JP4827507B2 - アクスルハウジング - Google Patents
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これによって、部品点数、溶接部分の数・長さを減らし、材料代・プレス金型代・溶接費用などの生産コストを低減すると共に、小型化が容易でかつ部分的な応力集中をなくして強度の向上が可能な車両用アクスルハウジングを提供している。しかしながら、この形状においては、ハウジングセンター部の前部および上下部において一部に平面部を有しており、張り剛性が低下することから面振動が生じる問題がある。また、軸管部からハウジングセンター部中央にかけて、アクスル車軸方向の断面変化が急峻であるため、アクスルハウジングの断面形状が急激に変化する部位が屈曲する振動モードが、ディファレンシャルギアの噛合い周波数と合致する共振現象が生じ、アクスルハウジングの各部位における加速度などに対する応答周波数を計測すると、固有振動モードに伴う顕著なピーク周波数が生じ、車輌に搭載した際に耳障りな騒音を生じるという問題がある。
本第1発明のアクスルハウジングは、(1)車体の幅方向において、左右の軸管部と、前方側に開口部および後方側にディファレンシャルギアケース後部を有する中央のハウジングセンター部とを有するアクスルハウジングであって、前記ハウジングセンター部前方側のディファレンシャルギアを装着するための前記開口部の周縁部であるディファレンシャルギア装着用の兵端部の前方に突出する突起部を設け、該突起部の頂点が前記開口部の周縁部よりも前方に位置することを特徴とする。
なお、本発明において、左右の軸管部とハウジングセンター部の境界部とは、ハウジングセンターの幅方向中心部から左右両側にわたる凸な曲面と同一な直径からなる軸管部との境界をいう。
また、走行時に受ける繰り返し荷重により疲労き裂が生じる溶接部が従来の方法に比べ少なくなるため、アクスルハウジングの耐久性も向上することが出来る。
また、ハイドロフォーミング法による製造時に金属素管を両端から加圧して、素材を中央に流入させる際、アクスルハウジングの前方側に突起部を有することで、アクスルハウジングのディファレンシャルギア後部の球状部との前後間の素材流入のバランスが良好となり、従来の形状よりも成形し易くなる。
更に、アクスルハウジングの前方及び後方の突起部を滑らかな曲面や曲線で形成することにより、ハイドロフォーミング法による製造限界が緩和される。
図21に示すように、車体の幅方向において、左右の軸管部3と、前方側に開口部5、後方側にディファレンシャルギアケース後部6とを有する中央のハウジングセンター部2を有している。この従来のアクスルハウジング1では、ハウジングセンター部2は、幅中央部において上下方向に突出するように湾曲部8が形成されている。
その結果を図22に示す。図22は、図21に示した従来の形状のアクスルハウジングの音響特性を示した周波数応答グラフである。なお、この周波数応答は、ハウジングセンター部中央部をハンマリングし、アクスルハウジング本体から数m離れた場所に騒音計を設置し、スペクトルアナライザーで音圧レベルを1/3オクターブ周波数分析して求めたものである。
アクスルハウジングにおいては、車輌の走行中、ディファレンシャルギアの噛み合い振動等との共振やサスペンション部等から伝播される振動により、騒音を増幅させる中周波領域の振動モードが問題となるが、図22に示すように全体的に高い音響応答レベルを示し、音響特性を悪化させていることが判る。
このようなことから、音響特性の劣化を防止するためには、開口部脇の剛性を向上させることが有効であることを見出し、本発明をなしたものである。
図1(a)〜(c)において、車体前面側の垂直高さH(mm)を有するハウジングセンター部2の中央部には、ディファレンシャルギアを装着するための開口部5とその周辺に装着用の平坦部5aが設けられ、開口部5の軸管部3側の平坦部5aの周縁の一部に突起部7が形成されている。図1では、突起部7は周縁部のみに形成されているが、図2以降に説明するように、境界部4からハウジングセンター部前方側の開口部5の周縁部にかけて、前方に突出するように設けても良い。
この突起部7の頂点は開口部5の平坦部5aよりも前方にB(mm)だけ突出している。そして、後方側にディファレンシャルギアケース後部6とを有する中央のハウジングセンター部2を有し、ハウジングセンター部2は、幅中央部において上下方向に突出するように湾曲部8が形成されている。
図2(a)〜(c)において、車体前面側の垂直方向高さH(mm)を有するハウジングセンター部2の中央部には、ディファレンシャルギアを装着するための開口部5とその周辺の装着用の平坦部5aが設けられ、平坦部5aの周縁部の一部に突起部7が形成されている。この突起部7の頂点は開口部5の平坦部5aよりも前方にB(mm)だけ突出している。
すなわち、ハウジングセンター部の軸方向及び周方向(軸方向に垂直な方向)の断面が滑らかな曲面であれば良く、図2(a)に示すように、境界部から突起部にかけての曲線が前方に凹状でもいいし、後述する図7に示すように前方に凸状でも良く、その他、3次元形状等でも良く、形状を限定するものではない。
