからなるタイヤコードはゴム接着性が良好であることが特徴の一つであるが、ゴム接着性のさらなる向上が望まれている。これはタイヤコードとゴムが十分に接着されて一体化することで初めてゴムが補強されるためであり、接着性を高めることによるメリットとして以下のことが挙げられる。一つは、単位体積当たりに用いるコードの本数を少なくすることができ、タイヤの総重量の軽量化が達成できることである。またもう一つは、接着性が高いことでタイヤ実使用環境下における経時的な接着性の低下が抑えられ、タイヤの耐久性を向上できることである。
また、ゴム補強コードとしては高弾性率であること、高強度であることが要求されている。弾性率が高いほど、補強されたゴムの弾性率が高いものとなり、外力によって寸法が変化し難い補強ゴムが得られるのである。弾性率の指標として、一般にゴム補強コードの2.34cN/dtex応力時の伸度が用いられ、この値が低いほど弾性率が高い。さらに強度も高いことが要求され、強度が高いことで、繰り返し変形されても破壊されにくい補強ゴムが得られる。
但しゴム補強コードは、ゴム中に埋込後に加硫する工程や、実使用環境下において加熱される。そして一般に合成繊維からなるゴム補強コードは熱に晒された場合、ゴム接着性、弾性率、強度が低下する傾向にある。これにより補強効果が低下する傾向にあるため、熱に晒された後であっても、ゴム接着性、弾性率、強度が低下し難いゴム補強コードが要望されるのである。
そしてゴム補強コードがこれらの特性にバランス良く優れことで、得られる補強ゴムは外力によって変形し難くなる。また繰り返し外力が加わっても、ゴム中でコードが疲労し難くなるのである。
以上のように、ゴム補強コードの要求特性は多岐にわたっており、いずれの要求特性についても高い特性が望まれるため、汎用のバイオマスプラでは置き換えは困難であった。
ところで、出願人は新規なバイオマスプラとして、バイオマス利用により製造した1,5−ジアミノペンタンと、アジピン酸とを加熱重縮合して得られるポリペンタメチレンアジパミド(ポリアミド56)を提案している(特許文献1参照)。特許文献1の技術により、耐熱性、溶融貯留安定性、延伸性の良好なポリアミド56樹脂を得ることができる。該樹脂を溶融紡糸、延伸して得たポリアミド56繊維は、耐熱性、力学特性などが良好であるため、従来のバイオマスプラでは参入が難しかった用途への適用が期待されるものであるが、熱に晒された場合に繊維が収縮し易く、収縮した後の繊維は、低弾性率となってしまい易かった。
また、ポリアミド56からなるフィラメントについても提案されている(特許文献2)。特許文献2の技術によれば、ポリアミド56は透明性に優れ、高強度であることから、釣り糸等に好適であることが記載されているが、やはり熱に晒された場合に繊維が収縮し易く、収縮した後の繊維は、低弾性率となり易いものであった。このため釣り糸等の用途には好適であるものの、熱に晒される用途への使用は制限されるものであった。
特開2003−292612号公報(特許請求の範囲) 特開2006−144163号公報(特許請求の範囲)
本発明の課題は、ゴム補強コードにも好適である、ポリアミド56繊維を提供することである。より具体的には、熱に晒されても収縮し難く高弾性率が維持され、高強度であり、かつゴム接着性に優れるポリアミド56繊維を提供することである。そして該ポリアミド56繊維からなるゴム補強コード、ならびに該ゴム補強コードを含んでなる補強ゴムを提供することである。
本発明者らがゴム補強コードに好適なポリアミド56繊維について鋭意検討した結果、特定の製造方法で得たポリアミド56繊維からなることにより、乾熱処理を施しても収縮が起こり難く、弾性率が高く維持されるゴム補強コードとなることが分かった。そして乾熱処理において収縮し難いことにより、初めてポリアミド56の優れたゴム接着性を活かすことができ、ポリアミド66にも勝るゴム接着性が発現することを見出した。そしてこれにより、外力による寸法変化の小さい補強ゴムを形成することに成功した。さらに該ゴム補強コードは、乾熱処理後の弾性率が高く、ゴム接着性に優れることに加えて、高強度であるため、これらの相乗効果により、耐疲労性にも優れたゴム補強コードとなることを見出した。
すなわち本発明の第1の発明は、150℃30分間の乾熱処理後に測定した4.68cN/dtex応力時の伸度が12〜20%であることを特徴とするポリアミド56繊維である。
そして第2の発明は、上記のポリアミド56繊維からなるゴム補強コードである。
また第3の発明は、上記のゴム補強コードを含んでなる補強ゴムである。
本発明のポリアミド56繊維はバイオマスプラであるポリアミド56からなるため環境適応性に優れるとともに、熱に晒された後においても高弾性率であり、ゴム接着性にも優れ、強度も高いことから、特にゴム補強コードを構成する繊維として好適に用いられる。また各種産業資材用繊維としても好適に用いられる。例えば、自動車、航空機等の車両内装材や安全部品を構成する繊維として好適に用いられ、エアバッグ、シートベルト、シート、マット等が挙げられる。また漁網、ロープ、安全ベルト、スリング、ターポリン、テント、組紐、養生シート、帆布、縫糸等の高強度、高弾性率が要求される用途に好適である。
該ポリアミド56繊維からなるゴム補強コードは、優れた補強効果、耐疲労性を有するため、多種多様な補強ゴムに使用することができる。例えば、乗用車、トラック、オートバイ、航空機等のタイヤや、自動車用、一般資材用の、ゴムベルト、ゴムホースなど、幅広い用途に好適なゴム補強コード、ならびに補強ゴムを得ることができる。
本発明のポリアミド56繊維とは、1,5−ジアミノペンタンとアジピン酸とを主たる構成単位とするポリアミド56樹脂からなる繊維である。本発明のポリアミド56繊維は、バイオマス利用の1,5−ジアミノペンタン単位を含んでなることで、環境適応性に優れるため好ましい。より環境適応性に優れる点で、ポリアミド56を構成する1,5−ジアミノペンタン単位の50%以上がバイオマス利用で得られた1,5−ジアミノペンタンからなることが好ましい。より好ましくは75%以上であり、最も好ましくは100%である。
ポリアミド56樹脂は、本発明の目的効果を損なわない範囲で、他のモノマーを少量共重合したものであってもよいが、より結晶性が高まることで、繊維に乾熱処理を施した後の4.68cN/dtex応力時の伸度が低くなると共に、ポリアミド56の優れた接着性を活かし易い点で、共重合成分の含有率は低いことが好ましい。また本発明のゴム補強コードがより環境適応性にも優れるためにも共重合成分の含有率は低いことが好ましく、ポリアミド56中の共重合成分の含有量は、5モル%以下であることが好ましく、3モル%以下であることがより好ましく、1モル%以下であることがさらに好ましい。また同様にポリアミド56樹脂は、本発明の目的効果を損なわない範囲で、他のポリマーを混合したものであってもよいが、ポリアミド56樹脂の結晶性が高まるほど好ましいことから、他のポリマーの含有率は低いことが好ましく、好ましくは30重量%以下、より好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下である。
本発明の繊維とは、細く長い形態を有するものであり、長繊維であっても短繊維で合ってもよいが、より高弾性率な繊維となる点で長繊維であることが好ましい。そしてゴム補強コードを構成する繊維は、マルチフィラメントであることが好ましい。マルチフィラメントにすることにより、コードに適度な柔軟性を付与することができるため、伸長や圧縮によって疲労し難くなり好ましい。
本発明のポリアミド56繊維の総繊度は、250〜5,000dtexであることが好ましい。ポリアミド56繊維の総繊度が250dtex以上であることで、ポリアミド56繊維の強力が高まり、高次加工工程での物性変化を抑えられるため好ましい。より好ましくは300dtex以上、さらに好ましくは350dtex以上である。またポリアミド56繊維の総繊度が5,000dtex以下であることにより、接着剤を均一に塗布し易くなり接着性に優れるゴム補強コードが得られるため好ましい。より好ましくは4,000dtex以下、さらに好ましくは3,000dtex以下である。
マルチフィラメントを構成する繊維の単繊維繊度は、1〜50dtexの範囲であることが好ましい。1dtex以上であることにより、後述するようにポリアミド56繊維の系外からの吸湿を小さくすることができ、繊維の製造工程において繊維の配向結晶化が促進され、乾熱処理後の4.68cN/dtex応力時の伸度が低い繊維を得やすいため好ましい。また強度も高い繊維となるため好ましい。より好ましくは3dtex以上であり、さらに好ましくは5dtex以上である。また50dtex以下であることにより、繊維が適度な柔軟性を有するものとなり、得られるゴム補強コードが伸長や圧縮によって疲労し難くなるため好ましい。より好ましくは40dtex以下であり、さらに好ましくは30dtex以下である。
本発明のポリアミド56繊維の単繊維の断面形状は、丸断面だけでなく、扁平、Y型、T型、中空型、田型、井戸型など多種多様な断面形状を採用することができるが、ポリアミド56繊維の強度が高まる点で、丸断面であることが好ましい。
本発明のポリアミド56繊維は、150℃30分間の乾熱処理後の4.68cN/dtex応力時の伸度が20%以下であることが必要である(以下、単に乾熱処理後の4.68cN/dtex応力時の伸度と記載することがある)。ポリアミド56繊維の乾熱処理後の4.68cN/dtex応力時の伸度が低いことが重要である理由については、後述にて詳細に示すが、弛緩状態で乾熱処理を施し、繊維を乾熱収縮させた後であっても、4.68cN/dtex応力時の伸度が20%以下と高弾性率であるポリアミド56繊維から形成されたゴム補強コードは、優れた補強効果、ゴム接着性、耐疲労性が発現するため好ましい。
ここで150℃30分間の乾熱処理後の4.68cN/dtex応力時の伸度の測定方法の概略を説明する。測定機器等の詳細情報については実施例にて記載した。
まず、4.68cN/dtex応力時の伸度とは、JIS L1017(1995)、7.7項の一定荷重時伸び率、(1)標準時試験の測定方法に準じて測定したS−S曲線における、一定荷重時の伸度である。なお繊維の場合には4.68cN/dtex応力時の伸度を弾性率の指標として用い、コードの場合には2.34cN/dtex応力時の伸度を弾性率の指標として用いた。ここでポリアミド56繊維は後述するように吸湿性の繊維であるため、温湿度環境による吸湿によって、S−S曲線が変化する。よってS−S測定の前に一定の条件下で繊維を調湿し、同条件下でS−S測定を行う必要がある。本発明においては、測定対象をカセ状にサンプリングし、25℃RH55%の環境下、無荷重の状態で48時間放置した後、同温湿度環境においてS−S曲線を測定した。なおS−S測定前に、25℃RH55%にて繊維の調湿を行った後、同温湿度環境下でS−S曲線を測定することについては、未熱処理繊維の4.68cN/dtex応力時の伸度、強度、伸度の測定する場合においても同様である。
150℃30分間の乾熱処理は以下の方法で行う。まず検尺機にてポリアミド56繊維のループ状カセを作製し、予め雰囲気温度150℃に予熱しておいたオーブンの中に該カセを無荷重の状態でつり下げ、乾熱処理を施す。そしてカセを投入してから30分経過した後、カセを取り出す。このカセを上述した様に、無荷重の状態で25℃RH55%の環境下に48時間つり下げて調湿した後、同環境下にてS−S測定を行って求めた4.68cN/dtex応力時の伸度を、150℃30分間の乾熱処理後の4.68cN/dtex応力時の伸度とした。
ここで乾熱処理後の弾性率が高い繊維が、ゴム補強コードを構成する繊維として好適である理由について詳細に説明する。ゴム補強コードはゴム中に埋め込まれた後、ゴムを加硫される工程において130〜180℃の高温下に晒される。またタイヤであれば高速走行時には表面温度が130℃以上まで加熱される場合もあり、加硫工程、実使用環境下で熱に晒されることになる。このときコードを構成する合成繊維中において、配向した非晶鎖は経時的に緩和を起こし、コードの弾性率は低下してしまう傾向にある(コードの2.34cN/dtex応力時の伸度が大きくなってしまう)。コードの弾性率が低下すると補強ゴムが外力のよって変形し易くなり、例えばタイヤとして用いた場合には走行安定性が悪化するといった不具合を生じる。また該力によって補強ゴムが変形し易くなることで、補強ゴム中でコードが疲労し易くなる傾向にある。以上より熱に晒された後であっても、ゴム補強コードの弾性率を高く維持することが重要なのである。
しかしながら図1に示すように、従来のポリアミド56繊維では(比較例1〜3)、コード製造工程におけるストレッチ応力等を変更する手段によって、いくら弾性率の高いコードを形成したとしても、コードの弾性率が高くなる(2.34cN/dtex応力時の伸度が小さくなる)ことに応じて、乾収が高くなるため、乾熱処理を施すと弾性率は低下してしまうものであった。そして同一繊維からなるゴム補強コードの弾性率と乾収との関係は概ね一定の関係にあるため、乾熱処理した後の弾性率はすべて概ね一定値となってしまうことが分かった。このため従来ポリアミド56繊維からなるゴム補強コードでは十分な補強効果を発現させることが出来なかった。さらに従来のポリアミド56繊維からなるコードは乾収が高いことで、後述するポリアミド56繊維の優れた接着性を生かし切れていないことも分かった。このため本発明者らは、ポリアミド56繊維の製造工程にまで立ち返って詳細に検討を行ったのである。
