JP4824959B2 - フラーレン誘導体 - Google Patents

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Description

本発明は、新規のフラーレン誘導体に関するものである。詳しくは、本発明は、フラーレン骨格上に特定の部分構造を有するフラーレン誘導体に関するものである。
1990年にC60の大量合成法が確立されて以来、フラーレンに関する研究が精力的に展開されている。その結果、数多くのフラーレン誘導体が合成され、その多様な機能が明らかにされてきた。それに伴い、各種用途開発が進められている(非特許文献1〜3参照)。
これまでに5重付加フラーレン誘導体は種々合成され、報告されてきた(特許文献1〜3及び非特許文献4〜6参照)。これらのフラーレン誘導体は、例えばC60骨格のものでは50電子系のπ電子共役になっており、60電子系のπ電子共役である無置換のC60とは異なる立体配置や電子的性質を有することから、新たな電子伝導材料、半導体、生理活性物質等として期待されている。
また、5重付加フラーレン誘導体より置換基の付加数が多い10重付加フラーレン誘導体も知られている(特許文献3参照)。しかしながら、これは例えばC60骨格では40電子系のπ電子共役であり、無置換フラーレン及び5重付加フラーレン誘導体とは電子状態などが大きく異なる。さらに、5重付加フラーレン誘導体より置換基の付加数が少ない、66電子系のπ電子共役である3重付加C70誘導体が合成され、報告されている(特許文献4参照)。
上述の各種フラーレン誘導体は、フラーレンの特定部位に集中的に有機基が付加した独特の構造で、かつ、長いπ電子共役を有しているためその電気化学的物性などに興味が持たれている。
ところで、フラーレン誘導体を電子材料や金属錯体の配位子等に利用したり、他のフラーレン誘導体の中間体として使用するためには、フラーレン誘導体が有機溶媒に対して高い溶解性を示すことが好ましい。5重付加フラーレン誘導体の中には、無置換フラーレンよりも有機溶媒に対する溶解性が高いものもあるが、更に、各種有機溶媒に対する溶解性の高いフラーレン誘導体が望まれている。
現代化学1992年4月号12頁 現代化学2000年6月号46頁 Chemical Reviews,1998,98,2527 特開平10−167994号公報 特開平11−255509号公報 特開2002−241323号公報 特開平11−255508号公報 J.Am.Chem.Soc.1996,118,12850 Org.Lett.2000,2,1919 Chem.Lett.2000,1098
これまでに合成されてきた上述の各種フラーレン誘導体は、トルエンなどのベンゼン系溶媒、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒並びにヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶媒に高溶解性を示しているが、これらの溶媒を工業用途で用いる場合には、安全性の面で好ましくない場合や、揮発性などの観点から取扱が難しい場合がある。一方、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート(PGMEA)や乳酸エチルなどのエステル系溶媒は、安全性並びに取扱性に優れている。したがって、これらエステル系溶媒に対する溶解性の高いフラーレン誘導体が特に望まれいてる。
また、例えば、C60Ph5H(式中、Phはフェニル基を表す)について、保存による酸化が報告されているように(Chem.Commun.1997,1579.を参照)、これらの多重付加フラーレン誘導体は、一般的に、空気に対して不安定である。したがって、フラーレン誘導体を工業用途で用いる場合などには、空気に対する安定性を高めることも望まれる。
本発明は上記の課題に鑑みて創案されたもので、新規のフラーレン誘導体、特に、エステル系溶媒に対する溶解性が高く、且つ、空気中で安定なフラーレン誘導体を提供することを目的とする。
本発明の発明者は上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、特定構造の有機基が特定の立体配置で付加したフラーレン誘導体が、従来のフラーレン及びフラーレン誘導体よりもエステル系溶媒に対する溶解性が高く、且つ、空気に対する安定性が高いことを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明の要旨は、下記式(I)の部分構造を有するとともに、下記式(I)のC6〜C8が、各々独立に下記式(II)で表される構造の有機基と結合していることを特徴とする、フラーレン誘導体に存する(請求項)。
Figure 0004824959
{上記式(I)中、C1〜C10は、いずれもフラーレン骨格を構成する炭素原子を表わし
、C1は炭素数1〜30の有機基と結合している。}
Figure 0004824959
{上記式(II)中、Arは、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、ハロゲン原子、チオール基、チオエーテル基、アルコキシフェニル基、有機ケイ素基から選ばれる少なくとも1種の置換基により置換されていてもよいアリーレン基又はヘテロアリーレン基を表わし、Lは、Ar側の末端が酸素原子であり、カルボニル基を少なくとも1個有する主鎖の原子数11の2価の連結基であって、上記カルボニル基以外の部分を構成する基が、メチレン基、イミノ基、オキシ基よりなる群から選ばれる少なくとも一種であり、Tは2つ以上の炭素数1〜20の有機基と結合している14族の原子を表わす。}
このとき、アリーレン基がフェニレン基であることが好ましい(請求項2)。
このとき、上記式(I)中のC6〜C8に加えて、C9〜C10が各々独立に上記式(II)で表される構造の有機基と結合していることが好ましい(請求項3)。
また、上記式(II)のTにおける14族の原子が炭素原子であることが好ましい(請求項)。
また、上記式(II)において、LのAr側の末端が下記式(III)で表わされる構造で
あることが好ましい(請求項)。
Figure 0004824959
{上記式(III)中、nは0〜10の整数を表わす。}
さらに、25℃でのプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテートへの溶解性が10mg/mL以上で、且つテトラヒドロフラン溶媒中における1電子目の酸化還元電位が、フェロセンの酸化還元電位基準で−1.60V以上であることが好ましい(請求項6)。
本発明の別の要旨は、下記式(I)の部分構造を有するとともに、下記式(I)のC6
〜C8が、各々独立に下記式(IV)で表される構造の有機基と結合していることを特徴と
する、フラーレン誘導体に存する(請求項7)。
Figure 0004824959
{上記式(I)中、C1〜C10は、いずれもフラーレン骨格を構成する炭素原子を表わし
、C1は炭素数1〜30の有機基と結合している。}
Figure 0004824959
{上記式(IV)中、sは2〜5の整数を表わし、Rは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の直鎖アルキル基、分岐状の鎖状アルキル基、環状アルキル基、アルケニル基から選ばれる有機基、または、炭素数19以下の直鎖アルキル基、分岐状の鎖状アルキル基、環状アルキル基、アルケニル基から選ばれる有機基が結合するカルボニル基を表わす。}
また、上記式(I)中のC6〜C8に加えて、C9〜C10が各々独立に上記式(IV)で表
される構造の有機基と結合していることが好ましい(請求項)。
さらに、25℃でのプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテートへの溶解性が10mg/mL以上で、且つ、テトラヒドロフラン溶媒中における1電子目の酸化還元電位が、フェロセンの酸化還元電位基準で−1.60V以上であることが好ましい(請求項)。
さらに、フラーレン骨格がフラーレンC60であることが好ましい(請求項10)。
本発明によれば、エステル系溶媒に対する溶解性が高く、且つ、空気に対する安定性も高いフラーレン誘導体を提供することができる。
以下、本発明について説明するが、本発明は以下の例示などに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
[I.フラーレン誘導体]
本発明のフラーレン誘導体は、特定の部分構造を有するフラーレン誘導体である。ここで、フラーレンとは、閉殻構造を有する炭素クラスターである。フラーレンの炭素数は、通常60〜130の偶数である。フラーレンの具体例としては、C60、C70、C76、C78、C82、C84、C90、C94、C96及びこれらよりも多くの炭素を有する高次の炭素クラスターなどが挙げられる。
また、フラーレン誘導体とは、フラーレン骨格を有する化合物又は組成物の総称である。即ち、本発明に係るフラーレン誘導体は、フラーレン骨格上に置換基を有したものの他、フラーレン骨格の内部に金属や化合物等を内包するもの及び他の金属原子や化合物と錯体を形成したもの等も含まれる。このうち、フラーレン製造時における主生成物フラーレンが入手容易な点から、C60及びC70の誘導体が好ましく、C60の誘導体がより好ましい。即ち、フラーレン骨格がC60又はC70であるものが好ましく、C60であるものがより好ましい。なお、以下の説明において、炭素数i(iは任意の自然数)のフラーレン骨格を、適宜、一般式Ciで表わす。
さらに、本発明のフラーレン誘導体は、以下に列挙するいずれかの特徴を備える。
(a)25℃でのプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテートへの溶解性が10mg/mL以上であるフラーレン誘導体。
(b)テトラヒドロフラン溶媒中における1電子目の酸化還元電位が、フェロセンの酸化還元電位基準で−1.60 V以上であるフラーレン誘導体。
(c)下記式(I)の部分構造を有するフラーレン誘導体。
Figure 0004824959
{上記式(I)中、C1〜C10は、いずれもフラーレン骨格を構成する炭素原子を表わし、C1は炭素数1〜30の有機基と結合しており、少なくともC6〜C8は、各々独立に有機基と結合している。}
(d)下記式(II)で表される構造の有機基と結合しているフラーレン誘導体。
Figure 0004824959
{上記式(II)中、Arは芳香族性を有する2価の基を表わし、Lはカルボニル基を少なくとも1個有する、主鎖の原子数2〜12の2価の連結基を表わし、Tは2つ以上の炭素数1〜20の有機基と結合している14族の原子を表わす。}
(e)下記式(IV)で表される構造の有機基と結合しているフラーレン誘導体。
Figure 0004824959
{上記式(IV)中、sは2〜5の整数を表わし、Rは、水素原子、または、炭素数1〜20の有機基を表わす。}
これらの特徴のうち、本発明のフラーレン誘導体は、次の組み合わせで上記の特徴を備えている。
(A)(a)25℃でのプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテートへの溶解性が10mg/mL以上で、且つ、(b)テトラヒドロフラン溶媒中における1電子目の酸化還元電位が、フェロセンの酸化還元電位基準で−1.60V以上である、フラーレン誘導体。
(B)(c)上記(I)の部分構造を有するとともに、(d)上記式(I)のC6〜C8が、各々独立に上記式(II)で表される構造の有機基と結合している、フラーレン誘導体。
(C)(c)上記(I)の部分構造を有するとともに、(e)上記式(I)のC6〜C8が、各々独立に上記式(IV)で表される構造の有機基と結合している、フラーレン誘導体。
さらに好ましくは、次の組み合わせである。
(F)(a)25℃でのプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテートへの溶解性が10mg/mL以上で、且つ、(b)テトラヒドロフラン溶媒中における1電子目の酸化還元電位が、フェロセンの酸化還元電位基準で−1.60V以上であり、さらに、(d)上記式(II)で表される構造の有機基と結合している、フラーレン誘導体。
