JP5987544B2 - 酸解離型重合性フラーレン誘導体及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、酸解離型重合性フラーレン誘導体体及びその製造法に関する。詳しくは、電子材料、フォトレジスト材料、樹脂添加剤、生理活性物質等に有用な、重合性と酸分解性の両方の性質を有するフラーレン誘導体、及びその製造方法に関する。
1990年にC60の大量合成法が確立されて以来、フラーレンに関する研究が精力的に展開されている。その結果、数多くのフラーレン誘導体が合成され、その多様な機能が明らかにされてきた。それに伴い、各種用途開発が進められている。
フラーレン誘導体を機能性樹脂や電子材料等に利用したり、他のフラーレン誘導体の中間体として使用するためには、フラーレン誘導体が有機溶媒に対して高い溶解性を示すことが好ましい。その中でも、フラーレンに特定の置換基を5個結合させたフラーレン誘導体(以下適宜、5重付加フラーレン誘導体と記述する)は、高選択的に合成が可能なフラーレン誘導体であり、導入する置換基の種類を変えることによって、有機溶媒及び水に対する溶解性を制御することができる点で有用性が注目されている。
フラーレン誘導体を電子材料やフォトレジスト材料や機能性樹脂等に導入することで、耐熱性、高強度化、耐エッチング性、高弾性、耐油性、耐水性、疎水性、電気絶縁性、難燃性、電子受容性等の機能を付与できることが期待される。この場合、フラーレン誘導体をモノマーとして利用するためには、フラーレン誘導体そのものが重合性置換基を有していることが好ましい。
そこで、これまでにラジカル重合性、アニオン重合性を示すアクリル酸エステルを分子内に有するフラーレン誘導体等が報告されている(非特許文献1参照)。
一方、半導体回路、リソグラフィー用マスクの製造などの分野では、化学増幅型のフォトレジストが盛んに検討されており、そのレジスト材料として用いられるポリマーの開発が進められている。化学増幅型のフォトレジストは、光酸発生剤の作用によって露光部に酸が発生し、この酸の触媒作用によって露光部の溶解性が変化する機構を持つレジストである。このような化学増幅型レジストに用いられるポリマーとしては、アルカリ可溶性ポリマー中のアルカリ可溶性基を酸分解性保護基で保護したものが用いられている。例えば、ポリマー中のカルボキシル基の保護を行うことによって、アセタール基やエステル基といった酸分解性保護基へと変換したもの等が挙げられる。
これらの化学増幅型レジスト用ポリマーは、一般に、アクリル酸などの重合性カルボン酸のカルボキシル基を上記の酸分解性基で保護したモノマーを重合することにより合成される。この方法では、任意にポリマーの分子量を制御することや、複数の種類のモノマーの共重合を行うことが可能である。例えば、アクリル酸誘導体やヒドロキシスチレン誘導体等の複数の種類のモノマーを共重合することによって、フォトレジスト材料としての機能に適したポリマーを合成することができる。
近年では、極端紫外光(Extream Ultra Violet、EUV)又は電子線(EB)によるリソグラフィーが、半導体等の製造において、高生産性、高解像度の微細加工方法として注目を集めており、それに用いる高感度、高解像度のフォトレジストを開発することが求められている。EUV等の超微細加工のリソグラフィーにおいて使用するフォトレジストは、高感度であることに加えて、レジストアウトガス及びラインエッジラフネス(LER)の低減、高いドライエッチング耐性などが求められている。
このような観点から、酸分解性保護基に環状の炭素骨格を導入したモノマーを導入し、高い塗布溶媒溶解性、高いドライエッチング耐性を付与したポリマーレジストについて検討がなされている。例えばカルボキシル基の保護基として、シクロヘキサン環、シクロオクタン環、シクロデカン環、アダマンタン環、ノルボルナン環、ノルボルネン環、ボルナン環、イソボルナン環、パーヒドロインデン環、デカリン環、パーヒドロフルオレン環等を有するものが知られている(特許文献1)。しかしながら、近年の微細パターンに伴うレジストの薄膜化により、さらにエッチング耐性が高い材料が求められている。
一方で、フラーレンおよびフラーレン誘導体は分子量が小さく、また製造手法によっては単一化合物での製造も可能であるため、上記のようなレジスト材料として用いた場合に、微細パターン形成において有利である。また、レジスト膜の炭素濃度とドライエッチング耐性については相関があるといわれており、炭素濃度が非常に高いフラーレンやフラーレン誘導体はエッチング耐性に優れるといった特徴を有している。このため、レジスト用途に用いられる溶媒への溶解性を付与したフラーレン誘導体が開発され(特許文献2、3)、実際にEUV露光、EB露光が行われ、それらの有用性が確認されている(特許文献4)。
従って、酸分解性基と重合性基を有するフラーレン誘導体を、化学増幅型レジスト等に用いられるポリマーの基材もしくは組成物として導入することができれば、上記のフラーレン誘導体が有する機能を付与できることが期待される。
しかしながら、従来において、重合性基と酸分解性基の両方を有するフラーレン誘導体は報告されていない。
特開2010−13652号公報 特開2006−56878号公報 特開2010−24221号公報 特開2011−28201号公報
Tetrahydron Letters,2009,50,3411.
本発明は、電子材料、フォトレジスト材料、樹脂添加剤、生理活性物質等に有用な、重合性と酸分解性の両方の性質を有するフラーレン誘導体を提供すること
を課題とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の[1]〜[]よりなる本発明を完成させた。
[1] 酸解離性部分構造と重合性部分構造とを有する置換基(D)を有する酸解離型重合性フラーレン誘導体であって、フラーレン骨格が下記式(II)で表される部分構造を有し、前記置換基(D)は下記式(D )又は(D )で表されることを特徴とする酸解離型重合性フラーレン誘導体(ただし、下記式(D )が−O−CH −O−CH =CH であり、下記式(II)におけるC とブチレン基を介して結合する場合に、下記式(II)におけるC 〜C 10 と結合する置換基を有していてもよい炭素数6〜40の芳香環がメトキシフェニル基である場合を除く。)。
Figure 0005987544
(式中、C 〜C 10 はフラーレン骨格を構成する炭素原子を表し、C はアルキレン基を介して前記置換基(D)と結合し、C 〜C 10 は各々独立に置換基を有していてもよい炭素数6〜40の芳香環と結合している。C 〜C 10 と結合する炭素数6〜40の芳香環が置換基を有する場合、その置換基は、下記式(A 11 )で表される酸解離性置換基、水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基又はエステル基である。)
Figure 0005987544
(但し、R とR 21 は相互に結合して環を形成しており、形成される環は、R とR 21 との間の−C−O−を炭素数2〜10のアルキレン基で結合する環である。)
Figure 0005987544
(但し、R はメチル基又は水素原子を表し、R 32 は炭素数1〜20のアルキレン基を表し、R 、R は各々独立に炭素数1〜20のアルキル基である。V は下記式の通りである。)
Figure 0005987544
(但し、R はカルボニル基及び/又は芳香環基を表すが、なくてもよい。R は炭素数1〜6のアルキル基、ハロアルキル基、シアノ基、ハロゲン原子又は水素原子を表し、R は水素原子を表す。)
] 前記式(V )において、Rが、メチル基又は水素原子であることを特徴とする[1]に記載の酸解離型重合性フラーレン誘導体。
] Rが水素原子であることを特徴とする[2]に記載の酸解離型重合性フラーレン誘導体。
] フラーレン誘導体一分子中に、前記重合性部分構造を1個有することを特徴とする[1]〜[]のいずれかに記載の酸解離型重合性フラーレン誘導体。
] フラーレン骨格がフラーレンC60であることを特徴とする[1]〜[]のいずれかに記載の酸解離型重合性フラーレン誘導体。
] 下記式(B)で表されるビニルエーテル基を有するフラーレン誘導体に、化合物 −OH又はV −C(O)OH(ただし、V は前記式(V )で表される。)を反応させることを特徴とする[1]〜[]のいずれかに記載の酸解離型重合性フラーレン誘導体の製造方法。
Figure 0005987544
(上記式(B)において、X、Yはそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基又は水素原子を表す。)
−CR OH(ただし、R 、R は式(D )におけると同義である。)で表される3級水酸基を有するフラーレン誘導体に、化合物 −C(O)−V (ただし、L はハロゲン原子、アルコキシ基、スルホニルオキシ基又はアミノ基を表し、V は、前記式(V )で表される。)を反応させることを特徴とする[1]〜[]のいずれかに記載の酸解離型重合性フラーレン誘導体の製造方法。
本発明の酸解離型重合性フラーレン誘導体は、重合性と酸分解性の両方の性質を有するフラーレン誘導体であり、フォトレジスト材料、樹脂添加剤、生理活性物質等の分野における応用が期待される。
例えば、本発明の酸解離型重合性フラーレン誘導体を、単量体もしくは共重合単量体の一成分として重合反応に用いることで、フラーレン骨格を含有する樹脂を合成することができる。また、本フラーレン誘導体又はこれを含むポリマーは、塩基性及び中性において安定に取り扱うことが可能である一方で、酸で処理することによって、フラーレン残基を分解及び除去することができる。特に、化学増幅型レジスト用ポリマーの樹脂組成物として用いた場合には、酸分解性保護基としての機能が付与されると共に、高ドライエッチング耐性、高溶媒溶解性、高強度、低レジストアウトガス、低LER、低LWR等のレジスト性能の向上が期待できる。
また、本発明の酸解離型重合性フラーレン誘導体は一般の有機溶媒に対する溶解性が高く、酸分解性基とアニオン及びラジカル重合性基をそれぞれ選択的に反応に用いることできるため、他のフラーレン誘導体の合成中間体としても有用である。