まずゴム補強コードの前駆体となるポリアミド56繊維の特性について検討した結果、ポリアミド56繊維は、弛緩状態で乾熱処理を施すと収縮し易く(乾収が大きい)、乾熱処理後の4.68cN/dtex応力時の伸度が20%を超える繊維となってしまうことが分かった。これが原因で得られるゴム補強コードも、乾熱処理によって収縮し易く、弾性率も低化し易いことが分かった。すなわちゴム補強用途で好適に用いられるポリアミド56繊維であるためには、乾熱処理後においても弾性率の高いポリアミド56繊維を得ることが課題であった。
ポリアミド56繊維が乾熱処理によって収縮し易く、弾性率が低化し易い原因については定かではないが、恐らくポリアミド56の分子構造に起因した低結晶性、高吸湿性という特徴によるものと推定している。すなわち溶融紡糸工程、延伸工程で、繊維中の分子鎖を高度に配向せしめたとしても、配向結晶化が起こり難いため、得られる繊維は、結晶相によって拘束されない、運動性の高い非晶鎖を多く含むものとなってしまう。よって熱に晒した場合に配向非晶が容易に緩和して繊維が収縮してしまい、弾性率が低下してしまうものと推定された。
ポリアミド56繊維の低結晶性である第1の要因は、ポリアミド56分子鎖中におけるアミド結合の位置の規則性によるものと推定される。例えばポリアミド66の如く、ジアミンの炭素数mとジカルボン酸nの炭素数がそれぞれ同数(m=n)であるポリアミドの場合、分子鎖はm個の炭素と1つのアミド結合を1対として繰り返されるため、分子鎖を配向させると、隣接する分子鎖間でアミド結合の位置が揃って配向結晶化が起こり易い。しかしポリアミド56のように、ジアミンの炭素数mと、ジカルボン酸の炭素数nが異なるポリアミドの場合(m≠n)、繊維軸方向に分子鎖を配向させても隣接した分子鎖間でアミド結合の位置が揃い難い。このためポリアミド56は分子構造として配向結晶化が起こり難い。
さらに分子構造として低結晶性であることに加えて、後述するように高吸湿性でもあるため、繊維化した場合にはさらに配向結晶化させることが難しくなる。すなわち繊維は比表面積が大きく、溶融紡糸工程、延伸工程において繊維中の非晶鎖に水が取り込まれ易いため、高吸湿性であるポリアミド56繊維は、多くの水を吸湿してしまう。繊維中の取り込まれた水分子は、ポリアミド56分子鎖間に進入し、分子間の水素結合力が弱めてしまう。これにより延伸応力が全ての分子鎖に均一に加わり難くなり、結果として非晶鎖を均一に配向させることが難しいため、配向結晶化に至らない非晶鎖が残存した繊維となり易いのである。
次にポリアミド56の高吸湿性について説明する。吸湿性は親水性が高い結合部位が多く存在するほど高まると考えられ、ポリアミドの場合アミド結合が親水性の高い結合部位に該当する。ポリアミド56の単位体積当たりのアミド結合の数は、従来のポリアミド66と比べて高いため分子構造として吸湿性が高いポリマーである(分子構造から計算されるアミド結合の濃度 ポリアミド66:約8800eq/ton、ポリアミド56:約9400eq/ton)。繊維の内部構造や温湿度条件にも依るが、単位体積当たりのアミド結合数が多いことにより、ポリアミド56はポリアミド66と比べて吸湿量が1.5〜3倍程度も高くなる。そして高吸湿性であることが、上述したように配向結晶化の阻害要因となるのである。
以上のようにポリアミド56は、分子構造として低結晶性であり、高吸湿性である特徴を有しており、繊維化するとこれらの特徴が顕在化し易いのである。これが原因で従来のポリアミド56繊維は、配向結晶化の不十分な繊維であり、乾収が高くなるため、乾熱処理における非晶配向度の低下が大きいことが分かった。
そして本発明者らがポリアミド56繊維の乾熱処理後の4.68cN/dtex応力時の伸度を低くすることを目的として鋭意検討した結果、後述する特定の製造方法を採用し、繊維中に多くの配向結晶相を形成せしめることで、初めて150℃30分間の乾熱処理後においても4.68cN/dtex応力時の伸度が20%以下と、高弾性率なポリアミド56繊維を得ることに成功した。そして該ポリアミド56繊維により、初めて乾熱処理後においても弾性率の高いゴム補強コードを構成できる。そして該ポリアミド56繊維によって乾収の低いコードが得られ、これによりポリアミド56の優れたゴム接着性を十分に発揮することも可能となった。すなわち加硫工程においてコードの熱収縮力が接着界面に集中するなどの悪影響を抑えることで、ポリアミド56の優れたゴム接着性が十分発現するのである。そして乾熱処理後の弾性率が高く、かつゴム接着性に優れることの相乗効果として、ゴムが効率的に補強され、外力による寸法変化の小さい補強ゴムが得られた。
これらに加え、本発明のゴム補強コードが、高強度であり、熱処理後においても高強力であることで、補強ゴムに繰り返し変形が加わっても、内部のゴム補強コードが疲労し難いことが分かった。
乾熱処理後の4.68cN/dtex応力時の伸度は低いほど補強効果の高いゴム補強コードを構成できるため好ましく、より好ましくは19%以下であり、さらに好ましくは18%以下であり、特に好ましくは17%以下であり、16%以下が最良である。乾熱処理後の4.68cN/dtex応力時の伸度は低いほど好ましいが、12%以上が製造上の限界である。
ポリアミド56繊維は、4.68cN/dtex応力時の伸度(以下、単に繊維の4.68cN/dtex応力時の伸度と記載することがある)が8〜18%であることが好ましい。4.68cN/dtex応力時の伸度が18%以下であることにより、ゴム補強コードを製造する工程におけるストレッチ応力を適度な範囲に抑えることができ、高弾性率のゴム補強コードが工程通過性良く得られるため好ましい。より好ましくは17%以下、さらに好ましくは16%以下、特に好ましくは15%以下である。一方で4.68cN/dtex応力時の伸度が8%以上であることで、溶融紡糸、延伸工程において毛羽の発生を抑えて紡糸性が向上するため好ましい。より好ましくは9%以上、さらに好ましく10%以上、特に好ましくは11%以上である。
4.68cN/dtex応力時の伸度が同一であるポリアミド56繊維であり、かつ乾収が低い繊維であることで、乾熱処理時における非晶配向度の緩和が抑えられ、乾熱処理後の4.68cN/dtex応力時の伸度が低くなるため好ましい。よって乾収は8%以下であることが好ましく、6%以下であることがより好ましく、4%以下であることがさらに好ましく、1〜3%が特に好ましい。
ポリアミド56繊維の強度は6〜12cN/dtexであることが好ましい。強度が6cN/dtex以上であることにより、強度の高いゴム補強コードが得られ、疲労し難いゴム補強コードとなるため好ましい。より好ましくは7cN/dtex以上、さらに好ましくは8cN/dtex以上である。強度は高いほど好ましいため上限は無いが、12cN/dtex以下が製法上の限界である。
ポリアミド56繊維は伸度が10〜40%であると、適度な伸縮性を有するため、ゴム補強コードが製造工程における工程通過性が高まるため好ましい。より好ましくは13〜30%、さらに好ましくは15〜25%である。
ポリアミド56繊維は180℃40時間の乾熱処理後の強力保持率(以下、耐熱強力保持率と記載する場合がある)が60%以上であることが好ましい。耐熱強力保持率が60%以上であることで、加硫工程や実使用環境下で熱に晒されても、強力低下の少ないゴム補強コードとなり、耐疲労性に優れたゴム補強コードが得られるため好ましい。より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上である。耐熱強力保持率は高いほど好ましく100%が最も好ましい。
ポリアミド56繊維の耐熱強力保持率が高まる点で、ポリアミド56繊維は老防剤を含むことが好ましい。老防剤としては従来公知の酸化防止剤や耐熱安定剤を1種類または2種類以上を併用して用いることができる。例えばヒンダードフェノール系化合物、ヒドロキノン系化合物、イミダゾール系化合物、チアゾール系化合物、リン系化合物、およびこれらの置換体、ハロゲン化銅、ハロゲン化カリウム等が挙げられるが、より耐熱強力保持率の向上効果が高い点で、ハロゲン化銅、ハロゲン化カリウム、リン系化合物、イミダゾール系化合物、チアゾール系化合物、から選ばれる老防剤を1種類または2種類以上併用することが好ましい。
ハロゲン化銅化合物としては、ヨウ化第1(第2)銅、塩化第1(第2)銅および酢酸第1(第2)銅などが挙げられ、なかでもヨウ化第1銅が好ましい。上記ハロゲン化銅の含有量は、ポリアミド56繊維重量に対して銅原子換算で50〜1000ppmであることが好ましい。ハロゲン化銅化合物の含有量が高いほど耐熱強力保持率が高まるため好ましく、より好ましくは75ppm以上、さらに好ましくは100ppm以上である。一方で含有量が1000ppm以下であることにより、溶融紡糸、延伸工程において紡糸性が高まり、毛羽の発生や糸切れが抑えられるため好ましく、より好ましくは700ppm以下、さらに好ましくは500ppm以下である。
ハロゲン化カリウムとしては、塩化カリウム、ヨウ化カリウムなどが挙げられ、なかでもヨウ化カリウムが好ましく用いられる。ハロゲン化カリウムの含有量はポリアミド56繊維重量に対して、300〜6000ppmであることが好ましい。ハロゲン化カリウムの含有量が高いほど耐熱強力保持率が高まるため好ましく、より好ましくは300ppm以上、さらに好ましくは500ppm以上である。一方で含有量が6000ppm以下であることにより、溶融紡糸、延伸工程において紡糸性が高まり、毛羽の発生や糸切れが抑えられるため好ましく、より好ましくは4000ppm以下、さらに好ましくは2000ppm以下である。
またリン系化合物としては、フェニルホスホン酸が好適に用いられる。フェニルホスホン酸の含有量は、ポリアミド56繊維重量に対してリン原子換算で20〜1000ppmであることが好ましい。含有量が20ppm以上であることにより、耐熱強力保持率が高まるため好ましい。一方で過度にフェニルホスホン酸を含有すると、延伸性を阻害する球晶が形成され易くなる傾向にあるため、1000ppm以下とすることが好ましい。より好ましくは30〜500ppmであり、さらに好ましくは40〜150ppmである。
また、イミダゾール系化合物としては2−メルカプトベンズイミダゾールが好ましく、チアゾール化合物としては2−メルカプトベンズチアゾールが好ましい。2−メルカプトベンズイミダゾールや2−メルカプトベンズチアゾールを用いる場合、それぞれとハロゲン化銅と併用し、両化合物の錯体として使用することで耐熱強力保持率がさらに高まるため好ましい。
本発明のポリアミド56繊維のアミノ末端基濃度が20〜80eq/tonであることが好ましい。アミノ末端基が20eq/ton以上であることにより、繊維と接着剤との接着性が高まり、ゴム接着性の高いゴム補強コードとなるため好ましい。より好ましくは25eq/ton以上、さらに好ましくは30eq/ton以上である。一方で、アミノ末端基が80eq/ton以下であることにより、ポリアミド56繊維からなるゴム補強コードの耐疲労性が高まるため好ましい。より好ましくは75eq/ton以下であり、さらに好ましくは70eq/ton以下である。
本発明のポリアミド56繊維は効果を損なわない範囲で、種々の添加剤を含んでいてもよい。例えば、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、末端封鎖剤(芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸等)、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラック等)、染料(ニグロシン、アニリンブラック等)、結晶核剤(タルク、シリカ、カオリン、クレー等)、可塑剤(p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、難燃剤(メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンオキシド、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等)、艶消し剤(酸化チタン、炭酸カルシウム等)、他の重合体(他のポリアミド、ポリエステル等)が挙げられる。これらは、ポリアミド56繊維を製造するいずれかの工程において、添加量、添加工程等を適宜選択して含有せしめることができる。
本発明のポリアミド56繊維はバイオマスプラであるポリアミド56からなるため環境適応性に優れるとともに、高弾性率で、低乾収であるため、熱に晒された後においても高弾性率な繊維であり、かつ後述するように優れたゴム接着性をも有するため、特にゴム補強コードとして好適である。そして高強度でもあるため、ゴム補強コード以外の、一般産業資材用繊維としても好適に用いられる。例えば、自動車、航空機等の車両内装材や安全部品を構成する繊維として好適に用いられ、エアバッグ、シートベルト、シート、マット等が挙げられる。また漁網、ロープ、安全ベルト、スリング、ターポリン、テント、組紐、養生シート、帆布、縫糸等の高強度、高弾性率が要求される用途に好適である。
次に本発明のゴム補強コードについて説明する。本発明のゴム補強コードとは少なくとも繊維と接着剤とを含んでなる細く長い形態を有するものであり、タイヤコードなどに代表されるゴムの補強を目的として用いられるコードである。
本発明において、ポリアミド56繊維からなるゴム補強コードとは、コードを構成する繊維の一部または全部がポリアミド56繊維であるものと定義する。本発明者らはゴム補強コードを構成する繊維の一部または全部がポリアミド56繊維であることにより、従来のポリアミド66からなるゴム補強コードにも勝るゴム接着性が発現することを見出した。ゴム接着性に優れることにより、ゴム補強コードが埋め込まれた補強ゴムを効率的に補強できる。さらに本発明のポリアミド56繊維からなるゴム補強コードは、乾熱処理後の弾性率が低いため、外力によって寸法変化し難い補強ゴムが得られるのである。そして本発明のゴム補強コードは、ゴム接着性に優れ、かつ乾熱処理後の弾性率にも優れることに加えて、強度や、耐熱強力保持率も良好であるため、更なるメリットとして耐疲労性に優れたゴム補強コードとなるのである。