(G)(a)25℃でのプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテートへの溶解性が10mg/mL以上で、且つ、(b)テトラヒドロフラン溶媒中における1電子目の酸化還元電位が、フェロセンの酸化還元電位基準で−1.60V以上であり、さらに、(e)上記式(IV)で表される構造の有機基と結合している、フラーレン誘導体。
(H)(a)25℃でのプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテートへの溶解性が10mg/mL以上であって、(c)上記(I)の部分構造を有するとともに、(d)上記式(I)のC6〜C8が、各々独立に上記式(II)で表される構造の有機基と結合している、フラーレン誘導体。
(I)(a)25℃でのプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテートへの溶解性が10mg/mL以上であって、(c)上記(I)の部分構造を有するとともに、(e)上記式(I)のC6〜C8が、各々独立に上記式(IV)で表される構造の有機基と結合している、フラーレン誘導体。
特に好ましくは、次の組み合わせである。
(J)(a)25℃でのプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテートへの溶解性が10mg/mL以上で、且つ、(b)テトラヒドロフラン溶媒中における1電子目の酸化還元電位が、フェロセンの酸化還元電位基準で−1.60V以上であり、さらに、(c)上記(I)の部分構造を有するとともに、(d)上記式(I)のC6〜C8が、各々独立に上記式(II)で表される構造の有機基と結合している、フラーレン誘導体。
(K)(a)25℃でのプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテートへの溶解性が10mg/mL以上で、且つ、(b)テトラヒドロフラン溶媒中における1電子目の酸化還元電位が、フェロセンの酸化還元電位基準で−1.60V以上であり、さらに、(c)上記(I)の部分構造を有するとともに、(e)上記式(I)のC6〜C8が、各々独立に上記式(IV)で表される構造の有機基と結合している、フラーレン誘導体。
以下に、本発明の特徴について個々に説明する。
(溶解性)
本発明のフラーレン誘導体は、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート(PGMEA)や乳酸エチルなど工業用途で多く用いられている安全性の高いエステル系溶媒全般に対して高い溶解性を有するものである。本明細書においては、規定の客観性を持たせるために、フラーレン誘導体が一般に最も溶解し難いとされるPGMEAに対する25℃での溶解度を、上記エステル系溶媒への溶解性を示すパラメータとして採用し、これによってフラーレン誘導体を規定するものとする。
本発明において、フラーレン誘導体のPGMEAに対する溶解度は、フラーレン誘導体をPGMEAに混合し、超音波照射を10分かけた後、目視で沈殿物や不溶分が検出されない限界量から算出される。具体的には、25℃、常圧下でPGMEAに対して、エステル系溶媒の単位体積(1mL)あたりに、本発明のフラーレン誘導体が、通常10mg以上溶解する。なかでも、50mg/mL以上が好ましく、また100mg/mL以上がさらに好ましい。
(酸化還元電位)
本発明のフラーレン誘導体は、フラーレン特有の性質を維持している。本明細書においては、規定の客観性を持たせるために、CV(サイクリックボルタンメトリー)の1電子目の酸化還元電位(E1/2)をパラメータとして採用し、これによってフラーレン誘導体を規定するものとする。
本発明においてフラーレン誘導体の1電子目の酸化還元電位(E1/2)は、テトラヒドロフラン溶媒中、指示電解質nBu4N・ClO4、作用電極Glassy Carbon、対電極Pt、参照電極Ag/AgNO3、挿引速度100mV/sにおいて、フェロセン(Fc)の酸化還元電位を基準とした値であり、通常−1.60V以上である。中でも、好ましくは−1.55V以上、さらに好ましくは−1.50V以上である。一方、上限は、通常−0.80V以下であり、好ましくは、−0.90V以下である。1電子目の酸化還元電位の値が低すぎると、フラーレンの電子授受能力を利用した電子材料用途として、本発明のフラーレン誘導体が適さなくなる可能性がある。
(構造)
本発明のフラーレン誘導体が有する特定の部分構造は、具体的には、下記式(I)で表わされる部分構造である。
Figure 0004824959
ただし、上記式(I)において、C1〜C10は、いずれもフラーレン骨格を構成する炭素原子を表わす。
上記式(I)中のC1は、炭素数1〜30の有機基(以下適宜、「R10」と表記する)と結合している。R10は、本発明のフラーレン誘導体の優れた物性を大幅に損ねるものでなければ、他に制限は無く、任意の有機基が用いられる。ただし、中でも、空気中で酸化されやすい結合(例えば、非芳香族性の不飽和結合など)を含まない基が好ましく、鎖状又は環状の炭化水素基がより好ましく、鎖状又は環状のアルキル基が特に好ましい。
10の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の直鎖又は分岐状の鎖状アルキル基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基;アリル基等のアルケニル基;ベンジル基、p−メトキシベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基などが挙げられる。
10は、本発明のフラーレン誘導体の優れた物性を大幅に損なわなければ、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、アリール基、アルコキシ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子等が挙げられる。また、これらの置換基が更に置換基で置換されていてもよい。
ただし、R10は、空気酸化される可能性のある置換基(例えば、アルケニル基やアルキニル基など)を含まないものが好ましい。空気酸化される可能性のある置換基をR10が有していた場合、本発明のフラーレン誘導体の空気中での安定性が低下する虞があるためである。
さらに、上記のように、R10の炭素数は通常1以上30以下であるが、R10が置換基を有している場合、その置換基の炭素数を含めた炭素数が上記範囲に収まることが望ましい。また、炭素数が多すぎると、一般的に、フラーレン骨格に結合させるのが困難になるため、R10の炭素数は、好ましくは20以下、より好ましくは10以下である。一方、炭素数は1以上であれば空気中での安定性を付与することは可能であるが、有機溶媒に対する溶解性や他の官能基への誘導体化のしやすさの観点からは、R10の炭素数は好ましくは4以上、より好ましくは6以上が望ましい。
これらのうち好ましいR10としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基等のヒドロキシアルキル基;ベンジル基、p−メトキシベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基などが挙げられる。
なかでも、合成の容易さ及び空気中での安定性の観点からアルキル基が好ましく、特に、アルコールやエステル系溶媒などに対する本発明のフラーレン誘導体の溶解性をさらに高めることができる点や、更に別の官能基に置換しやすい点では、R10としては、水酸基またはアルコキシカルボニル基等の極性官能基を含むアルキル基が好ましい。
また、上記式(I)において、C6〜C8は、各々独立に、上記の式(II)で表される構造の有機基(以下適宜、「R20」と表記する)、または、上記の式(IV)で表わされる構造の有機基(以下適宜、「R30」と表記する)と結合している。また、エステル系溶媒に対する溶解性を高める観点から、C6〜C8に加えてC9〜C10も、それぞれ独立に、R20又はR30と結合していることが望ましい。ここで、上記式(I)にはR20とR30とが共に結合していてもよいが、通常は、本発明のフラーレン誘導体には、R20とR30との何れか一方のみを結合させるようにする。なお、前記のように、各R20は同じであっても異なっていてもよく、また、R30も同じであっても異なっていてもよいが、合成が容易である点から、各R20やR30は、それぞれ同じであることが好ましい。
以下、式(II)で表わされる有機基、即ち、R20について説明する。
Figure 0004824959
上記式(II)において、Arは芳香族性を有する2価の基を表わし、この条件を満たす基であれば、任意の基を用いることができる。具体例としては、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、ビフェニレン基、トリレン基及びメトキシフェニレン基等のアリーレン基;−C42S−、−C53N−、−C42O−等のヘテロアリーレン基、並びにこれらの基に更に置換基が結合した基などが挙げられる。このうち、アリーレン基が好ましく、フェニレン基が特に好ましい。
Arが有する置換基は、本発明のフラーレン誘導体の優れた物性を大幅に損ねるものでなければ他に制限は無く、任意の置換基を有することができる。具体例を挙げると、例えば、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、ハロゲン原子、チオール基、チオエーテル基、アルコキシフェニル基、有機ケイ素基などが挙げられる。
また、上記式(II)において、Lはカルボニル基を少なくとも1個有する、主鎖の原子数2〜12の2価の連結基を表わす。連結基Lは、Arのどの位置に結合していても構わない。ただし、フラーレン骨格との相互作用を考慮した場合、フラーレン骨格と結合している炭素からできるだけ遠い炭素と結合していることが好ましい。具体例としてArがフェニレン基である場合、そのフェニレン基のp位(パラ位)の位置でフラーレン骨格と連結基Lとが結合していることが好ましい。
連結基Lが有するカルボニル基の数は1個でも、2個以上でもよい。ただし、原料入手が容易な点から、1〜4個が好ましい。
また、カルボニル基の位置は、連結基L中のどの位置にあってもよいが、合成の容易さから、Ar側の末端以外の位置にあることが好ましい。
また、連結基Lのカルボニル基以外の部分を構成する基について制限は無く、2価の基であれば任意の基を用いることができる。具体例を挙げると、アルキレン基{例えばメチレン基(−CH2−)、エチレン基(−CH2CH2−)など}、シリレン基(−SiH2−)等の14族の原子を含むもの;イミノ基(−NH−)、ホスフィンジイル基(−PH−)等の15族の原子を含むもの、オキシ基(−O−)、チオ基(−S−)等の16族の原子を含むものなどが挙げられる。このうち、メチレン基、イミノ基(−NH−)及びオキシ基(−O−)が好ましく、特にメチレン基及びオキシ基が好ましい。これら2価の基は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、カルボニル基を含めた連結基Lの主鎖の原子数としては、通常2以上、好ましくは4以上、また、通常12以下、好ましくは8以下である。ここで、主鎖の原子数とは、連結基Lの、前記式(II)においてArとTとを連結する部分をつなぐ(主鎖)原子の数をいう。したがって、アルキレン基を例に挙げると、メチレン基は主鎖の原子数は1、エチレン基は主鎖の原子数は2、トリメチレン基は主鎖の原子数は3となり、おのおのカルボニル基を少なくとも1個以上有するときは、それぞれの原子数にカルボニル基の個数を足した数が主鎖の原子数となる。
さらに、連結基Lは、本発明のフラーレン誘導体の優れた物性を大幅に損ねるものでなければ、任意の置換基を有していても構わない。連結基Lが有していてもよい置換基の具体例としては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、ハロゲン原子、チオール基、チオエーテル基、アルコキシフェニル基、有機ケイ素基などが挙げられる。また、連結基Lは、主鎖の間で環を形成していても構わない。ただし、高溶解性並びに原料入手の容易さから、連結基Lはこれらの置換基を有していないことが望ましい。
