JP4824959B2 - フラーレン誘導体 - Google Patents
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Description
これまでに5重付加フラーレン誘導体は種々合成され、報告されてきた(特許文献1〜3及び非特許文献4〜6参照)。これらのフラーレン誘導体は、例えばC60骨格のものでは50電子系のπ電子共役になっており、60電子系のπ電子共役である無置換のC60とは異なる立体配置や電子的性質を有することから、新たな電子伝導材料、半導体、生理活性物質等として期待されている。
ところで、フラーレン誘導体を電子材料や金属錯体の配位子等に利用したり、他のフラーレン誘導体の中間体として使用するためには、フラーレン誘導体が有機溶媒に対して高い溶解性を示すことが好ましい。5重付加フラーレン誘導体の中には、無置換フラーレンよりも有機溶媒に対する溶解性が高いものもあるが、更に、各種有機溶媒に対する溶解性の高いフラーレン誘導体が望まれている。
、C1は炭素数1〜30の有機基と結合している。}
このとき、アリーレン基がフェニレン基であることが好ましい(請求項2)。
あることが好ましい(請求項5)。
さらに、25℃でのプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテートへの溶解性が10mg/mL以上で、且つテトラヒドロフラン溶媒中における1電子目の酸化還元電位が、フェロセンの酸化還元電位基準で−1.60V以上であることが好ましい(請求項6)。
〜C8が、各々独立に下記式(IV)で表される構造の有機基と結合していることを特徴と
する、フラーレン誘導体に存する(請求項7)。
、C1は炭素数1〜30の有機基と結合している。}
される構造の有機基と結合していることが好ましい(請求項8)。
さらに、25℃でのプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテートへの溶解性が10mg/mL以上で、且つ、テトラヒドロフラン溶媒中における1電子目の酸化還元電位が、フェロセンの酸化還元電位基準で−1.60V以上であることが好ましい(請求項9)。
[I.フラーレン誘導体]
本発明のフラーレン誘導体は、特定の部分構造を有するフラーレン誘導体である。ここで、フラーレンとは、閉殻構造を有する炭素クラスターである。フラーレンの炭素数は、通常60〜130の偶数である。フラーレンの具体例としては、C60、C70、C76、C78、C82、C84、C90、C94、C96及びこれらよりも多くの炭素を有する高次の炭素クラスターなどが挙げられる。
(a)25℃でのプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテートへの溶解性が10mg/mL以上であるフラーレン誘導体。
(b)テトラヒドロフラン溶媒中における1電子目の酸化還元電位が、フェロセンの酸化還元電位基準で−1.60 V以上であるフラーレン誘導体。
(c)下記式(I)の部分構造を有するフラーレン誘導体。
(d)下記式(II)で表される構造の有機基と結合しているフラーレン誘導体。
(e)下記式(IV)で表される構造の有機基と結合しているフラーレン誘導体。
(A)(a)25℃でのプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテートへの溶解性が10mg/mL以上で、且つ、(b)テトラヒドロフラン溶媒中における1電子目の酸化還元電位が、フェロセンの酸化還元電位基準で−1.60V以上である、フラーレン誘導体。
(B)(c)上記(I)の部分構造を有するとともに、(d)上記式(I)のC6〜C8が、各々独立に上記式(II)で表される構造の有機基と結合している、フラーレン誘導体。
(C)(c)上記(I)の部分構造を有するとともに、(e)上記式(I)のC6〜C8が、各々独立に上記式(IV)で表される構造の有機基と結合している、フラーレン誘導体。
(F)(a)25℃でのプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテートへの溶解性が10mg/mL以上で、且つ、(b)テトラヒドロフラン溶媒中における1電子目の酸化還元電位が、フェロセンの酸化還元電位基準で−1.60V以上であり、さらに、(d)上記式(II)で表される構造の有機基と結合している、フラーレン誘導体。
(G)(a)25℃でのプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテートへの溶解性が10mg/mL以上で、且つ、(b)テトラヒドロフラン溶媒中における1電子目の酸化還元電位が、フェロセンの酸化還元電位基準で−1.60V以上であり、さらに、(e)上記式(IV)で表される構造の有機基と結合している、フラーレン誘導体。
(H)(a)25℃でのプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテートへの溶解性が10mg/mL以上であって、(c)上記(I)の部分構造を有するとともに、(d)上記式(I)のC6〜C8が、各々独立に上記式(II)で表される構造の有機基と結合している、フラーレン誘導体。
(I)(a)25℃でのプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテートへの溶解性が10mg/mL以上であって、(c)上記(I)の部分構造を有するとともに、(e)上記式(I)のC6〜C8が、各々独立に上記式(IV)で表される構造の有機基と結合している、フラーレン誘導体。
(J)(a)25℃でのプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテートへの溶解性が10mg/mL以上で、且つ、(b)テトラヒドロフラン溶媒中における1電子目の酸化還元電位が、フェロセンの酸化還元電位基準で−1.60V以上であり、さらに、(c)上記(I)の部分構造を有するとともに、(d)上記式(I)のC6〜C8が、各々独立に上記式(II)で表される構造の有機基と結合している、フラーレン誘導体。
