JP5119732B2 - フラーレン誘導体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
また、以下の記載では、上述の3重付加部分構造及び/又は5重付加部分構造においてC6〜C10に結合する置換基を「付加置換基」という場合がある。
また、上述の3重付加部分構造及び/又は5重付加部分構造を一つ以上有するフラーレン誘導体を、「多重付加フラーレン誘導体」と総称するものとする。
さらに、前記C6〜C10が、各々独立に、前記式(VII)で表わされる構造の有機基と結合していることが好ましい(請求項9)。
[1−1.水酸基含有フラーレン誘導体の構造]
本発明の水酸基を含有するフラーレン誘導体(以下適宜、「本発明の水酸基含有フラーレン誘導体」という場合がある)は、水酸基を含有する特定の部分構造を有するフラーレン誘導体である。
ここで、「フラーレン」とは、閉殻構造を有する炭素クラスターである。フラーレンの炭素数は、通常60〜130の偶数である。
なお、本明細書では、炭素数i(ここでiは任意の自然数を表わす。)のフラーレン骨格を適宜、一般式「Ci」で表わす。
式(I)中、C1は水素原子又は任意の置換基(即ち、R10)と結合している。前記の置換基は、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体の優れた物性を大幅に損ねるものでなければ、その種類に制限は無い。
R10がハロゲン原子である場合、その具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。なかでも、製造の容易さから塩素原子や臭素原子が好ましい。
中でも、R10としては、製造の容易さから水素原子又は直鎖状のアルキル基がより好ましく、耐酸化性の観点からは直鎖状アルキル基が更に好ましく、なかでも熱安定性も有するメチル基が特に好ましい。
R20は、周期表第4周期以降のハロゲン原子が結合した1価又は多価フェノール基である。なお、本発明のフラーレン誘導体の優れた物性を大幅に損ねるものでなければ、他の置換基が導入されていてもかまわない。
また、式(II)において、水酸基とハロゲン原子との数の和m+nは、2〜5の範囲に含まれる。なお、式(II)ではフェニル基を示しているが、フェニル基に換えてビフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等の他の芳香環基を用いることも可能である。この場合、芳香環基に結合する置換基の数は、芳香環基の種類に応じて適宜調整することが可能である。但し、原料調達の観点からはフェニル基が好ましい。
・フラーレン骨格上に本発明の3重付加部分構造を1つ有する、一般式Ci(R20)3(R10)で表わされる3重付加フラーレン誘導体。
・フラーレン骨格上に本発明の5重付加部分構造を1つ有する、一般式Ci(R20)5(R10)で表わされる5重付加フラーレン誘導体。
・フラーレン骨格上に本発明の3重付加部分構造を2つ有する、一般式Ci(R20)6(R10)2で表わされる6重付加フラーレン誘導体。
・フラーレン骨格上に本発明の3重付加部分構造を1つ、本発明の5重付加部分構造を1つ有する、一般式Ci(R20)8(R10)2で表わされる8重付加フラーレン誘導体。
・フラーレン骨格上に本発明の5重付加部分構造を2つ有する、一般式Ci(R20)10(R10)2で表わされる10重付加フラーレン誘導体。
本発明の水酸基含有フラーレン誘導体は、通常、アルカリ溶媒に可溶、即ち、アルカリ溶媒に対する溶解性が高い。
なお、本明細書において、水酸基含有フラーレン誘導体が「アルカリ溶媒に可溶」であるとは、水酸基含有フラーレン誘導体をアルカリ溶媒に混合し、超音波照射を10分かけた後、目視で沈殿物や不溶分が検出されないことを意味する。具体的には、25℃、常圧下において、水酸化ナトリウム水溶液に対して、水酸化ナトリウム水溶液の単位体積(1mL)あたり、水酸基含有フラーレン誘導体が50mg以上溶解する場合には、その水酸基含有フラーレン誘導体はアルカリ溶媒に対して可溶、即ち、アルカリ溶媒に対する溶解性が高いと判断する。
なお、これらのアルカリ溶媒は、何れか1種のみを用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても構わない。
[2−1.保護基含有フラーレン誘導体の構造]
