JP4820486B2 - ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法 - Google Patents

ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法に関し、さらに詳しくは、反応スラリーのろ過性に優れ、後処理工程時間が短縮されるポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリフェニレンスルフィド(以下、「PPS」と略すことがある。)に代表されるポリアリーレンスルフィド樹脂(以下、「PAS」と略すことがある。)は、耐熱性、成形加工性、耐薬品性、難燃性、電気的特性、寸法安定性などに優れるエンジニアリングプラスチックであり、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形などの各種成形法により、各種成形品、フィルム、繊維などに成形可能であるため、近年、電気・電子機器部品、自動車機器部品あるいは化学機器部品用などの材料として広く利用されてきている。
【0003】
PASを製造する方法としては、例えば、特公昭45−368号公報に開示されるように、N−メチル−2−ピロリドンなどの有機溶媒中で、硫化ナトリウムなどのアルカリ金属硫化物とp−ジクロルベンゼンなどのジハロ芳香族化合物とを反応させる方法を基本とし、重合反応時に重合助剤としてアルカリ金属カルボン酸塩を用いる方法(特公昭52‐12240号公報)、重合反応を2段階で行い、第2段階の反応において、多量の水を添加する方法(特開昭61‐7332号公報)、あるいは重合反応中、反応缶の気相部分を冷却することにより反応缶内の気相の一部を凝縮させ、これを液相に還流せしめる方法(特開平5‐222196号公報)などが挙げられる。
【0004】
これらの方法においては、有機アミド系溶媒中でアルカリ金属硫化物とジハロ芳香族化合物とを、約180〜280℃の温度範囲内で反応させ、PASを製造している。しかしながら、該反応は急激な発熱を伴い、望ましくない副反応などが生じ易い。その場合には、得られるPAS粒子の形状が一定とならず、PASスラリーを濾別し、水洗ろ過を繰返し行うことによりPASを分離するプロセスにおいて、時間がかかり過ぎて経済的なプロセスとなり得ないという問題があった。
【0005】
上記の問題を解決するために、反応温度近辺における反応系の昇温速度を制御することが試みられている。例えば、特開平1−299826号公報においては、架橋PASの3段階重合法における第2段階重合時に、245〜290℃の温度範囲の昇温速度を10〜100℃/時間とすることによって、生成するポリマーの凝集・肥大化および微粉化を抑え、適度な大きさの顆粒状の架橋PASを得る方法を開示している。しかしながら、この方法は、高溶融粘度の架橋PASの製法であり、各段階での重合反応系中の水分量の調節が複雑で、反応途中に水分を追加しなければならず、プロセス的に経済的な方法ではない。
【0006】
また、特開平4−255721号公報においては、反応液を220以下の温度から260以上に昇温する時に、平均して0.5℃/分以下の速度で昇温して反応を行い、副反応を抑え高重合度のPASを得る方法が開示されている。しかしながら、この方法は、反応系の水分量をアルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物、硫化水素から選ばれた硫黄源中の硫黄1モル当り0.3モル未満とし、重合助剤であるアルカリ金属カルボン酸塩を用いる反応であり、比較的多量の重合助剤を使用するため重合助剤の回収に多大なコストがかかり、工業的規模での生産方法として望ましいものではない。
【0007】
さらに、特開平8−183858号公報においては、高分子量PASの2段階重合法における、工程1での220℃から240℃までの温度範囲を、平均0.1〜1.0℃/分の速度で昇温させながら反応させることによって、急激な発熱反応を抑制しながら、全体の重合時間を大幅に短縮して粒状の高分子量PASを得る方法を開示している。