(K)(a)25℃でのプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテートへの溶解性が10mg/mL以上で、且つ、(b)テトラヒドロフラン溶媒中における1電子目の酸化還元電位が、フェロセンの酸化還元電位基準で−1.60V以上であり、さらに、(c)上記(I)の部分構造を有するとともに、(e)上記式(I)のC6〜C8が、各々独立に上記式(IV)で表される構造の有機基と結合している、フラーレン誘導体。
(溶解性)
本発明のフラーレン誘導体は、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート(PGMEA)や乳酸エチルなど工業用途で多く用いられている安全性の高いエステル系溶媒全般に対して高い溶解性を有するものである。本明細書においては、規定の客観性を持たせるために、フラーレン誘導体が一般に最も溶解し難いとされるPGMEAに対する25℃での溶解度を、上記エステル系溶媒への溶解性を示すパラメータとして採用し、これによってフラーレン誘導体を規定するものとする。
本発明のフラーレン誘導体は、フラーレン特有の性質を維持している。本明細書においては、規定の客観性を持たせるために、CV(サイクリックボルタンメトリー)の1電子目の酸化還元電位(E1/2)をパラメータとして採用し、これによってフラーレン誘導体を規定するものとする。
上記式(I)中のC1は、炭素数1〜30の有機基(以下適宜、「R10」と表記する)と結合している。R10は、本発明のフラーレン誘導体の優れた物性を大幅に損ねるものでなければ、他に制限は無く、任意の有機基が用いられる。ただし、中でも、空気中で酸化されやすい結合(例えば、非芳香族性の不飽和結合など)を含まない基が好ましく、鎖状又は環状の炭化水素基がより好ましく、鎖状又は環状のアルキル基が特に好ましい。
ただし、R10は、空気酸化される可能性のある置換基(例えば、アルケニル基やアルキニル基など)を含まないものが好ましい。空気酸化される可能性のある置換基をR10が有していた場合、本発明のフラーレン誘導体の空気中での安定性が低下する虞があるためである。
なかでも、合成の容易さ及び空気中での安定性の観点からアルキル基が好ましく、特に、アルコールやエステル系溶媒などに対する本発明のフラーレン誘導体の溶解性をさらに高めることができる点や、更に別の官能基に置換しやすい点では、R10としては、水酸基またはアルコキシカルボニル基等の極性官能基を含むアルキル基が好ましい。
連結基Lが有するカルボニル基の数は1個でも、2個以上でもよい。ただし、原料入手が容易な点から、1〜4個が好ましい。
また、カルボニル基の位置は、連結基L中のどの位置にあってもよいが、合成の容易さから、Ar側の末端以外の位置にあることが好ましい。
上述した本発明のフラーレン誘導体は、エステル系溶媒に可溶、即ち、エステル系溶媒に対する溶解性が高い。なお、本発明において、フラーレン誘導体が「エステル系溶媒に可溶」であるとは、フラーレン誘導体をエステル系溶媒に混合し、超音波照射を10分かけた後、目視で沈殿物や不溶分が検出されないことを意味する。具体的には、溶解性の説明で既に述べたように、25℃、常圧下でプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート又は乳酸エチルのいずれかのエステル系溶媒に対して、エステル系溶媒の単位体積(1mL)あたりに、フラーレン誘導体が10mg以上溶解する場合には、そのフラーレン誘導体はエステル系溶媒に対して可溶、即ち、エステル系溶媒に対する溶解性が高いと判断する。
また、かさ高い置換基がない場合でも、エステル系溶媒に対して高い溶解性を有する理由は、フラーレンに対してOR基の数が相対的に増加することによって酸性度が向上したためと考えられるが、上記概念を組み合わせた場合はさらに高い溶解度が期待される。
このような本発明のフラーレン誘導体の空気中での安定性は、例えば、経時変化を高速液体クロマトグラフ(HPLC)で分析することにより確認できる。具体的には、本発明のフラーレン誘導体のトルエン溶液を室温空気下で放置した際に、HPLC{オクタデシル基結合シリカゲルカラム(以下適宜、「ODSカラム」という)、溶媒;トルエン/メタノール、UV波長:290nm)で観測される全ピークに対するフラーレン誘導体由来のピークの面積割合での減少速度から、調べることができる。
本発明のフラーレン誘導体の合成方法に制限は無く、任意の方法により合成することができる。以下に、本発明のフラーレン誘導体の合成方法の一例を示すが、本発明のフラーレン誘導体の合成方法は、以下の方法に限定されるものではない。
以下、前記式(II)のArがフェニル基、連結基LのAr側末端が酸素原子である場合について、前記式(II)の構造を有する有機基が結合している本発明のフラーレン誘導体を合成する方法の例を説明する。
本発明のフラーレン誘導体として前記のようなフラーレン誘導体を合成する際には、例えば、原料としてフラーレン誘導体(以下適宜、「原料フラーレン誘導体」という)を、以下の(1)〜(4)の方法などで反応剤と反応させることにより合成することができる。
(1)原料フラーレン誘導体を、エステル化剤と反応させて、エステル化する。
(2)原料フラーレン誘導体を、カーボネート化剤と反応させて、カーボネート化する。(3)原料フラーレン誘導体を、エーテル化剤と反応させて、エーテル化する。
(4)原料フラーレン誘導体を、ウレタン化剤と反応させて、ウレタン化する。
反応系内に存在する塩基の種類は任意であり、本発明のフラーレン誘導体の合成時には、反応の種類によって適当なものを選択すればよい。塩基の具体例としては、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、水酸化テトラブチルアンモニウム、ジアザビシクロウンデセン、イミダゾール等の有機塩基、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の金属炭酸塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物などが挙げられる。なお、上記の塩基は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、使用する塩基の量としては、反応を阻害しなければ任意の量を用いることができる。