以下、本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内であれば種々に変更して実施することができる。なお、以下において、炭素数nのフラーレン骨格を適宜式[C]又は「フラーレンC」と記載する。また、後掲の式(I),(II)におけるフラーレン骨格を構成する炭素原子C、C、C、C、C、C10については、それぞれ(C)、(C)、(C)、(C)、(C)、(C10)と記載する。
[酸解離型重合性フラーレン誘導体]
本発明の酸解離型重合性フラーレン誘導体(以下、単に「本発明のフラーレン誘導体」と称す場合がある。)は、酸解離性部分構造と重合性部分構造とを有する置換基(D)、又は、酸解離性部分構造を有する置換基(A)及び重合性部分構造を有する置換基(V)を有することを特徴とする。ただし、本発明のフラーレン誘導体のフラーレン骨格は、置換基(D)もしくは置換基(A)及び置換基(V)以外に他の任意の置換基を有していてもよい。
なお、本発明のフラーレン誘導体が有する置換基(D)、置換基(A)、置換基(V)に含まれる炭素数1〜40の有機基、この有機基が有していてもよい置換基とは、本発明のフラーレン誘導体が置換基(D)、置換基(A)、置換基(V)以外に有していてもよい置換基として後述する有機基及びその置換基として挙げたものが該当する。
後述の<有機基>の項で例示する有機基は、1価の有機基である。置換基(D)、置換基(A)、置換基(V)に含まれる有機基が2価の有機基である場合、<有機基>の項に例示された1価の有機基から更に任意の箇所の水素原子を除いた基がその有機基に該当する。
<フラーレン骨格>
フラーレンとは、閉殻構造を有する炭素クラスターである。フラーレンの炭素数は、通常60〜130の偶数であり、本発明のフラーレン誘導体のフラーレン骨格としては、例えば、[C60]、[C70]、[C76]、[C78]、[C82]、[C84]、[C90]、[C94]、[C96]及びこれらよりも多くの炭素原子を有する高次の炭素クラスターなどが挙げられる。
また、本発明に係るフラーレン誘導体とは、フラーレン骨格上に置換基を有する化合物又は組成物の総称である。即ち、本発明のフラーレン誘導体は、特定の置換基を有しているものであれば、フラーレン骨格の内部に金属や化合物等を内包するもの及び他の金属原子や化合物と錯体を形成したもの等も含まれる。
このうち、フラーレン製造時における主生成物フラーレンの誘導体が入手容易な点から、本発明のフラーレン誘導体は[C60]及び[C70]のフラーレン誘導体が好ましく、[C60]のフラーレン誘導体がより好ましい。
<酸解離性部分構造>
本発明のフラーレン誘導体が有する置換基(D)、又は置換基(A)に含まれる酸解離性部分構造としては、酸性条件下で分解し得る部分構造であればよく、特に制限はないが、合成が容易な点及び、酸によって高極性の水酸基又はカルボキシル基へと分解され、有機溶媒及び水に対する溶解性が大きく変化する点において、アセタール型部分構造、エステル型部分構造が好ましい。
(アセタール型部分構造)
酸解離性部分構造のアセタール型部分構造としては、合成が容易な点及び、酸によって分解がされやすい点において、下記式(A11)及び(A12)で表される部分構造(以下、それぞれ「部分構造(A11)」、「部分構造(A12)」と称す場合がある。)からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
Figure 0005987544
(但し、Rは炭素数1〜40の有機基又は水素原子を表し、R21、R22は炭素数1〜40の有機基を表し、これらの有機基は任意の置換基を有していてもよい。RとR21及びRとR22は相互に結合して環を形成していてもよい。)
部分構造(A11)、(A12)において、R、R21、R22の任意の置換基を有していてもよい炭素数1〜40の有機基としては、後述の<有機基>の項で挙げたものが挙げられるが、このうち、Rは、水素原子或いは炭素数1〜40のアルキル基又はアリール基であることが好ましく、特に水素原子又はメチル基であることが、市販の試薬から合成が容易な点で好ましい。特に、Rがメチル基であると後述の本発明のフラーレン誘導体の製造に際して、ビニルエーテル基を有するフラーレン誘導体とカルボキシル基を有する化合物とを反応させる製造法で、容易に合成できる点で好ましい。
21及びR22は、溶解度の観点から炭素数5以上の有機基が好ましく、合成の容易さの観点から炭素数20以下の有機基が好ましい。
部分構造(A11)、(A12)において、RとR21、RとR22は、相互に結合して環を形成していてもよく、この場合、形成される環は、RとR21又はR22との間の−C−O−を炭素数2〜10のアルキレン基で結合する環(即ち、この−C−O−を含めて4〜12員環)であることが好ましく、特に−C−O−を炭素数4のアルキレン基で結合して形成されるテトラヒドロピラン環となる部分構造(A11)は、テトラヒドロピラニル基(THP基)によって保護された水酸基と見なすことができ、その合成上極めて有利である。
(エステル型部分構造)
酸解離性部分構造のエステル型部分構造としては、3級炭素を有するエステル基で酸によって分解されやすい点において、下記式(A21)、(A22)、及び(A23)(以下、それぞれ「部分構造(A21)」、「部分構造(A22)」、「部分構造(A23)」と称す場合がある。)で表される部分構造からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
Figure 0005987544
(但し、R31〜R33、R、R、R61〜R63は、各々独立に炭素数1〜40の有機基を表し、これらの有機基は任意の置換基を有していてもよい。RとRは相互に結合して環を形成していてもよい。)
部分構造(A21)、(A22)、(A23)において、R31〜R33、R、R、R61〜R63の任意の置換基を有していてもよい炭素数1〜40の有機基としては、後述の<有機基>の項で挙げたものが挙げられるが、R、R、R33、R61は炭素数1〜20のアルキル基であることが好ましく、R31、R32、R62、R63は炭素数1〜20のアルキレン基であることが好ましい。
特に、部分構造(A23)において、R33、R、Rがメチル基であると、市販の原料からの合成が容易な点で好ましく、その場合の部分構造(A23)はt−ブトキシカルボニル基(Boc基)によって保護された有機基と見なすことができる。
<重合性部分構造>
本発明のフラーレン誘導体が有する置換基(D)、又は置換基(V)に含まれる重合性部分構造としては、重合性を有するものであればよく、特に制限はないが、ラジカル重合に用いることができる点において、重合性二重結合含有部分構造であることが好ましく、この重合性二重結合含有部分構造は、下記式(V)で表される部分構造(以下、「部分構造(V)」と称す場合がある。)であることが好ましい。
Figure 0005987544
(但し、Rは炭素数1〜40の有機基を表し、R、Rは、各々独立に炭素数1〜20の有機基、ハロゲン原子又は水素原子を表し、これらの有機基は任意の置換基を有していてもよい。)
部分構造(V)において、Rの炭素数1〜40の有機基、R、Rの炭素数1〜20の有機基としては後述の<有機基>の項で挙げたものが挙げられるが、Rのビニル基に結合する側の末端が、ハロアルキレン基、ニトロアルキレン基、カルボニル基、芳香環であるとビニル基の重合性が高いため好ましく、カルボニル基、芳香環であると合成が容易なため、特に好ましい。Rは、炭素数1〜6のアルキル基、ハロアルキル基、アリール基、シアノ基、水素原子、ハロゲン原子が好ましく、特に、ハロアルキル基、シアノ基、ハロゲン原子であると重合性が高いため好ましく、メチル基又は水素原子であると合成が容易な点で好ましい。Rは水素原子であると、立体障害が小さく、重合しやすい点で好ましい。
<置換基(D)>
酸解離性部分構造と重合性部分構造とを有する置換基(D)としては、酸解離性部分構造が部分構造(A12)又は部分構造(A22)であり、重合性部分構造が部分構造(V)であるもの合成が容易な点から好ましく、特に下記式(D)又は(D)で表されるものは、後述の[0075]段落に挙げる理由から、より一層好ましい。
Figure 0005987544
(但し、Rは式(A12)におけると同義であり、R、R、R32は式(A22)におけると同義である。Vは下記式の通りである。)
Figure 0005987544
(但し、Rは式(V)におけると同義であるが、なくても構わない。R,Rは式(V)におけると同義である。)
上記の式(D)又は(D)で表される置換基(D)を有するフラーレン誘導体を酸によって分解した場合には、フラーレン骨格を有する部位と重合性基を有する部位へとそれぞれ分解される。また、このようなフラーレン誘導体が有する置換基(D)を利用した重合により得られたポリマーを、酸により分解した場合には、フラーレン骨格を有する部位とポリマーを有する部位へとそれぞれ分解される。これらの分解が起こる際には、分解前と分解後における化合物の物性(有機溶媒、酸及びアルカリへの溶解性など)が大きく変化するので、レジスト用途等に用いる際には好ましい。また、置換基(D)は酸解離性部分構造と重合性部分構造を両方有する置換基として、後述の製造方法により効率的に導入が可能であり、本発明のフラーレン誘導体の合成が容易な点で好ましい。
<置換基(D)、(A)、(V)の数>
本発明のフラーレン誘導体は置換基(D)のみを有していてもよく、置換基(A)と置換基(V)とを有していてもよく、置換基(D)と置換基(A)と置換基(V)とを有していてもよい。
本発明のフラーレン誘導体が有する前述の酸解離性部分構造の数は、好ましくは1〜16個の範囲で何個でもよいが、単一の化合物として合成するためには、12個以下が好ましい。また、酸分解した際におけるフラーレン誘導体の物性の変化の程度を考慮すると、酸解離性部分構造の数は3個以上が好ましく、合成の容易さを考えると10個以下が好ましい。
また、本発明のフラーレン誘導体が有する重合性部分構造の数は、好ましくは1〜10個の範囲で何個でもよいが、合成の容易さを考えると1〜6個が好ましい。特に重合性部分構造が1個の場合は、溶解性に影響する架橋反応を起こすことなく、1個の反応点で選択的に重合反応を行えるため好ましい。
なお、本発明のフラーレン誘導体が、置換基(D)、置換基(A)、置換基(V)を2個以上有する場合、その置換基は同一であっても異なるものであってもよい。