耐疲労性は実施例に記載のチューブ疲労強さ(分)で評価でき、長いほど耐疲労性に優れたゴム補強コードであるため好ましい。チューブ疲労強さ(分)は1000分以上であることが好ましく、1300分以上であることがより好ましく、1500分以上であることがさらに好ましい。
ポリアミド56繊維からなるゴム補強コードがゴム接着性に優れる理由は定かではないが、恐らくポリアミド56が、従来のポリアミド66やポリアミド6と比べて、単位体積当たりのアミド結合部の数が多いため、繊維と接着剤との間で形成される結合(例えば、ポリアミドの−CO−基中の酸素と、接着剤の−OH基中の水素との間で形成される水素結合や、ポリアミドの−NH−基と、接着剤の−OH基との間で脱水縮合により形成された化学結合)が多くなり、接着性が向上したものと推定している。
本発明のゴム補強コードを構成する繊維は、ポリアミド56繊維に加えて、従来から公知の他の繊維(合成繊維、半合成繊維、天然繊維)を含んでいてもよく、混繊、合撚などを行ってもよいが、ポリアミド56繊維の優れたゴム接着性を活かし、かつ環境適応性に優れたゴム補強コードとする点で、ゴム補強コードの総重量に対するポリアミド56繊維の含有量は、40重量%以上であることが好ましく、60重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがさらに好ましい。また本発明のゴム補強コードが他の繊維を含む場合、他の合成繊維はポリアミド56繊維によってカバリングされていることが好ましい。例えば、最内層に他の合成繊維を配置し、その外層にポリアミド56繊維を配置し、最外層に接着剤を配置することで、ポリアミド56繊維の優れたゴム接着性を活かし易いため好ましい。
本発明のゴム補強コードは、撚糸されたポリアミド56繊維と接着剤とを含んで構成されることが好ましい(以下、撚糸された繊維を生コードと称し、撚糸前の繊維を原糸と称する場合がある)。より好ましくは諸撚り構造を有する生コードと、接着剤とで構成されることが好ましい。諸撚り構造とは、下撚(Z撚)が加えられた撚糸が2本合わされ、さらに上撚(S撚)が加えられた撚り構造である。撚係数(上撚部または下撚部)は、それぞれ1000〜3000の範囲にあることが好ましい。撚係数が1000以上であると、ゴム補強コードの耐疲労性が高まるため好ましい。一方で撚係数が3000以下であることで、原糸から強度低下が小さく、強度を効率的に利用できるため好ましい。より好ましくは1300〜2500である。
上撚部の撚係数=T×(D×0.9)0.5
下撚部の撚係数=T×(D/2×0.9)0.5
:10cm当たり上撚数
:10cm当たり下撚数
D:コードの総繊度(dtex)
本発明のゴム補強コードを構成する接着剤は従来公知の接着剤を用いることができる。接着剤の含有量は1〜10wt%の範囲で選択すれば良い。
本発明のゴム補強コードの総繊度は、500〜10,000dtexであることが好ましい。ゴム補強コードの総繊度が500dtex以上であることで、コードの強力が高まり、高次加工工程での物性変化を抑えられるため好ましい。より好ましくは700dtex以上、さらに好ましくは1000dtex以上である。またゴム補強コードの総繊度が10,0000dtex以下であることにより、コードとゴムとの接着剤面積が増加し、接着性が高まるため好ましい。より好ましくは7,000dtex以下、さらに好ましくは5,000dtex以下である。
本発明のゴム補強コードは、150℃30分間の乾熱処理を施した後のコードの2.34cN/dtex応力時の伸度が11〜19%であることが好ましい(以下、乾熱処理後のコードの2.34cN/dtex応力時の伸度と記載する場合がある)。これは乾熱処理後のコードの弾性率の指標であり、低いほど高弾性率であることを示す。
ゴム補強コードを製造する工程において、同じ繊維を用いてコードを構成すると、乾熱処理後のコードの2.34cN/dtex応力時の伸度は概ね一定値となってしまう。従来のポリアミド56繊維では、乾熱処理後の弾性率が低いものであったため、該繊維からは本発明の補強効果に優れ、耐疲労性に優れるゴム補強コードを得ることができなかった。
本発明のゴム補強コードは、乾熱処理後の弾性率が高いポリアミド56繊維からなるため、乾熱処理後の弾性率が高いコードを形成できる。そして後述するように乾収も低いことで、ポリアミド56の優れた接着性が活かされ、ゴム接着性に優れるため、効率的にゴムを補強できるのである。そして熱が加わっても外力によって寸法変化し難いため好ましい。例えばタイヤコードとして用いた場合には、連続走行や、高速走行によってタイヤが発熱してもタイヤの寸法増加が起こりにくくなるため好ましい。乾熱処理後のコードの2.34cN/dtex応力時の伸度は18%以下がより好ましく、17%以下がさらに好ましい。下限については特に制限されないが、11%程度が製造上の限界である。
本発明のゴム補強コードは、2.34cN/dtex応力時の伸度が5〜15%であることが好ましい(以下、コードの2.34cN/dtex応力時の伸度と記載する場合がある)。これはコードの弾性率の指標である。ゴム補強コードの2.34cN/dtex応力時の伸度が15%以下であることにより、補強ゴムを作製した直後の初期状態において、外力による寸法変化の小さい補強ゴムが得られるため好ましい。例えばタイヤ用途に用いた場合、空気圧によるタイヤの変形が抑えられるため好ましい。2.34cN/dtex応力時の伸度が低いほど、補強ゴムの変形を抑えられるため好ましく、2.34cN/dtex応力時の伸度は13%以下であることがより好ましく、11%以下であることがさらに好ましい。一方で、2.34cN/dtex応力時の伸度を5%以上とすることにより、ゴム中の補強コードに加わる伸長や圧縮といった繰り返し変形によって生じる発熱量(ヒステリシスロス)を小さくすることができ、コードからの発熱量が小さくなるため経時的なコードの弾性率低下、強度劣化が抑えられ、耐疲労性に優れた補強ゴムが得られるため好ましい。より好ましくは6%以上であり、さらに好ましくは7%以上である。コードの2.34cN/dtex応力時の伸度の測定方法については実施例にて詳述するが、コードのS−S曲線における、2.34cN/dtexの応力時の伸度として定義される。
また本発明のゴム補強コードの乾収は、1〜10%であることが好ましい。乾収とは、下記の式で算出されるものであり、150℃30分間の乾熱処理後の収縮率である。具体的な測定方法については実施例にて詳述する。乾収が低いことで、熱収縮によって生じる応力が低く、接着界面への応力集中を抑え、ポリアミド56の優れた接着性を活かし易くなるため好ましい。また乾収が低いほど、乾熱処理後のコードの2.34cN/dtex応力時の伸度が低く維持されるため好ましい。よって乾収は10%以下であることが好ましく、より好ましくは8%以下、さらに好ましくは6%以下である。乾収は低いほど好ましく最も好ましくは1〜5%である。
本発明のゴム補強コードは、強度が高いほど耐疲労性の高い補強ゴムが得られるため好ましい。強度は5cN/dtex以上であることが好ましく、6cN/dtex以上であることがより好ましく、7cN/dtex以上であることがさらに好ましい。強度は高いほど好ましいため上限の制限は無いが、10cN/dtex以下が製法上の限界である。
本発明のゴム補強コードの伸度は、10〜40%であると、適度な伸縮性を有するため、補強ゴムの製造工程における工程通過性が高まるため好ましい。より好ましくは13〜30%、さらに好ましくは15〜25%である。
本発明のゴム補強コードは、180℃40時間の乾熱処理後の強力保持率が60%以上であることが好ましい(以下、コードの耐熱強力保持率と記載する場合がある)。コードの耐熱強力保持率が高いほど、耐疲労性が高まるため好ましい。より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上である。耐熱強力保持率は高いほど好ましいため上限は無く、100%が最も好ましい。耐熱強力保持率の高いポリアミド56繊維からなることで、ゴム補強コードの耐熱強力保持率が高まるため好ましい。
本発明のゴム補強コードは多種多様な補強ゴムに使用することができる。例えば、乗用車、トラック、オートバイ、航空機等のタイヤや、自動車用、一般資材用の、ゴムベルト、ゴムホースなど、幅広い用途に好適なゴム補強コード、ならびに補強ゴムを得ることができる。
次に本発明のポリアミド56繊維の製造方法についてより具体的に説明する。
本発明の製造方法により、ポリアミド56繊維中に多くの配向結晶相を形成せしめることができるため、非晶鎖が多くの結晶相によって拘束され、150℃30分間の乾熱処理を施しても非晶鎖の配向緩和が起こりにくく、高弾性率の繊維となるのである。
ポリアミド56繊維の製造工程は、モノマー合成工程、重合工程、製糸工程(溶融紡糸工程、延伸工程)に分類されるが、特に製糸工程でポリアミド56繊維の配向結晶化を促進させることが重要である。モノマー合成工程、重合工程においては、製糸工程での配向結晶化を促進させるべく、溶融貯留安定性が高く、高分子量であり、分子量分布の小さいポリマーを製造して、製糸工程に供することが好ましい。
まずモノマー合成工程においては、本発明のポリアミド56のジアミンモノマーである、1,5−ジアミノペンタンは、グルコースやリジンなどのバイオマス由来の化合物から、酵素反応や、酵母反応、発酵反応などによって合成されることが好ましい。上記の方法によれば、2,3,4,5−テトラヒドロピリジンやピペリジンといった化合物の含有量が少なく、高純度の1,5−ジアミノペンタンを調整できるため、溶融貯留安定性の高いポリアミド56が得られるため、溶融紡糸工程において分子量低下が起こりにくく、溶融紡糸、延伸工程において配向結晶化させ易くなり好ましい。また環境適応性にも優れるというメリットもあるため好ましい。具体的には、特開2002−223771、特開2004−114、特開2004−208646、特開2004−290091や、特開2004−298034、特開2002−223770、特開2004−222569等に開示された1,5−ジアミノペンタン、あるいは1,5−ジアミノペンタン・アジピン酸塩を用いて重合されたポリアミド56であることが好ましい。
重合工程において、重合方法は溶融重合法、界面重合法、溶液重合法、固相重合法などを採用することができるが、重合時間が長時間化すると、1,5−ジアミノペンタンの分子内脱アンモニア反応によって2,3,4,5−テトラヒドロピリジン、ピペリジン、アンモニア等の塩基性アミンが生成し、ポリアミド56樹脂の溶融貯留安定性を低下させる場合がある。よって高重合度のポリアミド56をより短時間で得ることが好ましく、予め溶融重合法によって調整したポリアミド56樹脂を、固相重合法によって高重合度化させたポリアミド56樹脂を用いることが好ましい。例えば溶融重合法であれば特開2003−292612、特開2004−75932などの方法が好ましく用いられる。
固相重合法については、ペレット化されたポリアミド56樹脂を、真空下、または窒素雰囲気下にて、130〜200℃の温度範囲で、1〜48時間範囲で、目標とする重合度の樹脂ペレットとなるまで固相重合することが好ましい。
固相重合の温度を200℃以下とすることで、樹脂ペレットの内外層で重合度を均一化し易いため好ましい。195℃以下がより好ましく、190℃以下がさらに好ましい。一方で固相重合の温度が高いほど所望の重合度の樹脂を得るための処理時間を短縮することができるため好ましく、140℃以上であることがより好ましく、150℃以上であることがさらに好ましい。
また同様に、樹脂ペレットの内外層で重合度を均一化でき、分子量分布の小さいポリマーを得易い点で、固相重合の時間は長いほど好ましく、2時間以上であることがより好ましく、3時間以上であることがさらに好ましい。一方で生産性を高めるためには固相重合を短時間化することが好ましく、36時間以下がより好ましく、24時間以下がさらに好ましい。
より高重合度、かつ分子量分布の小さい樹脂を得やすい点で、固相重合は減圧下で行うことが好ましく、圧力は150Pa以下であることが好ましく、80Pa以下であることがさらに好ましい。上記の条件下で固相重合を行うことで、分散度の小さいポリアミド56樹脂となり、繊維製造工程においてポリアミド56の配向結晶化を促進できるため好ましい。
ポリアミド56樹脂の重合度が高い、すなわち分子量が高いほど、溶融紡糸工程における紡糸応力が高くなり、ポリアミド56繊維中の分子鎖の配向結晶化を促進でき好ましい。また適度な分子量に抑えることで樹脂の溶融流動性を確保でき、紡糸温度を低く設定することができるため、ポリアミド56樹脂の熱分解を抑えられるため好ましい。よってポリアミド56樹脂の分子量の指標である硫酸相対粘度は3〜6であることが好ましく、3.3〜5.5であることがより好ましく、3.5〜5.0であることがさらに好ましい。
なお得られるポリアミド56繊維中のアミノ末端基濃度を本発明にて好ましい範囲に調整するために、ポリアミド56樹脂のアミノ末端基濃度が10〜80eq/tonであることが好ましい。より好ましくは15〜75eq/tonであり、さらに好ましくは20〜70eq/tonである。アミノ末端基濃度を上記範囲とするためには、上述した分子量の範囲で重合度を調整する手法や、重合工程のいずれかの段階において前述した末端封鎖剤を添加する手法を採用することができる。
