JP5119732B2 - フラーレン誘導体及びその製造方法 - Google Patents

フラーレン誘導体及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5119732B2
JP5119732B2 JP2007125884A JP2007125884A JP5119732B2 JP 5119732 B2 JP5119732 B2 JP 5119732B2 JP 2007125884 A JP2007125884 A JP 2007125884A JP 2007125884 A JP2007125884 A JP 2007125884A JP 5119732 B2 JP5119732 B2 JP 5119732B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
group
fullerene derivative
fullerene
formula
present
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2007125884A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2008280290A (ja
Inventor
公徳 川上
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Chemical Corp
Original Assignee
Mitsubishi Chemical Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Chemical Corp filed Critical Mitsubishi Chemical Corp
Priority to JP2007125884A priority Critical patent/JP5119732B2/ja
Publication of JP2008280290A publication Critical patent/JP2008280290A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5119732B2 publication Critical patent/JP5119732B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)

Description

本発明は、新規のハロゲン含有フラーレン誘導体及びその製造方法に関するものである。詳しくは、フラーレン骨格上に特定のハロゲン原子を含有したフェノール基を部分構造として有するフラーレン誘導体およびその製造方法に関するものである。
1990年にC60の大量合成法が確立されて以来、フラーレンに関する研究が精力的に展開されている。その結果、数多くのフラーレン誘導体が合成され、その多様な機能が明らかにされてきた。それに伴い、各種用途開発が進められている。
フラーレン誘導体の中でも特に、フラーレン骨格の下記式(VIII)、並びに、後述する式(I)、(IV)及び(VI)で表わされる部分構造において、C6〜C10のうち3つの炭素原子(例えばC6〜C8)に置換基が付加された部分構造(これを適宜「3重付加部分構造」という場合がある。)や、C6〜C10の全てに置換基が付加された部分構造(これを適宜「5重付加部分構造」という場合がある。)を有するフラーレン誘導体が種々合成され、報告されている。
Figure 0005119732
上記式(VIII)中、C1〜C10は何れも、フラーレン骨格を構成する炭素原子を表わす。
なお、以下の記載では、上記式(VIII)、並びに、後述する式(I)、(IV)及び(VI)で表わされる部分構造のC1〜C10で表わされる炭素原子を、単に「C1」〜「C10」で表わす場合がある。
また、以下の記載では、上述の3重付加部分構造及び/又は5重付加部分構造においてC6〜C10に結合する置換基を「付加置換基」という場合がある。
また、上述の3重付加部分構造及び/又は5重付加部分構造を有するフラーレン誘導体を、付加置換基の総数に応じて呼ぶ場合がある。この呼び名に従えば、3重付加部分構造を一つ有するフラーレン誘導体は「3重付加フラーレン誘導体」、5重付加部分構造を一つ有するフラーレン誘導体は「5重付加フラーレン誘導体」、3重付加部分構造を二つ有するフラーレン誘導体は「6重付加フラーレン誘導体」、3重付加部分構造と5重付加部分構造とを一つずつ有するフラーレン誘導体は「8重付加フラーレン誘導体」、5重付加部分構造を二つ有するフラーレン誘導体は「10重付加フラーレン誘導体」となる。
また、上述の3重付加部分構造及び/又は5重付加部分構造を一つ以上有するフラーレン誘導体を、「多重付加フラーレン誘導体」と総称するものとする。
5重付加フラーレン誘導体のうち、例えばC60骨格の5重付加フラーレン誘導体は、50電子系のπ電子共役になっており、60電子系のπ電子共役である無置換のC60とは異なる立体配置や電子的性質を有している。
また、5重付加フラーレン誘導体より置換基の付加数が少ない3重付加フラーレン誘導体として、例えば66電子系のπ電子共役である3重付加C70誘導体も合成され報告されている。これらの3重付加フラーレン誘導体は、無置換のC60やC70だけでなく上記5重付加C60誘導体とも異なる物性を有している。このことから、それぞれのフラーレン誘導体において新たな電子伝導材料、半導体、生理活性物質等として期待されている。
5重付加C60誘導体や3重付加C70誘導体等の多重付加フラーレン誘導体は、フラーレンの特定部位に集中的に有機基が付加した独特の構造で、且つ長いπ電子共役を有しているため、その電気化学的物性等に興味が持たれている。
また、最近、電子線やX線吸収を目的として、各種有機化合物にハロゲン原子を導入する検討が行なわれており、フラーレン誘導体においてもハロゲン原子導入が望まれている。なかでも、アルカリ溶媒や極性有機溶媒への溶解性が高いフェノール基含有フラーレン誘導体へのハロゲン原子の導入が特に望まれている。また、ハロゲン原子の中でも短波長領域まで大きな吸収特性を有する臭素原子、ヨウ素原子の導入が強く望まれている。このため、例えば非特許文献1,2に記載のような技術が開発されている。
The Chemistry of Fullerenes 1995年、P25 Fullerene Sci. Technol.,6,689,1998
従来、合成されてきたハロゲン導入フラーレン誘導体のうち、臭素含有誘導体は、非特許文献1,2に記載されているように、一般に付加数と付加位置の制御が困難であり、また、条件によっては付加数が24まで増加するなどフラーレンのπ電子共役が縮小するという課題があった。また、ヨウ素含有誘導体に関しては、一般に層間化合物を形成するなど報告例がほとんどなかった。このため、これらの臭素、ヨウ素などの原子が位置選択的に導入されたフラーレン誘導体が望まれている。なかでも、アルカリ溶媒及び極性有機溶媒への溶解性が期待され、反応中間体としても活用できる、フェノール基が結合されたフラーレン誘導体で且つ臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲンが導入された誘導体が特に望まれている。
ところで、上述の多重付加フラーレン誘導体は、一般的にGrignard試薬(グリニャール試薬)を用いて製造されている。しかし、従来の方法では、通常、塩素原子やフッ素原子の導入は可能であったが、臭素原子やヨウ素原子はその反応性の高さからグリニャール試薬が調製できず、これらのハロゲン原子の導入は非常に困難であった。
本発明は上記の課題に鑑み創案されたもので、新規のフラーレン誘導体、特にグリニャール試薬耐性のないハロゲン原子が導入されたフェノール基を有するフラーレン誘導体及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、フラーレンのπ電子共役を縮小させることなく、特定の数のハロゲン原子を特定の位置に導入したフェノール基を有するフラーレン誘導体を開発し、本発明を完成させた。
即ち、本発明の要旨は、フラーレン骨格の下記式(I)で表わされる部分構造において、C1が、水素原子もしくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、2−メチルブチル基、及び3−メチルブチル基のいずれかと結合しており、C6〜C8が、各々独立に、下記式(II)で表わされる構造の有機基と結合していることを特徴とするフラーレン誘導体に存する(請求項1)。
Figure 0005119732
(前記式(I)中、C1〜C10は何れも、フラーレン骨格を構成する炭素原子を表わす。)
Figure 0005119732
(前記式(II)中、Xはヒドロキシル基に対してo−位又はp−位に結合する臭素原子又はヨウ素原子を表わし、mは1〜4の整数を表わし、nは1〜4の整数を表わす。ただし、m+nは2〜5の整数である。)
また、前記C6〜C10が、各々独立に、前記式(II)で表わされる構造の有機基と結合していることが好ましい(請求項)。
さらに、前記C1が、メチル基と結合していることが好ましい(請求項)。
また、前記式(II)で表される有機基が下記式(III)で表わされる有機基であること
が好ましい(請求項)。
Figure 0005119732
(前記式(III)中、Xは臭素原子又はヨウ素原子を表わす。)
さらに、前記フラーレン骨格がフラーレンC60であることが好ましい(請求項)。
本発明の別の要旨は、フラーレン骨格の下記式(IV)で表わされる部分構造において、C1が水素原子もしくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、2−メチルブチル基、及び3−メチルブチル基のいずれかと結合しており、C6〜C8がそれぞれ独立に下記式(V)で表わされる構造の有機基と結合しているフラーレン誘導体に、臭素化剤及び/又はヨウ素化剤を作用させる工程を有することを特徴とするフラーレン誘導体の製造方法に存する(請求項)。
Figure 0005119732
(前記式(IV)中、C1〜C10は何れも、フラーレン骨格を構成する炭素原子を表わす。)
Figure 0005119732
(前記式(V)中、nは1〜4の整数である。)
本発明の更に別の要旨は、フラーレン骨格の下記式(VI)で表わされる部分構造において、C1が、水素原子もしくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、2−メチルブチル基、及び3−メチルブチル基のいずれかと結合しており、C6〜C8が、各々独立に、下記式(VII)で表わされる構造の有機基と結合していることを特徴とするフラーレン誘導体に存する(請求項)。
Figure 0005119732
(前記式(VI)中、C1〜C10は何れも、フラーレン骨格を構成する炭素原子を表わす。)
Figure 0005119732
(前記式(VII)中、XはOR基に対してo−位又はp−位に結合する臭素原子又はヨウ素原子を表わし、mは1〜4の整数を表わし、nは1〜4の整数を表わす。ただし、m+nは2〜5の整数である。また、Rはカルボニル基を少なくとも1個有する炭素数20以下の有機基を表わす。)
このとき、前記Rがtert−ブトキシカルボニル基又はtert−ブトキシカルボニルメチル基であることが好ましい(請求項8)。
さらに、前記C6〜C10が、各々独立に、前記式(VII)で表わされる構造の有機基と結合していることが好ましい(請求項)。
また、前記C1が、メチル基と結合していることが好ましい(請求項10)。
本発明の更に別の要旨は、前記のフラーレン誘導体の製造方法であって、式(I)で表わされる部分構造を有するフラーレン誘導体の水酸基にカルボニル基を少なくとも1個有する炭素数20以下の有機基を導入する工程を有することを特徴とするフラーレン誘導体の製造方法に存する(請求項11)。
本発明によれば、フラーレンのπ電子共役を縮小させることなく、特定の数のハロゲン原子を特定の位置に導入したフェノール基を有する新規のフラーレン誘導体並びにその製造方法を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施することができる。
[1.水酸基含有フラーレン誘導体]
[1−1.水酸基含有フラーレン誘導体の構造]
本発明の水酸基を含有するフラーレン誘導体(以下適宜、「本発明の水酸基含有フラーレン誘導体」という場合がある)は、水酸基を含有する特定の部分構造を有するフラーレン誘導体である。
ここで、「フラーレン」とは、閉殻構造を有する炭素クラスターである。フラーレンの炭素数は、通常60〜130の偶数である。
フラーレンの具体例としては、C60、C70、C76、C78、C82、C84、C90、C94、C96及びこれらよりも多くの炭素を有する高次の炭素クラスター等が挙げられる。
なお、本明細書では、炭素数i(ここでiは任意の自然数を表わす。)のフラーレン骨格を適宜、一般式「Ci」で表わす。
また、「フラーレン誘導体」とは、フラーレン骨格を有する化合物又は組成物の総称である。即ち、フラーレン誘導体には、フラーレン骨格上に置換基を有したものの他、フラーレン骨格の内部に金属や化合物等を内包するもの及び他の金属原子や化合物と錯体を形成したもの等も含まれる。