本発明の水酸基含有フラーレン誘導体は、一般的にエステル溶媒に難溶である場合が多い。しかしながら、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体のフェノール基の水酸基に対して適切な保護基を導入することで、エステル溶媒に高溶解を示すフラーレン誘導体(本発明の保護基含有フラーレン誘導体)へと変換することができる。以下に、エステル溶媒に高溶解性を示す本発明の保護基含有フラーレン誘導体に関して詳細に説明する。
式(VII)で表わされる有機基は、周期表第4周期以降のハロゲン原子が結合した1価又は多価フェノール基の保護化体であり、式(II)に表される水酸基の水素原子が有機基Rで置換された構造となっているほかは、R20と同様になっている。よって、式(VII)において、X、m及びnは、式(II)において説明したものと同様である。なお、本発明のフラーレン誘導体の優れた物性を大幅に損ねるものでなければ、他の置換基が導入されていてもかまわない。
また、nが2以上である場合、Rは同種類であっても良く、異なる種類の組み合わせであってもよい。なお、式(VI)ではフェニル基を示しているが、フェニル基に換えてビフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等の他の芳香環基を用いることも可能である。この場合、芳香環基に結合する置換基の数は、芳香環基の種類に応じて適宜調整することが可能である。但し、原料調達の観点からはフェニル基が好ましい。
本発明の保護基含有フラーレン誘導体は、有機溶媒一般、特に通常のフラーレン誘導体が難溶の極性有機溶媒、例えばシクロヘキサノン、メチルアミルケトン、乳酸エチル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート(以下、適宜「PGMEA」という場合がある。)へ良好な溶解性を示す。特に産業用途で使用量の伸びているPGMEA等のエステル溶媒に可溶、即ち、エステル溶媒に対する溶解性が高い。
なお、本明細書において、フラーレン誘導体が「エステル溶媒に可溶」であるとは、フラーレン誘導体をエステル溶媒に混合し、超音波照射を10分かけた後、目視で沈殿物や不溶分が検出されないことを意味する。具体的には、25℃、常圧下において、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート又は乳酸エチルの何れかのエステル溶媒に対して、エステル溶媒の単位体積(1mL)あたり、フラーレン誘導体が10mg以上溶解する場合には、そのフラーレン誘導体はエステル溶媒に対して可溶、即ち、エステル溶媒に対する溶解性が高いと判断する。
なお、エステル溶媒は、何れか1種のみを用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても構わない。
また、フラーレン誘導体が前記のエステル溶媒に溶解する場合、そのフラーレン誘導体は同様に他の有機溶媒に可溶である場合が多い。したがって、本発明のフラーレン誘導体のエステル溶媒に対する溶解性が高いことは、本発明のフラーレン誘導体を、例えば、色素増感太陽電池、有機薄膜太陽電池等の有機太陽電池、有機トランジスタ・ダイオード、有機電界発光素子(有機EL素子)、非線形光学材等の有機デバイス全般;樹脂添加剤;潤滑剤;絶縁膜、Li2次電池・燃料電池・キャパシター等の電池における電池基材及びその添加剤・表面修飾等のコーティング材、その他セパレータ等の部材を構成する材料及び添加剤;金属・セラミクス添加剤;固体潤滑剤及び潤滑油添加剤等摺動用途への添加剤、触媒用、更には塗料・インク・医薬・化粧品・診断薬など、多方面での産業分野に適用可能であることを示している。
本発明の水酸基含有フラーレン誘導体及び保護基含有フラーレン誘導体の製造方法に制限は無く、任意の方法により合成することができる。
本発明の水酸基含有フラーレン誘導体及び保護基含有フラーレン誘導体も、上記文献記載の方法で製造することが可能である、
まず、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体の製造方法を説明する。ここで説明する本発明の水酸基含有フラーレン誘導体の製造方法では、フラーレン骨格の下記式(IV)で表わされる部分構造において、C1が水素原子又は任意の置換基(即ち、R10)と結合しており、C6〜C8がそれぞれ独立に下記式(V)で表わされる構造の有機基と結合しているフラーレン誘導体(以下適宜、「原料フラーレン誘導体」という場合がある。)に、ハロゲン化剤を作用させるハロゲン化工程を経て、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体を製造する。なお、以下の説明において、下記式(V)で表わされる構造の有機基を、適宜「R40」という。
