本発明は、車両用車線維持支援装置に係り、特に、自車両が車線に沿って走行するように車線中央付近からの横変位に基づいて操舵トルクを制御するうえで好適な車両用車線維持支援装置に関する。
従来から、自車両が走行車線に沿って走行するように操舵トルクを制御する車両用車線維持支援装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この装置は、車両前部に設けられたカメラの撮像画像を処理して自車両の走行車線中央付近からの横変位を検出する。そして、その検出した横変位に基づいて自車両が走行車線の略中央位置を走行するように操舵トルク指令値を算出し、その操舵トルクが発生するように操舵アクチュエータを駆動する。
特開2005−306283号公報
ところで、上記従来の装置においては、操舵トルクの制御が自車両の走行車線中央付近からの横変位に基づいて行われる。一般に、操舵トルク指令値は、自車両の上記した横変位がある程度小さいときはゼロであるが、その横変位がある程度を超えて大きくなるほど大きくなるように設定される。この際、横変位に対する操舵トルク指令値の特性は、自車両の進行方向の道路がカーブ路となることがあることを考慮すれば、自車両が車線中央付近から横ずれしたときは直ちに車線中央付近に戻るように設定されていることが望ましいが、一方、カメラ撮像画像に基づいて自車両の車線中央付近からの横変位を検出する際に誤検出が生ずることがあることを考慮すれば、自車両の車線中央付近からの横ずれが検出されてもその検出に係る車線中央付近に戻り難いものとなっていることが望ましい。
しかし、上記従来の装置では、横変位に基づく操舵トルク指令値の算出は、自車両が走行する進行方向の道路自体の形状に関係なく固定されたマップに基づいて行われる。このため、予め設定されている横変位に対する操舵トルク指令値の特性マップによっては、自車両がカーブ路を走行するときに車線中央付近から大きく逸れ易くなる事態が生じ得、或いは、自車両が距離の比較的長い直進路を走行しているにもかかわらず、横変位の誤検出に起因して自車両が実際の車線中央付近から逸れ易くなってしまい、運転者に違和感を与えるおそれがある。
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、自車両の進行方向における道路の形状に対応した操舵トルク制御を行うことで、車線中央付近からの横ずれ発生時にできるだけ速やかに自車両を車線に沿ってその中央で走行させつつ、自車両の車線中央付近からの横変位の誤検出に対する耐性を高めることが可能な車両用車線維持支援装置を提供することを目的とする。
上記の目的は、カメラの撮像画像による車線形状情報に基づいて自車両の車線中央付近からの横変位を検出する横変位検出手段と、前記横変位検出手段により検出された前記横変位に基づいて、自車両を車線に沿って走行させるうえで車両に付与すべき基準操舵トルクを算出する基準操舵トルク算出手段と、を備える車両用車線維持支援装置であって、地図データベースに格納されている道路形状情報に基づいて、自車両の進行方向における前記カメラの認識可能な範囲の道路形状及び該範囲を超える遠方の道路形状を検出する道路形状検出手段と、前記道路形状検出手段により検出される前記道路形状に応じて、車両に付与する操舵トルクを、前記基準操舵トルク算出手段による前記基準操舵トルクから変更する特性変更手段と、を備える車両用車線維持支援装置により達成される。
この態様の発明においては、自車両の進行方向における道路形状が検出され、その検出道路形状に応じて、制御する操舵トルクの特性が変更される。かかる構成によれば、自車両の進行方向における道路形状に対応した操舵トルク制御が行われるので、自車両の車線中央付近からの横変位の誤検出に対する耐性を高めつつ、車線中央付近からの横ずれ発生時にできるだけ速やかに自車両を車線に沿ってその中央付近で走行させることが可能となる。
尚、上記した車両用車線維持支援装置において、前記道路形状検出手段は、前記道路形状として道路の直進性を検出すると共に、前記特性変更手段は、道路の直進性が高い場合は低い場合に比して、前記横変位に対する操舵トルクの不感帯幅を大きくし又はゲインを下げることで、車両に付与する操舵トルクを、前記基準操舵トルク算出手段による前記基準操舵トルクから変更することとすれば、直進性の高い道路において横変位の誤検出に起因して自車両が実際の車線中央付近から逸れ易くなることはなく、運転者に与える違和感を軽減することができると共に、直進性の低い道路において自車両が車線中央付近から大きく逸れるのを防止することができる。
この場合、前記特性変更手段は、道路の直進性が高いほど、前記横変位に対する操舵トルクの不感帯幅を大きくし又はゲインを下げることで、車両に付与する操舵トルクを、前記基準操舵トルク算出手段による前記基準操舵トルクから変更することとしてもよい。
また、上記した車両用車線維持支援装置において、前記道路形状検出手段は、前記道路形状として道路の車線幅を検出すると共に、前記特性変更手段は、道路の車線幅が大きい場合は小さい場合に比して、前記横変位に対する操舵トルクの不感帯幅を大きくし又はゲインを下げることで、車両に付与する操舵トルクを、前記基準操舵トルク算出手段による前記基準操舵トルクから変更することとすれば、車線幅の大きい道路において操舵トルクの変動が頻繁に生ずることによる運転者に与える違和感を抑えることができると共に、車線幅の小さい道路において自車両が車線中央付近から逸れ易くなるのを防止することができる。
この場合、前記特性変更手段は、道路の車線幅が大きいほど、前記横変位に対する操舵トルクの不感帯幅を大きくし又はゲインを下げることで、車両に付与する操舵トルクを、前記基準操舵トルク算出手段による前記基準操舵トルクから変更することとしてもよい。
