以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、実施の形態において、同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は重複するので省略する。
(実施の形態1)
図1に示すように本実施の形態のマルチキャリア受信装置100は、ここでは特にOFDM通信を行うものであり、FFT部110と、パイロット/データシンボル分離部120と、チャネル推定値算出部130と、周波数方向処理部140と、時間方向処理部150と、データシンボル復調部160と、誤り訂正復号部170とを有する。
FFT部110は、アンテナを介して受信された、例えば図17に示したようなパイロットシンボルが時間方向および周波数方向に散らばらされて配置されたフレームに基づくOFDM信号が無線受信部にて無線処理(ダウンコンバート、A/D変換など)された無線処理後の信号が入力され、この無線処理後の信号を時間信号から周波数信号へ変換し、受信フレームとして出力する。
パイロット/データシンボル分離部120は、受信フレームを入力し、パイロットシンボルとそれ以外のデータシンボルとに分離し、分離されたパイロットシンボルをチャネル推定値算出部130に出力するとともに、データシンボルをデータシンボル復調部160に出力する。
チャネル推定値算出部130は、パイロット/データシンボル分離部120からの、パイロットシンボルごとにチャネル推定値を算出し、算出されたチャネル推定値を周波数方向処理部140に出力する。
周波数方向処理部140は、チャネル推定値算出部130からの、パイロットシンボル(フレーム中の周波数および時間により特定される)ごとのチャネル推定値を入力し、雑音成分が抑圧され、且つ、周波数方向に補間されたチャネル推定値を時間方向処理部150に出力する。すなわち、周波数方向処理部140から出力されるチャネル推定値には、全サブキャリアに関するものが含まれている。ただし、パイロットシンボルが時分割多重されている場合には、OFDMシンボル全体にパイロットシンボルが重畳されているので、周波数方向に補間する必要はない。
詳細には、周波数方向処理部140は、図2に示すように遅延プロファイル生成部141と、遅延プロファイル整形部142と、DFT部143と、仮想波形生成/連結部144と、雑音抑圧/周波数方向補間部145とを有する。
遅延プロファイル生成部141は、同一のOFDMシンボルに配置(つまり、同一OFDMシンボルでサブキャリア(周波数)が異なる)されたパイロットシンボルごとのチャネル推定値を周波数領域から時間軸領域へ変換することにより、遅延プロファイル(以下、観測遅延プロファイルと呼ぶ)を生成する。
具体的には、遅延プロファイル生成部141は、系列長調整部1411と、IDFT部1412とを有する。
系列長調整部1411は、同一のOFDMシンボルに配置されたパイロットシンボルごとのチャネル推定値サンプル、つまり周波数方向チャネル推定値サンプルの後に0値のデータ列を挿入(0パディング)することにより、全データ長が遅延プロファイルサンプル数になるように系列長を調整する(図3参照)。ここで、周波数方向チャネル推定値サンプルから構成されるデータ列の構成データ数NEと、その後に挿入される0値の挿入データ列の構成データ数NPとの和である遅延プロファイルサンプル数は、遅延プロファイル生成部141にて生成される観測遅延プロファイルの分解能(サンプリングレート)を決定する。具体的には、例えば図18のように3サブキャリア間隔にパイロットが配置されている場合、隣接サブキャリア間隔を15kHz、遅延プロファイルサンプル数を1024とすると、観測遅延プロファイルの分解能は、遅延プロファイルサンプル数/総遅延プロファイル時間長=1024/(1/(3×15kHz))=46.08MHzとなる。ここで、観測遅延プロファイルのサンプリングレートがFFT部110における受信FFTのサンプリングレートの整数倍になるように遅延プロファイルサンプル数を設定することで、パス位置(すなわち、観測遅延プロファイルにおける、振幅が所定のしきい値以上で、且つ、1次微分および2次微分が0であるピーク位置)を観測遅延プロファイルのサンプル上にずれなく配置することが可能になり、遅延プロファイル生成部141、遅延プロファイル整形部142、およびDFT部143に亘って行われる仮想波形生成の精度を向上させることができる。
IDFT部1412は、系列長NE個のチャネル推定値サンプルと、NP個の0値から成る挿入データ列とから成る周波数方向の系列に対し、逆離散フーリエ変換を施すことで時間領域に変換して観測遅延プロファイルを生成する(図4参照)。なお、系列長調整部1411の処理の結果としてNEとNPとの和が更に2のべき乗(例えば、1024)となるときには、IDFT部1412は高速逆フーリエ変換(IFFT)をすることができる。
遅延プロファイル整形部142は、後段のDFT部143でDFTする結果が、有効サブキャリアが表す有効帯域よりも外側の帯域までチャネルの周波数成分値として値を持つことになるように、遅延プロファイル生成部141にて生成された観測遅延プロファイルを整形する。
具体的には、遅延プロファイル整形部142は、パス位置選択部1421を有する。
パス位置選択部1421は、遅延プロファイル生成部141にて生成された観測遅延プロファイルから、所定のしきい値以上のピーク点のタイミング(つまり、パス位置)およびそのピーク点における複素振幅値を検出し、例えばその検出遅延プロファイル(すなわち、パス位置のサンプルのみにその複素振幅が値として存在し、パス位置以外のサンプルは「0」値である系列)をDFT部143に出力する。
DFT部143は、パス位置選択部1421から出力された系列をDFTすることにより、有効サブキャリアが表す有効帯域よりも外側の帯域まで値を持つ周波数方向のチャネル推定値を取得する。ここでは、有効帯域以外の帯域も含めて、OFDMに用いられる全帯域以上の帯域まで値を持つ周波数方向のチャネル推定値を得ることができる。詳細については後述する。
