JP4824507B2 - ストレートパーマ剤 - Google Patents

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Description

本発明は、ストレートパーマ剤に関するものであり、特にヘアカラーを施した毛髪に対しても、パサツキ感の発生(まとまり感がない)や毛髪の損傷を抑制しつつ、ストレートパーマの良好な持続性を発揮することのできるストレートパーマ剤に関するものである。
ヘアカラーが流行すると共に、ヘアカラーを施術する顧客も増加し、それに伴い、ヘアカラーやブリーチによる毛髪の損傷等の悩みを持つ顧客が増えてきている。また、ヘアカラーをする顧客がストレートパーマを施術することを望むこともある。そうした場合に、毛髪のコンディションが著しく低下することになる。特に、「パサツキ感の発生(まとまり感がない)」、「毛髪の損傷」、「ストレート持続性の低下」等が問題視されているのが実情である。
ストレートパーマの一般的な施術工程は、還元剤やアルカリ剤を配合したストレートパーマ第1剤を毛髪に塗布し、毛髪の軟化(S−S結合の切断)を確認した後、水洗、乾燥し、高温の整髪用アイロン(以下、「高温整髪用アイロン」と呼ぶことがある)によって、直毛になる様にクセ付けを行う。その後、過酸化水素や臭素酸塩類等の酸化剤を配合した第2剤を毛髪に塗布し、水洗およびトリートメントを施した後、乾燥させ、高温整髪用アイロンによって、直毛になる様に再度クセ付けを行う工程が一般的である。但し、近年のストレートパーマ剤では、時間短縮や薬剤の性能の向上が図られており、第2剤の処理後の高温整髪用アイロンによるクセ付けを省略する傾向がある。
またストレートパーマ剤は、一般的にクリーム剤の形態(剤型)で使用されることが多い。通常のパーマ剤が液状または低粘性剤型であることと比較すると、一般的なストレートパーマ剤は高粘性の部類に属することになる。高粘性剤型である方が、毛髪から垂れ落ちることなく適切な塗布性を維持し、高温整髪用アイロンの操作性も向上するので、クリーム剤型の方が汎用されている。
ストレートパーマを施す理由は、クセ毛に悩む方が毛髪を直毛にするためであることが最も多い。こうした要望に応えるためのストレートパーマ剤としては、これまで様々なものが開発されている(例えば、非特許文献1、2)。
ストレートパーマ剤は、前述のごとく、高温整髪用アイロンを用いた工程によって使用されるのが一般的であるが(例えば、特許文献1)。この場合、ストレートパーマ第1剤に配合されている還元剤やアルカリ剤によって毛髪が損傷し、更に高温整髪用アイロンを使用することで、毛髪を構成する蛋白質が損傷することになる。こうした現象を防止するために、ストレートパーマ剤には、毛髪の損傷を抑制するための成分の配合が必須とされている。こうした成分として、例えば特許文献2には、ストレートパーマ剤にセラミドを主成分とする細胞間脂質を配合することによって毛髪の損傷を抑制することが提案されている。また特許文献3には、ストレートパーマ剤に絹繊維蛋白加水分解物を配合することによって、毛髪の損傷を抑制することが提案されている。
「SCIENCE of WAVE」日本パーマネントウェーブ液工業組合著、新美容出版株式会社発刊、『パーマネントウェーブのサイエンス』、2002年発行、第20〜64頁 「TOMOTOMO 6月号」鷲家真吾著、新美容出版株式会社発刊、『アイロンストレートパーマで、どうして縮毛がストレートになるのですか?』、2006年発行、第75〜77頁 特開2000−256146号公報 特開2001−72557号公報 特開2003−55172号公報
ストレートパーマ剤は毛髪のS−S結合を切断するため、非常に毛髪に負担をかけることになる。また、高温整髪用アイロンを用いるため、毛髪蛋白質が熱変性しやすい状態になる。昨今の流行により、ヘアカラー毛が非常に多いことから、上記作用による毛髪の損傷が非常に激しく、手触り感やまとまり感も悪くなり、ストレートパーマの持続性も低下する。従って、これらの問題点を回避できるような性能が必要とされていた。
これまで提案されているストレートパーマ剤には、毛髪の損傷を抑制する成分を配合したものも提案されており、それなりの効果も発揮されているのであるが、手触り感やまとまり感、およびストレートの持続性の全ての特性を考慮した場合には、不十分であった。