本発明の水酸基含有フラーレン誘導体が有するフラーレン骨格は制限されないが、C60又はC70が好ましく、C60がより好ましい。C60及びC70はフラーレンの製造時に主生成物として得られるので、入手が容易であるという利点がある。即ち、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体は、C60又はC70の誘導体であることが好ましく、C60の誘導体であることがより好ましい。
本発明の水酸基含有フラーレン誘導体は、フラーレン骨格の下記式(I)で表わされる部分構造において、C1が、水素原子又は任意の置換基と結合しており、少なくともC6〜C8が、各々独立に、下記式(II)で表わされる構造の有機基(第4周期以降のハロゲン原子が結合したフェノール基)と結合していることを特徴とする。なお、以下の説明において、C1に結合する水素原子及び置換基を総称して、適宜「R10」という。また、下記式(II)で表わされる構造の有機基を、適宜「R20」という。
Figure 0005119732
(前記式(I)中、C1〜C10は何れも、フラーレン骨格を構成する炭素原子を表わす。)
Figure 0005119732
(前記式(II)中、Xは第4周期以降のハロゲン原子を表わし、mは1〜4の整数を表わし、nは1〜4の整数を表わす。ただし、m+nは2〜5の整数である。)
以下、まずC1と結合している基(即ち、R10)について、詳細に説明する。
式(I)中、C1は水素原子又は任意の置換基(即ち、R10)と結合している。前記の置換基は、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体の優れた物性を大幅に損ねるものでなければ、その種類に制限は無い。
10が置換基である場合、その例としては、ハロゲン原子、有機基、その他の置換基などが挙げられる。
10がハロゲン原子である場合、その具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。なかでも、製造の容易さから塩素原子や臭素原子が好ましい。
10が有機基である場合、その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基等の直鎖又は分岐状の鎖状アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基;アリル基等のアルケニル基;ベンジル基、p−メトキシベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基;フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、トルイル基等のアリール基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基等のアリーロキシ基;モノメチルアミノ基、ジメチルアミノ基、モノジエチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の置換アミノ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;アリーロキシカルボニル基;チエニル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、フリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基等の5員複素環基;ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、ピラジル基、ピペリジル基、ピペラジル基、モルホリル基等の6員複素環基;チオホルミル基、チオアセチル基、チオベンゾイル基等のチオカルボニル基;トリメチルシリル基、ジメチルシリル基、モノメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジエチルシリル基、モノエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ジイソプロピルシリル基、モノイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルシリル基、モノフェニルシリル基等の置換シリル基等が挙げられる。
また、R10が有機基である場合には、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体の優れた物性を大幅に損なわない限り、前記有機基は更に別の置換基を有していてもよい。R10の有機基が有していてもよい置換基の例としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、水酸基(ヒドロキシ基)、アミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子等が挙げられる。また、これらの置換基が更に一以上の置換基によって多重に置換されていてもよい。
さらに、R10が有機基である場合、炭素数は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1以上、また、通常30以下、好ましくは6以下の範囲である。R10が置換基を有する場合には、置換基を含めた炭素数が、上記規定の範囲を満たすことが好ましい。
また、R10が他の置換基である場合、その具体例としては、水酸基(ヒドロキシ基)、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基、シアノ基、シリル基、ニトロ基等が挙げられる。
上記のうち、R10として好ましい基としては、水素原子;ハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基等のヒドロキシアルキル基;フェニル基;カルボキシル基;アルコキシカルボニル基;等が挙げられる。
中でも、R10としては、製造の容易さから水素原子又は直鎖状のアルキル基がより好ましく、耐酸化性の観点からは直鎖状アルキル基が更に好ましく、なかでも熱安定性も有するメチル基が特に好ましい。
続いて、式(II)で表わされる構造の有機基(即ち、R20)について、詳細に説明する。
20は、周期表第4周期以降のハロゲン原子が結合した1価又は多価フェノール基である。なお、本発明のフラーレン誘導体の優れた物性を大幅に損ねるものでなければ、他の置換基が導入されていてもかまわない。
式(II)において、Xは第4周期以降のハロゲン原子を表わし、具体的には臭素原子又はヨウ素原子を表わす。なお、式(II)にXが2個以上存在する場合、Xはそれぞれ同種類であってもよく、異なる種類の組み合わせであってもよい。
また、式(II)において、nはフェニル基と結合している水酸基(OH基)の数を表わし、具体的には1以上4以下の整数を表わす。中でも、反応性及び原料調達の観点から2以下が好ましい。また、水酸基が結合している位置は任意であり、水酸基が複数個結合している場合は、それぞれの水酸基の位置関係も任意である。
さらに、式(II)において、mはフェニル基と結合している第4周期以降のハロゲン原子(臭素原子、ヨウ素原子)の数を表わし、具体的には1以上4以下の整数を表わす。中でも、反応性の観点から3個以下が好ましく、2以下がより好ましい。また、前記ハロゲン基が結合している位置は任意であり、また、前記ハロゲン原子が複数個結合している場合は、それぞれのハロゲン原子の位置関係も任意である。ただし、合成の容易さから前記ハロゲン原子は水酸基のオルト位もしくはパラ位に結合していることが好ましい。
また、式(II)において、水酸基とハロゲン原子との数の和m+nは、2〜5の範囲に含まれる。なお、式(II)ではフェニル基を示しているが、フェニル基に換えてビフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等の他の芳香環基を用いることも可能である。この場合、芳香環基に結合する置換基の数は、芳香環基の種類に応じて適宜調整することが可能である。但し、原料調達の観点からはフェニル基が好ましい。
中でも特に、R20としては、少なくとも1つ、好ましくは全てが、導入できるXの数が制御できるという観点で、下記式(III)で表わされる有機基であることが好適である。なお、式(III)において、Xは式(II)において説明したものと同様である。
Figure 0005119732
本発明の水酸基含有フラーレン誘導体では、式(I)のC6〜C8は、各々独立に、上記式(II)で表わされる構造の有機基(即ち、R20)と結合している。製造上の容易さの観点からは、C6〜C8のみならず、C6〜C10の全てが各々独立にR20と結合していることが望ましい。なお、R20は互いに同じ構造の基であってもよく、異なる構造の基であってもよい。
本明細書では、式(I)のC1が水素原子又は置換基(即ち、R10)と結合し、C6〜C8が各々独立に式(II)で表される構造の有機基(即ち、R20)と結合した部分構造を、「本発明の3重付加部分構造」という場合がある。また、式(I)のC1が水素原子又は置換基(即ち、R10)と結合し、C6〜C10が各々独立に式(II)で表される構造の有機基(即ち、R20)と結合した部分構造を、「本発明の5重付加部分構造」という場合がある。
本発明の水酸基含有フラーレン誘導体の例を以下に挙げる。但し、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体は、以下に挙げる例に制限されるものではない。
・フラーレン骨格上に本発明の3重付加部分構造を1つ有する、一般式Ci(R203(R10)で表わされる3重付加フラーレン誘導体。
・フラーレン骨格上に本発明の5重付加部分構造を1つ有する、一般式Ci(R205(R10)で表わされる5重付加フラーレン誘導体。
・フラーレン骨格上に本発明の3重付加部分構造を2つ有する、一般式Ci(R206(R102で表わされる6重付加フラーレン誘導体。
・フラーレン骨格上に本発明の3重付加部分構造を1つ、本発明の5重付加部分構造を1つ有する、一般式Ci(R208(R102で表わされる8重付加フラーレン誘導体。
・フラーレン骨格上に本発明の5重付加部分構造を2つ有する、一般式Ci(R2010(R102で表わされる10重付加フラーレン誘導体。
これらの中でも、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体としては、フラーレン骨格上に本発明の5重付加部分構造を1つ有する、一般式Ci(R205(R10)で表わされる5重付加フラーレン誘導体が、製造が容易であるため好ましい。
なお、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体において、上記式(I)の部分構造は、フラーレン骨格の閉殻構造の内側から観察される構造であってもよく、外側から観察される構造であってもよい。言い換えれば、ある水酸基含有フラーレン誘導体を、そのフラーレン骨格の閉殻構造の内側又は外側から観察した場合に、本発明の3重付加部分構造及び/又は5重付加部分構造が少なくとも1つ存在すれば、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体に該当するものとする。
[1−2.水酸基含有フラーレン誘導体の性質]
本発明の水酸基含有フラーレン誘導体は、通常、アルカリ溶媒に可溶、即ち、アルカリ溶媒に対する溶解性が高い。
なお、本明細書において、水酸基含有フラーレン誘導体が「アルカリ溶媒に可溶」であるとは、水酸基含有フラーレン誘導体をアルカリ溶媒に混合し、超音波照射を10分かけた後、目視で沈殿物や不溶分が検出されないことを意味する。具体的には、25℃、常圧下において、水酸化ナトリウム水溶液に対して、水酸化ナトリウム水溶液の単位体積(1mL)あたり、水酸基含有フラーレン誘導体が50mg以上溶解する場合には、その水酸基含有フラーレン誘導体はアルカリ溶媒に対して可溶、即ち、アルカリ溶媒に対する溶解性が高いと判断する。
本発明の水酸基含有フラーレン誘導体をアルカリ溶媒に溶解させて用いる場合、アルカリ溶媒の種類は、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体が溶解するものであれば制限されない。アルカリ溶媒の例としては、ピリジン、ピペリジン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、メチルジエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ−(5,4,0)−7−ウンデセン、ジメチルエタノールアミン等のアルカリ有機溶媒や、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸リチウム水溶液、炭酸カルシウム水溶液、アンモニア水溶液、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液等のアルカリ水溶液等が挙げられる。また、アルカリ水溶液の場合、その溶質の濃度は任意である。
中でも、アルカリ溶媒としては、アルカリ水溶液が好ましく、製品への金属混入を避けることが望ましい用途に関しては、非金属系のアルカリ水溶液であるアンモニア水溶液やテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液等の水溶液が好ましい。