仮想波形生成/連結部144は、チャネル推定値算出部130が出力したNP個の有効帯域内チャネル推定値と、DFT部143が出力したチャネル推定値のうち、有効帯域外に相当する部分(「仮想波形」と呼ぶことがある)を連結することにより、「変形チャネル推定値」を形成する。このときチャネル推定値算出部130が出力した有効帯域内チャネル推定値とDFT部143が出力した有効帯域外チャネル推定値は連結境界が不連続になる可能性があるため、仮想波形生成/連結部144は、仮想波形を調整する。具体的には、有効帯域内チャネル推定値の両端各々の不連続点における有効帯域内チャネル推定値と有効帯域外チャネル推定値との差分を検出し、各々の差分を有効帯域内チャネル推定値両端各々に連結する有効帯域外チャネル推定値波形(つまり、仮想波形)全体に加算することにより、有効帯域内チャネル推定値両端と有効帯域外のチャネル推定値との不連続を解消する。その後、仮想波形生成/連結部144は、差分を加算した有効帯域外チャネル推定値(つまり、仮想波形)に対して窓関数を乗算する。
雑音抑圧/周波数方向補間部145は、仮想波形生成/連結部144から出力される有効帯域外も含む周波数方向のチャネル推定値を用いて非特許文献1の記述と同様の雑音抑圧と周波数方向補間処理を行う。具体的には、雑音抑圧/周波数方向補間部145は、IDFT部1451と、ローパスフィルタ部1452と、0パディング部1453と、DFT(FFT)部1454とを有する。IDFT部1451は、「変形チャネル推定値」を逆フーリエ変換することにより、遅延プロファイルを形成する。ローパスフィルタ部1452は、形成された遅延プロファイルから高周波数成分を除去し、雑音を抑圧する。簡単には形成された遅延プロファイルにおけるパス位置に相当する部分以外を「0」値に置き換える。0パディング部1453は、ローパスフィルタ部1452からの雑音成分が抑圧された系列の末尾に「0」値を付加する、すなわち系列長を調整する。この「0」値を付加することにより、DFT後のチャネル推定値は、周波数方向補間がなされたものとなる。DFT(FFT)部1454は、0パディング部1453にてパス位置に相当する部分以外が「0」値に置き換えられた遅延プロファイルをフーリエ変換することにより、雑音が抑圧されたチャネル推定値を取得する。なお、0パディング部1453において、ローパスフィルタ部1452からの雑音成分が抑圧された系列の末尾に「0」値を付加すると記述したが、非特許文献1の記述にあるようにローパスフィルタ部1452からの雑音成分が抑圧された系列の末尾数サンプルを「0」値付加後の系列の末尾に移し換えてもよい。
時間方向処理部150は、周波数方向処理部140からのチャネル推定値が時間方向に離散しているため、その間の時間の各シンボルにおけるチャネル推定値を補間する。補間方法としては例えば線形補間等がある。そして、時間方向処理部150は、フレームの各シンボルにおけるチャネル推定値をデータシンボル復調部160に出力する。
データシンボル復調部160は、パイロット/データシンボル分離部120からのデータシンボルを、時間方向処理部150からのチャネル推定値を用いて復調する。誤り訂正復号部170は、復調後の信号を誤り訂正復号する。
次に上記構成を有するマルチキャリア受信装置100の動作について図1乃至図4を参照して説明する。なお、図4では、チャネル推定値サンプル数NE=200、有効サブキャリア数=600、有効帯域=9MHz、受信FFTポイント数1024を想定した場合の波形例が示されている。
FFT部110から出力される受信フレームは、パイロット/データシンボル分離部120でパイロットシンボルとそれ以外のデータシンボルとに分離され、こうして得られたパイロットシンボルは、チャネル推定値算出部130に入力される。
チャネル推定値算出部130では、パイロットシンボルごとにチャネル推定値が算出され、算出されたチャネル推定値は周波数方向処理部140に出力される。
周波数方向処理部140においては、系列長調整部1411が、同一のOFDMシンボルに配置されたパイロットシンボルごとのチャネル推定値サンプル、つまり周波数方向チャネル推定値サンプルの後に「0」値のデータ列を挿入(0パディング)することにより、全データ長が遅延プロファイルサンプル数になるように系列長を調整する(図3および図4(a)参照)。ここでは、周波数方向チャネル推定値サンプルから構成されるデータ列の構成データ数NEが200、その後に挿入される「0」値の挿入データ列の構成データ数NPが824である場合が示されている。
IDFT部1412では、系列長調整部1411にて形成された、系列長NE個のチャネル推定値サンプルと、NP個の「0」値から成る挿入データ列とから成る周波数方向の系列に対し、逆離散フーリエ変換を施すことで時間領域に変換して観測遅延プロファイルを生成する(図3および図4(b)参照)。なお、ここでは、NEとNPとの和が更に2のべき乗(1024)であるので、IDFT部1412は高速逆フーリエ変換(IFFT)をすることができる。
遅延プロファイル整形部142では、後段のDFT部143でDFTした結果が、有効サブキャリアが表す有効帯域よりも外側の帯域までチャネルの周波数成分値として値を持つことになるように、遅延プロファイル生成部141にて生成された観測遅延プロファイルが整形される。具体的には、パス位置選択部1421にて、観測遅延プロファイルから、所定のしきい値以上のピーク点のタイミング(つまり、パス位置)およびそのピーク点における複素振幅値が検出され、パス位置のサンプルのみにその複素振幅が値として存在しパス位置以外のサンプルは「0」値である系列が、整形後の観測遅延プロファイルとして出力される(図4(c)参照)。