図4(iii)〜(vi)から判るように、アクスルハウジングの前方側において、境界部における接円弧のハウジングセンター部側の端部から突起部の頂点にかけて、アクスルハウジングの前方の一部又は全部は、滑らかな曲面で形成されている。
図6から判るように、従来のアクスルハウジングの音響応答レベルより、各周波数帯域において数dB低下しており、音響特性が向上している。また、図1に示したアクスルハウジングの場合、図2に示すアクスルハウジングの音響特性には及ばないものの、図21に示す従来のアクスルハウジングより振動が低減されることを知見した。
また、図8は、管状部材(軸管部)とハウジングセンター部の境界における接円弧Rを表わす図である。図8に示すように、アクスルハウジングの前方側において、境界部における接円弧(点線で示す。本発明で共通する)のハウジングセンター部側の端部から突起部の頂点にかけて、アクスルハウジングの前方の一部又は全部は、前方に凸な曲線で形成されている点が図2と相違する(図7(a)参照)。すなわち、アクスルハウジングの前方は凸な曲面7aで形成されている。係る構成とすることにより、一層軸方向の断面剛性が向上する。
図9に示すように、アクスルハウジングの後部の一部又は全部は、滑らかな曲面で形成されている点が図2と相違する。
本第2発明と同様に、「滑らかな曲面」とは図9(a)に示すように、ディファレンシャルギアケース後部の曲線が後方に凹状でも良いし、後述する図10に示すように前方に凸状でも良く、その他、3次元形状等でも良く、形状を限定するものではない。
係る構成とすることにより、固有振動モードに伴う顕著なピーク周波数を抑制することができる。
図10に示すように、接円弧(図示しない。図8参照)のハウジングセンター部側の端部の一方から他の端部にかけて、アクスルハウジングの後方の一部又は全部は、後方に凸な曲線で形成されている点が図9と相違する(図10(a)参照)。
係る構成とすることにより、固有振動モードに伴う顕著なピーク周波数をより一層抑制できる。
図10と比べ、前方部の水平断面が凹状である点で相違する(図11(d)参照)。また、図10は後方の全部が凸な曲面であるのに対し、図11は後方の一部が凸な曲面である点でも相違する(図11(d)参照)。
すなわち、ハウジングセンター部の軸方向及び周方向(軸方向に垂直な方向)の断面が、前方に凸となる曲率をもっている。
係る構成とすることにより、固有振動モードに伴う顕著なピーク周波数をより一層抑制することができる。
すなわち、以上のような本発明の形状を確保することにより、ハウジングセンター部の前方側において開口部周辺の剛性が向上し、さらに、ハウジングセンター部の後方側において平坦部がなくなり、かつ、ハウジングセンター部2と軸管部3の境界部4からハウジングセンター部の中央部までが、ディファレンシャルギアケース後部6を一体として含め、軸方向(幅方向)及び周方向に曲率を有する連続した少なくとも後方に凸な曲面10で形成されているため、すなわち、アクスルハウジングの周方向断面(軸方向に垂直な方向の断面)の周長がハウジングセンター部2と軸管部3の境界部4からハウジングセンター部の中央に向かって徐々に増加するように滑らかに変化するので、ハウジングセンター部の面振動がさらに低減され、良好な音響特性が得られる。
図16(a)〜(c)において、アクスルハウジング1には、垂直高さHを有するハウジングセンター部2とその前面側の中央部に、ディファレンシャルギアを装着するための開口部5とその周辺に装着用の平坦部5aが設けられ、開口部5の軸管部3側の平坦部5aの周縁の一部に突起部7が形成されている。
この突起部7の頂点は、開口部5の平坦部5aよりもB(mm)だけ前方に突出している。そして、この突起部7からハウジングセンター部2と軸管部3と境界部4にかけては、開口部5以外を構成する全ての面が滑らかな曲面7aで形成されている。滑らかな曲面であれば特に限定せず、例えば水平断面で凸状の他に、凹部、3次関数の形状であっても良い。
係る構成とすることにより、振動モードがディファレンシャルギアの噛合い周波数と合致する共振現象が生じることがなくなる。アクスルハウジングのハウジングセンター部が前方及び後方を含めて、全体として幅方向及び周方向に曲率を持ち、外側に膨出するような形状とすることが好ましいことはいうまでもない。
図17(a)〜(d)は、中間成形品を製作する方法を説明する第1工程の概要図であり、図18(a)、(b)は、中間成形品から最終製品を製作する第2工程を説明する概要図である。
なお、アクスルハウジングのハウジングセンター部前方側の開口部は、拡管終了後、前記の開口部形成部を切断除去することにより設けることができる。
(実施例1)
外径60.5mm×板厚3.2mmの機械構造用鋼管を用いてH=200mm、突起部の高さ=20mm、突起部の長さ=157.5mm、片側の軸管部の長さ=312.5mm、ハウジングセンター部の長さ=515mm、境界部から突起部までのアクスルハウジングの前方の曲率半径=300mm、ディファレンシャルギアケース後部の曲率半径=95mm、境界部における接円弧の曲率半径R=200mmを有する図7に示すような形状のアクスルハウジングをハイドロフォーム加工法により製作した。尚、曲率半径は水平断面の値とする(以下同じ)。