更に、上記した車両用車線維持支援装置において、前記道路形状検出手段は、前記道路形状として道路の全車線に対する自車両が走行する自車線の位置を検出すると共に、前記特性変更手段は、全車線に対する自車線の位置に応じて、前記横変位に対する操舵トルクの不感帯幅又はゲインを異ならせることで、車両に付与する操舵トルクを、前記基準操舵トルク算出手段による前記基準操舵トルクから変更することとすれば、例えば片側3車線のうち両側に障壁のない真中の車線を自車両が走行する際には操舵トルクの変動が頻繁に生ずることによる運転者に与える違和感を抑えることができると共に、少なくとも片側に障壁のある車線を自車両が走行する際には自車両が車線中央付近から逸れ易くなるのを防止することができる。
本発明によれば、自車両の進行方向における道路の形状に対応した操舵トルク制御を行うことにより、車線中央付近からの横ずれ発生時にできるだけ速やかに自車両を車線に沿ってその中央付近で走行させつつ、自車両の車線中央付近からの横変位の誤検出に対する耐性を高めることができる。
以下、図面を用いて、本発明の具体的な実施の形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施例である車両用車線維持支援装置10の構成図を示す。また、図2は、自車両が車線中央位置から横ずれした際の状況を模式的に表した図を示す。本実施例の車両用車線維持支援装置10は、車両に搭載されており、自車両が車線の中央付近でその車線に沿って走行するように操舵トルクを制御する車線維持制御を実行する装置である。図1に示す如く、車両用車線維持支援装置10は、車両の備える電気パワーステアリングシステムを構成する電子制御ユニット(以下、EPS−ECUと称す)12を備えている。
車両用車線維持支援装置10は、また、カメラ14を備えている。カメラ14は、自車両の車体前部のバンパーや車内ルームミラーのステイ等に配設されており、自車両前方の道路路面を所定長にわたって撮影することが可能なカメラである。カメラ14には、画像処理装置16が接続されている。カメラ14の撮影した画像信号は、画像処理装置16に供給されている。カメラ14の出力する画像信号には、道路路面上に描かれる白線や黄線,ガードレールなどの車線に対応する信号が含まれている。
画像処理装置16は、カメラ14から送られる画像信号を受信する。そして、その画像信号をエッジ抽出等の特徴点抽出を行うことにより、その画像信号から道路路面上に描かれている白線などの車両前方に延びる車線両側の境界線を抽出し、自車両の走行する走行車線の形状を認識する。画像処理装置16には、上記したEPS−ECU12が接続されている。画像処理装置16の認識した車線形状の情報は、EPS−ECU12に供給されている。EPS−ECU12は、画像処理装置16からの上記した車線形状情報に基づいて、自車両に対する車線境界線の位置を検出し、自車両が走行する車線の領域を検出すると共に、車線両側の境界線LL,LR間の距離とその位置とから仮想的な車線中央の位置LCを検出して、その車線中央位置LCからの車線幅方向における自車両の変位(横変位)δを検出する。
車両用車線維持支援装置10は、また、GPSアンテナ18を備えている。GPSアンテナ18は、地球回りを周回するGPS衛星から送信されるGPS信号を受信する。GPSアンテナ18には、ナビゲーション装置20が接続されている。GPSアンテナ18の受信したGPS信号は、ナビゲーション装置20に供給されている。ナビゲーション装置20は、少なくとも道路リンクごとの位置や曲率,車線幅,車線数を含む各種の地図情報を記憶する地図データベースを有している。ナビゲーション装置20は、GPSアンテナ18からのGPS信号に基づいて自車両の位置(緯度及び経度)を検出する。そして、その自車位置を示すマークを、運転者の視認可能な表示ディスプレイに映し出された地図に重畳して表示する。
ナビゲーション装置20は、また、自車位置の検出後、地図データベースに記憶する道路地図情報から、自車位置から進行方向前方の所定距離内にある道路の曲率などの道路形状情報を読み出す。ナビゲーション装置20には、上記したEPS−ECU12が接続されている。ナビゲーション装置20の読み出した道路形状情報は、EPS−ECU12に供給されている。EPS−ECU12は、ナビゲーション装置20からの道路形状情報に基づいて、自車両の位置から進行方向前方のカメラ14の認識範囲を含み更に遠方の所定距離までの道路の曲率や車線幅,車線数などを検出する。
EPS−ECU12には、EPSアクチュエータ22が接続されている。EPSアクチュエータ22は、運転者のステアリング操作するステアリングホイールに連結するステアリングシャフトに減速機を介して連結された電動モータである。EPS−ECU12は、通常走行時においては、ステアリングシャフトに配設された操舵角センサやトルクセンサの出力信号に基づいて運転者のステアリング操作をアシストする操舵トルクを算出し、一方、車線維持制御時においては、後述の如く自車両の車線中央位置LCからの横変位δに基づいて自車両に付与する操舵トルクを算出し、その操舵トルクが発生するようにEPSアクチュエータ22を駆動する指令を発する。EPSアクチュエータ22は、EPS−ECU12からの指令に従った操舵トルクを発生する。
次に、本実施例の車両用車線維持支援装置10の動作について説明する。本実施例の車両用車線維持支援装置10は、例えば車両走行中に車両運転者による所定スイッチ操作が行われることにより車線維持制御を実行し得る状態となる。車線維持制御が開始されると、まず、カメラ14は、自車両前方に広がる道路路面を所定長にわたって撮影する。そのカメラ14の撮影した画像信号は、画像処理装置16に供給される。画像処理装置16は、受信したカメラ14からの画像信号を処理することにより、自車両の走行する車線の両側の境界線である白線等を抽出し、その走行車線の形状を認識する。その走行車線の形状情報は、EPS−ECU12に供給される。
EPS−ECU12は、受信した画像処理装置16からの車線形状情報に基づいて、自車両に対する車線境界線LL,LRの位置を検出する。そして、その車線両側の境界線LL,LRに挟まれる領域を自車両の走行する車線として認識し、車線両側の境界線LL,LR間の距離とその位置とから仮想的な車線中央の位置LCを検出して、その車線中央位置LCからの車線幅方向における自車両の走行する位置の変位(横変位)δを検出する。尚、この際、自車速やヨーレート,操舵角などの車両状態に基づいて推定される自車両の走行ラインを考慮することとしてもよい。