DFT部143では、パス位置選択部1421から出力された系列がDFTされることにより、有効サブキャリアが表す有効帯域よりも外側の帯域まで値を持つ周波数方向のチャネル推定値が得られる(図4(d)参照)。すなわち、遅延プロファイル生成部141、遅延プロファイル整形部142、およびDFT部143に亘る一連の処理により、有効サブキャリアが表す有効帯域よりも外側の帯域まで値を持つチャネル推定値が得られる。ここでは、有効帯域以外の帯域も含めて、OFDMに用いられる全帯域以上の帯域まで値を持つ周波数方向のチャネル推定値を得ることができる。このDFT部143が出力する周波数方向チャネル推定値が表現可能な帯域幅Wに関する法則については、実施の形態3において詳述する。
仮想波形生成/連結部144には、遅延プロファイル生成部141に入力される有効帯域内のチャネル推定値およびDFT部143にて取得されたチャネル推定値が入力される。仮想波形生成/連結部144では、遅延プロファイル生成部141に入力される有効帯域内のチャネル推定値と、DFT部143にて取得されたチャネル推定値のうち前記有効帯域外に相当する部分とが連結される。すなわち、仮想波形生成/連結部144では、遅延プロファイル生成部141に入力される有効帯域内のチャネル推定値と、DFT部143にて取得された変形チャネル推定値のうち前記有効帯域外に相当する部分とを用いて、一連の波形となるように、つまり連結境界が滑らかで且つ連続になるように整形する。さらに、仮想波形生成/連結部144では、形成された一連の系列(上記一連の波形)のうち有効帯域外に相当する部分に、窓関数を乗算することにより、「変形チャネル推定値」が形成される(図4(e)参照)。以上のように「変形チャネル推定値」を形成する際に用いた、DFT部143にて取得されたチャネル推定値のうち前記有効帯域外に相当する部分は、有効帯域内波形の全周波数成分が反映された形状となっている。そのため「変形チャネル推定値」も、有効帯域内の信号波形の全周波数成分が反映されたものとなっている。すなわち、本実施の形態の補外方法は、有効帯域内の様々な周波数(時間領域で言えば、様々なパス遅延時間)成分を十分反映させたものになっている。因みに、上述の非特許文献2では、有効帯域の端部に引いた接線を用いて有効帯域外の部分を補外しているので、有効帯域内の様々な周波数(時間領域で言えば、様々なパス遅延時間)成分を反映できていない。
ここで、チャネル推定値算出部130が出力した有効帯域内チャネル推定値とIDFT部1412が出力した帯域外チャネル推定値は、図5(a)に示すように、連結境界が不連続になる可能性がある。そこで仮想波形生成/連結部144は、仮想波形を調整する。具体的には、有効帯域内チャネル推定値の両端各々の不連続点における有効帯域内チャネル推定値と有効帯域外チャネル推定値との差分を検出し、各々の差分を有効帯域内チャネル推定値両端各々に連結する有効帯域外チャネル推定値波形(つまり、仮想波形)全体に加算することにより、有効帯域内チャネル推定値両端と有効帯域外のチャネル推定値との不連続を解消する(図5(b)参照)。その後、仮想波形生成/連結部144は、差分を加算した有効帯域外チャネル推定値(つまり、仮想波形)に対して窓関数を乗算する(図5(c)参照)。こうして最終的な、遅延プロファイル生成部141に入力される有効帯域内のチャネル推定値と、DFT部143にて取得された変形チャネル推定値のうち前記有効帯域外に相当する部分とが連結された、一連の系列が得られる。なお、仮想波形生成/連結部144において、仮想波形に乗算する窓関数の窓幅(例えばハニング窓では振幅が1から0になるまでのサンプル数)を仮想波形サンプル数/2以下にすることで、後段の雑音抑圧/周波数方向補間部145で扱う遅延プロファイルサンプル数や、IDFT部1451のポイント数を遅延プロファイル生成部141か出力する遅延プロファイルサンプル数以下とすることも可能である。その場合、DFT部1454のポイント数も小さくなることは明らかである。
こうして得られた「変形チャネル推定値」が雑音抑圧/周波数方向補間部145のIDFT部1451にて逆フーリエ変換されることにより、遅延プロファイルが得られる。上述のとおり、「変形チャネル推定値」は有効帯域内の信号波形の全周波数成分が反映されたものとなっているため、この遅延プロファイルの各ピーク位置(つまり、パス位置)を中心とするsinc関数のサイドローブは十分抑圧されたものとなっている。すなわち、各ピーク位置以外の部分には、ほぼ雑音成分のみが存在する状態になっている。その結果、ローパスフィルタ部1452にて、IDFT部1451で得られた遅延プロファイルにおける、各パス位置以外の部分を0値に置き換えることにより、チャネル推定値を求める際に必要な部分まで0パディングすることを防止しつつ、雑音成分を精度良く除去することができる。よって、得られるチャネル推定値も精度の良いものとなり、このチャネル推定値を用いる復調の精度も向上することから、通信品質を向上することが可能となる。
このように本実施の形態によれば、マルチキャリア受信装置100に、有効帯域内の周波数領域チャネル推定値を逆フーリエ変換することにより観測遅延プロファイルを形成する遅延プロファイル生成部141と、形成された遅延プロファイルからパス位置のみを抽出し、且つ、当該パス位置以外の部分を0値で置き換えることにより、遅延プロファイルを整形する遅延プロファイル整形部142と、整形後の遅延プロファイルをフーリエ変換するDFT部143と、フーリエ変換された後の信号のうち、有効帯域外に相当する部分(仮想波形)と、有効帯域内の周波数領域チャネル推定値とを用いて連続する一連の系列を形成し、当該一連の系列をチャネル推定値として雑音抑圧/周波数方向補間部145に出力する仮想波形生成/連結部144と、を設けた。