また、前記式(II)において、連結基LのAr側の末端は、合成が容易であることから酸素原子であることが好ましい。
さらに、連結基LのAr側の末端は、下記式(III)で表わされる基であることが好ましい。ただし、下記式(III)において、nは通常0以上、好ましくは1以上、また、通常10以下、好ましくは6以下の整数である。さらに、式(III)の基は、通常、酸素がArに結合する。
Figure 0004824959
また、上記式(II)において、Tは14族の任意の原子を用いることができる。その具体例としては、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、錫、鉛等の14族の原子が挙げられる。中でも、安全性ならびに原料入手の観点から、炭素原子及びケイ素原子が好ましく、特に炭素原子が好ましい。
さらに、上記式(II)において、Tは2つ以上の炭素数1〜20の有機基と結合している。Tと結合している有機基は、同一でも異なっていてもよいが、同一である方が好ましい。Tが4価の場合、炭素数1〜20の有機基2つの他、水素原子又は、更にもう1つの炭素数1〜20の有機基と結合していても良い。ここで、Tに結合している有機基の種類に特に制限は無く、任意の有機基を用いることができる。その具体例を挙げると、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、tert−アミル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基等の直鎖又は分岐状の鎖状アルキル基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基、アリル基等のアルケニル基、フェニル基、ナフチル基、トルイル基、メトキシフェニル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基などが挙げられ、中でも、アルキル基が好ましい。
また、Tに結合する有機基の炭素数は、通常1以上、また、通常20以下、好ましくは10以下、より好ましくは2以下である。炭素数が大きすぎると、溶解性が低下する虞がある他、原料入手が困難で製造コストアップしやすいためである。
次に、式(IV)で表わされる有機基、即ち、R30について説明する。
Figure 0004824959
上記式(IV)において、OR基におけるRは、水素原子、または、炭素数1〜20の有機基であれば他に制限はなく、任意の置換基を有することができる。また、この際、Rはそれぞれ同じでもよく、異なっていてもよい。
具体的な例を挙げると、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の直鎖アルキル基;イソプロピル基、tert−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、sec−イソアミル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1,2,2−トリメチルプロピル基等の分岐状の鎖状アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基;1,1−ジメチルアリル基、2,2−ジメチルブタ−3−エン−1−イル基等のアルケニル基;アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、シクロペンチルカルボニル基等のカルボニル基を有する有機基が挙げられる。中でも、溶解性の観点から、水素原子、分岐を有するアルキル基、ならびにカルボニル基を1つ以上有する有機基が好ましく、水素原子、及び、カルボニル基を1つ以上有する有機基がさらに好ましく、最も好ましくは水素原子である。
さらに、上記OR基の芳香族環における置換場所は特に限定されず、またそれぞれのOR基の相対位置も任意で構わない。OR基の数(即ち、s)は2以上5以下の整数であれば特に限定を受けないが、原料入手の観点から2もしくは3が好ましい。
加えて、OR基以外の置換基は、本発明のフラーレン誘導体の優れた物性を大幅に損ねるものでなければ水素原子以外の任意の置換基を有することができる。具体例を挙げると、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、ハロゲン原子、チオール基、チオエーテル基、アルコキシフェニル基、フェノール基、有機ケイ素基などが挙げられる。
フラーレン骨格上に前記式(I)の部分構造を有し、式(I)の部分構造に上記のR20又はR30が結合している本発明のフラーレン誘導体の例を挙げると、一般式Ci(R203(R10)やCi(R303(R10)で表される4重付加フラーレン誘導体、一般式Ci(R205(R10)やCi(R305(R10)で表される6重付加フラーレン誘導体等の1つのフラーレン骨格上に上記式(I)の部分構造を1つ有するフラーレン誘導体、一般式Ci(R206(R102やCi(R306(R102で表される8重付加フラーレン誘導体、一般式Ci(R208(R102やCi(R308(R102で表される10重付加フラーレン誘導体、一般式Ci(R2010(R102やCi(R3010(R102で表される12重付加フラーレン誘導体等の1つのフラーレン誘導体上に上記式(I)の部分構造を2つ有するフラーレン誘導体などが挙げられる。このうち、一般式Ci(R205(R10)やCi(R305(R10)で表される6重付加フラーレン誘導体が、製造が容易であるため好ましい。なお、R20、R30及びR10は、それぞれ上述したものと同義である。
また、上述したように、エステル系溶媒に対する溶解性を高める観点から、C6〜C8に加えてC9〜C10も、それぞれ独立に、R20又はR30と結合していることが望ましい。したがって、一般式Ci(R205(R10)やCi(R305(R10)で表される6重付加フラーレン誘導体、一般式Ci(R208(R102やCi(R308(R102で表される10重付加フラーレン誘導体、及び、一般式Ci(R2010(R102やCi(R3010(R102で表される12重付加フラーレン誘導体としては、フラーレン骨格上に上記式(I)の部分構造を有すると共に、上記式(I)のC6〜C10が、各々独立に、上記式(II)で表される構造の有機基、又は、上記式(IV)で表される構造の有機基と結合しているものが好ましい。即ち、上記の6重付加フラーレン誘導体、10重付加フラーレン誘導体、及び、12重付加フラーレン誘導体は、以下の式(V)の部分構造を有するものが好ましい。
Figure 0004824959
{上記式(V)中、C1〜C10は、いずれもフラーレン骨格を構成する炭素原子を表わし、C1は炭素数1〜30の有機基と結合しており、C6〜C10は、各々独立に上記式(II)又は式(IV)で表される構造の有機基と結合している。}
さらに、一般式Ci(R203(R10)やCi(R303(R10)で表される4重付加フラーレン誘導体、一般式Ci(R206(R102やCi(R306(R102で表される8重付加フラーレン誘導体、及び、一般式Ci(R208(R102やCi(R308(R102で表される10重付加フラーレン誘導体としては、フラーレン骨格上に、C6〜C8にだけR20やR30が結合した{即ち、C9,C10にはR20及びR30が結合していない}上記式(I)の部分構造を有するものが好ましい。
中でも、一般式Ci(R206(R102やCi(R306(R102で表される8重付加フラーレン誘導体としては、フラーレン骨格上にC6〜C8にだけR20やR30が結合した前記式(I)の部分構造を2個、一般式Ci(R208(R102やCi(R308(R102で表される10重付加フラーレン誘導体としては、フラーレン骨格上にC6〜C8にだけR20やR30が結合した前記式(I)と前記式(V)との部分構造を1個づつ、一般式Ci(R2010(R102やCi(R3010(R102で表される12重付加フラーレン誘導体としては、フラーレン骨格上に前記式(V)の部分構造を2個有するものが、各々更に好ましい。
(作用等)
上述した本発明のフラーレン誘導体は、エステル系溶媒に可溶、即ち、エステル系溶媒に対する溶解性が高い。なお、本発明において、フラーレン誘導体が「エステル系溶媒に可溶」であるとは、フラーレン誘導体をエステル系溶媒に混合し、超音波照射を10分かけた後、目視で沈殿物や不溶分が検出されないことを意味する。具体的には、溶解性の説明で既に述べたように、25℃、常圧下でプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート又は乳酸エチルのいずれかのエステル系溶媒に対して、エステル系溶媒の単位体積(1mL)あたりに、フラーレン誘導体が10mg以上溶解する場合には、そのフラーレン誘導体はエステル系溶媒に対して可溶、即ち、エステル系溶媒に対する溶解性が高いと判断する。
なお、これらのエステル系溶媒は、DVD、CDなどの光ディスク材料の製造、半導体集積回路の作製、半導体集積回路作製用マスクの製造、液晶用集積回路の作製、液晶画面製造用レジスト材料用などの溶媒として一般的に使用されているエステル系溶媒である。したがって、これらのエステル系溶媒に可溶であること、即ち、これらのエステル系溶媒に対する溶解性が高いことは、本発明のフラーレン誘導体を、上記のような産業上広く使用されている溶媒に溶解することが可能であることを示している。
また、上述のエステル系溶媒に対する好ましい溶解度の値は、フラーレン誘導体の用途によって異なるが、例えば、半導体集積回路作製、半導体集積回路作製用マスクの製造、液晶用集積回路作製及び液晶画面製造用レジスト材料用途の塗膜を本発明のフラーレン誘導体を用いて形成するためには、本発明のフラーレン誘導体はエステル系溶媒に対して、通常10mg/mL以上、好ましくは50mg/mL以上、より好ましくは100mg/mL以上の溶解度を有するのが望ましい。
本発明のフラーレン誘導体がエステル系溶媒に対する高い溶解性を有する理由は定かでは無いが、本発明者が推察するところによると、本発明のフラーレン誘導体がエステル骨格の一部であるカルボニル基を有し、エステル系溶媒との親和性が向上する効果と、自由回転を許容する2価の連結基L並びに立体的にかさ高い置換基(Tに結合する有機基)がフラーレン誘導体同士の分子相互作用を低下させる効果との相乗効果により、どちらか一方の効果のみの場合から予想されるのを上回るエステル系溶媒への高い溶解性を発現しているものと考えられる。
また、かさ高い置換基がない場合でも、エステル系溶媒に対して高い溶解性を有する理由は、フラーレンに対してOR基の数が相対的に増加することによって酸性度が向上したためと考えられるが、上記概念を組み合わせた場合はさらに高い溶解度が期待される。
また、本発明に係るフラーレン誘導体は、フラーレン骨格上に水素原子を有する従来のフラーレン誘導体などに比べ、空気に対し高い安定性を有する。これは、溶液状態での使用、および粉末あるいは溶液状態で長期保管するのに好ましく、実用上、極めて有用である。
このような本発明のフラーレン誘導体の空気中での安定性は、例えば、経時変化を高速液体クロマトグラフ(HPLC)で分析することにより確認できる。具体的には、本発明のフラーレン誘導体のトルエン溶液を室温空気下で放置した際に、HPLC{オクタデシル基結合シリカゲルカラム(以下適宜、「ODSカラム」という)、溶媒;トルエン/メタノール、UV波長:290nm)で観測される全ピークに対するフラーレン誘導体由来のピークの面積割合での減少速度から、調べることができる。
本発明のフラーレン誘導体が空気中で高い安定性を有する理由は不明である。しかしながら、従来公知の多重付加フラーレン誘導体が一般的に酸化されやすいことと考えあわせると、フラーレン骨格のシクロペンタジエニル部位の炭素原子が水素原子と結合しているフラーレン誘導体は、このC−H結合が酸素分子と反応しやすいのに対し、本発明のフラーレン誘導体は、このC−H結合が無いことにより、高い安定性を発現できるものと推定される。なお、フラーレン骨格のシクロペンタジエニル部位に水素原子を有するフラーレン誘導体が空気酸化されやすい理由としては、他に、シクロペンタジエン部位のオレフィンのエポキシ化などが考えられるが、本発明のフラーレン誘導体ではこの影響は無い、または非常に小さいために、空気中で予想を越えた優れた安定性を発現できると考えられる。