<有機基>
本発明のフラーレン誘導体は、前述の置換基(D)、置換基(A)、置換基(V)以外に、本発明の特徴、効果を損なわない限り、他の任意の置換基を任意の位置に任意の数で有していてもよい。他の置換基としては、本発明のフラーレン誘導体の優れた物性を大幅に損ねるものでなければよく、特に制限はないが、好ましくは炭素数1〜40の有機基が挙げられ、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、複素環基、アルコキシ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エステル基、ハロゲン原子、チオール基、チオエーテル基、アルコキシフェニル基、有機珪素基、或いは、フラーレン骨格上のこれらの基が互いに結合して、フラーレン骨格上の炭素原子と共に環を形成する環状基などが挙げられる。また、これらの置換基は更に置換基を有していてもよく、この置換基としても炭素数1〜40の上記のような有機基が挙げられる。
なお、本発明において、フラーレン誘導体が有する有機基の炭素数とは、当該有機基の置換基が更に置換基を有する場合、その置換基も含めた炭素数を意味する。
上記有機基のうち、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デキル基、ウンデシル基、ドデシル基等の直鎖又は分岐状の鎖状アルキル基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基が挙げられる。アルケニル基としては、ビニル基、プロペニル基、ヘキセニル基等の直鎖又は分岐の鎖状アルケニル基;シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の環状アルケニル基が挙げられる。アルキニル基としては、エチニル基、メチルエチニル基、2−プロピニル基等のアルキニル基が挙げられる。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、トルイル基等が挙げられる。アルコキシフェニル基としては、メトキシフェニル基等が挙げられる。アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。複素環基としては、チエニル基、ピリジル基、フリル基、テトラヒドロピラニル基等が挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。エステル基としては、エチルエステル基、ブチルエステル基などが挙げられる。このうち、溶解度の観点から置換基を有していてもよいアリール基が好ましい。特に置換基として水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、エステル基を有するアリール基が、好ましい。
<置換基数と置換位置>
本発明のフラーレン誘導体の置換基(D)、置換基(A)、置換基(V)及びその他の有機基を含む置換基の数と置換位置としては、好ましくは次のような態様が挙げられる。
即ち、本発明のフラーレン誘導体は、下記(I)で表される部分構造を有し、例えば、一般式[C](R(R)などで表される3重付加フラーレン誘導体、一般式[C](R(R)などで表される5重付加フラーレン誘導体、一般式[C](R(Rなどで表される6重付加フラーレン誘導体、一般式[C](R(Rなどで表される8重付加フラーレン誘導体、一般式[C](R10(Rなどで表される10重付加フラーレン誘導体などが挙げられる。このうち、一般式[C](R(R)で表される5重付加フラーレン誘導体が好ましい。(上記式中の各R及びRは、任意の置換基を有していてもよい炭素数1〜40の有機基を表し、当該R及び/又はRには、少なくとも1以上の置換基(D)、及び/又は少なくとも1組以上の置換基(A)と置換基(V)を含む。)
Figure 0005987544
(上記式(I)中、(C)〜(C)はフラーレン骨格を構成する炭素原子を表し、(C)、(C)〜(C)はそれぞれ置換基と結合している。)
これらのうち、一般式[C](R(R)で表される5重付加フラーレン誘導体、一般式[C](R(Rで表される8重付加フラーレン誘導体及び一般式[C](R10(Rで表される10重付加フラーレン誘導体としては、フラーレン骨格上に以下の式(II)で表される部分構造を有するものが好ましく、一般式[C](R(R)で表される3重付加フラーレン誘導体、一般式[C](R(Rで表される6重付加フラーレン誘導体および一般式[C](R(Rで表される8重付加フラーレン誘導体としては、フラーレン骨格上に前記式(I)で表される部分構造を有するものが好ましい。
Figure 0005987544
(式中、(C)〜(C10)はフラーレン骨格を構成する炭素原子を表し、(C)、(C)〜(C10)はそれぞれ置換基と結合している。)
なお、一般式[C](R(Rで表される6重付加フラーレン誘導体としては、フラーレン骨格上に上記式(I)で表される部分構造を2個、一般式[C](R(Rで表される8重付加フラーレン誘導体としては、フラーレン骨格上に上記式(I)及び式(II)で表される部分構造を1個ずつ、一般式[C](R10(Rで表される10重付加フラーレン誘導体としては、フラーレン骨格上に上記式(II)で表される部分構造を2個有するものが、各々更に好ましい。
本発明のフラーレン誘導体は、より具体的には前記式(I)で表される部分構造を有し、(C)、(C)〜(C)は各々独立に任意の置換基を有していてもよい炭素数1〜40の有機基と結合しており、該有機基に、少なくとも1個以上の置換基(D)、或いは少なくとも1組以上の置換基(A)と置換基(V)が含まれるもの、或いは前記式(II)で表される部分構造を有し、(C)、(C)〜(C10)は各々独立に任意の置換基を有していてもよい炭素数1〜40の有機基と結合しており、該有機基に、少なくとも1個以上の置換基(D)、或いは少なくとも1組以上の置換基(A)と置換基(V)が含まれるものが好ましい。特に、前記式(II)で表される部分構造を有し、(C)は任意の置換基を有していてもよい炭素数1〜40の有機基と結合し、(C)〜(C10)は各々独立に任意の置換基を有していてもよい炭素数6〜40の芳香環と結合しており、かつ、該有機基及び/又は芳香環の中に、少なくとも1以上の前記置換基(D)、又は少なくとも1組以上の前記置換基(A)及び前記置換基(V)を有するもの、特に、(C)に置換基(D)又は置換基(V)を有することにより重合性部分構造を有するもの、例えば、(C)にアルキレン基を介して置換基(A)が結合しており、そこからアルキレン基を介して置換基(V)が結合しており、(C)〜(C10)に任意の置換基を有していてもよい芳香環基が結合しているものが好ましい。また、前記式(II)で表される部分構造を有し、(C)〜(C10)に直接又は連結基を介して置換基(V)が結合しており、(C)に炭素数1〜40の有機基が結合しているもの、例えば、(C)〜(C10)に芳香環基を有する有機基を介して置換基(V)が結合しており、(C)に任意の置換基を有していてもよいアルキル基が結合しているものも好ましい。
<具体例>
本発明のフラーレン誘導体としては、上記の好適態様や後述の実施例で合成されたフラーレン誘導体の他、例えば置換基(D)を有するフラーレン誘導体としては、以下の式(1)〜(10)で表されるフラーレン誘導体などが挙げられる。ただし、本発明のフラーレン誘導体はこれらの例示物に何ら限定されるものではない。
Figure 0005987544
(上記式(1)〜(10)において、FLと書かれた丸はフラーレン骨格を表す。Dは前記置換基(D)を表し、Rは任意の置換基を有していてもよい炭素数1〜40の有機基を表す。ただし、フラーレン骨格FLには、式中に示されていない他の任意の置換基を有していてもよい。)
上記のフラーレン誘導体の中でも、式(1)〜(4)、(6)〜(10)で表されるフラーレン誘導体は溶解度が高いため好ましく、特に式(1)〜(3)、(9)、(10)で表されるフラーレン誘導体は、単一の化合物として合成が容易な点で好ましい。
[フラーレン誘導体の製造方法]
次に、本発明のフラーレン誘導体の製造方法について説明するが、本発明のフラーレン誘導体の製造方法は、以下の方法に限定されるものではない。
本発明のフラーレン誘導体は、フラーレン骨格に対して、置換基(D)、又は置換基(A)と置換基(V)とを導入することにより合成される。フラーレン骨格に置換基(A)と置換基(V)とを導入する場合、これらは、それぞれ独立に導入しても同時に導入してもよい。また、置換基(A)と置換基(V)をそれぞれ独立に導入する場合は、その導入する順序は、どちらが先でもよく、複数回繰り返してもよい。
なお、本発明のフラーレン誘導体の製造工程において、重合性部分構造を有するフラーレン誘導体又は重合性部分構造を有する試薬を用いて反応を行う際には、重合を防止するために重合禁止剤を適宜使用することも可能である。重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、p−メトキシフェノール等のフェノール系重合禁止剤;N,N'−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N'−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N'−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン等のアミン系重合禁止剤;4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−アセトアミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル等のN−オキシル系重合禁止剤が挙げられる。重合禁止剤は、1種を単独で使用することも、2種以上を混合して使用することも可能である。重合禁止剤を使用する場合、その使用量は、特に限定されず、適宜決めればよい。
<アセタール型部分構造の導入>
以下にフラーレン骨格にアセタール型部分構造を導入する反応について説明する。例えば、アセタール型部分構造は以下の方法によってフラーレン骨格に導入することができる。
(A1−1)部分構造(A11)を有する化合物をフラーレン骨格に付加させる方法