また、原料となるフラーレン誘導体に対して使用する有機溶媒の量は任意であるが、原料フラーレン誘導体の濃度が通常0.1mg/mL以上、好ましくは1mg/mL以上、より好ましくは5mg/mL以上、また、通常1000mg/mL以下、好ましくは100mg/mL以下、より好ましくは50mg/mL以下となる量の有機溶媒を用いることが望ましい。
(1)エステル化による合成方法
この合成方法では、原料フラーレン誘導体に対して、RaC(=O)Xaで表わされる酸ハライド、RbC(=O)OC(=O)Rcで表わされる酸無水物などのエステル化剤を用いて、エステル化を行なう。ここで、上記のエステル化剤を表わす式におけるRa、Rb、Rcは、各々独立に、原料フラーレン誘導体とエステル化剤とが反応することにより本発明のフラーレン誘導体を生成しうる任意の基を表わし、その具体例としては、イソプロピル基、tert−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、sec−イソアミル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1,2,2−トリメチルプロピル基などの分岐状の鎖状アルキル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基、1,1−ジメチルアリル基、2,2−ジメチルブタ−3−エン−1−イル基等のアルケニル基が挙げられるが、分岐状のアルキル基が好ましい。また、XaはCl、Br、I等のハロゲン原子を表わす。なお、エステル化剤は1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。これにより、原料フラーレン誘導体のフェノール基のヒドロキシ基部分がエステル化され、本発明のフラーレン誘導体を合成することができる。
さらに、エステル化による合成方法では、原料フラーレン誘導体のエステル化が起これば、その反応条件は任意である。ただし、その温度条件は通常0℃以上、好ましくは15℃以上、また、通常50℃以下、好ましくは30℃以下で反応を行なうことが望ましい。また、反応時間は通常数分以上、好ましくは30分以上、また、通常数十時間以下、好ましくは5時間以下反応させることが望ましい。
この合成方法では、原料フラーレン誘導体に対して、RdOC(=O)OC(=O)OReで表わされる二炭酸エステルなどのカーボネート化剤を用いて、カーボネート化を行なう。ここで、上記のカーボーネート化剤を表わす式におけるRd、Reは、それぞれ独立に、原料フラーレン誘導体とカーボネート化剤とが反応することにより本発明のフラーレン誘導体を生成しうる任意の基を表わし、その具体例としては、エステル化剤を表わす基の具体例で例示した基Ra〜Rcと同様の基を挙げることができる。なお、カーボネート化剤は1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。これにより、原料フラーレン誘導体のフェノール基のヒドロキシ基部分がカーボネート化され、本発明のフラーレン誘導体を合成することができる。
さらに、カーボネート化による合成方法では、原料フラーレン誘導体のカーボネート化が起これば、その反応条件は任意である。ただし、その温度条件は通常−20℃以上、好ましくは0℃以上、また、通常50℃以下、好ましくは30℃以下で反応を行なうことが望ましい。また、反応時間は通常数分以上、好ましくは30分以上、また、通常数時間以下、好ましくは2時間以下反応させることが望ましい。
この合成方法では、原料フラーレン誘導体に対して、Xb−(CH2)m−(O)p−C(=O)−(O)q−Rf等のハロゲン化物などのエーテル化剤を用いて、エーテル化を行なう。ここで、上記のエーテル化剤を表わす式におけるXbはCl、Br、I等のハロゲン原子を表わし、mは1〜10の自然数を表わし、p及びqは各々独立に0又は1を表わす。また、Rfは、原料フラーレン誘導体とエーテル化剤とが反応することにより本発明のフラーレン誘導体を生成しうる任意の基を表わし、その具体例としては、エステル化剤やカーボネート化剤を表わす基の具体例で例示した基Ra〜Reと同様の基を挙げることができる。また、上述したハロゲン化物のハロゲン原子に代えて、求核置換反応の脱離基となりうる官能基を有するものをエーテル化剤として用いても構わない。求核置換反応の脱離基となりうる官能基としては、アセトキシ基、トリフロロアセトキシ基等のアシロキシ基;メタンスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基、トルエンスルホニルオキシ基等のスルホニルオキシ基などが挙げられる。なお、エーテル化剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。これにより、原料フラーレン誘導体のフェノール基のヒドロキシ基部分がエーテル化され、本発明のフラーレン誘導体を合成することができる。
さらに、エーテル化による合成方法では、原料フラーレン誘導体のエーテル化が起これば、その反応条件は任意である。ただし、その温度条件は通常0℃以上、好ましくは15℃以上、また、通常80℃以下、好ましくは50℃以下で反応を行なうことが望ましい。また、反応時間は通常数時間以上、好ましくは5時間以上、また、通常数十時間以下、好ましくは30時間以下反応させることが望ましい。
この合成方法では、原料フラーレン誘導体に対して、RgNCOで表わされるイソシアネート類などのウレタン化剤を用いて、ウレタン化を行なう。ここで、上記のウレタン化剤を表わす式におけるRgは、原料フラーレン誘導体とウレタン化剤とが反応することにより本発明のフラーレン誘導体を生成しうる任意の基を表わし、その具体例としては、エステル化剤、カーボネート化剤、エーテル化剤を表わす基の具体例で例示した基Ra〜Rfと同様の基を挙げることができる。なお、ウレタン化剤は1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。これにより、原料フラーレン誘導体のフェノール基のヒドロキシ基部分がウレタン化され、本発明のフラーレン誘導体を合成することができる。