原料フラーレン誘導体は、R20の代わりにR40を有する以外は、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体と同様の構成を有している。したがって、原料フラーレン誘導体としては、式(V)中のC6〜C8もしくはC6〜C10が、各々独立に、R40と結合しているものを用いる。
ハロゲン化剤としては、R40のハロゲン化、即ち、R40中のベンゼン環に第4周期以降のハロゲン原子を結合させることができれば他に制限は無い。その例を挙げると、臭素化剤、ヨウ素化剤などが挙げられる。具体例としては、臭素、ヨウ素等の分子状ハロゲン;臭素、ヨウ素等の分子状ハロゲンの水溶液;臭素、ヨウ素等のジオキサン、モルホリン等の錯体;N−ブロモスクシンイミド、N−ヨードスクシンイミド等のN−ハロイミド類;N−ブロモアセトアミド、N−ヨードアセトアミド等のN−ハロアミド類;三臭化リン、五臭化リン、オキシ臭化リン、オキシヨウ化リン等のリン化合物類;o−トルエンスルホン酸ブロマイド、o−トルエンスルホン酸ヨード、p−トルエンスルホン酸ブロマイド、p−トルエンスルホン酸ヨード、メタンスルホン酸ブロマイド、メタンスルホン酸ヨード等のスルホン酸ハライド類;次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸等の次亜ハロゲン酸類;臭化ヨウ素、塩化臭素等の混合ハロゲン分子;臭化チオニル、ヨウ化チオニル、臭化スルフリル、ヨウ化スルフリル等の硫黄化合物類等が挙げられる。
なお、これらハロゲン化剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
例えば、水酸基を一つ有するフェノール5重付加体に対して、10個のハロゲン原子を導入しようとする場合には、ハロゲン化剤は水酸基の数に対して、通常2倍モル以上、好ましくは2.2倍モル以上、また、通常10倍モル以下、好ましくは5倍モル以下、より好ましくは3倍モル以下用いる。ハロゲン化剤の量が少なすぎると目的とする数のハロゲン原子を導入できない可能性があり、多すぎると製造コストの点から不利となる可能性がある。
本発明の水酸基含有フラーレン誘導体を製造する際、通常は反応媒として溶媒を用い、当該溶媒中で反応を進行させる。
反応に使用する溶媒は反応の進行を著しく妨げない限り任意であるが、通常は有機溶媒を用いる。具体的な溶媒の種類は、反応の種類によって適切なものを選択すればよい。
また、反応の種類によっては、有機溶媒の中に水を適量加えてもかまわない。
上述した原料フラーレン誘導体とハロゲン化剤とを、通常は溶媒中で反応させて、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体を得る。この際、反応系には、反応の進行を阻害しない限り上述したもの以外の成分を含有させても良い。
ハロゲン化反応が進行すれば、原料フラーレン誘導体、ハロゲン化剤及び溶媒等の混合順序は問わないが、通常、原料フラーレン誘導体を溶媒中に混合してから、そこにハロゲン化剤を混合することにより反応を行なう。
本発明の水酸基含有フラーレン誘導体が得られる限り、上記のハロゲン化工程の工程前、工程中及び工程後において、所望の工程を任意に行なうことができる。
本発明の水酸基含有フラーレン誘導体を出発原料として、その水酸基に特定の有機基(保護基)を導入する工程を経て、本発明の保護基含有フラーレン誘導体を製造することができる。以下、その有機基の導入方法に関して説明する。
(1)本発明の水酸基含有フラーレン誘導体をエステル化剤と反応させて、エステル化する。
(2)本発明の水酸基含有フラーレン誘導体をカーボネート化剤と反応させて、カーボネート化する。
(3)本発明の水酸基含有フラーレン誘導体をエーテル化剤と反応させて、エーテル化する。
(4)本発明の水酸基含有フラーレン誘導体をウレタン化剤と反応させて、ウレタン化する。
また、使用する塩基の量としては、反応を阻害しなければ任意の量を用いることができる。
(1)エステル化による合成方法
エステル化による合成方法では、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体に対してエステル化剤を用い、エステル化を行なう。