本発明は上記の様な実情に着目してなされたものであって、その目的は、ヘアカラーやブリーチを施す等によって損傷が大きい毛髪に対しても、手触り感やまとまり感を良好に維持し、しかも、ストレートパーマの持続性も良好であるようなストレートパーマ剤を提供することにある。
上記目的を達成することのできた本発明のストレートパーマ剤とは、(a)羊毛またはヒト毛髪から分離および精製されるゲル濾過カラムクロマトグラフィによる平均分子量測定値が11000の蛋白質および9700の蛋白質を含有し、且つ分子量8000〜12000である分画蛋白質と、(b)絹由来のシリル化加水分解蛋白質と、(c)羊毛由来のシリル化加水分解蛋白質および/または大豆由来のシリル化加水分解蛋白質とを配合したものであり、前記(a)分画蛋白質の配合割合が、ストレートパーマ剤全体に占める割合で0.03〜4.0質量%であると共に、(b)絹由来のシリル化加水分解蛋白質と、(c)羊毛由来のシリル化加水分解蛋白質および/または大豆由来のシリル化加水分解蛋白質の配合割合(絹由来のシリル化加水分解蛋白質:羊毛由来のシリル化加水分解蛋白質および/または大豆由来のシリル化加水分解蛋白質)が1:1〜1:3である点に要旨を有するものである。尚、本発明における平均分子量とは、「質量平均分子量」の意味である。
本発明のストレートパーマ剤においては、絹由来のシリル化加水分解蛋白質の配合割合は、ストレートパーマ剤全体に占める割合で0.001〜1.0質量%であることが好ましい。
本発明では、(a)羊毛またはヒト毛髪から分離・精製されるゲル濾過カラムクロマトグラフィによる平均分子量測定値が11000の蛋白質および9700の蛋白質を含有する分子量8000〜12000の蛋白質組成物と、(b)絹由来のシリル化加水分解蛋白質を配合したものとすることによって、パサツキ感や損傷を抑制すると共に、手触り感やまとまり感を良好に維持し、しかもストレートの持続性を良好に改善できるストレートパーマ剤が実現できた。
本発明者らは、前記課題を解決するために、種々の蛋白質組成物や各種添加剤の評価を実施したところ、(a)羊毛またはヒト毛髪から分離・精製されるゲル濾過カラムクロマトグラフィによる平均分子量測定値が11000の蛋白質および9700の蛋白質を含有する分子量8000〜12000の蛋白質組成物と、(b)絹由来のシリル化加水分解蛋白を配合したものでは、上記目的を達成し得るストレートパーマ剤が実現できることを見出し、本発明を完成した。本発明のストレートパーマ剤で用いる各成分の作用効果は次の通りである。
本発明で用いる上記蛋白質組成物は、毛髪に作用して毛髪の損傷を抑制しつつストレートパーマの持続性(ヘアスタイルの保持力)を向上させるという効果を発揮するものであり、本発明者が有用な毛髪処理剤の成分として見出したものである。本発明者は、パーマネントウェーブ形成能を修復・改善する毛髪処理剤の開発を目指してかねてより研究を進めており、その研究の一環として、ヒト毛髪から分離・精製されるゲル濾過カラムクロマトグラフィによる平均分子量測定値が11000の蛋白質(特定蛋白質)がこうした効果を発揮できる成分として有用であることを見出し、その技術的意義が見出されたので先に出願している(特開2004−286738号)。そして上記特定蛋白質だけでなく、平均分子量が9700の蛋白質も含有する分子量8000〜12000の蛋白質組成物(夾雑物を含む毛髪分画蛋白質)の状態で毛髪から分離したものも上記の効果が発揮できることを見出している。本発明は、こうした蛋白質組成物を応用するものであり、特にカールを形成したときだけでなく、ストレートのヘアスタイル(ストレートパーマ)を形成したときにもその持続性を維持できたのである。
尚、上記蛋白質組成物の調製および電気泳動による蛋白質の確認、各蛋白質の精製、分子量測定等は、下記の夫々の方法によって確認できるものである。また、こうした蛋白質組成物は、ヒト毛髪ばかりでなく、羊毛を原料としたときでも同様に得られることを確認している。
(特定蛋白質を含む毛髪蛋白質溶液の調製方法)