[II.フラーレン誘導体の合成方法]
本発明のフラーレン誘導体の合成方法に制限は無く、任意の方法により合成することができる。以下に、本発明のフラーレン誘導体の合成方法の一例を示すが、本発明のフラーレン誘導体の合成方法は、以下の方法に限定されるものではない。
(R20を有するフラーレン誘導体の合成方法の例)
以下、前記式(II)のArがフェニル基、連結基LのAr側末端が酸素原子である場合について、前記式(II)の構造を有する有機基が結合している本発明のフラーレン誘導体を合成する方法の例を説明する。
本発明のフラーレン誘導体として前記のようなフラーレン誘導体を合成する際には、例えば、原料としてフラーレン誘導体(以下適宜、「原料フラーレン誘導体」という)を、以下の(1)〜(4)の方法などで反応剤と反応させることにより合成することができる。
(1)原料フラーレン誘導体を、エステル化剤と反応させて、エステル化する。
(2)原料フラーレン誘導体を、カーボネート化剤と反応させて、カーボネート化する。(3)原料フラーレン誘導体を、エーテル化剤と反応させて、エーテル化する。
(4)原料フラーレン誘導体を、ウレタン化剤と反応させて、ウレタン化する。
この場合、原料フラーレン誘導体としては、フラーレン骨格を構成する炭素のうち、前記式(I)のC1に対応する炭素{即ち、本発明のフラーレン誘導体を合成した際には前記式(I)の炭素C1となる炭素}にR10が結合し、前記式(I)のC6〜C8又はC6〜C10に対応した炭素(即ち、本発明のフラーレン誘導体を合成した際にはR20が結合する炭素)にフェノール基が結合した、フラーレン誘導体を用いることができる。
これら、原料フラーレン誘導体は、フラーレン骨格がC60骨格であれば、例えば、前記式(I)のC6〜C8及び/又はC6〜C10に対応した炭素にフェノール基が合計5個結合した6重付加体、合計8個結合した10重付加体、合計10個結合した12重付加体が挙げられる。また、フラーレン骨格がC70骨格であれば、例えば、前記式(I)のC6〜C8に対応した炭素にフェノール基が合計3個結合した4重付加体、合計6個結合した8重付加体などが挙げられる。
なお、原料フラーレン誘導体として例示した、上記のフェノール基を有するフラーレン誘導体の具体的な合成条件は、例えば、Nature,2002,419,702やChem.Lett.,2004,33,328などに記載されている方法などを用いることができる。
さらに、上記(1)〜(4)などの方法で製造を行なう場合は、通常、塩基存在下、有機溶媒に溶解もしくは懸濁させた状態で反応を行なう。
反応系内に存在する塩基の種類は任意であり、本発明のフラーレン誘導体の合成時には、反応の種類によって適当なものを選択すればよい。塩基の具体例としては、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、水酸化テトラブチルアンモニウム、ジアザビシクロウンデセン、イミダゾール等の有機塩基、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の金属炭酸塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物などが挙げられる。なお、上記の塩基は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、使用する塩基の量としては、反応を阻害しなければ任意の量を用いることができる。
さらに、反応に使用する有機溶媒も任意であり、本発明のフラーレン誘導体の合成時には、反応の種類によって適当なものを選択すればよい。有機溶媒の具体例としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、1,4−ジオキサンなどのエーテル類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類などが挙げられる。また、有機溶媒も、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
ただし、反応の種類によっては、有機溶媒は脱水操作をしたものを用いた方が効率的に合成することが可能である。
また、原料となるフラーレン誘導体に対して使用する有機溶媒の量は任意であるが、原料フラーレン誘導体の濃度が通常0.1mg/mL以上、好ましくは1mg/mL以上、より好ましくは5mg/mL以上、また、通常1000mg/mL以下、好ましくは100mg/mL以下、より好ましくは50mg/mL以下となる量の有機溶媒を用いることが望ましい。
以下、例示した前記の合成方法(1)〜(4)についてそれぞれ説明する。
(1)エステル化による合成方法
この合成方法では、原料フラーレン誘導体に対して、RaC(=O)Xaで表わされる酸ハライド、RbC(=O)OC(=O)Rcで表わされる酸無水物などのエステル化剤を用いて、エステル化を行なう。ここで、上記のエステル化剤を表わす式におけるRa、Rb、Rcは、各々独立に、原料フラーレン誘導体とエステル化剤とが反応することにより本発明のフラーレン誘導体を生成しうる任意の基を表わし、その具体例としては、イソプロピル基、tert−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、sec−イソアミル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1,2,2−トリメチルプロピル基などの分岐状の鎖状アルキル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基、1,1−ジメチルアリル基、2,2−ジメチルブタ−3−エン−1−イル基等のアルケニル基が挙げられるが、分岐状のアルキル基が好ましい。また、XaはCl、Br、I等のハロゲン原子を表わす。なお、エステル化剤は1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。これにより、原料フラーレン誘導体のフェノール基のヒドロキシ基部分がエステル化され、本発明のフラーレン誘導体を合成することができる。
エステル化による合成方法では、エステル化剤は、反応を行なうフェノール基に対して通常1倍モル以上、好ましくは1.2倍モル以上、より好ましくは1.4倍モル以上、また、通常30倍モル以下、好ましくは20倍モル以下、より好ましくは10倍モル以下用いる。これらの量が多すぎると、製造コストの観点から好ましくなく、少な過ぎると十分な反応速度が得られない虞がある。
また、エステル化反応が進行すれば、原料、塩基、有機溶媒等の混合順序は問わないが、通常、原料となるフラーレン誘導体と塩基とを上述の適当な溶媒中で混合してから、エステル化剤を加えることにより反応を行なう。
さらに、エステル化による合成方法では、原料フラーレン誘導体のエステル化が起これば、その反応条件は任意である。ただし、その温度条件は通常0℃以上、好ましくは15℃以上、また、通常50℃以下、好ましくは30℃以下で反応を行なうことが望ましい。また、反応時間は通常数分以上、好ましくは30分以上、また、通常数十時間以下、好ましくは5時間以下反応させることが望ましい。
(2)カーボネート化による合成方法
この合成方法では、原料フラーレン誘導体に対して、RdOC(=O)OC(=O)OReで表わされる二炭酸エステルなどのカーボネート化剤を用いて、カーボネート化を行なう。ここで、上記のカーボーネート化剤を表わす式におけるRd、Reは、それぞれ独立に、原料フラーレン誘導体とカーボネート化剤とが反応することにより本発明のフラーレン誘導体を生成しうる任意の基を表わし、その具体例としては、エステル化剤を表わす基の具体例で例示した基Ra〜Rcと同様の基を挙げることができる。なお、カーボネート化剤は1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。これにより、原料フラーレン誘導体のフェノール基のヒドロキシ基部分がカーボネート化され、本発明のフラーレン誘導体を合成することができる。
カーボネート化による合成方法では、カーボネート化剤は、反応を行なうフェノール基に対して通常1倍モル以上、好ましくは1.2倍モル以上、より好ましくは1.4倍モル以上、また、通常30倍モル以下、好ましくは20倍モル以下、より好ましくは10倍モル以下用いる。これらの量が多すぎると、製造コストの観点から好ましくなく、少な過ぎると十分な反応速度が得られない虞がある。
また、カーボネート化反応が進行すれば、原料、塩基、有機溶媒等の混合順序は問わないが、通常、原料となるフラーレン誘導体と塩基とを上述の適当な溶媒中で混合してから、カーボネート化剤を加えることにより反応を行なう。
さらに、カーボネート化による合成方法では、原料フラーレン誘導体のカーボネート化が起これば、その反応条件は任意である。ただし、その温度条件は通常−20℃以上、好ましくは0℃以上、また、通常50℃以下、好ましくは30℃以下で反応を行なうことが望ましい。また、反応時間は通常数分以上、好ましくは30分以上、また、通常数時間以下、好ましくは2時間以下反応させることが望ましい。
(3)エーテル化による合成方法
この合成方法では、原料フラーレン誘導体に対して、Xb−(CH2m−(O)p−C(=O)−(O)q−Rf等のハロゲン化物などのエーテル化剤を用いて、エーテル化を行なう。ここで、上記のエーテル化剤を表わす式におけるXbはCl、Br、I等のハロゲン原子を表わし、mは1〜10の自然数を表わし、p及びqは各々独立に0又は1を表わす。また、Rfは、原料フラーレン誘導体とエーテル化剤とが反応することにより本発明のフラーレン誘導体を生成しうる任意の基を表わし、その具体例としては、エステル化剤やカーボネート化剤を表わす基の具体例で例示した基Ra〜Reと同様の基を挙げることができる。また、上述したハロゲン化物のハロゲン原子に代えて、求核置換反応の脱離基となりうる官能基を有するものをエーテル化剤として用いても構わない。求核置換反応の脱離基となりうる官能基としては、アセトキシ基、トリフロロアセトキシ基等のアシロキシ基;メタンスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基、トルエンスルホニルオキシ基等のスルホニルオキシ基などが挙げられる。なお、エーテル化剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。これにより、原料フラーレン誘導体のフェノール基のヒドロキシ基部分がエーテル化され、本発明のフラーレン誘導体を合成することができる。
エーテル化による合成方法では、エーテル化剤は、反応を行なうフェノール基に対して通常1倍モル以上、好ましくは1.2倍モル以上、より好ましくは1.4倍モル以上、また、通常30倍モル以下、好ましくは20倍モル以下、より好ましくは10倍モル以下用いる。これらの量が多すぎると、製造コストの観点から好ましくなく、少な過ぎると十分な反応速度が得られない虞がある。
また、エーテル化反応が進行すれば、原料、塩基、有機溶媒等の混合順序は問わないが、通常、原料となるフラーレン誘導体と塩基とを上述の適当な溶媒中で混合してから、エーテル化剤を加えることにより反応を行なう。
さらに、エーテル化による合成方法では、原料フラーレン誘導体のエーテル化が起これば、その反応条件は任意である。ただし、その温度条件は通常0℃以上、好ましくは15℃以上、また、通常80℃以下、好ましくは50℃以下で反応を行なうことが望ましい。また、反応時間は通常数時間以上、好ましくは5時間以上、また、通常数十時間以下、好ましくは30時間以下反応させることが望ましい。
(4)ウレタン化による合成方法