外径60.5mm×板厚3.2mmの機械構造用鋼管を用いてH=200mm、ハウジングセンター部の長さ=515mm(幅方向中心から左右それぞれ(3/4)×H)、片側の軸管部の長さ=312.5mm、境界部から突起部までのアクスルハウジングの前方の曲率半径=300mm、ディファレンシャルギアケース後部の曲率半径=300mm、境界部における接円弧の曲率半径R=200mm、突起部の高さ=20mm、突起部の長さ=157.5mmを有する図11に示すような形状のアクスルハウジングをハイドロフォーム加工法により製作した。
一方、比較のため、外径60.5mm×板厚3.2mmの機械構造用鋼管を用いてH=200mm、ディファレンシャルギアケース後部の外形=180mm、高さ(後方への突出高さ)=45mm、ハウジングセンター部の長さ=500mm、片側の軸管部の長さ=320mm、を有する図21に示す形状のアクスルハウジングをハイドロフォーム加工法により製作した。図21に示したように、比較例のアクスルハウジングのハウジングセンター部は、車体前方側、後方側に平坦部5a、6bを有している。
2 ハウジングセンター部
3 左右の軸管部
4 境界部
5 開口部
5a 開口部の平坦部
5b 開口部脇の平坦部
6 ディファレンシャルギアケース後部
6a ディファレンシャルギアケース後部の球状部
6b ディファレンシャルギアケース後部の球状部脇の平坦部
7 突起部
7a 突起部の曲面
8 湾曲部
9 ハウジングセンター部前方側の曲面
10 ハウジングセンター部後方側の曲面
20 金属素管
21 成形金型
22、23 軸押し用シリンダヘッド
24 作動流体注入用流路
26 成形品
27、28 可動金型
29、30 カウンターパンチ
31 中間成形品
32 最終工程成形金型
Claims (9)
- 車体の幅方向において、左右の軸管部と、前方側に開口部および後方側にディファレンシャルギアケース後部を有する中央のハウジングセンター部とを有するアクスルハウジングであって、前記ハウジングセンター部前方側のディファレンシャルギアを装着するための前記開口部の周縁部であるディファレンシャルギア装着用の平坦部の前方に突出する突起部を設け、該突起部の頂点が前記開口部の周縁部よりも前方に位置することを特徴とするアクスルハウジング。
- 前記左右の軸管部と前記ハウジングセンター部との境界部の軸方向水平断面において、接円弧を形成する曲面を設け、前記接円弧の前記ハウジングセンター部側の端部から前記突起部の頂点にかけて、アクスルハウジングの前方の一部又は全部は、滑らかな曲面で形成されていることを特徴とする請求項1に記載のアクスルハウジング。
- 前記境界部の軸方向水平断面において、接円弧を形成する曲面を設け、前記接円弧の前記ハウジングセンター部側の端部から前記突起部の頂点にかけて、アクスルハウジングの前方の一部又は全部は、前方に凸な曲線を形成することを特徴とする請求項1又は2記載のアクスルハウジング。
- 前記境界部の軸方向水平断面において、接円弧を形成する曲面を設け、前記接円弧の前記ハウジングセンター部側の端部の一方から他方にかけて、アクスルハウジングの後方の一部又は全部は、滑らかな曲面で形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のアクスルハウジング。
- 前記境界部の軸方向水平断面において、接円弧を形成する曲面を設け、前記接円弧の前記ハウジングセンター部側の端部の一方から他方にかけて、アクスルハウジングの後方の一部又は全部は、後方に凸な曲線を形成することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のアクスルハウジング。
- 前記ハウジングセンター部の開口部以外を構成する全ての面が滑らかな曲面で形成されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のアクスルハウジング。
- 前記ハウジングセンター部の垂直方向高さをH(mm)とするとき、ハウジングセンター部は、その長さが軸方向中心から左右両側にそれぞれ(3/4)×H(mm)以上であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のアクスルハウジング。
- 前記ハウジングセンター部の垂直方向高さをH(mm)とするとき、ハウジングセンター部と左右の軸管部との境界部の軸方向断面における曲率半径R(mm)がH以上であることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載のアクスルハウジング。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載のアクスルハウジングの製造方法であって、
左右の軸管部と、前方側に突起部を有する開口部形成部と後方側に突出するディファレンシャルギアケース後部とを有するハウジングセンター部を形成するように構成された金型に金属素管を装入し、金属素菅内に流体を供給すると共に金属素菅を両端から加圧して成形するハイドロフォーム法により製造することを特徴とするアクスルハウジングの製造方法。
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