本発明における蛋白質組成物は、毛髪から製造、調製することができる。毛髪からの構成蛋白質の抽出(分画)は、従来の2−メルカプトエタノールによる還元処理を利用した方法(例えば、「Journal of Cosmetic Science」1998年、49巻、第13〜22頁)が適切である。本発明に応用した抽出方法を下記に示す。
ブリーチ処理やパーマネントウェーブ処理を受けた経験のない毛髪0.2g(長さ16cm)を脱脂用剤(クロロホルム/メタノール=2/1:容積比)に24時間浸漬させることにより、毛髪表面を脱脂処理した。処理後の毛髪をドライヤにより十分乾燥させ、約1cmの長さに切断した。切断後の毛髪をビーカに入れ、毛髪蛋白質分画抽出液[2.5mol/L(リットル)の2−メルカプトエタノールと1質量%のSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)を含む0.025mol/Lのトリス塩酸バッファ、pH8.3]20mLと良く混合させ、50℃、72時間の条件下で浸漬させた。
浸漬処理後の溶液を透析チューブ(分子量8000用、ナカライテスク製)に入れ、イオン交換水を外液とし16時間以上(外液交換4回)の透析を行った。透析後のチューブ内液(分子量8000以上)を攪拌式セル(分子量3000以上用、ミリポア製)による限外濾過処理で濃縮した。濃縮により蛋白質濃度が0.1〜1.5mg/mLに調整された試料を本発明の毛髪蛋白質溶液(特定蛋白質を含む)として得た。
(毛髪蛋白質溶液のTricine−SDS−ポリアクリルアミド電気泳動法による蛋白質のバンド確認方法)
毛髪蛋白質溶液と試料バッファ(0.5mol/Lのトリス塩酸バッファを2mL、10質量%のSDS溶液を4mL、2−メルカプトエタノールを1.2mL、グリセロールを2mL、イオン交換水を0.8mL、1質量%BPB(ブロモフェノールブル)を数滴加え、全量10mLにする)を1:1の割合で混合し、3分間、95℃という条件で熱変性させ、電気泳動用試料とした。
下記の組成で予め作製しておいたゲルに試料をアプライし、50mAの定電流で電気泳動を行った。尚、泳動バッファの組成は、陽極のバッファとして0.2mol/LのTris(pH8.9)を、陰極のバッファとして0.1mol/LのTrisと0.1mol/LのTricine、0.1質量%のSDS溶液の混合溶液(pH8.25)を使用した。泳動終了後、ゲルをCBB(クマシーブリリアントブル)染色液にて蛋白質バンドを染色し、エタノール/酢酸/イオン交換水を組成[エタノール/酢酸/イオン交換水=3/1/6:容積比]とする脱色液で蛋白質以外のゲル部位を脱色した。そして、Tricine−SDS−ポリアクリルアミド電気泳動法によって、分子量が11000の位置にバンドがあることを確認した(例えば、「Analytical Biochemistry」1987年、166巻、第368〜379頁)。
(分離ゲル)
アクリルアミド溶液(48質量%のアクリルアミドと1.5質量%のビスアクリルアミド)を6mL、ゲルバッファ(3.0mol/LのTrisと0.3質量%のSDS溶液の混合液、pH8.45)を10mL、グリセロールを4mL、10質量%過硫酸アンモニウムを0.15mL、TEMED(N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン)を0.15mL、残部イオン交換水からなる分離ゲルを作製した(全量30mL)。
(濃縮ゲル)
アクリルアミド溶液(48質量%のアクリルアミドと1.5質量%のビスアクリルアミド)を1mL、ゲルバッファ(3.0mol/LのTrisと0.3質量%のSDS溶液の混合液、pH8.45)を3.1mL、10質量%過硫酸アンモニウムを0.075mL、TEMED(N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン)を0.005mL、残部イオン交換水からなる濃縮ゲルを作製した(全量12.5mL)。
(蛋白質の精製)
カラム内部の樹脂には、DEAE(ジエチルアミノエチル)−セルロース(ナカライテスク製)を用いた。精製方法について下記に述べる。上記樹脂をカラム内に充填し、酸およびアルカリによる洗浄を行った後、イオン交換水によりカラム内を平衡化する。平衡化されたカラム内に上記毛髪蛋白質溶液を徐々にアプライする。アプライ後、0.1〜0.5mol/Lの塩でイオン勾配処理を行うことにより、目的の蛋白質を溶離させるという一般的な蛋白質精製方法により、毛髪蛋白質溶液の蛋白質を分離した。