EPS−ECU12は、自車両の車線中央位置LCからの横変位δと、自車両のステアリングシャフトに対して付与すべき操舵トルクTとの関係を規定したマップを予め記憶装置に記憶している。このマップは、左右それぞれの方向について、横変位δがゼロから所定変位δ0までの値であるときは操舵トルクTがゼロとなり、また、横変位δがその所定変位δ0よりも大きい値であるときは、横変位δが大きくなるほど操舵トルクTが横変位δをゼロにする側へ大きくなるように設定されている。以下、操舵トルクTがゼロとなる横変位δの領域を不感帯幅とする。
EPS−ECU12は、上記の如く検出した自車両の車線中央位置LCからの横変位δに基づいて、記憶装置に記憶する上記したマップを参照することにより、自車両に付与すべき操舵トルクTを算出する。そして、その操舵トルクTが発生するようにEPSアクチュエータ22に対して駆動指令を行う。EPSアクチュエータ22は、EPS−ECU12からの駆動指令に従ってその操舵トルクTを発生する。
かかる処理が実行されると、車両に、車線中央位置LCからの横変位δに応じたその横変位δをゼロとするような操舵トルクTが付与されることで、車両が自己の走行する車線の中央の仮想的なラインに近づく傾向となる。そして、かかる制御が所定時間にわたって継続して行われると、車両は、自己の走行する車線の中央の仮想的なラインに沿って走行するようになる。従って、本実施例の車両用車線維持支援装置10によれば、カメラ14の撮像画像を処理して走行車線を認識し、その車線中央からの自車両の横変位に応じた自車両を車線中央付近へ戻す操舵トルクをEPSアクチュエータ22により発生させる車線維持制御を実行することで、自車両の走行位置を車線中央付近に維持することが可能となっている。
ところで、車線維持制御において上記した車両の横変位δと操舵トルクTとの関係を規定したマップが予め一つに固定され、そのマップを参照して得られた操舵トルクTがそのまま自車両のステアリングシャフトに付与されるものとすると、例えば車両がカーブ路を走行するときに車線中央付近から大きく逸れ易くなる事態が生じ得る。また、車線中央のラインを推定するうえで必要なカメラ撮像画像を処理する際には、画像ノイズが生じることに起因して自車両の車線中央位置LCからの横変位δが誤検出されることがあるが、カメラ撮像画像の画像処理により認識した車両前方の走行車線形状に大きく依存して上記の如き車線維持制御が行われると、自車両が距離の比較的長い直進路を走行しているにもかかわらず、横変位の誤検出に起因して自車両が実際の車線中央付近から逸れ易くなる事態が生じ得、運転者に違和感を与え、自車両の車線中央付近からの横変位の検出に際しカメラ撮像画像の認識誤差に対する耐性が低くなるおそれがある。
そこで、本実施例の車両用車線維持支援装置10は、カメラ撮像画像の画像処理以外で自車両の進行方向における道路の形状(具体的には直進性)を認識して、その認識した道路形状に応じて上記したマップを変更することにより、車線中央付近からの横ずれ発生時にできるだけ速やかに自車両を車線に沿ってその中央付近で走行させつつ、自車両の車線中央付近からの横変位の誤検出に対する耐性を高めることとしている。以下、図3及び図4を参照して、本実施例の特徴部について説明する。
図3は、本実施例の車両用車線維持支援装置10においてEPS−ECU12が車線維持制御の実行時に行う制御ルーチンの一例のフローチャートを示す。また、図4は、本実施例において車両の横変位δと操舵トルクTとの関係が道路の直進性に応じて変化する様子を表した図を示す。
本実施例において、EPS−ECU12は、車線維持制御の実行時、画像処理装置16からの車線形状情報に基づいて自車両の走行する車線の形状を認識し(ステップ100)、自車両の車線中央位置LCからの横変位δを検出する(ステップ102)。EPS−ECU12には、自車両の車線中央位置LCからの横変位δと自車両に付与すべき操舵トルクTとの基準となる関係を規定したマップが記憶されている。この基準となる関係は、車両が所定曲率K0のカーブ路を走行するときに車線中央付近から大きく逸れることなくかつ運転者に違和感を与えることのないような不感帯幅及び傾きに設定されている。EPS−ECU12は、上記の如くカメラ撮像画像の画像認識により検出した横変位δに基づいて、かかる基準マップに従って、自車両に付与する際に基準となる操舵トルク(以下、基準操舵トルクと称す)Tvを算出する(ステップ104)。
本実施例において、ナビゲーション装置20は、自車位置の検出後、地図データベースに記憶する道路地図情報から、自車位置から進行方向前方の所定距離内にある道路の直進性を示す曲率の道路形状情報を読み出し、その道路形状情報をEPS−ECU12に供給する。EPS−ECU12は、ナビゲーション装置20から、自車両の位置から進行方向前方の所定距離内にある道路の曲率の道路形状情報を取得(ステップ106)し、その道路曲率Kを検出する。
EPS−ECU12は、カメラ撮像画像による自車両の横変位δに基づいた基準操舵トルクTvとナビゲーション装置20からの道路曲率Kとに基づいて、自車両に実際に付与すべき操舵トルクToutを算出する。すなわち、自車両に実際に付与すべき操舵トルクToutを、カメラ撮像画像による自車両の横変位δに基づいた基準操舵トルクTvにナビゲーション装置20からの道路曲率Kに応じた補正を施すことにより得る(Tout=f(K,Tv);ステップ108)。
この補正は、図4に示す如く、自車両の横変位δに対する基準操舵トルクTvの特性に対して、上記した所定曲率K0以下の領域において道路曲率Kが小さいほどすなわち道路の直進性が高いほど、横変位δに対する操舵トルクTの不感帯幅が大きくなりかつゲインが低下する特性が得られるように行われる。
