JP4824231B2 - スクロール式流体機械の組立方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば空気圧縮機、真空ポンプ等に用いて好適なスクロール式流体機械の組立方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、スクロール式流体機械は、支持フレームとなるケーシングと、該ケーシングに設けられ、鏡板に渦巻状のラップ部が立設された固定スクロールと、ケーシングに回転可能に支持された駆動軸と、ケーシング内で該駆動軸の先端側に旋回可能に設けられ、鏡板に渦巻状のラップ部が立設された旋回スクロールとを備えたものが知られている(例えば、特開平2−264180号公報等)。
【0003】
この種の従来技術によるスクロール式流体機械は、例えば端部側が開口した筒状のケーシングを有し、その開口側には、ねじ止め等の手段により固定スクロールが固定されている。また、旋回スクロールは、ケーシング内で固定スクロールと対面して配置され、そのラップ部は、固定スクロールのラップ部に対して所定の寸法分だけ偏心した状態で該ラップ部と重なり合うように配置されると共に、これらのラップ部間には複数の圧縮室が画成されている。
【0004】
そして、スクロール式流体機械は、外部から駆動軸を回転駆動し、旋回スクロールを固定スクロールに対して所定の偏心寸法をもって旋回運動させることにより、固定スクロールの外周側に設けた吸込口から空気等の流体を吸込みつつ、この流体を各圧縮室内で順次圧縮し、固定スクロールの中心部に設けた吐出口から圧縮流体を外部に向けて吐出するものである。
【0005】
また、スクロール式流体機械を組立てるときには、まずケーシング内に駆動軸等を取付け、旋回スクロールをケーシング内に配置して駆動軸と連結する。そして、固定スクロールをケーシングの開口側に仮止め状態で取付け、そのラップ部を旋回スクロールのラップ部と重ね合わせる。
【0006】
次に、固定スクロールの中心をケーシング(駆動軸)の軸線に対して正確に位置合わせするため、固定スクロールの取付位置を調整する。そして、この調整作業では、まず旋回スクロールを固定スクロールに対して試験的に旋回運動させることにより、これらのラップ部を互いに摺動させる。そして、作業者等により各ラップ部の摺接状態等を確認しつつ、ケーシングと旋回スクロールとに対する固定スクロールの位置を少しずつ調整する。
【0007】
これにより、各ラップ部が良好な摺接状態を保持しているときには、固定スクロールと旋回スクロールとの間の偏心寸法が所定の大きさに設定されているので、固定スクロールがケーシングに対して同軸に配置されたものと判断し、固定スクロールをねじ止め等によってケーシングに固定する。
【0008】
また、従来技術では、固定スクロールの取付位置を調整した後にケーシングと固定スクロールとにわたってピン穴を穿設し、これらのピン穴に位置決めピン等を挿嵌する場合もある。そして、この場合には、例えばメンテナンス作業時にケーシングから取外した固定スクロールを、位置決めピンを基準として再び正確な位置に取付けることができる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来技術では、スクロール式流体機械を組立てるときに、旋回スクロールを固定スクロールに対して旋回運動させることにより、これらの位置関係に応じて固定スクロールの取付位置を調整する構成としている。
【0010】
しかし、旋回スクロールは、ケーシングに駆動軸等を介して支持された可動部品であり、しかも固定スクロールの取付位置は、旋回スクロールを旋回動作させることによって調整される。従って、この調整作業時には、固定スクロールのラップ部と旋回スクロールのラップ部との位置関係を一時的に適切に調整したとしても、例えばケーシング、駆動軸、旋回スクロール等を含めた各部品の加工誤差や組立誤差等が累積することにより、固定スクロールの中心位置がケーシングの軸線に対して微小にずれていることがある。
【0011】
このため、従来技術では、スクロール式流体機械を使用しているうちに、固定スクロールの中心位置と旋回スクロールの旋回軌道との間に位置ずれが生じ易くなり、これらのラップ部間に画成される圧縮室の気密性が低下したり、旋回スクロールの旋回動作が不安定となることがあり、圧縮性能や耐久性、信頼性が低下するという問題がある。