(分子量測定)
ゲル濾過カラムクロマトグラフィによる分子量測定を下記に述べる。高速液体カラムクロマトグラフとして「Shimadzu Liquid chromatograph LC−6A」(島津製作所製)を用い、検出器として「Shimadzu UV−VIS
Spectrophotometric detector SPD−6AV」(島津製作所製)を用い、レコーダーとして「Shimadzu Chromatopac C−R6A」(島津製作所製)を用い、ガードカラムとして「TSK−GEL Guard
Column SW 7.5×7.5(mm)」(東ソー製)を用い、カラムとして「TSK−GEL G3000SW 7.5×600(mm)」(東ソー製)を用いた。
分析方法は、上記の機器および試料を用いて、流速0.5mL/min、測定波長280nmの条件下で、溶出バッファ(0.1mol/LのNaH2PO4/Na2HPO4(pH7.0)+0.1mol/LのNa2SO4)を使用し分析を行った。尚、この分子量測定は、分子量が既知の標準マーカとして、グルタミン酸脱水素酵素(分子量290000)、乳酸脱水素酵素(分子量142000)、エノラーゼ(分子量67000)、アデニル酸キナーゼ(分子量32000)、チトクロームc(分子量12400)を用いて測定したものである。
上記蛋白質組成物の配合割合は、ストレートパーマ剤全体に占める割合で0.03〜4.0質量%であることが好ましい。この割合が、0.03質量%未満になると蛋白質組成物を配合した効果が発揮されず、4.0質量%を超えると却って蛋白質が付着しすぎ、ベタツキ感が生じコンディションが悪くなる。
一方、本発明で用いる「絹由来のシリル化加水分解蛋白質」は、ストレートパーマの持続性を維持すると共に、ストレートパーマ後の毛髪へ静電気が帯電することを抑制して、毛髪のパサツキ感を抑制する効果を発揮するものである。特に、上記蛋白質組成物と絹由来のシリル化加水分解蛋白質を併用することによって、こうした効果を付与することができる。こうした効果を発揮させるためには、絹由来のシリル化加水分解蛋白質の配合割合は、ストレートパーマ剤全体に占める割合で0.001〜1.0質量%であることが好ましい。即ち、このシリル化加水分解蛋白質の配合割合がこの割合が、0.001質量%未満になるとシリル化加水分解蛋白質を配合した効果が発揮されず、1.0質量%を超えると却ってベタツキ感が生じ、手触り感に悪影響を及ぼすことになる。尚、本発明のストレートパーマ剤では、絹由来のシリル化加水分解蛋白質を必須成分として含むものであるが、各種シリル化加水分解蛋白質のうち絹由来のシリル化加水分解蛋白質を選んだのは帯電防止効果が高く、しっとりとやわらかい仕上がり感が得られるという理由からである。
本発明のストレートパーマ剤では、上記のような蛋白質組成物と絹由来のシリル化加水分解蛋白を少なくとも併用することによって、パサツキ感の抑制効果、スベリ感の向上効果、損傷抑制効果が有効に発揮され、手触り感やまとまり感をも良好に維持できるのであるが、こうした効果が発揮される理由については、絹由来のシリル化加水分解蛋白質が、毛髪内部で蛋白質組成物と効果的に重合することによって、上記の効果が得られるものと考えられる。
本発明のストレートパーマ剤には、絹由来のシリル化加水分解蛋白質を少なくとも含むものであるが、必要にとって他のシリル化加水分解蛋白質を配合することも有用である。これらのシリル化加水分解蛋白質は、代表的には下記の化学式で示されるものが挙げられるが(式中nは正の整数、Rはアミノ酸側鎖を夫々示す)、これらの物質を配合することによって絹由来のシリル化加水分解蛋白質による効果を更に高めることができる。
こうしたシリル化加水分解蛋白質としては、羊毛由来、小麦由来、大豆由来、トウモロコシ由来、ジャガイモ由来、ゴマ由来等、様々なものがあり、そのいずれも使用できるが、このうち好ましいのは羊毛由来と大豆由来のシリル化加水分解蛋白(羊毛由来のシリル化加水分解蛋白および/または大豆由来のシリル化加水分解蛋白)である。但し、これらのシリル化加水分解蛋白質は、絹由来のシリル化加水分解蛋白質よりもその効果が低いので、これらのシリル化加水分解蛋白質を配合する場合には、絹由来のシリル化加水分解蛋白質と羊毛由来のシリル化加水分解蛋白および/または大豆由来のシリル化加水分解蛋白の配合割合(絹由来のシリル化加水分解蛋白:羊毛由来のシリル化加水分解蛋白および/または大豆由来のシリル化加水分解蛋白)が1:1〜1:3であることが好ましい。