さらに、ウレタン化による合成方法では、原料フラーレン誘導体のウレタン化が起これば、その反応条件は任意である。ただし、その温度条件は通常0℃以上、好ましくは15℃以上、また、通常50℃以下、好ましくは30℃以下で反応を行なうことが望ましい。また、反応時間は通常数分以上、好ましくは30分以上、また、通常数十時間以下、好ましくは2時間以下反応させることが望ましい。
次に、前記式(IV)の構造を有する有機基が結合しているフラーレン誘導体を合成する方法を説明する。
前記式(IV)のうち、OR基がOH基である場合は、Rがメチル基やテトラヒドロピラニル基などGrignard反応においても安定な保護基を導入したGrignard試薬を使用し、既存の方法で原料フラーレン誘導体を合成した後、保護基に対応した脱保護剤を作用させることにより合成できる。
これまでに、上記式(I)においてC1に炭素数1〜30の有機基を結合させた、C6
〜C8もしくはC6〜C10に有機基を有するフラーレン誘導体の一般的な製造方法は、既に確立されており、具体的には特開2005−15470号公報、Chem.Lett.33.328.2004に記載されている方法などを参照することができる。
(1)原料フラーレン誘導体を、エステル化剤と反応させて、エステル化する。
(2)原料フラーレン誘導体を、カーボネート化剤と反応させて、カーボネート化する。(3)原料フラーレン誘導体を、エーテル化剤と反応させて、エーテル化する。
(4)原料フラーレン誘導体を、ウレタン化剤と反応させて、ウレタン化する。
なお、これらの方法(1)〜(4)における各反応条件等は、R20を含有するフラーレン誘導体の合成法と同様な方法を用いればよい。
さらに、R20を有するフラーレン誘導体及びR30を有するフラーレン誘導体のいずれも、通常は、反応終了後に、生成した本発明のフラーレン誘導体を反応液から常法により単離する。単離操作は各反応の種類によって異なるが、例えば、反応液に希塩酸や純水などを加えて反応を停止させ、そのまま適当な溶媒で抽出した後、分液し溶媒を留去することにより、生成物を単離することができる。得られたフラーレン誘導体は、必要に応じて、適宜、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)やシリカゲルカラムクロマトグラフィー、アルミナカラムクロマトグラフィーなどの手法で精製してもよい。単離収率は、上述の好ましい反応条件で行えば、通常60%以上、好ましくは70%以上である。
原料フラーレン誘導体であるC60(C6H4OH)5Me(1.00g,0.83mmol)の脱水テトラヒドロフラン(100mL)懸濁液に、トリエチルアミン(1mL)を添加し、室温で攪拌した。そこに反応剤であるトリメチルアセチルクロリド(2.0mL,16.25mmol)及び4−ジメチルアミノピリジン(0.50g,4.09mmol)を加え、室温で3時間攪拌した。10重量%塩酸(40mL)で反応を停止させ、クロロホルム(100mL)を加え、分液漏斗にて抽出した。
なお、1H−NMRは、CDCl3を溶媒とし、270MHzにて測定した。
また、HPLCは、0.5mg/mLのトルエン溶液を調製し、以下の測定条件で測定した。
カラム種類:ODS
カラムサイズ:150mm×4.6mmφ
溶離液:トルエン/メタノール=3/7
検出器:UV290nm
また、1H−NMRの測定結果は、以下のとおりであった。
[1H−NMR(CDCl3,270MHz)]
7.82ppm(m,Ph,4H),7.68ppm(m,Ph,4H),7.23ppm(d,Ph,2H),7.00−7.13ppm(m,Ph,8H),6.86ppm(d,Ph,2H),1.55ppm(s,C60Me,3H),1.39ppm(s,tBu,18H),1.38ppm(s,tBu,18H),1.29ppm(s,tBu,9H)
以上の結果から、得られた生成物が表題化合物{C60(C6H4OC(=O)tBu)5Me}であることが確認された。
原料フラーレン誘導体であるC60(C6H4OH)5Me(0.30g,0.25mmol)の脱水テトラヒドロフラン(30mL)懸濁液に、トリエチルアミン(0.3mL)を添加し室温で攪拌した。そこに反応剤であるイソブチリルクロリド(0.60mL,5.72mmol)及び4−ジメチルアミノピリジン(0.15g,1.28mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。10重量%塩酸(10mL)で反応を停止させ、クロロホルム(30mL)を加え、分液漏斗にて抽出した。
HPLC測定の結果、リテンションタイム9.04minに88.12(Area%)で観測された。
また、1H−NMRの測定結果は、以下のとおりであった。
[1H−NMR(CDCl3,270MHz)]
7.82ppm(m,Ph,4H),7.69ppm(m,Ph,4H),7.02−7.22ppm(m,Ph,10H),6.89ppm(d,Ph,2H),2.65−2.90ppm(m,CH,5H),1.48ppm(s,C60Me,3H),1.35ppm(d,Me,12H),1.34ppm(d,Me,12H),1.25ppm(d,Me,6H)
さらに、得られた生成物について、実施例1と同様にして、溶解度を測定した。結果を表2に示す。
原料フラーレン誘導体であるC60(C6H4OH)5Me(2.00g,1.67mmol)の脱水テトラヒドロフラン(200mL)懸濁液に、トリエチルアミン(2mL)を添加し室温で攪拌した。そこに反応剤であるtert−ブチルアセチルクロリド(4.0mL,28.83mmol)及び4−ジメチルアミノピリジン(1.00g,8.18mmol)を加え、室温で3時間攪拌した。10重量%塩酸(40mL)で反応を停止させ、クロロホルム(100mL)を加え、分液漏斗にて抽出した。
HPLC測定の結果、リテンションタイム13.14minに95.74(Area%)で観測された。
また、1H−NMRの測定結果は、以下のとおりであった。
[1H−NMR(CDCl3,270MHz)]
7.82ppm(m,Ph,4H),7.68ppm(m,Ph,4H),7.23ppm(d,Ph,2H),7.05−7.15ppm(m,Ph,8H),6.87ppm(d,Ph,2H),2.46ppm(s,CH2,4H),2.45ppm(s,CH2,4H),2.36ppm(s,CH2,2H),1.55ppm(s,C60Me,3H),1.16ppm(s,tBu,18H),1.15ppm(s,tBu,18H),1.08ppm(s,tBu,9H)