こうすることにより、時間領域における全てのパス成分を考慮した周波数領域の有効帯域外補外を行うことができるので、有効帯域内の様々な周波数(時間領域で言えば、様々なパス遅延時間)成分を十分反映させた仮想波形を生成することができる。そして、この仮想波形が有効帯域外に付加された一連の系列が雑音抑圧/周波数方向補間部145にて逆フーリエ変換された遅延プロファイルにおける各パスは、例えば遅延分散の大きい伝播路においても、時間領域のパス成分であるsinc関数のサイドローブが十分に抑圧されたものとなる。結果として、精度良い雑音抑圧が実現される。なお、本実施の形態では有効帯域外の波形の外挿を、時間領域の遅延プロファイルを整形することにより実現しているが、これに限らず、周波数領域において補間フィルタを使用しても外挿しても良い。この際、一次補間フィルタよりも高次、もしくは精度良い補間フィルタを用いることで非特許文献2に示される方法よりも精度良い仮想波形が生成できることは明らかである。
また遅延プロファイル生成部141は、FFT部110にてなされるフーリエ変換処理のサンプリングレートの整数倍のサンプリングレートで観測遅延プロファイルを形成する。
こうすることにより、パス位置を遅延プロファイルのサンプルタイミング上に配置することが可能になり、仮想波形生成による雑音抑圧精度が向上する。
(実施の形態2)
実施の形態2は、遅延プロファイル上に存在するパス間干渉をキャンセルすることにより、精度良い有効帯域外波形(仮想波形)を生成することを特徴とする。これによれば、精度良い有効帯域外波形を生成するので、時間領域のパス成分であるsinc関数のサイドローブを更に抑圧することが可能となり、精度良い雑音抑圧を行うことができる。
まず遅延プロファイル上に存在するパス間干渉に関して図6を用いて説明する。
パス位置(τ0、τ1)が近接しているような伝播環境の場合、観測遅延プロファイルにおける、例えばパス位置τ0の成分には、実線両端矢印分の他パス成分(同図では、パス位置τ1をピークとするパスのτ0における成分)が余分に含まれている。
そこで、余分な他パス成分が足された状態で検出されたパス位置(同図では、τ0)の成分から、他パス成分を減算する。ここで減算する他パス成分として、次の復素振幅を近似的に求める。すなわち、他パス位置(同図では、パス位置τ1)の複素振幅と基本インパルス成分レプリカとを乗算した系列における、パス位置(同図では、τ0)の複素振幅(破線矢印間)を、上記減算する他パス成分として近似的に求める。
この他パス位置の複素振幅と基本インパルス成分レプリカとを乗算した系列におけるパス位置(同図では、τ0)の複素振幅は余分に足された成分(すなわちτ1のパスからの干渉成分)と見なせるので、パス位置τ0の成分から他パス成分を減算することにより、他パスからの干渉がキャンセルされた遅延プロファイルを形成することができる。
図7は、実施の形態2の周波数方向処理部140の構成を示すブロック図である。実施の形態2の周波数方向処理部140は実施の形態1と遅延プロファイル整形部142を除いて同様なので、ここでは遅延プロファイル整形部142のみを説明する。
遅延プロファイル整形部142は、観測遅延プロファイルからパス位置のみを抽出し、当該パス位置におけるパス間干渉を基本インパルスレプリカを用いて除去し、パス位置においてはパス間干渉が除去された複素振幅を、パス位置以外においては0値とすることにより、観測遅延プロファイルを整形する。
具体的には同図に示すように遅延プロファイル整形部142は、パス位置選択部1421の他に、基本インパルス成分レプリカ格納部1422と、パス間干渉キャンセル部1424とを有する。
パス位置選択部1421は、遅延プロファイル生成部141にて生成された観測遅延プロファイルから、所定のしきい値以上のピーク点のタイミング(つまり、パス位置)およびそのピーク点における複素振幅値を検出し、パス間干渉キャンセル部1424に出力する。
パス間干渉キャンセル部1424は、観測遅延プロファイルと、検出遅延プロファイル(又は、パス位置とその複素振幅)と、基本インパルス成分レプリカ格納部1422に格納されている基本インパルス成分レプリカとを用いて、パス間干渉のキャンセル(除去)動作を行う。すなわち、パス間干渉キャンセル部1424は、観測遅延プロファイルからパス位置のみを抽出し、当該パス位置におけるパス間干渉を基本インパルスレプリカを用いて除去した後に、パス位置以外の部分を0値で置き換えることにより、観測遅延プロファイルを整形する。なお、基本インパルス成分レプリカは、図8に例示するようにsinc関数の形状をしている。
ここで基本インパルス成分レプリカ格納部1422に格納する基本インパルス成分レプリカの生成方法を図9に示す。まず基本インパルス成分レプリカは、雑音がない場合の1パス分の遅延プロファイルの形状である必要がある。具体的には、チャネル推定値サンプル数NE個の「1」値から成る系列の後に、遅延プロファイル生成部141と同様に、NP個の「0」値から成る挿入データ列を挿入する。こうして作成された系列をIDFTし、さらにピークの電力が「1」になるように振幅調整を行って基本インパルス成分レプリカを生成する。
次にパス間干渉キャンセル部1424におけるパス間干渉キャンセル動作を図10のフロー図を用いて説明する。
ステップ2001(S2001)では、観測遅延プロファイルのパス位置の複素振幅と基本インパルス成分レプリカとを乗算する。
ステップ2002(S2002)では、ステップ2001の算出結果を、パス位置のインデックス分だけ循環シフトする。
ステップ2003(S2003)では、ステップ2002にて循環シフトされた成分を観測遅延プロファイルから減算し、新たな観測遅延プロファイルとする。
ステップ2004(S2004)では、観測遅延プロファイルのパス位置の複素振幅をパス位置のインデックス分だけシフトする。
ステップ2005(S2005)では、S2004でシフトされた観測遅延プロファイルのパス位置の複素振幅を干渉除去後遅延プロファイルに加算する。なお、1パス目の本ステップの動作前に、干渉除去後遅延プロファイルは全てのサンプルが「0」値になっている。
