JP5658434B2 - フラーレン誘導体並びにその溶液及びその膜 - Google Patents

フラーレン誘導体並びにその溶液及びその膜 Download PDF

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Description

本発明は、新規のフラーレン誘導体並びにその溶液及びその膜に関する。
1990年にC60の大量合成法が確立されて以来、フラーレンに関する研究が精力的に展開されている。その結果、数多くのフラーレン誘導体が合成され、その多様な機能が明らかにされてきた。それに伴い、フラーレンの各種用途開発が進められている。
フラーレン誘導体の中でも特に、フラーレン骨格の下記式(2A)で表わされる部分構造において、C〜C10のうち3つの炭素原子(例えばC〜Cの炭素原子)に置換基が付加された部分構造(以下、適宜「3重付加部分構造」と言う。)、C〜C10の炭素原子の全てに置換基が付加された部分構造(以下、適宜「5重付加部分構造」と言う。)を有するフラーレン誘導体が種々合成され、開示されている。
Figure 0005658434
(上記式(2A)中、C〜C10は、フラーレン骨格を構成する炭素原子を表わす。)
なお、以下の記載では、上記式(2A)で表わされる部分構造のC〜C10で表わされる炭素原子を、それぞれ、単に「C」〜「C10」で表わす場合がある。
さらに、以下の記載では、上記の3重付加部分構造及び/又は5重付加部分構造においてC〜C10に結合する置換基を「付加置換基」という場合がある。
また、上記の3重付加部分構造及び/又は5重付加部分構造を有するフラーレン誘導体を、付加置換基の総数に応じて呼ぶ場合がある。この呼び名に従えば、3重付加部分構造を1つ有するフラーレン誘導体は「3重付加フラーレン誘導体」、5重付加部分構造を1つ有するフラーレン誘導体は「5重付加フラーレン誘導体」、3重付加部分構造を2つ有するフラーレン誘導体は「6重付加フラーレン誘導体」、3重付加部分構造と5重付加部分構造とを1つずつ有するフラーレン誘導体は「8重付加フラーレン誘導体」、5重付加部分構造を2つ有するフラーレン誘導体は「10重付加フラーレン誘導体」となる。
また、上記の3重付加部分構造及び/又は5重付加部分構造を2つ以上有するフラーレン誘導体、即ち、例えば「6重付加フラーレン誘導体」、「8重付加フラーレン誘導体」、「10重付加フラーレン誘導体」等を、「多重付加フラーレン誘導体」と総称するものとする。
5重付加フラーレン誘導体のうち、例えばフラーレンC60骨格を有する5重付加フラーレン誘導体は、50電子系のπ電子共役になっており、60電子系のπ電子共役である無置換のフラーレンC60とは異なる立体配置、電子的性質等を有している。
また、5重付加フラーレン誘導体より置換基の付加数が少ない3重付加フラーレン誘導体として、例えば66電子系のπ電子共役である3重付加フラーレンC70誘導体も合成され報告されている。これらの3重付加フラーレン誘導体は、無置換のフラーレンC60、C70だけでなく、上記の5重付加フラーレンC60誘導体とも異なる物性を有している。このことから、それぞれのフラーレン誘導体は新たな電子伝導材料、半導体、生理活性物質等として期待されている。
5重付加フラーレンC60誘導体、3重付加フラーレンC70誘導体等のフラーレン誘導体は、フラーレンの特定部位に集中的に有機基が付加した独特の構造を有しており、長いπ電子共役を有しているため、その電気化学的物性等に興味が持たれている。
また、一方で、電子受容性を制御したフラーレン誘導体、及び特定のπ電子共役を有するフラーレン誘導体等として、8重付加フラーレン誘導体、10重付加フラーレン誘導体等に興味が持たれており、各種の基を有する多重付加フラーレン誘導体が開示されている(非特許文献1)。
ところで、フラーレン誘導体を例えば電子材料、金属錯体の配位子等に利用したり、他のフラーレン誘導体の中間体として使用したりするためには、フラーレン誘導体が有機溶媒に対して高溶解性を示すことが好ましい。例えば、トルエン等の芳香族炭化水素溶媒、クロロホルム等のハロゲン溶媒、ヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒などに溶解性を示すフラーレン誘導体が開発されている。
具体的には、例えば、安全面及び揮発性等の観点から、取扱が容易で、通常の工業用途で使用されている、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート(以下、適宜「PGMEA」と言う。)等に代表されるエステル溶媒に高溶解性を示す5重付加フラーレン誘導体が開示されている(特許文献1参照)。
特開2006−56878号公報
Angew.Chem.Int.Ed.2007,46,2844−2847
非特許文献1においては、各種多重付加フラーレン誘導体が製造されているが、トルエン等の芳香族炭化水素溶媒には高溶解性を示すものの、PGMEA等のエステル溶媒に対する溶解性は十分ではなく、またイソプロピルアルコール等のアルコール溶媒、並びにアルカリ溶媒に対する溶解性を有するものでもなかった。
さらに、特許文献1においては、各種の溶媒への溶解性を向上させる等の目的で、1又は2以上の水酸基を有するフェニル基を付加置換基として有する5重付加フラーレン誘導体が製造されている。ところが、水酸基を1つのみ有するフェニル基(1価フェノール基)を付加置換基として有する5重付加フラーレン誘導体の場合、上記式(2A)のCに水素原子又はメチル基が結合していると、PGMEA等のエステル溶媒に対する溶解性が十分ではなかった。
さらに、水酸基を2以上有するフェニル基(多価フェノール基)を付加置換基として有する5重付加フラーレン誘導体の場合、PGMEA等のエステル溶媒に対する溶解性は高いものの、アルコール溶媒並びにアルカリ溶媒に対する溶解性、及びフラーレン誘導体膜製造時のアルカリ溶媒並びにアルコール溶媒への溶解速度が十分ではなかった。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、PGMEA等のエステル溶媒への高溶解性を示すだけではなく、イソプロピルアルコール等のアルコール溶媒並びにアルカリ溶媒への高溶解性を同時に満たすとともに、アルカリ溶媒並びにアルコール溶媒への高い溶解速度を有するフラーレン誘導体並びにその溶液及びその膜を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、特定の構造を有する基をフラーレン骨格上に特定数有するフラーレン誘導体を用いることにより、PGMEA等のエステル溶媒への高溶解性を示すだけではなく、イソプロピルアルコール等のアルコール溶媒並びにアルカリ溶媒への高溶解性を同時に満たすとともに、アルカリ溶媒並びにアルコール溶媒への高い溶解速度を有するフラーレン誘導体並びにその溶液及びその膜を提供することができることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明の要旨は、フラーレン骨格上に下記式(1)で表わされる基を6個以上10個以下有し、フラーレン骨格が有する下記式(2)で表わされる部分構造において、Cが水素原子又は、炭素数1以上30以下の直鎖或いは分岐状の鎖状アルキル基、環状アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、置換アミノ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、5員複素環基、6員複素環基、チオカルボニル基、及び置換シリル基からなる群より選ばれる基と結合しており、C〜Cが各々独立に、下記式(1)で表わされる基と結合しているとともに、該部分構造を少なくとも2か所有することを特徴とする、フラーレン誘導体に存する。
Figure 0005658434
(上記式(1)中、qは0以上4以下の整数を表し、rは、r+qが5以下となる自然数を表わす。また、Rは、各々独立に、直鎖又は分岐状の鎖状アルキル基、環状アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、及びアリーロキシ基からなる群より選ばれる基又はハロゲン原子を表わす。)
Figure 0005658434
(上記式(2)中、C〜C10は、フラーレン骨格を構成する炭素原子を表わす。)
この時、該式(1)で表わされる基の数が、8個又は10個であることが好ましい。
また、上記式(1)中、qは0以上3以下の整数を表し、rは2又は3を表わし、r+qが5以下となることが好ましい。
さらに、該C〜C10と上記式(1)で表される基とが各々独立に結合している該部分構造を、少なくとも1か所有することが好ましい。
の時、上記のCに結合している基がメチル基であることが好ましい。
また上記のCに結合している基がアルケニル基であることが好ましい。
そして、25℃、1気圧において、0.48重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に対して、0.5重量%以上の割合で溶解するとともに、イソプロピルアルコールに対して、5重量%以上の割合で溶解することが好ましい。
また、該Rが、アルキル基、及び/又は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子からなる群より選ばれる1種以上のハロゲン原子であることが好ましい。
そして、該フラーレン骨格がフラーレンC60であることが好ましい。
また、該フラーレン骨格がフラーレンC70であることが好ましい。
さらに、該フラーレン骨格がフラーレンC60又はC70以外のフラーレンを含むことが好ましい。
また、本発明の別の要旨は、上記本発明の何れか一のフラーレン誘導体が溶媒に溶解してなることを特徴とする、フラーレン誘導体溶液に存する。
この時、該溶媒が、エステル溶媒であることが好ましい。
また、本発明の別の要旨は、上記本発明の何れか一のフラーレン誘導体を含むことを特徴とする、フラーレン誘導体膜に存する。
本発明によれば、PGMEA等のエステル溶媒への高溶解性を示すだけではなく、イソプロピルアルコール等のアルコール溶媒並びにアルカリ溶媒への高溶解性を同時に満たすとともに、アルカリ溶媒並びにアルコール溶媒への高い溶解速度を有するフラーレン誘導体並びにその溶液及びその膜を提供することができる。
実施例1で製造したフラーレン誘導体膜の屈折率及び消衰係数の波長スペクトルを表わす図である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の内容に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施することができる。
[1.フラーレン誘導体]
[1−1.構造]
〔フラーレン及びフラーレン骨格〕
本発明のフラーレン誘導体は、特定の部分構造を有するフラーレン誘導体である。
ここで、「フラーレン」とは、閉殻構造を有する炭素クラスターである。フラーレンの炭素数は、通常60以上130以下の偶数である。
フラーレンの具体例としては、C60、C70、C76、C78、C82、C84、C90、C94、C96及びこれらよりも多くの炭素を有する高次の炭素クラスター等が挙げられる。
なお、本明細書では、炭素数i(ここでiは任意の自然数を表わす。)のフラーレン骨格を適宜、一般式「C」で表わす。
また、「フラーレン誘導体」とは、フラーレン骨格を有する化合物又は組成物の総称である。即ち、「フラーレン誘導体」には、フラーレン骨格上に、付加基、置換基等を有したもののほか、フラーレン骨格の内部に、例えば金属、化合物等を内包するもの、及び他の金属原子、化合物等と錯体を形成したもの等も含まれる。
本発明のフラーレン誘導体が有するフラーレン骨格は特に制限されないが、中でもフラーレン骨格は、フラーレンC60、C70、及びC60とC70との混合物が好ましく、C60が特に好ましい。C60及びC70はフラーレンの製造時に主生成物として得られるので、C60及びC70を用いることにより、フラーレンの入手が容易であるという利点が得られる。即ち、本発明のフラーレン誘導体は、フラーレンC60又はC70の誘導体であることが好ましく、特に入手が容易である点から、フラーレンC60の誘導体であることがより好ましい。
また、フラーレン誘導体の製造コスト低減の観点から、フラーレン誘導体のフラーレン骨格が、C60又はC70以外のフラーレンを含むことが好ましい。すなわち、本発明のフラーレン誘導体は、フラーレンC60誘導体及び/又はフラーレンC70誘導体と、フラーレンC60又はC70以外のフラーレン骨格を有する誘導体との混合物であることが好ましい。この場合、フラーレンC60誘導体、フラーレンC70誘導体、及びフラーレンC60又はC70以外のフラーレン骨格を有するフラーレン誘導体の混合比は任意であり、所望のフラーレン誘導体の用途によって決定すれば良い。
フラーレンC60又はC70以外のフラーレンとしては、例えばC76、C78、C82、C84、C90、C94、C96等が挙げられる。フラーレンC60又はC70以外のフラーレンは、1種で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いられてもよい。
〔式(1)で表わされる基(R20)〕
本発明のフラーレン誘導体は、フラーレン骨格上に下記式(1)で表わされる基を6個以上12個以下有するものである。なお、以下の説明において、下記式(1)で表わされる構造の基を、適宜「R20」と言う。
Figure 0005658434
(上記式(1)中、qは0以上4以下の整数を表し、rは、r+qが5以下となる自然数を表わす。また、Rは、各々独立に、任意の有機基又はハロゲン原子を表わす。)
(フラーレン骨格上のR20の数)
本発明のフラーレン誘導体は、フラーレン骨格上に上記のR20を6個以上12個以下有しているが、中でも、10個以下有することが好ましく、製造が容易であるという観点から、8個又は10個有することが特に好ましい。本発明のフラーレン誘導体がフラーレン骨格上にR20を特定数有することにより、PGMEA等のエステル溶媒への高溶解性に加え、アルコール溶媒並びにアルカリ溶媒への高溶解性を示すとともに、アルカリ溶媒並びにアルコール溶媒への高い溶解速度を有するフラーレン誘導体が得られる。
(式(1)におけるR及びq)
上記式(1)中、Rは各々独立に、任意の有機基又はハロゲン原子を表わす。
Rが有機基である場合、Rの炭素数は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1以上であればよく、また、その上限は、通常12以下、好ましくは10以下、より好ましくは6以下である。炭素数が多すぎる場合、原料入手が困難となる可能性がある。
また、Rは、直鎖であってもよく、分岐を有していてもよい。また、Rは鎖状であっても環状であってもよい。さらに、Rは飽和結合のみを有していてもよく、不飽和結合を有していてもよい。
有機基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基等の直鎖又は分岐状の鎖状アルキル基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基;アリル基等のアルケニル基;フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基等のアリール基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基等のアリーロキシ基等が挙げられる。
Rがハロゲン原子の場合、ハロゲン原子の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