この合成方法では、原料フラーレン誘導体に対して、RgNCOで表わされるイソシアネート類などのウレタン化剤を用いて、ウレタン化を行なう。ここで、上記のウレタン化剤を表わす式におけるRgは、原料フラーレン誘導体とウレタン化剤とが反応することにより本発明のフラーレン誘導体を生成しうる任意の基を表わし、その具体例としては、エステル化剤、カーボネート化剤、エーテル化剤を表わす基の具体例で例示した基Ra〜Rfと同様の基を挙げることができる。なお、ウレタン化剤は1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。これにより、原料フラーレン誘導体のフェノール基のヒドロキシ基部分がウレタン化され、本発明のフラーレン誘導体を合成することができる。
ウレタン化による合成方法では、ウレタン化剤は、反応を行なうフェノール基に対して通常1倍モル以上、好ましくは1.2倍モル以上、より好ましくは1.4倍モル以上、また、通常30倍モル以下、好ましくは20倍モル以下、より好ましくは10倍モル以下用いる。これらの量が多すぎると、製造コストの観点から好ましくなく、少な過ぎると十分な反応速度が得られない虞がある。
また、ウレタン化反応が進行すれば、原料、塩基、有機溶媒等の混合順序は問わないが、通常、原料となるフラーレン誘導体と塩基とを上述の適当な溶媒中で混合してから、ウレタン化剤を加えることにより反応を行なう。
さらに、ウレタン化による合成方法では、原料フラーレン誘導体のウレタン化が起これば、その反応条件は任意である。ただし、その温度条件は通常0℃以上、好ましくは15℃以上、また、通常50℃以下、好ましくは30℃以下で反応を行なうことが望ましい。また、反応時間は通常数分以上、好ましくは30分以上、また、通常数十時間以下、好ましくは2時間以下反応させることが望ましい。
また、上述した反応剤、即ち、エステル化剤、カーボネート化剤、エーテル化剤及びウ レタン化剤は、それぞれ単独で使用する他、任意の組み合わせ及び比率で併用して、上記の(1)〜(4)の各方法をともに行なうようにしてもよい。さらに、上記の(1)〜(4)の方法に示した各反応(即ち、エステル化、カーボネート化、エーテル化及びウレタン化)などを妨げなければ、原料フラーレン誘導体、エステル化剤、カーボネート化剤、エーテル化剤、ウレタン化剤等の反応剤、塩基、溶媒以外の物質が存在していても構わない。
(R30を有するフラーレン誘導体の合成方法の例)
次に、前記式(IV)の構造を有する有機基が結合しているフラーレン誘導体を合成する方法を説明する。
前記式(IV)のうち、OR基がOH基である場合は、Rがメチル基やテトラヒドロピラニル基などGrignard反応においても安定な保護基を導入したGrignard試薬を使用し、既存の方法で原料フラーレン誘導体を合成した後、保護基に対応した脱保護剤を作用させることにより合成できる。
また、OR基のうちRが水素原子以外のものである場合は、前記式(IV)がGrignard反応においても安定な基であれば直接フラーレンへ官能基導入が可能であり、前記式(IV)がカルボニル基などGrignard反応で不安定な基であれば、前記式(IV)のうちOH体を経由して、合成することができる。
以下、前記式(IV)のOR基がOH基である場合について、本発明のフラーレン誘導体を合成する方法の例を説明する。
これまでに、上記式(I)においてC1に炭素数1〜30の有機基を結合させた、C6
〜C8もしくはC6〜C10に有機基を有するフラーレン誘導体の一般的な製造方法は、既に確立されており、具体的には特開2005−15470号公報、Chem.Lett.33.328.2004に記載されている方法などを参照することができる。
本発明のフラーレン誘導体も、フラーレンと有機銅試薬とを反応させて製造することができるが、有機銅試薬に用いるGrignard試薬は、OR基のRがメチル基やメチレン基、テトラヒドロピラニル基などの保護基を導入したものが好ましい。とくに、原料入手の観点では、メチル基やメチレン基が導入された置換フェニル骨格を有するものが好ましい。
上記の方法で合成されたOR基を有するフラーレン誘導体を用い、Rの構造に対応した脱保護剤を作用させることで、Rが水素原子のフラーレン誘導体を製造することができる。Rがメチル基もしくはメチレン基の場合は、例えば三臭化ホウ素、三塩化ホウ素、三塩化アルミニウム、トリメチルシリルヨージド等の脱保護剤などが使用され、反応性の観点から三臭化ホウ素、トリメチルシリルヨージドが好ましい。これらの試薬の取扱が困難な場合は、in situで発生させる方法を用いても構わない。
上記脱保護剤の使用量は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、対応する保護基に対して、通常1倍モル以上、好ましくは1.2倍モル以上、より好ましくは1.4倍モル以上、また、通常10倍モル以下、好ましくは5倍モル以下、より好ましくは3倍モル以下用いる。これらの量が多すぎると、製造コストの点から好ましくなく、少なすぎると反応が完結しない虞がある。
さらに、通常、上記脱保護反応は、有機溶媒に溶解もしくは懸濁させた状態で反応を行なう。反応に使用する有機溶媒は、反応を阻害しなければ任意に選択して構わない。有機溶媒の具体例としては、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、塩化メチレン等のハロゲン系炭化水素、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒などが挙げられる。また、これらの溶媒は1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、原料となるフラーレン誘導体に対して使用する有機溶媒の量は任意であるが、原料フラーレン誘導体の濃度が通常1mg/mL以上、好ましくは10mg/mL以上、さらに好ましくは15mg/mL以上であり、また、通常1000mg/mL以下、好ましくは500mg/mL以下、さらに好ましくは100mg/mL以下となる量の有機溶媒を用いることが好ましい。
また、脱保護反応が進行すれば、原料、有機溶媒、脱保護剤等の混合順序は問わない。さらに、脱保護反応が進行すれば、反応条件も任意である。ただし、その温度条件は、通常0℃以上、好ましくは15℃以上であり、また通常180℃以下、好ましくは120℃以下で行うことが望ましい。また反応時間は通常30分以上、好ましくは2時間以上であり、また通常数十時間以下、好ましくは10時間以下反応させることが望ましい。
さらに、前記式(IV)におけるRが炭素数1〜20の有機基である場合には、例えば、Rが水素であるフラーレン誘導体を、上述したR20を有するフラーレン誘導体の製造方法と同様、下記の(1)〜(4)の方法などで反応剤と反応させることにより合成することができる。
(1)原料フラーレン誘導体を、エステル化剤と反応させて、エステル化する。
(2)原料フラーレン誘導体を、カーボネート化剤と反応させて、カーボネート化する。(3)原料フラーレン誘導体を、エーテル化剤と反応させて、エーテル化する。
(4)原料フラーレン誘導体を、ウレタン化剤と反応させて、ウレタン化する。
なお、これらの方法(1)〜(4)における各反応条件等は、R20を含有するフラーレン誘導体の合成法と同様な方法を用いればよい。
(合成後の処理)
さらに、R20を有するフラーレン誘導体及びR30を有するフラーレン誘導体のいずれも、通常は、反応終了後に、生成した本発明のフラーレン誘導体を反応液から常法により単離する。単離操作は各反応の種類によって異なるが、例えば、反応液に希塩酸や純水などを加えて反応を停止させ、そのまま適当な溶媒で抽出した後、分液し溶媒を留去することにより、生成物を単離することができる。得られたフラーレン誘導体は、必要に応じて、適宜、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)やシリカゲルカラムクロマトグラフィー、アルミナカラムクロマトグラフィーなどの手法で精製してもよい。単離収率は、上述の好ましい反応条件で行えば、通常60%以上、好ましくは70%以上である。
また、本発明のフラーレン誘導体は、プロトン核磁気共鳴スペクトル法(以下適宜、「1H−NMR」という)、カーボン核磁気共鳴スペクトル法(以下適宜、「13C−NMR」という)、赤外線吸収スペクトル法(以下適宜、「IR」という)、質量分析法(以下適宜、「MS」という)、及び元素分析等の一般的な有機分析により、通常、その構造が確認される。この他、フラーレン誘導体の結晶性がよい場合は、X線結晶回折法によって構造を確認できる場合もある。
以下、実施例を示して本発明について更に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら制限されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変形して実施することができる。なお、本明細書の記載において、Meはメチル基を表わし、Etはエチル基を表わし、tBuはtert−ブチル基を表わし、iPrはイソプロピル基を表わし、nPrは直鎖状のプロピル基を表わし、Phはフェニル基を表わす。
(実施例1)C60(C64OC(=O)tBu)5Me
原料フラーレン誘導体であるC60(C64OH)5Me(1.00g,0.83mmol)の脱水テトラヒドロフラン(100mL)懸濁液に、トリエチルアミン(1mL)を添加し、室温で攪拌した。そこに反応剤であるトリメチルアセチルクロリド(2.0mL,16.25mmol)及び4−ジメチルアミノピリジン(0.50g,4.09mmol)を加え、室温で3時間攪拌した。10重量%塩酸(40mL)で反応を停止させ、クロロホルム(100mL)を加え、分液漏斗にて抽出した。
次に、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた後、濾過を行なった。溶液を濃縮しメタノール(500mL)で晶析を行ない、50℃真空乾燥を2時間行なうことによって、表題化合物{C60(C64OC(=O)tBu)5Me}をオレンジ色固体(0.84g,0.52mmol,収率63%)を生成物として得た。
得られた生成物を1H−NMR及びHPLCにて測定した。
なお、1H−NMRは、CDCl3を溶媒とし、270MHzにて測定した。
また、HPLCは、0.5mg/mLのトルエン溶液を調製し、以下の測定条件で測定した。
カラム種類:ODS
カラムサイズ:150mm×4.6mmφ
溶離液:トルエン/メタノール=3/7
検出器:UV290nm
HPLC測定の結果、リテンションタイム10.48minに、92.05(Area%)で観測された。
また、1H−NMRの測定結果は、以下のとおりであった。
1H−NMR(CDCl3,270MHz)]
7.82ppm(m,Ph,4H),7.68ppm(m,Ph,4H),7.23ppm(d,Ph,2H),7.00−7.13ppm(m,Ph,8H),6.86ppm(d,Ph,2H),1.55ppm(s,C60Me,3H),1.39ppm(s,tBu,18H),1.38ppm(s,tBu,18H),1.29ppm(s,tBu,9H)
以上の結果から、得られた生成物が表題化合物{C60(C64OC(=O)tBu)5Me}であることが確認された。
さらに、得られた生成物を、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート(以下適宜、「RGMEA」という)及びn−ヘキサンに溶解させ、溶解度を測定した。結果を表2に示す。なお、表1及び表2において、「<1」との表記は、溶解度が1mg/mL未満であることを表わし、「>10」という表記は、溶解度が10mg/mLより大きいことを表わす。また、表1及び表2には、各実施例及び比較例で得られた生成物それぞれにおいて、上述した有機基R20又はR30に該当する基の構造も示す。
(実施例2)C60(C64OC(=O)iPr)5Me
原料フラーレン誘導体であるC60(C64OH)5Me(0.30g,0.25mmol)の脱水テトラヒドロフラン(30mL)懸濁液に、トリエチルアミン(0.3mL)を添加し室温で攪拌した。そこに反応剤であるイソブチリルクロリド(0.60mL,5.72mmol)及び4−ジメチルアミノピリジン(0.15g,1.28mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。10重量%塩酸(10mL)で反応を停止させ、クロロホルム(30mL)を加え、分液漏斗にて抽出した。