さらに、得られた生成物について、実施例1と同様にして、溶解度を測定した。結果を表1に示す。
原料フラーレン誘導体であるC60(C6H4OH)5Me(0.30g,0.25mmol)の脱水テトラヒドロフラン(30mL)懸濁液に、トリエチルアミン(0.6mL)を添加し室温で攪拌した。そこに反応剤としてイソバレリルクロリド(0.60mL,4.92mmol)及び4−ジメチルアミノピリジン(0.15g,1.23mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。10重量%塩酸(10mL)で反応を停止させ、クロロホルム(30mL)を加え、分液漏斗にて抽出した。
HPLC測定の結果、リテンションタイム12.16minに71.86(Area%)で観測された。
また、1H−NMRの測定結果は、以下のとおりであった。
[1H−NMR(CDCl3,270MHz)]
7.81ppm(m,Ph,4H),7.68ppm(m,Ph,4H),7.05−7.25ppm(m,Ph,10H),6.87ppm(d,Ph,2H),2.46ppm(d,CH2,4H),2.45ppm(d,CH2,4H),2.35ppm(d,CH2,2H),2.10−2.32ppm(m,CH,5H),1.48ppm(s,C60Me,3H),1.08ppm(d,Me,12H),1.07ppm(d,Me,12H),1.01ppm(d,Me,6H)
さらに、得られた生成物について、実施例1と同様にして、溶解度を測定した。結果を表2に示す。
原料フラーレン誘導体であるC60(C6H4OH)5Me(1.00g,0.83mmol)のテトラヒドロフラン(80mL)懸濁液に、トリエチルアミン(10mL)を添加し、氷冷した。そこに、反応剤である二炭酸ジ−tertブチル(1.35g,6.18mmol)及び4−ジメチルアミノピリジン(40mg,0.33mmol)を加え、氷冷条件下で15分、室温で30分攪拌した。10%重量塩酸(40mL)で反応を停止させ、クロロホルム(70mL)を加え、分液漏斗にて抽出した。
次に、実施例1と同様にして乾燥、濾過、濃縮、晶析及び真空乾燥を行なうことにより、表題化合物{C60(C6H4OC(=O)OtBu)5Me}をオレンジ色固体(0.95g,0.56mmol,収率67%)として得た。
HPLC測定の結果、リテンションタイム9.18minに93.54(Area%)で観測された。
また、LC−MS測定の結果は、m/Z=1700であった。
さらに、1H−NMRの測定結果は、以下のとおりであった。
[1H−NMR(CDCl3,270MHz)]
7.81ppm(m,Ph,4H),7.67ppm(m,Ph,4H),7.27−7.17ppm(m,Ph,10H),6.74ppm(d,Ph,2H),1.59ppm(s,tBu,18H),1.57ppm(s,tBu,18H),1.56ppm(s,Me,3H),1.51ppm(s,tBu,9H)
さらに、得られた生成物について、実施例1と同様にして、溶解度を測定した。結果を表1に示す。
さらに、得られた表題化合物の1電子目の酸化還元電位(E1/2)は、実施例3と同様にして測定したところ、−1.38Vであった。
原料フラーレン誘導体であるC60(C6H4OH)5Me(0.50g,0.42mmol)のテトラヒドロフラン(10mL)、アセトン(30mL)懸濁液に、炭酸カリウム(4.00g)を添加し室温で攪拌した。そこに反応剤であるブロモ酢酸tert−ブチル(3.0mL,20.30mmol)を加え、室温で22時間攪拌した。次にトルエン(100mL)で希釈し、セライト濾過(展開液:トルエン)を行なった。濾液を濃縮しメタノール(300mL)で晶析を行ない、50℃真空乾燥を2時間行うことによって、表題化合物{C60(C6H4OCH2C(=O)OtBu)5Me}をオレンジ色固体(0.47g,0.26mmol,収率63%)として得た。
HPLC測定の結果、リテンションタイム6.02minに88.69(Area%)で観測された。
さらに、1H−NMRの測定結果は、以下のとおりであった。
[1H−NMR(CDCl3,270MHz)]
7.72ppm(m,Ph,4H),7.61ppm(m,Ph,4H),7.11ppm(d,Ph,2H),6.83−6.90ppm(m,Ph,8H),6.61ppm(d,Ph,2H),4.54ppm(s,CH2,4H),4.53ppm(s,CH2,4H),4.40ppm(s,CH2,2H),1.57ppm(s,Me,3H),1.53ppm(s,tBu,18H),1.50ppm(s,tBu,18H),1.43ppm(s,tBu,9H)
さらに、得られた生成物について、実施例1と同様にして、溶解度を測定した。結果を表1に示す。
さらに得られた表題化合物の1電子目の酸化還元電位(E1/2)は、実施例3と同様にして測定したところ、−1.42Vであった。
原料フラーレン誘導体であるC60(C6H4OH)5Me(0.30g,0.25mmol)のテトラヒドロフラン(10mL)、アセトン(10mL)懸濁液に、炭酸カリウム(2.00g)を添加し室温で攪拌した。そこに反応剤である1−ブロモ3,3−ジメチル−2−ブタノン(1.60mL,11.89mmol)を加え、室温で7時間攪拌した。トルエン(50mL)で希釈し、セライト濾過(展開液:トルエン)を行なった。次に、実施例6と同様にして濾液の濃縮、晶析、真空乾燥を行ない、表題化合物{C60(C6H4OCH2C(=O)tBu)5Me}をオレンジ色固体(0.30g,0.16mmol,収率65%)として得た。
HPLC測定の結果、リテンションタイム4.65minに80.04(Area%)で観測された。
さらに、1H−NMRの測定結果は、以下のとおりであった。
[1H−NMR(CDCl3,270MHz)]
7.72ppm(m,Ph,4H),7.60ppm(m,Ph,4H),7.11ppm(d,Ph,2H),6.83−6.90ppm(m,Ph,8H),6.62ppm(d,Ph,2H),4.93ppm(s,CH2,4H),4.90ppm(s,CH2,4H),4.77ppm(s,CH2,2H),1.42ppm(s,C60Me,3H),1.28ppm(s,tBu,18H),1.27ppm(s,tBu,18H),1.21ppm(s,tBu,9H)