(A1−2)ビニルエーテル基を有するフラーレン誘導体とカルボキシル基又は水酸基を有する化合物とを反応させる方法
(A1−3)カルボキシル基又は水酸基を有するフラーレン誘導体とビニルエーテル基又はアセタール基を有する化合物などとを反応させる方法
方法(A1−1)について説明する。
この方法は、部分構造(A11)を有する化合物とフラーレン誘導体を反応させて部分構造(A11)をフラーレン誘導体に導入できれば手法は問わないが、部分構造(A11)を有する有機銅試薬(下記反応式において「Cu−RA11」で表す。RA11は上記の<置換基数と置換位置>の項に示したRのうち、部分構造(A11)が含まれるものを表す。)を用いたフラーレンの5重及び10重付加反応(下記反応式)が、高収率かつ高選択的に進行し、5個及び10個の部分構造(A11)を一度に導入することが可能であるため、好ましい。以下に反応の詳細について述べる。
Figure 0005987544
5重及び10重付加フラーレン誘導体の製造方法は、既に確立されており、フラーレンと有機銅試薬とを反応させて製造することができる。ここで、有機銅試薬は、フラーレン骨格のシクロペンタジエン環に隣接する炭素原子に導入したい基に対応するGrignard試薬、具体的には、RMgCl、RMgBr又はRMgIから選ばれる化合物(式中、Rは前述と同義)と、CuBrなどの1価の銅試薬から調製される。また、後にRに変換できる基を同様の方法で導入した後、その基をRに変換することによって合成することもできる。
具体的な5重及び10重付加フラーレン誘導体の合成条件は、例えば、特開平10−167994号公報、特開平11−255508号公報、特開平11−255509号公報、特開2002−241323号公報、特開2003−146915号公報、特開2003−212881号公報、特開2003−239595号公報Org.Lett.2000,2,1919.、J.Organomet.Chem.2002,652,31、J.Mater.Chem.2002,12,2109.、Org.Lett.2003,5,4461.、J.Am.Chem.Soc.2004,126,432.に記載されている方法などを参照できる。
特に、上記反応を特定の反応溶媒、具体的には、ピリジン類を用いて行うと、上述の6重付加[C70]誘導体、8重付加[C60]誘導体、10重付加[C60]誘導体を製造することができる。
ここで、水酸基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基又はアルコキシカルボニル基等の有機銅試薬の調製が困難又は有機銅試薬との反応を阻害する基を有する原料フラーレン誘導体を合成する場合は、これらの前駆体となる官能基を含むGrignard試薬から有機銅試薬を調製し、これを原料フラーレン誘導体と反応させてから、適当な変換反応で目的とする官能基に変換すればよい。具体的には、目的とする原料フラーレン誘導体が有する官能基が水酸基、アミノ基、チオール基である場合は、メトキシメチル基、エトキシエチル基、テトラヒドロピラニル基などのエーテル型保護基、又はトリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基などの珪素保護基などの保護体で保護するのが好ましく、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基である場合は、オルソエステルなどの前駆体の形で5重及び10重付加反応を行った後、加溶媒分解により目的とする官能基に変換する。
有機銅試薬に含まれる部分構造(A11)は上記の反応が進行すればどんなものでも構わないが、テトラヒドロピラニル基、メトキシメチル基、エトキシエチル基、ベンジロキシメチル基、メチルチオメチル基等であれば、市販の原料から合成が容易なため好ましい。特に、テトラヒドロピラニル基の場合は、有機銅試薬の調製が容易であり、付加反応が進行しやすいので好ましい。尚、テトラヒドロピラニル基が含まれるフラーレン5重及び10重付加体の合成法に関しては、特開2010−24221号公報に記載された方法などを参照できる
方法(A1−2)について説明する。
下記反応式に示すように、置換基(B)で表されるビニルエーテル基を有するフラーレン誘導体とアルコール、フェノールなどの水酸基を有する化合物又はカルボキシル基を有する化合物(以下、「ビニルエーテル反応試薬」と称する)を反応させる方法であり、必要に応じて酸性条件下で反応を実施してもよい。
なお、下記反応式において、R21は前述の部分構造A11におけると同義である。以下においても同様である。
Figure 0005987544
(置換基(B)において、X、Yはそれぞれ独立に任意の置換基を有していてもよい炭素数1〜20の有機基又は水素原子を表す。ただし、置換基(B)で表されるビニルエーテル基を有するフラーレン誘導体のフラーレン骨格は、置換基(B)で表されるビニルエーテル基以外に他の任意の置換基を有していてもよい。X、Yとしては、合成が容易である点で、炭素数1〜4のアルキル基又は水素原子が好ましく、中でも、立体障害が小さく、反応性が高い点で、水素原子がより好ましい。)
この方法で用いられるビニルエーテル基を有するフラーレン誘導体は、フラーレン骨格に直接結合した水素原子を有するフラーレン誘導体に、塩基性条件下、ビニルエーテル基を含む化合物を反応させることにより、合成することができる。
ビニルエーテル反応試薬は、好ましくは1つ以上のカルボキシル基、又は水酸基を有する炭素数1〜40の有機化合物である。具体例を挙げると酢酸、アジピン酸、安息香酸などのカルボン酸、及び、フェノール、クレゾール、カテコールなどのフェノール誘導体、メタノール、エタノール、イソプロパノールといったアルコール類が挙げられる。この中でも、カルボン酸はビニルエーテル基との反応性が高いため、好ましい。反応に用いるビニルエーテル反応試薬の量は、フラーレン誘導体が有するビニルエーテル基の量に対して、通常1〜100当量、好ましくは1〜10当量である。ビニルエーテル反応試薬の使用量が多過ぎると、製造コストの観点から好ましくなく、少な過ぎると十分な反応速度が得られない。
上記反応は無触媒でも進行するが、酸触媒を用いることにより反応を促進できる場合がある。酸触媒としては特に限定されず、無機酸及び有機酸の何れも使用できる。無機酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸などの鉱酸;リンモリブデン酸、ケイモリブデン酸、リンタングステン酸、ケイタングステン酸などのヘテロポリ酸;ゼオライト等の固体触媒などが挙げられる。有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸などのカルボン酸;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などのスルホン酸などが挙げられ、その使用量は触媒の種類によっても異なるが、反応に用いるフラーレン誘導体に対して通常0.1〜10当量程度である。
反応溶媒は、上記の反応が十分な反応速度で進行するものであれば任意であるが、通常、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶媒又はトルエン、ベンゾニトリル、アニソールといった芳香族溶媒が好ましい。特にトルエンは沸点が十分に高く、一般的なフラーレン誘導体を溶解することができるため好ましい。溶媒の使用量は、目的とする反応が十分な反応速度で進行するものであれば任意だが、通常、反応に用いるフラーレン誘導体の質量(g)に対する溶媒の体積(mL)の割合が、1〜500mL/gとなる溶媒量が好ましい。
反応は、通常、ビニルエーテル基を有するフラーレン誘導体とビニルエーテル反応試薬を溶媒に溶解させ、0〜150℃、好ましくは50℃〜130℃で数分〜数十時間、好ましくは5分〜40時間反応させることにより行われる。
通常、反応終了後に、生成した本発明のフラーレン誘導体を反応液から常法により単離する。例えば、イオン交換水を滴下して反応を停止させ、有機層をトルエンなどの有機溶媒で抽出し、溶媒を留去することにより、生成物を単離することができる。得られたフラーレン誘導体は、必要に応じて、晶析、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、カラムクロマトグラフィーなどの手法で精製してもよい。
次に方法(A1−3)について説明する。
下記反応式のように、水酸基又はカルボキシル基を有するフラーレン誘導体に、ビニルエーテル基又はアセタール基を有する化合物或いはハロメチルエーテル化合物等(以下、「アセタール化剤」と称する)を反応させる方法である。
Figure 0005987544
(Lはハロゲン原子、アルコキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基等の脱離性置換基を表す。)
反応に用いるフラーレン誘導体は水酸基又はカルボキシル基を有していればどのようなものでも構わないが、前述の方法で合成可能な5重及び10重付加体であると、合成が容易であり、溶媒に対する溶解性が高いため好ましい。フラーレン誘導体が有する水酸基としては、フェノール性水酸基が反応性が高いため好ましい。
アセタール化剤としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルといったビニルエーテル化合物、アセトンジメチルアセタール、ベンズアルデヒドジメチルアセタールなどのアセタール化合物、クロロメチル−メチルエーテル、クロロメチル−フェニルエーテルなどのハロメチルエーテル化合物が挙げられる。
一般的に、水酸基又はカルボキシル基を有するフラーレン誘導体と、ビニルエーテル化合物、アセタール化合物との反応は酸性条件下で行われる。その際に用いられる酸触媒及びその使用量は、方法(A1−2)における酸触媒及びその使用量と同様である。