これらの中でも、原料調達の観点から、Rは直鎖又は分岐状の鎖状アルキル基、環状アルキル基等のアルキル基、及び/又は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子からなる群より選ばれる1種以上のハロゲン原子であることが好ましく、特にメチル基、フッ素原子、塩素原子が好ましい。なお、Rは1種であってもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
また、Rは置換基を有していても良い。ただし、Rが置換基を有する場合、置換基の炭素数も含めたR全体の炭素数が上記の範囲を満たすことが好ましい。また、これらの置換基が更に一以上の置換基によって多重に置換されていてもよい。
置換基は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
上記式(1)中、qはベンゼン環(即ち、フェニル基)に結合するRの数を表わす。qは0以上4以下の整数を表わすが、中でも、原料調達の観点から、qは0以上2以下の整数であることが好ましい。即ち、qは、0、1又は2であることが好ましい。
なお、Rは、フェニル基の任意の位置に結合することができる。また、複数のRが結合する場合、それぞれのRの相対的な位置関係も任意である。
(式(1)におけるr)
式(1)において、rは、フェニル基と結合している水酸基(OH基)の数を表わす。rは、rと上記のqとの和(r+q)の値が5以下となる自然数であればよいが、なかでも、原料調達の観点から、rは1以上3以下(ただし、この場合においてもr+qの値は5以下であり、以下、同様である。)であることが好ましい。また、製造コストの観点では、rは1であることがより好ましく、また溶解性向上の観点からは、rは2又は3であることがより好ましい(即ち、R20が多価フェニル基であることがより好ましい)。
この際、フェニル基に結合している水酸基の位置は任意であり、また、2以上の水酸基が結合している場合には、それらの水酸基の相対的な位置関係も任意である。ただし、原料調達及び合成の容易さの観点から、水酸基が1個結合している場合、フェニル基の3位又は4位の炭素原子に水酸基が結合していることが好ましく、水酸基が2個結合している場合、フェニル基の3位並びに4位の炭素原子、又はフェニル基の3位並びに5位の炭素原子に結合していることが好ましく、さらに、水酸基が3個結合している場合、フェニル基の3位、4位並びに5位の炭素原子に結合していることが好ましい。
なお、フェニル基における上記のRと水酸基との相対的な結合位置も、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意である。
〔式(2)で表わされる部分構造〕
本発明のフラーレン誘導体は、上記の構造を有する限り他に制限はない。ただし、フラーレン骨格が有する下記式(2)で表わされる部分構造において、Cが水素原子又は任意の基(以下、これらをまとめて適宜「R10」と言う。)と結合しており、C〜Cが各々独立に、R20(即ち、上記式(1)で表わされる基)と結合しているとともに、このような部分構造を少なくとも2か所、本発明のフラーレン誘導体が有することが好ましい。
Figure 0005658434
(上記式(2)中、C〜C10は、フラーレン骨格を構成する炭素原子を表わす。)
(Cに結合するR10)
R10は、Cに結合する水素原子又は任意の基を表わす。R10は、本発明の効果を著しく損なわない限り、特に制限はない。
R10が任意の基である場合、R10の具体例としては、ハロゲン原子、有機基、その他の基等が挙げられる。なお、R10は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
R10がハロゲン原子である場合、ハロゲン原子の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。なかでも、製造の容易さの観点から、ハロゲン原子は塩素原子、臭素原子であることが好ましい。
R10が有機基である場合、R10として任意の有機基を用いることができるが、有機基の炭素数が、通常1以上であればよく、また、その上限は、通常30以下、好ましくは15以下、より好ましくは10以下であるものが望ましい。炭素数が多すぎる場合、合成が困難となる可能性がある。なお、R10が後述する置換基を有する場合、置換基の炭素数も含めたR10全体の炭素数が上記の範囲を満たすことが好ましい。
なお、R10が有機基である場合、R10は、直鎖であってもよく、分岐を有していてもよい。また、R10は鎖状であっても環状であってもよい。さらに、R10は飽和結合のみを有していてもよく、不飽和結合を有していてもよい。
有機基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基等の直鎖又は分岐状の鎖状アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基;アリル基、クロチル基、シンナミル基等のアルケニル基;ベンジル基、p−メトキシベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基;フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、トルイル基等のアリール基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基等のアリーロキシ基;モノメチルアミノ基、ジメチルアミノ基、モノジエチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の置換アミノ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;アリーロキシカルボニル基;チエニル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、フリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基等の5員複素環基;ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、ピラジル基、ピペリジル基、ピペラジル基、モルホリル基等の6員複素環基;チオホルミル基、チオアセチル基、チオベンゾイル基等のチオカルボニル基;トリメチルシリル基、ジメチルシリル基、モノメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジエチルシリル基、モノエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ジイソプロピルシリル基、モノイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルシリル基、モノフェニルシリル基等の置換シリル基等が挙げられる。
R10が有機基である場合、R10は置換基で置換されていてもよい。R10が有していてもよい置換基の具体例としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、水酸基(ヒドロキシ基)、アミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子等が挙げられる。また、これらの置換基が更に一以上の置換基によって多重に置換されていてもよい。なお、置換基は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
また、R10が他の基である場合、他の基の具体例としては、水酸基(ヒドロキシル基)、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基、シアノ基、シリル基、ニトロ基等が挙げられる。
上記のもののうち、R10としては、水素原子;ハロゲン原子;有機基(中でも、メチル基、エチル基、プロピル基等の直鎖又は分岐状のアルキル基;アリル基、クロチル基、シンナミル基等のアルケニル基)が好ましい。中でも、合成の容易さ及び耐酸化性の観点から、R10はアルキル基であることがより好ましく、熱安定性、コストの観点からメチル基であることが特に好ましい。
また、合成の容易さに加えて溶解性向上の観点から、R10はアルケニル基であることが好ましく、なかでもコストの観点から、R10はアリル基、クロチル基、シンナミル基であることが特に好ましい。
(C〜C10及びR20)
本発明のフラーレン誘導体は、少なくともC〜Cが各々独立にR20と結合している部分構造を少なくとも2か所以上、また、4か所以下含むことが望ましい。ただし、エステル溶媒、アルコール溶媒、及びアルカリ溶媒に対する本発明のフラーレン誘導体の溶解性を高める観点からは、C〜Cのみならず、C〜C10が各々独立にR20と結合している部分構造を少なくとも1か所、溶解性向上の観点から好ましくは2か所含むことがより望ましい。
なお、C〜Cに結合するR20は、互いに同じ構造の基であってもよく、異なる構造の基であってもよいが、合成が容易であるという観点から、R20は全て同じ構造の基であることが好ましい。
なお、上記のように、Cが水素原子又は任意の基(即ち、R10)と結合し、C〜Cが各々独立に式(1)で表される構造の基(即ち、R20)と結合した上記式(2)で表わされる部分構造を、「3重付加部分構造」と言う。また、CがR10と結合し、C〜C10が各々独立にR20と結合した上記式(2)で表わされる部分構造を、「5重付加部分構造」と言う。
本発明のフラーレン誘導体としては、例えば、以下に記載の構造を有することができる。なお、以下の説明において、説明の都合上、本発明のフラーレン誘導体が6重付加、8重付加、10重付加フラーレン誘導体であるとして、本発明を説明することがあるが、以下に記載の構造は、本発明のフラーレン誘導体が取りうる構造の一例であり、本発明のフラーレン誘導体の構造は、以下の構造に限定されるものではない。
・フラーレン骨格上に「3重付加部分構造」を2つ有する、式C(R20)(R10)で表わされる6重付加フラーレン誘導体。
・フラーレン骨格上に「3重付加部分構造」を1つ、「5重付加部分構造」を1つ有する、式C(R20)(R10)で表わされる8重付加フラーレン誘導体。
・フラーレン骨格上に「5重付加部分構造」を2つ有する、式C(R20)10(R10)で表わされる10重付加フラーレン誘導体。
上記のフラーレン誘導体のなかでも、製造が容易であるという観点から、本発明のフラーレン誘導体は、フラーレン骨格上に5重付加部分構造を少なくとも1か所含む8重付加フラーレン誘導体、10重付加フラーレン誘導体が好ましく、各種溶媒に対する溶解性が高いという観点から、フラーレン骨格上に5重付加部分構造を2か所含む10重付加フラーレン誘導体がより好ましい。
[1−2.フラーレン誘導体の性質]
本発明のフラーレン誘導体は、例えばPGMEA等のエステル溶媒に対して高溶解性(即ち可溶)を示すだけではなく、イソプロピルアルコール等のアルコール溶媒並びにアルカリ溶媒に対して高溶解性を示す。
(エステル溶媒への溶解性)
本明細書において、フラーレン誘導体が「エステル溶媒に可溶」であるとは、フラーレン誘導体とエステル溶媒とを混合し、超音波照射を10分かけた後、目視で沈殿物及び不溶分が検出されないことを意味する。具体的には、25℃、常圧(通常は1気圧)下において、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート(即ち、PGMEA)又は乳酸エチルの何れかのエステル溶媒に対して、エステル溶媒の単位体積(1mL)あたり、フラーレン誘導体が通常50mg以上、好ましくは100mg以上、より好ましくは200mg以上溶解する場合に、そのフラーレン誘導体はエステル溶媒に対して可溶、即ち、エステル溶媒に対する溶解性が高いと判断する。
本発明のフラーレン誘導体をエステル溶媒に溶解させて用いる場合、エステル溶媒の種類は、本発明のフラーレン誘導体が溶解するものであれば特に制限されない。エステル溶媒の例としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸フェニル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸フェニル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、乳酸メチル、乳酸エチル等の直鎖状のエステル;γ−ブチロラクトン、カプロラクトン等の環状エステル;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート(PGMEA)、プロピレングリコール−1−モノエチルエーテルアセテート等のエーテルエステル等が挙げられる。
中でも、直鎖状のエステル、エーテルエステルが好ましく、中でも、PGMEA、乳酸エチルがより好ましい。
なお、エステル溶媒は、何れか1種のみを用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
これらのエステル溶媒は、例えばDVD、CD等の光ディスク材料の製造、半導体集積回路の作製、半導体集積回路作製用マスクの製造、液晶用集積回路の作製、液晶画面製造用レジスト材料用等の溶媒として一般的に使用されているエステル溶媒である。また、上記のエステル溶媒は、従来開発されているKrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザーに加えて、EUV(極端紫外光)、EB(電子ビーム)等の光源短波長化に適応したフォトレジスト、反射防止膜の機能を有した下層膜材料としてのフォトレジスト、ナノインプリント及び層間絶縁膜用として特に好適に用いられる溶媒である。
従って、上記のエステル溶媒に可溶であること、即ち、上記のエステル溶媒に対する溶解性が高いことは、本発明のフラーレン誘導体を、上記のような産業上広く使用されている溶媒に溶解することが可能であることを示している。また、フラーレン誘導体が上記のエステル溶媒に溶解する場合、そのフラーレン誘導体は同様に他の有機溶媒に可溶であることが多い。
従って、本発明のフラーレン誘導体のエステル溶媒に対する溶解性が高いことは、本発明のフラーレン誘導体を、例えば、色素増感太陽電池、有機薄膜太陽電池等の有機太陽電池、有機トランジスタ、ダイオード、有機電界発光素子(有機EL素子)、非線形光学材等の有機デバイス全般;樹脂添加剤;潤滑剤;絶縁膜、リチウム2次電池、燃料電池、キャパシター等の電池における電池基材及びその添加剤、表面修飾等のコーティング材、その他セパレータ等の部材を構成する材料及び添加剤;金属、セラミクス添加剤;固体潤滑剤及び潤滑油添加剤等摺動用途への添加剤、触媒用、更には塗料、インク、医薬、化粧品、診断薬など、多方面での産業分野に適用可能であることを示している。
また、上記のエステル溶媒に対するフラーレン誘導体の好ましい溶解量は、フラーレン誘導体の用途によって異なる。例えば、半導体集積回路作製、半導体集積回路作製用マスクの製造、液晶用集積回路作製及び液晶画面製造用レジスト材料用途の塗膜を本発明のフラーレン誘導体を用いて形成するためには、本発明のフラーレン誘導体はエステル溶媒に対して、通常10mg/mL以上、好ましくは50mg/mL以上、より好ましくは100mg/mL以上の濃度で溶解することが望ましい。
本発明のフラーレン誘導体がエステル溶媒に対する高い溶解性を有する理由は定かでは無いが、本発明者が検討した結果、R20が有する水酸基の酸性度に加え、通常の5重付加フラーレン誘導体構造と比べ、フラーレン骨格上にフェニル基を有するR20が6個以上導入されることによるフラーレン誘導体分子の対称性低下による非結晶化効果との相乗効果が生じているからであると推察される。従って、これらの要因により、本発明のフラーレン誘導体は、予想を上回るエステル溶媒への高い溶解性を発現しているものと考えられる。
(アルコール溶媒への溶解性)
また、本発明のフラーレン誘導体は、上記のエステル溶媒に加え、アルコール溶媒に可溶、即ち、アルコール溶媒に対する溶解性も高い。