ステップ2006(S2006)では、ステップ2001〜2005の処理が行われたか終了判定を行う。全てのパスについて行われた場合にはステップ2007(S2007)に進む。
ステップ2007(S2007)では、現在の観測遅延プロファイルにおけるパス位置残留成分の電力が最大のものを検出する。
ステップ2008(S2008)では、S2007で検出したパス位置の複素振幅と基本インパルス成分レプリカを乗算する。
ステップ2009(S2009)では、ステップ2008の算出結果を、パス位置のインデックス分だけ循環シフトする。
ステップ2010(S2010)では、ステップ2009の循環シフトされた成分を観測遅延プロファイルから減算し、新たな観測遅延プロファイルとする。
ステップ2011(S2011)では、観測遅延プロファイルのパス位置の複素振幅をパス位置のインデックス分だけシフトする。
ステップ2012(S2012)では、S2011でシフトされた観測遅延プロファイルのパス位置の複素振幅を干渉除去後遅延プロファイルに加算する。
ステップ2013(S2013)では、S2007〜S2012の処理が規定回数行われたか判定を行い、規定回数行われていれば処理を終了する。こうして、各パスの成分がインパルスで表せる遅延プロファイル、つまりパス位置のサンプルのみにその複素振幅が値として存在し、パス位置以外のサンプルは「0」である系列を生成することができる。なお、規定回数は事前に設定されているものとする。
なお、上述の説明では、観測遅延プロファイルから、パス位置の複素振幅と基本インパルスレプリカを乗算したものを減算し、そのパス位置での観測遅延プロファイルの複素振幅を干渉除去後遅延プロファイルに加算していくように表現したが、観測遅延プロファイルから、パス位置の複素振幅と基本インパルスレプリカを乗算したものを減算したものが負の数になっているときには、干渉除去後遅延プロファイルへの加算も減算になっていると見なせるのは明らかである。
なおここで示したパス間干渉のキャンセル動作は一例であり、例えばパスのピークから離れた成分をパスのピークにおける値と関連付けた上で、パス数分の干渉成分も含めた信号成分連立方程式を作成して、行列方程式を解くような方法で干渉成分を除去してもよい。
このように本実施の形態によれば、マルチキャリア受信装置100の遅延プロファイル整形部142は、観測遅延プロファイルからパス位置のみを抽出し、当該パス位置におけるパス間干渉を基本インパルスレプリカを用いて除去し、パス位置においてはパス間干渉が除去された複素振幅を、パス位置以外においては0値とすることにより、観測遅延プロファイルを整形する。
こうすることにより、sinc関数のサイドローブを抑圧することに相当するパス間干渉除去処理を行っているため、精度良い有効帯域外波形(仮想波形)を生成することができる。そのため、この仮想波形が有効帯域外に付加された一連の系列が雑音抑圧/周波数方向補間部145にて逆フーリエ変換された遅延プロファイルにおける各パスは、実施の形態1の場合に比べて、時間領域のパス成分であるsinc関数のサイドローブが更に抑圧されたものとなる。結果として、更に精度良い雑音抑圧が実現される。なお、本実施の形態の場合、仮想波形生成/連結部144における有効帯域外波形の有効帯域内波形との波形不連続点調整処理は行わなくてもよい。さらに、本実施の形態では有効帯域外の波形の外挿を、時間領域の遅延プロファイルを整形することにより実現しているが、これに限らず、周波数領域において補間フィルタを使用しても外挿しても良い。この際、一次補間フィルタよりも高次、もしくは精度良い補間フィルタを用いることで非特許文献2に示される方法よりも精度良い仮想波形が生成できることは明らかである。
(実施の形態3)
実施の形態1では、「変形チャネル推定値」を形成する際に利用する、DFT部143にて取得されるチャネル推定値が、OFDM信号の全帯域に亘るように、遅延プロファイル整形部にて遅延プロファイルの整形(具体的には、パス位置の選択のみ)を行った。実施の形態3では、「変形チャネル推定値」を形成する際に利用する、DFT部143にて取得されるチャネル推定値が、OFDM信号の全帯域まで亘らないが、有効帯域および有効帯域外の一部まで亘るように、遅延プロファイル整形部にて遅延プロファイルの整形する実施の形態について説明する。
図11に示すように遅延プロファイル整形部142は、パス位置選択部1421の他に、基本インパルス成分レプリカ格納部1422と、畳込み演算部1423とを有する。
遅延プロファイル整形部142は、後段のDFT部143でDFTする結果が、有効サブキャリアが表す有効帯域よりも外側の帯域までチャネルの周波数成分値として値を持つことになるように、遅延プロファイル生成部141にて生成された観測遅延プロファイルを整形する。
具体的には、基本インパルス成分レプリカ格納部1422は、基本インパルス成分レプリカを記憶しており、畳込み演算部1423に出力する。なお、基本インパルス成分レプリカは、図8に例示するようにsinc関数の形状をしている。
ここで「基本インパルス成分レプリカ」の生成方法について説明する。
まず「基本インパルス成分レプリカ」は、仮に1OFDMシンボルに含まれる全ての伝送サブキャリアにパイロットシンボルが多重されており、且つ、雑音がない場合の、1パス分の遅延プロファイルの形状である必要がある。更に「基本インパルス成分レプリカ」は、パス位置選択部1421からの検出遅延プロファイル(すなわち、パス位置のサンプルのみにその複素振幅が値として存在し、パス位置以外のサンプルは「0」である系列)と畳込み演算を行った結果を更にDFTした結果が、有効サブキャリアが表す有効帯域よりも外側の帯域までチャネルの周波数成分値として値を持つような系列でなければならない。