本発明のストレートパーマ剤は、上記のような蛋白質組成物と絹由来のシリル化加水分解蛋白を必須成分として配合したものであるが、その他ストレートパーマ剤に含まれる通常の有効成分である還元剤やアルカリ剤、反応調整剤、その他各種の添加剤を含むものであっても良い。
上記還元剤は、一般的にパーマネントウェーブ剤やストレートパーマ剤に使用されるものであるが、こうした還元剤としては、チオグリコール酸、チオグリコール酸アンモニウム、チオグリコール酸モノエタノールアミン、L−システイン、DL−システイン、L−システイン塩酸塩、DL−システイン塩酸塩、アセチルシステイン、システアミン、システアミン塩酸塩、チオ乳酸、チオリンゴ酸、グリセリルチオグリコレート、チオグリセリン等が例示される。
アルカリ剤としては、アンモニア水、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、アルギニン等が挙げられる。反応調整剤としては、ジチオジグリコール酸やジチオジグリコール酸塩等が挙げられる。
ストレートパーマ剤に配合される各種添加剤としては、保湿剤類、油脂類、ラノリン類、高級アルコール類、フッ素化合物類、シリコーン類、カチオン化ポリマー類、界面活性剤類(陽イオン界面活性剤類・陰イオン界面活性剤類・非イオン界面活性剤類・両性界面活性剤類)、増粘・ゲル化剤類、防腐剤類、キレート剤類、pH調整剤・酸・アルカリ類、溶剤類、抗炎症剤類、香料、色素類等が挙げられ、これらを適宜配合することができる。
保湿剤類としては、1,3−ブチレングリコ−ル、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、コラーゲン、ゼラチン、エラスチン、コラーゲン分解ペプチド、エラスチン分解ペプチド、ケラチン分解ペプチド、シルク蛋白分解ペプチド、大豆蛋白分解ペプチド、小麦蛋白分解ペプチド、カゼイン分解ペプチド等の蛋白質・ペプチド類およびその誘導体、アルギニン、セリン、グリシン、グルタミン酸、トリメチルグリシン等のアミノ酸類、アロエ抽出物、ハマメリス水、ヘチマ水、カモミラエキス、カンゾウエキス等の植物抽出成分類、ヒアルロン酸ナトリウム、クエン酸塩、コンドロイチン硫酸、乳酸ナトリウム、2−ピロリドン−5−カルボン酸ナトリウム等が挙げられる。
油脂類としては、ヒマシ油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、サフラワー油、オリーブ油、アボカド油、ゴマ油、月見草油、小麦胚芽油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、ローズヒップ油、メドウフォーム油、ティーツリー油、ハッカ油、トウモロコシ油、ナタネ油、ヒマワリ油、小麦胚芽油、綿実油、大豆油、落花生油、コメヌカ油、液状シア脂、ホホバ油等の植物油脂類、流動パラフィン、スクワラン、軽質流動イソパラフィン、セレシン、パラフィンロウ、ポリエチレン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン等の炭化水素等、コハク酸ジ2−エチルヘキシル、パルミチン酸イソプロピル等のエステル類、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ライスワックス、鯨ロウ、セラック、綿ロウ、モクロウ、水添ホホバ油等のロウ類が挙げられる。
ラノリン類としては、液状ラノリン、還元ラノリン、吸着精製ラノリン等が挙げられる。高級アルコール類としては、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール等の直鎖アルコール類、モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、2−デシルテトラデシノール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等の分枝鎖アルコール等が挙げられる。