EPS−ECU12は、上記の如く自車両に付与すべき操舵トルクToutを算出すると、その操舵トルクToutが発生するようにEPSアクチュエータ22に対して駆動指令を行う。この場合には、自車両に、カメラ撮像画像による自車両の横変位δに応じかつナビゲーション装置20からの自車両前方の道路の直進性に応じた操舵トルクToutが付与されることで、自車両が自己の走行する車線の中央の仮想的なラインに近づくようになる。
このように、本実施例の車両用車線維持支援装置10によれば、車線維持制御において付与すべき操舵トルクToutを、カメラ撮像画像の画像処理に基づく自車両の車線中央位置LCからの横変位δだけでなく、ナビゲーション装置20から取得する自車両の進行方向における道路の直進性(具体的には、道路曲率K)に応じて変更することができる。すなわち、自車両の横変位δに応じた操舵トルクToutの特性を自車両の進行方向における道路の直進性に応じて変更することができる。
具体的には、自車両の進行方向における道路の曲率Kが大きくその直進性が比較的低いときは、自車両の横変位δに基づく操舵トルクToutの特性を、通常どおりの不感帯幅としかつゲインを“1”とする。一方、自車両の進行方向における道路の曲率Kが小さくその直進性が比較的高いときは、道路の直進性が比較的低いときに比べて、自車両の横変位δに基づく操舵トルクToutの特性について不感帯幅を大きくしかつゲインを“1”よりも下げ、そして更には、直進性が高いほど、その不感帯幅をより大きくしかつゲインをより下げる。
かかる構成においては、車線維持制御の際に、自車両が直進性の比較的低い道路を走行するときは、上記した基準マップの示す関係どおりに自車両の横変位δに基づいた操舵トルクToutが定まるので、自車両が車線中央付近から大きく逸れるのが防止される。このため、カーブ路において自車両が車線中央付近から横ずれしたときに、できるだけ速やかに自車両をその車線に沿ってその中央付近で走行させることが可能となる。
また一方、車線維持制御の際に、自車両が直進性の比較的高い道路を走行するときは、上記した基準マップの示す関係をその道路の直進性を示す道路曲率Kに応じた分だけ変更した関係に従って、具体的には、道路曲率Kが小さいほど不感帯幅のより大きなかつゲインのより低下した関係に従って自車両の横変位δに基づいた操舵トルクToutが定まるので、カメラ撮像画像の画像処理により認識した車両前方の走行車線形状の依存度が比較的小さくなり、自車両がカメラ撮像画像に基づいて推定される車線中央に戻り難くなる。
このため、直進の続く道路においてカメラ撮像画像に基づく自車両の横変位δの誤検出が生じても、自車両が道路に実際に描かれている車線の中央付近から逸れ易くなるのを防止することが可能となり、この点、自車両の横変位δの検出に際しカメラ撮像画像の認識誤差に対する耐性を高めることができ、車両運転者に与える違和感を軽減することが可能となる。
従って、本実施例の車両用車線維持支援装置10によれば、車線維持制御における自車両の車線中央位置LCからの横変位δに基づいた操舵トルクの特性を、カメラ撮像画像による横変位δに基づいた基準の特性からナビゲーション装置20からの自車両前方の進行方向における道路の形状(具体的にはその直進性)に応じて変更することで、その道路形状に対応した操舵トルクを発生する車線維持制御を実行することができ、これにより、車線中央付近からの横ずれ発生時にできるだけ速やかに自車両を車線に沿ってその中央付近で走行させつつ、カメラ撮像画像に基づく自車両の横変位δの誤検出に対する耐性を高めることが可能となっている。
更に、本実施例において、車線維持制御は、カメラ14により認識可能な範囲の道路形状だけでなくその範囲を超える遠方の道路形状をも加味して得られる操舵トルクを車両に発生させる。このため、自車両の走行する道路が現状ではカーブ路であるが、所定時間経過後或いは所定距離走行後に直進路に変化する状況においては、自車両が車線中央位置から横ずれしても操舵トルクが作用し難くなるので、操舵トルクの変動が頻繁に生ずることによる運転者に与える違和感を抑制することが可能となっている。また逆に、自車両の走行する道路が現状では直進路であるが、所定時間経過後或いは所定距離走行後にカーブ路に変化する状況においては、自車両が車線中央位置から横ずれした際に操舵トルクが作用し易くなるので、車両がカーブ路に進入する前からできるだけ車線中央付近に近づけて走行させることが可能となり、直線路からカーブ路にかけてスムースな操舵トルク変動を確保することが可能となっている。
尚、上記の第1実施例においては、道路の直進性が特許請求の範囲に記載した「道路形状」に、ナビゲーション装置20の有する地図データベースが特許請求の範囲に記載した「地図データベース」に、それぞれ相当していると共に、EPS−ECU12が、ナビゲーション装置20から供給される自車両の進行方向における道路の直進性を示す曲率Kの道路形状情報を取得して検出することにより特許請求の範囲に記載した「道路形状検出手段」が、自車両に付与すべき操舵トルクToutを、基準マップに従った横変位δに基づく基準操舵トルクTvから道路曲率Kに応じて変更することにより特許請求の範囲に記載した「特性変更手段」が、それぞれ実現されている。
上記した第1実施例では、自車両の進行方向における道路の直進性を示す道路曲率Kに応じて、横変位δに基づく操舵トルクTの特性を変更する。
ところで、車線維持制御において上記した車両の横変位δと操舵トルクTとの関係を規定したマップが予め一つに固定され、そのマップを参照して得られた操舵トルクTがそのまま自車両のステアリングシャフトに付与されるものとすると、自車両が車線幅の大きい道路(例えば高速道路)を走行するときは、車線幅の小さい道路を走行するときに比べて自車両が車線を逸脱する可能性は低くなるにもかかわらず、操舵トルクの変動が頻繁に生ずるおそれがある。また、特に自車両が車線幅の大きい道路を走行していても、カメラ撮像画像の画像処理による横変位の誤検出に起因して自車両が実際の車線中央付近から逸れ易くなる事態が生じ得、運転者に違和感を与え、自車両の車線中央付近からの横変位の検出に際しカメラ撮像画像の認識誤差に対する耐性が低くなるおそれがある。