具体的には図12に示すように作成する。まず、周波数方向チャネル推定値サンプル+α(=NE+α)個の「1」値の後に、(NP−α)個の「0」値のデータ列を挿入した系列を形成する。ここで、「1」値の構成データ数と「0」値の構成データ数との和は、観測遅延プロファイルのサンプル数(NE+NP)となる。こうして作成された系列をIDFTし、さらにピークの電力が「1」になるように振幅調整を行うことにより、基本インパルス成分レプリカを生成する。
畳込み演算部1423は、パス位置選択部1421からの検出遅延プロファイルと、基本インパルス成分レプリカ格納部1422に格納されている基本インパルスレプリカの巡回畳込み演算を行う。この巡回畳込み結果をDFT部143にてDFTすることにより、有効サブキャリアが表す有効帯域よりも外側の帯域まで値をもつ周波数方向のチャネル推定値を得ることができる。
以上の構成を有するマルチキャリア受信装置100の動作について主に図13を参照して説明する。なお、図13でも、チャネル推定値サンプル数NE=200、有効サブキャリア数=600、有効帯域=9MHz、受信FFTポイント数1024を想定した場合の波形例が示されている。
周波数方向処理部140においては、系列長調整部1411が、同一のOFDMシンボルに配置されたパイロットシンボルごとのチャネル推定値サンプル、つまり周波数方向チャネル推定値サンプルの後に0値のデータ列を挿入(0パディング)することにより、全データ長が遅延プロファイルサンプル数になるように系列長を調整する(図13(a)参照)。ここでは、周波数方向チャネル推定値サンプルから構成されるデータ列の構成データ数NEが200、その後に挿入される0値の挿入データ列の構成データ数NPが824である場合が示されている。
IDFT部1412では、系列長調整部1411にて形成された、系列長NE個のチャネル推定値サンプルと、NP個の0値から成る挿入データ列とから成る周波数方向の系列に対し、逆離散フーリエ変換を施すことで時間領域に変換して観測遅延プロファイルを生成する(図13(b)参照)。なお、ここでは、NEとNPとの和が更に2のべき乗(1024)であるので、IDFT部1412は高速逆フーリエ変換(IFFT)をすることができる。
遅延プロファイル整形部142では、後段のDFT部143でDFTした結果が、有効サブキャリアが表す有効帯域よりも外側の帯域までチャネルの周波数成分値として値を持つことになるように、遅延プロファイル生成部141にて生成された観測遅延プロファイルが整形される。具体的には、パス位置選択部1421にて、観測遅延プロファイルから、所定のしきい値以上のピーク点のタイミング(つまり、パス位置)およびそのピーク点における複素振幅値が検出され、パス位置のサンプルのみにその複素振幅が値として存在しパス位置以外のサンプルは「0」である系列(図13(c)参照)が畳込み演算部1423に出力される。畳込み演算部1423では、基本インパルス成分レプリカを循環シフトさせながら、基本インパルス成分レプリカとパス位置選択部1421の出力とを各パス位置で順次乗算する、すなわち巡回畳込み演算を行う(図13(d)参照)。つまり、畳込み演算部1423では、各パスの復素振幅値と基本インパルス成分レプリカとが乗算され、各復素振幅値に対応するパス位置で乗算結果が順次重畳されることにより、巡回畳込み演算後の系列(遅延プロファイル)が得られる。
DFT部143では、畳込み演算部1423における畳込み演算結果である系列がDFTされることにより、有効サブキャリアが表す有効帯域よりも外側の帯域まで値を持つ周波数方向のチャネル推定値が得られる(図13(e)参照)。
ここで、DFT部143が出力する周波数方向チャネル推定値が表現可能な帯域幅Wと、基本インパルス成分レプリカの生成パラメータとの関係を図14を参照して説明する。
まず、系列長調整部1411で帯域内のチャネル推定値NEサンプルの末尾にNP個の「0」を挿入し、その系列をIDFT部1412でIDFTして観測遅延プロファイルを生成すること(図14(a)参照)のみに起因して、後段で検出遅延プロファイルと基本インパルスレプリカとを巡回畳込み演算した結果を更にDFTした結果が、有効帯域幅をWEとすると最大でWMAX=WE×(NE+NP)/NE[Hz](=観測遅延プロファイルのサンプリングレート)の帯域を表現できる能力を持つことになる。
そして、検出遅延プロファイル(すなわち、パス位置のサンプルのみにその複素振幅が値として存在し、パス位置以外のサンプルは「0」である系列)と、(NE+α)個の「1」値の後に(NP−α)個の「0」値のデータ列を挿入した系列をIDFTした後に振幅調整を行って得た基本インパルス成分レプリカ系列を巡回畳込み演算し、その結果を更にDFTすることにより、その結果である周波数方向のチャネル推定値は、W=WMAX×(NE+α)/(NE+NP)=WE×(NE+α)/NE[Hz]の帯域幅分の値を持つことになる。なお、図13(e)には、α=600の場合の例を示した。この場合には、DFT部143が出力する周波数方向のチャネル推定値は、W=36MHzの帯域幅を持つことになる。すなわち、有効帯域外に相当する部分が、27MHzとなる。
因みに図14(b)に示すように(NE+α)個の「1」値の後に(NP−α)個の「0」値のデータ列を挿入した系列をIDFTして得た基本インパルス成分レプリカ系列は、sinc関数の形状をとる。ただし、αがNPに等しくない場合である。
一方、αがNPに等しい場合、すなわち(NE+NP)個の「1」値をIDFTして得た基本インパルス成分レプリカ系列は、インパルスの形状をとることになる(図14(c))。インパルス形状の基本インパルス成分レプリカ系列を用いて畳込み演算を行っても、パス位置選択部1421の出力の形状は変化しないので、この場合には畳込み演算部1423および基本インパルス成分レプリカ格納部1422は不必要となる。すなわち、実施の形態1の構成は、(NE+NP)個の「1」値の後に、0個の「0」値のデータ列を挿入した系列(=全て「1」の系列)がIDFTされ、更にピークの電力が「1」になるように振幅調整されることにより生成された基本インパルス成分レプリカ系列を用いて畳込み演算していることと等価であることがわかる。従って、実施の形態1の遅延プロファイル整形部142はパス位置選択部1421が存在するだけの簡略化されたものになる。