しかしながら、この方法は、粒状の高分子量PASの製法であり、各段階での重合反応系中の水分量の調節が複雑で、反応途中に水分を追加しなければならず、プロセス的に経済的な方法ではない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、重合時に重合助剤を用いず、重合工程の途中において重合系の水分量をコントロールする必要のない簡便なポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法において、ポリアリーレンスルフィド樹脂の性状を一定にし、生成ポリマーの回収時におけるろ過性能を向上させることで、後処理工程時間が短縮されるポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリアリーレンスルフィドの重合反応において、該反応系に、特定量のポリハロ芳香族化合物を添加し、反応缶の気相部分を冷却することにより反応缶内の気相の一部を凝縮させ、これを液相に還流せしめ、かつ反応温度までの特定温度範囲において、特定の昇温速度に制御することにより、粒子性状が安定したPASを得ることができ、反応スラリーのろ過性能を改善し、ポリアリーレンスルフィド樹脂の生産性を改善し得ることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明の発明(1)によれば、有機アミド系溶媒中、アルカリ金属硫化物とジハロ芳香族化合物とを反応させてポリアリーレンスルフィド樹脂を製造する方法において、ポリハロ芳香族化合物をアルカリ金属硫化物1モルに対して、0.005〜1.5モル%添加し、反応缶の気相部分を冷却することにより反応缶内の気相の一部を凝縮させ、これを液相に還流せしめ、かつ反応系の180〜275℃の温度範囲における反応温度までの昇温速度を平均0.01〜0.33℃/分にすることにより、反応スラリー中のポリマーの粒径(D50)を51〜104μmの範囲として、ろ過性を改善し、溶融粘度が520〜1210poiseの高分子量ポリアリーレンスルフィド樹脂を得ることを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法が提供される。
【0011】
また、本発明の発明(2)によれば、発明(1)において、ポリハロ芳香族化合物をアルカリ金属硫化物1モルに対して、0.11〜0.75モル%添加するポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法が提供される。
【0012】
本発明の好ましい態様は、以下の通りである。
(3)重合反応を230〜275℃で、0.1〜20時間行う上記発明(1)または(2)に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
(4)重合反応を240〜265℃で、1〜6時間行う上記発明(1)または(2)に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
(5)重合反応を195〜240℃で、0.1〜20時間および240〜270℃で、1〜10時間の2段反応で行う上記発明(1)または(2)に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
(6)重合反応を210〜240℃で、0.5〜10時間および240〜265℃で、1〜6時間の2段反応で行う上記発明(1)または(2)に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
(7)反応系の水分量が、アルカリ金属硫化物1モル当たり0.5〜1.7モルである上記発明(1)ないし(6)のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
(8)反応系の水分量が、アルカリ金属硫化物1モル当たり0.8〜1.2モルである上記発明(1)ないし(6)のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
(9)上記発明(1)ないし(8)に記載のいずれかの方法で製造されたポリアリーレンスルフィド樹脂を、さらに気相酸化性雰囲気下、180〜270℃の温度にて0.5〜300時間熱処理を行うポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
(10)上記発明(1)ないし(8)に記載のいずれかの方法で製造されたポリアリーレンスルフィド樹脂を、さらに気相酸化性雰囲気下、200〜270℃の温度にて1〜96時間熱処理を行うポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法は、有機アミド系溶媒中、アルカリ金属硫化物とジハロ芳香族化合物を反応させてポリアリーレンスルフィド樹脂を製造する方法において、ポリハロ芳香族化合物をアルカリ金属硫化物1モルに対し0.005〜1.5モル%添加し、反応缶の気相部分を冷却することにより反応缶内の気相の一部を凝縮させ、これを液相に還流せしめ、かつ反応系の180〜275℃の温度範囲における反応温度までの昇温速度を平均0.01〜0.33℃/分に制御することが必須であり、この昇温速度の制御により、得られるPASの粒子性状を一定にし、PASスラリーのろ過性能を改善するものである。以下に、本発明を詳細に説明する。
