JP4268073B2 - パーマネントウェーブ形成能診断方法および毛髪処理剤並びに毛髪処理方法 - Google Patents
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日本パーマネントウェーブ液工業組合編著「サイエンス オブ ウェーブ」新美容出版株式会社、2002年4月10日発行、第13〜31頁
本発明における蛋白質組成物は、毛髪から製造、調製することができる。毛髪からの構成蛋白質の抽出(分画)は、従来の2−メルカプトエタノールによる還元処理を利用した方法(例えば、「Journal of Cosmetic Science」1998年、49巻、第13〜22頁)が適切である。本発明に応用した抽出方法を下記に示す。
による蛋白質のバンド確認方法)
毛髪蛋白質溶液と試料バッファ(0.5mol/Lのトリス塩酸バッファを2mL、10%のSDS溶液を4mL、2−メルカプトエタノールを1.2mL、グリセロールを2mL、イオン交換水を0.8mL、1%BPB(ブロモフェノールブル)を数滴加え、全量10mLにする)を1:1の割合で混合し、3分間、95℃という条件で熱変性させ、電気泳動用試料とした。
アクリルアミド溶液(48%のアクリルアミドと1.5%のビスアクリルアミド)を6mL、ゲルバッファ(3.0mol/LのTrisと0.3%のSDS溶液の混合液、pH8.45)を10mL、グリセロールを4mL、10%過硫酸アンモニウムを0.15mL、TEMED(N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン)を0.15mL、残部イオン交換水からなる分離ゲルを作製した(全量30mL)。
アクリルアミド溶液(48%のアクリルアミドと1.5%のビスアクリルアミド)を1mL、ゲルバッファ(3.0mol/LのTrisと0.3%のSDS溶液の混合液、pH8.45)を3.1mL、10%過硫酸アンモニウムを0.075mL、TEMED(N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン)を0.005mL、残部イオン交換水からなる濃縮ゲルを作製した(全量12.5mL)。
カラム内部の樹脂には、DEAE(ジエチルアミノエチル)−セルロース(ナカライテスク製)を用いた。精製方法について下記に述べる。上記樹脂をカラム内に充填し、酸およびアルカリによる洗浄を行った後、イオン交換水によりカラム内を平衡化する。平衡化されたカラム内に上記毛髪蛋白質溶液を徐々にアプライする。アプライ後、0.1〜0.5mol/Lの塩でイオン勾配処理を行うことにより、目的の蛋白質を溶離させるという一般的な蛋白質精製方法により、毛髪蛋白質溶液の蛋白質を分離した。
ゲル濾過カラムクロマトグラフィによる分子量測定を下記に述べる。高速液体カラムクロマトグラフとして「Shimadzu Liquid chromatograph LC−6A」(島津製作所製)を用い、検出器として「Shimadzu UV−VIS Spectrophotometric detector SPD−6AV」(島津製作所製)を用い、レコーダーとして「Shimadzu Chromatopac C−R6A」(島津製作所製)を用い、ガードカラムとして「TSK−GEL Guard Column SW 7.5×7.5(mm)」(東ソー製)を用い、カラムとして「TSK−GEL G3000SW 7.5×600(mm)」(東ソー製)を用いた。
測定機器として、アミノ酸分析計「Hitachi L−8500 Amino acid analyzer」(日立製作所製)を用い、実験試料として、複数回のブリーチ処理により欠損する蛋白質と残存する蛋白質を用いて分析を行った。分析方法を下記に示す。測定試料0.5mLと12規定の濃塩酸0.5mLをガラス管内で混合した後、120℃で12時間加熱し、ガラス管が常温になるまで自然放置した。処理液を脱塩素処理した後、高温引圧乾燥機によって乾燥処理し粉末状とした。それをイオン交換水0.2mLで良く溶解させ、分析試料とした。
[パーマネントウェーブ形成能診断方法]
(ブリーチ損傷毛の作製およびパーマネントウェーブ形成能の評価)