なお、本明細書において、フラーレン誘導体が「アルコール溶媒に可溶」であるとは、フラーレン誘導体とアルコール溶媒とを混合し、超音波照射を10分かけた後、目視で沈殿物及び不溶分が検出されないことを意味する。具体的には、25℃、常圧(通常は1気圧)下において、イソプロピルアルコールに対して、フラーレン誘導体が通常5重量%以上溶解する場合に、そのフラーレン誘導体はアルコール溶媒に対して可溶、即ち、アルコール溶媒に対する溶解性が高いと判断する。
本発明のフラーレン誘導体をアルコール溶媒に溶解させて用いる場合、アルコール溶媒の種類は、本発明のフラーレン誘導体が溶解するものであれば制限されない。アルコール溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、tert−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール等の1価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等の2価アルコール等が挙げられる。
中でも、アルコール溶媒としては、イソプロピルアルコール、エチレングリコールが好ましく、特にイソプロピルアルコールが好ましい。
なお、これらアルコール溶媒は、何れか1種のみを用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
これらのアルコール溶媒は、例えば電子線レジスト、X線レジスト等の現像液として広く使用されている。従って、アルコール溶媒を現像液として用いるレジストに本発明のフラーレン誘導体を含有させたり、又は、本発明のフラーレン誘導体を主剤として用いたりする場合に、上記のアルコール溶媒は特に好適に使用される。
また、上記のアルコール溶媒に対するフラーレン誘導体の好ましい溶解量は、フラーレン誘導体の用途によって大きく異なるため一概には言えないが、例えば、本発明のフラーレン誘導体を溶解したアルコール溶媒を電子線レジストの現像液として用いる場合、本発明のフラーレン誘導体は、アルコール溶媒に対して、通常1重量%以上、好ましくは5重量%以上の濃度で溶解することが望ましい。
本発明のフラーレン誘導体がアルコール溶媒に対して高い溶解性を示す理由は定かでは無いが、本発明者が検討した結果、R20のフェニル基が有する水酸基の酸性度に加え、通常の5重付加フラーレン誘導体構造と比べ、フラーレン骨格上にフェニル基を有するR20が6個以上導入されることによってフラーレン誘導体分子の対称性が低下し、これによる非結晶化効果との相乗効果が生じているものと推察される。従って、これらの要因により、本発明のフラーレン誘導体は、予想を上回るアルコール溶媒への高い溶解性を発現しているものと考えられる。
(アルカリ溶媒への可溶性)
また、本発明のフラーレン誘導体は、上記のエステル溶媒及びアルコール溶媒に加え、アルカリ溶媒にも可溶、即ち、アルカリ溶媒に対して溶解性が高い。
本明細書において、フラーレン誘導体が「アルカリ溶媒に可溶」であるとは、フラーレン誘導体とアルカリ溶媒とを混合し、超音波照射を10分かけた後、目視で沈殿物及び不溶分が検出されないことを意味する。具体的には、25℃、常圧(通常は1気圧)下において、0.48重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に対するフラーレン誘導体の溶解量が、通常0.5重量%以上である場合には、そのフラーレン誘導体はアルカリ溶媒に対して可溶、即ち、アルカリ溶媒に対する溶解性が高いと判断する。
本発明のフラーレン誘導体をアルカリ溶媒に溶解させて用いる場合、アルカリ溶媒の種類は、本発明のフラーレン誘導体が溶解するものであれば制限されない。アルカリ溶媒の例としては、ピリジン、ピペリジン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、メチルジエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ−(5,4,0)−7−ウンデセン、ジメチルエタノールアミン等のアルカリ有機溶媒;水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸リチウム水溶液、炭酸カルシウム水溶液、アンモニア水溶液、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液等のアルカリ水溶液;等が挙げられる。また、アルカリ水溶液の場合、その溶質の濃度は任意である。
中でも、アルカリ溶媒としては、アルカリ水溶液が好ましく、製品への金属混入を避けることが望ましい用途にフラーレン誘導体を用いる場合には、金属を含まないアルカリ水溶液であるアンモニア水溶液、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液等の水溶液が好ましい。
なお、これらのアルカリ溶媒は、何れか1種のみを用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
本発明のフラーレン誘導体がアルカリ溶媒に対して高い溶解性を示す理由は定かではないが、本発明者が検討した結果、フェノール性の水酸基を含む基であるR20が6個以上、非局所的にフラーレン骨格に結合していることにより、通常の5重付加フラーレン誘導体構造と比較して、疎水性の部位が減少していることに加え、フラーレン誘導体分子の対称性低下による非結晶化効果との相乗効果が生じているからであると推察される。従って、これらの要因により、本発明のフラーレン誘導体は、予想を上回るアルカリ溶媒への高い溶解性を発現しているものと考えられる。
上記のように、本発明のフラーレン誘導体は、エステル溶媒に加え、アルカリ溶媒及びアルコール溶媒に対しても高い溶解性を示す。具体的には、本発明のフラーレン誘導体は、25℃、1気圧において、0.48重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に対して、通常0.5重量%以上の割合で溶解するとともに、イソプロピルアルコールに対して、通常5重量%以上の割合で溶解する。これにより、本発明のフラーレン誘導体をフォトレジスト用途に使用する場合、本発明のフラーレン誘導体は現像性に優れるという効果を奏する。
(溶解速度)
本発明のフラーレン誘導体は、上記のようにエステル溶媒、アルカリ溶媒及びアルコール溶媒に対して高い溶解性を示す。それに加えて、アルカリ溶媒に対して高い溶解速度を有する。具体的には、例えば以下に説明する方法によって評価した溶解速度が高いものとなる。
はじめに、フラーレン誘導体をPGMEA等の溶媒に溶解させて2重量%の溶液を調製し、アドバンテック製0.2μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって、塗布液を調製する。当該塗布液をシリコン基板上に塗布して、回転速度500rpmで10秒間、その後1500rpmで40秒間回転させ、その後コンタクトベーク100℃、1分間で乾燥させることにより、膜厚30nmの薄膜を形成することができる。
得られたシリコン基板を約20mm角ウエハーに切り出し、シャーレ内で任意の濃度の現像液(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液)2mLをスポイドで滴下し、一定時間、当該現像液中で浸漬し、その後イオン交換水で現像液を洗浄する。その後乾燥を行い、目視を行って現像性を評価する。
上記の評価方法において、TMAH水溶液の濃度が0.20重量%である場合、本発明のフラーレン誘導体は、通常60秒以下、好ましくは30秒以下、より好ましくは10秒以下、特に好ましくは5秒以下の時間でTMAH水溶液に溶解し、良好な現像性を有する。
また、TMAH水溶液の濃度が0.50重量%であった場合、本発明のフラーレン誘導体は、通常60秒以下、好ましくは30秒以下、特に好ましくは5秒以下の時間でTMAH水溶液に溶解し、良好な現像性を有する。
さらに、TMAH水溶液の濃度が2.38重量%である場合、本発明のフラーレン誘導体は、通常5秒以下の時間でTMAH水溶液に溶解し、良好な現像性を有する。
[2.フラーレン誘導体の製造方法]
本発明のフラーレン誘導体を製造する方法に制限は無く、任意の方法により製造することができる。以下、本発明のフラーレン誘導体の製造方法を、具体例を挙げて説明するが、本発明のフラーレンの製造方法は以下の内容に限定されるものではない。
に水素原子又は任意の基が結合した3重付加部分構造及び/又は5重付加部分構造を有するフラーレン誘導体の一般的な製造方法は確立されている。具体的には、Cに有機基が結合している場合は、例えば特開2005−15470号公報、Chemistry Letters,2004年,p.328等に記載されている方法を参照することができる。また、Cに水素原子が結合している場合は、例えばNature,419,2002年,p.702−705等に記載されている方法を参照することができる。さらに、Cにハロゲン原子が結合している場合は、例えば特開2002−241389号公報等に記載されている方法を参照することができる。本発明の多重付加構造である10重付加、8重付加及び6重付加フラーレン誘導体の製造に関しては、例えばAngew.Chem.Int.Ed.2007,46,p.2844−2847等に記載されている方法を参照することができる。
本発明のフラーレン誘導体も上記文献に記載の方法で製造することは可能であり、その場合の反応温度、溶媒の種類、試薬の配合順序、反応時間等の諸条件としては、上記文献記載の条件を採用することが可能である。
ただし、中でも、本発明のフラーレン誘導体は、以下に例示する製造方法(以下、適宜「本発明の製造方法」と言う。)により製造することが好ましい。
本発明の製造方法においては、フラーレン、遷移金属、グリニャール試薬(Grignard試薬)、及び、R10を導入し得る原料(以下適宜、「R10導入剤」という)を混合し、これらを反応させて、本発明のフラーレン誘導体を得る。この際、通常は反応溶媒を用い、当該反応溶媒中で反応を進行させる。
[2−1.フラーレン]
フラーレンとしては、上記[1.フラーレン誘導体]でフラーレンの具体例として挙げた各種のフラーレンを用いることができる。なお、フラーレンは何れか1種のみを使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
[2−2.遷移金属]
本発明の製造方法においては、反応系に少なくとも1種の遷移金属を存在させる。遷移金属の種類は制限されないが、長周期型周期表の第10族及び第11族に属する金属から選択される1種以上の遷移金属であることが好ましく、中でも反応性の観点から、第11族金属である銅が特に好ましい。
なお、反応系に存在させる遷移金属としては、何れか1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、これらの遷移金属としては、反応が進行すれば、遷移金属の単体を使用してもよく、遷移金属の錯体を使用してもよく、その遷移金属を含有する金属化合物(遷移金属化合物)を使用しても良い。
上記の遷移金属の単体、錯体及び金属化合物の例としては、臭化銅ジメチルスルフィド錯体、臭化銅ジブチルスルフィド錯体、ヨウ化銅ジメチルスルフィド錯体、ヨウ化銅ジブチルスルフィド錯体、塩化銅ジメチルスルフィド錯体、塩化銅ジブチルスルフィド錯体、シアン化銅、フッ化銅、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅、有機銅−ホスフィン錯体、フッ化銀、塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀、フッ化金、塩化金、ヨウ化金、塩化パラジウム、臭化パラジウム、ヨウ化パラジウム、塩化ニッケル、臭化ニッケル、ヨウ化ニッケル、塩化白金、臭化白金、ヨウ化白金、ニッケルシクロオクタジエン錯体、パラジウムシクロオクタジエン錯体、白金シクロオクタジエン錯体、ニッケル−ホスフィン錯体、パラジウム−ホスフィン錯体、白金−ホスフィン錯体等が挙げられる。中でも、反応性の観点から第11族金属でかつ1価の金属化合物及び金属錯体である臭化銅、臭化銅ジメチルスルフィド錯体が好ましい。
なお、遷移金属の単体、錯体及び金属化合物は、何れか1種のみを使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
反応系の遷移金属の含有量は、上記の反応が進行する限り任意であるが、フラーレンに対する比率で、通常6倍モル以上、好ましくは8倍モル以上、また、通常40倍モル以下、好ましくは20倍モル以下とすることが望ましい。遷移金属の含有量が多過ぎると製造上コストが増大するうえ、フラーレン誘導体との分離が困難となる場合があり、少な過ぎると反応が完結しない場合がある。なお、2種以上の遷移金属を併用する場合には、それらの合計量が上記範囲を満たすようにすることが望ましい。
[2−3.グリニャール試薬]
本発明の製造方法では、反応系に少なくとも1種のグリニャール試薬を存在させる。上記の特許文献及び非特許文献に記載されている手法に従って、反応系にグリニャール試薬を共存させることにより、フラーレン骨格にR20を付加することができる。なお、グリニャール試薬は、何れか1種のみを使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
これらのグリニャール試薬の反応系への混合時期は、目的とするフラーレン誘導体が得られる限り制限は無い。ただし、本発明の製造方法では、R10を導入する前に、式(2)の部分構造のC〜C、又はC〜C10に式(1)で表される構造の基(R20)を付加する反応を行うことが望ましい。このため、通常、R10導入剤を作用させる反応の前に、グリニャール試薬を反応系に導入するようにする。
グリニャール試薬としては、例えば、R20−MX’で表される化合物を使用することができる。ここで、R20については上記の通りであり、目的とする本発明のフラーレン誘導体の構造に応じて選択すればよい。
また、Mは、金属元素を表わす。Mの例としては、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、水銀(Hg)、リチウム(Li)等が挙げられるが、中でも、マグネシウムが好ましい。
また、X’は、ハロゲン原子を表わす。X’の例としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられるが、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、臭素原子が特に好ましい。
また、上記のR20−MX’において、R20が有する水酸基には、通常、保護基を導入しておき、その保護基を導入した化合物をグリニャール試薬として使用することが望ましい。R20が有する水酸基に導入される保護基の例としては、メチル基、テトラヒドロピラニル基、シリル基等が挙げられる。なお、保護基は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、保護基の導入方法は保護基によって異なる。例えば、保護基がテトラヒドロピラニル基である場合は、弱酸存在下でジヒドロピランを作用させる等の手法が挙げられる。
グリニャール試薬の使用量は、フラーレンに対する比率で、通常6倍モル以上、好ましくは8倍モル以上、また、通常40倍モル以下、好ましくは20倍モル以下とすることが望ましい。グリニャール試薬の使用量が多過ぎると製造上コストが増大するうえ、反応停止に使用するR10導入剤を大量に必要とする場合があり、少な過ぎると反応が完結しない場合がある。
なお、2種以上のグリニャール試薬を併用する場合には、それらの合計量が上記範囲を満たすようにすることが望ましい。
[2−4.R10導入剤]