次に、メタノールの使用量を300mLとした他は実施例1と同様にして乾燥、濾過、濃縮、晶析及び真空乾燥を行なうことにより、表題化合物{C60(C64OC(=O)iPr)5Me}をオレンジ色固体(0.27g,0.17mmol,収率70%)として得た。
実施例1と同様にして、得られた生成物を1H−NMR及びHPLCにて測定した。
HPLC測定の結果、リテンションタイム9.04minに88.12(Area%)で観測された。
また、1H−NMRの測定結果は、以下のとおりであった。
1H−NMR(CDCl3,270MHz)]
7.82ppm(m,Ph,4H),7.69ppm(m,Ph,4H),7.02−7.22ppm(m,Ph,10H),6.89ppm(d,Ph,2H),2.65−2.90ppm(m,CH,5H),1.48ppm(s,C60Me,3H),1.35ppm(d,Me,12H),1.34ppm(d,Me,12H),1.25ppm(d,Me,6H)
以上の結果から、得られた生成物が表題化合物{C60(C64OC(=O)iPr)5Me}であることが確認された。
さらに、得られた生成物について、実施例1と同様にして、溶解度を測定した。結果を表2に示す。
(実施例3)C60(C64OC(=O)CH2 tBu)5Me
原料フラーレン誘導体であるC60(C64OH)5Me(2.00g,1.67mmol)の脱水テトラヒドロフラン(200mL)懸濁液に、トリエチルアミン(2mL)を添加し室温で攪拌した。そこに反応剤であるtert−ブチルアセチルクロリド(4.0mL,28.83mmol)及び4−ジメチルアミノピリジン(1.00g,8.18mmol)を加え、室温で3時間攪拌した。10重量%塩酸(40mL)で反応を停止させ、クロロホルム(100mL)を加え、分液漏斗にて抽出した。
次に、メタノールの使用量を750mLとした他は実施例1と同様にして乾燥、濾過、濃縮、晶析及び真空乾燥を行なうことにより、表題化合物{C60(C64OC(=O)CH2 tBu)5Me}をオレンジ色固体(2.10g,1.24mmol,収率74%)として得た。
実施例1と同様にして、得られた生成物を1H−NMR及びHPLCにて測定した。
HPLC測定の結果、リテンションタイム13.14minに95.74(Area%)で観測された。
また、1H−NMRの測定結果は、以下のとおりであった。
1H−NMR(CDCl3,270MHz)]
7.82ppm(m,Ph,4H),7.68ppm(m,Ph,4H),7.23ppm(d,Ph,2H),7.05−7.15ppm(m,Ph,8H),6.87ppm(d,Ph,2H),2.46ppm(s,CH2,4H),2.45ppm(s,CH2,4H),2.36ppm(s,CH2,2H),1.55ppm(s,C60Me,3H),1.16ppm(s,tBu,18H),1.15ppm(s,tBu,18H),1.08ppm(s,tBu,9H)
以上の結果から、得られた生成物が表題化合物{C60(C64OC(=O)CH2 tBu)5Me}であることが確認された。
さらに、得られた生成物について、実施例1と同様にして、溶解度を測定した。結果を表1に示す。
さらに、得られた生成物について1電子目の酸化還元電位(E1/2)を、北斗電工社製HZ−5000にて行なった。0.1MのnBu4NClO4(TBAP)/テトラヒドロフラン溶媒中で、指示電解質nBu4N・ClO4、作用電極Glassy Carbon、対電極Pt、参照電極Ag/AgNO3、挿引速度100mV/sにおいて、フェロセン(Fc)の酸化還元電位を基準とした値が、−1.38Vであった。
(実施例4)C60(C64OC(=O)CH2 iPr)5Me
原料フラーレン誘導体であるC60(C64OH)5Me(0.30g,0.25mmol)の脱水テトラヒドロフラン(30mL)懸濁液に、トリエチルアミン(0.6mL)を添加し室温で攪拌した。そこに反応剤としてイソバレリルクロリド(0.60mL,4.92mmol)及び4−ジメチルアミノピリジン(0.15g,1.23mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。10重量%塩酸(10mL)で反応を停止させ、クロロホルム(30mL)を加え、分液漏斗にて抽出した。
次に、メタノールの使用量を300mLとした他は実施例1と同様にして乾燥、濾過、濃縮、晶析及び真空乾燥を行なうことにより、表題化合物{C60(C64OC(=O)CH2 iPr)5Me}をオレンジ色固体(0.27g,0.17mmol,収率67%)として得た。
実施例1と同様にして、得られた生成物を1H−NMR及びHPLCにて測定した。
HPLC測定の結果、リテンションタイム12.16minに71.86(Area%)で観測された。
また、1H−NMRの測定結果は、以下のとおりであった。
1H−NMR(CDCl3,270MHz)]
7.81ppm(m,Ph,4H),7.68ppm(m,Ph,4H),7.05−7.25ppm(m,Ph,10H),6.87ppm(d,Ph,2H),2.46ppm(d,CH2,4H),2.45ppm(d,CH2,4H),2.35ppm(d,CH2,2H),2.10−2.32ppm(m,CH,5H),1.48ppm(s,C60Me,3H),1.08ppm(d,Me,12H),1.07ppm(d,Me,12H),1.01ppm(d,Me,6H)
以上の結果から、得られた生成物が表題化合物{C60(C64OC(=O)CH2 iPr)5Me}であることが確認された。
さらに、得られた生成物について、実施例1と同様にして、溶解度を測定した。結果を表2に示す。
(実施例5)C60(C64OC(=O)OtBu)5Me
原料フラーレン誘導体であるC60(C64OH)5Me(1.00g,0.83mmol)のテトラヒドロフラン(80mL)懸濁液に、トリエチルアミン(10mL)を添加し、氷冷した。そこに、反応剤である二炭酸ジ−tertブチル(1.35g,6.18mmol)及び4−ジメチルアミノピリジン(40mg,0.33mmol)を加え、氷冷条件下で15分、室温で30分攪拌した。10%重量塩酸(40mL)で反応を停止させ、クロロホルム(70mL)を加え、分液漏斗にて抽出した。
次に、実施例1と同様にして乾燥、濾過、濃縮、晶析及び真空乾燥を行なうことにより、表題化合物{C60(C64OC(=O)OtBu)5Me}をオレンジ色固体(0.95g,0.56mmol,収率67%)として得た。
実施例1と同様にして、得られた生成物を1H−NMR及びHPLCにて測定した。さらに、LC−MS測定も行なった。
HPLC測定の結果、リテンションタイム9.18minに93.54(Area%)で観測された。
また、LC−MS測定の結果は、m/Z=1700であった。
さらに、1H−NMRの測定結果は、以下のとおりであった。
1H−NMR(CDCl3,270MHz)]
7.81ppm(m,Ph,4H),7.67ppm(m,Ph,4H),7.27−7.17ppm(m,Ph,10H),6.74ppm(d,Ph,2H),1.59ppm(s,tBu,18H),1.57ppm(s,tBu,18H),1.56ppm(s,Me,3H),1.51ppm(s,tBu,9H)
以上の結果から、得られた生成物が表題化合物{C60(C64OC(=O)OtBu)5Me}であることが確認された。
さらに、得られた生成物について、実施例1と同様にして、溶解度を測定した。結果を表1に示す。
さらに、得られた表題化合物の1電子目の酸化還元電位(E1/2)は、実施例3と同様にして測定したところ、−1.38Vであった。
(実施例6)C60(C64OCH2C(=O)OtBu)5Me
原料フラーレン誘導体であるC60(C64OH)5Me(0.50g,0.42mmol)のテトラヒドロフラン(10mL)、アセトン(30mL)懸濁液に、炭酸カリウム(4.00g)を添加し室温で攪拌した。そこに反応剤であるブロモ酢酸tert−ブチル(3.0mL,20.30mmol)を加え、室温で22時間攪拌した。次にトルエン(100mL)で希釈し、セライト濾過(展開液:トルエン)を行なった。濾液を濃縮しメタノール(300mL)で晶析を行ない、50℃真空乾燥を2時間行うことによって、表題化合物{C60(C64OCH2C(=O)OtBu)5Me}をオレンジ色固体(0.47g,0.26mmol,収率63%)として得た。
実施例1と同様にして、得られた生成物を1H−NMR及びHPLCにて測定した。
HPLC測定の結果、リテンションタイム6.02minに88.69(Area%)で観測された。
さらに、1H−NMRの測定結果は、以下のとおりであった。
1H−NMR(CDCl3,270MHz)]
7.72ppm(m,Ph,4H),7.61ppm(m,Ph,4H),7.11ppm(d,Ph,2H),6.83−6.90ppm(m,Ph,8H),6.61ppm(d,Ph,2H),4.54ppm(s,CH2,4H),4.53ppm(s,CH2,4H),4.40ppm(s,CH2,2H),1.57ppm(s,Me,3H),1.53ppm(s,tBu,18H),1.50ppm(s,tBu,18H),1.43ppm(s,tBu,9H)
以上の結果から、得られた生成物が表題化合物{C60(C64OCH2C(=O)OtBu)5Me}であることが確認された。
さらに、得られた生成物について、実施例1と同様にして、溶解度を測定した。結果を表1に示す。
さらに得られた表題化合物の1電子目の酸化還元電位(E1/2)は、実施例3と同様にして測定したところ、−1.42Vであった。
(実施例7)C60(C64OCH2C(=O)tBu)5Me
原料フラーレン誘導体であるC60(C64OH)5Me(0.30g,0.25mmol)のテトラヒドロフラン(10mL)、アセトン(10mL)懸濁液に、炭酸カリウム(2.00g)を添加し室温で攪拌した。そこに反応剤である1−ブロモ3,3−ジメチル−2−ブタノン(1.60mL,11.89mmol)を加え、室温で7時間攪拌した。トルエン(50mL)で希釈し、セライト濾過(展開液:トルエン)を行なった。次に、実施例6と同様にして濾液の濃縮、晶析、真空乾燥を行ない、表題化合物{C60(C64OCH2C(=O)tBu)5Me}をオレンジ色固体(0.30g,0.16mmol,収率65%)として得た。
実施例1と同様にして、得られた生成物を1H−NMR及びHPLCにて測定した。
HPLC測定の結果、リテンションタイム4.65minに80.04(Area%)で観測された。
さらに、1H−NMRの測定結果は、以下のとおりであった。
1H−NMR(CDCl3,270MHz)]
7.72ppm(m,Ph,4H),7.60ppm(m,Ph,4H),7.11ppm(d,Ph,2H),6.83−6.90ppm(m,Ph,8H),6.62ppm(d,Ph,2H),4.93ppm(s,CH2,4H),4.90ppm(s,CH2,4H),4.77ppm(s,CH2,2H),1.42ppm(s,C60Me,3H),1.28ppm(s,tBu,18H),1.27ppm(s,tBu,18H),1.21ppm(s,tBu,9H)
以上の結果から、得られた生成物が表題化合物{C60(C64OCH2C(=O)tBu)5Me}であることが確認された。
さらに、得られた生成物について、実施例1と同様にして、溶解度を測定した。結果を表2に示す。
(実施例8)C60(C64OC(=O)NHtBu)5Me
原料フラーレン誘導体であるC60(C64OH)5Me(2.00g,1.67mmol)の脱水テトラヒドロフラン(200mL)懸濁液に、トリエチルアミン(2mL)を添加し室温で攪拌した。そこに反応剤であるtert−ブチルイソシアネート(4.0mL,35.11mmol)を加え、室温で1時間攪拌した。10重量%塩酸(40mL)で反応を停止させ、クロロホルム(100mL)を加え、分液漏斗にて抽出した。
メタノールの代わりにn−ヘキサン(750mL)を用いた以外は実施例1と同様にして、乾燥、濾過、濃縮、晶析及び真空乾燥を行なうことにより、表題化合物{C60(C64OC(=O)NHtBu)5Me}をオレンジ色固体(2.31g,1.36mmol,収率81%)として得た。