一方、水酸基又はカルボキシル基を有するフラーレン誘導体と、ハロメチルエーテル化合物との反応は、一般的に塩基性条件下で行われる。その際に用いられる塩基としては、反応が進行すればどのような塩基を用いてもよいが、例えば、ナトリウムメトキシド、カリウムt−ブトキシド、ナトリウムt−ブトキシド等の金属アルコキシド;ピリジン、2−メチルピリジン、2−メチル−5−エチルピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、2,6−ジメチルピリジンなどの含窒素複素環式芳香族化合物;トリエチルアミン、トリエチレンテトラミン、トリエタノールアミン、ピペラジン、ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンなどのアミン;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウムヒドロキシド;炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水素化カリウム、水素化ナトリウム等の無機塩基などの塩基性化合物が挙げられる。塩基は、通常、フラーレン誘導体が有する水酸基又はカルボキシル基の数に対して、1〜5当量用いられる。塩基の使用量が多過ぎると副反応が起こることがあり、少な過ぎると反応速度又は転化率が不十分になることがある。
方法(A1−3)における反応溶媒及び反応条件(反応温度や反応時間)は、方法(A1−2)に記載したものを適用できる。
<エステル型部分構造の導入>
以下に、エステル型部分構造(A21)をフラーレン骨格に導入する反応について説明する。フラーレン骨格にエステル型部分構造を導入するには、どのような方法を用いてもよいが、3級水酸基を有するフラーレン誘導体を用いてその水酸基をエステル化する方法が簡便で好ましく、エステル化の方法として例えば以下の手法が挙げられる。
(A2−1)フラーレン誘導体が有する3級水酸基とカルボン酸誘導体などのカルボニル基を含む化合物を塩基の存在下に反応させる方法
(A2−2)フラーレン誘導体が有する3級水酸基とカルボン酸などのカルボニル基を含む化合物を、縮合剤の存在下に反応させる方法
方法(A2−1)について説明する。
Figure 0005987544
(Lはハロゲン原子、アルコキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基等の脱離性置換基を表す。R,R,R61は前記式A21におけると同様である。)
この方法で用いるカルボン酸誘導体としては、酢酸クロリド、フェニル酢酸クロリド、安息香酸クロリドなどの酸ハロゲン化物、酸無水物、アミド化合物、エステル化合物などが挙げられる。これらの中でも、入手の容易さと反応性の観点から、酸ハロゲン化物が好ましい。
塩基としては、副生する酸を中和することができるものであれば特に限定されないが、例えば、ナトリウムメトキシド、カリウムt−ブトキシド、ナトリウムt−ブトキシド等の金属アルコキシド;ピリジン、2−メチルピリジン、2−メチル−5−エチルピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、2,6−ジメチルピリジンなどの含窒素複素環式芳香族化合物;トリエチルアミン、トリエチレンテトラミン、トリエタノールアミン、ピペラジン、ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンなどのアミン;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウムヒドロキシド;炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水素化カリウム、水素化ナトリウム等の無機塩基などの塩基性化合物が挙げられる。塩基は、通常、フラーレン誘導体が有する3級炭素に結合する水酸基(以下「3級水酸基」と略記することがある。)の数に対して、1〜5当量用いられる。塩基の使用量が多過ぎると副反応が起こることがあり、少な過ぎると反応速度又は転化率が不十分になることがある。
反応溶媒は、上記の反応が十分な反応速度で進行するものであれば任意であるが、通常、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶媒又はベンゾニトリル、アニソールといった芳香族溶媒、塩化メチレン、クロロホルム等が好ましい。溶媒の使用量は、目的とするエステル化反応が十分な反応速度で進行するものであれば任意だが、通常、原料フラーレン誘導体の質量(g)に対する溶媒の体積(mL)の割合が、1〜500mL/gとなる溶媒量が好ましい。
反応は、通常、3級水酸基を有するフラーレン誘導体、カルボン酸誘導体、塩基を溶媒に溶解させ、0〜150℃、好ましくは50℃〜130℃で数分〜数十時間、好ましくは5分〜40時間反応させることにより行われる。
通常、反応終了後に、生成したフラーレン誘導体を反応液から常法により単離する。例えば、イオン交換水を滴下して反応を停止させ、有機層をトルエンなどの有機溶媒で抽出し、溶媒を留去することにより、生成物を単離することができる。得られたフラーレン誘導体は、必要に応じて、晶析、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、カラムクロマトグラフィーなどの手法で精製してもよい。
方法(A2−2)について説明する。
この方法で用いるカルボン酸としては、特に限定されるものではなく、酢酸、安息香酸、アジピン酸、テレフタル酸などが挙げられるが、単一の化合物として目的物を得るためには、酢酸や安息香酸等のモノカルボン酸が好ましい。
Figure 0005987544
(R31,R,R,R61は前述の部分構造A21におけるものと同様である。)
縮合剤としては特に限定されないが、例えばDCC(N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド)、EDC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)、HATU(O−(ベンゾトリアゾル−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩)、DPPA(ジフェニルリン酸アジド)等の市販の一般的な試薬をそのまま使用することができる。また、活性化剤としてジメチルアミノピリジン等を添加してもよい。
方法(A2−2)における反応溶媒及び反応条件(反応温度や反応時間)は、方法(A2−1)に記載したものを同様に適用できる。
次に、エステル型部分構造(A23)の導入法について説明する。
この方法は、水酸基又はカルボキシル基を有するフラーレン誘導体に対して3級エステル基を有する化合物(以下、「3級エステル化剤」と称する)を反応させる方法である。
Figure 0005987544
(Lはハロゲン原子、アルコキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基等の脱離性置換基を表す。また、R,R,R33は、前述の部分構造A23におけるものと同様である。)
反応に用いるフラーレン誘導体は水酸基又はカルボキシル基を有していればどのようなものでも構わないが、前述の方法で合成可能な5重及び10重付加体であると、合成な容易であり、溶媒に対する溶解性が高いため好ましい。また、フラーレン誘導体が有する水酸基としては、フェノール性水酸基が、反応性が高いため好ましい。
3級エステル化剤としては、例えば二炭酸t−ブチル(BocO)、t−ブトキシカルボニルクロライド(BocCl)等のt−ブトキシカルボニル化(Boc化)試薬;ブロモ酢酸t−ブチル、ブロモ酢酸(2−メチル−2−アダマンチル)などのブロモ酢酸3級エステルが挙げられる。
フラーレン誘導体の水酸基又はカルボキシル基と3級エステル化剤との反応は、一般的に塩基性条件下行われる。この際に用いる塩基としては、反応が進行すればどのような塩基でもよいが、例えば、ナトリウムメトキシド、カリウムt−ブトキシド、ナトリウムt−ブトキシド等の金属アルコキシド;ピリジン、2−メチルピリジン、2−メチル−5−エチルピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、2,6−ジメチルピリジンなどの含窒素複素環式芳香族化合物;トリエチルアミン、トリエチレンテトラミン、トリエタノールアミン、ピペラジン、ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンなどのアミン;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウムヒドロキシド;炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水素化カリウム、水素化ナトリウム等の無機塩基などの塩基性化合物が挙げられる。塩基は、通常、フラーレン誘導体が有する水酸基又はカルボキシル基の数に対して、1〜5当量用いられる。塩基の使用量が多過ぎると副反応が進行することがあり、少な過ぎると反応速度又は転化率が不十分になることがある。
この反応における反応溶媒及び反応条件(反応温度や反応時間)は、方法(A1−2)に記載したものを同様に適用できる。
<置換基Vの導入>
以下にフラーレン骨格に重合性部分構造を導入する反応について説明する。重合性部分構造を導入する方法に関しては、重合性部分構造をフラーレン誘導体に導入できればどのような方法でも構わないが、水酸基やカルボキシル基等の置換基を有するフラーレン誘導体の当該置換基に対して、部分構造(V)を有する化合物(以後、重合性置換基導入試薬と称する)を反応させる方法が好ましい。
Figure 0005987544
(Lはハロゲン原子、アルコキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基等の脱離性置換基を表す。)
反応に用いるフラーレン誘導体は水酸基又はカルボキシル基を有していればどのようなものでも構わないが、前述の方法で合成可能な5重及び10重付加体であると、合成な容易であり、溶媒に対する溶解性が高いため好ましい。また、フラーレン誘導体が有する水酸基としては、フェノール性水酸基が、反応性が高いため好ましい。
重合性置換基導入試薬としては、例えばビニルブロミド、アリルクロリド、アリルブロミド、クロチルブロミド等の不飽和ハロゲン化アルキル;アクリル酸クロリド、アクリル酸無水物、メタクリル酸クロリド等の不飽和カルボン酸誘導体等が挙げられるが、導入できる重合性置換基の重合性が高いことから、アクリル酸クロリドやメタクリル酸クロリドが好ましい。