R10導入剤としては、導入する基(即ち、R10)によって、それぞれ適切なものを使用すればよい。例えば、R10が水素原子であるフラーレン誘導体を製造する場合、フラーレン骨格に水素原子を導入することができれば、このようなR10導入剤に他に制限はない。R10導入剤の例を挙げると、塩化アンモニウム水溶液、塩化水素水溶液などの酸性水溶液が挙げられる。また、酸化反応を抑制するためには、上記酸性水溶液の中に酸素が混入しないように、例えば脱気などの酸化反応抑制操作を行うことが好ましい。
また、例えばR10が有機基であるフラーレン誘導体を製造する場合、フラーレン骨格に当該有機基を導入することができれば、R10導入剤に他に制限はない。このようなR10導入剤の例を挙げると、上記の有機基R10と脱離基Yとが結合した構造の化合物R10−Yを用いることができる。この際、脱離基Yとしては、求核置換反応の脱離基となり得る基であればその種類に制限はないが、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;アセトキシ基、トリフルオロアセトキシ基等のアシロキシ基;メタンスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基等のスルホニルオキシ基;等が挙げられる。中でも、反応性及び原料調達の観点から、脱離基Yとしてはハロゲン原子が好ましく、特に臭素原子、ヨウ素原子が好ましい。
さらに、例えばR10がハロゲン原子であるフラーレン誘導体を製造する場合、フラーレン骨格に当該ハロゲン原子を導入することができれば、R10導入剤に他に制限はない。このようなR10導入剤の例を挙げると、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、N−ブロモコハク酸イミド、N−クロロコハク酸イミド、N−ヨードコハク酸イミド等のハロゲン化剤等が挙げられる。中でも、R10導入剤としては、反応性の観点からN−ブロモコハク酸イミドが好ましい。
なお、R10が有機基であるフラーレン誘導体を製造する場合、及び、R10がハロゲン原子であるフラーレン誘導体を製造する場合には、例えば、遷移金属が存在している系中にR10導入剤を導入し、in situで製造する方法を用いてもよい。また、まずフラーレン骨格のCに水素原子を導入した後、適切な塩基で処理し、その後上記R10導入剤により所望のR10を導入する方法を用いてもよい。この際、導入するR10によって適切な方法を選択すればよい。塩基を用いる場合は、例えば特開2005−15470号公報等に記載されている方法を参照することができる。
R10導入剤は、何れか1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。ただし、単一の化合物を得るためには、何れか1種のみを単独で使用することが好ましい。
なかでも、R10導入剤としては、反応の容易さ、生成物の安定性並びにコスト削減の観点からヨウ化メチルを、また溶解性向上の観点からアリルブロマイド、アリルアイオダイド、クロチルブロマイド、シンナミルブロマイドをそれぞれ単独で用いることが好ましい。
R10導入剤の使用量は、フラーレンに対して、通常2倍モル以上、好ましくは5倍モル以上、より好ましくは10倍モル以上、また、通常100倍モル以下、好ましくは50倍モル以下、より好ましくは30倍モル以下とすることが望ましい。R10導入剤の量が多過ぎると製造コストの点で不利となる場合があり、R10導入剤の量が少な過ぎると反応系に残存しているグリニャール試薬と反応して、反応が途中で停止し、目的とする化合物(本発明のフラーレン誘導体)が得られなくなる場合がある。なお、R10導入剤を2種以上併用する場合には、それらの合計量が上記範囲を満たすようにすることが望ましい。
[2−5.反応溶媒]
本発明のフラーレン誘導体の製造方法では、少なくとも上記のフラーレン、遷移金属、グリニャール試薬及びR10導入剤を使用すればよいが、更に、通常は反応溶媒を使用する。
反応溶媒を使用する場合、上記のフラーレン、遷移金属、グリニャール試薬及びR10導入剤を好適に溶解及び/又は分散させることが可能な溶媒であれば、その種類は任意である。
反応溶媒の例を挙げると、オルトジクロロベンゼン(ODCB)、クロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン置換芳香族溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン等の芳香族溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン炭化水素溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、メチルシクロペンチルエーテル等のエーテル溶媒;ピリジン、メチルピリジン、ジメチルピリジン等のピリジン溶媒などが挙げられる。中でも、フラーレンを好適に溶解させることができるハロゲン置換芳香族溶媒と、グリニャール試薬を安定に溶解させることができるエーテル溶媒との組み合わせが好ましく、具体的にはODCBとTHFとを組み合わせて用いることが好ましい。なお、反応溶媒は、何れか1種のみを使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
反応溶媒を使用する場合、その使用量は、フラーレンに対する比率で、通常1mg/mL以上、好ましくは5mg/mL以上、また、通常40mg/mL以下、好ましくは20mg/mL以下となる量を使用することが望ましい。反応溶媒の使用量が多過ぎると原料濃度が薄くなり、反応速度が遅くなる場合があり、少な過ぎると原料並びに生成物が溶解できず、反応が完全に進行しない場合がある。
なお、2種以上の反応溶媒を併用する場合には、それらの合計量が上記範囲を満たすようにすることが望ましい。
また、本発明のフラーレン誘導体を製造する際、上記反応溶媒にピリジンを含むことが好ましいが、フラーレン誘導体が、6重付加、8重付加及び10重付加フラーレン誘導体である場合、上記反応溶媒にピリジンを含むことが特に好ましい。反応溶媒の総量に対するピリジンの割合は、通常5体積%以上、好ましくは10体積%以上、より好ましくは15体積%以上、また、その上限は、通常90体積%以下、好ましくは80体積%以下、より好ましくは70体積%以下であることが望ましい。即ち、ピリジンは、5重付加フラーレン誘導体より更に多重付加フラーレン誘導体を製造する際に有効であるが、その使用量が少なすぎるとピリジンを含むことにより得られる効果が十分に得られない可能性があり、多過ぎると製造コストが増大する可能性がある。
[2−6.塩基性添加剤]
また、本発明のフラーレン誘導体の製造に関しては、上記ピリジン以外にも塩基性添加剤を反応溶媒に混合することによって、5重付加フラーレン誘導体以上の多重付加フラーレン誘導体を安定して製造することができる。塩基性添加剤の具体例を挙げると、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、2,3−ジメチルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、2,5−ジメチルピリジン、2,6−ジメチルピリジン、4−トリフルオロメチルピリジン、2−ジメチルアミノピリジン、3−ジメチルアミノピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等のピリジン類、2,2−ビピリジン、2,4−ビピリジン、4,4−ビピリジン、4,4−ジメチル−2,2−ビピリジン、5,5−ジメチル−2,2−ビピリジン、6,6−ジメチル−2,2−ビピリジン等のビピリジン類、2,2,6,2−ターピリジン等のターピリジン類、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン等の鎖状ポリアミン類などが挙げられる。なかでも、反応性の観点から、4−ジメチルアミノピリジン、2,2−ビピリジン、テトラメチルエチレンジアミンが好ましい。
なお、塩基性添加剤は、何れか1種のみを使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、塩基性添加剤とピリジンとを、任意の比率で組み合わせて併用してもよい。
また、塩基性添加剤の使用量は、フラーレンに対する比率で、通常5倍モル以上、好ましくは50倍モル以上、より好ましくは100倍モル以上、また通常2000倍モル以下、好ましくは1000倍モル以下、より好ましくは500倍モル以下とすることが望ましい。塩基性添加剤の使用量が多過ぎると製造コストが増大する場合があり、また、少な過ぎると、反応が完全に進行しない場合がある。
なお、2種以上の反応溶媒を併用する場合には、それらの合計量が上記範囲を満たすようにすることが望ましい。
[2−7.操作及び反応条件]
上記のフラーレン、遷移金属、グリニャール試薬及びR10導入剤、並びに、必要に応じて用いられる反応溶媒、塩基性添加剤等を混合する順序、反応条件等は、本発明のフラーレン誘導体が製造できる限り任意である。また、反応系には、反応の進行を阻害しない限り上記したもの以外の成分を含有させても良い。
ただし、通常は、反応溶媒中に遷移金属の単体、錯体及び/又は金属化合物が懸濁している状態で、グリニャール試薬及び必要に応じて用いられる塩基性添加剤を混合した後、フラーレンを混合し、次いでR10導入剤を混合することが好ましい。この手順によれば、R10導入剤を混合する段階で、R20が付加されたフラーレン誘導体と遷移金属とが錯体構造を有する中間体を形成していると考えられるので、その段階でR10導入剤を混合することができるため、効率よく製造できる。
なお、C60誘導体及び/又はC70誘導体と銅とにより形成される中間体に関しては、例えば「季刊・化学総説43 炭素第三の同素体 フラーレンの化学」169〜170ページ等に、その推定構造が記載されている。
反応時の温度条件は反応が進行する限り制限されないが、反応系にR10導入剤を加えた後の反応系の温度を、通常0℃以上、好ましくは15℃以上、また、通常100℃以下、好ましくは70℃以下とすることが望ましい。
反応時間も制限されないが、反応系にR10導入剤を加えた後、通常30分以上、好ましくは2時間以上、また、通常数十時間以下、好ましくは10時間以下反応させることが望ましい。
また、R10導入剤は、通常、フラーレンの転化率が所定の数値以上になった段階で反応系中に混合するが、生成物の酸化防止のために、例えば窒素バブリング、真空脱気等の脱気操作を行なってから反応系に加えることが好ましい。
なお、製造に関する他の操作は、これまで上記の特許文献及び非特許文献等で報告されている方法を採用することが出来る。
また、上記の反応において、グリニャール試薬としてR20の水酸基に保護基が導入された化合物を用いた場合、反応により生成する本発明のフラーレン誘導体は、通常はR20の水酸基に保護基が導入された状態となっている(これを以下適宜「水酸基保護フラーレン誘導体」と言う。)。従って、この場合、得られた水酸基保護フラーレン誘導体に対し、保護基の種類に対応した脱保護剤を作用させ、保護基を脱離させる(この反応を適宜「脱保護反応」と言う。)ことで、目的とする本発明のフラーレン誘導体を製造することができる。この際、脱保護剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
例えば、保護基がメチル基である場合、脱保護剤の例としては、三臭化ホウ素、三塩化ホウ素、三塩化アルミニウム、トリメチルシリルヨージド等が挙げられる。中でも、反応性の観点から、三臭化ホウ素、トリメチルシリルヨージドが好ましい。なお、これらの脱保護剤の取扱が困難な場合は、in situで発生させる方法を用いてもよい。
これらの脱保護剤の使用量は、上記の保護基(即ち、メチル基)を脱離させることができる限り任意であるが、保護基であるメチル基に対する割合で、通常1倍モル以上、好ましくは1.2倍モル以上、より好ましくは1.4倍モル以上、また、通常10倍モル以下、好ましくは5倍モル以下、より好ましくは3倍モル以下とすることが望ましい。脱保護剤の使用量が多過ぎると、製造コストの点で不利となる場合があり、脱保護剤の使用量が少な過ぎると、反応が完結しない場合がある。なお、脱保護剤を2種以上併用する場合、それらの合計量が上記範囲を満たすようにすることが望ましい。
また、例えば保護基がテトラヒドロピラニル基である場合、脱保護剤の例としては、パラトルエンスルホン酸、メタトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、塩酸、硫酸等の酸性物質などが挙げられる。中でも、反応性の観点から、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸が好ましい。
これらの脱保護剤の使用量は、上記の保護基(即ち、テトラヒドロピラニル基)を脱離させることができる限り任意であるが、保護基であるテトラヒドロピラニル基に対する割合で、通常0.01倍モル以上、好ましくは0.03倍モル以上、また、通常2倍モル以下、好ましくは1倍モル以下とすることが望ましい。脱保護剤の使用量が多過ぎると、製造コストの点で不利となったり、得られるフラーレン誘導体への不純物の混入量が増大したりする場合があり、脱保護剤の使用量が少な過ぎると、反応時間が長くなる場合がある。なお、脱保護剤を2種以上併用する場合、それらの合計量が上記範囲を満たすようにすることが望ましい。
上記の脱保護反応は、通常、水酸基保護フラーレン誘導体を有機溶媒に溶解又は懸濁させた状態で行なう。反応に使用する有機溶媒は、脱保護反応を阻害したり、好ましからぬ反応を生じるものでない限り、任意に選択して構わない。有機溶媒の具体例としては、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、塩化メチレン等のハロゲン系炭化水素;トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒;等が挙げられる。これらの有機溶媒は、何れか1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
水酸基保護フラーレン誘導体に対して使用する有機溶媒の量は任意であるが、有機溶媒中における水酸基保護フラーレン誘導体の濃度が、通常1mg/mL以上、好ましくは10mg/mL以上、より好ましくは15mg/mL以上、また、通常1000mg/mL以下、好ましくは500mg/mL以下、より好ましくは100mg/mL以下となるようにすることが望ましい。
また、何れの脱保護反応に関しても、反応が進行すれば、水酸基保護フラーレン誘導体、脱保護剤、有機溶媒等の混合順序は問わない。さらに、脱保護反応が進行すれば、反応条件も任意である。
ただし、その温度条件は、脱保護反応の種類によって大きく異なるが、通常0℃以上、好ましくは15℃以上、また、通常180℃以下、好ましくは120℃以下とすることが望ましい。
また、反応時間は、通常30分以上、好ましくは2時間以上、また、通常数十時間以下、好ましくは10時間以下とすることが望ましい。
反応終了後、通常は、生成した本発明のフラーレン誘導体を反応液から常法により単離する。単離操作は、各反応の種類によって異なるが、例えば、反応液をそのままヘキサン等の貧溶媒で晶析したり、反応液に例えばイオン交換水、亜硫酸水溶液等を加えて反応を停止させ、そのまま適当な溶媒で抽出した後、分液し溶媒を留去したりすることにより、生成物を単離することができる。
得られた本発明のフラーレン誘導体は、必要に応じて適宜、例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、アルミナカラムクロマトグラフィー、再結晶等の手法で精製してもよい。単離収率は、上記の好ましい反応条件で行なえば、通常60%以上、好ましくは80%以上である。