そこで、本発明の第2実施例である車両用車線維持支援装置10は、カメラ撮像画像の画像処理以外で自車両の進行方向における道路の形状(具体的には車線幅)を認識して、その認識した道路形状に応じて上記したマップを変更することにより、車線中央付近からの横ずれ発生時にできるだけ速やかに自車両を車線に沿ってその中央付近で走行させつつ、自車両の車線中央付近からの横変位の誤検出に対する耐性を高めることとしている。以下、図5を参照して、本実施例の特徴部について説明する。尚、本実施例において、上記第1実施例と同一の構成については、同一の符号を付してその説明を省略又は簡略する。
図5は、本実施例において車両の横変位δと操舵トルクTとの関係が道路の車線幅に応じて変化する様子を表した図を示す。本実施例において、EPS−ECU12は、車線維持制御の実行時、画像処理装置16からの車線形状情報に基づいて自車両の走行する車線の形状を認識し、自車両の車線中央位置LCからの横変位δを検出する。EPS−ECU12には、自車両の車線中央位置LCからの横変位δと自車両に付与すべき操舵トルクTとの基準となる関係を規定したマップが記憶されている。この基準となる関係は、車両が一般的な一車線の車線幅を有する道路(例えば一般道)を走行するときに車線中央付近から大きく逸れることなくかつ運転者に違和感を与えることのないような不感帯幅及び傾きに設定されている。EPS−ECU12は、上記の如くカメラ撮像画像の画像認識により検出した横変位δに基づいて、かかる基準マップに従って、自車両に付与する際に基準となる基準操舵トルクTvを算出する。
本実施例において、ナビゲーション装置20は、自車位置の検出後、地図データベースに記憶する道路地図情報から、自車位置から進行方向前方の所定距離内にある道路の車線幅の道路形状情報を読み出し、その道路形状情報をEPS−ECU12に供給する。EPS−ECU12は、ナビゲーション装置20から、自車両の位置から進行方向前方の所定距離内にある道路の車線幅の道路形状情報を取得し、その車線幅を検出する。
EPS−ECU12は、カメラ撮像画像による自車両の横変位δに基づいた基準操舵トルクTvとナビゲーション装置20からの道路車線幅とに基づいて、自車両に実際に付与すべき操舵トルクToutを算出する。すなわち、自車両に実際に付与すべき操舵トルクToutを、カメラ撮像画像による自車両の横変位δに基づいた基準操舵トルクTvにナビゲーション装置20からの道路車線幅に応じた補正を施すことにより得る。
この補正は、図5に示す如く、自車両の横変位δに対する基準操舵トルクTvの特性に対して、道路車線幅が上記した一般的な車線幅よりも大きい領域において大きいほど、横変位δに対する操舵トルクTの不感帯幅が大きくなりかつゲインが低下する特性が得られるように行われる。
EPS−ECU12は、上記の如く自車両に付与すべき操舵トルクToutを算出すると、その操舵トルクToutが発生するようにEPSアクチュエータ22に対して駆動指令を行う。この場合には、自車両に、カメラ撮像画像による自車両の横変位δに応じかつナビゲーション装置20からの自車両前方の道路の車線幅に応じた操舵トルクToutが付与されることで、自車両が自己の走行する車線の中央の仮想的なラインに近づくようになる。
このように、本実施例の車両用車線維持支援装置10によれば、車線維持制御において付与すべき操舵トルクToutを、カメラ撮像画像の画像処理に基づく自車両の車線中央位置LCからの横変位δだけでなく、ナビゲーション装置20から取得する自車両の進行方向における道路の車線幅に応じて変更することができる。すなわち、自車両の横変位δに応じた操舵トルクToutの特性を自車両の進行方向における道路の車線幅に応じて変更することができる。
具体的には、自車両の進行方向における道路の車線幅が比較的小さいときは、自車両の横変位δに基づく操舵トルクToutの特性を、通常どおりの不感帯幅としかつゲインを“1”とする。一方、自車両の進行方向における道路の車線幅が比較的大きいときは、比較的小さいときに比べて、自車両の横変位δに基づく操舵トルクToutの特性について不感帯幅を大きくしかつゲインを“1”よりも下げ、そして更には、車線幅が大きいほど、その不感帯幅をより大きくしかつゲインをより下げる。
かかる構成においては、車線維持制御の際に、自車両が車線幅の比較的小さい道路を走行するときは、上記した基準マップの示す関係どおりに自車両の横変位δに基づいた操舵トルクToutが定まるので、自車両が車線中央付近から大きく逸れるのが防止される。このため、車線幅の比較的小さい道路において自車両が車線中央付近から横ずれしたときに、できるだけ速やかに自車両をその車線に沿ってその中央付近で走行させることが可能となる。
また一方、車線維持制御の際に、自車両が車線幅の比較的大きい道路を走行するときは、上記した基準マップの示す関係をその道路の車線幅に応じた分だけ変更した関係に従って、具体的には、道路車線幅が大きいほど不感帯幅のより大きなかつゲインのより低下した関係に従って自車両の横変位δに基づいた操舵トルクToutが定まるので、カメラ撮像画像の画像処理により認識した車両前方の走行車線形状の依存度が比較的小さくなり、自車両がカメラ撮像画像に基づいて推定される車線中央に戻り難くなる。
このため、車線幅の大きい道路においてカメラ撮像画像に基づく自車両の横変位δの誤検出が生じても、自車両が道路に実際に描かれている車線の中央付近から逸れ易くなるのを防止することが可能となり、この点、自車両の横変位δの検出に際しカメラ撮像画像の認識誤差に対する耐性を高めることができ、車両運転者に与える違和感を軽減することが可能となる。