【0012】
しかも、スクロール式流体機械の組立ライン等では、個々の機械において固定スクロールの取付位置を調整するために旋回スクロールを試験的に旋回運動させる必要があり、調整作業に手間がかかる。また、この調整作業後にケーシングと固定スクロールに位置合わせ用のピン穴を穿設したとしても、これらのピン穴は調整作業時の誤差を含んだ位置に形成されているため、上述した問題を解決することはできない。
【0013】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、支持フレーム、固定スクロール及び旋回スクロールを正確に位置合わせした状態で組立てることができ、その組立作業を効率よく実行できると共に、圧縮性能や耐久性、信頼性を向上できるようにしたスクロール式流体機械の組立方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために本発明は、支持フレームと、該支持フレームに設けられ鏡板に渦巻状のラップ部が立設された固定スクロールと、前記支持フレームに回転可能に支持された駆動軸と、該駆動軸の先端側に旋回可能に設けられ鏡板に前記固定スクロールのラップ部と重なり合って複数の圧縮室を画成する渦巻状のラップ部が立設された旋回スクロールとからなるスクロール式流体機械の組立方法に適用される。
【0015】
そして、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記支持フレームにはフレーム側位置合わせ穴を設け、前記固定スクロールには固定スクロール側位置合わせ穴を設け、前記旋回スクロールには、前記旋回スクロールを前記支持フレームに対して所定の位置に位置合わせする第1の旋回スクロール側位置合わせ穴と、前記固定スクロールを前記旋回フレームに対して所定の位置に位置合わせする第2の旋回スクロール側位置合わせ穴とを設け、前記フレーム側位置合わせ穴と前記第1の旋回スクロール側位置合わせ穴とを位置合わせし、前記固定スクロール側位置合わせ穴と前記第2の旋回スクロール側位置合わせ穴とを位置合わせし、これらを位置合わせした状態で前記固定スクロールを前記支持フレームに固定する構成としたことにある。
【0016】
このように構成することにより、スクロール式流体機械の組立時には、支持フレーム側位置合わせ穴と第1の旋回スクロール側位置合わせ穴とにわたってピン部材等を挿嵌でき、これによって支持フレームと旋回スクロールとを所定の位置に位置合わせした状態で組立てることができる。そして、この状態で固定スクロール側位置合わせ穴と第2の旋回スクロール側位置合わせ穴とにわたって他のピン部材等を挿嵌でき、旋回スクロールと固定スクロールとを所定の位置に位置合わせした状態で組立てることができるから、旋回スクロールを基準として支持フレームと固定スクロールとを正確に組立てることができる。
【0017】
また、請求項2の発明によると、前記支持フレームにはフレーム側位置合わせ穴を複数個設け、前記固定スクロールには固定スクロール側位置合わせ穴を複数個設け、前記旋回スクロールには、前記旋回スクロールを前記支持フレームに対して所定の位置に位置合わせすると共に前記固定スクロールを前記旋回スクロールに対して所定の位置に位置合わせする旋回スクロール側位置合わせ穴を複数個設け、前記旋回スクロール側位置合わせ穴を前記フレーム側位置合わせ穴と前記固定スクロール側位置合わせ穴とに位置合わせし、前記旋回フレームを前記固定スクロールと前記支持フレームに対して所定の位置に位置合わせした状態で前記固定スクロールを前記支持フレームに固定する構成としている。
【0018】
これにより、スクロール式流体機械の組立時には、支持フレーム、固定スクロール及び旋回スクロールの各位置合わせ穴にわたってピン部材等を挿嵌でき、これらを所定の位置に位置合わせした状態で組立てることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態によるスクロール式流体機械及びその組立方法を、添付図面に従って詳細に説明する。
【0020】
ここで、図1ないし図11は本発明の第1の実施の形態を示し、本実施の形態では、スクロール式空気圧縮機を例に挙げて述べる。
【0021】