化学的処理を全く受けていない毛髪に下記のブリーチ処理を0〜6回夫々繰り返し処理した各種処理毛を作製し、夫々の毛髪について下記のパーマネントウェーブ処理剤を用いてパーマネントウェーブ形成能を評価した。このときのウェーブ評価方法は下記の通りである。
トーナーブリーチパウダ(粉末ブリーチ剤、中野製薬株式会社製)とキャラデコオキサイド06(過酸化水素系酸化剤、中野製薬株式会社製)を1:3となるように混合したブリーチ剤を、毛髪に質量比1:1の割合で塗布し、30℃、30分間という条件下で処理した後、10%のSDS溶液によって、洗浄し、その後乾燥した。
カールX シスポジット ライト [システイン系パーマネントウェーブ剤(第1剤、第2剤)中野製薬株式会社製]
(パーマネントウェーブ形成能評価)
ブリーチ処理した各毛髪を直径9mmのロッドに巻きつけて、輪ゴムで固定し、これを上記パーマネントウェーブ第1剤に30秒間浸漬させ、40℃で15分間放置した後、十分に水洗してから、パーマネントウェーブ第2剤に30秒間浸漬させ、30℃で10分間放置した後、十分に水洗してから毛髪を吊るし、その自然長を比較することによってパーマネントウェーブ形成能について評価した(その長さが長くなるにつれて、パーマネントウェーブ形成能が低下する)。
(毛髪蛋白質溶液の調製)
試料A:健常毛由来の毛髪蛋白質(平均分子量11000の特定蛋白質を含む)
ブリーチ処理及びパーマネントウェーブ処理を受けた経験のない毛髪0.2g(長さ16cm)を脱脂用剤(クロロホルム/メタノール=2/1:容積比)に24時間浸漬させることにより、毛髪表面を脱脂処理した。処理後の毛髪をドライヤにより十分乾燥させ、約1cmの長さに切断した。切断後の毛髪をビーカに入れ、毛髪蛋白質分画抽出液(2.5mol/Lの2−メルカプトエタノールと1%のSDSを含む0.025mol/Lのトリス塩酸バッファ、pH8.3)20mLと良く混合させ、50℃、72時間の条件下で浸漬させた。
を含まない)
ブリーチ処理を5回受けた毛髪0.2g(長さ16cm)を脱脂用剤(クロロホルム/メタノール=2/1:容積比)に24時間浸漬させることにより、毛髪表面を脱脂処理した。処理後の毛髪をドライヤにより十分乾燥させ、約1cmの長さに切断した。切断後の毛髪をビーカに入れ、毛髪蛋白質分画抽出液(2.5mol/Lの2−メルカプトエタノールと1%のSDSを含む0.025mol/Lのトリス塩酸バッファ、pH8.3)20mLと良く混合させ、50℃、72時間の条件下で浸漬させた。
上記のブリーチ処理を3回繰り返した毛髪を用い、上記試料Aまたは試料Bを用いて前処理(毛髪を試料Aまたは試料Bに6時間浸漬)し、その後、上記実施例1と同様にしてパーマネントウェーブ形成能を測定し、損傷毛髪におけるパーマネントウェーブ形成能の回復性について評価した。このとき、前記パーマネントウェーブ第1剤に試料Aまたは試料Bを混合した溶液(カールX シスポジット ライトの第1剤:試料=2:1容積比)を本発明実験のパーマネントウェーブ第1剤とし、二浴式パーマネントウェーブ剤による処理(第1剤および第2剤による処理)を行ったものについても、同様の実験を行った。尚、カールX シスポジット ライトの第1剤に10%の本試料を配合した場合も、この検討と同様の検討結果になるが、混合試料による検討の方が特定蛋白質の効果が顕著に認められた。
No.2:試料A(平均分子量11000の特定蛋白質を含む)による前処理
No.3:試料B(平均分子量11000の特定蛋白質を含まない)による前
処理
No.4:試料Aにパーマネントウェーブ第1剤を混合した毛髪処理剤による
処理
No.5:試料Bにパーマネントウェーブ第1剤を混合した毛髪処理剤による
処理
前記図3に示した各毛髪について、20%SDS溶液(60℃)に1時間浸漬し、パーマネントウェーブ形成能の保持性(例えば、前記非特許文献1、第34頁参照)について評価した。その結果を図4に示す(No.6〜10が図3のNo.1〜5に夫々対応する)。本発明の毛髪処理剤によるパーマネントウェーブ形成能回復効果において、耐シャンプー性試験でも平均分子量11000の特定蛋白質を含む処理が有効であることが認められたため、平均分子量11000特定蛋白質は毛髪の表面でなく毛髪の内部にまで浸透していることが考えられる。