【0014】
1.有機アミド系溶媒
本発明において用いられる有機アミド系溶媒は、PAS重合において使用することが知られている、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」と略すことがある。)、N−エチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチル(またはジエチル)アセトアミド、N−メチル(またはエチル)カプロラクタム、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ホルムアミド、アセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、テトラメチルウレア、N,N’−エチレン−2−ピロリドン、2−ピロリドン、ε−カプロラクタム、ジフェニルスルホンなどが挙げられ、これらは、1種または2種以上の混合物としてを使用できる。
これらの中、特にNMPの使用が好ましい。
【0015】
2.アルカリ金属硫化物
アルカリ金属硫化物としては、例えば硫化リチウム、硫化ナトリウム(NaS)、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウムおよびこれらの混合物が挙げられる。これらのアルカリ金属硫化物は、水和物または水溶液であってもよい。また、これらにそれぞれ対応する水硫化物および水和物を、それぞれに対応する水酸化物で中和して用いることもできる。これらのアルカリ金属硫化物の中では、硫化ナトリウムが安価であって工業的に好ましい。
【0016】
3.ジハロ芳香族化合物
ジハロ芳香族化合物としては、p−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、2,5−ジクロロトルエン、p−ジブロモベンゼン、1,4−ジクロロナフタレン、1−メトキシ−2,5−ジクロロベンゼン、4,4’−ジクロロビフェニル、4,4’−ジブロモビフェニル、2,4−ジクロロ安息香酸、2,5−ジクロロ安息香酸、3,5−ジクロロ安息香酸、2,4−ジクロロアニリン、2,5−ジクロロアニリン、3,5−ジクロロアニリン、4,4’−ジクロロフェニルエーテル、4,4’−ジクロロジフェニルスルホキシド、4,4’−ジクロロフェニルケトンおよびこれらに類するもの並びにそれらの混合物などが挙げられる。
p−ジクロロベンゼンに代表されるp−ジハロベンゼンを主成分とするものが好ましい。
【0017】
4.ポリハロ芳香族化合物
本発明の方法においては、ろ過性の改善およびPASの分子量を高める目的で、1分子当り3個以上のハロゲン置換基を有するポリハロ芳香族化合物を用いる。ポリハロ芳香族化合物としては、例えば、1,2,3−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、1,3−ジクロロ−5−ブロモベンゼン、2,4,6−トリクロロトルエン、1,2,3,5−テトラブロモベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロ−2,4,6−トリメチルベンゼン、2,2’,4,4’−テトラクロロビフェニル、2,2’,6,6’−テトラブロモ−3,3’,5,5’テトラメチルビフェニル、1,2,3,4−テトラクロロナフタレン、1,2,4−トリブロモ−6−メチルナフタレンなど、およびそれらの混合物が挙げられ、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼンが好ましい。また、他の少量添加物として、末端停止剤、修飾剤としてのモノハロ化物を併用することもできる。
【0018】
ポリハロ芳香族化合物は、アルカリ金属硫化物1モルに対して0.005〜1.5モル%、好ましくは0.11〜0.75モル%、特に好ましくは0.15〜0.65モル%の量で使用する。反応系における、ポリハロ芳香族化合物の添加量が、アルカリ金属硫化物1モルに対して0.005モル%未満であると、ろ過性の改善効果が減少し、一方、アルカリ金属硫化物1モルに対して1.5モル%を超えると、重合反応の制御が困難となる。
【0019】
5.重合反応
本発明の方法は、反応缶内の有機アミド溶媒中でアルカリ金属硫化物とジハロ芳香族化合物を反応させてPASを製造する方法であるが、特開平5−222196号公報に記載された、反応缶の気相部分を積極的に冷却して、水分に富む還流液を多量に液相上部に戻すことによって、反応溶液上部に水含有率の高い層を形成する方法を用いる。すなわち、反応缶の気相部分を積極的に冷却することにより、残存のアルカリ金属硫化物(例えば、NaS)、ハロゲン化アルカリ金属(例えば、NaCl)、オリゴマーなどがその層に多く含有されるようになり、従来法と比較して、反応を阻害するような因子を効率よく除外でき、必要に応じて、高分子量PASを得ることができる。