1はスクロール式空気圧縮機の外枠を構成する支持フレームとしてのケーシングで、該ケーシング1は、例えば軸方向の一側が開口した有底筒状に形成され、後述する駆動軸10の軸線O1−O1とほぼ等しい中心軸を有している。そして、ケーシング1は、軸方向の他側に位置する環状の底部1Aと、該底部1Aの外周側から後述の固定スクロール5側に向けて延びた筒部1Bと、底部1Aの中央に突設された軸受部1Cとを含んで構成されている。また、筒部1Bには、後述の取付ねじ6が螺着される複数のねじ穴2(図7参照)と、後述の如く空気圧縮機の組立時に用いられるケーシング側位置合わせ穴3,4とが設けられている。
【0022】
3,4はケーシング1の筒部1Bに穿設された例えば2個のフレーム側位置合わせ穴としてのケーシング側位置合わせ穴で、該ケーシング側位置合わせ穴3,4は、図1、図3に示す如く、筒部1Bを径方向に貫通し、軸方向に延びた長穴として形成されている。また、位置合わせ穴3,4は、例えばケーシング1の中心(軸線O1−O1)を通る1つの直径を基準の直線L−Lとしたときに、この基準の直線L−L上に位置して直径方向の両側に配置されている。
【0023】
そして、空気圧縮機の組立時には、図1中に仮想線で示す如く、ケーシング1の位置合わせ穴3,4と旋回スクロール12の位置合わせ穴17,18との間に2本の組立補助ピン22を挿嵌することにより、これらを互いに位置合わせした状態で組立てるものである。
【0024】
5は複数の取付ねじ6を用いてケーシング1の開口側に固定された固定スクロールで、該固定スクロール5は、図1、図2に示す如く、略円板状に形成された鏡板5Aと、該鏡板5Aの表面に軸方向に立設された渦巻状のラップ部5Bと、鏡板5Aの外周側からラップ部5Bを取囲むように軸方向に突出した筒部5Cと、該筒部5Cから径方向外向きに突設され、外周側がケーシング1の筒部1Bに衝合された環状のフランジ部5Dとを含んで構成されている。そして、フランジ部5Dには、周方向に離間した複数のねじ挿通穴7と、後述の固定スクロール側位置合わせ穴8,9とが設けられている。
【0025】
そして、固定スクロール5は、その鏡板5A、ラップ部5B等の中心Oa(図4参照)が駆動軸10の軸線O1−O1上に位置するように、ケーシング1に対して同軸に位置合わせされ、この状態でフランジ部5Dが各取付ねじ6を用いてケーシング1の筒部1Bに締着されているものである。
【0026】
8,9は固定スクロール5のフランジ部5Dに穿設された例えば2個の固定スクロール側位置合わせ穴で、該固定スクロール側位置合わせ穴8,9は、図1、図4に示す如く、フランジ部5Dを軸方向に貫通して形成されている。また、位置合わせ穴8,9は、前述した基準の直線L−L上に位置して固定スクロール5の中心Oaを挟んだ直径方向の両側に配置されている。
【0027】
そして、空気圧縮機の組立時には、図1中に仮想線で示す如く、固定スクロール5の位置合わせ穴8,9と旋回スクロール12の位置合わせ穴19,20との間に2本の組立補助ピン23を挿嵌することにより、これらを互いに位置合わせした状態で組立てるものである。
【0028】
10はケーシング1の軸受部1Cに軸受11を介して回転可能に支持された駆動軸で、該駆動軸10は、図1に示す如く、その基端側が例えば電動モータ等の駆動源(図示せず)に連結され、先端側はクランク10Aとなってケーシング1内に延びている。そして、クランク10Aは、その軸線O2−O2が駆動軸10の軸線に対して図1中の寸法ε分だけ偏心している。
【0029】
12は固定スクロール5と対面してケーシング1内に旋回可能に設けられた旋回スクロールで、該旋回スクロール12は、略円板状に形成された鏡板12Aと、該鏡板12Aの表面側内周に軸方向に立設された渦巻状のラップ部12Bと、鏡板12Aの背面中央に突設され、旋回軸受13を用いて駆動軸10のクランク10Aに回転可能に取付けられたボス部12Cとを含んで構成されている。
【0030】
ここで、鏡板12A、ラップ部12B等は、クランク10Aの軸線O2−O2と同軸に配置される中心Ob(図5参照)を有している。また、鏡板12Aの外周側には、ケーシング1の位置合わせ穴3,4と固定スクロール5の位置合わせ穴8,9に対応して後述の旋回スクロール側位置合わせ穴17,18,19,20が設けられている。また、ラップ部12Bは、固定スクロール5のラップ部5Bに対して例えば180度だけずらした状態で重なり合うように配設され、これらのラップ部5B,12B間には複数の圧縮室14が画成されている。
【0031】