フラーレン誘導体の水酸基又はカルボキシル基と重合性置換基導入試薬との反応は、一般的に塩基性条件下行われる。用いる塩基や反応条件は、上記のエステル型部分構造(A23)の導入法に記載したものと同様である
<置換基Dの導入>
酸解離性部分構造と重合性部分構造とを有する置換基Dの導入には、どのような方法を用いてもよいが、前述の置換基Aの導入法及び置換基Vの導入法を応用することができる。以下に置換基D及びDに分けて、置換基Dの導入法について説明する。
<置換基Dの導入>
置換基Dを有するフラーレン誘導体にするのにどのような方法を用いてもよいが、置換基Dの合成には、前述の<アセタール型部分構造の導入>及び<置換基Vの導入>の項に記載の方法を応用することが可能である。特に下記式のような、ビニルエーテル基を有するフラーレン誘導体のビニルエーテル基に対して、部分構造(V)を有するアルコールやカルボン酸(以下、置換基D導入試薬と称する)を反応させる方法が、合成が容易な点で好ましい。
Figure 0005987544
(置換基(B)において、X、Yはそれぞれ独立に任意の置換基を有していてもよい炭素数1〜20の有機基又は水素原子を表す。ただし、置換基(B)で表されるビニルエーテル基を有するフラーレン誘導体のフラーレン骨格は、置換基(B)で表されるビニルエーテル基以外に他の任意の置換基を有していてもよい。X、Yとしては、合成が容易である点で、炭素数1〜4のアルキル基又は水素原子が好ましく、中でも、立体障害が小さく、反応性が高い点で、水素原子がより好ましい。)
置換基D導入試薬は、1個以上の置換基V(V)と、1個以上のカルボキシル基又は水酸基の両方を有する炭素数1〜40の有機化合物である。具体例を挙げるとアクリル酸、メタクリル酸、トリフロロメタクリル酸、p−ビニル安息香酸などのカルボン酸、及び、4−ビニルフェノール、4−ビニルクレゾールなどのフェノール誘導体、1−ブテン−4−オール、1−ヘキセン−6−オールといったアルコール類が挙げられる。この中でも、アクリル酸、メタクリル酸、トリフロロメタクリル酸、p−ビニル安息香酸などのカルボン酸は、ビニルエーテル基との反応性が高いため、好ましい。特にアクリル酸、メタクリル酸、p−ビニル安息香酸は、合成が容易なため好ましい。反応に用いる置換基D導入試薬の量は、フラーレン誘導体が有するビニルエーテル基の量に対して、通常1〜100当量、好ましくは1〜10当量である。置換基D導入試薬の使用量が多過ぎると、製造コストの観点から好ましくなく、少な過ぎると十分な反応速度が得られない。
ビニルエーテル基を有するフラーレン誘導体の合成、触媒、反応溶媒、反応条件、精製法に関しては、前述の方法A1−2に項に記載したものを同様に適用できる。
<置換基Dの導入>
置換基Dを有するフラーレン誘導体にするのにどのような方法を用いてもよいが、置換基Dの合成には、前述の<エステル型部分構造の導入>及び<置換基Vの導入>の項に記載の方法を応用することが可能である。特に下記式のような、水酸基等の置換基を有するフラーレン誘導体の当該置換基に対して、部分構造(V)とカルボニル基を有する化合物(以下、置換基D導入試薬と称する)を反応させる方法が、合成が容易な点で好ましい。
Figure 0005987544
(Lはハロゲン原子、アルコキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基等の脱離性置換基を表す。)
置換基D導入試薬は、1個以上の置換基Vと1個以上のカルボニル基を有する炭素数1〜40の有機化合物である。置換基D導入試薬は、水酸基等との反応性を有するものであればどのようなものでも構わないが、アクリル酸クロリド、メタクリル酸クロリド、ビニル安息香酸クロリド、シアノアクリル酸クロリド等の不飽和カルボン酸誘導体を用いた場合には、重合性が高いフラーレン誘導体を合成できるため好ましい。反応に用いる置換基D導入試薬の量は、フラーレン誘導体が有する水酸基の量に対して、通常1〜100当量、好ましくは1〜10当量である。置換基D導入試薬の使用量が多過ぎると、製造コストの観点から好ましくなく、少な過ぎると十分な反応速度が得られない。
反応条件、反応条件、精製法に関しては、前述の方法(A2−1)の項に記載したものを同様に適用できる。
[フラーレン誘導体の用途]
本発明のフラーレン誘導体の用途のうち、幾つかの代表的な用途に関して以下に具体的に説明するが、本発明のフラーレン誘導体の機能が発揮できる用途は、以下に例示したものに限定されるものではない。
本発明のフラーレン誘導体は、単独での重合及び他の重合性化合物との共重合反応を行うことにより、ポリマーを合成することができる。その際の重合条件としては、塩基条件下におけるアニオン重合、ラジカル開始剤を用いたラジカル重合、金属触媒を用いた配位−挿入による重合等が挙げられるが、合成の容易さやコストを考慮すると、ラジカル重合が好ましい。ラジカル重合反応の手法としては、溶液重合、塊状重合、懸濁重合、塊状−懸濁重合、乳化重合など、本発明のフラーレン誘導体を分解・劣化させない限り、特に限定されず、例えばアクリル系ポリマー等を製造する際に用いる慣用の方法により行うことができる
本発明のフラーレン誘導体を単独で重合してなるポリマー又は他の重合性化合物とを共重合してなるポリマーは、化学増幅型レジスト用のポリマー等に有用である。本発明のフラーレン誘導体と共重合させることができる他の重合性化合物の具体例としては、例えば下記の化学式で示される化合物などが挙げられるが、特にこれらに限定されない。
Figure 0005987544
重合溶媒としては公知の溶媒を使用することができ、例えば、エーテル(ジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等グリコールエーテル類などの鎖状エーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテルなど)、エステル(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなど)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなど)、アミド(N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなど)、スルホキシド(ジメチルスルホキシドなど)、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノールなど)、炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素など)、これらの混合溶媒などが挙げられる。
また、例えばラジカル重合開始剤としては公知の重合開始剤を使用できる。例えばt−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド化合物、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチル−α−クミルペルオキシドなどのジアルキルペルオキシド化合物、ベンゾイルペルオキシド、ジイソブチリルペルオキシドなどのジアシルペルオキシド化合物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレートなどのアゾ化合物などが挙げられる。
重合温度は、例えば30〜150℃程度の範囲で適宜選択できる。
重合により得られたポリマーは、沈殿又は再沈殿により精製できる。沈殿又は再沈殿溶媒は有機溶媒及び水の何れであってもよく、また混合溶媒であってもよい。沈殿又は再沈殿溶媒として用いる有機溶媒として、例えば、炭化水素(ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素など)、ハロゲン化炭化水素(塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化脂肪族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素など)、ニトリル(アセトニトリル、ベンゾニトリルなど)、エーテル(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタンなどの鎖状エーテル;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテルなど)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトンなど)、エステル(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、カーボネート(ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなど)、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなど)、カルボン酸(酢酸など)、これらの混合溶媒等が挙げられる。
本発明のフラーレン誘導体を用いて得られた重合体は、通常フォトレジストに使用される有機溶媒への溶解度が高いことにより、上記重合体単独でもレジスト膜を形成することが可能である。更に、高耐熱性、高エッチング耐性を有し、エッジラフネスの低減や、高解像度のフォトレジストの再現が可能となる。また、反射防止膜としての機能も有することより、多層膜の一層としても優れた機能を発揮することが期待される。
半導体製造等の分野では、500μm以下の微細パターンを生産効率良く形成する方法として、ナノインプリント法が検討されている。ナノインプリント法とは、微細パターンを有するモールドのパターンを転写層に転写する微細パターンの形成方法である。
ナノインプリント法としては、熱可塑性重合体からなる転写層を加熱して軟化させる工程、転写層とモールドを圧着してモールドのパターンを転写層に形成する工程、モールドを転写層から離脱させる工程を順次行なう方法、硬化性単量体からなる転写層をモールドに接触させる工程、硬化性単量体を硬化させる工程、硬化性単量体の硬化物からモールドを離脱させる工程を順次行なう方法等が知られている。