このようにして得られたポリアミド56樹脂を、加熱乾燥し、調湿した後、溶融紡糸に供する。溶融貯留時の分子量低下を抑える点で溶融紡糸に供するポリアミド56樹脂の水分率は低いほど好ましく、1000ppm以下が好ましく、900ppm以下がより好ましく、800ppm以下がさらに好ましい。一方で適度な水分を含ませることで、溶融紡糸時にゲル化するといった不具合を回避できるため好ましく、50ppm以上であることが好ましく、80ppm以上であることがより好ましく、100ppm以上であることがさらに好ましい。調湿方法は特に限定されないが、例えば温度および湿度がコントロールされた環境に、ポリアミド56樹脂が所望の水分率となるまで存在せしめる等の方法を採用することができる。ここで水分率とは、カールフィッシャー電量滴定法水分計を用い、180℃にて測定した値である。
溶融紡糸工程において、紡糸温度は260〜310℃であることが好ましい。紡糸温度を260℃以上とすることでポリアミド56樹脂が十分な溶融流動性を示し、吐出孔間の吐出量が均一化でき、高倍率延伸を安定して行うことが可能となるため好ましい。より好ましくは270℃以上、さらに好ましくは275℃以上である。一方で310℃以下とすることにより、ポリアミド56樹脂の熱分解を抑え、分子量が高く、分散度の小さい状態で吐出することができるため好ましい。より好ましくは300℃以下であり、さらに好ましくは295℃以下である。
溶融紡糸工程における滞留時間(ポリアミド56樹脂が溶融され、紡糸口金から吐出されるまでの時間)が長時間化すると、ポリアミド56樹脂の分子量の低下、分散度の増加を招く場合があるため、滞留時間は30分以下であることが好ましく、25分以下であることがより好ましく、20分以下であることがさらに好ましい。
溶融紡糸工程において、溶融部には1軸および/または2軸のエクストルーダーが付帯されていることが好ましい。上記のエクストルーダーによってポリアミド56樹脂に適度な圧力を加えながらポリマー配管、ギヤポンプ、紡糸パックへ導くことができるため、これら流路において異常滞留を起こすことが無く、紡糸性に優れるため好ましい。
紡糸性に優れることで、後述するような高引取速度、高倍率延伸を達成し易くなる。紡糸性に優れるためには、紡糸口金から吐出される前の段階で、SUS不織布フィルターや、サンド等によってポリアミド56樹脂を濾過することも好ましい。
本発明の乾熱処理後の4.68cN/dtex応力時の伸度が20%以下であるポリアミド56繊維を得るには、溶融紡糸、延伸工程において、ポリアミド56繊維の吸湿を極限まで抑え、ポリアミド56の分子鎖を均一に配向せしめ、配向結晶化を促進させることで得られる。
よって口金から吐出されたポリアミド56繊維を冷却風にて冷却固化させた後、非含水油剤を付着させ、乾式の熱源にて延伸、熱処理、リラックス処理を施した後、巻き取る、直接紡糸延伸法を採用することが特に重要である。そして引取速度を0.4〜4km/分とし、延伸温度100〜245℃で施す延伸倍率を1.3倍以上とし、最高熱処理温度を210〜250℃とし、リラックス倍率を0.85〜0.95とすることが肝要である。以下にこれらの製造方法の要件について詳細に説明する。
まず口金から吐出された繊維の吸湿を抑えて引き取ることで、延伸工程で配向形成し易くなるため、冷却風にて冷却固化されることが好ましい。冷却風の温度は0〜25℃、相対湿度は20〜70%であることが好ましい。同様に溶融紡糸、延伸を行う室内の温湿度環境は、温度20〜30℃、相対湿度40〜65%の範囲で、温度は±5℃以内、湿度は±5%以内で調整されていることが好ましい。なお吐出された繊維を水冷する等の手段では、冷却効率は高いものの、繊維が延伸前に過度に吸湿してしまい、延伸工程での配向形成が阻害される傾向にあるため、本発明のポリアミド56繊維の冷却方法としては採用されない。
またロールやガイド等での擦過が大きいと得られる繊維の強度の低下や、毛羽の発生を招く傾向にあるため、繊維を引き取る前の段階にて、紡糸油剤を付着させることが好ましいが、紡糸油剤としては、繊維の吸湿を抑える観点から水を含まない非含水油剤であることが肝要である。非含水紡糸油剤とは、平滑剤、帯電防止剤、乳化剤等の油剤有効成分を、炭素数が12〜20である鉱物油にて希釈したものであればよく、従来公知のものを用いることできる。
同様に、延伸工程においても繊維の吸湿を抑えることが重要であることから、延伸、熱処理の熱源としては、加熱ロール、熱板、乾熱炉、レーザー等の乾式の熱源を採用することが好ましい。より加熱効率に優れることから、加熱ロールを熱源とすることが好ましい。温水やスチーム等の湿式の熱源では、ポリアミド56繊維が延伸工程で吸湿してしまって、分子間相互作用が弱まり、均一に配向化させ難くなる傾向にある。
そして繊維の吸湿を抑えて分子鎖を配向させるには、直接紡糸延伸法を採用することが好ましい。直接紡糸延伸法とは、口金より吐出された繊維をロールにて引き取った後、その後に配置したロールとの速度比によって延伸を連続的に施すものであり、溶融紡糸、延伸を1工程で施す製造方法である。繊維を一端巻き取らずに延伸することにより、繊維の吸湿を抑えた状態で延伸に供することができるため、延伸工程で配向結晶化を促進でき、好ましい。溶融紡糸、延伸を別々の工程で施す2工程法では、未延伸糸パッケージ状態での吸湿により、延伸工程でポリアミド56繊維を配向結晶化させ難くなる傾向にある。
そして引取速度は、0.4〜4km/分とすることが好ましい。引取速度を0.4km/分以上とすることにより、口金より吐出された繊維が引き取られて延伸に供されるまでの経過時間を短くすることが可能となり、未延伸糸の吸湿が抑えられるため、その後の延伸工程で非晶鎖を配向させ易くなり好ましい。さらに紡糸応力が高まる効果によって、未延伸糸に多数の微結晶が形成され、該微結晶の存在によって、分子鎖間の相互作用が適度に高まり、延伸工程において非晶鎖を均一に配向させ易くなるため好ましい。そして熱セットを施した際に、該微結晶が核となって配向結晶化が促進されるため好ましい。よって引取速度は0.7km/分以上がより好ましく、0.9km/分以上がさらに好ましい。
一方で引取速度を4km/分以下とし、紡糸応力を適度な範囲に抑えることにより、未延伸糸中に形成される結晶サイズが小さくなり、延伸性が高まることで高強度な繊維となるため好ましい。また紡糸糸切れも起こりにくくなり、好ましい。より製造工程の通過性良く、かつ高強度の繊維を得るには、引取速度を適度な範囲に抑えることが好ましく、引取速度は3.6km/分以下がより好ましく、2.6km/分以下がさらに好ましい。
従来のポリアミド66は、引取速度を高めると強度が低下し易く、また毛羽が発生し易い傾向にあった。恐らくポリアミド66は結晶性が高く、引取速度を高めると未延伸糸中で結晶が粗大化して球晶となり、該球晶に延伸応力が集中して毛羽が多発し、延伸性が低下してしまうことが原因と推定される。これに対してポリアミド56繊維は、その低結晶性に由来して、高速引取糸であっても繊維中に形成される結晶は微細であり、球晶にはなり難いため、ポリアミド66繊維と比較すると引取速度が高速域でも毛羽の少ない高品位な繊維を得やすいメリットがある。
引き取った未延伸糸は、得られるポリアミド56繊維の4.68cN/dtex応力時の伸度が8〜18%となる総合延伸倍率で延伸すればよいが、このとき2段以上の多段で延伸することで非晶鎖を高配向化させ易く、配向結晶化を促進できるため好ましい。より好ましくは3段以上、さらに好ましくは4段以上、特に好ましくは5段以上である。ここで総合延伸倍率とは、下記の式で定義されるものである。
総合延伸倍率=最終ロール速度/第1ロール速度(=引取速度)。
総合延伸倍率は、未延伸糸の非晶配向度、結晶化度によって決まるため、引取速度が高いほど、延伸倍率は低くなる傾向にある。例えば引取速度が0.4km/分以上1km/分未満であれば、延伸倍率は3〜6倍であることが好ましく、引取速度が1km/分以上2km/分未満であれば1.5〜4倍であることが好ましく、引取速度が2km/分以上3km/分未満であれば、1.4〜3倍であることが好ましく、引取速度が3km/分以上4km/分以下であれば、1.3〜2.5倍であることが好ましい。
そして吸湿性の高いポリアミド56繊維の非晶鎖を、延伸工程で均一に高配向化させるためには、延伸温度100〜245℃で施す延伸倍率が、1.3倍以上であることが重要である。これは多段延伸を施す場合であれば、100℃未満の低温域で施す延伸倍率を低く設定し、100℃以上の高温域で施す延伸倍率を高くすることを意味する。そして引取速度が高い場合、未延伸糸中に微結晶が形成されている効果によってロール上での糸揺れが抑えられるため、第1ロールから延伸温度を100℃以上とすることも可能となるため好ましい。100℃以上の温度に繊維を加熱した後に延伸することにより、水の沸点以上に繊維が加熱された後に延伸されることになるため、それまでに繊維が吸湿していた水が系外へ排除され、分子間相互作用が高まるため、非晶鎖に均一に延伸応力が伝わって配向の均一性が高まるのである。一方で延伸温度を245℃以下とすることで、非晶鎖の運動性が適度な範囲に抑えられ、非晶鎖が配向緩和を起こすことなく高配向化するため好ましい。延伸温度のより好ましい範囲は120〜235℃であり、さらに好ましい範囲は140〜225℃である。従来のポリアミド66繊維においては、高強度で高品位な繊維が工程通過性良く得られる点で、延伸温度100℃以上の高温域での延伸倍率をむしろ低く設定し、100℃未満の低温度域で出来る限り高倍率で延伸を施すことが好ましい傾向にあった。これはポリアミド66の高結晶性に由来して、延伸温度100℃以上の加熱ロール上において、延伸に供する前に球晶が形成され易かったためと推定される。一方でポリアミド56繊維は、その低結晶性に由来し、延伸温度100℃以上の加熱ロール上においても球晶は形成され難い。よって高吸湿性による悪影響を排除するため、100℃未満の低温域で施す延伸倍率を低く設定し、100℃以上の高温域で施す延伸倍率を高くすることが好ましいのである。延伸温度100〜245℃での延伸倍率は高いほど好ましく、また上記の延伸温度で施される延伸倍率は1.5倍以上であることがより好ましく、1.7倍以上であることがさらに好ましい。そして得られる繊維の4.68cN/dtex応力時の伸度が8〜18%となる総合延伸倍率となる範囲で、決定すればよい。
ここで延伸温度とは以下のように定義されるものである。例えば加熱ロールを熱源として2つの加熱ロール間で延伸を施す場合、延伸温度は上流側のロールの温度と定義する。ロール間に熱板を配置して延伸を施す場合、延伸温度は熱板の温度と定義する。ロール間に加熱炉を配置して延伸を施す場合、延伸温度は加熱炉の温度と定義する。また炭酸ガスレーザー等の熱源を用いて延伸を施す場合、赤外線放射温度計等の温度計で測定した糸温度を延伸温度とする。
例えば非加熱ロール、加熱ロールを併用し、複数のロール間で多段延伸を施す場合の、延伸温度100〜245℃の延伸倍率の算出方法について以下に例示する。第1ロールから第6ロールを介して巻き取られる5段延伸を施す場合であって、第1ロール温度25℃、第2ロール温度60℃、第3ロール温度145℃、第4ロール210℃、第5ロール230℃、第6ロール25℃とし、第1ロールと第2ロールとの速度比によって延伸倍率rで延伸し、第2ロールと第3ロールとの速度比によって延伸倍率rで延伸し、第3ロールと第4ロールとの速度比によって延伸倍率rで延伸し、第4ロールと第5ロールとの速度比によって延伸倍率rで延伸し、第5ロールと第6ロールとの速度比によってリラックス倍率rでリラックス処理される場合、延伸温度100〜245℃の延伸倍率とは、第3ロールから第5ロール間で施される延伸倍率の積算値として求められる。そして第5ロールから第6ロール間のリラックス処理で施されるリラックス倍率rのような1未満のもの計上しないものとする。すなわち上述の場合、延伸温度100〜245℃での延伸倍率は、r×rとなる。
そして245℃以下の範囲で、延伸温度を段階的に高めて多段延伸することで、配向した非晶鎖を部分的に配向結晶化させて分子間相互作用を高めながら延伸することができるため、延伸応力が分子鎖に伝達され易くなり、好ましい。
また最高熱処理温度は210〜250℃であることが重要である。最高熱処理温度とは延伸糸を巻き取る前の段階において施される熱処理において、最も高温度で施される熱処理の温度である。例えば上述の第1ロールから第6ロールで延伸を施す手法の場合であれば、第5ロールで施す熱処理の温度が、最高熱処理温度に該当する。また延伸温度を段階的に高めることが好ましいことから、最高熱処理温度で施す熱処理は最終加熱ロールで施すことが好ましい。上述の溶融紡糸、延伸方法によって高配向化させたポリアミド56分子を210℃以上の温度で熱セットすることで、配向非晶が結晶化し、該結晶によって非晶鎖の拘束性が高まるため好ましい。一方で最高熱処理温度の温度が250℃を超える温度であると、ロールに糸が融着して糸切れを招き、工程通過性が悪化する場合がある。また結晶化は促進されるものの、非晶鎖の配向状態が維持できず、強度が低下する場合がある。よって最高熱処理温度の温度は215〜245℃であることがより好ましく、220〜240℃であることがさらに好ましい。
延伸を施したのち、最終加熱ロールと最終ロールとの間の速度比によって、リラックス処理されることが好ましい。リラックス処理とは最終ロール速度/最終加熱ロール速度で定義されるリラックス倍率が1未満の場合を指し、リラックス倍率は0.85〜0.95倍であることが好ましい。リラックス倍率が0.95倍以下であることで、延伸工程で非晶鎖に加わった不均一な歪みが平均化され、非晶鎖が安定化するため、得られる繊維の乾収が低くなり好ましい。より好ましくは0.94倍以下、さらに好ましくは0.93倍以下である。リラックス倍率は低いほど好ましいが、リラックス倍率を0.85以上とすることで、非晶鎖の配向緩和を起こさせること無く歪みが平均化されるため、強度の高い繊維となるため好ましい。そしてロール間で適度な糸張力が発現し、工程通過性も良好となるため好ましい。より好ましくは0.86以上、さらに好ましくは0.87以上である。