なお、これらのアルカリ溶媒は、何れか1種のみを用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても構わない。
また、上述のアルカリ溶媒に対する水酸基含有フラーレン誘導体の好ましい溶解度の値は、水酸基含有フラーレン誘導体の用途によって異なるが、アルカリ溶媒に対して、通常50mg/mL以上、好ましくは100mg/mL以上の溶解度を有することが望ましい。
本発明の水酸基含有フラーレン誘導体がアルカリ溶媒に対する高い溶解性を有する理由は定かではないが、本発明者が推察するところによると、フェノール性の水酸基を含む基であるR20が3個以上、局所的且つ位置選択的にフラーレン骨格に結合していることにより、疎水性のフラーレン骨格を有していながらアルカリ溶媒に対する親和性が上がっているためと考えられる。
[2.保護基含有フラーレン誘導体]
[2−1.保護基含有フラーレン誘導体の構造]
本発明の水酸基含有フラーレン誘導体は、一般的にエステル溶媒に難溶である場合が多い。しかしながら、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体のフェノール基の水酸基に対して適切な保護基を導入することで、エステル溶媒に高溶解を示すフラーレン誘導体(本発明の保護基含有フラーレン誘導体)へと変換することができる。以下に、エステル溶媒に高溶解性を示す本発明の保護基含有フラーレン誘導体に関して詳細に説明する。
本発明の保護基含有フラーレン誘導体は、フラーレン骨格の下記式(VI)で表わされる部分構造において、C1が水素原子又は任意の置換基(即ち、R10)と結合しており、少なくともC6〜C8が、各々独立に、下記式(VII)で表わされる構造の有機基と結合していることを特徴とする。即ち、R20の代わりにR30を有する以外は、本発明の保護基含有フラーレン誘導体は、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体と同様の構成を有している。なお、以下の説明において、下記式(VII)で表わされる構造の有機基を、適宜「R30」という。
Figure 0005119732
(前記式(VI)中、C1〜C10は何れも、フラーレン骨格を構成する炭素原子を表わす。)
Figure 0005119732
(前記式(VII)中、Xは第4周期以降のハロゲン原子を表わし、mは1〜4の整数を表わし、nは1〜4の整数を表わす。ただし、m+nは2〜5の整数である。また、Rは任意の有機基を表わす。)
式(VI)中、C1は水素原子又は置換基と結合している。この際、C1と結合している基は上述したR10と同様である。
続いて、式(VII)で表わされる構造の有機基(即ち、R30)について、詳細に説明する。
式(VII)で表わされる有機基は、周期表第4周期以降のハロゲン原子が結合した1価又は多価フェノール基の保護化体であり、式(II)に表される水酸基の水素原子が有機基Rで置換された構造となっているほかは、R20と同様になっている。よって、式(VII)において、X、m及びnは、式(II)において説明したものと同様である。なお、本発明のフラーレン誘導体の優れた物性を大幅に損ねるものでなければ、他の置換基が導入されていてもかまわない。
式(VII)において、Rは任意の有機基を表わす。ここで、Rの炭素数は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1以上、好ましくは5以上であり、また、通常20以下、好ましくは10以下である。Rの炭素数が小さすぎると溶解性が不十分となる可能性があり、大きすぎると反応が完結しない可能性がある。
Rの例を挙げると、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の直鎖アルキル基;イソプロピル基、tert−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、sec−イソアミル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1,2,2−トリメチルプロピル基等の分岐状の鎖状アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基;1,1−ジメチルアリル基、2,2−ジメチルブタ−3−エン−1−イル基等のアルケニル基;アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、シクロペンチルカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニルメチル基、tert−アミロキシカルボニル基、tert−アミロキシカルボニルメチル基、1,1−ジエチルプロピルオキシカルボニル基、1,1−ジエチルプロピルオキシカルボニルメチル基、1−エチルシクロペンチルオキシカルボニル基、1−エチルシクロペンチルオキシカルボニルメチル基、1−エトキシエトキシカルボニメチル基、2−テトラヒドロピラニルオキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロフラニルオキシカルボニルメチル基等のカルボニル基を有する有機基が挙げられる。中でも、溶解性の観点から、分岐を有するアルキル基ならびにカルボニル基を1つ以上有する有機基が好ましく、カルボニル基を1つ以上有する有機基がさらに好ましい。具体的には、tert−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニルメチル基などが好ましい。
なお、OR基が結合している位置は任意であり、また、OR基が複数個結合している場合は、それぞれのOR基の位置関係も任意である。
また、nが2以上である場合、Rは同種類であっても良く、異なる種類の組み合わせであってもよい。なお、式(VI)ではフェニル基を示しているが、フェニル基に換えてビフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等の他の芳香環基を用いることも可能である。この場合、芳香環基に結合する置換基の数は、芳香環基の種類に応じて適宜調整することが可能である。但し、原料調達の観点からはフェニル基が好ましい。
本発明の保護基含有フラーレン誘導体では、式(VI)のC6〜C8は、各々独立に、上記式(VII)で表わされる構造の有機基(即ち、R30)と結合している。また、エステル溶媒溶解性向上の観点からは、C6〜C8のみならず、C6〜C10の全てが各々独立にR30と結合していることが望ましい。なお、R30は互いに同じ構造の基であってもよく、異なる構造の基であってもよい。
さらに、本発明の保護基含有フラーレン誘導体の構造の例としては、R20の代わりにR30を有する他は本発明の水酸基含有フラーレン誘導体と同様の、3重付加フラーレン誘導体、5重付加フラーレン誘導体、6重付加フラーレン誘導体、8重付加フラーレン誘導体、10重付加フラーレン誘導体などが挙げられ、中でも、5重付加フラーレン誘導体が、製造が容易であるため好ましい。
また、本発明の保護基含有フラーレン誘導体においても、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体と同様に、上記式(VI)の部分構造は、フラーレン骨格の閉殻構造の内側から観察される構造であってもよく、外側から観察される構造であってもよい。
[2−2.保護基含有フラーレン誘導体の性質]
本発明の保護基含有フラーレン誘導体は、有機溶媒一般、特に通常のフラーレン誘導体が難溶の極性有機溶媒、例えばシクロヘキサノン、メチルアミルケトン、乳酸エチル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート(以下、適宜「PGMEA」という場合がある。)へ良好な溶解性を示す。特に産業用途で使用量の伸びているPGMEA等のエステル溶媒に可溶、即ち、エステル溶媒に対する溶解性が高い。
なお、本明細書において、フラーレン誘導体が「エステル溶媒に可溶」であるとは、フラーレン誘導体をエステル溶媒に混合し、超音波照射を10分かけた後、目視で沈殿物や不溶分が検出されないことを意味する。具体的には、25℃、常圧下において、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート又は乳酸エチルの何れかのエステル溶媒に対して、エステル溶媒の単位体積(1mL)あたり、フラーレン誘導体が10mg以上溶解する場合には、そのフラーレン誘導体はエステル溶媒に対して可溶、即ち、エステル溶媒に対する溶解性が高いと判断する。
本発明の保護基含有フラーレン誘導体をエステル溶媒に溶解させて用いる場合、エステル溶媒の種類は、本発明の保護基含有フラーレン誘導体が溶解するものであれば制限されない。エステル溶媒の例としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸フェニル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸フェニル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、乳酸メチル、乳酸エチル等の直鎖状のエステル類;γ―ブチロラクトン、カプロラクトン等の環状エステル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコール−1−モノエチルエーテルアセテート等のエーテルエステル類等が挙げられる。
中でも、直鎖状のエステル類やエーテルエステル類が好ましく、具体的にはプロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート(即ち、PGMEA)、乳酸エチルが好ましい。
なお、エステル溶媒は、何れか1種のみを用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても構わない。
これらのエステル溶媒は、DVD、CD等の光ディスク材料の製造用等の溶媒として一般的に使用されているエステル溶媒である。
したがって、前記のエステル溶媒に可溶であること、即ち、前記のエステル溶媒に対する溶解性が高いことは、本発明のフラーレン誘導体を、上記を一例として産業上広く使用されている溶媒に溶解することが可能であることを示している。
また、フラーレン誘導体が前記のエステル溶媒に溶解する場合、そのフラーレン誘導体は同様に他の有機溶媒に可溶である場合が多い。したがって、本発明のフラーレン誘導体のエステル溶媒に対する溶解性が高いことは、本発明のフラーレン誘導体を、例えば、色素増感太陽電池、有機薄膜太陽電池等の有機太陽電池、有機トランジスタ・ダイオード、有機電界発光素子(有機EL素子)、非線形光学材等の有機デバイス全般;樹脂添加剤;潤滑剤;絶縁膜、Li2次電池・燃料電池・キャパシター等の電池における電池基材及びその添加剤・表面修飾等のコーティング材、その他セパレータ等の部材を構成する材料及び添加剤;金属・セラミクス添加剤;固体潤滑剤及び潤滑油添加剤等摺動用途への添加剤、触媒用、更には塗料・インク・医薬・化粧品・診断薬など、多方面での産業分野に適用可能であることを示している。
また、上述のエステル溶媒に対する保護基含有フラーレン誘導体の好ましい溶解度の値は、保護基含有フラーレン誘導体の用途によって異なる。例えば、DVD、CD等の光ディスク材料の製造用途の塗膜を本発明の保護基含有フラーレン誘導体を用いて形成するためには、本発明の保護基含有フラーレン誘導体はエステル溶媒に対して、通常10mg/mL以上、好ましくは50mg/mL以上、より好ましくは100mg/mL以上の溶解度を有することが望ましい。
本発明の保護基含有フラーレン誘導体がエステル溶媒に対して高い溶解性を有する理由は定かでは無いが、本発明者が推察するところによると、R30のフェノール性水酸基上に特定の有機基が導入されていることで、近隣の保護基含有フラーレン誘導体との分子相互作用が低下するためであると考えられる。
[3.フラーレン誘導体の製造方法]
本発明の水酸基含有フラーレン誘導体及び保護基含有フラーレン誘導体の製造方法に制限は無く、任意の方法により合成することができる。
従来、C1に水素原子又は置換基が結合した3重付加部分構造及び/又は5重付加部分構造を有するフラーレン誘導体の一般的な製造方法は既に確立されていた。具体的には、C1が有機基と結合している場合は、特開2005−15470号公報、Chemistry Letters,2004年,p.328に記載されている方法等を参照することができる。また、C1に水素原子が結合している場合は、Nature,419,702−705,2002年に記載されている方法を参照することができる。さらに、C1にハロゲン原子が結合している場合には、特開2002−241389号公報に記載されている方法を参照することができる。
本発明の水酸基含有フラーレン誘導体及び保護基含有フラーレン誘導体も、上記文献記載の方法で製造することが可能である、
中でも、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体及び保護基含有フラーレン誘導体は、以下に例示する製造方法により製造することが好ましい。ただし、以下に例示する製造方法は本発明の水酸基含有フラーレン誘導体及び保護基含有フラーレン誘導体の製造方法の一例であり、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体及び保護基含有フラーレン誘導体の製造方法は以下の例に限定されるものではない。