前記図3に示した毛髪のNo.1〜3について、毛髪引張り強度試験法による破断強度を測定し、損傷毛に前処理を施したことによる強度回復評価を実施した。このときの破断強度測定方法は下記の通りである。尚、上記No.2で用いた試料Aは平均分子量11000および9700の蛋白質を含む蛋白質溶液であり、No.3で用いた試料Bは平均分子量11000の特定蛋白質が欠損し、平均分子量9700の蛋白質の濃度が相対的に高くなっている蛋白質溶液である。
テンシロンUTM−II−20(オリエンテック製)を用い、上記の毛髪試料の水中における毛髪引張り試験を実施し破断強度測定を行った。尚、破断強度は、破断応力(cN)を毛髪の長さと重量から算出した繊度(dtex)で割り算出した。この破断強度を測定することにより強度回復効果を評価した。
実施例2では、パーマネントウェーブ形成能が低下したブリーチ損傷毛に夾雑物を含む毛髪分画蛋白質を作用させる(パーマネントウェーブ前処理剤およびパーマネントウェーブ第1剤の添加剤として)ことで、パーマネントウェーブ形成能の回復効果が認められたものである。本発明者は、前記毛髪分画蛋白質をDEAEカラムクロマトグラフィにより精製し、平均分子量11000または平均分子量9700の蛋白質のみからなる溶液を毛髪処理剤とし、ブリーチ損傷毛を処理したときの効果について確認した。
実施例2によって得られた毛髪蛋白質分画抽出液をDEAEカラムクロマトグラフィによって精製し、平均分子量11000または平均分子量9700の夫々の蛋白質のみからなる濃縮溶液(0.5mg/mL)を調製した。得られた蛋白質溶液はTricine−SDS−ポリアクリルアミド電気泳動法によって夫々の蛋白質の分子量を確認した。以下では、平均分子量が9700蛋白質溶液を「試料C」、平均分子量が11000の蛋白質溶液を「試料D」と呼ぶ。
実施例1に示した方法によって、ブリーチ処理を3回繰り返し施したブリーチ損傷毛を作製し、上記試料Cまたは試料Dを用いて前処理(毛髪を試料Cまたは試料Dに6時間浸漬)し、その後、上記実施例1と同様にしてパーマネントウェーブ形成能を測定し、損傷毛髪におけるパーマネントウェーブ形成能の回復性について評価した。このとき、前記パーマネントウェーブ第1剤に試料Cまたは試料Dを混合した溶液(カールX シスポジット ライトの第1剤:試料=2:1容積比)を本実験のパーマネントウェーブ第1剤とし、二浴式パーマネントウェーブ剤による処理(第1剤および第2剤による処理)を行ったものについても、同様の実験を行った。尚、カールX シスポジット ライトの第1剤に10%の本試料を配合した場合も、この検討と同様の検討結果になるが、混合試料による検討の方が特定蛋白質の効果が顕著に認められた。
No.11:試料C(平均分子量9700の蛋白質溶液)による前処理
No.12:試料D(平均分子量11000の蛋白質溶液)による前処理
No.13:試料Cとパーマネントウェーブ第1剤を混合した溶液による処理
No.14:試料Dとパーマネントウェーブ第1剤を混合した溶液による処理
No.11のときの長さ(自然長)を100%としたときに、No.12の自然長は94.3%であり、No.13の自然長を100%としたときに、No.14の自然長は93.3%となっていた。
前記実施例2で用いた試料Aを用い、下記表5に示す各種配合割合(処理例1〜3)で各種原料を配合して、各種ヘアワックスを調製し、各項目(1ヶ月間継続使用した場合のウェーブ形成能の回復性、ハリ・コシ感、強度回復性)について調査した。このときの、各項目の調査方法および評価基準は下記の通りである。
実施例1に示した方法によって、ブリーチ処理を3回繰り返し施したブリーチ損傷毛に各種処方例で配合した試料を1ヶ月間継続使用し、継続使用した毛髪に二浴式パーマネントウェーブ剤(カールX シスポジット ライト)による処理(第1剤および第2剤による処理)を行うことにより、1ヶ月間継続使用した場合のウェーブ形成能の回復性を調査し、下記の基準で視覚的に評価した。
◎:非常にウェーブ形成力が回復した。
○:ウェーブ形成力が回復した。