フッ素系化合物類としては、パーフルオロポリエーテル、ポリパーフルオロエトキシメトキシジフルオロヒドロキシエチル、ポリパーフルオロエトキシメトキシジフルオロメチルジステアリルアミド、ポリパーフルオロエトキシメトキシジフルオロエチルポリエチレングリコールリン酸等のフッ素系化合物誘導体類が挙げられる。
シリコーン類としては、低粘度ジメチルポリシロキサン、高粘度ジメチルポリシロキサン、環状ジメチルシロキサン(デカメチルシクロペンタシロキサン)、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、アミノ変性ポリシロキサン、カチオン変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等が挙げられる。
カチオン化ポリマー類としては、カチオン化セルロース誘導体、カチオン化デンプン、カチオン化グアーガム、ジアリル4級アンモニウムの重合体または共重合体、4級化ポリビニルピロリドン誘導体等が挙げられる。
陽イオン界面活性剤類としては、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム等が挙げられる。
陰イオン界面活性剤類としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレン脂肪アミン硫酸塩、アシルN−メチルタウリン塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、N−アシルアミノ酸塩等が挙げられる。
非イオン界面活性剤類としては、多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルジメチルアミンオキサイド、アルキルポリグリコシド、アルキルグルコシド等が挙げられる。
両性界面活性剤類としては、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシ−N−ヒドロキシイミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。
増粘・ゲル化剤類としては、グアーガム、キサンタンガム、カラギーナン、アルギン酸、トラガントガム、デンプン誘導体、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂アルカノールアミン液等が挙げられる。
防腐剤類としては、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類、安息香酸塩類、フェノキシエタノール、四級アンモニウム塩類等が挙げられる。
キレート剤としては、エデト酸塩、ホスホン酸類、ポリアミノ酸類等が挙げられる。
pH調整剤・酸・アルカリ類としては、リン酸、リンゴ酸、酒石酸、炭酸、フマル酸、クエン酸、乳酸、グリコール酸、コハク酸、塩酸、硫酸、硝酸若しくはそれらの塩類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸水素二ナトリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アルギニン、アンモニア水、アミノメチルプロパノール若しくはそれらの塩類等が挙げられる。
溶剤類としては、水、エタノールやデカメチルシクロペンタシロキサンの他にも、2−プロパノール等の低級アルコール類等が挙げられる。
抗炎症剤類としては、グリチルリチン酸、カルベノキロソン二ナトリウムをはじめとする甘草誘導体、アライトン、グアイアズレン、アロエ、α−ビサボロール等が挙げられる。
尚、本発明のストレートパーマ剤は基本的に第1剤に用いる場合を想定したものであるが、必要によって第2剤として用いることもできる。この場合には、第2剤処理後に高温整髪用アイロン等で加熱処理することが好ましい。
また、本発明のストレートパーマ剤の剤型は、クリーム剤型が最も有用であるが、液状やジェル状等の剤型で用いることもできる。尚、本発明では、加熱処理を行うため高温整髪用アイロンを用いているが、ドライヤーや加熱ロッド・カーラー等の加熱器具によっても同様の効果が得られる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