本発明のフラーレン誘導体は、上記重合体に通常使用される有機溶媒への溶解度が高いことより、特殊な溶媒を用いることなく上記重合体に高濃度で充填することが可能である。また、有機溶媒に対する溶解性が高いために、重合体中での凝集が抑制され、分子状での分散となることから高解像度を実現することが可能となる。
更に、機械的強度向上効果、耐熱性向上効果が大きく、耐エッチング耐性にも優れることにより、従来のナノインプリント材料の特性を大幅に改善することが可能である。
また、近年、コンピュータの中央処理装置(CPU)用回路基盤には、樹脂薄膜を層間絶縁膜とする高密度且つ微細な多層配線に適した樹脂薄膜配線が適用されるようになってきた。将来、より高速な処理能力を有するコンピュータを実現するために、高密度かつ繊細な多層配線を活かし、且つ信号の高速伝播に適した低誘電率絶縁材料の開発が求められている。
本発明のフラーレン誘導体は、上記用途に使用される有機溶媒への溶解度が高いことより、特殊な溶媒を用いることなく、より高濃度で他の材料と複合化することが可能であり、またフラーレン誘導体単独で成膜することも可能である。
また、本発明のフラーレン誘導体は、フラーレン構造が本質的に有する高抵抗、低誘電率の性質を保持しており、複合化して用いる際にはフィラーとしての機械的強度の向上効果を有することにより、従来にない優れた性能の低誘電率の層間絶縁膜の実現が可能となる。
また、本発明のフラーレン誘導体は有機太陽電池の分野においても有用である。即ち、有機太陽電池は、シリコン系の無機太陽電池と比較して優位な点が多数あるものの、エネルギー変換効率が低く、実用レベルに達していない等の課題があった。この課題を克服するためのものとして、最近、電子供与体である導電性高分子と、電子受容体であるフラーレン又はフラーレン誘導体とを混合した活性層を有するバルクヘテロ接合型有機太陽電池が提案されている。この技術では、導電性高分子とフラーレン誘導体とが分子レベルで混じり合う結果、非常に大きな界面を作り出すことに成功し、変換効率の大幅な向上が実現されている。
本発明のフラーレン誘導体は、上記用途で使用される有機溶媒への溶解度が高いことより、p型半導体と効率的なバルクへテロ接合構造を構成することが容易であり、かつ、本質的にn型半導体としてのフラーレンの性質は保持していることから、極めて高性能な有機太陽電池の実現が可能となる。
また、本発明のフラーレン誘導体は、有機半導体分野における応用も可能である。即ち、光センサー、整流素子等への応用が期待できる電界効果トランジスタの有機材料として、フラーレン及びフラーレン誘導体を使用することが研究されている。一般的に、電界効果トランジスタの有機材料としてフラーレン及びフラーレン誘導体を用いた場合は、n型電界効果トランジスタとして機能することが知られている。
本発明のフラーレン誘導体は、上記用途で使用される有機溶媒への溶解度が高いことにより、塗布による成膜が容易であり、且つ、n型半導体としてのフラーレンの本質的な性質は保持していることから、低コスト、高性能な有機半導体として期待できる。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は何ら以下の実施例に限定されるものではない。
Figure 0005987544
以下において、「THP」はテトラヒドロピラニル基を表す。
また、以下において、生成物のHPLC分析は以下の条件で行った。
カラム種類:ODS
カラムサイズ:150mm×4.6mmφ
溶離液:トルエン/メタノール=3/7
検出器:UV290nm
[実施例1:フラーレン誘導体(M−1)の製造]
Figure 0005987544
フラーレン誘導体(F−1)(0.20g 0.14mmol)のトルエン溶液(4mL)にアクリル酸(30mg 0.414mmol)を25℃で加え、80℃で6時間攪拌した。その後、イオン交換水(0.1mL)で反応を停止させ、トルエン/水の分液操作によって有機層を抽出した。その後、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水、及びイオン交換水で洗浄し、硫酸ナトリウムにより乾燥した後、溶媒をエバポレーターによって除去した。その後、目的物をトルエン2mLに溶かした溶液を、メタノール200mLに滴下することによって晶析を行った結果、フラーレン誘導体(M−1)を赤色固体(0.18g 0.12mmol 収率85%)として得た。得られたフラーレン誘導体(M−1)を1H−NMR、HPLCにて同定した。
以下に得られたフラーレン誘導体(M−1)の機器分析データを示す。
H NMR (400Hz 溶媒:CDCl):0.8〜1.8(m,23H),3.52(t,2H,C OCHCHO),3.75(s,3H,OC ),3.82(s,12H,OC ),5.81(d,1H,CH=C ),6.03(q,1H,CHOCCHO),6.13(dd,1H,CH=CH),6.48(d,1H,CH=C ),6.68(d,2H,C),6.83(d,8H,C),7.24(d,2H,C),7.65(dd,8H,C).
得られたフラーレン誘導体(M−1)のトルエン溶液をHPLC測定した結果、リテンションタイム9.7minに94%(Area%)のピークが観測された。
[実施例2:フラーレン誘導体(M−2)の製造]
Figure 0005987544
フラーレン誘導体(F−2)(0.20g 0.11mmol)のトルエン溶液(4mL)にアクリル酸(24mg 0.33mmol)を25℃で加え、80℃で7時間攪拌した。その後、イオン交換水(0.1mL)で反応を停止させ、トルエン/水の分液操作によって有機層を抽出した。その後、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水、及びイオン交換水で洗浄し、硫酸ナトリウムにより乾燥した後、溶媒をエバポレーターによって除去した。その後、目的物をトルエン2mLに溶かした溶液を、メタノール200mLに滴下することによって晶析を行った結果、フラーレン誘導体(M−2)を赤色固体(0.17g 0.09mmol 収率82%)として得た。得られたフラーレン誘導体(M−2)を1H−NMR、HPLCにて測定した。
以下に得られたフラーレン誘導体(M−2)の機器分析データを示す。
H NMR (400Hz 溶媒:CDCl):0.8〜1.8(m,36H),3.51(t,2H,C OCHCHO),3.5〜3.7(m,5H,OC CH(THP中)),3.8〜4.0(m,5H,OC CH(THP中)),5.3〜5.5(m,5H(THP中))5.84(d,1H,CH=C ),6.00(q,1H,CHOCCHO),6.12(dd,1H,CH=CH),6.44(d,1H,CH=C )6.81(d,2H,C),6.83(d,8H,C),7.24(d,2H,C),7.65(dd,8H,C).
得られたフラーレン誘導体(M−2)のトルエン溶液をHPLC測定した結果、リテンションタイム12.9minに81%(Area%)のピークが観測された。
[実施例3:フラーレン誘導体(M−3)の製造]
Figure 0005987544
フラーレン誘導体(F−3)(0.20g 0.12mmol)のトルエン溶液(4mL)にアクリル酸(26mg 0.36mmol)を25℃で加え、80℃で6時間攪拌した。その後、イオン交換水(0.1mL)で反応を停止させ、トルエン/水の分液操作によって有機層を抽出した。その後、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水、及びイオン交換水で洗浄し、硫酸ナトリウムにより乾燥した後、溶媒をエバポレーターによって除去した。その後、目的物をトルエン2mLに溶かした溶液を、メタノール200mLに滴下することによって晶析を行った結果、フラーレン誘導体(M−3)を赤色固体(0.15g 0.08mmol 収率68%)として得た。得られたフラーレン誘導体(M−3)を1H−NMR、HPLCにて測定した。
以下に得られたフラーレン誘導体(M−3)の機器分析データを示す。
H NMR (400Hz 溶媒:CDCl):0.8〜1.8(m,22H),3.48(t,2H,C OCHCHO),3.5〜3.7(m,5H,OC CH(THP中)),3.8〜4.0(m,5H,OC CH(THP中)),5.3〜5.5(m,5H(THP中))5.83(d,1H,CH=C ),6.04(q,1H,CHOCCHO),6.09(dd,1H,CH=CH),6.46(d,1H,CH=C )6.83(d,2H,C),6.85(d,8H,C),7.25(d,2H,C),7.67(dd,8H,C).
得られたフラーレン誘導体(M−3)のトルエン溶液をHPLC測定した結果、リテンションタイム11.6minに71%(Area%)のピークが観測された。
[実施例4:フラーレン誘導体(M−4)の製造]
Figure 0005987544
フラーレン誘導体(F−2)(0.20g 0.11mmol)のトルエン溶液(4mL)にp−ビニル安息香酸(49mg 0.33mmol)を25℃で加え、100℃で7時間攪拌した。その後、イオン交換水(0.1mL)で反応を停止させ、トルエン/水の分液操作によって有機層を抽出した。その後、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水、及びイオン交換水で洗浄し、硫酸ナトリウムにより乾燥した後、溶媒をエバポレーターによって除去した。その後、目的物をトルエン2mLに溶かした溶液を、メタノール200mLに滴下することによって晶析を行った結果、フラーレン誘導体(M−4)を赤色固体(0.19g 0.10mmol 収率89%)として得た。得られたフラーレン誘導体(M−4)を1H−NMR、HPLCにて測定した。
以下に得られたフラーレン誘導体(M−4)の機器分析データを示す。
H NMR (400Hz 溶媒:CDCl):0.8〜1.8(m,36H),3.51(t,2H,C OCHCHO),3.5〜3.7(m,5H,OC CH(THP中)),3.8〜4.0(m,5H,OC CH(THP中)),5.3〜5.5(m,5H(THP中)),5.41(d,1H,CH=C ),5.84(d,1H,C=CH),6.18(q,1H,CHOCCHO),6.72(dd,1H,CH=CH),6.81(d,2H,C),6.83(d,8H,Ar),7.24(d,2H,C),7.40(d,2H,C CH=CH),7.65(dd,8H,C),8.02(d,2H,C CH=CH).