エステル化剤の例としては、RaC(=O)Xaで表わされる酸ハライド、RbC(=O)OC(=O)Rcで表わされる酸無水物などが挙げられる。ここで、Ra、Rb及びRcは、各々独立に、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体とエステル化剤とが反応することにより本発明の保護基含有フラーレン誘導体を生成しうる任意の基を表わす。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、sec−イソアミル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1,2,2−トリメチルプロピル基等の分岐状の鎖状アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基;1,1−ジメチルアリル基、2,2−ジメチルブタ−3−エン−1−イル基等のアルケニル基などが挙げられるが、中でも分岐状のアルキル基が好ましい。また、XaはCl、Br、I等のハロゲン原子を表わす。なお、エステル化剤は1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。これにより、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体のフェノール基のヒドロキシ基部分がエステル化され、本発明の保護基含有フラーレン誘導体を合成することができる。
カーボネート化による合成方法では、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体に対してカーボネート化剤を用い、カーボネート化を行なう。
カーボネート化剤の例としては、RdOC(=O)OC(=O)ORe等で表わされる二炭酸エステルなどが挙げられる。ここで、Rd及びReは、各々独立に、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体とカーボネート化剤とが反応することにより本発明の保護基含有フラーレン誘導体を生成しうる任意の基を表わす。その具体例としては、前記の基Ra〜Rcと同様の基を挙げることができる。なお、カーボネート化剤は1種のみを用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。これにより、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体のフェノール基のヒドロキシ基部分がカーボネート化され、本発明の保護基含有フラーレン誘導体を合成することができる。
エーテル化による合成方法では、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体に対してエーテル化剤を用い、エーテル化を行なう。
エーテル化剤の例としては、Xb−Rf等のハロゲン化物などが挙げられる。ここで、XbはCl、Br、I等のハロゲン原子を表わす。また、Rfは、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体とエーテル化剤とが反応することにより本発明の保護基含有フラーレン誘導体を生成しうる任意の基を表わす。その具体例としては、前記の基Ra〜Reと同様の基を挙げることができる。また、例えば、上述したハロゲン化物のハロゲン原子に代えて、求核置換反応の脱離基となりうる官能基を有するものをエーテル化剤として用いても構わない。求核置換反応の脱離基となりうる官能基の例としては、アセトキシ基、トリフロロアセトキシ基等のアシロキシ基;メタンスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基、トルエンスルホニルオキシ基等のスルホニルオキシ基などが挙げられる。なお、エーテル化剤は、1種のみを用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。これにより、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体のフェノール基のヒドロキシ基部分がエーテル化され、本発明の保護基含有フラーレン誘導体を合成することができる。
ウレタン化による合成方法では、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体に対してウレタン化剤を用い、ウレタン化を行なう。