さらに、得られた生成物について、実施例1と同様にして、溶解度を測定した。結果を表2に示す。
原料フラーレン誘導体であるC60(C6H4OH)5Me(2.00g,1.67mmol)の脱水テトラヒドロフラン(200mL)懸濁液に、トリエチルアミン(2mL)を添加し室温で攪拌した。そこに反応剤であるtert−ブチルイソシアネート(4.0mL,35.11mmol)を加え、室温で1時間攪拌した。10重量%塩酸(40mL)で反応を停止させ、クロロホルム(100mL)を加え、分液漏斗にて抽出した。
メタノールの代わりにn−ヘキサン(750mL)を用いた以外は実施例1と同様にして、乾燥、濾過、濃縮、晶析及び真空乾燥を行なうことにより、表題化合物{C60(C6H4OC(=O)NHtBu)5Me}をオレンジ色固体(2.31g,1.36mmol,収率81%)として得た。
HPLC測定の結果、リテンションタイム5.00minに95.56(Area%)で観測された。
さらに、1H−NMRの測定結果は、以下のとおりであった。
[1H−NMR(CDCl3,270MHz)]
7.77ppm(m,Ph,4H),7.65ppm(m,Ph,4H),7.09−7.24ppm(m,Ph,8H),6.89ppm(d,Ph,2H),5.02ppm(br,NH,4H),4.92ppm(br,NH,1H),1.63ppm(s,Me,3H),1.41ppm(s,tBu,18H),1.40ppm(s,tBu,18H),1.33ppm(s,tBu,9H)
さらに、得られた生成物について、実施例1と同様にして、溶解度を測定した。結果を表2に示す。
原料フラーレン誘導体であるC60(3,4−C6H3−OCH2O−)5Me(5.00g,3.73mmol)のオルトジクロロベンゼン(250mL)懸濁液に、三臭化ホウ素塩化メチレン溶液(1M:28mL)を添加し室温で攪拌した。4時間後、水(250mL)、酢酸エチル(250mL)を添加し、反応を停止させた。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮、ヘキサン(500mL)で晶析を行なった。THF(70mL)、メタノール(70mL)に再溶解させ、室温で6時間攪拌した後、濃縮を行ない、酢酸エチル、水で分液操作を行なった。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、再びヘキサン(500mL)で晶析し、170℃で真空乾燥することで表題化合物{C60(3,4−C6H3(OH)2)5Me}をオレンジ色固体(3.58g,2.80mmol,収率75%)として得た。
カラム:L−Column(ODS:3um)
カラムサイズ:100mm×4.6mmφ
検出器:UV290nm
また、1H−NMRの測定結果は、以下のとおりであった。
[1H−NMR(DMSO−d6,270MHz)]
9.17ppm(s,OH,1H),9.01ppm(s,OH,7H),8.83ppm(s,OH,1H),8.59ppm(s,OH,1H),7.30ppm(m,Ph,4H),7.09ppm(m,Ph,4H),6.72ppm(m,Ph,5H),6.47ppm(m,Ph,2H),1.68(s,C60Me,3H)
さらに、得られた生成物について、実施例1と同様にして、溶解度を測定した。結果を表1に示す。
さらに、得られた表題化合物の1電子目の酸化還元電位(E1/2)は、実施例3と同様にして測定したところ、−1.49Vであった。
原料フラーレン誘導体であるC60(3,4−C6H3(OH)2)5Me(0.10g,0.09mmol)の脱水テトラヒドロフラン(10mL)溶液に、トリエチルアミン(0.1mL)を添加し室温で攪拌した。そこに反応剤としてアセチルクロリド(0.60mL,8.45mmol)及び4−ジメチルアミノピリジン(0.05g,0.16mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。10重量%塩酸(10mL)で反応を停止させ、クロロホルム(50mL)を加え、分液漏斗にて抽出した。
HPLC測定の結果、リテンションタイム5.19minに93.99Area%で観測された。
さらに、1H−NMRの測定結果は、以下のとおりであった。
[1H−NMR(CDCl3,270MHz)]
7.51〜7.70ppm(m,Ph,10H),7.20ppm(m,Ph,3H),7.10ppm(m,Ph,2H),2.29ppm(m,C(=O)−Me,12H),2.26ppm(m,C(=O)−Me,12H),2.21ppm(s,C(=O)−Me,3H),2.17ppm(s,C(=O)−Me,3H),1.56ppm(s,C60Me,3H)
さらに、得られた生成物について、実施例1と同様にして、溶解度を測定した。結果を表1に示す。
さらに得られた表題化合物の1電子目の酸化還元電位(E1/2)は、実施例3と同様にして測定したところ、−1.35Vであった。
ヨウ素(1.88g,7.39mmol)にヘキサメチルジシラン(1.44mL,7.04mmol)を加え、70℃で30min加熱攪拌した溶液に、原料フラーレン誘導体であるC60(3,5−C6H3−(OMe)2)5Me(1.00g,0.70mmol)の脱水オルトジクロロベンゼン(10mL)懸濁液を添加し、さらに脱水オルトジクロロベンゼン(3mL)を添加した。90℃で8時間加熱を行なった後、25℃まで冷却し、冷水50mLで反応を停止させた。酢酸エチル100mLを添加し、有機層を抽出した後、水ならびに亜硫酸アンモニウム水溶液で分液した後、もう一度水洗浄を行なった。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を濃縮しヘキサン(20mL)で晶析し、170℃で真空乾燥することで表題化合物{C60(3,5−C6H3(OH)2)5Me}をオレンジ色固体(0.70g,0.55mmol,収率78%)として得た。
HPLC測定の結果、リテンションタイム2.95minに95.07(Area%)で観測された。
さらに、1H−NMRの測定結果は、以下のとおりであった。