従って、本実施例の車両用車線維持支援装置10によれば、車線維持制御における自車両の車線中央位置LCからの横変位δに基づいた操舵トルクの特性を、カメラ撮像画像による横変位δに基づいた基準の特性からナビゲーション装置20からの自車両前方の進行方向における道路の形状(具体的にはその車線幅)に応じて変更することで、その道路形状に対応した操舵トルクを発生する車線維持制御を実行することができ、これにより、車線中央付近からの横ずれ発生時にできるだけ速やかに自車両を車線に沿ってその中央付近で走行させつつ、カメラ撮像画像に基づく自車両の横変位δの誤検出に対する耐性を高めることが可能となっている。
更に、本実施例において、車線維持制御は、カメラ14により認識可能な範囲の道路形状だけでなくその範囲を超える遠方の道路形状をも加味して得られる操舵トルクを車両に発生させる。このため、自車両の走行する道路が現状では小さい車線幅を有するが、所定時間経過後或いは所定距離走行後に大きい車線幅を有するものに変化する状況においては、自車両が車線中央位置から横ずれしても操舵トルクが作用し難くなるので、操舵トルクの変動が頻繁に生ずることによる運転者に与える違和感を抑制することが可能となっている。また逆に、自車両の走行する道路が現状では大きい車線幅を有するが、所定時間経過後或いは所定距離走行後に小さい車線幅を有するものに変化する状況においては、自車両が車線中央位置から横ずれした際に操舵トルクが作用し易くなるので、車両が車線幅の小さい道路に進入する前からできるだけ車線中央付近に近づけて走行させることが可能となり、車線幅の大きな道路から車線幅の小さな道路にかけてスムースな操舵トルク変動を確保することが可能となっている。
尚、上記の第2実施例においては、道路の車線幅が特許請求の範囲に記載した「道路形状」に、ナビゲーション装置20の有する地図データベースが特許請求の範囲に記載した「地図データベース」に、それぞれ相当していると共に、EPS−ECU12が、ナビゲーション装置20から供給される自車両の進行方向における道路の車線幅の道路形状情報を取得して検出することにより特許請求の範囲に記載した「道路形状検出手段」が、自車両に付与すべき操舵トルクToutを、基準マップに従った横変位δに基づく基準操舵トルクTvから道路車線幅に応じて変更することにより特許請求の範囲に記載した「特性変更手段」が、それぞれ実現されている。
上記した第1実施例では、自車両の進行方向における道路の直進性を示す道路曲率Kに応じて、横変位δに基づく操舵トルクTの特性を変更する。また、上記した第2実施例では、自車両の進行方向における道路の車線幅に応じて、横変位δに基づく操舵トルクTの特性を変更する。
ところで、車線維持制御において上記した車両の横変位δと操舵トルクTとの関係を規定したマップが予め一つに固定され、そのマップを参照して得られた操舵トルクTがそのまま自車両のステアリングシャフトに付与されるものとすると、自車両の進行方向における道路の全車線に対する自車両の走行する自車線の位置が、例えば3車線のうちの真中の車線であり或いは隣接して幅の比較的広い路側帯を有するなどの隣りとの境界近傍に障壁のない車線であるときは、障壁のある車線であるときに比べて自車両が衝突する可能性は低くなるにもかかわらず、操舵トルクの変動が頻繁に生ずるおそれがある。また、特に自車両が隣りとの境界近傍に障壁のない車線を走行していても、カメラ撮像画像の画像処理による横変位の誤検出に起因して自車両が実際の車線中央付近から逸れ易くなる事態が生じ得、運転者に違和感を与え、自車両の車線中央付近からの横変位の検出に際しカメラ撮像画像の認識誤差に対する耐性が低くなるおそれがある。
そこで、本発明の第3実施例である車両用車線維持支援装置10は、カメラ撮像画像の画像処理以外で自車両の進行方向における道路の形状(具体的には、全車線に対する自車線の位置)を認識して、その認識した道路形状に応じて上記したマップを変更することにより、車線中央付近からの横ずれ発生時にできるだけ速やかに自車両を車線に沿ってその中央付近で走行させつつ、自車両の車線中央付近からの横変位の誤検出に対する耐性を高めることとしている。以下、図6を参照して、本実施例の特徴部について説明する。尚、本実施例において、上記第1実施例と同一の構成については、同一の符号を付してその説明を省略又は簡略する。
図6は、本実施例において車両の横変位δと操舵トルクTとの関係が道路の全車線に対する自車線の位置に応じて変化する様子を表した図を示す。本実施例において、EPS−ECU12は、車線維持制御の実行時、画像処理装置16からの車線形状情報に基づいて自車両の走行する車線の形状を認識し、自車両の車線中央位置LCからの横変位δを検出する。EPS−ECU12には、自車両の車線中央位置LCからの横変位δと自車両に付与すべき操舵トルクTとの基準となる関係を規定したマップが記憶されている。この基準となる関係は、車両が両側との境界近傍にそれぞれ障壁のある車線を走行するときに車線中央付近から大きく逸れることなくかつ運転者に違和感を与えることのないような不感帯幅及び傾きに設定されている。EPS−ECU12は、上記の如くカメラ撮像画像の画像認識により検出した横変位δに基づいて、かかる基準マップに従って、自車両に付与する際に基準となる基準操舵トルクTvを算出する。
本実施例において、ナビゲーション装置20は、自車位置の検出後、地図データベースに記憶する道路地図情報から、自車位置から進行方向前方の所定距離内にある道路の車線数の道路形状情報を読み出す。そして、その車線数と検出自車位置とに基づいて、進行方向における全車線に対する自車両の走行する自車線の位置を検出し、その全車線に対する自車線の位置の道路形状情報をEPS−ECU12に供給する。EPS−ECU12は、ナビゲーション装置20から、自車両の位置から進行方向前方の所定距離内にある道路の車線数及びその全車線に対する自車線の位置の道路形状情報を取得し検出する。
EPS−ECU12は、カメラ撮像画像による自車両の横変位δに基づいた基準操舵トルクTvとナビゲーション装置20からの全車線に対する自車線の位置に基づいて、自車両に実際に付与すべき操舵トルクToutを算出する。すなわち、自車両に実際に付与すべき操舵トルクToutを、カメラ撮像画像による自車両の横変位δに基づいた基準操舵トルクTvにナビゲーション装置20からの全車線に対する自車線の位置に応じた補正を施すことにより得る。