ウレタン化剤の例としては、RgNCOで表わされるイソシアネート類などが挙げられる。ここで、Rgは、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体とウレタン化剤とが反応することにより本発明の保護基含有フラーレン誘導体を生成しうる任意の基を表わす。その具体例としては、前記の基Ra〜Rfと同様の基を挙げることができる。なお、ウレタン化剤は1種のみを用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。これにより、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体のフェノール基のヒドロキシ基部分がウレタン化され、本発明の保護基含有フラーレン誘導体を合成することができる。
得られる本発明の保護基含有フラーレン誘導体は、必要に応じて、適宜、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)やシリカゲルカラムクロマトグラフィー、アルミナカラムクロマトグラフィーなどの手法で精製してもよい。単離収率は、上述の好ましい反応条件で行なえば、通常80%以上、好ましくは90%以上である。
本発明の水酸基含有フラーレン誘導体及び保護基含有フラーレン誘導体は、前述に記載の用途に用いることができる。以下に、いくつかの用途に関して具体的に説明するが、本発明の水酸基含有フラーレン誘導体及び保護基含有フラーレン誘導体の機能が発揮できる用途に関しては、以下の表記に限定されるものではない。
近年、コンピュータの中央処理装置(CPU)用回路基盤には、樹脂薄膜を層間絶縁膜とする高密度かつ微細な多層配線に適した樹脂薄膜配線が適用されるようになってきた。将来のより高速な処理能力を有するコンピュータを実現するには、高密度かつ繊細な多層配線を活かし、かつ信号の高速伝播に適した低誘電率絶縁材料の開発が求められている。本発明の保護基含有フラーレン誘導体は、通常、上記用途に使用される有機溶媒への溶解度が高いことより、特殊な溶媒を用いることなく、より高濃度で他の材料と複合化することが可能である。また、保護基含有フラーレン誘導体単独で成膜することも可能である。この際、本発明の保護基含有フラーレン誘導体は、フラーレン構造が本質的に有する高抵抗、低誘電率の性質を保持しており、複合化して用いる際にはフィラーとしての機械的強度の向上効果を有することができ、これにより、従来にない優れた性能の低誘電率の層間絶縁膜の実現が可能となる。
有機太陽電池への応用も可能である。この分野においては、シリコン系の無機太陽電池と比較して、優位な点が多数あるもののエネルギー変換効率が低く、実用レベルに十分には達していない。この点を克服するためのものとして、最近、電子供与体である導電性高分子と、電子受容体であるフラーレン並びにフラーレン誘導体とを混合した活性層を有するバルクヘテロ接合型有機太陽電池が提案されている。このバルクヘテロ接合型有機太陽電池では、導電性高分子とフラーレン誘導体それぞれとが分子レベルで混じり合い、その結果非常に大きな界面を作り出すことに成功し、変換効率の大幅な向上が実現されている。
光センサー、整流素子等への応用が期待できる電界効果トランジスタの有機材料としてフラーレン及びフラーレン誘導体を使用することが研究されている。一般的にフラーレン及びフラーレン誘導体を用いて電界効果トランジスタを作製した場合は、当該電界効果トランジスタはn型電界効果トランジスタとして機能することが知られている。本発明の保護基含有フラーレン誘導体は、上記用途で使用される有機溶媒への溶解度が高いことにより、塗布による成膜が容易であり、また、n型半導体としてのフラーレンの本質的な性質は保持している。これにより、本発明の保護基含有フラーレン誘導体は、低コスト、高性能な有機半導体として期待できる。
原料フラーレン誘導体であるC60(4−OH−C6H4)5Me(3.00g、2.49mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(45mL)溶液を調製し、室温で攪拌した。そこにハロゲン化剤であるN−ブロモコハク酸イミド(4.89g、27.47mmol)を加え、室温で1時間攪拌した。その後THF(50mL)を加えさらに2時間攪拌した。イオン交換水(30mL)で反応を停止させ、酢酸エチル(70mL)を加え、分液漏斗にて抽出した。
カラムサイズ:100mm×4.6mmφ
溶離液:イソプロピルアルコール/アセトニトリル/燐酸=600/400/1
検出器:UV290nm
[1H−NMR(THF−d8,270MHz)]
9.02ppm(brs,OH,5H),7.92ppm(s,Ph,4H),7.83ppm(s,Ph,4H),7.44ppm(s,Ph,2H),1.58ppm(s,C60Me,3H)