そしてポリアミド56繊維を0.05〜0.15cN/dtex以下の巻き取り張力で巻き取る。0.15cN/dtex以下の巻き取り張力とすることで、パッケージの巻締まりといった問題を回避でき、巻き取り張力を0.05cN/dtex以上とすることにより、パッケージフォームが良好となるため好ましい。より好ましくは0.07〜0.13cN/dtexであり、さらに好ましくは0.09〜0.11cN/dtexである。
以上の方法によって製造されたポリアミド56繊維は、繊維中に多くの配向結晶相を有するため非晶鎖の拘束性が高く、150℃30分間の乾熱処理を施しても、非晶鎖の配向緩和が起こり難く、高弾性率が維持されるため好ましいのである。
このようにして得られた、ポリアミド56繊維(原糸)に下撚(Z撚)を加えた撚糸を2本用意し、これらを合糸しながら上撚(S撚)を加えることで生コードとする。下撚数および上撚数は、それぞれ上述した範囲となるように選択すればよい。そして生コードに接着剤を塗布した後、定長熱処理、ストレッチ熱処理、リラックス熱処理した後に巻き取ることで本発明のゴム補強コードが得られる。
接着剤は従来公知の接着剤を用いることができる。また接着剤の濃度は接着剤の流動性と、コードへの均一付着性の観点から、5〜30wt%であることが好ましく、7〜25wt%であることがより好ましい。
接着剤の浴中においてのコードの走行安定性を確保するために、接着剤浴の前後のロールの速度比によってストレッチすることが好ましい。接着剤浴前後のストレッチ率は1〜10%の範囲で調整すればよい。
また接着剤の付着量は目的用途に応じて選択することができるが、付着量が高いほど接着性が高まるが、適度な付着量に抑えることでコードの柔軟性が確保され耐疲労性も良好となる。よって付着量は1〜10wt%であることが好ましく、2〜8wt%であることがより好ましく、3〜7wt%であることがさらに好ましい。ここで接着剤の付着量とは、コードに付着した接着剤の重量をコード総重量で除して100倍したものである。
定長熱処理、ストレッチ熱処理、リラックス熱処理を施す際の熱源については、接着剤を繊維表面に均一被覆させる観点から、非接触型の乾熱炉を用いることが好ましい。
接着剤を塗布した後、雰囲気温度100〜150℃の乾燥炉中で、1〜180秒間、定長熱処理を施すことが好ましい。定長熱処理によって予め水分を除いておくことで、ストレッチ熱処理にてさらに配向結晶化が促進されるため好ましい。
そして乾燥されたコードを、雰囲気温度200〜250℃の熱処理炉内で、処理時間1〜180秒間、ストレッチ熱処理することにより、接着剤とコードとが反応して接着する。またこのとき、熱処理炉出口のコード張力をゴム補強コードの繊度で除した値である、ストレッチ応力が0.5〜2.5cN/dtexとなる範囲で調整し、得られるコードの2.34cN/dtex応力時の伸度が所望の値となるように調整すれば良いが、より高応力でストレッチ熱処理するほど、繊維中に形成されていた結晶配向度が高まり、乾熱処理後においても2.34cN/dtex応力時の伸度が低いコードが得られるため好ましい。より好ましくは1cN/dtex以上である。一方でストレッチ応力が2.5cN/dtex以下であることにより、ゴム補強コード製造工程における工程通過性が高まるため好ましい。より好ましくは2cN/dtex以下である。そしてストレッチ応力を上記範囲とするためには、4.68cN/dtex応力時の伸度が8〜18%であるポリアミド56繊維からゴム補強コードを構成することが好ましい。
最後に、雰囲気温度200〜250℃の熱処理炉内で、1〜180秒間、リラックス熱処理することが好ましい。該熱処理によって、接着剤とコードとが反応し接着する。リラックス熱処理によって非晶鎖に加わった歪みが均一化し、繊維の乾収が低くなるため好ましい。このとき熱処理炉出口のコード張力をゴム補強コードの繊度で除した値である、リラックス応力は0.1〜1cN/dtexの範囲で調整すれば良い。
かくして得られたゴム補強コードは、乾熱処理における寸法変化、すなわち繊維の非晶配向度の低下が小さいため、熱に晒された後においても弾性率の高いゴム補強コードが得られる。そしてゴム接着性に優れるため、該ゴム補強コードで構成された補強ゴムは、外力による寸法変化が小さく、かつ繰り返し変形における耐久性にも優れている。このため多種多様な補強ゴムに使用することができる。補強ゴムの製造方法については特に限定されず、従来公知の製造方法を採用すればよい。
以下、本発明を、実施例を用いて詳細に説明する。なお、実施例中の測定方法は以下の方法を用いた。
A.相対粘度(ηr)
試料2.5gを98%硫酸25ccに溶解し、オストワルド粘度計を用いて25℃で測定した。
B.アミノ末端基濃度
試料1gを50mLのフェノール/エタノール混合溶液(フェノール/エタノール=80/20)で溶解し、N/50塩酸水溶液で、チモーブルーを指示薬として中和滴定を行った。そして塩酸消費量からアミノ末端基濃度を測定した。
C.総繊度、単繊維繊度
1m/周の検尺機で10回転させて、10ターンのループ状かせを5個作成し、重量測定用の試料とする。また同様にして10ターンのループ状かせを作成し、該かせの糸端同士を結んでほどけないようにしたループ状かせを5個作成し、試料長測定用の試料とする。まず計10個の試料を25℃RH55%の環境下、無荷重の状態で48時間放置して調湿した。その後同環境下にて、重量測定用のループ状かせの重量を測定して平均値A(g)を求めた。次に同様に同環境下にて試料長測定用ループ状かせのかせ長を測定した。試料長測定用のループ状かせをフックにかけ、ループ状かせに0.05cN/dtex相当の荷重をかけてかせ長を測定した。荷重を決定する際には試料の見掛繊度(=A(g)×10000/10)を用いた。かせ長の20倍が試料長となり、5個の試料長の平均値B(m)を求めた。そしてAをBで除した後、10000倍することにより総繊度を求めた。総繊度をフィラメント数で除することで、単繊維繊度を求めた。
D.強度、伸度
JIS L1017 (1995)、7.5項の引張強さ及び伸び率、(1)標準時試験の測定方法に準じ、オリエンテック(株)社製テンシロン(TENSILON)UCT−100を用いて、試料(繊維またはゴム補強コード)のS−S曲線を測定した。まず試料をパッケージからカセ取りとし、25℃RH55%の環境下、無荷重の状態で48時間放置して調湿した。そして該試料を同環境下において、試料長250mm、引張速度300m/分として、S−S曲線を測定した。強度はS−S曲線における最大強力を示した点での強力を、総繊度で除することにより求めた。伸度はS−S曲線において最大強力を示した点の伸びを、試料長で除し、100倍することで求めた。測定は10回行い、平均値を取った。
E.繊維の4.68cN/dtex応力時の伸度
JIS L1017 (1995)、7.7項の一定荷重時伸び率、(1)標準時試験の測定方法に準じ、D項にて記載の方法にて測定した繊維のS−S曲線から4.68cN/dtex応力時の伸度を算出した。測定は10回行い、平均値を取った。
F.コードの2.34cN/dtex応力時の伸度
JIS L1017 (1995)、7.7項の一定荷重時伸び率、(1)標準時試験の測定方法に準じ、D項にて記載の方法にて測定したコードのS−S曲線から2.34cN/dtex応力時の伸度を算出した。測定は10回行い、平均値を取った。
G.150℃30分間の乾熱処理後の4.68cN/dtex応力時の伸度(繊維)
繊維をかせ取りにし、タバイエスペック社製ギヤーオーブンGPHH−200を用い、荷重フリーの状態で、雰囲気温度150℃、処理時間30分間の乾熱処理を施した。そして乾熱処理後のループ状カセをオーブンから取り出し、該試料の4.68cN/dtex応力時の伸度をE項に記載の方法に準じて求めた。このとき乾熱処理後の繊維の総繊度は、乾熱処理前の繊維と同一の値を用いた。
H.150℃30分間の乾熱処理後の2.34cN/dtex応力時の伸度(コード)
ゴム補強コードをかせ取りにし、タバイエスペック社製ギヤーオーブンGPHH−200を用い、荷重フリーの状態で、雰囲気温度150℃、処理時間30分間の乾熱処理を施した。そして乾熱処理後のループ状カセをオーブンから取り出し、F項に記載の方法に準じて乾熱処理後のコードの2.34cN/dtex応力時の伸度を求めた。このとき乾熱処理後のコードの総繊度は、乾熱処理前のコードと同一の値を用いた。
I.乾収
JIS L1017 (1995)、7.10項の 乾熱収縮率、(2)加熱後乾熱収縮率(B法)の測定方法に準じ、試料(繊維またはゴム補強コード)の乾収を測定した。まず1m/周の検尺機で10回転させて、該かせの糸端同士を結んで、ほどけないようにしたループ状かせを作成した。そして該ループ状かせを25℃RH55%の環境下、無荷重の状態で48時間放置して調湿した。その後同環境下にて、試料長測定用のループ状かせをフックにかけ、ループ状かせに0.05cN/dtexの荷重をかけてかせ長を測定し、元長Lとした。
そして荷重を取り除き、ループ状カセを、タバイエスペック社製ギヤーオーブンGPHH−200に投入し、荷重フリーの状態で、雰囲気温度150℃、処理時間30分間の乾熱処理を施した。そして乾熱処理後のループ状かせをオーブンから取り出した後、再度25℃RH55%の環境下、無荷重の状態で、48時間放置して調湿した。その後、同環境下で乾熱処理後のループ状かせをフックにかけ、0.05cN/dtexの荷重をかけてかせ長を測定し、処理後長Lとした。L、Lを用いて、下記の式により乾収を求めた。測定は5回行い、平均値を求めた。
乾収=(L−L)/L×100
J.耐熱強力保持率
試料をかせ取りにし、タバイエスペック社製ギヤーオーブンGPHH−200を用い、荷重フリーの状態で、雰囲気温度180℃、処理時間40時間の乾熱処理を施した。そして乾熱処理後のループ状カセをオーブンから取り出して試料とし、D項に記載の方法に準じて乾熱処理後の強力を求めた。180℃40時間の乾熱処理後の強力を、未熱処理試料の強力で除し、100倍することにより、耐熱強度保持率を求めた。
K.ゴム接着性(接着力)
JIS 1017(1995)参考1、3.1項のTテスト(A法)に準じ、ゴム補強コードの接着力を測定した。まず接着剤を含んだゴム補強コードをパッケージから引き出し、予め25℃RH55%の温湿度環境下、無荷重の状態で、48時間放置して調湿した。そして該ゴム補強コードを評価用ゴムに埋め込み、コードに0.08cN/dtexの張力をかけながら、加硫温度150℃、加硫時間30分、プレス圧力50kg/cmで加硫し、埋込試験片を作製した。このときゴム埋め込み長さを10mmとし、埋め込み試験片の幅を10mmとした。そして埋込試験片にスリット幅1.5mmのクランプを取り付け、オリエンテック(株)社製テンシロン(TENSILON)UCT−100を用い、温度25℃、湿度RH55%の環境下において、100mm/分の速度で埋込試験片からコードを引き抜く際の最大荷重を測定した。測定は10回行い、平均値を求めた。評価用ゴムとしては、天然ゴム80重量部、スチレン−ブタジエン共重合ゴム20重量部、カーボンブラック40重量部、ステアリン酸2重量部、石油系軟化剤10重量部、バインタール、亜鉛華、N−フェニル−β−ナフチルアミン1.5重量部、2−ベンゾチアジルジスルフィド0.75重量部、ジフェニルグアニジン0.75重量部、硫黄2.5重量部からなるゴムを用いた。
L.耐疲労性(チューブ疲労強さ、GY法)
JIS 1017(1995)参考1、2.2.1項のチューブ疲労強さ(GY法)に準じ、ゴム補強コードの耐疲労性の評価を行った。K項記載の評価用ゴムを用い、チューブ内圧3.4MPa 、回転速度850rpm(但し30分ごとに回転方向を変える)、チューブ角度90゜としてチューブの破裂時間(分)を求め、チューブ疲労強さとした。
M.空気充填後のタイヤの寸法増加率
タイヤ内圧7.25kg/cmで24時間室温にて放置後のタイヤ寸法Sと、モールドにおけるタイヤ寸法Sとを測定し、空気充填後の寸法増加率(%)を求めた。Sは上記の処理を施した後のタイヤの最大高さHとタイヤの最大幅Wを測定し、S=2H+Wにより求めた。またモールドにおけるタイヤ寸法Sも同様にしてモールド内最大高さHと最大幅Wを測定し、S=2H+Wにより求めた。そして下記の式により空気充填後の寸法増加率を求めた。
タイヤの空気充填後の寸法増加率(%)=(S−S)/S×100
N.ドラム走行後のタイヤの寸法増加率
1702mmのドラム上に、タイヤ内圧7.25kg/cm、荷重2700kgでタイヤを押しつけ、速度40km/時で24時間走行後のタイヤ寸法Sを測定し、空気充填後のタイヤの寸法Sからの増加率を求めた。Sは走行処理後のタイヤの最大高さHとタイヤの最大幅Wを測定し、S=2H+Wにより求めた。
そして下記の式によりドラム走行後の寸法増加率(%)を求めた。
タイヤのドラム走行後の寸法増加率(%)=(S−S)/S×100
O.製糸性の評価
100kgのポリアミド56繊維を得るに際し、糸切れが起こった回数により製糸性の評価を行った。
P.水分率
カールフィッシャー電量滴定法水分計(平沼産業株式会社製微量水分測定装置AQ−2000、および同社製水分気化装置EV−200)を用い、水分気化温度180℃にて乾燥窒素ガスを流して測定した。
Q.撚係数