なお、本発明のフラーレン誘導体は、通常、例えばプロトン核磁気共鳴スペクトル法(以下適宜「H−NMR」と言う。)、カーボン核磁気共鳴スペクトル法(以下適宜「13C−NMR」と言う。)、赤外線吸収スペクトル法(以下適宜、「IR」という場合がある。)、質量分析法(以下適宜「MS」と言う。)、元素分析等の一般的な有機分析により、その構造を確認することができる。このほか、フラーレン誘導体の結晶性が良好な場合は、X線結晶回折法によって構造を確認できる場合もある。
[3.本発明のフラーレン誘導体の実施形態及び用途]
本発明のフラーレン誘導体は、公知の任意の実施形態で、任意の用途に用いることができる。なかでも、本発明のフラーレン誘導体は、溶媒に溶解してフラーレン誘導体溶液(以下、適宜「本発明の溶液」と言う。)として用いたり、本発明のフラーレン誘導体を含むフラーレン誘導体膜(以下、適宜「本発明の膜」と言う。)として用いたりすることが好ましい。
以下、本発明のフラーレン誘導体を、溶液及び膜として用いることを例に、本発明のフラーレン誘導体の実施形態及び用途を具体的に説明するが、本発明のフラーレン誘導体の実施形態及び用途は以下の内容に限定されるものではない。
[3−1.フラーレン誘導体溶液]
本発明のフラーレン誘導体は、適切な溶媒に溶解させて溶液とすることにより、様々な用途に用いることができる。
本発明の溶液における溶媒の種類は任意であるが、溶媒として有機溶媒を用いることが好ましい。有機溶媒として任意の有機溶媒を用いることができるが、中でも、本発明のフラーレン誘導体は水酸基を有し、エステル溶媒、アルコール溶媒等の極性有機溶媒に対して高い溶解性を示すので、極性を有する有機溶媒(極性有機溶媒)を使用することが好ましい。なお、溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
極性有機溶媒の種類は制限されないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール(アルコール溶媒);アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル(エステル溶媒);テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール等のエーテルアルコール;PGMEA等の上記エーテルアルコール類と酢酸等の酸とのエステル化合物であるエーテルエステル(エステル溶媒);N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル;ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
中でも、工業的な用途で用いられることが多い観点から、本発明の溶液における溶媒として、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等のケトン、エステル溶媒、イソプロピルアルコール等のアルコール溶媒を用いることが好ましく、特に、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート(PGMEA)、乳酸エチル等のエステル溶媒、イソプロピルアルコール等のアルコール溶媒を用いることが好ましい。
また、本発明の溶液における溶媒として、アルカリ溶媒も好ましく用いられる。アルカリ溶媒の種類は、本発明のフラーレン誘導体が溶解するものであれば制限されないが、例えば、ピリジン、ピペリジン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、メチルジエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ−(5,4,0)−7−ウンデセン、ジメチルエタノールアミン等のアルカリ有機溶媒;水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸リチウム水溶液、炭酸カルシウム水溶液、アンモニア水溶液、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液等のアルカリ水溶液などが挙げられる。なお、アルカリ水溶液の場合、その溶質の濃度は任意である。
さらに、本発明の溶液における本発明のフラーレン誘導体の濃度は任意である。また、本発明の溶液中、本発明のフラーレン誘導体は溶媒に完全溶解していることが好ましいが、一部溶解できずに懸濁していてもよく、又は沈殿していても構わない。
本発明のフラーレン誘導体の優れた物性を大幅に損ねるものでなければ、本発明の溶液は、本発明のフラーレン誘導体及び溶媒に加えて、その他の成分を含有していてもよい。その他の成分は1種のみを含有していてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で含有していてもよい。
例えば、該フラーレン誘導体溶液を本発明のフラーレン誘導体溶液の用途の1つであるフォトレジストとして用いる場合は、本発明のフラーレン誘導体や有機溶媒に加え、露光により酸を発生する酸発生剤、クエンチャーとしての機能を有する含窒素有機化合物を含有することが好ましい。また、ネガ型レジストとして用いる場合は、これらに加えて架橋剤成分を含有することが好ましい。
酸発生剤としては、オニウム塩系酸発生剤が好ましく、含窒素有機化合物としては第3級脂肪族アミンであることが好ましく、架橋剤としてはメラミン系架橋剤であることが好ましい。有機溶媒としては、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート(PGMEA)、乳酸エチル等、塗布性が良好な溶媒が好ましい。
これら酸発生剤、含窒素有機化合物、架橋剤及び溶媒の組み合わせや具体的な化合物に関しては、これまで化学増幅型レジスト用として提案されているものを使用することができ、例えば特開2008−197387や特開2008−241993等を参照することができる。
また、これら各成分の混合比、溶媒に対する濃度等は任意である。
本発明のフラーレン誘導体を溶媒に溶解させることができれば、本発明の溶液の調製方法に制限はないが、通常、所定の装置で攪拌しながら溶解させる手法、超音波を照射する手法等により調製することができる。また、本発明のフラーレン誘導体及び溶媒、並びに必要に応じて用いられるその他の成分の混合順序も、特に制限はない。
本発明の溶液は、安定性、操作性等の観点から通常25℃で調製されるが、溶媒の沸点以下であれば、加熱しながら溶解させ、保管することができる。また、本発明のフラーレン誘導体が析出する可能性があるが、25℃以下の低温下で調製、保管することもできる。
[3−2.フラーレン誘導体膜]
本発明のフラーレン誘導体は、エステル溶媒及びアルコール溶媒に高溶解性を示すため、通常は、本発明の溶液を塗布し、溶媒を除去(例えば加熱乾燥等)することでフラーレン誘導体膜を製造することができる。この際用いる溶液には、フラーレン誘導体、溶媒のほか、本発明のフラーレン誘導体が有する優れた物性を大幅に損ねるものでなければ、他の任意の化合物が含有されていてもよい。
塗布方法としては、例えばスプレー法、スピンコート法、ディップコート法、ロールコート法など任意の方法を選択することができる。複数の方法を組み合わせて行ってもよい。また、塗布する基板にも制限はなく、例えば、有機被膜、シリコン基板、ポリシリコン膜、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜などのシリコン被膜、金属配線などの無機被膜が挙げられる。この際、1種の基板を単独で用いてもよく、2種以上の基盤を任意に組み合わせて用いてもよい。
溶液の塗布後、溶媒を除去するための方法は任意であるが、通常は塗布膜の加熱乾燥処理を行って溶媒を除去する。加熱乾燥処理は、通常80℃以上300℃以下で、通常10秒以上300秒以下の範囲で加熱を行うことが好ましい。本発明のフラーレン誘導体は、通常の有機化合物に比べて熱安定性に優れるため、熱分解することなく安定な膜を形成することができる。また、加熱は、大気下、又はアルゴン、窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。なお、不活性ガスは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
本発明の膜における膜厚は、用途によって大きく異なり一律に限定することはできないが、通常10nm以上であり、好ましくは30nm以上であり、また通常1000nm以下、好ましくは500nm以下であり、より好ましくは300nm以下である。
均一な膜を形成することで、例えば分光エリプソメーター等を用いて本発明の膜の屈折率(n値)及び消衰係数(k値)(以下、これらをまとめて、適宜「光学定数」と言う。)を測定することができる。また、これらの測定値を用い、本発明の膜の誘電率、反射率等を計算することができる。これらの光学定数は、そのフラーレン誘導体膜の用途によって、また同じ用途でもプロセスの種類、フラーレン誘導体膜に含有される他の成分の種類及び量等によって求められる数値が大きく異なる。従って、本発明の膜が有する優れた物性を効果的に活用できる用途に、本発明の膜を用いることが好ましい。なかでも、本発明の膜は、その成分であるフラーレン誘導体が、フラーレン骨格のπ電子共役を保持しているとともに、フェニル基が導入されているため、高エッチング耐性が期待できることから、フォトレジスト用途に特に好適に用いられる。
[3−3.用途]
本発明のフラーレン誘導体、本発明の溶液、及び本発明の膜は、前述した用途に用いることができる。以下に、いくつかの用途の例に関してより具体的に説明するが、本発明のフラーレン誘導体の機能が発揮できる用途に関しては、以下の記載に限定されるものではない。
[3−3−1.フォトレジスト用途]
従来、フォトレジストは、被膜形成成分として(メタ)アクリル系、ポリヒドロキシスチレン系またはノボラック系の樹脂等の樹脂成分と、露光により酸を発生する酸発生剤、感光剤等とを組み合わせた組成物が広く用いられている。本発明のフラーレン誘導体は、通常、フォトレジストに使用される例えば有機溶媒等の溶媒への溶解度が高いことにより、特殊な溶媒を用いることなく、より高濃度でフォトレジストに複合化が可能である。また、フラーレン誘導体単独でもレジスト膜を形成することが可能である。
このように本発明のフラーレン誘導体をフォトレジストの分野に用いた場合、フラーレン骨格を有する事により、超芳香族分子としての高耐熱性、高エッチング耐性を有し、エッジラフネスの低減が可能であり、高解像度のフォトレジストの再現ができる。また、本発明のフラーレン誘導体又は本発明の溶液を用いて形成したレジスト膜は、吸収スペクトルから明らかな様に反射防止膜としての機能も有することより、多層膜の一層として、特に反射防止膜や塗布型のマスク材(ハードマスク)としても優れた機能を発揮することが期待される。
[3−3−2.半導体製造用途]
半導体製造等の分野では、例えば500μm以下の微細パターンを生産効率良く形成する方法としてナノインプリント法が検討されている。ナノインプリント法とは、微細パターンを有するモールドのパターンを転写層に転写する微細パターンの形成方法である。
このようなナノインプリント法としては、例えば、熱可塑性重合体からなる転写層を加熱して軟化させる工程と、転写層とモールドとを圧着してモールドのパターンを転写層に形成する工程と、モールドを転写層から離脱させる工程とを順次行なう方法;硬化性単量体からなる転写層をモールドに接触させる工程と、硬化性単量体を硬化させる工程と、硬化性単量体の硬化物からモールドを離脱させる工程とを順次行なう方法;などが知られている。本発明のフラーレン誘導体は、通常、上記の熱可塑性重合体、硬化性物質等に使用される溶媒への溶解度が高いことにより、特殊な溶媒を用いることなく、上記熱可塑性重合体に高濃度で充填することが可能である。
このように本発明のフラーレン誘導体をナノインプリント法に用いた場合、例えば有機溶媒等の溶媒に対する本発明のフラーレン誘導体の溶解性が高いことから、本発明のフラーレン誘導体の熱可塑性重合体中での凝集が抑制され、分子状分散となる。このため、高解像度を実現することが可能である。さらに、本発明のフラーレン誘導体又は本発明の溶液をナノインプリント法に用いることにより、転写層の機械的強度、耐熱性及びエッチング耐性を向上させることが可能であることから、従来のナノインプリント材料の特性を大幅に改善することが可能となる。
[3−3−3.低誘電率絶縁材料用途]
近年、コンピュータの中央処理装置(CPU)用回路基盤には、樹脂薄膜を層間絶縁膜とする高密度かつ微細な多層配線に適した樹脂薄膜配線が適用されるようになってきた。将来のより高速な処理能力を有するコンピュータを実現するには、高密度かつ繊細な多層配線を活かし、かつ信号の高速伝播に適した低誘電率絶縁材料の開発が求められている。本発明のフラーレン誘導体は、通常、上記用途に使用される溶媒への溶解度が高いことより、特殊な溶媒を用いることなく、より高濃度で他の材料と複合化することが可能である。また、フラーレン誘導体単独で成膜することも可能である。この際、本発明のフラーレン誘導体は、フラーレン構造が本質的に有する高抵抗、低誘電率の性質を保持しており、複合化して用いる際にはフィラーとしての機械的強度の向上効果を有することができ、これにより、従来無かった優れた性能の低誘電率の層間絶縁膜の実現が可能となる。
[3−3−4.太陽電池用途]
有機太陽電池は、シリコン系の無機太陽電池と比較して、優位な点が多数あるものの、エネルギー変換効率が低く、実用レベルに十分には達していない。この点を克服するためのものとして、最近、電子供与体である導電性高分子と、電子受容体であるフラーレン並びにフラーレン誘導体とを混合した活性層を有するバルクヘテロ接合型有機太陽電池が提案されている。このバルクヘテロ接合型有機太陽電池では、導電性高分子とフラーレン誘導体それぞれとが分子レベルで混じり合い、その結果非常に大きな界面を作り出すことに成功し、変換効率の大幅な向上が実現されている。
本発明のフラーレン誘導体は、上記用途で使用される溶媒への溶解度が高いため、p型半導体と効率的なバルクへテロ接合構造を構成することが容易である。また、本発明のフラーレン誘導体は、本質的にn型半導体としてのフラーレンの性質を有している。従って、本発明のフラーレン誘導体又は本発明の溶液を用いることで、極めて高性能な有機太陽電池の実現が可能となる。さらにこの高溶解性を利用し、導電性高分子等の電子供与体層との層分離制御や誘導体分子の整列配向性・細密充填性などのモルフォロジー制御を可能にし、これにより特性の向上が実現できる上、デバイス設計において高い柔軟性を与える。また、製造上も通常の印刷法やインクジェットによる印刷、更にはスプレー法等により、低コストで容易に大面積化を実現する事が可能である。
[3−3−5.半導体用途]
光センサー、整流素子等への応用が期待できる電界効果トランジスタの有機材料として、フラーレン及びフラーレン誘導体を使用することが研究されている。一般的に、フラーレン及びフラーレン誘導体を半導体に用いて電界効果トランジスタを作製した場合、当該電界効果トランジスタはn型のトランジスタとして機能することが知られている。
本発明のフラーレン誘導体は、上記用途で使用される例えば有機溶媒等の溶媒への溶解度が高いことにより、塗布による成膜が容易であり、また、n型半導体としてのフラーレンの本質的な性質は保持している。これにより、本発明のフラーレン誘導体は、低コスト、高性能な有機半導体として利用されることが期待できる。
[3−3−6.原料中間体としての用途]
本発明のフラーレン誘導体を出発原料として、R20中の水酸基に特定の有機基(保護基)を導入する工程を経て、新たな機能を有するフラーレン誘導体を製造することができる。以下、その有機基の導入方法に関して代表例を記すが、以下の例に限定されるものではない。
具体的な有機基の導入方法は、導入する有機基の種類に応じて様々である。その例を挙げると、以下のようなものが挙げられる。
(1)本発明のフラーレン誘導体をエステル化剤と反応させて、エステル化する。