[3−1.水酸基含有フラーレン誘導体の製造方法]
まず、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体の製造方法を説明する。ここで説明する本発明の水酸基含有フラーレン誘導体の製造方法では、フラーレン骨格の下記式(IV)で表わされる部分構造において、C1が水素原子又は任意の置換基(即ち、R10)と結合しており、C6〜C8がそれぞれ独立に下記式(V)で表わされる構造の有機基と結合しているフラーレン誘導体(以下適宜、「原料フラーレン誘導体」という場合がある。)に、ハロゲン化剤を作用させるハロゲン化工程を経て、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体を製造する。なお、以下の説明において、下記式(V)で表わされる構造の有機基を、適宜「R40」という。
Figure 0005119732
(前記式(IV)中、C1〜C10は何れも、フラーレン骨格を構成する炭素原子を表わす。)
Figure 0005119732
(前記式(V)中、nは1〜4の整数である。)
[3−1−1.原料フラーレン誘導体]
原料フラーレン誘導体は、R20の代わりにR40を有する以外は、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体と同様の構成を有している。したがって、原料フラーレン誘導体としては、式(V)中のC6〜C8もしくはC6〜C10が、各々独立に、R40と結合しているものを用いる。
式(V)において、nはフェニル基と結合している水酸基(OH基)の数を表わし、具体的には、1以上4以下の整数を表わす。中でも、原料調達や反応性の観点から3以下が好ましく、特に2以下が好ましい。なお、水酸基が結合している位置は任意であり、また、水酸基が複数個結合している場合は、それぞれの水酸基の位置関係も任意である。さらに、式(V)で表わされるR40は、互いに同じ構造の基であってもよく、異なる構造の基であってもよいが、合成が容易である点から、全て同じ構造の基であることが好ましい。
[3−1−2.ハロゲン化剤]
ハロゲン化剤としては、R40のハロゲン化、即ち、R40中のベンゼン環に第4周期以降のハロゲン原子を結合させることができれば他に制限は無い。その例を挙げると、臭素化剤、ヨウ素化剤などが挙げられる。具体例としては、臭素、ヨウ素等の分子状ハロゲン;臭素、ヨウ素等の分子状ハロゲンの水溶液;臭素、ヨウ素等のジオキサン、モルホリン等の錯体;N−ブロモスクシンイミド、N−ヨードスクシンイミド等のN−ハロイミド類;N−ブロモアセトアミド、N−ヨードアセトアミド等のN−ハロアミド類;三臭化リン、五臭化リン、オキシ臭化リン、オキシヨウ化リン等のリン化合物類;o−トルエンスルホン酸ブロマイド、o−トルエンスルホン酸ヨード、p−トルエンスルホン酸ブロマイド、p−トルエンスルホン酸ヨード、メタンスルホン酸ブロマイド、メタンスルホン酸ヨード等のスルホン酸ハライド類;次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸等の次亜ハロゲン酸類;臭化ヨウ素、塩化臭素等の混合ハロゲン分子;臭化チオニル、ヨウ化チオニル、臭化スルフリル、ヨウ化スルフリル等の硫黄化合物類等が挙げられる。
中でも、コスト並びに取扱の容易さの観点から、臭素、ヨウ素等の分子状ハロゲン;臭素、ヨウ素等の分子状ハロゲンの水溶液;臭素、ヨウ素等のジオキサン、モルホリン等の錯体;N−ブロモスクシンイミド、N−ヨードスクシンイミド等のN−ハロイミド類;N−ブロモアセトアミド、N−ヨードアセトアミド等のN−ハロアミド類が好ましく、特にN−ブロモスクシンイミド、N−ヨードスクシンイミドなどのN−ハロイミド類がより好ましい。
なお、これらハロゲン化剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
ハロゲン化剤の使用量に特に制限はないが、目的とする水酸基含有フラーレン誘導体のハロゲン量を考慮して適宜使用すれば良い。
例えば、水酸基を一つ有するフェノール5重付加体に対して、10個のハロゲン原子を導入しようとする場合には、ハロゲン化剤は水酸基の数に対して、通常2倍モル以上、好ましくは2.2倍モル以上、また、通常10倍モル以下、好ましくは5倍モル以下、より好ましくは3倍モル以下用いる。ハロゲン化剤の量が少なすぎると目的とする数のハロゲン原子を導入できない可能性があり、多すぎると製造コストの点から不利となる可能性がある。
[3−1−3.溶媒]
本発明の水酸基含有フラーレン誘導体を製造する際、通常は反応媒として溶媒を用い、当該溶媒中で反応を進行させる。
反応に使用する溶媒は反応の進行を著しく妨げない限り任意であるが、通常は有機溶媒を用いる。具体的な溶媒の種類は、反応の種類によって適切なものを選択すればよい。
溶媒の具体例を挙げると、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタンなどのエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアミド類、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類などが挙げられる。なかでも、溶解性の観点からエーテル類やアミド類が好ましい。なお、溶媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、反応の種類によっては、有機溶媒の中に水を適量加えてもかまわない。
また、原料フラーレン誘導体に対する溶媒の量は任意であるが、原料フラーレン誘導体の濃度が、通常0.1mg/mL以上、好ましくは5mg/mL以上、より好ましくは10mg/mL以上、また、通常1000mg/mL以下、好ましくは100mg/mL以下、より好ましくは50mg/mL以下となる量の溶媒を用いることが望ましい。
[3−1−4.ハロゲン化工程]
上述した原料フラーレン誘導体とハロゲン化剤とを、通常は溶媒中で反応させて、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体を得る。この際、反応系には、反応の進行を阻害しない限り上述したもの以外の成分を含有させても良い。
ハロゲン化反応が進行すれば、原料フラーレン誘導体、ハロゲン化剤及び溶媒等の混合順序は問わないが、通常、原料フラーレン誘導体を溶媒中に混合してから、そこにハロゲン化剤を混合することにより反応を行なう。
原料フラーレン誘導体のハロゲン化反応が進行すれば、その反応条件は任意である。ただし、その温度条件は、通常0℃以上、好ましくは15℃以上、より好ましくは20℃以上であり、また、通常60℃以下、好ましくは40℃以下、より好ましくは30℃以下である。この際、反応時には反応系を連続的に上記の温度範囲にしてもよく、断続的に上記の温度範囲にしても良い。また、反応時間は、通常数分以上、好ましくは30分以上、また、通常数十時間以下、好ましくは5時間以下である。
[3−1−5.その他の工程]
本発明の水酸基含有フラーレン誘導体が得られる限り、上記のハロゲン化工程の工程前、工程中及び工程後において、所望の工程を任意に行なうことができる。
[3−2.保護基含有フラーレン誘導体の製造方法]
本発明の水酸基含有フラーレン誘導体を出発原料として、その水酸基に特定の有機基(保護基)を導入する工程を経て、本発明の保護基含有フラーレン誘導体を製造することができる。以下、その有機基の導入方法に関して説明する。
具体的な有機基の導入方法は、導入する有機基の種類に応じて様々である。その例を挙げると、以下のようなものが挙げられる。
(1)本発明の水酸基含有フラーレン誘導体をエステル化剤と反応させて、エステル化する。
(2)本発明の水酸基含有フラーレン誘導体をカーボネート化剤と反応させて、カーボネート化する。
(3)本発明の水酸基含有フラーレン誘導体をエーテル化剤と反応させて、エーテル化する。
(4)本発明の水酸基含有フラーレン誘導体をウレタン化剤と反応させて、ウレタン化する。
上記(1)〜(4)の方法をはじめとして、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体に有機基を導入する反応は、通常、塩基の存在下、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体を溶媒に溶解もしくは懸濁させた状態で行なう。
反応系内に存在させる塩基の種類は前記の反応が進行する限り任意であり、反応の種類によって適当なものを選択すればよい。塩基の具体例としては、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、水酸化テトラブチルアンモニウム、ジアザビシクロウンデセン、イミダゾール等の有機塩基;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の金属炭酸塩;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物などが挙げられる。なお、上記の塩基は、1種のみを用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
また、使用する塩基の量としては、反応を阻害しなければ任意の量を用いることができる。
さらに、反応に使用する溶媒も任意であり、反応の種類によって適当なものを選択すればよい。溶媒としては通常は有機溶媒を用い、その具体例としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類などが挙げられる。また、溶媒は、1種のみを用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。ただし、反応の種類によっては、溶媒は脱水操作をしたものを用いた方が効率的に合成することが可能である。
また、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体に対して使用する溶媒の量は任意であるが、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体の濃度が、通常0.1mg/mL以上、好ましくは1mg/mL以上、より好ましくは5mg/mL以上、また、通常1000mg/mL以下、好ましくは100mg/mL以下、より好ましくは50mg/mL以下となる量の溶媒を用いることが望ましい。
以下、例示した前記の方法(1)〜(4)についてそれぞれ説明する。
(1)エステル化による合成方法
エステル化による合成方法では、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体に対してエステル化剤を用い、エステル化を行なう。
エステル化剤の例としては、RaC(=O)Xaで表わされる酸ハライド、RbC(=O)OC(=O)Rcで表わされる酸無水物などが挙げられる。ここで、Ra、Rb及びRcは、各々独立に、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体とエステル化剤とが反応することにより本発明の保護基含有フラーレン誘導体を生成しうる任意の基を表わす。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、sec−イソアミル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1,2,2−トリメチルプロピル基等の分岐状の鎖状アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基;1,1−ジメチルアリル基、2,2−ジメチルブタ−3−エン−1−イル基等のアルケニル基などが挙げられるが、中でも分岐状のアルキル基が好ましい。また、XaはCl、Br、I等のハロゲン原子を表わす。なお、エステル化剤は1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。これにより、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体のフェノール基のヒドロキシ基部分がエステル化され、本発明の保護基含有フラーレン誘導体を合成することができる。
エステル化による合成方法では、エステル化剤の使用量に制限は無いが、反応を行なうフェノール基に対して、通常1倍モル以上、好ましくは1.2倍モル以上、より好ましくは1.4倍モル以上、また、通常30倍モル以下、好ましくは20倍モル以下、より好ましくは10倍モル以下用いる。エステル化剤の量が多すぎると製造コストの観点から不利な場合があり、少な過ぎると十分な反応速度が得られない場合がある。
また、エステル化反応が進行する限り、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体、塩基及び溶媒の混合順序は問わない。ただし、通常は、原料となる本発明の水酸基含有フラーレン誘導体と塩基とを上述の適当な溶媒中で混合してから、それとエステル化剤とを混合することにより反応を行なう。