そして、スクロール式空気圧縮機は、旋回スクロール12が駆動軸10により旋回駆動されると、固定スクロール5に設けられた吸込口15から外周側の圧縮室14内に空気を吸込みつつ、中心側の圧縮室14から固定スクロール5に設けられた吐出口16を介して外部に圧縮空気を吐出する。
【0032】
この場合、旋回スクロール12が旋回動作を行うときには、後述の図6中に示す如く、その中心Obが駆動軸10の軸線O1−O1を中心とした旋回軌道Sに沿って移動し、このときの旋回軌道Sは、クランク10Aの偏心寸法εを旋回半径とした円軌道となる。
【0033】
17,18は旋回スクロール12の鏡板12Aに例えば2個穿設された第1の旋回スクロール側位置合わせ穴で、該第1の旋回スクロール側位置合わせ穴17,18は、鏡板12Aの外周面から径方向内向きに形成され、基準の直線L−L上に位置して鏡板12Aの中心Obを挟んだ直径方向の両側に配置されている。
【0034】
そして、空気圧縮気の組立時には、ケーシング1の位置合わせ穴3,4に対して旋回スクロール12の位置合わせ穴17,18を一致させると、図3、図6に示す如く、旋回スクロール12の中心Ob(軸線O2−O2)が旋回軌道S上の所定位置に位置合わせされる構成となっている。ここで、この旋回軌道S上の所定位置とは、例えば基準の直線L−Lと旋回スクロール12の旋回軌道Sとの交点のうち一方の位置合わせ穴3に近い交点として定義されるものである。
【0035】
19,20は旋回スクロール12の鏡板12Aに例えば2個穿設された第2の旋回スクロール側位置合わせ穴で、該第2の旋回スクロール側位置合わせ穴19,20は、図1、図3に示す如く、鏡板12Aを軸方向に貫通して形成され、例えば基準の直線L−L上に位置して直径方向の両側に配置されると共に、固定スクロール5の位置合わせ穴8,9と対応している。
【0036】
この場合、固定スクロール5の一方の位置合わせ穴8は、図4に示す如く、その中心Oaから寸法aだけ離れた位置に形成され、他方の位置合わせ穴9は、中心Oaから寸法bだけ離れた位置に形成されると共に、旋回スクロール12の位置合わせ穴19,20は、図5に示す如く、その中心Obから等しい寸法cだけ離れた位置に形成されている。そして、これらの寸法a,b,cは、図6に示す如く、クランク10Aの偏心寸法εに対して下記数1の式を満たすように予め設定されている。
【0037】
【数1】
a=c−ε
b=c+ε
【0038】
これにより、空気圧縮気の組立時には、ケーシング1側に組付けた旋回スクロール12の位置合わせ穴19,20に対して固定スクロール5の位置合わせ穴8,9を一致させると、図2に示す如く、固定スクロール5の中心Oaが旋回軌道Sの中心O1に位置合わせされ、旋回スクロール12を基準としてケーシング1と固定スクロール5とを同軸に位置合わせした状態で組立てることができる構成となっている。
【0039】
一方、21はケーシング1の底部1Aと旋回スクロール12との間に設けられたオルダム継手で、該オルダム継手21は、旋回スクロール12が旋回運動するときに、その背面側で互いに直交する2軸方向に摺動し、旋回スクロール12の自転を防止するものである。
【0040】
本実施の形態によるスクロール式空気圧縮機は上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
【0041】
まず、駆動軸10を回転駆動すると、旋回スクロール12は、オルダム継手21等により自転を規制された状態で寸法εの旋回半径をもった円運動(旋回運動)を行う。これにより、固定スクロール5と旋回スクロール12のラップ部5B,12B間では、各圧縮室14が径方向外側から内側に向けて連続的に縮小する。このため、吸込口15から吸込んだ外気は各圧縮室14で順次圧縮され、圧縮空気となって吐出口16から外部の空気タンク(図示せず)等に貯留される。
【0042】
次に、図4ないし図11を参照しつつ、スクロール式空気圧縮機の組立方法について述べる。
【0043】
まず、図4、図5等に示す位置合わせ穴形成工程では、ケーシング1に位置合わせ穴3,4を形成し、固定スクロール5に位置合わせ穴8,9を形成すると共に、旋回スクロール12に位置合わせ穴17,18,19,20を形成する。このとき、これらの位置合わせ穴3,4,8,9,17,18,19,20は、図6に示す位置及び寸法関係を満たすように形成する。
【0044】