HPLCの溶離液にトルエン/メタノール=2/8を用いた他は、実施例1と同様にして、得られた生成物を1H−NMR及びHPLCにて測定した。
HPLC測定の結果、リテンションタイム5.00minに95.56(Area%)で観測された。
さらに、1H−NMRの測定結果は、以下のとおりであった。
1H−NMR(CDCl3,270MHz)]
7.77ppm(m,Ph,4H),7.65ppm(m,Ph,4H),7.09−7.24ppm(m,Ph,8H),6.89ppm(d,Ph,2H),5.02ppm(br,NH,4H),4.92ppm(br,NH,1H),1.63ppm(s,Me,3H),1.41ppm(s,tBu,18H),1.40ppm(s,tBu,18H),1.33ppm(s,tBu,9H)
以上の結果から、得られた生成物が表題化合物{C60(C64OC(=O)NHtBu)5Me}であることが確認された。
さらに、得られた生成物について、実施例1と同様にして、溶解度を測定した。結果を表2に示す。
(実施例9)C60(3,4−C63(OH)25Me
原料フラーレン誘導体であるC60(3,4−C63−OCH2O−)5Me(5.00g,3.73mmol)のオルトジクロロベンゼン(250mL)懸濁液に、三臭化ホウ素塩化メチレン溶液(1M:28mL)を添加し室温で攪拌した。4時間後、水(250mL)、酢酸エチル(250mL)を添加し、反応を停止させた。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮、ヘキサン(500mL)で晶析を行なった。THF(70mL)、メタノール(70mL)に再溶解させ、室温で6時間攪拌した後、濃縮を行ない、酢酸エチル、水で分液操作を行なった。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、再びヘキサン(500mL)で晶析し、170℃で真空乾燥することで表題化合物{C60(3,4−C63(OH)25Me}をオレンジ色固体(3.58g,2.80mmol,収率75%)として得た。
HPCLの溶離液にメタノール/アセトニトリル/酢酸=50/50/1を用いた他、以下の条件で測定した。
カラム:L−Column(ODS:3um)
カラムサイズ:100mm×4.6mmφ
検出器:UV290nm
HPLC測定の結果、リテンションタイム5.78minに、98.93(Area%)で観測された。
また、1H−NMRの測定結果は、以下のとおりであった。
1H−NMR(DMSO−d6,270MHz)]
9.17ppm(s,OH,1H),9.01ppm(s,OH,7H),8.83ppm(s,OH,1H),8.59ppm(s,OH,1H),7.30ppm(m,Ph,4H),7.09ppm(m,Ph,4H),6.72ppm(m,Ph,5H),6.47ppm(m,Ph,2H),1.68(s,C60Me,3H)
以上の結果から、得られた生成物が表題化合物{C60(3,4−C63(OH)25Me}であることが確認された。
さらに、得られた生成物について、実施例1と同様にして、溶解度を測定した。結果を表1に示す。
さらに、得られた表題化合物の1電子目の酸化還元電位(E1/2)は、実施例3と同様にして測定したところ、−1.49Vであった。
(実施例10)C60(3,4−C63(O(C=O)Me)25Me
原料フラーレン誘導体であるC60(3,4−C63(OH)25Me(0.10g,0.09mmol)の脱水テトラヒドロフラン(10mL)溶液に、トリエチルアミン(0.1mL)を添加し室温で攪拌した。そこに反応剤としてアセチルクロリド(0.60mL,8.45mmol)及び4−ジメチルアミノピリジン(0.05g,0.16mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。10重量%塩酸(10mL)で反応を停止させ、クロロホルム(50mL)を加え、分液漏斗にて抽出した。
次に、メタノールの使用量を150mLとした他は実施例1と同様にして乾燥、濾過、濃縮、晶析及び真空乾燥を行なうことにより、表題化合物C60(3,4−C63(O(C=O)Me)25Meをオレンジ色固体(0.11g,0.06mmol,収率83%)として得た。
HPCLの溶離液にトルエン/メタノール=2/8を用いた他は、実施例1と同様にして、得られた生成物を1H−NMR及びHPLCにて測定した。
HPLC測定の結果、リテンションタイム5.19minに93.99Area%で観測された。
さらに、1H−NMRの測定結果は、以下のとおりであった。
1H−NMR(CDCl3,270MHz)]
7.51〜7.70ppm(m,Ph,10H),7.20ppm(m,Ph,3H),7.10ppm(m,Ph,2H),2.29ppm(m,C(=O)−Me,12H),2.26ppm(m,C(=O)−Me,12H),2.21ppm(s,C(=O)−Me,3H),2.17ppm(s,C(=O)−Me,3H),1.56ppm(s,C60Me,3H)
以上の結果から、得られた生成物が表題化合物{C60(3,4−C63(O(C=O)Me)25Me}であることが確認された。
さらに、得られた生成物について、実施例1と同様にして、溶解度を測定した。結果を表1に示す。
さらに得られた表題化合物の1電子目の酸化還元電位(E1/2)は、実施例3と同様にして測定したところ、−1.35Vであった。
(実施例11)C60(3,5−C63(OH)25Me
ヨウ素(1.88g,7.39mmol)にヘキサメチルジシラン(1.44mL,7.04mmol)を加え、70℃で30min加熱攪拌した溶液に、原料フラーレン誘導体であるC60(3,5−C63−(OMe)25Me(1.00g,0.70mmol)の脱水オルトジクロロベンゼン(10mL)懸濁液を添加し、さらに脱水オルトジクロロベンゼン(3mL)を添加した。90℃で8時間加熱を行なった後、25℃まで冷却し、冷水50mLで反応を停止させた。酢酸エチル100mLを添加し、有機層を抽出した後、水ならびに亜硫酸アンモニウム水溶液で分液した後、もう一度水洗浄を行なった。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を濃縮しヘキサン(20mL)で晶析し、170℃で真空乾燥することで表題化合物{C60(3,5−C63(OH)25Me}をオレンジ色固体(0.70g,0.55mmol,収率78%)として得た。
実施例9と同様にして、得られた生成物を1H−NMR及びHPLCにて測定した。
HPLC測定の結果、リテンションタイム2.95minに95.07(Area%)で観測された。
さらに、1H−NMRの測定結果は、以下のとおりであった。
1H−NMR(DMSO−d6,270MHz)]
9.23ppm(s,OH,4H),9.20ppm(s,OH,2H),9.17ppm(s,OH,4H),6.80ppm(d,Ph,4H),6.79ppm(d,Ph,4H),6.19ppm(t,Ph,2H),6.15ppm(t,Ph,1H),6.11ppm(t,Ph,2H),6.05ppm(d,Ph,2H),1.94ppm(s,C60Me,3H)
以上の結果から、得られた生成物が表題化合物{C60(3,5−C63(OH)25Me}であることが確認された。
さらに、得られた生成物について、実施例1と同様にして、溶解度を測定した。結果を表1に示す。
さらに得られた表題化合物の1電子目の酸化還元電位(E1/2)は、実施例3と同様にして測定したところ、−1.47Vであった。
(比較例1)C60(C64OC(=O)Me)5Me
原料フラーレン誘導体であるC60(C64OH)5Me(0.20g,0.17mmol)の脱水テトラヒドロフラン(20mL)懸濁液に、トリエチルアミン(0.2mL)を添加し室温で攪拌した。そこに反応剤としてアセチルクロリド(0.60mL,8.45mmol)及び4−ジメチルアミノピリジン(0.10g,0.32mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。10重量%塩酸(10mL)で反応を停止させ、クロロホルム(50mL)を加え、分液漏斗にて抽出した。
次に、メタノールの使用量を300mLとした他は実施例1と同様にして乾燥、濾過、濃縮、晶析及び真空乾燥を行なうことにより、表題化合物{C60(C64OC(=O)Me)5Me}をオレンジ色固体(0.18g,0.12mmol,収率70%)として得た。
実施例1と同様にして、得られた生成物を1H−NMR及びHPLCにて測定した。
HPLC測定の結果、リテンションタイム4.81minに91.24(Area%)で観測された。
さらに、1H−NMRの測定結果は、以下のとおりであった。
1H−NMR(CDCl3,270MHz)]
7.82ppm(m,Ph,4H),7.70ppm(m,Ph,4H),7.05−7.24ppm(m,Ph,10H),6.87ppm(d,Ph,2H),2.34ppm(s,Me,6H),2.31ppm(s,Me,6H),2.21ppm(s,Me,3H),1.55ppm(s,C60Me,3H)
以上の結果から、得られた生成物が表題化合物{C60(C64OC(=O)Me)5Me}であることが確認された。
さらに、得られた生成物について、実施例1と同様にして、溶解度を測定した。結果を表2に示す。
(比較例2)C60(C64OC(=O)Et)5Me
原料フラーレン誘導体であるC60(C64OH)5Me(0.30g,0.25mmol)の脱水テトラヒドロフラン(30mL)懸濁液に、トリエチルアミン(0.3mL)を添加し室温で攪拌した。そこに反応剤であるプロピオニルクロリド(0.50mL,5.59mmol)及び4−ジメチルアミノピリジン(0.15g,1.28mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。10重量%塩酸(10mL)で反応を停止させ、クロロホルム(30mL)を加え、分液漏斗にて抽出した。
次に、メタノールの使用量を300mLとした他は実施例1と同様にして乾燥、濾過、濃縮、晶析及び真空乾燥を行なうことにより、表題化合物{C60(C64OC(=O)Et)5Me}をオレンジ色固体(0.25g,0.16mmol,収率63%)として得た。
実施例1と同様にして、得られた生成物を1H−NMR及びHPLCにて測定した。
HPLC測定の結果、リテンションタイム7.01minに82.42(Area%)で観測された。
さらに、1H−NMRの測定結果は、以下のとおりであった。
1H−NMR(CDCl3,270MHz)]
7.82ppm(m,Ph,4H),7.77ppm(m,Ph,4H),7.05−7.25ppm(m,Ph,10H),6.88ppm(d,Ph,2H),2.63ppm(q,CH2,4H),2.61ppm(q,CH2,4H),2.50ppm(q,CH2,2H),1.48ppm(s,C60Me,3H),1.30ppm(t,Me,6H),1.28ppm(t,Me,6H),1.20ppm(t,Me,3H)
以上の結果から、得られた生成物が表題化合物{C60(C64OC(=O)Et)5Me}であることが確認された。
さらに、得られた生成物について、実施例1と同様にして、溶解度を測定した。結果を表2に示す。
(比較例3)C60(C64OC(=O)nPr)5Me
原料フラーレン誘導体であるC60(C64OH)5Me(0.30g,0.25mmol)の脱水テトラヒドロフラン(30mL)懸濁液に、トリエチルアミン(0.3mL)を添加し室温で攪拌した。そこに反応剤であるブチリルクロリド(0.50mL,4.81mmol)及び4−ジメチルアミノピリジン(0.15g,1.28mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。10重量%塩酸(10mL)で反応を停止させ、クロロホルム(30mL)を加え、分液漏斗にて抽出した。
次に、メタノールの使用量を300mLとした他は実施例1と同様にして乾燥、濾過、濃縮、晶析及び真空乾燥を行なうことにより、表題化合物{C60(C64OC(=O)nPr)5Me}をオレンジ色固体(0.25g,0.15mmol,収率60%)として得た。
実施例1と同様にして、得られた生成物を1H−NMR及びHPLCにて測定した。