得られたフラーレン誘導体(M−4)のトルエン溶液をHPLC測定した結果、リテンションタイム13.2minに75%(Area%)のピークが観測された。
[実施例5:フラーレン誘導体(M−5)の製造]
Figure 0005987544
[C60](4−OTHP−CH(2.00g 1.24mmol)のベンゾニトリル溶液(15mL)にカリウムt−ブトキシド(1.49mmol)を25℃で加えた。同温度で20分攪拌したところ、反応溶液が黒色の均一溶液に変化した。続いて、1−ブロモ−5,5−ジメチル−5−ペンタノール(2.48mmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(2.48mmol)を加え、100℃まで加熱し、13時間攪拌した。その後、イオン交換水(0.1mL)で反応を停止させ、反応溶媒をエバポレーターによって除去した。活性アルミナを用いたフラッシュクロマトグラフィー(溶離液 トルエン:酢酸エチル=100:1)に通し、溶離液をエバポレーターにて除去した。その後、得られた固体をトルエン10mLに溶かした溶液を、メタノール400mLに滴下することによって晶析を行った結果、フラーレン誘導体(F−4)を赤色固体(1.90g 1.10mmol 収率89%)として得た。得られたフラーレン誘導体(F−4)を1H−NMR、HPLCにて測定した。
以下に得られたフラーレン誘導体(F−4)の機器分析データを示す。
H NMR (400Hz 溶媒:CDCl):1.11(s,6H,C ),1.3〜2.0(m,38H),3.5〜3.7(m,5H,OC CH(THP中)),3.8〜4.0(m,5H,OC CH(THP中)),5.3〜5.5(m,5H(THP中)),6.81(d,2H,C),6.92(m,8H,C),7.24(d,2H,C),7.67(m,8H,C
得られたフラーレン誘導体(F−4)をHPLC測定した結果、リテンションタイム10.3minに93%(Area%)のピークが観測された。
得られたフラーレン誘導体(F−4)(0.10g 0.058mmol)のテトラヒドロフラン溶液(5mL)にトリエチルアミン(0.23mmol)、アクリル酸クロリド(0.12mmol)を0℃で加え、反応溶液を室温で19時間攪拌した。その後、イオン交換水(0.2mL)で反応を停止させ、反応溶媒をエバポレーターによって除去した。続いて、反応物をトルエン100mLに溶解し、イオン交換水100mLで3回洗浄した。硫酸ナトリウムによる乾燥を行った後に、溶媒をエバポレーターで約1mLまで除去し、メタノール300mLに滴下することによって晶析を行った。その結果、フラーレン誘導体(M−5)を赤色固体(0.10g 0.056mmol 収率97%)として得た。得られたフラーレン誘導体(M−5)を1H−NMR、HPLCにて測定した。
以下に得られたフラーレン誘導体(M−5)の機器分析データを示す。
H NMR (400Hz 溶媒:CDCl):1.35(s,6H,C ),1.3〜2.0(m,38H),3.5〜3.7(m,5H,OC CH),3.8〜4.0(m,5H,OC CH),5.3〜5.5(m,5H),5.72(d,1H,COCH=C ),6.05(dd,1H,COC=CH),6.30(d,1H,COCH=C ),6.81(d,2H,C),6.92(m,8H,C),7.24(d,2H,C),7.67(m,8H,C
得られたフラーレン誘導体(M−5)をHPLC測定した結果、リテンションタイム12.1minに88%(Area%)のピークが観測された。
[実施例6:フラーレン誘導体(M−6)の製造]
Figure 0005987544
[C60](4−OTHP−CH(2.00g 1.24mmol)のベンゾニトリル溶液(15mL)にカリウムt−ブトキシド(1.49mmol)を25℃で加えた。同温度で20分攪拌したところ、反応溶液が黒色の均一溶液に変化した。続いて、1−ブロモ−5,5−ジメチル−5−ペンタノール(2.48mmol)及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(2.48mmol)を加え、100℃まで加熱し、13時間攪拌した。その後、イオン交換水(0.1mL)で反応を停止させ、酢酸エチル100mLと1N塩酸100mLを加え、室温で攪拌した。その後、有機層を抽出し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、イオン交換水で洗浄した後、硫酸ナトリウムにより乾燥し、溶媒をエバポレーターによって除去した。その後、得られた固体をトルエン10mLに溶かした溶液を、メタノール400mLに滴下することによって晶析を行った結果、[C60](4−OH−C((CHC(CHOH)を赤色固体として得た。得られた固体のテトラヒドロフラン溶液(60mL)にトリエチルアミン(30.6mmol)、二炭酸t−ブチル(9.18mmol)、ジメチルアミノピリジン(0.3g)を0℃で加え、反応溶液を室温で24時間攪拌した。その後、イオン交換水(10mL)で反応を停止させ、反応溶媒をエバポレーターによって除去した。続いて、反応物をトルエン100mLに溶解し、1N塩酸、イオン交換水で洗浄し、溶媒を除去した。次にシリカゲルを用いたフラッシュクロマトグラフィー(溶離液 トルエン:酢酸エチル=100:1)に通し、溶離液をエバポレーターにて除去した。その後、得られた固体をトルエン10mLに溶かした溶液を、メタノール400mLに滴下することによって晶析を行った結果、フラーレン誘導体(F−5)を赤色固体(1.69g 0.94mmol 収率75%)として得た。得られたフラーレン誘導体(F−5)を1H−NMR、HPLCにて測定した。
以下に得られたフラーレン誘導体(F−5)の機器分析データを示す。
H NMR (400Hz 溶媒:CDCl):1.10(s,6H,C ),1.3〜1.6(m,8H),1.56(s,9H,tBu),1.59(s,18H,tBu),1.60(s,18H,tBu),6.99(d,2H,C),7.14(m,8H,C),7.32(d,2H,C),7.70(m,8H,C
得られたフラーレン誘導体(F−5)をHPLC測定した結果、リテンションタイム7.4minに94%(Area%)のピークが観測された。
得られたフラーレン誘導体(F−5)(0.10g 0.055mmol)のテトラヒドロフラン溶液(5mL)にトリエチルアミン(0.22mmol)、アクリル酸クロリド(0.11mmol)を0℃で加え、反応溶液を室温で2時間攪拌した。その後、イオン交換水(0.2mL)で反応を停止させ、反応溶媒をエバポレーターによって除去した。続いて、反応物をトルエン100mLに溶解し、1N塩酸、イオン交換水で洗浄した。硫酸ナトリウムによる乾燥を行った後に、溶媒をエバポレーターで約1mLまで除去し、メタノール300mLに滴下することによって晶析を行った。その結果、フラーレン誘導体(M−6)を赤色固体(0.08g 0.043mmol 収率78%)として得た。得られたフラーレン誘導体(M−6)を1H−NMR、HPLCにて測定した。
以下に得られたフラーレン誘導体(M−6)の機器分析データを示す。
H NMR (400Hz 溶媒:CDCl):1.40(s,6H,C ),1.3〜1.6(m,8H),1.51(s,9H,tBu),1.56(s,18H,tBu),1.58(s,18H,tBu),5.74(d,1H,COCH=C ),6.05(dd,1H,COC=CH),6.29(d,1H,COCH=C ),7.00(d,2H,C),7.14(m,8H,C),7.30(d,2H,C),7.72(m,8H,C
得られたフラーレン誘導体(M−6)をHPLC測定した結果、リテンションタイム8.4minに94%(Area%)のピークが観測された。

Claims (7)

  1. 酸解離性部分構造と重合性部分構造とを有する置換基(D)を有する酸解離型重合性フラーレン誘導体であって、
    フラーレン骨格が下記式(II)で表される部分構造を有し、
    前記置換基(D)は下記式(D )又は(D )で表されることを特徴とする酸解離型重合性フラーレン誘導体(ただし、下記式(D )が−O−CH −O−CH =CH であり、下記式(II)におけるC とブチレン基を介して結合する場合に、下記式(II)におけるC 〜C 10 と結合する置換基を有していてもよい炭素数6〜40の芳香環がメトキシフェニル基である場合を除く。)。
    Figure 0005987544
    (式中、C 〜C 10 はフラーレン骨格を構成する炭素原子を表し、C はアルキレン基を介して前記置換基(D)と結合し、C 〜C 10 は各々独立に置換基を有していてもよい炭素数6〜40の芳香環と結合している。C 〜C 10 と結合する炭素数6〜40の芳香環が置換基を有する場合、その置換基は、下記式(A 11 )で表される酸解離性置換基、水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基又はエステル基である。)
    Figure 0005987544
    (但し、R とR 21 は相互に結合して環を形成しており、形成される環は、R とR 21 との間の−C−O−を炭素数2〜10のアルキレン基で結合する環である。)
    Figure 0005987544
    (但し、R はメチル基又は水素原子を表し、R 32 は炭素数1〜20のアルキレン基を表し、R 、R は各々独立に炭素数1〜20のアルキル基である。V は下記式の通りである。)
    Figure 0005987544
    (但し、R はカルボニル基及び/又は芳香環基を表すが、なくてもよい。R は炭素数1〜6のアルキル基、ハロアルキル基、シアノ基、ハロゲン原子又は水素原子を表し、R は水素原子を表す。)
  2. 前記式(V )において、Rが、メチル基又は水素原子であることを特徴とする請求項に記載の酸解離型重合性フラーレン誘導体。
  3. が水素原子であることを特徴とする請求項に記載の酸解離型重合性フラーレン誘導体。
  4. フラーレン誘導体一分子中に、前記重合性部分構造を1個有することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の酸解離型重合性フラーレン誘導体。
  5. フラーレン骨格がフラーレンC60であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の酸解離型重合性フラーレン誘導体。
  6. 下記式(B)で表されるビニルエーテル基を有するフラーレン誘導体に、化合物 −OH又はV −C(O)OH(ただし、V は前記式(V )で表される。)を反応させることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の酸解離型重合性フラーレン誘導体の製造方法。
    Figure 0005987544
    (上記式(B)において、X、Yはそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基又は水素原子を表す。)
  7. −CR OH(ただし、R 、R は式(D )におけると同義である。)で表される3級水酸基を有するフラーレン誘導体に、化合物 −C(O)−V (ただし、L はハロゲン原子、アルコキシ基、スルホニルオキシ基又はアミノ基を表し、V は、前記式(V )で表される。)を反応させることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の酸解離型重合性フラーレン誘導体の製造方法。
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