次に、図7及び図8に示す旋回スクロール組付工程では、まず旋回スクロール12をケーシング1内に配置して軸受部1Cを駆動軸10のクランク10Aに取付け、2本の組立補助ピン22を径方向外側からケーシング1の位置合わせ穴3,4と旋回スクロール12の位置合わせ穴17,18とにわたって挿嵌する。これにより、旋回スクロール12を図6中に示す旋回軌道S上の所定位置に配置した状態でケーシング1に取付けることができる。
【0045】
次に、図9及び図10に示す固定スクロール組付工程では、まず旋回スクロール12の位置合わせ穴19,20に2本の組立補助ピン23を一部だけ挿嵌しておく。そして、固定スクロール5をケーシング1の開口側に衝合しつつ、その位置合わせ穴8,9に各組立補助ピン23の突出端側を挿嵌する。
【0046】
これにより、固定スクロール5と旋回スクロール12とを所定の寸法εだけ偏心した状態で衝合でき、この旋回スクロール12を基準としてケーシング1と固定スクロール5とを同軸に位置合わせした状態で組付けることができる。
【0047】
そして、図11に示す位置決め工程では、ケーシング1と固定スクロール5とを各取付ねじ6によって締着し、その後に組立補助ピン22,23を取外し、位置合わせ穴3,4,8,9,17,18,19,20を必要に応じて閉塞することにより、空気圧縮機を組立てることができる。
【0048】
かくして、本実施の形態によれば、ケーシング1に位置合わせ穴3,4を設け、固定スクロール5に位置合わせ穴8,9を設け、旋回スクロール12には、これらに対応する位置合わせ穴17,18,19,20を設ける構成としたので、空気圧縮機の組立時には、ケーシング1と旋回スクロール12の位置合わせ穴3,17間、位置合わせ穴4,18間にそれぞれ組立補助ピン22を挿嵌することにより、旋回スクロール12をケーシング1に対して所定の位置に位置合わせすることができ、これらを正確に組立てることができる。
【0049】
そして、この状態で固定スクロール5と旋回スクロール12の位置合わせ穴8,19間、位置合わせ穴9,20間にそれぞれ組立補助ピン23を挿嵌することにより、固定スクロール5を旋回スクロール12に対して所定の位置に位置合わせすることができ、この位置で固定スクロール5をケーシング1に固定することにより、旋回スクロール12を基準としてケーシング1側の軸線O1−O1と固定スクロール5の中心Oaとを正確に一致させることができる。
【0050】
従って、位置合わせ穴3,4,8,9,17,18,19,20を形成して組立補助ピン22,23を挿嵌するだけの簡単な作業によりケーシング1、固定スクロール5及び旋回スクロール12を高い精度で組立てることができ、その組立作業を効率よく実行することができる。また、空気圧縮機の使用時には、固定スクロール5と旋回スクロール12のラップ部5B,12Bを長期間にわたって良好な状態で摺接させることができ、その圧縮性能や耐久性、信頼性を向上させることができる。
【0051】
次に、図12ないし図14は本発明による第2の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、旋回スクロール側位置合わせ穴を、支持フレーム側位置合わせ穴と固定スクロール側位置合わせ穴の両方に位置合わせする構成としたことにある。なお、本実施の形態では前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0052】
31,32はケーシング1の底部1Aに設けられた例えば2個のフレーム側位置合わせ穴としてのケーシング側位置合わせ穴で、該ケーシング側位置合わせ穴31,32は、底部1Aを軸方向に貫通して形成され、駆動軸10を挟んで底部1Aの直径方向の両側に穿設されている。
【0053】
また、位置合わせ穴31,32は、後述の固定スクロール側位置合わせ穴33,34と旋回スクロール側位置合わせ穴35,36と互いに同軸に配置され、これらは後述の組立補助ピン37を挿嵌する構成となっている。
【0054】
33,34は固定スクロール5のフランジ部5Dに設けられた例えば2個の固定スクロール側位置合わせ穴で、該固定スクロール側位置合わせ穴33,34は、前記第1の実施の形態とほぼ同様に、フランジ部5Dを軸方向に貫通して形成されている。
【0055】
35,36は旋回スクロール12の鏡板12Aの外周側に設けられた例えば2個の旋回スクロール側位置合わせ穴で、該旋回スクロール側位置合わせ穴35,36は、前記第1の実施の形態とほぼ同様に、鏡板12Aを軸方向に貫通して形成されている。