さらに、エステル化による合成方法では、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体のエステル化が進行する限り、その反応条件は任意である。ただし、その温度条件は、通常0℃以上、好ましくは15℃以上、また、通常50℃以下、好ましくは30℃以下である。また、反応時間は、通常数分以上、好ましくは30分以上、また、通常数十時間以下、好ましくは5時間以下である。
(2)カーボネート化による合成方法
カーボネート化による合成方法では、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体に対してカーボネート化剤を用い、カーボネート化を行なう。
カーボネート化剤の例としては、RdOC(=O)OC(=O)ORe等で表わされる二炭酸エステルなどが挙げられる。ここで、Rd及びReは、各々独立に、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体とカーボネート化剤とが反応することにより本発明の保護基含有フラーレン誘導体を生成しうる任意の基を表わす。その具体例としては、前記の基Ra〜Rcと同様の基を挙げることができる。なお、カーボネート化剤は1種のみを用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。これにより、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体のフェノール基のヒドロキシ基部分がカーボネート化され、本発明の保護基含有フラーレン誘導体を合成することができる。
カーボネート化による合成方法では、カーボネート化剤の使用量に制限は無いが、反応を行なうフェノール基に対して、通常1倍モル以上、好ましくは1.2倍モル以上、より好ましくは1.4倍モル以上、また、通常30倍モル以下、好ましくは20倍モル以下、より好ましくは10倍モル以下用いる。カーボネート化剤の量が多すぎると製造コストの観点から不利な場合があり、少な過ぎると十分な反応速度が得られない場合がある。
また、カーボネート化反応が進行する限り、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体、塩基及び溶媒の混合順序は問わない。ただし、通常は、原料となる本発明の水酸基含有フラーレン誘導体と塩基とを上述の適当な溶媒中で混合してから、それとカーボネート化剤とを混合することにより反応を行なう。
さらに、カーボネート化による合成方法では、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体のカーボネート化が進行する限り、その反応条件は任意である。ただし、その温度条件は、通常−20℃以上、好ましくは0℃以上、また、通常50℃以下、好ましくは30℃以下である。また、反応時間は、通常数分以上、好ましくは30分以上、また、通常数時間以下、好ましくは2時間以下である。
(3)エーテル化による合成方法
エーテル化による合成方法では、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体に対してエーテル化剤を用い、エーテル化を行なう。
エーテル化剤の例としては、Xb−Rf等のハロゲン化物などが挙げられる。ここで、XbはCl、Br、I等のハロゲン原子を表わす。また、Rfは、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体とエーテル化剤とが反応することにより本発明の保護基含有フラーレン誘導体を生成しうる任意の基を表わす。その具体例としては、前記の基Ra〜Reと同様の基を挙げることができる。また、例えば、上述したハロゲン化物のハロゲン原子に代えて、求核置換反応の脱離基となりうる官能基を有するものをエーテル化剤として用いても構わない。求核置換反応の脱離基となりうる官能基の例としては、アセトキシ基、トリフロロアセトキシ基等のアシロキシ基;メタンスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基、トルエンスルホニルオキシ基等のスルホニルオキシ基などが挙げられる。なお、エーテル化剤は、1種のみを用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。これにより、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体のフェノール基のヒドロキシ基部分がエーテル化され、本発明の保護基含有フラーレン誘導体を合成することができる。
エーテル化による合成方法では、エーテル化剤の使用量に制限は無いが、反応を行なうフェノール基に対して、通常1倍モル以上、好ましくは1.2倍モル以上、より好ましくは1.4倍モル以上、また、通常30倍モル以下、好ましくは20倍モル以下、より好ましくは10倍モル以下用いる。エーテル化剤の量が多すぎると、製造コストの観点から不利な場合があり、少な過ぎると十分な反応速度が得られない場合がある。
また、エーテル化反応が進行する限り、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体、塩基及び溶媒の混合順序は問わない。ただし、通常、原料となる本発明の水酸基含有フラーレン誘導体と塩基とを上述の適当な溶媒中で混合してから、それとエーテル化剤とを混合することにより反応を行なう。
さらに、エーテル化による合成方法では、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体のエーテル化が進行する限り、その反応条件は任意である。ただし、その温度条件は、通常0℃以上、好ましくは15℃以上、また、通常80℃以下、好ましくは50℃以下である。また、反応時間は、通常数時間以上、好ましくは5時間以上、また、通常数十時間以下、好ましくは30時間以下である。
(4)ウレタン化による合成方法
ウレタン化による合成方法では、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体に対してウレタン化剤を用い、ウレタン化を行なう。
ウレタン化剤の例としては、RgNCOで表わされるイソシアネート類などが挙げられる。ここで、Rgは、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体とウレタン化剤とが反応することにより本発明の保護基含有フラーレン誘導体を生成しうる任意の基を表わす。その具体例としては、前記の基Ra〜Rfと同様の基を挙げることができる。なお、ウレタン化剤は1種のみを用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。これにより、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体のフェノール基のヒドロキシ基部分がウレタン化され、本発明の保護基含有フラーレン誘導体を合成することができる。
ウレタン化による合成方法では、ウレタン化剤の使用量に制限は無いが、反応を行なうフェノール基に対して、通常1倍モル以上、好ましくは1.2倍モル以上、より好ましくは1.4倍モル以上、また、通常30倍モル以下、好ましくは20倍モル以下、より好ましくは10倍モル以下用いる。ウレタン化剤の量が多すぎると製造コストの観点から不利な場合があり、少な過ぎると十分な反応速度が得られない場合がある。
また、ウレタン化反応が進行する限り、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体、塩基及び溶媒の混合順序は問わない。ただし、通常、原料となる本発明の水酸基含有フラーレン誘導体と塩基とを上述の適当な溶媒中で混合してから、それとウレタン化剤とを混合することにより反応を行なう。
さらに、ウレタン化による合成方法では、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体のウレタン化が進行する限り、その反応条件は任意である。ただし、その温度条件は、通常0℃以上、好ましくは15℃以上、また、通常50℃以下、好ましくは30℃以下である。また、反応時間は、通常数分以上、好ましくは30分以上、また、通常数十時間以下、好ましくは2時間以下である。
上述したエステル化剤、カーボネート化剤、エーテル化剤及びウレタン化剤等の反応剤は、それぞれ単独で使用する他、任意の組み合わせ及び比率で併用して、上記の(1)〜(4)の各方法をともに行なうようにしてもよい。さらに、上記の(1)〜(4)の方法に示した各反応(エステル化、カーボネート化、エーテル化及びウレタン化)などを妨げなければ、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体、反応剤、塩基及び溶媒以外の物質が反応系に存在していても構わない。
また、本発明の保護基含有フラーレン誘導体を製造する場合、前記の有機基を導入する工程の工程前、工程中及び工程後において、所望の工程を任意に行なうことができる。例えば、通常は、反応終了後に、生成した本発明の保護基含有フラーレン誘導体を反応液から常法により単離する。単離操作は各反応の種類によって異なるが、一例を挙げると、反応液に純水やチオ硫酸ナトリウム水溶液などを加えて反応を停止させ、そのまま適当な溶媒で抽出した後、分液し溶媒を留去することにより、生成物を単離することができる。
得られる本発明の保護基含有フラーレン誘導体は、必要に応じて、適宜、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)やシリカゲルカラムクロマトグラフィー、アルミナカラムクロマトグラフィーなどの手法で精製してもよい。単離収率は、上述の好ましい反応条件で行なえば、通常80%以上、好ましくは90%以上である。
また、本発明の保護基含有フラーレン誘導体は、プロトン核磁気共鳴スペクトル法(以下適宜、「1H−NMR」という)、カーボン核磁気共鳴スペクトル法(以下適宜、「13C−NMR」という)、赤外線吸収スペクトル法(以下適宜、「IR」という)、質量分析法(以下適宜、「MS」という)、及び元素分析等の一般的な有機分析により、通常、その構造が確認される。この他、フラーレン誘導体の結晶性がよい場合は、X線結晶回折法によって構造を確認できる場合もある。
[4.フラーレン誘導体の用途]
本発明の水酸基含有フラーレン誘導体及び保護基含有フラーレン誘導体は、前述に記載の用途に用いることができる。以下に、いくつかの用途に関して具体的に説明するが、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体及び保護基含有フラーレン誘導体の機能が発揮できる用途に関しては、以下の表記に限定されるものではない。
[4−1.低誘電率絶縁材料用途]
近年、コンピュータの中央処理装置(CPU)用回路基盤には、樹脂薄膜を層間絶縁膜とする高密度かつ微細な多層配線に適した樹脂薄膜配線が適用されるようになってきた。将来のより高速な処理能力を有するコンピュータを実現するには、高密度かつ繊細な多層配線を活かし、かつ信号の高速伝播に適した低誘電率絶縁材料の開発が求められている。本発明の保護基含有フラーレン誘導体は、通常、上記用途に使用される有機溶媒への溶解度が高いことより、特殊な溶媒を用いることなく、より高濃度で他の材料と複合化することが可能である。また、保護基含有フラーレン誘導体単独で成膜することも可能である。この際、本発明の保護基含有フラーレン誘導体は、フラーレン構造が本質的に有する高抵抗、低誘電率の性質を保持しており、複合化して用いる際にはフィラーとしての機械的強度の向上効果を有することができ、これにより、従来にない優れた性能の低誘電率の層間絶縁膜の実現が可能となる。
[4−2.太陽電池用途]
有機太陽電池への応用も可能である。この分野においては、シリコン系の無機太陽電池と比較して、優位な点が多数あるもののエネルギー変換効率が低く、実用レベルに十分には達していない。この点を克服するためのものとして、最近、電子供与体である導電性高分子と、電子受容体であるフラーレン並びにフラーレン誘導体とを混合した活性層を有するバルクヘテロ接合型有機太陽電池が提案されている。このバルクヘテロ接合型有機太陽電池では、導電性高分子とフラーレン誘導体それぞれとが分子レベルで混じり合い、その結果非常に大きな界面を作り出すことに成功し、変換効率の大幅な向上が実現されている。
本発明の保護基含有フラーレン誘導体は、上記用途で使用される有機溶媒への溶解度が高いため、p型半導体と効率的なバルクへテロ接合構造を構成することが容易である。また、本発明の保護基含有フラーレン誘導体は、本質的にn型半導体としてのフラーレンの性質は保持している。これらのことにより、本発明の保護基含有フラーレン誘導体を用いれば、極めて高性能な有機太陽電池の実現が可能となる。さらにこの高溶解性を利用し、導電性高分子等の電子供与体層との層分離制御や誘導体分子の整列配向性・細密充填性などのモルフォロジー制御を可能にし、これにより特性の向上が実現できる上、デバイス設計において高い柔軟性を与える。また、製造上も通常の印刷法やインクジェットによる印刷、更にはスプレー法等により、低コストで容易に大面積化を実現する事が可能である。
[4−3.半導体用途]