この補正は、図6に示す如く、自車両の横変位δに対する基準操舵トルクTvの特性に対して、全車線に対する自車線が全車線のうちの端の車線でない例えば3車線のうちの真中の車線などであって両側何れかに障壁のない車線であるときに、横変位δに対する操舵トルクTの不感帯幅が大きくなりかつゲインが低下する特性が得られるように行われる。尚、この際、例えば自車線の右側には障壁があるが左側には障壁のないとき或いはその逆のときは、操舵トルクの左右方向に互いに異なる特性が得られるようにしてもよい。
EPS−ECU12は、上記の如く自車両に付与すべき操舵トルクToutを算出すると、その操舵トルクToutが発生するようにEPSアクチュエータ22に対して駆動指令を行う。この場合には、自車両に、カメラ撮像画像による自車両の横変位δに応じかつナビゲーション装置20からの自車両前方の道路の全車線に対する自車線の位置に応じた操舵トルクToutが付与されることで、自車両が自己の走行する車線の中央の仮想的なラインに近づくようになる。
このように、本実施例の車両用車線維持支援装置10によれば、車線維持制御において付与すべき操舵トルクToutを、カメラ撮像画像の画像処理に基づく自車両の車線中央位置LCからの横変位δだけでなく、ナビゲーション装置20から取得する自車両の進行方向における道路の全車線に対する自車線の位置に応じて変更することができる。すなわち、自車両の横変位δに応じた操舵トルクToutの特性を、自車両の進行方向における道路の全車線に対する自車線の位置に応じて異ならせることができる。
具体的には、自車両の進行方向における道路において自車線が隣りとの境界位置に障壁のある車線であるときは、自車両の横変位δに基づく操舵トルクToutの特性を、通常どおりの不感帯幅としかつゲインを“1”とする。一方、自車線が隣りとの境界位置に障壁のない車線であるときは、自車両の横変位δに基づく操舵トルクToutの特性について不感帯幅を大きくしかつゲインを“1”よりも下げる。
かかる構成においては、車線維持制御の際に、自車両が隣りとの境界位置に障壁のある車線を走行するときは、上記した基準マップの示す関係どおりに自車両の横変位δに基づいた操舵トルクToutが定まるので、自車両が車線中央付近から大きく逸れるのが防止される。このため、隣りとの境界位置に障壁のある車線において自車両が車線中央付近から横ずれしたときに、できるだけ速やかに自車両をその車線に沿ってその中央付近で走行させることが可能となる。
また一方、車線維持制御の際に、自車両が隣りとの境界位置に障壁のない車線を走行するときは、上記した基準マップの示す関係から不感帯幅のより大きなかつゲインのより低下した関係に従って自車両の横変位δに基づいた操舵トルクToutが定まるので、カメラ撮像画像の画像処理により認識した車両前方の走行車線形状の依存度が比較的小さくなり、自車両がカメラ撮像画像に基づいて推定される車線中央に戻り難くなる。
このため、隣りとの境界位置に障壁のない車線を自車両が走行する際においてカメラ撮像画像に基づく自車両の横変位δの誤検出が生じても、自車両が道路に実際に描かれている車線の中央付近から逸れ易くなるのを防止することが可能となり、この点、自車両の横変位δの検出に際しカメラ撮像画像の認識誤差に対する耐性を高めることができ、車両運転者に与える違和感を軽減することが可能となる。
従って、本実施例の車両用車線維持支援装置10によれば、車線維持制御における自車両の車線中央位置LCからの横変位δに基づいた操舵トルクの特性を、カメラ撮像画像による横変位δに基づいた基準の特性からナビゲーション装置20からの自車両前方の進行方向における道路の形状(具体的には全車線に対する自車線の位置)に応じて変更することで、その道路形状に対応した操舵トルクを発生する車線維持制御を実行することができ、これにより、車線中央付近からの横ずれ発生時にできるだけ速やかに自車両を車線に沿ってその中央付近で走行させつつ、カメラ撮像画像に基づく自車両の横変位δの誤検出に対する耐性を高めることが可能となっている。
更に、本実施例において、車線維持制御は、カメラ14により認識可能な範囲の道路形状だけでなくその範囲を超える遠方の道路形状をも加味して得られる操舵トルクを車両に発生させる。このため、自車両の走行する自車線が現状では隣りとの境界位置に障壁のある車線であるが、所定時間経過後或いは所定距離走行後に障壁のない車線に変化する状況においては、自車両が車線中央位置から横ずれしても操舵トルクが作用し難くなるので、操舵トルクの変動が頻繁に生ずることによる運転者に与える違和感を抑制することが可能となっている。また逆に、自車両の走行する自車線が現状では隣りとの境界位置に障壁のない車線であるが、所定時間経過後或いは所定距離走行後に障壁のある車線に変化する状況においては、自車両が車線中央位置から横ずれした際に操舵トルクが作用し易くなるので、車両が障壁のある車線に進入する前からできるだけ車線中央付近に近づけて走行させることが可能となり、障壁のない車線から障壁のある車線にかけてスムースな操舵トルク変動を確保することが可能となっている。
尚、上記の第3実施例においては、道路の全車線に対する自車線の位置が特許請求の範囲に記載した「道路形状」に、ナビゲーション装置20の有する地図データベースが特許請求の範囲に記載した「地図データベース」に、それぞれ相当していると共に、EPS−ECU12が、ナビゲーション装置20から供給される自車両の進行方向における道路の全車線に対する自車線位置の道路形状情報を取得して検出することにより特許請求の範囲に記載した「道路形状検出手段」が、自車両に付与すべき操舵トルクToutを、基準マップに従った横変位δに基づく基準操舵トルクTvから全車線に対する自車線の位置に応じて変更することにより特許請求の範囲に記載した「特性変更手段」が、それぞれ実現されている。