【0056】
そして、図13及び図14を参照しつつ、空気圧縮の組立方法について述べると、まず図13に示す旋回スクロール組付工程では、ケーシング1の位置合わせ穴31,32に2本の組立補助ピン37を一部だけ挿嵌しておく。そして、旋回スクロール12をケーシング1内に配置しつつ、その位置合わせ穴35,36に各組立補助ピン37の突出端側を挿嵌する。この場合、旋回スクロール12をケーシング1に組付けた状態では、各組立補助ピン37が旋回スクロール12の位置合わせ穴35,36から突出した状態となる。
【0057】
次に、図14に示す固定スクロール組付工程では、固定スクロール5をケーシング1の開口側に衝合しつつ、その位置合わせ穴33,34に各組立補助ピン37の突出端側を挿嵌する。
【0058】
これにより、固定スクロール5と旋回スクロール12とを所定の寸法εだけ偏心した状態で衝合でき、この旋回スクロール12を基準としてケーシング1と固定スクロール5とを同軸に位置合わせした状態で組付けることができる。
【0059】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。そして、特に本実施の形態では、空気圧縮機の組立作業中に、ケーシング1、固定スクロール5及び旋回スクロール12を組立補助ピン37により軸方向に対して安定的に固定できるから、その組立作業をより正確に行うことができる。
【0060】
なお、前記各実施の形態では、ケーシング1に2個の位置合わせ穴3,4(31,32)を設け、固定スクロール5に2個の位置合わせ穴8,9(33,34)を設け、旋回スクロール12にはこれらに対応する位置合わせ穴17〜20,35,36を設ける構成としたが、本発明はこれに限らず、例えばケーシング1や固定スクロール5に1個または3個以上の位置合わせ穴を設け、この位置合わせ穴に対応して旋回スクロール側位置合わせ穴を設ける構成としてもよい。
【0061】
また、前記各実施の形態では、スクロール式流体機械として空気圧縮機を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、例えば真空ポンプ、冷媒圧縮機等にも広く適用できるものである。
【0062】
【発明の効果】
以上詳述した通り、請求項1の発明によれば、支持フレームにフレーム側位置合わせ穴を設け、固定スクロールに固定スクロール側位置合わせ穴を設け、旋回フレームには、フレーム側位置合わせ穴,固定スクロール側位置合わせ穴に位置合わせする第1,第2の旋回スクロール側位置合わせ穴を設ける構成としたので、空気圧縮機の組立時には、支持フレームと旋回スクロールの位置合わせ穴にピン部材等を挿嵌することにより、旋回スクロールを支持フレームに対して所定の位置に位置合わせすることができ、この状態で固定スクロールと旋回スクロールの位置合わせ穴にピン部材等を挿嵌することにより、旋回スクロールを基準として支持フレームと固定スクロールとを正確に組立てることができる。従って、簡単な作業により支持フレーム、固定スクロール及び旋回スクロールを高い精度で組立てることができ、その組立作業を効率よく実行することができる。また、空気圧縮機の使用時には、固定スクロールと旋回スクロールのラップ部を長期間にわたって良好な状態で摺接させることができ、その圧縮性能や耐久性、信頼性を向上させることができる。
【0063】
また、請求項2の発明によれば、支持フレームにフレーム側位置合わせ穴を設け、固定スクロールに固定スクロール側位置合わせ穴を設け、旋回フレームには、フレーム側位置合わせ穴と固定スクロール側位置合わせ穴の両方に位置合わせする旋回スクロール側位置合わせ穴を設ける構成としたので、空気圧縮機の組立時には、支持フレーム、固定スクロール及び旋回スクロールの位置合わせ穴にピン部材等を挿嵌することにより、これらを正確に組立てることができ、その組立作業を効率よく実行できると共に、スクロール式流体機械の圧縮性能や耐久性、信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるスクロール式空気圧縮機を示す縦断面図である。
【図2】図1中の矢示II-II方向からみた空気圧縮機の横断面図である。
【図3】図1中の矢示III-III方向からみた空気圧縮機の横断面図である。