原料フラーレン誘導体であるC60(4−OH−C6H4)5Me(1.00g、0.83mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(15mL)溶液を調製し、室温で攪拌した。そこにハロゲン化剤であるN−ブロモコハク酸イミド(0.74g、4.16mmol)を加え、室温で5時間攪拌した。イオン交換水(15mL)で反応を停止させ、酢酸エチル(30mL)を加え、分液漏斗にて抽出した。
HPLC測定の結果、リテンションタイム6.5minから3.2minの間に正規分布上にピークが10本観測された。ここで得られた化合物のDMF溶液をさらにN−ブロモコハク酸イミド(0.74g、4.16mmol)加えたところ、実施例1と同じ化合物が得られたため、水酸基のオルト位に10個以下の臭素が導入された混合物(数、位置異性体)であることが確認された。
原料フラーレン誘導体であるC60(4−OH−C6H4)5Me(0.68g、0.57mmol)のテトラヒドロフラン(25mL)溶液を調製し、室温で攪拌した。そこにハロゲン化剤である臭素(1.00g、6.26mmol)を加え、室温で20時間攪拌した。飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液(15mL)で反応を停止させ、酢酸エチル(50mL)を加え、分液漏斗にて抽出し、イオン交換水で洗浄した。
HPLC測定の結果、リテンションタイム8.80minに、93.1(Area%)、7.45minに6.10(Area%)観測された。実施例1の結果から8.80minのピークは10個の臭素が導入されたC60(3,5−Br2−4−OH−C6H2)5Meであり、7.45minのピークは水酸基のオルト位に9個の臭素が導入された化合物の混合物であることが明らかとなった。
原料フラーレン誘導体であるC60(4−OH−C6H4)5Me(0.25g、0.21mmol)のテトラヒドロフラン(10mL)溶液を調製し、室温で攪拌した。そこにハロゲン化剤である3重量%臭素水溶液(12.2g)を加え、室温で20時間攪拌した。飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液(10mL)で反応を停止させ、酢酸エチル(20mL)を加え、分液漏斗にて抽出し、イオン交換水で洗浄した。
HPLC測定の結果、リテンションタイム8.80minに、75.2(Area%)、7.45minに24.4(Area%)観測された。実施例1の結果から8.80minのピークは10個の臭素が導入されたC60(3,5−Br2−4−OH−C6H2)5Meであり、7.45minのピークは水酸基のオルト位に9個の臭素が導入された化合物の混合物であることが明らかとなった。
原料フラーレン誘導体であるC60(4−OH−C6H4)5Me(0.50g、0.42mmol)のテトラヒドロフラン(20mL)溶液を調製し、室温で攪拌した。そこにハロゲン化剤である臭素−ジオキサン錯体(3.83g、15.45mmol)を加え、室温で48時間攪拌した。飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液(20mL)で反応を停止させ、酢酸エチル(40mL)を加え、分液漏斗にて抽出し、イオン交換水で洗浄した。
HPLC測定の結果、リテンションタイム8.80minに、46.9(Area%)、7.45minに42.8(Area%)、6.55minに7.8(Area%)観測された。実施例1の結果から8.80minのピークは10個の臭素が導入されたC60(3,5−Br2−4−OH−C6H2)5Meであり、7.45minのピークは水酸基のオルト位に9個の臭素が導入された化合物であり、6.55minのピークは水酸基のオルト位に8個の臭素が導入された化合物でありの混合物であることが明らかとなった。
原料フラーレン誘導体であるC60(4−OH−C6H4)5Me(1.00g、0.83mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(15mL)溶液を調製し、室温で攪拌した。そこにハロゲン化剤であるN−ヨードコハク酸イミド(1.93g、0.86mmol)を加え、室温で24時間攪拌した。その後THF(30mL)を加えさらに24時間攪拌した。イオン交換水(20mL)で反応を停止させ、酢酸エチル(60mL)を加え、分液漏斗にて抽出した。
HPLC測定の結果、リテンションタイム8.85minに、97.2(Area%)で観測された。