まず古橋製作所製検撚機を用い、上撚数、下撚数の測定を行った。まずコードを検撚機にセットし初荷重(コードの総繊度×0.45mN)をかけた。次に上撚り部の撚数を測定し、25cm間の撚回数A(ターン)および撚り縮みした長さB(cm)を読み取った。次に2本あるコードの1本を切断し、同様に下撚り部の撚回数C(ターン)を読み取った。これをA、B、Cを用い、以下の計算式により、上撚数、下撚数を算出した。
上撚数(t/10cm) = A/25×10
下撚数(t/10cm) = C/(25+B)×10
上撚数、または下撚数を用い、上撚部、または下撚部の撚係数を下記の式により算出した。
上撚部の撚係数=T×(D×0.9)0.5
下撚部の撚係数=T×(D/2×0.9)0.5
:10cm当たり上撚数
:10cm当たり下撚数
D:コードの総繊度(dtex)
[製造例1](リジン脱炭酸酵素の調整)
まずE.coli JM109株の培養を以下のように行った。まず、この菌株をLB培地5mlに1白金耳植菌し、30℃で24時間振とうして前培養を行った。次に、LB培地50mlを500mlの三角フラスコに入れ、予め115℃、10分間蒸気滅菌した。この培地に前培養した上記菌株を植え継ぎ、振幅30cmで、180rpmの条件下で、1N塩酸水溶液でpHを6.0に調整しながら、24時間培養した。こうして得られた菌体を集め、超音波破砕および遠心分離により無細胞抽出液を調製した。これらのリジン脱炭酸酵素活性の測定を定法に従って行った(左右田健次、味園春雄、生化学実験講座、vol.11上、P.179〜191(1976))。
リジンを基質とした場合、本来の主経路と考えられるリジンモノオキシゲナーゼ、リジンオキシダーゼおよびリジンムターゼによる転換が起こり得るので、この反応系を遮断する目的で、75℃で5分間、E.coli JM109株の無細胞抽出液を加熱した。さらにこの無細胞抽出液を40%飽和および55%飽和硫酸アンモニウムにより分画した。この粗精製リジン脱炭酸酵素溶液を用い、リジンから1,5−ジアミノペンタンの生成を行った。
[製造例2](1,5−ジアミノペンタンの製造)
50mM リジン塩酸塩(和光純薬工業製)、0.1mM ピリドキサルリン酸(和光純薬工業製)、40mg/L−粗精製リジン脱炭酸酵素(参考例1で調製)となるように調製した水溶液を、0.1N塩酸水溶液でpHを5.5〜6.5に維持しながら、45℃で48時間反応させ、1,5−ジアミノペンタン塩酸塩を得た。この水溶液に水酸化ナトリウムを添加することによって1,5−ジアミノペンタン塩酸塩を1,5−ジアミノペンタンに変換し、クロロホルムで抽出して、減圧蒸留(1.33kPa、60℃)することにより、1,5−ジアミノペンタンを得た。
[製造例3](1,5−ジアミノペンタンとアジピン酸の塩の調製)
製造例2で製造した1,5−ジアミノペンタン10.3gを、水25g中に溶解した水溶液を、40℃のウォーターバスに浸して撹拌しているところに、アジピン酸(カーク製)を約1gずつ、中和点付近では約0.2gずつ添加していき、アジピン酸添加量に対する水溶液のpH変化を調べ、中和点を求めると、pH8.66であった。中和点でのアジピン酸添加量は14.7gであった。pHが8.66になるように、1,5−ジアミノペンタンとアジピン酸の等モル塩の50wt%水溶液を調製した。
[製造例4](ポリアミド56樹脂の重合)
熱媒加熱式の重合釜を使用し、1,5−ジアミノペンタンとアジピン酸の等モル塩の50wt%水溶液と、フェニルホスホン酸をポリアミド56樹脂に対してリン原子換算で、70ppm仕込み、缶内を窒素パージしながら熱媒温度を200℃に設定し加熱を開始し、缶内圧力を0.2MPaに制圧しながら、缶内温度が160℃到達まで1,5−ジアミノペンタンとアジピン酸の等モル塩を濃縮した。その後、重合釜を密閉し、熱媒温度を290℃まで上昇させて加圧し、缶内圧力1.7MPaに到達した時点から、缶内圧力を1.7MPaで制圧し、内温が245℃となるまで維持した。そして熱媒温度を285℃に変更し、50分間かけて大気圧まで放圧した後、缶内圧力が0.088MPaまで減圧して、20分間保った後、加熱を停止してポリマーを吐出し、水冷してポリアミド56樹脂を得た。該ポリアミド56樹脂のηrは2.85、アミノ末端基濃度は50eq/tonであった。
[製造例5](ポリアミド56樹脂の固相重合)
製造例4で得たポリアミド56樹脂をバキュームドライヤー型の真空乾燥機に仕込み、酢酸銅5wt%水溶液を銅原子としてポリアミド56樹脂に対して150ppmとなるように添加し、ドライヤーを回転させて約1時間ブレンドした。そしてヨウ化カリウム50wt%水溶液をカリウム原子としてポリアミド56樹脂に対して900ppmとなるように添加し、再びドライヤーを回転させて約1時間ブレンドした。その後ドライヤーの回転により、缶内の樹脂を攪拌しながら減圧し、加熱することで固相重合を行った。缶内温度の昇温速度が10℃/時間となるようにして加熱しながら減圧し、170℃到達後、缶内圧力0.1kPaで3時間維持した後抜き出した。得られたポリアミド56樹脂のηrは4.0、アミノ末端基濃度は32eq/tonであった。
[製造例6](ポリアミド56樹脂の固相重合)
製造例5において、酢酸銅5wt%水溶液を銅原子としてポリアミド56樹脂に対して15ppmとなるように添加し、ヨウ化カリウム50wt%水溶液をカリウム原子としてポリアミド56樹脂に対して90ppmとなるように添加した以外は、製造例5と同様にしてポリアミド56樹脂を得た。ηrは4.0、アミノ末端基濃度は32eq/tonであった。
[製造例7](ポリアミド66樹脂の製造)
1,5−ジアミノペンタンとアジピン酸の等モル塩の50wt%水溶液の代わりに、1,6−ジアミノヘキサンとアジピン酸の等モル塩の50wt%水溶液を用い、缶内圧力0.088MPaまで減圧した後の保持時間を5分間とした以外は、製造例4と同様にして、ηr2.85のポリアミド66樹脂を得た。得られたポリアミド66樹脂を、製造例5と同様にして固相重合し、ηr3.8のポリアミド66樹脂を得た。
[製造例8](RFLの製造)
まずアルカリ触媒存在下で、レゾルシン(関東化学社製、製品名レゾルシン)/ホルマリン(シグマアルドリッチ社製、製品名ホルムアルデヒド水溶液35%)を固形分重量比10/18の割合で混合し、6時間熟成することにより、固形分濃度6.5%の初期縮合物を得た。
次に、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(日本A&L社製:PYRATEX-HM)とスチレンブタジエン共重合体ラテックス(日本A&L社製:J9049)を、固形分量比70/30の割合で混合したラテックス100部に対し、28%濃度アンモニア水(シグマアルドリッチ社製 製品名アンモニア水28%)10部を混合し混合ラテックスを得た。
そして、上記混合ラテックス100部に対し、上記縮合物を18部混合し、24時間熟成することにより、固形分20%の高濃度RFLを調整した。この高濃度RFLを水に希釈し、固形分濃度10%のRFL得た。
(実施例1)
図2に示す、1軸混練機を備えた直接紡糸延伸装置を用い、溶融紡糸、延伸、熱処理を連続的に施しポリアミド56繊維を得た。
まず、製造例5で得たポリアミド56樹脂を水分率500ppmとなるように調湿し、図2に示したホッパー1に投入した。そして1軸エクストルーダー2にて溶融し、ポリマー配管3を通して、紡糸パック6に導くに際し、ギヤポンプ4にてポリマーを計量、排出し、スピンブロック5に内蔵された紡糸パック6に導き、丸孔を200ホール有する、紡糸口金7から紡出した。この時、得られるポリアミド56繊維の総繊度が1400dtexとなるようにギヤポンプ4の回転数を選定した。そしてユニフロー冷却装置8で糸条9を冷却固化し、給油装置(オイリングローラー)10により非含水油剤を給油した。第1ロール11(鏡面)で引き取った後、第1〜5ロール11〜15(第2〜5ロールは梨地)の間のロール間の速度比によって延伸、熱セットを施した。そして第5ロール15と第6ロール16(第6ロールは梨地)との速度比によってリラックス処理したのち、交絡ノズル17で交絡を付与し、巻取機18にて巻き取り張力が0.08〜0.1cN/dtexの範囲となるよう張力制御して巻き取り、チーズパッケージ19を得た。このとき総合延伸倍率は得られるポリアミド56繊維の4.68cN/dtex応力時の伸度が13%となるように調整した。そして紡糸、延伸、熱処理を1段階で施した1400デシテックス200フィラメントのポリアミド56繊維を得た。100kgのポリアミド56繊維を製造する際に糸切れは起こらず、製糸性に優れていた。実施例1のポリアミド56繊維の特性を表1に示す。
なお溶融紡糸、延伸、熱処理の条件は以下のとおりである。
・1軸エクストルーダー温度:280℃
・紡糸温度(スピンブロック温度):285℃
・濾層:φ2mmガラスビーズ充填
・フィルター:15μm不織布フィルター
・口金:孔径0.3mm、孔深度0.6mm、孔数200
・吐出量:476g/分(1パック1糸条、200フィラメント)
・冷却方法:口金から吐出された繊維を冷却長1mのユニフローチムニーにより冷却風で冷却、冷却風温湿度20℃RH55%、風速0.4m/秒、冷却開始位置は口金面下0.3m
・溶融紡糸、延伸環境:25℃RH55%
・油剤:油剤有効成分として脂肪酸エステル、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、変性シリコーンの混合物を25重量部含み、炭素数14の鉱物油75重量部で希釈したもの。鉱物油以外の成分が繊維重量に対して1wt%付着するように付着量を調整。
・第1ロール(引取ロール)温度:25℃
・第2ロール温度:55℃
・第3ロール温度:145℃
・第4ロール温度:210℃
・第5ロール(最終加熱ロール)温度:230℃
・第6ロール温度:25℃
・第1ロール(引取ロール)速度:1000m/分
・第2ロール速度:1020m/分
・第3ロール速度:2222m/分
・第4ロール速度:2666m/分
・第5ロール(最終加熱ロール)速度:3733m/分
・第6ロール速度:3434m/分
・巻取速度:3400m/分
・総合延伸倍率:3.4倍(第1〜2ロール間倍率r:1.02倍、第2〜3ロール間倍率r:2.23倍、第3〜4ロール間倍率r:1.2倍、第4〜5ロール間倍率r:1.4、第5〜6ロール間リラックス倍率r:0.92倍)。
・延伸温度100〜245℃での延伸倍率:1.68
・交絡圧空:0.2MPa
表1に示すように、実施例1のポリアミド56繊維は150℃30分間の乾熱処理後の4.68cN/dtex応力時の伸度が16%と低く、乾熱処理を施した後であっても外力によって変形し難い繊維であった。これは本発明にて好ましい製造条件を採用することにより、溶融紡糸、延伸工程における繊維の吸湿が抑えられ、延伸、熱処理において配向結晶化が促進され、繊維中の非晶鎖の熱運動性が拘束された効果によるものである。そして、4.68cN/dtex応力時の伸度が13%、乾収が2.7%、強度が8.6cN/dtex、耐熱強力保持率も83%であった。
次に該ポリアミド56繊維に下撚(Z撚)を施した撚糸を2本用意し、これらを合糸しながら上撚(S撚)を施して、諸撚り構造を有する生コードを得た。下撚(Z撚)数、上撚(S撚)数はともに40t/10cmであり、上撚部の撚係数は2008、下撚部の撚係数は1420であった。そしてリツラー社製“コンピュートリータ”ディッピング機を用いて、該生コードに接着剤を付与し、引き続いて熱処理した。接着剤としては製造例8で製造したRFL(固形分濃度10%)を用い、付着量が5重量%となるよう液切り条件を調整した。
熱処理条件は、乾燥炉の雰囲気温度を130℃とし、通過時間120秒間とし定長で通過させて定長熱処理した後、引き続き雰囲気温度230℃の熱処理炉を60秒間通過させてストレッチ熱処理を施した。このとき得られるコードの2.34cN/dtex応力時の伸度が10%となるように熱処理炉出口でのストレッチ応力を調整した。実施例1でのストレッチ応力は1.5cN/dtexであった。次いでリラックス熱処理を施す熱処理炉では、雰囲気温度を225℃とし、60秒間、リラックス応力0.5cN/dtexとして通過させ、巻き取った。
得られたゴム補強コードは、150℃30分間の乾熱処理後の2.34cN/dtex応力時の伸度が15.2%、強度7.1cN/dtex、2.34cN/dtex応力時の伸度が10%、伸度25%、乾収4.7%であった。該ゴム補強コードは、ゴム接着性(接着力)が190N/10mmであり、耐疲労性(チューブ疲労強さ、GY法)が1712分であった。
そしてタイヤ成型後の冷却工程におけるコードの収縮を防止するためのポストキュアインフレーションを省略した以外は、通常のタイヤ製造工程により、実施例1のゴム補強コードをカーカスプライとして用いたラジアルタイヤ(タイヤサイズ1000R20、14PR)を作製した。すなわち該ゴム補強コードでタイヤ用簾を作成し、ドラム成形機上で端部を結合して円筒形状のカーカスプライを形成した。ついでカーカスプライの外側にベルトプライ、トレッドゴム、およびサイドゴムを重ね合わせてグリーンタイヤを形成し、該グリーンタイヤをモールド中に入れ、グリーンタイヤの内面からスチームで加圧し、コードが伸長された状態で、モールド温度150℃で30分間加硫成型した。加硫時間経過後、冷却してタイヤを得た。このときカーカスプライには本発明の1400T/2本のゴム補強コードを使用し、タイヤの赤道面に対し90°の角度で配置し、単位コード本数は28エンド、プライ数は3プライとした。またトレッドのベルトプライには3×0.20+6×0.38のスチールコードを使用し、タイヤの赤道面に対して20°の角度で配置し、その単位コード本数は13エンド、プライ数は3プライとした。