(2)本発明のフラーレン誘導体をカーボネート化剤と反応させて、カーボネート化する。
(3)本発明のフラーレン誘導体をエーテル化剤と反応させて、エーテル化する。
(4)本発明のフラーレン誘導体をウレタン化剤と反応させて、ウレタン化する。
さらに、上記(1)〜(4)の方法のほかにも、本発明のフラーレン誘導体に有機基を導入する条件は、例えば特開2006−56878号公報等に記載の方法を参照することができる。
特に、本発明のフラーレン誘導体をポジ型用のフォトレジストとして用いる場合、本発明のフラーレン誘導体に導入する保護基としては酸不安定基が挙げられる。酸不安定基の具体例としては、第3級アルキル基、第3級アルキルオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アルコキシアルキル基、環状エーテル基等が挙げられる。
保護基の具体例としては、tert−ブチル基、tert−アミル基、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基、tert−ブチルオキシカルボニル基、tert−アミルオキシカルボニル基、2−メチル−2−アダマンチルオキシカルボニル基等が挙げられる。
他の具体的な保護基の例としては、これまで化学増幅型レジスト用として提案されているものを使用することができ、例えば特開2008−197387等を参照することができる。
また保護化率は任意であり、複数の保護基を導入してもよく、またその比率も任意である。
以下、実施例を示して本発明を更に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら制限されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。なお、本明細書の記載において、THPはテトラヒドロピラニル基を表わし、THFはテトラヒドロフランを表わし、ODCBはオルトジクロロベンゼンを表わし、DMSOはジメチルスルホキシドを表わす。さらに、Meはメチル基を表わし、tBuはt−ブチル基を表わし、Phはフェニル基を表わす。
{フラーレン誘導体の製造及び評価}
[実施例1:C60(4−OH−C10(−CHの製造]
臭化銅(I)ジメチルスルフィド錯体(17.28g、84.1mmol)のTHF懸濁液(88mL)を5℃まで冷却した後、グリニャール試薬の4−OTHP−CMgBr/THF溶液(1mol/L;90mL)を加え、25℃まで昇温した。そして、脱水ピリジン(68mL)を加え、さらに20分攪拌した。次に、C60(2.0g、2.78mmol)のODCB溶液(80mL)を加え、25℃で1時間攪拌し、さらに40℃で24時間攪拌した。ここに、ヨウ化メチル(MeI;15mL、240mmol)を加え、さらに12時間攪拌した。反応液を濾過し、THFを除去した後、トルエンで希釈し、アルミナカラムクロマトグラフィー(展開液:トルエン)を行った。溶液を濃縮し、メタノール(800mL)で晶析を行い、50℃で真空乾燥を行なうことで、C60(4−OTHP−C10(−CHを黄色固体(5.02g;収率71.6%)の生成物として得た。
次に、C60(4−OTHP−C10(−CH(2.00g、0.79mmol)の塩化メチレン(30mL)、メタノール(30mL)混合溶液を調製し、メタンスルホン酸(14μL)を加え、室温下で5時間攪拌した。反応液にヘキサン(400mL)を添加し晶析を行った。その後、50℃で真空乾燥を3時間行ない、表題化合物C60(4−OH−C10(−CHを黄緑色固体(1.32g、0.79mmol、収率99.1%)の生成物として得た。
得られた生成物をH−NMR及びHPLCにて測定した。なお、H−NMRはDMSO−d6を溶媒とし、400MHzにて測定した。また、HPLCは、0.5mg/mLのメタノール溶液を調製し、以下の測定条件で測定した。
カラム種類:オクタデシルシリル(ODS)カラム
カラムサイズ:150mm×4.6mmφ
溶離液:トルエン/メタノール=5/95
検出器:UV290nm
HPLC測定の結果、リテンションタイム1.57minに28.4(Area%)、1.90minに71.6(Area%)で観測された。LC−MS(高速液体クロマトグラフ−質量分析)測定の結果、これら2つのピークはいずれも1680であり、表題化合物の異性体混合物であることが確認された。
また、H−NMRの測定結果は、以下の通りであった。
H−NMR(DMSO−d6,400MHz)]
9.20〜7.80ppm(brs,OH,10H),7.80〜6.0ppm(m,Np,40H),1.82ppm(s,C60Me,6H)
以上の結果から、得られた生成物が表題化合物C60(4−OH−C10(−CHの位置異性体混合物であることが確認された。
更に、得られた生成物を、25℃、常圧(1気圧)下において、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート(PGMEA)に溶解させ、溶解度を測定した。結果を下記表1に示す。
更に、得られた生成物を、25℃、常圧(1気圧)下において、0.48重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液(レジスト作成で通常用いられる2.38重量%の5倍希釈溶液を用いた。)及びイソプロピルアルコール(IPA)に、それぞれ、0.5重量%、5重量%となるように溶解させ、溶解性を確認した。その結果を下記表2に示す。
得られたフラーレン誘導体のPGMEA溶液を調製し(5重量%)、アドバンテック製0.2μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって塗布液を調製した。当該溶液をシリコン基板上に塗布して、回転速度500rpmで10秒間、その後1500rpmで40秒間回転させた。その後、コンタクトベーク100℃、1分間で乾燥させ、膜厚80nmのフラーレン誘導体膜を形成した。この時点で目視による鏡面状態から、膜塗布性を評価した。
これをJ.A.ウーラム社の入射角度可変の分光エリプソメーター(M−2000)で波長193〜1680nmにおける屈折率(n値)、消衰係数(k値)を求めた。その結果を表3に示す。また、屈折率及び消衰係数の波長スペクトルを図1に示す。
[実施例2:C60(3−Me−4−OH−C10(−CHの製造]
臭化銅(I)ジメチルスルフィド錯体(17.28g、84.1mmol)のTHF懸濁液(88mL)を5℃まで冷却した後、グリニャール試薬の3−Me−4−OMe−CMgBr/THF溶液(1mol/L;90mL)を加え、25℃まで昇温した。そこに、脱水ピリジン(68mL)を加えさらに20分攪拌した。次に、C60(2.0g、2.78mmol)のODCB溶液(90mL)を加え、25℃で1時間攪拌し、40℃で7時間攪拌した。ここに、MeI(15mL、240mmol)を加え、さらに12時間攪拌した。反応液を濾過し、THFを除去した後、トルエンで希釈し、シリカカラムクロマトグラフィー(展開液:トルエン及び酢酸エチル)を行った。溶液を濃縮し、メタノール(750mL)で晶析を行い、50℃で真空乾燥を行なうことで、C60(3−Me−4−OMe−C10(−CHを黄色固体(4.47g;収率82.2%)の生成物として得た。
次に、C60(3−Me−4−OMe−C10(−CH(2.00g、1.02mmol)のODCB溶液(50mL)を調製し、5℃まで冷却したのち、三臭化ホウ素(BBr)−塩化メチレン溶液(1.0mol/L、15.3mL)を加え、25℃まで昇温した。室温(25℃)下で10時間攪拌したあと、イオン交換水(50mL)で反応を停止させ、酢酸エチル(200mL)を加え、分液漏斗にて抽出した。有機層をイオン交換水で2回洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥させた後、濾過を行った。溶液を濃縮し、ヘキサン(300mL)で晶析を行い、50℃で真空乾燥を5時間行うことで、表題化合物であるC60(3−Me−4−OH−C10(−CHを黄色固体(1.65g、0.91mmol、収率88.7%)の生成物として得た。
実施例1と同様にして、得られた生成物をHPLC及びH−NMR(400MHz)にて測定した。
HPLC測定の結果、リテンションタイム1.57minに27.9(Area%)、1.93minに71.8(Area%)で観測された。
また、H−NMRの測定結果は、以下の通りであった。
H−NMR(DMSO−d6,400MHz)]
9.50〜9.30ppm(m,OH,4H),9.30〜9.10ppm(m,OH,4H),9.10〜8.80ppm(m,OH,2H),7.80〜7.30ppm(m,Ph,10H),7.30〜6.90ppm(m,Ph,6H),6.90〜6.60ppm(m,Ph,6H),6.60〜6.30ppm(m,Ph,4H),6.30〜6.10ppm(m,Ph,4H),2.20〜1.80ppm(m,PhMe,30H),1.62ppm(s,C60Me,6H)
以上の結果から、得られた生成物が表題化合物C60(3−Me−4−OH−C10(−CHであることが確認された。
更に、得られた生成物について、実施例1と同様にして、溶解度を測定した。結果を下記表1及び表2に示す。
[実施例3:C60(3−OH−C10(−CHの製造]
臭化銅(I)ジメチルスルフィド錯体(17.28g、84.1mmol)のTHF懸濁液(88mL)を5℃まで冷却した後、グリニャール試薬の3−OMe−CMgBr/THF溶液(1mol/L;90mL)を加え、25℃まで昇温した。そこに、脱水ピリジン(68mL)を加えさらに20分攪拌した。次に、C60(2.0g、2.78mmol)のODCB溶液(80mL)を加え、25℃で1.5時間攪拌し、40℃で14時間攪拌した。ここに、MeI(15mL、240mmol)を加え、さらに12時間攪拌した。反応液を濾過し、THFを除去した後、トルエンで希釈し、シリカカラムクロマトグラフィー(展開液:トルエン及び酢酸エチル)を行った。溶液を濃縮し、メタノール(500mL)で晶析を行い、50℃で真空乾燥を行なうことで、C60(3−OMe−C10(−CHを赤黄色固体(3.34g;収率66.0%)の生成物として得た。
次に、C60(3−OMe−C10(−CH(2.00g、1.01mmol)のODCB溶液(50mL)を調製し、5℃まで冷却したのち、BBr−塩化メチレン溶液(1.0mol/L、16.5mL)を加え、25℃まで昇温した。室温下で10時間攪拌したあと、イオン交換水(50mL)で反応を停止させ、酢酸エチル(200mL)を加え、分液漏斗にて抽出した。有機層をイオン交換水で2回洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥させた後、濾過を行った。溶液を濃縮し、ヘキサン(300mL)で晶析を行い、50℃で真空乾燥を5時間行うことで、表題化合物であるC60(3−OH−C10(−CHを主成分とする赤黄色固体(1.53g、0.91mmol、収率82.9%)の生成物として得た。
実施例1と同様にして、得られた生成物をHPLC及びH−NMR(400MHz)にて測定した。
HPLC測定の結果、リテンションタイム1.56minに12.7(Area%)、1.71minに36.9(Area%)、2.34minに5.8(Area%)、2.59minに10.8(Area%)、2.97minに14.7(Area%)、3.75minに19.2(Area%)で観測され、複数の位置異性体の混合物であることが確認された。
また、H−NMRの測定結果は、以下の通りであった。
H−NMR(DMSO−d6,400MHz)]
9.60〜9.30ppm(m,OH,10H),7.80〜7.30ppm(m,Ph,12H),7.30〜6.90ppm(m,Ph,12H),6.90〜6.40ppm(m,Ph,16H),1.90〜1.60ppm(s,C60Me,6H)
以上の結果から、得られた生成物が表題化合物C60(3−OH−C10(−CHであることが確認された。
更に、得られた生成物について、実施例1と同様にして、溶解度を測定した。結果を下記表1及び表2に示す。
[実施例4:C60{3,4−(OH)−C10(−CHの製造]
臭化銅(I)ジメチルスルフィド錯体(17.28g、84.1mmol)のTHF懸濁液(88mL)を5℃まで冷却した後、4−ブロモ−1,2−メチレンジオキシベンゼンから調製したグリニャール試薬の3,4−OCHO−CMgBr/THF溶液(1mol/L;90mL)を加え、25℃まで昇温した。そこに、脱水ピリジン(68mL)を加えさらに20分攪拌した。次に、C60(2.0g、2.78mmol)のODCB溶液(80mL)を加え、25℃で1時間攪拌し、40℃で14時間攪拌した。ここに、MeI(15mL、240mmol)を加え、さらに12時間攪拌した。反応液を濾過し、THFを除去した後、トルエンで希釈し、シリカカラムクロマトグラフィー(展開液:トルエン及び酢酸エチル)を行った。溶液を濃縮し、メタノール(750mL)で晶析を行い、50℃で真空乾燥を行なうことで、C60(3,4−OCHO−C10(−CHを黄色固体(3.15g;57.9%)の生成物として得た。
次に、C60(3,4−OCHO−C10(−CH(1.50g、0.77mmol)のODCB溶液(37.5mL)を調製し、5℃まで冷却したのち、BBr−塩化メチレン溶液(1.0mol/L、11.5mL)を加え、25℃まで昇温した。室温(25℃)下で10時間攪拌したあと、イオン交換水(100mL)で反応を停止させ、酢酸エチル(200mL)を加え、分液漏斗にて抽出した。有機層をイオン交換水で3回洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥させた後、濾過を行った。溶液を濃縮し、ヘキサン(300mL)で晶析を行った。得られた生成物を、THF(30mL)、メタノール(30mL)に再溶解させ、室温で6時間攪拌した後、濃縮を行い、酢酸エチル、水で分液操作を行った。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、再びヘキサン(300mL)で晶析し、50℃で真空乾燥を5時間行うことで、表題化合物であるC60{3,4−(OH)−C10(−CHを黄色固体(1.06g、0.58mmol、収率75.3%)の生成物として得た。
HPLCの溶離液にメタノール/水/リン酸=900/100/1を用いた他、以下の条件で測定した。
カラム:L−Column(ODS:3μm)
カラムサイズ:100mm×4.6mmφ
検出器:UV290nm
HPLC測定の結果、リテンションタイム1.18minに、98.3(Area%)で観測された。
また、H−NMRは実施例1と同様に測定し、測定結果は、以下の通りであった。
H−NMR(DMSO−d6,400MHz)]
9.30〜8.88ppm(m,OH,8H),8.88〜8.50ppm(m,OH,6H),8.50〜8.30ppm(m,OH,6H),7.70〜7.20ppm(m,Ph,10H),7.20〜6.80ppm(m,Ph,4H),6.80〜6.40ppm(m,Ph,8H),6.40〜5.90ppm(m,Ph,8H),1.82ppm(s,C60Me,6H)
以上の結果から、得られた生成物が表題化合物C60{3,4−(OH)−C10(−CHであることが確認された。
更に、得られた生成物について、実施例1と同様にして、溶解度を測定した。結果を下記表1及び表2に示す。
[実施例5:C60{3,4,5−(OH)−C10(−CH及びC60{3,4,5−(OH)−C(−CHの製造]