[実施例1]
(ブリーチ処理毛の作製)
化学的処理を全く受けていない毛髪に下記のブリーチ処理を施し処理毛を作製し、その毛髪について下記のストレートパーマ剤を用いて評価した。
(ブリーチ処理)
トーナーブリーチパウダ(粉末ブリーチ剤:中野製薬株式会社製)とキャラデコオキサイド06(過酸化水素系酸化剤:中野製薬株式会社製)を1:3(質量比)となるように混合したブリーチ剤を、毛髪に質量比1:1の割合で塗布し、30℃、30分間で処理した後、10質量%のSDS溶液(ドデシル硫酸ナトリウム溶液)によって洗浄し、その後乾燥した。
(ストレートパーマ処理毛の作成)
上記ブリーチ処理毛髪に各処方例(表1〜6の処方例1〜31)で示すストレートパーマ第1剤を塗布し、室温で30分間放置した。その後、水洗し、ドライヤー等で乾燥させた後、高温整髪用アイロンにて、直毛になるよう施術した。次に、過酸化水素を含むストレートパーマ第2剤を塗布し、室温で5分間放置した。水洗し、乾燥後、下記の実験に用いた。このとき用いた蛋白質組成物水溶液およびシリル化加水分解蛋白液は、下記のものである。
[蛋白質組成物水溶液]
前述した方法によって分離・精製した蛋白質組成物を用いた(純分濃度は20質量%)。
[シリル化加水分解蛋白液]
各処方例で用いたシリル化加水分解蛋白液は、各々の由来成分により、純分濃度が異なるものである。絹由来および大豆由来のシリル化加水分解蛋白液は、20質量%であり、羊毛由来の加水分解蛋白液のみ25質量%のものである。
(静電気電圧測定試験)
下記表1〜6に示した処方例(処方例1〜31)の上記のストレートパーマ処理毛を用いて、帯電防止効果(パサツキ抑制効果:静電気抑制効果)について確認した。このときの測定方法は、DIGITAL ELECTROSTATIC METER MODEL[KDS−0303](春日電機株式会社製)を用いた。上記乾燥後の毛髪をビニール素材のナイロン手袋で30回毛髪の根元から毛先に向かって擦り、静電気を意図的に発生させ、その後上記測定器によって、毛髪表面の静電気電圧を測定した。測定結果を下記表1〜6に併記する。また、このときの評価基準は下記の通りである。
[帯電防止効果の評価基準]
◎:静電気電圧が70V未満とする。
○:静電気電圧が70以上、85V未満とする。
△:静電気電圧が85以上、100V未満とする。
×:静電気電圧が100V以上とする。
(摩擦係数測定方法)
(A)対象毛髪
化学的処理を受けていない毛髪に上記ブリーチ処理を1回処理した毛髪を用いて、摩擦感測定用固定ヘアピース(以下、「測定用毛束」と呼ぶ)を作製した。
(B)測定
(1)毛髪の調湿:測定用毛束を(20℃、湿度60%)で24時間以上調湿した。
(2)測定機器と条件:測定には、摩擦感テスター「KES−SE」(カトーテック株式会社製)を用いた。
(3)測定は、測定感度:H、摩擦静荷重:50gf、センサー:シリコンタイプの条件にて行った。走査は、順方向(根元からの毛束)にて行った。MIU値(算出数値)に係数0.1を掛け、摩擦係数(μ)を求めた。
その結果を下記表1〜6に併記するが、機器による測定(キシミ感の抑制、ツルツル感、すべり良さ)において本発明によるストレートパーマ第1剤は、良好な結果を示すことが分かる。
(4)専門パネラーによる評価
下記表1〜6に示した処方例1〜31の上記のストレートパーマ処理毛を用いて、毛髪表面のコンディション(キシミ感の抑制、ツルツル感、すべりの良さ)を、専門のパネラー10名で毛束(ヘアピース)を用いて下記の評価基準で判断した。その結果を、下記表1〜6に併記する。
[毛髪表面のコンディション(キシミ感の抑制、ツルツル感、すべりの良さ)の評価基準]
◎:処理前の毛髪と比較し、明らかにコンディションの良さが向上した。
○:処理前の毛髪と比較し、コンディションが良くなった。
△:処理前の毛髪と比較し、コンディションが同程度であった。
×:処理前の毛髪と比較し、コンディションが低下した。
(強度測定試験)
上記ストレートパーマ処理毛を、下記強度測定試験に供した。
[破断強度測定方法]