このようにして得られたタイヤは、空気充填後のタイヤの寸法増加率、ドラム走行後のタイヤの寸法増加率がいずれも小さく、外力や熱が加わっても寸法変化が起こりにくいタイヤであった。このため、高速コーナーリング走行においても走行安定性に優れたタイヤであった。
空気充填後のタイヤの寸法増加率、ドラム走行後のタイヤの寸法増加率がいずれも小さいのは、実施例1のゴム補強コードの150℃30分間の乾熱処理後の2.34cN/dtex応力時の伸度が低いことと、ゴム接着性(接着力)が高いこととが相乗効果的に作用した結果と考えられる。そしてゴム補強コードは、上記に加えて、強度や、耐熱強力保持率等にもバランス良く優れるため、耐疲労性(チューブ疲労強さ、GY法)に優れたゴム補強コードであった。
Figure 0004831027
(参考例1)
製造例7にて得たポリアミド66樹脂を用い、1軸エクストルーダー温度290℃、紡糸温度300℃とした以外は、実施例1と同様にして1400dtex、200フィラメントのポリアミド66繊維を製造しようと試みたが、第4ロール、第5ロール(最終加熱ロール)、第6ロール(リラックスロール)上において糸条の走行が安定せず、糸切れが多発した。得られたポリアミド66繊維は多くの毛羽を有するものであり、その後の評価に供するレベルでは無かった。このため各ロールの速度、吐出量を変更し、4.68cN/dtex応力時の伸度が13%であり、1400dtex、200フィラメントであるポリアミド66繊維を得た。参考例1のポリアミド66繊維を用い、実施例1と同様にして、ポリアミド66繊維からなる、2.34cN/dtex応力時の伸度が10%であるゴム補強コードを製造し、該コードをカーカスプライとして用いたタイヤを作製した。参考例1の結果を実施例1と比較して表1に示す。実施例1から変更した条件を下記する。
参考例1
・1軸エクストルーダー温度:290℃
・紡糸温度(スピンブロック温度):300℃
・吐出量:392g/分(1パック1糸条、200フィラメント)
・第1ロール(引取ロール)速度:380m/分
・第2ロール速度:388m/分
・第3ロール速度:1748m/分
・第4ロール速度:2010m/分
・第5ロール(最終加熱ロール)速度:2211m/分
・第6ロール速度:2034m/分
・巻取速度:2014m/分
・総合延伸倍率:5.3倍(第1〜2ロール間倍率r1:1.02倍、第2〜3ロール間倍率r2:4.51倍、第3〜4ロール間倍率r3:1.15倍、第4〜5ロール間倍率r4:1.1、第5〜6ロール間リラックス倍率r5:0.92倍)。
・延伸温度100〜245℃での延伸倍率:1.27
実施例1のゴム補強コードは、参考例1と比較して、150℃30分間の乾熱処理後の2.34cN/dtex応力時の伸度は高いものの、空気充填後のタイヤの寸法増加率、およびドラム走向後のタイヤの寸法増加率はそれぞれ同等であった。これは実施例1の方が参考例1と比較してゴム接着性(接着力)が高いこととの相乗効果により、効率的な補強が達成されたためと考えられる。加えて実施例1のゴム補強コードは、参考例1にも勝る耐疲労性を有しており、耐久性にも優れたタイヤコードであった。
さらに実施例1と参考例1とを比較すると分かるように、ポリアミド56繊維とポリアミド66繊維では、好ましい製造条件が異なることも分かる。
これはポリアミド66繊維のポリマーの結晶性が高いため、引取速度を高めると繊維中に球晶が形成され、該結晶に延伸応力が集中して毛羽が発生し易くなるためと考えられる。また100〜245℃に加熱されたロール上でも球晶が形成され易いため、該延伸温度で高倍率延伸を施そうとすると、毛羽が発生し易いものと考えられる。一方でポリアミド56繊維は、ポリマーが低結晶性、かつ高吸湿性であることから、紡糸線上で形成される結晶は微細であり、100〜245℃に加熱されたロール上においても微結晶は球晶とはなり難いため、引取速度を高め、該延伸温度範囲での延伸倍率を高めることが好ましいと考えられる。
(比較例1)
引用文献2の実施例1を参考にし、図3の装置を用いて1400デシテックス200フィラメントのポリアミド56繊維を得た。このとき口金から吐出したポリアミド56繊維を水冷固化させ、引取速度を24m/分とし、1段目の延伸熱源としてスチーム発生装置を用いた。他の紡糸条件を下記に示す。紡糸工程において糸切れが7回発生し、紡糸性は不良であった。実施例1から変更した製造条件を下記に示す。比較例1の結果を表1に示す。
・吐出量:20.2g/分(1パック1糸条、200フィラメント)
・冷却:エチレンビスステアリン酸アミド0.1wt%水溶液を使用。液温20℃、口金下面と水面との距離20mm、冷却長100mm。
・第1ロール(引取ロール)温度:25℃
・スチーム加熱装置(雰囲気温度):98℃
・第2ロール温度:25℃
・熱風延伸槽(雰囲気温度):172℃
・第3ロール温度:25℃
・熱風延伸槽(雰囲気温度):168℃
・第4ロール(最終ロール)温度:25℃
・第1ロール(引取ロール)速度:24.6m/分
・第2ロール速度:86m/分
・第3ロール速度:146m/分
・第4ロール速度:146m/分
・巻取速度:144m/分
・総合延伸倍率:5.93倍(第1〜2ロール間倍率r:3.5倍、第2〜3ロール間倍率r:1.7倍、第3〜4ロール間倍率r:1倍)。
・延伸温度100〜245℃での延伸倍率:1.7倍
比較例1のポリアミド56繊維は、強度8.8cN/dtexと高強度であり、透明性が良好な繊維であったことから、引用文献2の実施例1を再現できたものであった。しかしながら150℃30分間の乾熱処理後の4.68cN/dtex応力時の伸度が29%と極めて高く、熱に晒された後の繊維は、外力が加わると変形し易いものであった。乾収が14.2%と高かったことから、熱を加えると配向した非晶鎖が緩和してしまう繊維であった。
これは水冷にて繊維を冷却固化し、かつ低速で引取ったため、未延伸糸の段階で繊維が吸湿して多くの水を含んでしまい、分子間相互作用が低下して延伸工程で非晶鎖を均一に配向できなかったためと思われる。また延伸熱源としてもスチームを採用しており、最高熱処理温度も210℃以下と低いため、やはり延伸後の繊維中は十分に配向結晶化できていないためと思われる。
比較例1のポリアミド56繊維を用い、実施例1と同様にしてゴム補強コードを作製した。得られたゴム補強コードは、150℃30分間の乾熱処理後の2.34cN/dtex応力時の伸度が27.6%と高く、熱に晒された後のコードは外力によって変形し易いものであった。また乾収が16%と高いため、加硫工程でコードの熱収縮力が高なってしまい、該ゴム補強コードのゴム接着性は実施例1と比べて劣るものであった。そして150℃30分間の乾熱処理後の2.34cN/dtex応力時の伸度が高く、かつゴム接着性が不十分のため、該ゴム補強コードにて作製したタイヤは、空気充填後のタイヤの寸法増加率、ドラム走行後のタイヤの寸法増加率が共に大きく、このため高速コーナーリング走行において走行安定性が悪いものであった。さらに比較例1は、実施例と比べて耐疲労性(チューブ疲労強さ、GY法)にも劣っており、耐久性の低いコードであった。
(比較例2〜3)
比較例1において、ゴム補強コード製造工程におけるストレッチ応力を変更した以外は、比較例1と同様にして比較例2〜3のゴム補強コードを得た。
・比較例2のストレッチ応力:0.5cN/dtex
・比較例3のストレッチ応力:1.8cN/dtex
比較例2、3のゴム補強コードは、いずれも150℃30分間の乾熱処理後の2.34cN/dtex応力時の伸度が高かった。また乾収が高いため、比較例1と同様に、ゴム接着性に劣るゴム補強コードであった。このためこれらの相乗効果によって、空気充填後のタイヤの寸法増加率、ドラム走向後のタイヤの寸法増加率に劣るものであった。さらに比較例2、3のゴム補強コードは、実施例と比べて耐疲労性(チューブ疲労強さ、GY法)にも劣っており、耐久性の低いコードであった。
実施例1、比較例1〜3より、150℃30分間の乾熱処理後の2.34cN/dtex応力時の伸度が低いゴム補強コードを得るには、実施例の如く、150℃30分間の乾熱処理後の4.68cN/dtex応力時の伸度が低いポリアミド56繊維からなることが重要であることが分かる。比較例1〜3を比較すると分かるように、コードの製造工程におけるストレッチ応力を高める手段によって、2.34cN/dtex応力時の伸度が異なるゴム補強コードを形成したとしても、150℃30分間の乾熱処理後の2.34cN/dtex応力時の伸度は殆ど変わらない。
(比較例4、実施例2〜6)
実施例1において、ロール速度を変更し、引取速度、延伸倍率を変更した以外は実施例1と同様にして比較例4、実施例2〜6のポリアミド56繊維を製造した。このとき得られるポリアミド56繊維が1400デシテックス−200フィラメントとなるように吐出量を調整した。比較例4、実施例2〜6の各ロール速度を下記に示す。比較例4、実施例2〜6で得られたポリアミド56繊維を用い、実施例1と同様にしてゴム補強コード、タイヤを作製し、その特性を評価した。結果を表2に示す。
比較例4
・第1ロール(引取ロール)速度:24m/分
・第2ロール速度:24.5m/分
・第3ロール速度:93m/分
・第4ロール速度:111.6m/分
・第5ロール(最終加熱ロール)速度:156.3m/分
・最終ロール(リラックスロール)速度:143.8m/分
・巻取速度:142.3m/分
・総合延伸倍率:5.93倍(第1〜2ロール間倍率r:1.02倍、第2〜3ロール間倍率r:3.8倍、第3〜4ロール間倍率r:1.2倍、第4〜5ロール間倍率r:1.4、第5〜6ロール間リラックス倍率r:0.92倍)
・延伸温度100〜245℃での延伸倍率:1.68倍。
実施例2
・第1ロール(引取ロール)速度:400m/分
・第2ロール速度:408m/分
・第3ロール速度:1281m/分
・第4ロール速度:1537m/分
・第5ロール(最終加熱ロール)速度:2152m/分
・最終ロール(リラックスロール)速度:1980m/分
・巻取速度:1960m/分
・総合延伸倍率:4.9倍(第1〜2ロール間倍率r:1.02倍、第2〜3ロール間倍率r:3.14倍、第3〜4ロール間倍率r:1.2倍、第4〜5ロール間倍率r:1.4、第5〜6ロール間リラックス倍率r:0.92倍)
・延伸温度100〜245℃での延伸倍率:1.68倍。
実施例3
・第1ロール(引取ロール)速度:1500m/分
・第2ロール速度:1530m/分
・第3ロール速度:2647m/分
・第4ロール速度:3176m/分
・第5ロール(最終加熱ロール)速度:4447m/分
・最終ロール(リラックスロール)速度:4091m/分
・巻取速度:4050m/分
・総合延伸倍率:2.7倍(第1〜2ロール間倍率r:1.02倍、第2〜3ロール間倍率r:1.73倍、第3〜4ロール間倍率r:1.2倍、第4〜5ロール間倍率r:1.4、第5〜6ロール間リラックス倍率r:0.92倍)
・延伸温度100〜245℃での延伸倍率:1.68倍。
実施例4
・第1ロール(引取ロール)速度:2500m/分
・第2ロール速度:2550m/分
・第3ロール速度:3104m/分
・第4ロール速度:3725m/分
・第5ロール(最終加熱ロール)速度:5215m/分
・最終ロール(リラックスロール)速度:4798m/分
・巻取速度:4750m/分
・総合延伸倍率:1.9倍(第1〜2ロール間倍率r:1.02倍、第2〜3ロール間倍率r:1.22倍、第3〜4ロール間倍率r:1.2倍、第4〜5ロール間倍率r:1.4、第5〜6ロール間リラックス倍率r:0.92倍)
・延伸温度100〜245℃での延伸倍率:1.68倍。
実施例5
・第1ロール(引取ロール)速度:3500m/分
・第2ロール速度:3570m/分
・第3ロール速度:3743m/分
・第4ロール速度:4117m/分
・第5ロール(最終加熱ロール)速度:5764m/分
・最終ロール(リラックスロール)速度:5303m/分
・巻取速度:5250m/分
・総合延伸倍率:1.5倍(第1〜2ロール間倍率r:1.02倍、第2〜3ロール間倍率r:1.1倍、第3〜4ロール間倍率r:1.1倍、第4〜5ロール間倍率r:1.4、第5〜6ロール間リラックス倍率r:0.92倍)
・延伸温度100〜245℃での延伸倍率:1.54倍。
実施例6
・第1ロール(引取ロール)速度:4500m/分
・第2ロール速度:4590m/分
・第3ロール速度:4866m/分
・第4ロール速度:5352m/分
・第5ロール(最終加熱ロール)速度:6423m/分
・最終ロール(リラックスロール)速度:5909m/分
・巻取速度:5850m/分
・総合延伸倍率:1.3倍(第1〜2ロール間倍率r:1.02倍、第2〜3ロール間倍率r:1.06倍、第3〜4ロール間倍率r:1.1倍、第4〜5ロール間倍率r:1.2、第5〜6ロール間リラックス倍率r:0.92倍)
・延伸温度100〜245℃での延伸倍率:1.32倍。
Figure 0004831027
実施例1〜6、比較例4を比較すると分かるように、本発明にて好ましい製造方法を採用することによって得られたポリアミド56繊維は、150℃30分間の乾熱処理後の4.68cN/dtex応力時の伸度が低いことが分かる。そして該繊維からなるゴム補強コードは、乾熱処理後の2.34cN/dtex応力時の伸度が低いため、ゴム中に埋め込まれて加硫工程、ドラム走行などで熱に晒された後であっても、外力によって変形し難いコードであり、かつ乾収が低いことで十分なゴム接着性が発現する。よってこれらの相乗効果により空気充填後、ドラム走行後のタイヤの寸法増加率が小さい、優れた補強ゴムが得られることが分かる。