[1H−NMR(DMSO−d6,270MHz)]
9.23ppm(s,OH,4H),9.20ppm(s,OH,2H),9.17ppm(s,OH,4H),6.80ppm(d,Ph,4H),6.79ppm(d,Ph,4H),6.19ppm(t,Ph,2H),6.15ppm(t,Ph,1H),6.11ppm(t,Ph,2H),6.05ppm(d,Ph,2H),1.94ppm(s,C60Me,3H)
さらに、得られた生成物について、実施例1と同様にして、溶解度を測定した。結果を表1に示す。
さらに得られた表題化合物の1電子目の酸化還元電位(E1/2)は、実施例3と同様にして測定したところ、−1.47Vであった。
原料フラーレン誘導体であるC60(C6H4OH)5Me(0.20g,0.17mmol)の脱水テトラヒドロフラン(20mL)懸濁液に、トリエチルアミン(0.2mL)を添加し室温で攪拌した。そこに反応剤としてアセチルクロリド(0.60mL,8.45mmol)及び4−ジメチルアミノピリジン(0.10g,0.32mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。10重量%塩酸(10mL)で反応を停止させ、クロロホルム(50mL)を加え、分液漏斗にて抽出した。
次に、メタノールの使用量を300mLとした他は実施例1と同様にして乾燥、濾過、濃縮、晶析及び真空乾燥を行なうことにより、表題化合物{C60(C6H4OC(=O)Me)5Me}をオレンジ色固体(0.18g,0.12mmol,収率70%)として得た。
HPLC測定の結果、リテンションタイム4.81minに91.24(Area%)で観測された。
さらに、1H−NMRの測定結果は、以下のとおりであった。
[1H−NMR(CDCl3,270MHz)]
7.82ppm(m,Ph,4H),7.70ppm(m,Ph,4H),7.05−7.24ppm(m,Ph,10H),6.87ppm(d,Ph,2H),2.34ppm(s,Me,6H),2.31ppm(s,Me,6H),2.21ppm(s,Me,3H),1.55ppm(s,C60Me,3H)
さらに、得られた生成物について、実施例1と同様にして、溶解度を測定した。結果を表2に示す。
原料フラーレン誘導体であるC60(C6H4OH)5Me(0.30g,0.25mmol)の脱水テトラヒドロフラン(30mL)懸濁液に、トリエチルアミン(0.3mL)を添加し室温で攪拌した。そこに反応剤であるプロピオニルクロリド(0.50mL,5.59mmol)及び4−ジメチルアミノピリジン(0.15g,1.28mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。10重量%塩酸(10mL)で反応を停止させ、クロロホルム(30mL)を加え、分液漏斗にて抽出した。
次に、メタノールの使用量を300mLとした他は実施例1と同様にして乾燥、濾過、濃縮、晶析及び真空乾燥を行なうことにより、表題化合物{C60(C6H4OC(=O)Et)5Me}をオレンジ色固体(0.25g,0.16mmol,収率63%)として得た。
HPLC測定の結果、リテンションタイム7.01minに82.42(Area%)で観測された。
さらに、1H−NMRの測定結果は、以下のとおりであった。
[1H−NMR(CDCl3,270MHz)]
7.82ppm(m,Ph,4H),7.77ppm(m,Ph,4H),7.05−7.25ppm(m,Ph,10H),6.88ppm(d,Ph,2H),2.63ppm(q,CH2,4H),2.61ppm(q,CH2,4H),2.50ppm(q,CH2,2H),1.48ppm(s,C60Me,3H),1.30ppm(t,Me,6H),1.28ppm(t,Me,6H),1.20ppm(t,Me,3H)
さらに、得られた生成物について、実施例1と同様にして、溶解度を測定した。結果を表2に示す。
原料フラーレン誘導体であるC60(C6H4OH)5Me(0.30g,0.25mmol)の脱水テトラヒドロフラン(30mL)懸濁液に、トリエチルアミン(0.3mL)を添加し室温で攪拌した。そこに反応剤であるブチリルクロリド(0.50mL,4.81mmol)及び4−ジメチルアミノピリジン(0.15g,1.28mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。10重量%塩酸(10mL)で反応を停止させ、クロロホルム(30mL)を加え、分液漏斗にて抽出した。
次に、メタノールの使用量を300mLとした他は実施例1と同様にして乾燥、濾過、濃縮、晶析及び真空乾燥を行なうことにより、表題化合物{C60(C6H4OC(=O)nPr)5Me}をオレンジ色固体(0.25g,0.15mmol,収率60%)として得た。
HPLC測定の結果、リテンションタイム9.50minに75.21(Area%)で観測された。
さらに、1H−NMRの測定結果は、以下のとおりであった。
[1H−NMR(CDCl3,270MHz)]
7.81ppm(m,Ph,4H),7.69ppm(m,Ph,4H),7.05−7.25ppm(m,Ph,10H),6.89ppm(d,Ph,2H),2.58ppm(t,C(=O)CH2,4H),2.56ppm(t,C(=O)CH24H),2.46ppm(t,C(=O)CH2,2H),1.62−1.90ppm(m,CH2,10H),1.48ppm(s,C60Me,3H),1.07ppm(t,Me,6H),1.06ppm(t,Me,6H),0.99ppm(t,Me,3H)
さらに、得られた生成物について、実施例1と同様にして、溶解度を測定した。結果を表2に示す。
原料フラーレン誘導体であるC60(C6H4OH)5Me(0.20g,0.17mmol)の脱水テトラヒドロフラン(20mL)懸濁液に、トリエチルアミン(0.2mL)を添加し室温で攪拌した。そこに反応剤であるp−アニソイルクロリド(0.20g,1.17mmol)及び4−ジメチルアミノピリジン(0.10g,0.32mmol)を加え、室温で3時間攪拌した。10重量%塩酸(10mL)で反応を停止させ、クロロホルム(50mL)を加え、分液漏斗にて抽出した。