△:処理前の毛髪のウェーブ形成力と同程度であった。
×:処理前の毛髪のウェーブ形成力よりも低下した。
実施例1に示した方法によって、ブリーチ処理を3回繰り返し施したブリーチ損傷毛は、非常にハリ・コシ感を失っており、手触りが非常に悪くなっている。各種処理例で配合した試料を1ヶ月間継続使用し、処理後の毛髪のコンデションを官能的に評価することにより、1ヶ月間継続使用した場合のハリ・コシ感を調査し、下記の基準で評価した。
◎:非常にハリ・コシ感が回復した。
○:ハリ・コシ感が回復した。
△:処理前の毛髪のハリ・コシ感と同程度であった。
×:処理前の毛髪のハリ・コシ感よりも低下した。
実施例1に示した方法によって、ブリーチ処理を3回繰り返し施したブリーチ損傷毛は、毛髪の破断強度が低下している。各種処理例で配合した試料を1ヶ月間継続使用し、上記図5で用いた破断強度試験を同様の方法により、1ヶ月間継続使用した場合の強度回復性を調査し、下記の基準で評価した。
◎:処理前の毛髪と比較し、10%以上強度が回復した。
○:処理前の毛髪と比較し、10%未満強度が回復した。
△:処理前の毛髪と比較し、同程度であった。
×:処理前の毛髪と比較し、強度が低下した。
前記実施例2で用いた試料Aを用い、下記表6に示す各種配合割合(処理例1〜3)で各種原料を配合して、各種ヘアトリートメントを調製し、各項目(1ヶ月間継続使用した場合のウェーブ形成能の回復性、ハリ・コシ感、強度回復性)について、実施例4と同様にして調査した。
前記実施例2で用いた試料Aを用い、下記表7に示す各種配合割合(処理例1〜3)で各種原料を配合して、各種パーマネント前処理剤を調製し、各項目(ウェーブ形成能の回復性、ハリ・コシ感、強度回復性)について、実施例4と同様にして調査した。但し、本調査項目は、上記評価項目のように1ヶ月間継続使用せず。実施例1に示した方法によって、ブリーチ処理を3回繰り返し施したブリーチ損傷毛に各種パーマネントウェーブ前処理剤を毛髪に数分間処理し、毛髪に二浴式パーマネントウェーブ剤(カールX シスポジット ライト)による処理(第1剤および第2剤による処理)を行うことにより、パーマネントウェーブ処理後の評価を行った。
前記実施例2で用いた試料Aを用い、下記表8に示す各種配合割合(処理例1〜3)で各種原料を配合して、各種パーマネント後処理剤を調製し、実施例1に示した方法によって、ブリーチ処理を3回繰り返し施したブリーチ損傷毛に、二浴式パーマネントウェーブ剤(カールX シスポジット ライト)による処理(第1剤および第2剤による処理)を行い、調製した各種パーマネントウェーブ後処理剤を毛髪全体に塗布し、ウェーブ形成力の保持性の評価を行った。このときにおけるウェーブ形成力の保持性の調査方法および評価基準は下記の通りである。
上記図4で用いた耐シャンプー性試験と同様の試験を、各種パーマネントウェーブ後処理剤で処理した後の毛髪で行い、下記の基準で評価した。
○:処方例2で処理した毛髪と比較し、ウェーブ形成力の保持効果が高まった。
△:処方例2で処理した毛髪と比較し、ウェーブ形成力の保持効果が若干高まった。
Claims (4)
- ヒト毛髪から分離・精製されるゲル濾過カラムクロマトグラフィによる平均分子量測定値が11000である蛋白質を、SDS−ポリアクリルアミド電気泳動法を用いて視覚的に定性分析することによって、パーマネントウェーブ形成能を診断することを特徴とするパーマネントウェーブ形成能診断方法。
- ヒト毛髪から分離・精製されたゲル濾過カラムクロマトグラフィによる平均分子量測定値が11000の蛋白質を配合したものであることを特徴とする毛髪処理剤。
- ヒト毛髪から分離・精製されたゲル濾過カラムクロマトグラフィによる平均分子量測定値が11000の蛋白質および9700の蛋白質を含有する分子量8000〜12000の蛋白質組成物を配合したものであることを特徴とする毛髪処理剤。
- 請求項2または3に記載の毛髪処理剤を、毛髪に付与することによって、毛髪のパーマネントウェーブ形成能を修復・改善することを特徴とする毛髪処理方法。
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