HPLC測定の結果、リテンションタイム9.50minに75.21(Area%)で観測された。
さらに、1H−NMRの測定結果は、以下のとおりであった。
1H−NMR(CDCl3,270MHz)]
7.81ppm(m,Ph,4H),7.69ppm(m,Ph,4H),7.05−7.25ppm(m,Ph,10H),6.89ppm(d,Ph,2H),2.58ppm(t,C(=O)CH2,4H),2.56ppm(t,C(=O)CH24H),2.46ppm(t,C(=O)CH2,2H),1.62−1.90ppm(m,CH2,10H),1.48ppm(s,C60Me,3H),1.07ppm(t,Me,6H),1.06ppm(t,Me,6H),0.99ppm(t,Me,3H)
以上の結果から、得られた生成物が表題化合物{C60(C64OC(=O)nPr)5Me}であることが確認された。
さらに、得られた生成物について、実施例1と同様にして、溶解度を測定した。結果を表2に示す。
(比較例4)C60(C64OC(=O)C64OMe)5Me
原料フラーレン誘導体であるC60(C64OH)5Me(0.20g,0.17mmol)の脱水テトラヒドロフラン(20mL)懸濁液に、トリエチルアミン(0.2mL)を添加し室温で攪拌した。そこに反応剤であるp−アニソイルクロリド(0.20g,1.17mmol)及び4−ジメチルアミノピリジン(0.10g,0.32mmol)を加え、室温で3時間攪拌した。10重量%塩酸(10mL)で反応を停止させ、クロロホルム(50mL)を加え、分液漏斗にて抽出した。
次に、メタノールの使用量を300mLとした他は実施例1と同様にして乾燥、濾過、濃縮、晶析及び真空乾燥を行なうことにより、表題化合物{C60(C64OC(=O)C64OMe)5Me}をオレンジ色固体(0.22g,0.12mmol,収率69%)として得た。
実施例1と同様にして、得られた生成物を1H−NMR及びHPLCにて測定した。
HPLC測定の結果、リテンションタイム11.29minに90.37(Area%)で観測された。
さらに、1H−NMRの測定結果は、以下のとおりであった。
1H−NMR(CDCl3,270MHz)]
8.18ppm(d,Ph,4H),8.15ppm(d,Ph,4H),8.07ppm(d,Ph,2H),7.93ppm(m,Ph,4H),7.80ppm(m,Ph,4H),7.33ppm(m,Ph,2H),7.09−7.26ppm(m,Ph,8H),7.05ppm(d,Ph,2H),7.03−6.93ppm(m,Ph,10H),3.89ppm(s,OMe,12H),3.87ppm(s,OMe,3H),1.59ppm(s,C60Me,3H)
以上の結果から、得られた生成物が表題化合物{C60(C64OC(=O)C64OMe)5Me}であることが確認された。
さらに、得られた生成物について、実施例1と同様にして、溶解度を測定した。結果を表2に示す。
(比較例5)C60(CH2SiMe35Me
原料フラーレン誘導体であるC60(CH2SiMe)5H(1.00g,0.87mmol)の脱水テトラヒドロフラン(50mL)溶液に、tBuOK(194mg,1.73mmol)を添加し、1時間室温で攪拌した。そこにMeI(0.5mL,8.03mmol)を添加し、室温で1時間攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液(0.2mL)で反応を停止させ、セライト濾過し、生成した塩を取り除いた。溶媒を除去し、ヘキサン溶液にした後、シリカカラムクロマトグラフィーを行ない、最初に展開されるバンドを分取した。濃縮後、メタノール(300mL)で晶析を行ない、真空乾燥を行なうことにより、表題化合物{C60(CH2SiMe35Me}を赤色固体(0.45g,0.38mmol,収率44%)として得た。
HPCLの溶離液にトルエン/メタノール=4/6を用いた他は、実施例1と同様にして、得られた生成物を1H−NMR及びHPLCにて測定した。
HPLC測定の結果、リテンションタイム6.62minに93.45(Area%)で観測された。
さらに、1H−NMRの測定結果は、以下のとおりであった。
1H−NMR(CDCl3,270MHz)]
2.37(br,CH2,2H),2.07(d,CH2,2H),2.05(d,CH2,2H),1.81(d,CH2,2H),1.77(d,CH2,2H),1.56(s,C60Me,3H),0.14(s,SiMe,18H),0.12(s,SiMe,18H),0.02(s,SiMe,9H)
以上の結果から、得られた生成物が表題化合物{C60(CH2SiMe35Me}であることが確認された。
さらに、得られた生成物について、実施例1と同様にして、溶解度を測定した。結果を表2に示す。
(酸化テスト)
実施例1で合成したC60(C64OC(=O)tBu)5Meのトルエン溶液(1mg/mL)とC60(C64OC(=O)tBu)5Hのトルエン溶液(1mg/mL)とをそれぞれ作製し、室温空気下で放置した。数日毎に、0.2mLずつ試料をとりだし、トルエンで5倍に希釈したのち、HPLCでその経時変化を分析した。HPLC分析条件は、ODS、カラムサイズ:150mm×4.6mmΦ、溶離液:トルエン/メタノール=3/7、流速:1.0mL/min、検出器:UV290nmとした。
観測される全ピーク面積にしめるC60(C64OC(=O)tBu)5MeもしくはC60(C64OC(=O)tBu)5Hのピーク面積の割合の経時的な変化を表3に示した。
Figure 0004824959
Figure 0004824959
上記表1及び表2から分かるように、本発明の実施例1〜11のフラーレン誘導体は、エステル系溶媒の一種であるPGMEAに対して比較例1〜5のフラーレン誘導体よりも遥かに高い溶解性を示す。したがって、本発明のフラーレン誘導体が、エステル系溶媒に対して非常に高い溶解性を有していることが確認された。
Figure 0004824959
上記表3から分かるように、C60(C64OC(=O)tBu)5H由来のピークは、0.66%/日程度の速度で減少しており、61日後には57.1%に達している。これに対し、C60(C64OC(=O)tBu)5Me由来のピークはほとんど減少しておらず、61日後でもテスト開始初期の面積比93.9%と同程度の面積比93.7%である。これらの結果から、C60(C64OC(=O)tBu)5Hが酸化を受けてC60(C64OC(=O)tBu)5Hの面積割合が低下している一方、C60(C64OC(=O)tBu)5Meは溶液中で長期保存しても面積割合がほとんど変化していないことがわかる。
本発明のフラーレン誘導体は、産業上の様々な分野において使用可能であるが、従来公知のフラーレン誘導体とは、異なる性質(エステル系溶媒に可溶)を有するため、DVD、CDなどの光ディスク材料、半導体集積回路作製、半導体集積回路作成用マスク製造用、液晶用集積回路作製及び液晶画面製造用レジスト材料等としての応用が特に期待される。中でも、これらのうち、空気中で酸化しにくい誘導体は、各種用途に適用する際に、安定であり好適である。
また、水酸基やアルコキシカルボニル基等の極性官能基を有する誘導体は、極性官能基を更に他の官能基に変換できるため、各種フラーレン誘導体の原料としても有用である。更に、多くの有機基を有し且つフラーレン骨格のπ電子共役系を保持しているため、同程度の数の有機基が付加した従来公知のフラーレン誘導体より電子授受能力に優れ、有機基の種類及び数により電子授受の起こりやすさ(酸化還元挙動)を制御しやすいため、電子授受が関係する電子材料用途などに広範に用いられる可能性がある。

Claims (10)

  1. 下記式(I)の部分構造を有するとともに、
    下記式(I)のC6〜C8が、各々独立に下記式(II)で表される構造の有機基と結合している
    ことを特徴とする、フラーレン誘導体。
    Figure 0004824959
    {上記式(I)中、C1〜C10は、いずれもフラーレン骨格を構成する炭素原子を表わし
    、C1は炭素数1〜30の有機基と結合している。}
    Figure 0004824959
    {上記式(II)中、Arは、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、ハロゲン原子、チオール基、チオエーテル基、アルコキシフェニル基、有機ケイ素基から選ばれる少なくとも1種の置換基により置換されていてもよいアリーレン基又はヘテロアリーレン基を表わし、Lは、Ar側の末端が酸素原子であり、カルボニル基を少なくとも1個有する主鎖の原子数1〜11の2価の連結基であって、上記カルボニル基以外の部分を構成する基が、メチレン基、イミノ基、オキシ基よりなる群から選ばれる少なくとも一種であり、Tは2つ以上の炭素数1〜20の有機基と結合している14族の原子を表わす。}
  2. アリーレン基がフェニレン基である
    ことを特徴とする請求項1に記載のフラーレン誘導体。
  3. 上記式(I)中のC6〜C8に加えて、C9〜C10が各々独立に上記式(II)で表される
    構造の有機基と結合している
    ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のフラーレン誘導体。
  4. 上記式(II)のTにおける14族の原子が炭素原子である
    ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のフラーレン誘導体。
  5. 上記式(II)において、LのAr側の末端が下記式(III)で表わされる構造である
    ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のフラーレン誘導体。
    Figure 0004824959
    {上記式(III)中、nは0〜10の整数を表わす。}
  6. 25℃でのプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテートへの溶解性が10mg/mL以上で、且つテトラヒドロフラン溶媒中における1電子目の酸化還元電位が、フェロセンの酸化還元電位基準で−1.60V以上である
    ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のフラーレン誘導体。
  7. 下記式(I)の部分構造を有するとともに、
    下記式(I)のC6〜C8が、各々独立に下記式(IV)で表される構造の有機基と結合していることを特徴とする、フラーレン誘導体。
    Figure 0004824959
    {上記式(I)中、C1〜C10は、いずれもフラーレン骨格を構成する炭素原子を表わし
    、C1は炭素数1〜30の有機基と結合している。}
    Figure 0004824959
    {上記式(IV)中、sは2〜5の整数を表わし、Rは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の直鎖アルキル基、分岐状の鎖状アルキル基、環状アルキル基、アルケニル基から選ばれる有機基、または、炭素数19以下の直鎖アルキル基、分岐状の鎖状アルキル基、環状アルキル基、アルケニル基から選ばれる有機基が結合するカルボニル基を表わす。}
  8. 上記式(I)中のC6〜C8に加えて、C9〜C10が各々独立に上記式(IV)で表される
    構造の有機基と結合している
    ことを特徴とする、請求項7に記載のフラーレン誘導体。
  9. 25℃でのプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテートへの溶解性が10mg/mL以上で、且つ、テトラヒドロフラン溶媒中における1電子目の酸化還元電位が、フェロセンの酸化還元電位基準で−1.60V以上である
    ことを特徴とする請求項7又は請求項8に記載のフラーレン誘導体。
  10. フラーレン骨格がフラーレンC60である
    ことを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載のフラーレン誘導体。
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