光センサー、整流素子等への応用が期待できる電界効果トランジスタの有機材料としてフラーレン及びフラーレン誘導体を使用することが研究されている。一般的にフラーレン及びフラーレン誘導体を用いて電界効果トランジスタを作製した場合は、当該電界効果トランジスタはn型電界効果トランジスタとして機能することが知られている。本発明の保護基含有フラーレン誘導体は、上記用途で使用される有機溶媒への溶解度が高いことにより、塗布による成膜が容易であり、また、n型半導体としてのフラーレンの本質的な性質は保持している。これにより、本発明の保護基含有フラーレン誘導体は、低コスト、高性能な有機半導体として期待できる。
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら制限されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。なお、本明細書の記載において、THFはテトラヒドロフランを表わし、ODCBはオルトジクロロベンゼンを表わし、DMSOはジメチルスルホキシドを表わす。さらに、Meはメチル基を表わし、tBuはt−ブチル基を表わし、Phはフェニル基を表わす。
[実施例1:C60(3,5−Br2−4−OH−C625(−CH3)の製造]
原料フラーレン誘導体であるC60(4−OH−C645Me(3.00g、2.49mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(45mL)溶液を調製し、室温で攪拌した。そこにハロゲン化剤であるN−ブロモコハク酸イミド(4.89g、27.47mmol)を加え、室温で1時間攪拌した。その後THF(50mL)を加えさらに2時間攪拌した。イオン交換水(30mL)で反応を停止させ、酢酸エチル(70mL)を加え、分液漏斗にて抽出した。
次に、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた後、濾過を行なった。溶液を濃縮しヘキサン(150mL)で晶析を行ない、50℃真空乾燥を3時間行なうことで、表題化合物C60(3,5−Br2−4−OH−C625(−CH3)をオレンジ色固体(4.65g、2.34mmol、収率93.8%)の生成物として得た。
得られた生成物を1H−NMR、HPLC及びMSにて測定した。なお、1H−NMRは、THF−d8を溶媒とし、270MHzにて測定した。また、HPLCは、0.5mg/mLのTHF溶液を調整し、以下の測定条件で測定した。
カラム種類:L−Column(ODS:3um)
カラムサイズ:100mm×4.6mmφ
溶離液:イソプロピルアルコール/アセトニトリル/燐酸=600/400/1
検出器:UV290nm
HPLC測定の結果、リテンションタイム8.80minに、99.0(Area%)で観測された。
また、1H−NMRの測定結果は、以下の通りであった。
1H−NMR(THF−d8,270MHz)]
9.02ppm(brs,OH,5H),7.92ppm(s,Ph,4H),7.83ppm(s,Ph,4H),7.44ppm(s,Ph,2H),1.58ppm(s,C60Me,3H)
また、MS測定(ESI)の結果は、m/Z=1990であった。
以上の結果から、得られた生成物が表題化合物C60(3,5−Br2−4−OH−C625(−CH3)であることが確認された。
[実施例2]
原料フラーレン誘導体であるC60(4−OH−C645Me(1.00g、0.83mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(15mL)溶液を調製し、室温で攪拌した。そこにハロゲン化剤であるN−ブロモコハク酸イミド(0.74g、4.16mmol)を加え、室温で5時間攪拌した。イオン交換水(15mL)で反応を停止させ、酢酸エチル(30mL)を加え、分液漏斗にて抽出した。
次に、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた後、濾過を行なった。溶液を濃縮しヘキサン(100mL)で晶析を行ない、50℃真空乾燥を3時間行なうことで、C60(4−OH−C645Meの臭素化体混合物をオレンジ色固体として1.18g得た。
得られた生成物をHPLCにて測定した。なお、実施例1と同様の条件で測定を行なった。
HPLC測定の結果、リテンションタイム6.5minから3.2minの間に正規分布上にピークが10本観測された。ここで得られた化合物のDMF溶液をさらにN−ブロモコハク酸イミド(0.74g、4.16mmol)加えたところ、実施例1と同じ化合物が得られたため、水酸基のオルト位に10個以下の臭素が導入された混合物(数、位置異性体)であることが確認された。
[実施例3]
原料フラーレン誘導体であるC60(4−OH−C645Me(0.68g、0.57mmol)のテトラヒドロフラン(25mL)溶液を調製し、室温で攪拌した。そこにハロゲン化剤である臭素(1.00g、6.26mmol)を加え、室温で20時間攪拌した。飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液(15mL)で反応を停止させ、酢酸エチル(50mL)を加え、分液漏斗にて抽出し、イオン交換水で洗浄した。
次に、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた後、濾過を行なった。溶液を濃縮しヘキサン(120mL)で晶析を行ない、50℃真空乾燥を3時間行なうことで、C60(4−OH−C645Meの臭素化体混合物をオレンジ色固体として1.05g得た。
得られた生成物をHPLCにて測定した。なお、実施例1と同様の条件で測定を行なった。
HPLC測定の結果、リテンションタイム8.80minに、93.1(Area%)、7.45minに6.10(Area%)観測された。実施例1の結果から8.80minのピークは10個の臭素が導入されたC60(3,5−Br2−4−OH−C625Meであり、7.45minのピークは水酸基のオルト位に9個の臭素が導入された化合物の混合物であることが明らかとなった。
[実施例4]
原料フラーレン誘導体であるC60(4−OH−C645Me(0.25g、0.21mmol)のテトラヒドロフラン(10mL)溶液を調製し、室温で攪拌した。そこにハロゲン化剤である3重量%臭素水溶液(12.2g)を加え、室温で20時間攪拌した。飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液(10mL)で反応を停止させ、酢酸エチル(20mL)を加え、分液漏斗にて抽出し、イオン交換水で洗浄した。
次に、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた後、濾過を行なった。溶液を濃縮しヘキサン(100mL)で晶析を行ない、50℃真空乾燥を3時間行なうことで、C60(4−OH−C645Meの臭素化体混合物をオレンジ色固体として0.35g得た。
得られた生成物をHPLCにて測定した。なお、実施例1と同様の条件で測定を行なった。
HPLC測定の結果、リテンションタイム8.80minに、75.2(Area%)、7.45minに24.4(Area%)観測された。実施例1の結果から8.80minのピークは10個の臭素が導入されたC60(3,5−Br2−4−OH−C625Meであり、7.45minのピークは水酸基のオルト位に9個の臭素が導入された化合物の混合物であることが明らかとなった。
[実施例5]
原料フラーレン誘導体であるC60(4−OH−C645Me(0.50g、0.42mmol)のテトラヒドロフラン(20mL)溶液を調製し、室温で攪拌した。そこにハロゲン化剤である臭素−ジオキサン錯体(3.83g、15.45mmol)を加え、室温で48時間攪拌した。飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液(20mL)で反応を停止させ、酢酸エチル(40mL)を加え、分液漏斗にて抽出し、イオン交換水で洗浄した。
次に、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた後、濾過を行なった。溶液を濃縮しヘキサン(150mL)で晶析を行ない、50℃真空乾燥を3時間行なうことで、C60(4−OH−C645Meの臭素化体混合物をオレンジ色固体として0.72g得た。
得られた生成物をHPLCにて測定した。なお、実施例1と同様の条件で測定を行なった。
HPLC測定の結果、リテンションタイム8.80minに、46.9(Area%)、7.45minに42.8(Area%)、6.55minに7.8(Area%)観測された。実施例1の結果から8.80minのピークは10個の臭素が導入されたC60(3,5−Br2−4−OH−C625Meであり、7.45minのピークは水酸基のオルト位に9個の臭素が導入された化合物であり、6.55minのピークは水酸基のオルト位に8個の臭素が導入された化合物でありの混合物であることが明らかとなった。
[実施例6]
原料フラーレン誘導体であるC60(4−OH−C645Me(1.00g、0.83mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(15mL)溶液を調製し、室温で攪拌した。そこにハロゲン化剤であるN−ヨードコハク酸イミド(1.93g、0.86mmol)を加え、室温で24時間攪拌した。その後THF(30mL)を加えさらに24時間攪拌した。イオン交換水(20mL)で反応を停止させ、酢酸エチル(60mL)を加え、分液漏斗にて抽出した。
次に、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた後、濾過を行なった。溶液を濃縮しヘキサン(150mL)で晶析を行ない、50℃真空乾燥を3時間行なうことで、表題化合物C60(3,5−I2−4−OH−C625Meをオレンジ色固体(1.92g、0.78mmol、収率93.7%)の生成物として得た。
得られた生成物を1H−NMR及びHPLCにて測定した。なお、実施例1と同様の条件で測定を行なった。
HPLC測定の結果、リテンションタイム8.85minに、97.2(Area%)で観測された。
また、1H−NMRの測定結果は、以下のとおりであった。
1H−NMR(THF−d8,270MHz)]
9.14ppm(brs,OH,5H),8.09ppm(s,Ph,4H),7.94ppm(s,Ph,4H),7.58ppm(s,Ph,2H),1.57ppm(s,C60Me,3H)
以上の結果から、得られた生成物が表題化合物C60(3,5−I2−4−OH−C625Meであることが確認された。
[実施例7:水酸基保護反応(BOC保護)C60(3,5−Br2−4−tBuOC(=O)O−C625Meの製造]
実施例1で製造したC60(3,5−Br2−4−OH−C625Me(6.66g、3.35mmol)のテトラヒドロフラン(312mL)懸濁液に、トリエチルアミン(6.66mL)を添加し、5℃まで冷却した。そこに、反応剤である二炭酸ジ−tertブチル(12.71g、58.18mmol)及び4−ジメチルアミノピリジン(935mg、7.71mmol)を加え、氷冷条件下で15分、室温で45分攪拌した。10重量%塩酸(150mL)で反応を停止させ、クロロホルム(150mL)を加え、分液漏斗にて抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、溶液を濃縮したあとメタノール(800mL)で晶析を行ない、50℃真空乾燥を3時間行なうことで表題化合物C60(3,5−Br2−4−tBuOC(=O)O−C62)Meをオレンジ色固体(7.88g、3.16mmol、収率94.4%)の生成物として得た。
得られた生成物を以下に示す条件でのHPLC及び1H−NMRにて測定した。
カラム種類:ODS
カラムサイズ:150mm×4.6mmφ
溶離液:トルエン/メタノール=3/7
検出器:UV290nm
HPLC測定の結果、リテンションタイム14.81minに94.36(Area%)で観測された。
さらに、1H−NMRの測定結果は、以下のとおりであった。
1H−NMR(CDCl3,270MHz)]
7.92ppm(s,Ph,4H),7.85ppm(s,Ph,4H),7.51ppm(s,Ph,2H),1.58ppm(s,tBu,18H),1.56ppm(s,tBu,18H),1.55ppm(s,Me,3H),1.53ppm(s,tBu,9H)
以上の結果から、得られた生成物が表題化合物C60(3,5−Br2−4−tBuOC(=O)O−C62)Meであることが確認された。
さらに、得られた生成物について、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート(即ち、PGMEA)に溶解させ、溶解度を測定した。その結果50mg/mLという溶解性を示した。実施例1記載のC60(3,5−Br2−4−OH−C625Meの溶解性(1mg/mL以下)と比較すると飛躍的に溶解性が向上した。
本発明の水酸基含有フラーレン誘導体及び保護基含有フラーレン誘導体は、任意の分野で使用することが可能であるが、電子線やX線の短波長領域まで大きな吸収特性を有する臭素原子やヨウ素原子がフラーレンのπ共役を縮小させることなく導入できているという特徴を有することから、従来の多重付加フラーレン誘導体並びにフラーレン誘導体の用途に加え、これらの機能を活かすことができる用途に幅広く用いることができる。