次に、メタノールの使用量を300mLとした他は実施例1と同様にして乾燥、濾過、濃縮、晶析及び真空乾燥を行なうことにより、表題化合物{C60(C6H4OC(=O)C6H4OMe)5Me}をオレンジ色固体(0.22g,0.12mmol,収率69%)として得た。
HPLC測定の結果、リテンションタイム11.29minに90.37(Area%)で観測された。
さらに、1H−NMRの測定結果は、以下のとおりであった。
[1H−NMR(CDCl3,270MHz)]
8.18ppm(d,Ph,4H),8.15ppm(d,Ph,4H),8.07ppm(d,Ph,2H),7.93ppm(m,Ph,4H),7.80ppm(m,Ph,4H),7.33ppm(m,Ph,2H),7.09−7.26ppm(m,Ph,8H),7.05ppm(d,Ph,2H),7.03−6.93ppm(m,Ph,10H),3.89ppm(s,OMe,12H),3.87ppm(s,OMe,3H),1.59ppm(s,C60Me,3H)
さらに、得られた生成物について、実施例1と同様にして、溶解度を測定した。結果を表2に示す。
原料フラーレン誘導体であるC60(CH2SiMe)5H(1.00g,0.87mmol)の脱水テトラヒドロフラン(50mL)溶液に、tBuOK(194mg,1.73mmol)を添加し、1時間室温で攪拌した。そこにMeI(0.5mL,8.03mmol)を添加し、室温で1時間攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液(0.2mL)で反応を停止させ、セライト濾過し、生成した塩を取り除いた。溶媒を除去し、ヘキサン溶液にした後、シリカカラムクロマトグラフィーを行ない、最初に展開されるバンドを分取した。濃縮後、メタノール(300mL)で晶析を行ない、真空乾燥を行なうことにより、表題化合物{C60(CH2SiMe3)5Me}を赤色固体(0.45g,0.38mmol,収率44%)として得た。
HPLC測定の結果、リテンションタイム6.62minに93.45(Area%)で観測された。
さらに、1H−NMRの測定結果は、以下のとおりであった。
[1H−NMR(CDCl3,270MHz)]
2.37(br,CH2,2H),2.07(d,CH2,2H),2.05(d,CH2,2H),1.81(d,CH2,2H),1.77(d,CH2,2H),1.56(s,C60Me,3H),0.14(s,SiMe,18H),0.12(s,SiMe,18H),0.02(s,SiMe,9H)
さらに、得られた生成物について、実施例1と同様にして、溶解度を測定した。結果を表2に示す。
実施例1で合成したC60(C6H4OC(=O)tBu)5Meのトルエン溶液(1mg/mL)とC60(C6H4OC(=O)tBu)5Hのトルエン溶液(1mg/mL)とをそれぞれ作製し、室温空気下で放置した。数日毎に、0.2mLずつ試料をとりだし、トルエンで5倍に希釈したのち、HPLCでその経時変化を分析した。HPLC分析条件は、ODS、カラムサイズ:150mm×4.6mmΦ、溶離液:トルエン/メタノール=3/7、流速:1.0mL/min、検出器:UV290nmとした。
観測される全ピーク面積にしめるC60(C6H4OC(=O)tBu)5MeもしくはC60(C6H4OC(=O)tBu)5Hのピーク面積の割合の経時的な変化を表3に示した。
また、水酸基やアルコキシカルボニル基等の極性官能基を有する誘導体は、極性官能基を更に他の官能基に変換できるため、各種フラーレン誘導体の原料としても有用である。更に、多くの有機基を有し且つフラーレン骨格のπ電子共役系を保持しているため、同程度の数の有機基が付加した従来公知のフラーレン誘導体より電子授受能力に優れ、有機基の種類及び数により電子授受の起こりやすさ(酸化還元挙動)を制御しやすいため、電子授受が関係する電子材料用途などに広範に用いられる可能性がある。
Claims (10)
- 下記式(I)の部分構造を有するとともに、
下記式(I)のC6〜C8が、各々独立に下記式(II)で表される構造の有機基と結合している
ことを特徴とする、フラーレン誘導体。
、C1は炭素数1〜30の有機基と結合している。}
- アリーレン基がフェニレン基である
ことを特徴とする請求項1に記載のフラーレン誘導体。 - 上記式(I)中のC6〜C8に加えて、C9〜C10が各々独立に上記式(II)で表される
構造の有機基と結合している
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のフラーレン誘導体。 - 上記式(II)のTにおける14族の原子が炭素原子である
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のフラーレン誘導体。 - 25℃でのプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテートへの溶解性が10mg/mL以上で、且つテトラヒドロフラン溶媒中における1電子目の酸化還元電位が、フェロセンの酸化還元電位基準で−1.60V以上である
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のフラーレン誘導体。 - 下記式(I)の部分構造を有するとともに、
下記式(I)のC6〜C8が、各々独立に下記式(IV)で表される構造の有機基と結合していることを特徴とする、フラーレン誘導体。
、C1は炭素数1〜30の有機基と結合している。}
- 上記式(I)中のC6〜C8に加えて、C9〜C10が各々独立に上記式(IV)で表される
構造の有機基と結合している
ことを特徴とする、請求項7に記載のフラーレン誘導体。 - 25℃でのプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテートへの溶解性が10mg/mL以上で、且つ、テトラヒドロフラン溶媒中における1電子目の酸化還元電位が、フェロセンの酸化還元電位基準で−1.60V以上である
ことを特徴とする請求項7又は請求項8に記載のフラーレン誘導体。 - フラーレン骨格がフラーレンC60である
ことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載のフラーレン誘導体。
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