臭化銅(I)ジメチルスルフィド錯体(4.32g、21.0mmol)のTHF懸濁液(25mL)を5℃まで冷却した後、グリニャール試薬の3,4,5−(OMe)−CMgBr/THF溶液(1mol/L;23mL)を加え、25℃まで昇温した。次に、C60(1.0g、1.39mmol)のODCB溶液(40mL)を加え、25℃で1時間攪拌し、40℃で2時間攪拌した。ここに、MeI(5mL、80mmol)を加え、さらに3時間攪拌した。その後、THFと過剰量のMeIを真空ポンプで留去した。また、別釜で調製した臭化銅(I)ジメチルスルフィド錯体(4.32g、21.0mmol)のTHF懸濁液(25mL)を5℃まで冷却した後、グリニャール試薬の3,4,5−(OMe)−CMgBr/THF溶液(1mol/L;23mL)を加え、25℃まで昇温した。そこに、脱水ピリジン(34mL)を加えさらに20分攪拌した懸濁液をフラーレン誘導体が入っている最初の溶液に添加した。その後、25℃で1時間、40℃で8時間攪拌した。ここに、MeI(5mL、80mmol)を再度加え、さらに12時間攪拌した。その反応液を濾過し、THFを除去した後、トルエンで希釈し、シリカカラムクロマトグラフィー(展開液:トルエン及び酢酸エチル)を行った。溶液を濃縮し、メタノール(500mL)で晶析を行い、50℃で真空乾燥を行なうことで、C60{3,4,5−(OMe)−C10(−CHとC60{3,4,5−(OMe)−C(−CHとを含む混合物として赤黄色固体(1.32g;すべて10重付加フラーレン誘導体であると仮定して計算すると、収率39.5%)の生成物を得た。
得られた生成物に関しては、LC−MSを測定した結果、10重付加フラーレン誘導体(分子量:2420)及び8重付加フラーレン誘導体(分子量:2086)に帰属されるピークを観測した。
次に、ヨウ素(4.18g,16.5mmol)のODCB溶液(6mL)を50℃で攪拌し、ヘキサメチルジシラン(3.07mL,15.0mmol)を加え、100℃で1時間加熱攪拌した溶液に、C60{3,4,5−(OMe)−C10(−CHとC60{3,4,5−(OMe)−C(−CHとを含む混合物(1.00g)の脱水ODCB(10mL)溶液を添加した。100℃で15時間加熱を行った後、25℃まで冷却し、亜硫酸水6mLを加え反応を停止させた。酢酸エチル100mLとイオン交換水50mLとを添加し、分液漏斗にて抽出した。有機層をイオン交換水で2回洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥させた後、濾過を行った。溶液を濃縮し、ヘキサン(300mL)で晶析を行った。100℃で真空乾燥を5時間行うことで、表題化合物であるC60{3,4,5−(OH)−C10(−CHとC60{3,4,5−(OH)−C(−CHとを含む混合物を赤黄色固体(0.91g、すべて10重付加フラーレン誘導体と仮定して計算すると、収率47.1%)の生成物として得た。
実施例4と同様にして、得られた生成物をHPLC及びH−NMR(400MHz)にて測定した。
HPLC測定の結果、リテンションタイム1.15minに97.7(Area%)で観測されたが、ピークが幅広なため複数のピークが含まれていると考えられる。
また、H−NMRの測定結果は、以下の通りであった。
H−NMR(DMSO−d6,400MHz)]
9.50〜8.20ppm(m,OH,30H),7.70〜6.40ppm(m,Ph,20H),1.80〜1.50ppm(s,C60Me,7H)
以上の結果から、得られた生成物が表題化合物C60{3,4,5−(OH)−C10(−CHとC60{3,4,5−(OH)−C(−CHとを含む混合物であることが確認された。
更に、得られた生成物について、実施例1と同様にして、溶解度を測定した。結果を下記表1及び表2に示す。
[比較例1:C60(4−OH−C(CH)の製造]
Nature,419,702−705,2002のSupplementaly Information記載の方法で、C60(4−OTHP−C(H)を合成した。この水素化体に対して、特開2005−15470号明細書(実施例8)に記載の方法(THF溶液で、tBuOKを作用させた後、MeIを添加)でメチル基を導入し、上記Natureの文献に記載の方法で脱保護反応を行ない、上記表題化合物を合成した。
HPLC測定サンプルの溶媒をTHFに変え、HPLCの溶離液をトルエン/メタノール=2/8に変更した以外は、実施例1と同様にして、得られた生成物をHPLC及びH−NMRにて測定した。
HPLC測定の結果、リテンションタイム4.11minに99.00(Area%)で観測された。
更に、H−NMRの測定結果は、以下の通りであった。
H−NMR(DMSO−d6,270MHz)]
9.60ppm(s,OH,4H),9.48ppm(s,OH,1H),7.58ppm(m,Ph,8H),6.96ppm(d,Ph,2H),6.77ppm(m,Ph,8H),6.49ppm(d,Ph,2H),1.47ppm(s,Me,3H)
以上の結果から、得られた生成物が表題化合物C60(4−OH−C(CH)であることが確認された。
更に、得られた生成物について、実施例1と同様にして、溶解度を測定した。結果を下記表1及び表2に示す。
[比較例2:C60(3−Me−4−OH−C(CH)の製造]
臭化銅(I)ジメチルスルフィド錯体(12.96g、63.0mmol)のTHF懸濁液(112mL)を5℃まで冷却した後、3−Me−4−OMe−CMgBr/THF溶液(1mol/L;68mL)を加え、25℃まで昇温した。そこにC60(4.0g、5.56mmol)のODCB溶液(180mL)を加え、5時間攪拌した。そこに、MeI(5mL、80mmol)を加えさらに12時間攪拌した。反応液を濾過し、THFを除去した後、トルエンで希釈し、シリカカラムクロマトグラフィー(展開液:トルエン)を行なった。溶液を濃縮し、メタノール(800mL)で晶析を行ない、50℃で真空乾燥を行なうことで、C60(3−Me−4−OMe−C(−CH)をオレンジ色固体(6.55g、4.89mmol、収率88.0%)の生成物として得た。
次に、C60(3−Me−4−OMe−C(−CH)(1.0g、0.75mmol)のODCB溶液(42mL)を調製し、5℃まで冷却したのち、BBr−塩化メチレン溶液(1.0mol/L、5.6mL)を加え、25℃まで昇温した。室温下で12時間攪拌したあと、イオン交換水(15mL)で反応を停止させ、酢酸エチル(30mL)を加え、分液漏斗にて抽出した。有機層をイオン交換水で2回洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥させた後、濾過を行なった。溶液を濃縮しヘキサン(300mL)で晶析を行ない、50℃真空乾燥を3時間行なうことで、表題化合物C60(3−Me−4−OMe−C(−CH)をオレンジ色固体(0.81g、0.64mmol、収率85.3%)の生成物として得た。
HPLCの溶離液をトルエン/メタノール=3/7に変更した以外は実施例1と同様にして、得られた生成物をHPLC及びH−NMR(400MHz)にて測定した。
HPLC測定の結果、リテンションタイム2.47minに97.0(Area%)で観測された。
また、H−NMRの測定結果は、以下の通りであった。
H−NMR(DMSO−d6,400MHz)]
9.50ppm(brs,OH,3H),9.45ppm(s,OH,1H),9.37ppm(s,OH,1H),7.51〜7.37ppm(m,Ph,8H),6.96〜6.74ppm(m,Ph,6H),6.54ppm(d,Ph,1H),2.05ppm(brs,PhMe,12H),1.99ppm(s,PhMe,3H),1.83ppm(s,C60Me,3H)
以上の結果から、得られた生成物が表題化合物C60(3−Me−4−OMe−C(−CH)であることが確認された。
更に、得られた生成物について、実施例1と同様にして、溶解度を測定した。結果を下記表1に示す。
[比較例3:C60{3,4−(OH)−C(−CH)の製造]
臭化銅(I)ジメチルスルフィド錯体(9.72g、47.3mmol)のTHF懸濁液(80mL)を5℃まで冷却した後、4−ブロモ−1,2−メチレンジオキシベンゼンから調製したグリニャール試薬の3,4−OCHO−CMgBr/THF溶液(1mol/L;50.4mL)を加え、25℃まで昇温した。次に、C60(3.0g、4.17mmol)のODCB溶液(120mL)を加え、25℃で5時間攪拌した。ここに、MeI(10mL、160mmol)を加え、さらに12時間攪拌した。反応液を濾過し、THFを除去した後、トルエンで希釈し、シリカカラムクロマトグラフィー(展開液:トルエン及び酢酸エチル)を行った。溶液を濃縮し、メタノール(500mL)で晶析を行い、50℃で真空乾燥を行なうことで、C60(3,4−OCHO−C(−CH)をオレンジ色固体(5.62g;収率100.8%)の生成物として得た。溶媒としてODCBが残存しているため、収率が100%を超えているものと考えられる。
次に、C60(3,4−OCHO−C(−CH)(5.00g、3.73mmol)のODCB溶液(250mL)を調製し、5℃まで冷却したのち、BBr−塩化メチレン溶液(1.0mol/L、28.0mL)を加え、25℃まで昇温した。室温(25℃)下で10時間攪拌したあと、イオン交換水(100mL)で反応を停止させ、酢酸エチル(300mL)を加え、分液漏斗にて抽出した。有機層をイオン交換水で3回洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥させた後、濾過を行った。溶液を濃縮し、ヘキサン(500mL)で晶析を行った。得られた生成物を、THF(70mL)、メタノール(70mL)に再溶解させ、室温(25℃)で8時間攪拌した後、濃縮を行い、酢酸エチル、水で分液操作を行った。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、再びヘキサン(500mL)で晶析し、50℃で真空乾燥を5時間行うことで、表題化合物であるC60{3,4−(OH)−C(−CH)をオレンジ色固体(3.57g、2.79mmol、収率74.6%)の生成物として得た。
HPLCの溶離液メタノール/水/リン酸=950/50/1に変更した以外は実施例4と同様にして、得られた生成物をHPLC及びH−NMR(400MHz)にて測定した。
HPLC測定の結果、リテンションタイム8.78minに98.3(Area%)で観測された。
また、H−NMRの測定結果は、以下のとおりであった。
H−NMR(DMSO−d6,270MHz)]
9.17ppm(s,OH,1H),9.01ppm(s,OH,7H),8.83ppm(s,OH,1H),8.59ppm(s,OH,1H),7.30ppm(m,Ph,4H),7.09ppm(m,Ph,4H),6.72ppm(m,Ph,5H),6.47ppm(m,Ph,2H),1.68(s,C60Me,3H)
以上の結果から、得られた生成物が表題化合物であるC60{3,4−(OH)−C(−CH)であることが確認された。
さらに、得られた生成物について、実施例1と同様にして、溶解度を測定した。結果を表1及び表2に示す。
[比較例4:C60{3,4,5−(OH)−C(−CH)の製造]
臭化銅(I)ジメチルスルフィド錯体(6.48g、31.5mmol)のTHF懸濁液(56mL)を5℃まで冷却した後、グリニャール試薬の3,4,5−(OMe)−CMgBr/THF溶液(1mol/L;33.4mL)を加え、25℃まで昇温した。次に、C60(2.0g、2.78mmol)のODCB溶液(90mL)を加え、25℃で7時間攪拌した。ここに、MeI(5mL、80mmol)を加え、さらに5時間攪拌した。その反応液を濾過し、THFを除去した後、トルエンで希釈し、シリカカラムクロマトグラフィー(展開液:トルエン及び酢酸エチル)を行った。溶液を濃縮し、メタノール(500mL)で晶析を行い、50℃で真空乾燥を行なうことで、C60{3,4,5−(OMe)−C(−CH)を赤色固体(3.45g、収率79.1%)の生成物として得た。
次に、ヨウ素(6.67g,26.2mmol)のODCB溶液(15mL)を50℃で攪拌し、ヘキサメチルジシラン(4.99mL,24.4mmol)を加え、100℃で1時間加熱攪拌した溶液に、C60{3,4,5−(OMe)−C(−CH(2.50g)の脱水ODCB(12mL)溶液を添加した。100℃で12時間加熱を行った後、25℃まで冷却し、亜硫酸水6mLを加え反応を停止させた。酢酸エチル100mLとイオン交換水50mLを添加し、分液漏斗にて抽出した。有機層をイオン交換水で2回洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥させた後、濾過を行った。溶液を濃縮し、ヘキサン(300mL)で晶析を行った。50℃で真空乾燥を3時間行うことで、表題化合物であるC60{3,4,5−(OH)−C(−CH)を赤色固体(2.05g、収率94.3%)の生成物として得た。
実施例4と同様にして、得られた生成物をHPLC及びH−NMR(400MHz)にて測定した。
HPLC測定の結果、リテンションタイム5.28minに95.9(Area%)で観測された。
また、H−NMRの測定結果は、以下の通りであった。
H−NMR(DMSO−d6,400MHz)]
8.75ppm(brs,OH,4H),8.70ppm(brs,OH,3H),8.53ppm(s,OH,2H),8.28ppm(s,OH,4H),8.08ppm(s,OH,2H),6.90ppm(s,Ph,8H),6.20ppm(s,Ph,2H),1.88ppm(s,C60Me,3H)
以上の結果から、得られた生成物が表題化合物C60{3,4,5−(OH)−C(−CH)であることが確認された。
更に、得られた生成物について、実施例1と同様にして、溶解度を測定した。結果を下記表1及び表2に示す。
なお、下記表1において、「<1」との表記は、溶解度が1mg/mL未満であることを表わし、「>10」という表記は、溶解度が10mg/mLより大きいことを表わす。
Figure 0005658434
Figure 0005658434
なお、上記表2において、○は目視で完全に溶解したことを示し、×はフラーレン誘導体の溶媒への溶解性が低く、完全に溶解しなかったことを示す。
Figure 0005658434
{フラーレン誘導体膜のアルカリ現像評価}
実施例1、2、4及び比較例1、2、3で製造したフラーレン誘導体を用いて、それぞれ表4に示す溶媒(ただし、「CHN」は、シクロヘキサノンを表わす。)を溶解させて2重量%の溶液を調製し、アドバンテック製0.2μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって、塗布液を調製した。当該塗布液をシリコン基板上に塗布して、回転速度500rpmで10秒間、その後1500rpmで40秒間回転させた。その後コンタクトベーク100℃、1分間で乾燥させ、膜厚30nmの薄膜を形成した。
得られたシリコン基板を約20mm角ウエハーに切り出し、シャーレー内で表4に記載の濃度の現像液(TMAH水溶液)2mLをスポイドで滴下した。
一定時間、現像液中で浸漬し、その後イオン交換水で現像液を洗浄した。その後、乾燥を行い、各種フラーレン誘導体膜のTMAH水溶液に対する現像性を目視で評価した。結果を表4に示す。
Figure 0005658434
上記表4中、○は目視で現像されたことを示し、×はフラーレン誘導体の現像液への溶解性が低く、現像されなかったことを示す。また、「※」が付してある項目は、未評価ではあるが、実際に評価したその他の結果から予測できたものを示した。
また、同様に作成したフラーレン誘導体膜に関して、シャーレー内で0.20重量%のTMAH水溶液2mLをスポイドで滴下した。5秒間、現像液中で浸漬し、その後イオン交換水で現像液を洗浄した。その後、乾燥を行い、各種フラーレン誘導体膜のTMAH水溶液に対する現像性を目視で評価した。結果を表5に示す。
Figure 0005658434
上記表5中、○は目視で現像されたことを示し、×はフラーレン誘導体の現像液への溶解性が低く、現像されなかったことを示す。
{フラーレン誘導体膜のアルカリ現像速度測定}