下記表1〜6の処方例1〜31で調製したストレートパーマ処理毛を用いて、各毛束から毛髪10本を任意に選び、「毛髪直径計測システム」(カトーテック株式会社製)により毛髪の長径(mm)と短径(mm)を計測し、横断面積(mm2)を次の式から求めた。
断面積(mm2)=(π/4)×長径(mm)×短径(mm)
次に、卓上型材料試験機[「テンシロン STA−1150」 (株)オリエンテック製]を用い、上記の毛髪試料の水中における引張り破断値(cN)の測定を行った。その後、横断面積(mm2)当たりの引張り破断値(cN)を算出することで破断強度(cN
/mm2)を求めた。
上記表1の結果より、蛋白質組成物および絹由来のシリル化加水分解蛋白質を含む処方であれば、パサツキ感の抑制効果、スベリ感の向上効果、損傷抑制効果があると考えられる。これは、毛髪内部で絹由来のシリル化加水分解蛋白質が、蛋白質組成物や他のシリル化加水分解蛋白と重合することに起因しているものと考えられる。即ち、毛髪内部で効率的に重合することで、まとまり感があり、パサツキにくい状態になるものと考えらえた。
また表2、3の結果から、蛋白質組成物が入っており、且つその配合量(ストレートパーマ剤全体に対する割合)を4.0質量%以下とすることが有効であることが分かる。更に、絹由来のシリル化加水分解蛋白質と他のシリル化加水分解蛋白質の配合割合は1:3程度であること(表4)や、シリル化加水分解蛋白質としては、少なくとも絹由来のものを含むことが効果的であること(表5)が分かる。表6の結果からして、絹由来のシリル化加水分解蛋白質の配合量はストレートパーマ剤全体に対して0.001〜1.0%程度が好ましいことが分かる。
[実施例2]
実施例1に示した処方例1〜7について、ストレートパーマの持続性について下記の手順にて評価した。
(ストレートパーマの持続性の評価)
実施例1と同様にしてブリーチ処理した各毛髪についてストレートパーマ処理した毛髪を、室温(20℃)、湿度60%の条件で3ヶ月間放置し、下記の基準でストレートパーマの持続性を評価した。
(ストレートパーマ持続性評価基準)
図1は、ストレートパーマの持続性の評価基準を示した図面代用写真である。図2は、上記処方例1〜7で処理したときのストレートパーマの持続性を自然長にて比較した図面代用写真である。これらに基づいて、処方例1〜7で処理したときのストレートパーマの持続性の評価結果を下記表7に併記した。
この結果から明らかなように、少なくとも蛋白質組成物および絹由来のシリル化加水分解蛋白質を含むものであれば(処方例1、4〜6)、ストレートパーマの持続性が高くなっていることが分かる。これは、前述のごとく、毛髪内部で絹由来のシリル化加水分解蛋白質が蛋白質組成物や他のシリル化加水分解蛋白質液と重合することによって、ストレートのヘアスタイルを保持し続けることができるものと考えることができる。
ストレートパーマの持続性の評価基準を示した図面代用写真である。 処方例1〜7で処理したときのストレートパーマの持続性を自然長にて比較した図面代用写真である。

Claims (2)

  1. (a)羊毛またはヒト毛髪から分離および精製されるゲル濾過カラムクロマトグラフィによる平均分子量測定値が11000の蛋白質および9700の蛋白質を含有し、且つ分子量8000〜12000である分画蛋白質と、(b)絹由来のシリル化加水分解蛋白質と、(c)羊毛由来のシリル化加水分解蛋白質および/または大豆由来のシリル化加水分解蛋白質とを配合したものであり、前記(a)分画蛋白質の配合割合が、ストレートパーマ剤全体に占める割合で0.03〜4.0質量%であると共に、(b)絹由来のシリル化加水分解蛋白質と、(c)羊毛由来のシリル化加水分解蛋白質および/または大豆由来のシリル化加水分解蛋白質の配合割合(絹由来のシリル化加水分解蛋白質:羊毛由来のシリル化加水分解蛋白質および/または大豆由来のシリル化加水分解蛋白質)が1:1〜1:3であることを特徴とするストレートパーマ剤。
  2. 絹由来のシリル化加水分解蛋白質の配合割合が、ストレートパーマ剤全体に占める割合で0.001〜1.0質量%である請求項1に記載のストレートパーマ剤。
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