ところで、上記の第3実施例においては、ナビゲーション装置20の地図データベースに道路の車線数を記憶させたうえで、自車両の進行方向における道路の車線数を読み出し、その車線数と検出した自車位置とに基づいて全車線に対する自車両の走行する自車線の位置を検出して、その全車線に対する自車線の位置に応じて横変位δに基づく操舵トルクTの特性を変更することとしている。しかし、ナビゲーション装置20の地図データベースに道路の両側にガードレールや中央分離帯などの障壁があるか否かの情報を記憶させたうえで、自車両の進行方向における道路の障壁有無を読み出し、その情報に基づいて自車線が隣りに障壁のある車線であるかを判別して、その判別結果に応じて横変位δに基づく操舵トルクTの特性を変更することとしてもよい。
尚、上記の第1乃至第3実施例においては、EPS−ECU12に記憶するマップとして、所定の道路形状を有する道路(例えば、所定曲率K0のカーブ路や一般的な車線幅の道路,車線両側に障壁がある道路)において自車両が車線中央付近から大きく逸れることのない、車線中央位置LCからの横変位δと自車両に付与すべき操舵トルクTとの基準となる関係のみを規定したうえで、ナビゲーション装置20からの道路形状(曲率や車線幅,自車線の位置)に応じて、例えば道路曲率Kが上記の所定曲率K0以下である領域や車線幅が一般的な車線幅よりも大きい領域においてのみ、横変位δに基づく操舵トルクTの特性を基準のものよりも不感帯幅が大きくなりかつゲインが低下するように変更することとしている。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、ナビゲーション装置20からの道路形状に応じて、例えば道路曲率Kが上記の所定曲率K0を超える領域や車線幅が一般的な車線幅よりも小さい領域においても、横変位δに基づく操舵トルクTの特性を基準のものよりも不感帯幅が小さくなりかつゲインが上昇するように変更することとしてもよい。かかる構成においては、自車両の進行方向における道路が急カーブ路であり或いは極めて小さい車線幅を有するものであっても、自車両が車線中央付近から横ずれしたときに速やかに自車両をその車線に沿ってその中央付近で走行させることが可能となる。
また、上記の第1乃至第3実施例においては、EPS−ECU12に記憶するマップとして、所定の道路形状を有する道路(例えば、所定曲率K0のカーブ路やや一般的な車線幅の道路,車線両側に障壁がある道路)において自車両が車線中央付近から大きく逸れることのない、車線中央位置LCからの横変位δと自車両に付与すべき操舵トルクTとの基準となる関係のみを規定したうえで、その基準となる関係を基にカメラ撮像画像による横変位δから求まる基準操舵トルクTvにナビゲーション装置20からの道路形状(曲率や車線幅,自車線の位置)に応じて補正を加えることで、自車両に実際に付与する操舵トルクToutを算出することとしている。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、EPS−ECU12に記憶するマップとして、車線中央位置LCからの横変位δと自車両に付与すべき操舵トルクTとの関係について予め道路形状ごとに規定したうえで、検出した道路形状に応じたマップを選択し、その選択したマップに従ってカメラ撮像画像による横変位δに基づいて自車両に実際に付与する操舵トルクToutを算出することとしてもよい。
また、上記の第1乃至第3実施例においては、実施例ごとに、カメラ撮像画像による自車両の横変位δに基づいた自車両に実際に付与する操舵トルクToutの特性を、道路曲率に応じて変更し、道路車線幅に応じて変更し、或いは全車線に対する自車線の位置に応じて変更することとしているが、本発明はかかる横変位δに基づいた操舵トルクToutの特性を複数の道路形状の種類に対して独立に変更するものに限らず、2又は3の道路形状種類を適宜組み合わせて特性変更を施すこととしてもよい。例えば、道路の曲率と車線幅との2種類の道路形状に応じて、横変位δに基づいた操舵トルクToutの特性を変更することとしてもよい。
また、上記の第1乃至第3実施例においては、ナビゲーション装置20からの道路形状に応じて、車両の車線中央位置LCからの横変位δに対する操舵トルクTの不感帯幅及びゲインを共に変更することとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、その道路形状に応じて操舵トルクの不感帯幅及びゲインの何れか一方のみを変更することとすればよい。
また、上記の第1乃至第3実施例においては、カメラ撮像画像による自車両の車線中央位置LCからの横変位δとナビゲーション装置20からの道路形状とに基づいて自車両に実際に付与する操舵トルクToutを算出し、その操舵トルクToutが発生するようにEPSアクチュエータ22を駆動することとしているが、かかるEPSアクチュエータ22の駆動時にはフィードバック制御量の出力に一時遅れなどのフィルタを通すこととしてもよい。かかる構成によれば、ステアリングシャフトに作用する操舵トルクがある程度の時間をかけて算出操舵トルクToutに至ることとなるため、滑らかに操舵トルクが変化する車線維持制御を実現することが可能となり、操舵トルクの急変化に伴った運転者の違和感を軽減することが可能となる。
本発明の第1実施例である車両用車線維持支援装置の構成図である。
自車両が車線中央位置から横ずれした際の状況を模式的に表した図である。
本実施例の車両用車線維持支援装置において車線維持制御の実行時に行う制御ルーチンの一例のフローチャートである。
本実施例において車両の横変位δと操舵トルクTとの関係が道路の直進性に応じて変化する様子を表した図である。
本実施例において車両の横変位δと操舵トルクTとの関係が道路の車線幅に応じて変化する様子を表した図である。
本実施例において車両の横変位δと操舵トルクTとの関係が道路の全車線に対する自車線の位置に応じて変化する様子を表した図である。
符号の説明
10 車両用車線維持支援装置
12 EPS−ECU
14 カメラ
16 画像処理装置
20 ナビゲーション装置
22 EPSアクチュエータ