【図4】固定スクロールを単体で示す平面図である。
【図5】旋回スクロールを単体で示す平面図である。
【図6】ケーシング、固定スクロール及び旋回スクロールの位置関係を示す説明図である。
【図7】旋回スクロール組付工程でケーシングに旋回スクロールを組付ける状態を示す斜視図である。
【図8】ケーシングと旋回スクロールとの間に組立補助ピンを取付けた状態を示す斜視図である。
【図9】固定スクロール組付工程でケーシングに固定スクロールを組付ける状態を示す斜視図である。
【図10】固定スクロールと旋回スクロールとの間に組立補助ピンを取付けた状態を示す斜視図である。
【図11】ケーシングと固定スクロールとを固定して組立補助ピンを取外した状態を示す斜視図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態によるスクロール式空気圧縮機を示す縦断面図である。
【図13】旋回スクロール組付工程でケーシングに旋回スクロールを組付ける状態を示す斜視図である。
【図14】固定スクロール組付工程でケーシングに固定スクロールを組付ける状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 ケーシング(支持フレーム)
1A 底部
1B 筒部
1C 軸受部
2 ねじ穴
3,4,31,32 ケーシング側位置合わせ穴(フレーム側位置合わせ穴)
5 固定スクロール
5A,12A 鏡板
5B,12B ラップ部
5C 筒部
5D フランジ部
6 取付ねじ
7 ねじ挿通穴
8,9,33,34 固定スクロール側位置合わせ穴
10 駆動軸
10A クランク
11 軸受
12 旋回スクロール
12C ボス部
13 旋回軸受
14 圧縮室
15 吸込口
16 吐出口
17,18,19,20,35,36 旋回スクロール側位置合わせ穴
21 オルダム継手
22,23,37 組立補助ピン

Claims (2)

  1. 支持フレームと、該支持フレームに設けられ鏡板に渦巻状のラップ部が立設された固定スクロールと、前記支持フレームに回転可能に支持された駆動軸と、該駆動軸の先端側に旋回可能に設けられ鏡板に前記固定スクロールのラップ部と重なり合って複数の圧縮室を画成する渦巻状のラップ部が立設された旋回スクロールとからなるスクロール式流体機械の組立方法において、
    前記支持フレームにはフレーム側位置合わせ穴を設け、
    前記固定スクロールには固定スクロール側位置合わせ穴を設け、
    前記旋回スクロールには、前記旋回スクロールを前記支持フレームに対して所定の位置に位置合わせする第1の旋回スクロール側位置合わせ穴と、前記固定スクロールを前記旋回フレームに対して所定の位置に位置合わせする第2の旋回スクロール側位置合わせ穴とを設け
    前記フレーム側位置合わせ穴と前記第1の旋回スクロール側位置合わせ穴とを位置合わせし、前記固定スクロール側位置合わせ穴と前記第2の旋回スクロール側位置合わせ穴とを位置合わせし、これらを位置合わせした状態で前記固定スクロールを前記支持フレームに固定する構成としたことを特徴とするスクロール式流体機械の組立方法
  2. 支持フレームと、該支持フレームに設けられ鏡板に渦巻状のラップ部が立設された固定スクロールと、前記支持フレームに回転可能に支持された駆動軸と、該駆動軸の先端側に旋回可能に設けられ鏡板に前記固定スクロールのラップ部と重なり合って複数の圧縮室を画成する渦巻状のラップ部が立設された旋回スクロールとからなるスクロール式流体機械の組立方法において、
    前記支持フレームにはフレーム側位置合わせ穴を複数個設け、
    前記固定スクロールには固定スクロール側位置合わせ穴を複数個設け、
    前記旋回スクロールには、前記旋回スクロールを前記支持フレームに対して所定の位置に位置合わせすると共に前記固定スクロールを前記旋回スクロールに対して所定の位置に位置合わせする旋回スクロール側位置合わせ穴を複数個設け
    前記旋回スクロール側位置合わせ穴を前記フレーム側位置合わせ穴と前記固定スクロール側位置合わせ穴とに位置合わせし、前記旋回フレームを前記固定スクロールと前記支持フレームに対して所定の位置に位置合わせした状態で前記固定スクロールを前記支持フレームに固定する構成したことを特徴とするスクロール式流体機械の組立方法
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