仮想波形生成/連結部144では、実施の形態1と同様に、遅延プロファイル生成部141に入力される有効帯域内のチャネル推定値と、DFT部143にて取得されたチャネル推定値のうち前記有効帯域外に相当する部分とが連結される。すなわち、仮想波形生成/連結部144では、遅延プロファイル生成部141に入力される有効帯域内のチャネル推定値と、DFT部143にて取得された変形チャネル推定値のうち前記有効帯域外に相当する部分とを用いて、一連の波形となるように整形する。以上のように「変形チャネル推定値」を形成する際に用いた、DFT部143にて取得されたチャネル推定値のうち前記有効帯域外に相当する部分は、実施の形態3の場合も、有効帯域内の信号波形の全周波数成分が反映された形状となっている。そのため「変形チャネル推定値」も、有効帯域内の全サンプルが反映されたものとなっている。すなわち、本実施の形態の補外方法は、有効帯域内の様々な周波数(時間領域で言えば、様々なパス遅延時間)成分を十分反映させたものになっている。因みに、上述の非特許文献2では、有効帯域の端部に引いた接線を用いて有効帯域外の部分を補外しているので、有効帯域内の様々な周波数(時間領域で言えば、様々なパス遅延時間)成分を反映できていない。
ここで実施の形態1でも言及したが、チャネル推定値算出部130が出力した有効帯域内チャネル推定値とDFT部143が出力した帯域外チャネル推定値は、図15(a)に示すように、連結境界が不連続になる可能性がある。そこで仮想波形生成/連結部144は、仮想波形を調整する。具体的には、有効帯域内チャネル推定値の両端各々の不連続点における有効帯域内チャネル推定値と有効帯域外チャネル推定値との差分を検出し、各々の差分を有効帯域内チャネル推定値両端各々に連結する有効帯域外チャネル推定値波形(つまり、仮想波形)全体に加算することにより、有効帯域内チャネル推定値両端と有効帯域外のチャネル推定値との不連続を解消する(図15(b)参照)。その後、仮想波形生成/連結部144は、差分を加算した有効帯域外チャネル推定値(つまり、仮想波形)に対して窓関数を乗算する(図15(c)、図13(f)参照)。こうして最終的な、遅延プロファイル生成部141に入力される有効帯域内のチャネル推定値と、DFT部143にて取得された変形チャネル推定値のうち前記有効帯域外に相当する部分とが連結された、一連の系列が得られる。なお、仮想波形生成/連結部144において、仮想波形に乗算する窓関数の窓幅(例えばハニング窓では振幅が1から0になるまでのサンプル数)を仮想波形サンプル数/2以下にすることで、後段の雑音抑圧/周波数方向補間部145で扱う遅延プロファイルサンプル数や、IDFT部1451のポイント数を遅延プロファイル生成部141か出力する遅延プロファイルサンプル数以下とすることも可能である。その場合、DFT部1454のポイント数も小さくなることは明らかである。
このように本実施の形態によれば、マルチキャリア受信装置100に、有効帯域内の周波数領域チャネル推定値を逆フーリエ変換することにより観測遅延プロファイルを形成する遅延プロファイル生成部141と、形成された遅延プロファイルからパス位置のみを抽出し、且つ、当該パス位置以外の部分を0値で置き換えることにより遅延プロファイルを整形し、更に整形された遅延プロファイルと、有効帯域内のチャネル推定値のサンプル数より所定数(α)多い数の「1」値を持つ系列と当該系列に遅延プロファイルのサンプル数より前記「1」値の数だけ小さい数の「0」値から成る系列とからなる系列全体を逆フーリエ変換することにより生成される基本インパルスレプリカとを用いて、巡回畳込み演算する畳込み演算部1423と、畳込み演算することにより得られる系列をフーリエ変換するDFT部143と、フーリエ変換された後の信号のうち、有効帯域外に相当する部分と、有効帯域内の周波数領域チャネル推定値とを用いて連続する一連の系列を形成し、当該一連の系列をチャネル推定値として雑音抑圧/周波数方向補間部145に出力する仮想波形生成/連結部144と、を設けた。
こうすることにより、時間領域における全てのパス成分を考慮した周波数領域の有効帯域外補外を行うことができるので、有効帯域内の様々な周波数(時間領域で言えば、様々なパス遅延時間)成分を十分反映させた仮想波形を生成することができる。そして、この仮想波形が有効帯域外に付加された一連の系列が雑音抑圧/周波数方向補間部145にて逆フーリエ変換された遅延プロファイルにおける各パスは、例えば遅延分散の大きい伝播路においても、時間領域のパス成分であるsinc関数のサイドローブが十分に抑圧されたものとなる。結果として、精度良い雑音抑圧が実現される。なお、本実施の形態では有効帯域外の波形の外挿を、時間領域の遅延プロファイルを整形することにより実現しているが、これに限らず、周波数領域において補間フィルタを使用しても外挿しても良い。この際、一次補間フィルタよりも高次、もしくは精度良い補間フィルタを用いることで非特許文献2に示される方法よりも精度良い仮想波形が生成できることは明らかである。
(実施の形態4)