Claims (11)

  1. フラーレン骨格の下記式(I)で表わされる部分構造において、
    1が、水素原子もしくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、2−メチルブチル基、及び3−メチルブチル基のいずれかと結合しており、
    6〜C8が、各々独立に、下記式(II)で表わされる構造の有機基と結合している
    ことを特徴とするフラーレン誘導体。
    Figure 0005119732
    (前記式(I)中、C1〜C10は何れも、フラーレン骨格を構成する炭素原子を表わす。)
    Figure 0005119732
    (前記式(II)中、Xはヒドロキシル基に対してo−位又はp−位に結合する臭素原子又はヨウ素原子を表わし、mは1〜4の整数を表わし、nは1〜4の整数を表わす。ただし、m+nは2〜5の整数である。
  2. 前記C6〜C10が、各々独立に、前記式(II)で表わされる構造の有機基と結合している
    ことを特徴とする請求項1に記載のフラーレン誘導体。
  3. 前記C1が、メチル基と結合している
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載のフラーレン誘導体。
  4. 前記式(II)で表される有機基が下記式(III)で表わされる有機基である
    ことを特徴とする請求項1〜の何れか一項に記載のフラーレン誘導体。
    Figure 0005119732
    (前記式(III)中、Xは臭素原子又はヨウ素原子を表わす。)
  5. 前記フラーレン骨格がフラーレンC60である
    ことを特徴とする請求項1〜の何れか一項に記載のフラーレン誘導体。
  6. フラーレン骨格の下記式(IV)で表わされる部分構造において、C1が水素原子もしくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、2−メチルブチル基、及び3−メチルブチル基のいずれかと結合しており、C6〜C8がそれぞれ独立に下記式(V)で表わされる構造の有機基と結合しているフラーレン誘導体に、臭素化剤及び/又はヨウ素化剤を作用させる工程を有する
    ことを特徴とするフラーレン誘導体の製造方法。
    Figure 0005119732
    (前記式(IV)中、C1〜C10は何れも、フラーレン骨格を構成する炭素原子を表わす。)
    Figure 0005119732
    (前記式(V)中、nは1〜4の整数である。
  7. フラーレン骨格の下記式(VI)で表わされる部分構造において、
    1が、水素原子もしくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、2−メチルブチル基、及び3−メチルブチル基のいずれかと結合しており、
    6〜C8が、各々独立に、下記式(VII)で表わされる構造の有機基と結合している
    ことを特徴とするフラーレン誘導体。
    Figure 0005119732
    (前記式(VI)中、C1〜C10は何れも、フラーレン骨格を構成する炭素原子を表わす。)
    Figure 0005119732
    (前記式(VII)中、XはOR基に対してo−位又はp−位に結合する臭素原子又はヨウ素原子を表わし、mは1〜4の整数を表わし、nは1〜4の整数を表わす。ただし、m+nは2〜5の整数である。また、Rはカルボニル基を少なくとも1個有する炭素数20以下の有機基を表わす。
  8. 前記Rがtert−ブトキシカルボニル基又はtert−ブトキシカルボニルメチル基であることを特徴とする請求項7に記載のフラーレン誘導体。
  9. 前記C6〜C10が、各々独立に、前記式(VII)で表わされる構造の有機基と結合している
    ことを特徴とする、請求項7又は8に記載のフラーレン誘導体。
  10. 前記C1が、メチル基と結合している
    ことを特徴とする請求項7〜9の何れか一項に記載のフラーレン誘導体。
  11. 請求項7〜10の何れか一項に記載のフラーレン誘導体の製造方法であって、
    請求項1記載のフラーレン誘導体の水酸基にカルボニル基を少なくとも1個有する炭素数20以下の有機基を導入する工程を有する
    ことを特徴とするフラーレン誘導体の製造方法。
JP2007125884A 2007-05-10 2007-05-10 フラーレン誘導体及びその製造方法 Active JP5119732B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007125884A JP5119732B2 (ja) 2007-05-10 2007-05-10 フラーレン誘導体及びその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007125884A JP5119732B2 (ja) 2007-05-10 2007-05-10 フラーレン誘導体及びその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2008280290A JP2008280290A (ja) 2008-11-20
JP5119732B2 true JP5119732B2 (ja) 2013-01-16