すなわちポリアミド56繊維の製造工程において、引取速度を0.4km/分以上とすることで、紡糸線上での吸湿が抑えられ、延伸工程にて非晶鎖を配向させ易くなると共に、紡糸応力によって未延伸糸中に予め微結晶が適度に形成され、該微結晶が核となって配向結晶化が促進されるため、配向非晶の拘束性が高い繊維が得られたものと考えられる。よって引取速度が高いほど、150℃30分間の乾熱処理後の4.68cN/dtex応力時の伸度が低い繊維となった。
一方で引取速度を4km/分以下とすることで、製造工程通過性が高まるとともに、強度にも優れるポリアミド56繊維が得られた。すなわち本発明にてより好ましい引取速度の条件を採用することにより、150℃30分間の乾熱処理後の4.68cN/dtex応力時の伸度、強度にバランス良く優れた繊維となった。
そして実施例1のゴム補強コードは、150℃30分間の乾熱処理後の2.34cN/dtex応力時の伸度、強度、ゴム接着性にバランス良く優れていた効果によって、実施例2〜6のゴム補強コードと比較して、耐疲労性にも優れるゴム補強コードであった。
なお比較例4の繊維は、冷却風にて冷却固化された効果により、比較例1と比べると150℃30分間の乾熱処理後の4.68cN/dtex応力時の伸度は低いものであったが、やはり不十分なものであった。このため比較例4のゴム補強コードの150℃30分間の乾熱処理後の2.34cN/dtex応力時の伸度は高く、さらに乾収が高くゴム接着性にも劣るため、実施例と比べると、空気充填後、およびドラム走向後のタイヤの寸法増加率が大きいものであった。また耐疲労性にも劣るコードであった。
(実施例7、比較例5)
実施例1において、ロール速度を変更し、各ロール間での延伸倍率を変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例7、比較例5のポリアミド56繊維を得た。そして該繊維を用いて実施例1と同様にしてゴム補強コードおよびタイヤを製造した。実施例7、比較例5のロール速度条件を下記する。実施例7、比較例5の結果を実施例1と比較して表3に示す。
Figure 0004831027
実施例7
・第1ロール(引取ロール)速度:1000m/分
・第2ロール速度:1020m/分
・第3ロール速度:2705m/分
・第4ロール速度:3246m/分
・第5ロール(最終加熱ロール)速度:3733m/分
・最終ロール(リラックスロール)速度:3434m/分
・巻取速度:3400m/分
・総合延伸倍率:3.4倍(第1〜2ロール間倍率r:1.02倍、第2〜3ロール間倍率r:2.65倍、第3〜4ロール間倍率r:1.2倍、第4〜5ロール間倍率r:1.15、第5〜6ロール間リラックス倍率r:0.92倍)
・延伸温度100〜245℃での延伸倍率:1.38倍。
比較例5
・第1ロール(引取ロール)速度:1000m/分
・第2ロール速度:1020m/分
・第3ロール速度:3232m/分
・第4ロール速度:3555m/分
・第5ロール(最終加熱ロール)速度:3733m/分
・最終ロール(リラックスロール)速度:3434m/分
・巻取速度:3400m/分
・総合延伸倍率:3.4倍(第1〜2ロール間倍率r:1.02倍、第2〜3ロール間倍率r:3.17倍、第3〜4ロール間倍率r:1.1倍、第4〜5ロール間倍率r:1.05、第5〜6ロール間リラックス倍率r:0.92倍)。
・延伸温度100〜245℃での延伸倍率:1.16倍
実施例1、7、比較例5の結果から分かるように、本発明にて好ましい製造方法で得られたポリアミド56繊維は、150℃30分間の乾熱処理後の4.68cN/dtex応力時の伸度が低いことが分かる。そして該繊維からなるゴム補強コードは、150℃30分間の乾熱処理後の2.34cN/dtex応力時の伸度が低いためゴム中に埋め込まれて加硫工程、ドラム走行などで熱に晒されてた後であっても、外力によって変形し難いコードであることに加え、乾収が低いことで十分なゴム接着性が発現する。これらの相乗効果によって、実施例1のゴム補強コードは、空気充填後のタイヤの寸法増加率、およびドラム走向後のタイヤの寸法増加率が最も小さい、すなわち補強効果の高いゴム補強コードであった。また同時に実施例1のゴム補強コードは耐疲労性にも優れていた。
延伸温度100〜245℃で加熱されたポリアミド56繊維は、それまでに吸湿していた水が繊維外へ効率的に排除されると共に、非晶鎖が配向緩和を起こさない程度の適度な熱運動性を有している。よって該延伸温度において延伸倍率1.3倍以上で延伸されると、非晶鎖に延伸応力が均一に伝わり、非晶鎖が均一に配向され、配向結晶化が促進された効果と考えられる。
(実施例8、9、比較例6、7)
実施例1において、最高熱処理温度を変更した以外は実施例1と同様にして、実施例8、9、比較例6、7のポリアミド56繊維を得た。しかしながら比較例7では最終加熱ロールにてポリアミド56繊維が融着して糸切れが多発したため、繊維を製造することができなかった。そして実施例8、9、比較例6のポリアミド56繊維を用い、実施例1と同様にしてゴム補強コードを形成し、該ゴム補強コードを用いてタイヤを作製した。実施例8、9、比較例6、7の最高熱処理温度を下記する。また実施例8、9、比較例6、7の結果を、実施例1と比較して表4に示した。
高熱処理温度
・実施例8 220℃
・実施例9 240℃
・比較例6 200℃
・比較例7 255℃
Figure 0004831027
実施例1、8、9、比較例6、7を比較すると分かるように、最高熱処理温度が210〜250℃であることにより、150℃30分間の乾熱処理後の4.68cN/dtex応力時の伸度が低く、高強度であるポリアミド56繊維を、工程通過性良く得ることができる。最高熱処理温度が該範囲であることにより、繊維中で配向非晶が配向緩和せずに効率的に結晶化され、該結晶によって非晶鎖の拘束性が高まった効果と考えられる。
そして該繊維からなるゴム補強コードは、150℃30分間の乾熱処理後の2.34cN/dtex応力時の伸度が低いためゴム中に埋め込まれ、加硫工程、ドラム走行などで熱に晒された後であっても外力によって変形し難いことに加え、乾収が低いことで十分なゴム接着性が発現する。そしてこれらの相乗効果によって、実施例1のゴム補強コードは、タイヤの寸法増加率が最も小さい、すなわち補強効果の高いゴム補強コードであった。さらに、150℃30分間の乾熱処理後の2.34cN/dtex応力時の伸度、ゴム接着性、強度にバランス良く優れるため、耐疲労性にも優れるゴム補強コードであった。
(実施例10、11、比較例8、9)
実施例1において、リラックス倍率を変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例10、11、比較例8、9のポリアミド56繊維を得た。しかしながら比較例9では第5ロール(最終加熱ロール)と第6ロール(リラックスロール)との間でポリアミド56繊維が弛んでしまい、糸揺れが激しく糸切れが多発したため、繊維を製造することができなかった。そして実施例10、11、比較例8のポリアミド56繊維を用い、実施例1と同様にしてゴム補強コードを形成し、該ゴム補強コードを用いてタイヤを作製した。実施例10、11、比較例8、9のリラックス倍率を下記する。また実施例10、11、比較例8、9の結果を、実施例1と比較して表5に示した。
リラックス倍率
・実施例10 0.99
・実施例11 0.95
・比較例8 0.87
・比較例9 0.82
Figure 0004831027
実施例1、10、11、比較例8、9を比較すると分かるように、リラックス倍率が0.95以下、すなわち高リラックスを施すことで、延伸工程で非晶鎖に加わった不均一な歪みが平均化されて非晶鎖が安定化するため、繊維の乾収が低くなり、150℃30分間の乾熱処理後の4.68cN/dtex応力時の伸度が低いポリアミド56繊維が得られることが分かる。また一方で、リラックス倍率が0.85以上であることにより、非晶鎖の配向緩和を起こさせることが無く、高強度なポリアミド56繊維を工程通過性良く得ることができる。
そして実施例1、10、11の繊維からなるゴム補強コードは、150℃30分間の乾熱処理後の2.34cN/dtex応力時の伸度が低いためゴム中に埋め込まれ、加硫工程、ドラム走行などで熱に晒された後であっても外力によって変形し難いことに加え、乾収が低いことで十分なゴム接着性が発現した。そして特に実施例1、実施例11のゴム補強コードは、これらの相乗効果によって、空気充填後のタイヤの寸法増加率、およびドラム走向後のタイヤの寸法増加率が小さい、すなわち補強効果に優れるゴム補強コードであった。さらに、150℃30分間の乾熱処理後の2.34cN/dtex応力時の伸度、ゴム接着性、強度にバランス良く優れるため、耐疲労性にも優れるゴム補強コードであった。
(比較例10)
実施例2において、口金から吐出された未延伸繊維を引取った後、延伸を施さずに400m/分で巻取り、未延伸繊維のパッケージを得た。該未延伸糸パッケージを14日間、25℃RH55%の温湿度環境下にて保管して調湿し、未延伸糸を吸湿させた。その後、未延伸糸パッケージより繊維を引き出し、実施例2と同じ延伸温度、最終熱処理温度、リラックス倍率の条件にて、下記のロール速度で延伸を行った。実施例2と比較すると工程通過性が悪く、糸切れが頻発したが何とかサンプリングすることができた。そして比較例10の繊維を用いて、実施例2と同様にしてゴム補強コード、タイヤを作製した。比較例10の結果を、実施例2と比較して表6に示した。比較例10において、未延伸糸に延伸を施す際のロール速度を下記に示す。
比較例10
・第1ロール速度:100m/分
・第2ロール速度:102m/分
・第3ロール速度:320m/分
・第4ロール速度:384m/分
・第5ロール速度:538m/分
・最終ロール速度:495m/分
・巻取速度:490m/分
Figure 0004831027
比較例10の繊維は、実施例2と比較して、乾収が高く、150℃30分間の乾熱処理後の4.68cN/dtex応力時の伸度が高く、強度も低い繊維であった。よって比較例10のコードは、150℃30分間の乾熱処理後の2.34cN/dtex応力時の伸度が20%以上であり、実施例2に劣るものであった。また乾収も高かったため、ゴム接着性が十分に発現しなかった。このため比較例2のタイヤは、空気充填後のタイヤの寸法増加率、ドラム走行後のタイヤの寸法変化が大きいものであった。また、実施例2のゴム補強コードと比べ、150℃30分間の乾熱処理後の2.34cN/dtex応力時の伸度、ゴム接着性、強度の全てが劣るため、耐疲労性にも劣るコードであった。
実施例2、比較例10を比較すると分かるように、直接紡糸延伸法を採用することにより、150℃30分間の乾熱処理後の4.68cN/dtex応力時の伸度が低く、乾収が低く、強度の高いポリアミド56繊維を工程通過性良く得られることが分かる。そしてこれにより優れた特性を有するゴム補強コード、補強ゴムが得られた。これは繊維を一端巻き取らずに延伸することにより、繊維の吸湿を抑えた状態で延伸に供することができるため、延伸工程で配向結晶化を促進できた効果と考えられる。
(実施例12)
実施例1において、製造例6で得たポリアミド56樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリアミド56繊維、および該繊維からなるゴム補強コード、ならびにタイヤを作製した。実施例12の結果を実施例1と比較して表7に示す。表7から分かるように、本発明のポリアミド56繊維の老防剤の含有量が好ましい範囲であることにより、耐熱強力保持率の高い繊維となった。そして該繊維からなるゴム補強コードの耐熱強力保持率も高いものとなり、耐疲労性に優れたゴム補強コードが得られた。
Figure 0004831027
実施例1、比較例1〜3のゴム補強コードについて、2.34cN/dtex応力時の伸度と乾収の関係を比較した図である。 1軸混練機を備えた直接紡糸延伸装置の模式図である。 比較例1の繊維を製造するのに用いた装置の模式図である。
符号の説明
1:ホッパー
2:1軸エクストルーダー
3:ポリマー配管
4:ギヤポンプ
5:スピンブロック
6:紡糸パック
7:紡糸口金
8:ユニフロー冷却装置
9:糸条
10:給油装置
11:第1ロール
12:第2ロール
13:第3ロール
14:第4ロール
15:第5ロール
16:第6ロール
17:交絡ノズル
18:巻取機
19:チーズパッケージ
20:水冷バス
21:冷却水
22:ガイドロール1
23:ガイドロール2
24:ガイドロール3
25:スチーム発生装置
26:乾熱炉1
27:乾熱炉2

Claims (7)

  1. 150℃30分間の乾熱処理後の4.68cN/dtex応力時の伸度が12〜20%であることを特徴とするポリアミド56繊維。
  2. 強度が6〜12cN/dtexであることを特徴とする請求項1に記載のポリアミド56繊維。
  3. 請求項1または2に記載のポリアミド56繊維からなるゴム補強コード。
  4. 150℃30分間の乾熱処理後の2.34cN/dtex応力時の伸度が11〜19%である、請求項3に記載のゴム補強コード。
  5. 乾収が1〜10%である、請求項3または4に記載のゴム補強コード。
  6. 請求項3〜5のいずれかに記載のゴム補強コードを含んでなる補強ゴム。
  7. 口金から吐出されたポリアミド56繊維を冷却風にて冷却固化させた後、非含水油剤を付着させ、乾式の熱源にて延伸、熱処理、リラックス処理を施した後、巻き取る、直接紡糸延伸法によるポリアミド56繊維の製造方法において、引取速度が0.4〜4km/分であり、延伸温度100〜245℃で施す延伸倍率が、1.3倍以上であり、最高熱処理温度が210〜250℃であり、リラックス倍率が0.85〜0.95であることを特徴とする、ポリアミド56繊維の製造方法。
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