実施の形態4では、実施の形態2でパス間干渉をキャンセルした後の干渉除去後遅延プロファイルが理想的には干渉も雑音も含まないものになっていることに着目し、干渉除去後遅延プロファイルをDFTした波形のうち、有効帯域に相当する部分を直接利用することにより、有効帯域外に仮想波形を作成すること無しに高精度に雑音抑圧されたチャネル推定値を得ることを特徴とする。これによれば、Scatterd Pilotの場合、すなわち周波数方向の補間が必要な場合にも、例えばパス間干渉成分抑圧後の時間波形の末尾に0パディングをして補間比倍のサンプル数にした後にDFTを行うだけで雑音抑圧、周波数方向補間がなされたチャネル推定値を得ることができる。つまり、パス間干渉を除去することが、実施の形態1乃至実施の形態3において言及したsinc関数のサイドローブを抑圧することに相当する。
図16に示すように周波数方向処理部140は、周波数方向補間部146を有する。この周波数方向補間部146は、0パディング部1461を有する。
上述のとおり、図16に示すような構成を有する遅延プロファイル整形部142の出力は、各パスの成分がインパルスで表せる遅延プロファイル、つまりパス位置のサンプルのみにその複素振幅が値として存在し、パス位置以外のサンプルは「0」値である系列である。この系列が、周波数方向補間部146に入力される。
周波数方向補間部146は、入力系列の末尾に0パディングをすることにより補間比倍のサンプル数にした後にDFTを行う。
次に上記構成を有する本実施の形態のマルチキャリア受信装置100の動作について図17を参照して説明する。
図17(a)〜(c)は、図4の場合と同様である。パス位置選択部1421にて、観測遅延プロファイルから、所定のしきい値以上のピーク点のタイミング(つまり、パス位置)およびそのピーク点における複素振幅値が検出され、パス間干渉キャンセル部1424に出力される(図17(c)参照)。
パス間干渉キャンセル部1424では、観測遅延プロファイルと、検出遅延プロファイル(又は、パス位置とその複素振幅)と、基本インパルス成分レプリカ格納部1422に格納されている基本インパルス成分レプリカとを用いて、パス間干渉がキャンセル(除去)される。そのため、図17(d)では、図17(c)に比べて、各パスの復素振幅値が小さくなっている。
実施の形態4における周波数方向補間部146は、雑音抑圧機能を持たない。すなわち、周波数方向補間部146では、0パディング部1461が、遅延プロファイル整形部142の出力である雑音抑圧、パス間干渉除去された干渉除去後遅延プロファイル(図17(d)参照)に対して、その末尾に系列長が補間比倍になるように「0」をパディングする(図17(e)参照)。その後、DFT部1454が0パディングされた系列長にDFTを行い、有効帯域に相当する部分を抜き出して雑音抑圧、周波数方向補間されたチャネル推定値を得る。
以上のように、遅延プロファイル整形部142の出力は、各パスの成分がインパルスで表せる遅延プロファイル、つまりパス位置のサンプルのみにその複素振幅が値として存在し、パス位置以外のサンプルは「0」値である系列であり、出力の形態だけを見れば非特許文献1と同じ問題があるように見える。しかしながら、遅延プロファイル整形部142では、パス間干渉キャンセル部1424が、上述のsinc関数のサイドローブを抑圧することに相当するパス間干渉除去処理を行っているため、非特許文献1のような本来必要なパス成分まで削除してしまうという不都合が解消され、パス信号成分の歪みが発生することを防止することができる。
なお、周波数方向補間が必要ない場合には0パディングを行わずに干渉除去後遅延プロファイル長でDFTを行う。また、例えば1次補間等の周波数方向補間を行う場合は、0パディングを行わずに干渉除去後遅延プロファイル長でDFTを行った後に行うことになる。
このように本実施の形態によれば、マルチキャリア受信装置100に、周波数領域チャネル推定値を逆フーリエ変換することにより観測遅延プロファイルを形成する遅延プロファイル生成部141と、観測遅延プロファイルからパス位置のみを抽出し、当該パス位置におけるパス間干渉を基本インパルスレプリカを用いて除去し、パス位置においてはパス間干渉が除去された複素振幅を、パス位置以外においては0値とすることにより、観測遅延プロファイルを整形する遅延プロファイル整形部142と、整形後の観測遅延プロファイルをフーリエ変換するDFT部143と、DFT部143にてフーリエ変換することにより得られるチャネル推定値を用いてデータシンボルを復調する復調部160と、を設けた。
こうすることにより、sinc関数のサイドローブを抑圧することに相当するパス間干渉除去処理を行っているため、遅延プロファイル整形部142が、その出力信号をパス位置のみに復素振幅値がありそれ以外の位置では復素振幅値が0である系列としても、非特許文献1のような本来必要なパス成分まで削除してしまうという不都合が解消され、パス信号成分の歪みが発生することを防止することができる。結果として、その歪みの発生を防止しつつ、精度の良い雑音抑圧を実現することができる。なお、本実施の形態では有効帯域外の波形の外挿を、時間領域の遅延プロファイルを整形することにより実現しているが、これに限らず、周波数領域において補間フィルタを使用しても外挿しても良い。この際、一次補間フィルタよりも高次、もしくは補間精度の良い補間フィルタを用いることで非特許文献2に示される方法よりも精度良い仮想波形が生成できることは明らかである。
なお、上記各実施の形態の説明に用いた各機能ブロックは、典型的には集積回路であるLSIとして実現される。これらは個別に1チップ化されても良いし、一部又は全てを含むように1チップ化されても良い。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセッサで実現しても良い。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサーを利用しても良い。さらには、半導体技術の進歩又は派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行っても良い。例えば、バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。