[1H−NMR(THF−d8,270MHz)]
9.14ppm(brs,OH,5H),8.09ppm(s,Ph,4H),7.94ppm(s,Ph,4H),7.58ppm(s,Ph,2H),1.57ppm(s,C60Me,3H)
実施例1で製造したC60(3,5−Br2−4−OH−C6H2)5Me(6.66g、3.35mmol)のテトラヒドロフラン(312mL)懸濁液に、トリエチルアミン(6.66mL)を添加し、5℃まで冷却した。そこに、反応剤である二炭酸ジ−tertブチル(12.71g、58.18mmol)及び4−ジメチルアミノピリジン(935mg、7.71mmol)を加え、氷冷条件下で15分、室温で45分攪拌した。10重量%塩酸(150mL)で反応を停止させ、クロロホルム(150mL)を加え、分液漏斗にて抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、溶液を濃縮したあとメタノール(800mL)で晶析を行ない、50℃真空乾燥を3時間行なうことで表題化合物C60(3,5−Br2−4−tBuOC(=O)O−C6H2)Meをオレンジ色固体(7.88g、3.16mmol、収率94.4%)の生成物として得た。
カラムサイズ:150mm×4.6mmφ
溶離液:トルエン/メタノール=3/7
検出器:UV290nm
[1H−NMR(CDCl3,270MHz)]
7.92ppm(s,Ph,4H),7.85ppm(s,Ph,4H),7.51ppm(s,Ph,2H),1.58ppm(s,tBu,18H),1.56ppm(s,tBu,18H),1.55ppm(s,Me,3H),1.53ppm(s,tBu,9H)
Claims (11)
- フラーレン骨格の下記式(I)で表わされる部分構造において、
C1が、水素原子もしくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、2−メチルブチル基、及び3−メチルブチル基のいずれかと結合しており、
C6〜C8が、各々独立に、下記式(II)で表わされる構造の有機基と結合している
ことを特徴とするフラーレン誘導体。
- 前記C6〜C10が、各々独立に、前記式(II)で表わされる構造の有機基と結合している
ことを特徴とする請求項1に記載のフラーレン誘導体。 - 前記C1が、メチル基と結合している
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のフラーレン誘導体。 - 前記フラーレン骨格がフラーレンC60である
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のフラーレン誘導体。 - フラーレン骨格の下記式(IV)で表わされる部分構造において、C1が水素原子もしくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、2−メチルブチル基、及び3−メチルブチル基のいずれかと結合しており、C6〜C8がそれぞれ独立に下記式(V)で表わされる構造の有機基と結合しているフラーレン誘導体に、臭素化剤及び/又はヨウ素化剤を作用させる工程を有する
ことを特徴とするフラーレン誘導体の製造方法。
- フラーレン骨格の下記式(VI)で表わされる部分構造において、
C1が、水素原子もしくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、2−メチルブチル基、及び3−メチルブチル基のいずれかと結合しており、
C6〜C8が、各々独立に、下記式(VII)で表わされる構造の有機基と結合している
ことを特徴とするフラーレン誘導体。
- 前記Rがtert−ブトキシカルボニル基又はtert−ブトキシカルボニルメチル基であることを特徴とする請求項7に記載のフラーレン誘導体。
- 前記C6〜C10が、各々独立に、前記式(VII)で表わされる構造の有機基と結合している
ことを特徴とする、請求項7又は8に記載のフラーレン誘導体。 - 前記C1が、メチル基と結合している
ことを特徴とする請求項7〜9の何れか一項に記載のフラーレン誘導体。 - 請求項7〜10の何れか一項に記載のフラーレン誘導体の製造方法であって、
請求項1記載のフラーレン誘導体の水酸基にカルボニル基を少なくとも1個有する炭素数20以下の有機基を導入する工程を有する
ことを特徴とするフラーレン誘導体の製造方法。
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