Family

ID=40141409

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007125884A Active JP5119732B2 (ja) 2007-05-10 2007-05-10 フラーレン誘導体及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5119732B2 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5530084B2 (ja) * 2008-09-04 2014-06-25 三菱商事株式会社 フラーレン誘導体並びにその溶液、及びその膜
JP4980437B2 (ja) * 2010-02-08 2012-07-18 国立大学法人大阪大学 フラーレン誘導体とその製造方法、並びにこれを用いたアレルゲン吸着剤
JP5987544B2 (ja) * 2012-08-08 2016-09-07 三菱商事株式会社 酸解離型重合性フラーレン誘導体及びその製造方法
JP6065502B2 (ja) * 2012-09-28 2017-01-25 三菱商事株式会社 フラーレン誘導体及びその製造方法

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4211682B2 (ja) * 2003-05-30 2009-01-21 栄一 中村 フラーレン誘導体及びその製造方法
JP2008280324A (ja) * 2007-04-13 2008-11-20 Mitsubishi Chemicals Corp フラーレン誘導体並びにその溶液及び膜

Also Published As

Publication number Publication date
JP2008280290A (ja) 2008-11-20

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5658434B2 (ja) フラーレン誘導体並びにその溶液及びその膜
JP5119732B2 (ja) フラーレン誘導体及びその製造方法
JP4824959B2 (ja) フラーレン誘導体
US7446166B2 (en) Pyrrole derivative and photosensitive film using the same
JP5394702B2 (ja) フラーレン誘導体並びにその溶液及び膜
EP2980057A1 (en) Compound containing structural unit derived from vinyl ether compound
JP5119792B2 (ja) フラーレン誘導体並びにその溶液及び膜
JP6340782B2 (ja) フラーレン誘導体およびその製造方法
JP5332302B2 (ja) フラーレン誘導体並びにその溶液及びその膜
JP2008280324A (ja) フラーレン誘導体並びにその溶液及び膜
JP5194626B2 (ja) フラーレン誘導体並びにその溶液、製造方法及び膜
JP5292771B2 (ja) フラーレン誘導体並びにその溶液及び膜
JP5792964B2 (ja) フラーレン誘導体の製造方法
JP5530084B2 (ja) フラーレン誘導体並びにその溶液、及びその膜
JP6095229B2 (ja) ビベンゾ[b]フラン化合物、光電変換材料及び光電変換素子
US9676707B2 (en) Process for the synthesis of [6,6]-phenyl-C61butyric acid pentyl ester (PC61BP)
JP2005170902A (ja) 新規化合物および感放射線性樹脂組成物
JP5292785B2 (ja) フラーレン誘導体、並びにその溶液及びその膜
JP4977099B2 (ja) ラジカル重合性基含有環状ポリスルフィドおよびその製造方法並びにその重合体
JP2009046477A (ja) フラーレン誘導体の析出防止方法、フラーレン誘導体溶液の調製方法、及びフラーレン誘導体溶液
JP6371051B2 (ja) アントラキノン誘導体、光電変換材料及び光電変換素子
JP5522906B2 (ja) 新規な光酸発生剤及びそれを含むレジスト材料
JP4973304B2 (ja) 1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸の製造方法
JP5350718B2 (ja) アミノ化フラーレン
JP2003192649A (ja) カリックスアレーン誘導体およびその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20100122

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20120626

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20120810

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20120925

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20121008

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20151102

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Ref document number: 5119732

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313113

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250