実施例1のフラーレン誘導体のPGMEA10重量%溶液、比較例1のフラーレン誘導体のPGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)/CHN混合(混合比は2/1)6.66重量%溶液、比較例3のフラーレン誘導体のPGMEA10重量%溶液をそれぞれ調製し、アドバンテック製0.2μmのフッ素樹脂製のフィルターでろ過することによって塗布液を調製した。当該塗布液をシリコン基板上に塗布して、回転速度500rpmで10秒間、1000rpmで40秒間回転させた。その後コンタクトベーク110℃で、1分間乾燥させ膜厚300nmのフラーレン誘導体膜を形成した。
フラーレン誘導体膜が形成されたシリコン基板を、レジスト現像アナライザー(RDA−800)にてアルカリ現像速度を測定した。現像液としてNMD−3(TMAH2.38重量%水溶液)を用い、モニター波長は470nmを使用した。結果を表6に示す。
Figure 0005658434
表4及び表5の結果から、同じ構造のR20を有する場合は、付加数が多い方が低アルカリ濃度で速やかに溶解することが確認された。また、実施例1、2と比較例3との結果より、同じ水酸基の数を有するフラーレン誘導体を比較した場合、フラーレン骨格上に非局在的に水酸基が分散していた方が、低アルカリ濃度で速やかに溶解することが確認された。また、表6から同じ構造のR20を有する場合は付加数が多い方が、アルカリ現像速度が速いことが確認された。また同じ水酸基の数を有するフラーレン誘導体を比較した場合、フラーレン骨格上に非局在的に水酸基が分散していた方が、アルカリ現像速度が速いことが確認された。これは、水酸基の数による酸性度の影響だけでなく、分子の全体的な親水性が向上したことによる相乗効果が得られているものと考えられる。これらの結果は、レジスト用途に用いられる現像液に対するフラーレン誘導体の溶解速度が向上することを意味しており、本発明のフラーレン誘導体は、フォトレジスト用途に特に好ましく使用することができるがわかった。
[フラーレン誘導体を用いたレジストの調製及び評価]
[実施例6]
実施例1で得られたフラーレン誘導体を原料に用い、特開2006−56878号公報等に記載の方法を参照して、二炭酸ジ−tertブチルの量を水酸基10個に対して平均的に7割導入できるように調整し、t−ブトキシカルボニル基(以下BOC基と記す)をフラーレン誘導体に導入した。得られた生成物をH−NMRで測定したところ、水酸基数10個のうち、平均的に7個BOC基が導入されたことが確認された。よって、保護化率は70%であった。
この70%BOC保護された実施例1のフラーレン誘導体を用い、以下の手順でレジスト組成物を調製した。
(i)70%BOC保護された実施例1のフラーレン誘導体をPGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)に対して3.03重量%(レジスト液全体で3.0重量%)となるように添加し、スターラーにて攪拌した。
(ii)そのフラーレン誘導体溶液に、トリフェニルスルフォニウム塩ノナフレート(みどり化学製TPS−109)及びn−トリオクチルアミンをそれぞれフラーレン誘導体に対して30重量%並びに3重量%添加し、スターラーにて一晩攪拌した。
(iii)攪拌後、孔直径0.2μmのフィルターでろ過し、ポジ型レジスト組成物を得た。
[比較例5]
比較例1で得られたフラーレン誘導体を原料に用い、特開2006−56878号公報等に記載の方法を参照して、二炭酸ジ−tertブチルの量を水酸基5個に対して平均的に7割導入できるように調整し、t−ブトキシカルボニル基(以下BOC基と記す)をフラーレン誘導体に導入した。得られた生成物をH−NMRで測定したところ、水酸基数5個のうち、平均的に3.5個BOC基が導入されたことが確認された。よって、保護化率は70%であった。
上記で得られたBOC保護された比較例1のフラーレン誘導体を使用する以外は、実施例6と同様にレジスト組成物を調製した。
[EB感度評価]
以下の手順でレジスト膜を形成し、そのEB感度を評価した。
(1)実施例6及び比較例5で調製したレジスト組成物を、それぞれSi基板上に厚さ100nmとなるように1000rpmで1秒間、2000rpmで30秒間回転塗布し(塗布工程)、110℃で90秒間、加熱処理を行った(プレベーク)。
(2)EB露光装置:JBX−6000FS(日本電子製)を用い、加速電圧50kVで露光を行い、露光時間を調整して露光量を変化させた(露光工程)。
(3)EB露光した膜を110℃で90秒間、加熱処理を行った(ポストエクスポージャーベーク)。
(4)現像液として、アルカリ現像液のMF622(シプレイ製)を用い、30秒間浸漬した(現像工程)。その後、リンス液として純水を用い、これに30秒間浸漬して現像液をすすぎ落とした(洗浄工程)。
(5)パターン形成後、段差測定を行い、露光した箇所のフラーレン誘導体膜が完全に除去できた最低露光量をフラーレン誘導体ポジ型レジストのEB感度とした。
以上の結果を表7に示す。
Figure 0005658434
表7より明らかなように、本発明のフラーレン誘導体を用いたポジ型レジストの場合は、比較例5と比較して、EB露光量が低くてもレジスト膜が除去された。すなわちEB露光に対して高感度であった。
[BOC保護基以外の保護基を有するフラーレン誘導体を用いたレジストの調製及び評価]
[実施例7]
実施例1で得られたフラーレン誘導体を原料に用い、特開2006−56878号公報等に記載の方法を参照して、THF溶液、炭酸カリウム存在下、ブロモ酢酸tertブチル(Br−CH−COOtBu)の量を水酸基10個に対して平均的に64%導入できるように調整し、t−ブチルオキシカルボニルメチル基(−CHCOOtBu;以下BOCM基と記す)をフラーレン誘導体に導入した。得られた生成物をH−NMRで測定したところ、水酸基数10個のうち、平均的に64%BOCM基が導入されたことが確認された。よって、保護化率は64%であった。
この64%BOCM保護された実施例1のフラーレン誘導体を用い、以下の手順でレジスト組成物を調製した。
(i)64%BOCM保護された実施例1のフラーレン誘導体をPGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)に対して3.03重量%(レジスト液全体で3.0重量%)となるように添加し、スターラーにて攪拌した。
(ii)そのフラーレン誘導体溶液に、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム塩ノナフレート(みどり化学製BBI−109)及びn−トリオクチルアミンをそれぞれフラーレン誘導体に対して30重量%並びに3重量%添加し、スターラーにて一晩攪拌した。
(iii)攪拌後、孔直径0.2μmのフィルターでろ過し、ポジ型レジスト組成物を得た。
[実施例8]
ブロモ酢酸tertブチル(Br−CH−COOtBu)の量を水酸基10個に対して平均的に47%導入できるように調整した以外は、実施例7と同様にBOCM保護されたフラーレン誘導体を製造した。得られた生成物をH−NMRで測定したところ、水酸基数10個のうち、平均的に47%BOCM基が導入されたことが確認された。よって、保護化率は47%であった。
この47%BOCM保護された実施例1のフラーレン誘導体を用いた以外は、実施例7と同様にレジスト組成物を調製した。
[実施例9]
実施例1で得られたフラーレン誘導体を原料に用い、実施例7記載の方法を参照して、THF溶液、炭酸カリウム存在下、ブロモ酢酸−2−メチル−2−アダマンチル(Br−CH−COOMeAd)の量を水酸基10個に対して平均的に45%導入できるように調整し、2−メチル−2−アダマンチルオキシカルボニルメチル基(−CHCOOMeAd;以下MAdM基と記す)をフラーレン誘導体に導入した。得られた生成物をH−NMRで測定したところ、水酸基数10個のうち、平均的に45%MAdM基が導入されたことが確認された。よって、保護化率は45%であった。
上記で得られた45%MAdM保護された実施例1のフラーレン誘導体を使用する以外は、実施例7と同様にレジスト組成物を調製した。
[EB感度評価]
実施例6及び比較例5と同様の手順でレジスト膜の作成、EB露光評価を行った。
各フラーレン誘導体ポジ型レジストのEB感度の結果を表8に示す。
Figure 0005658434
表8より明らかなように、本発明のフラーレン誘導体を用いたポジ型レジストの場合、保護基及び保護化率を適宜選択することにより、EB感度を向上させることができる。
[フラーレン誘導体を用いたレジストのエッチング耐性評価]
70%BOC保護された実施例1のフラーレン誘導体を用いて、膜厚を80nmにした以外は実施例6と同様にパターンを形成した後、エッチング耐性評価を以下の方法で行った。
(i)パターン形成後、パターンとSi基板との段差を測定した。測定された段差の大きさを膜厚A(レジスト膜厚)とした。
(ii)以下の要領で、それぞれの所要時間ごとにサンプルを準備し、エッチング処理を行なった。
(CFガスによるRIEエッチング)
装置:サムコインターナショナル製RIE−10NR
エッチング条件:CF、50W、70sccm、20Pa
エッチング時間:0秒、100秒、200秒、300秒、400秒、500秒
膜減り量測定:KLAテンコール社製アルファステップ500
(iii)エッチング後のパターンとSi基板との段差を測定した。測定された段差の大きさを膜厚Bとした。
(iv)アッシング後にパターン形成されていたSi基板と無パターン部のSi基盤の段差を測定した。測定された段差の大きさを膜厚Cとした。
なお、アッシングは以下の要領で行なった。
(Oアッシングによるレジスト剥離)
装置:サムコインターナショナル製RIE−10NR
アッシング条件:O=20sccm、50W、20Pa、5分
膜減り量測定:KLAテンコール社製アルファステップ500
(v)以下の計算式により、レジスト膜及びSi基板の膜減り量を求めた。
レジスト膜の膜減り量=膜厚A+膜厚C−膜厚B
Si基板の膜減り量=膜厚C
(vi)エッチング時間と膜減り量のグラフの傾きからレジスト膜とSi基板のエッチング速度を算出した。
(vii)レジスト膜のエッチング速度をSi基板のエッチング速度で除し、規格化した。
以上の結果を、表9に示す。
Figure 0005658434
(電子線レジストZEP520Aとの比較)
レジストとして、ZEP520A(日本ゼオン製、アニソール溶媒)を、非ハロゲン芳香族系溶媒であるアニソールで2倍に希釈した。膜厚を100nm、プレベークを170℃にて20分間、現像液としてZED−N50(日本ゼオン製)を用い45秒間浸漬した事に加え、リンス液としてIPA(イソプロピルアルコール)を用いる以外は上記エッチング耐性評価と同様の装置で同様の評価を実施した。
その結果、エッチング速度はレジスト膜で0.34nm/秒、Si基板で0.27nm/秒だった。Si基板で規格化したエッチング速度は1.25nm/秒であり、実施例6は一般的な電子線レジストであるZEP520Aと比較して約2倍のエッチング耐性を有することがわかった。
本発明のフラーレン誘導体は、任意の分野で使用することが可能である。中でも、本発明のフラーレン誘導体はPGMEA等のエステル溶媒、アルコール溶媒並びにアルカリ溶媒に対して高い溶解性を有し、且つ、低コストで容易に製造可能であるという特徴を有することから、例えば、DVD、CD等の光ディスク材料の製造、半導体集積回路の作製、半導体集積回路作製用マスクの製造、液晶用集積回路の作製、液晶画面製造用レジスト材料等の用途に好ましく使用することができる。なかでも、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザーに加えて、EUV(極端紫外光)、EB等の光源短波長化に適応したフォトレジスト、反射防止膜等の機能を有した下層膜材料としてのフォトレジスト、ナノインプリント及び層間絶縁膜の用途に特に好ましく使用することができる。

Claims (14)

  1. フラーレン骨格上に下記式(1)で表わされる基を6個以上10個以下有し、
    フラーレン骨格が有する下記式(2)で表わされる部分構造において、Cが水素原子又は、炭素数1以上30以下の直鎖或いは分岐状の鎖状アルキル基、環状アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、置換アミノ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、5員複素環基、6員複素環基、チオカルボニル基、及び置換シリル基からなる群より選ばれる基と結合しており、C〜Cが各々独立に、下記式(1)で表わされる基と結合しているとともに、
    該部分構造を少なくとも2か所有する
    ことを特徴とする、フラーレン誘導体。
    Figure 0005658434
    (上記式(1)中、qは0以上4以下の整数を表し、rは、r+qが5以下となる自然数を表わす。また、Rは、各々独立に、直鎖又は分岐状の鎖状アルキル基、環状アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、及びアリーロキシ基からなる群より選ばれる基又はハロゲン原子を表わす。)
    Figure 0005658434
    (上記式(2)中、C〜C10は、フラーレン骨格を構成する炭素原子を表わす。)
  2. 該式(1)で表わされる基の数が、8個又は10個である
    ことを特徴とする、請求項1に記載のフラーレン誘導体。
  3. 上記式(1)中、qは0以上3以下の整数を表し、rは2又は3を表わし、r+qが5以下となる
    ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のフラーレン誘導体。
  4. 該C〜C10と上記式(1)で表される基とが各々独立に結合している該部分構造を、少なくとも1か所有する
    ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のフラーレン誘導体。
  5. 上記のCに結合している基がメチル基である
    ことを特徴とする、請求項1に記載のフラーレン誘導体。
  6. 上記のCに結合している基がアルケニル基である
    ことを特徴とする、請求項1に記載のフラーレン誘導体。
  7. 25℃、1気圧において、
    0.48重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に対して、0.5重量%以上の割合で溶解するとともに、
    イソプロピルアルコールに対して、5重量%以上の割合で溶解する
    ことを特徴とする、請求項1〜6の何れか一項に記載のフラーレン誘導体。
  8. 該Rが、アルキル基、及び/又は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子からなる群より選ばれる1種以上のハロゲン原子である
    ことを特徴とする、請求項1〜7の何れか一項に記載のフラーレン誘導体。
  9. 該フラーレン骨格がフラーレンC60である
    ことを特徴とする、請求項1〜8の何れか一項に記載のフラーレン誘導体。
  10. 該フラーレン骨格がフラーレンC70である
    ことを特徴とする、請求項1〜8の何れか一項に記載のフラーレン誘導体。
  11. 該フラーレン骨格がフラーレンC60又はC70以外のフラーレンを含む
    ことを特徴とする、請求項9又は10に記載のフラーレン誘導体。
  12. 請求項1〜11の何れか一項に記載のフラーレン誘導体が溶媒に溶解してなる
    ことを特徴とする、フラーレン誘導体溶液。
  13. 該溶媒が、エステル溶媒である
    ことを特徴とする、請求項12に記載のフラーレン誘導体溶液。
  14. 請求項1〜11の何れか一項に記載のフラーレン誘導体を含む
    ことを特徴とする、フラーレン誘導体膜。
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