【0020】
反応缶の気相部分の冷却は、公知の冷却手段により行え、反応缶内の上部に設置した内部コイルに冷媒体を流す方法、反応缶外部の上部に巻きつけた外部コイルまたはジャケットに冷媒体を流す方法、反応缶上部に設置したリフラックスコンデンサーを用いる方法、反応缶外部の上部に水をかけるまたは気体(空気、窒素等)を吹き付ける方法、反応缶上部に従来備えられている保温材を取外す方法などの方法が考えられるが、いずれの方法を用いてもよい。
【0021】
反応時の気相部分の冷却は、反応が1段で行われる場合には、反応開始時から行うことが望ましいが、少なくとも250℃以下の昇温途中から行わなければならない。2段階反応では、第1段階の反応から冷却を行うことが望ましいが、遅くとも第1段階反応の終了後の昇温途中から行うことが好ましい。冷却効果の度合いは、通常、反応缶内圧力が最も適した指標であり、反応缶内圧が、冷却をしない場合と比較して低くなる程度に行うのが好ましい。
【0022】
本発明のPASの製造方法における重合反応系は、先ず不活性ガス雰囲気下で、重合系の水分量が、アルカリ金属硫化物1モル当り、好ましくは0.5〜1.7モル、より好ましくは0.8〜1.2モルとなるように、必要に応じて脱水または水添加を行う。水分量が、アルカリ金属硫化物1モル当り1.7モルを超えると、副反応の発生が著しくなり、系内水分量の増加とともに、反応生成物中のフェノールなどの副生成物が増大する。一方、アルカリ金属硫化物1モル当り0.5モル未満では、反応速度が速すぎて、十分な高分子量物を得ることができなくなる。
【0023】
次いで、反応系を昇温して、180〜275℃の温度範囲における昇温速度を平均0.01〜0.33℃/分、好ましくは200〜260℃の温度範囲において平均0.05〜0.33℃/分に制御する。昇温速度が0.33℃/分を超えると、昇温時に反応熱が著しく生じて反応の制御が困難になり、また、得られた反応スラリーのろ過性は悪くなる。一方、昇温速度が0.01℃/分未満であると反応時間が長くなり過ぎるため経済性が悪化する。
【0024】
本発明の昇温速度とは、例えば、0.5℃/分とは、1分間に0.5℃ずつ昇温させる方法を意味するのではなく、10分かけて5℃上昇させる方法を意味する、平均昇温速度のことである。
【0025】
本発明の方法における重合反応は、180〜275℃の温度範囲で行うが、2段以上の多段反応で行ってもよい。より高い分子量のPASを得るには、2段以上の反応温度プロフィールを用いることが好ましい。
1段重合反応の場合には、反応温度230〜275℃にて、反応時間0.1〜20時間、好ましくは反応温度240〜265℃にて、反応温度1〜6時間である。
また、2段重合反応の場合には、第1段階は、反応温度195〜240℃にて、反応時間0.1〜20時間、第2段階は、反応温度240〜270℃にて、反応時間1〜10時間、好ましくは、第1段階は、反応温度210〜240℃にて、反応時間0.5〜10時間、第2段階は、反応温度240〜265℃にて、反応時間1〜6時間である。
【0026】
それぞれ、反応温度が上記範囲より低過ぎると、反応速度が小さすぎ実用的ではなく、一方、反応温度が上記範囲より高すぎると、反応速度が速すぎて十分に高分子量のPASが得られないのみならず、副反応速度が著しく増大する。
特に、2段重合反応においては、第1段階の終了は、重合反応系内のジハロ芳香族化合物の残存率が1〜40モル%の時点とすることが好ましい。ジハロ芳香族化合物の残存率が40モル%を超えていると、第2段階の反応で、解重合など副反応が生じやすく、一方、ジハロ芳香族化合物の残存率が1モル%未満では、最終的に高分子量PASを得難い。その後昇温して、最終段階の反応は、反応温度240〜270℃の範囲で、1〜10時間行うことが好ましい。温度が240℃より低いと、十分に高分子量化したPASを得ることができず、また、270℃より高い温度では、解重合などの副反応が生じやすくなり、安定的に高分子量物を得難くなる。
【0027】
得られたPASは、気相酸化性雰囲気下、PASの融点未満の温度で加熱処理を行ってもよい。熱処理温度は、好ましくは180〜270℃、特に好ましくは200〜270℃である。該温度が上記範囲未満では、硬化速度が不十分で加熱処理に要する時間が増加し、上記範囲を超えては、硬化速度が高くなり過ぎて溶融粘度の制御ができず、またPASにゲルを生じる。また、加熱処理に要する時間は、上記の加熱処理温度などにより異なるが、好ましくは0.5〜300時間、特に好ましくは1〜96時間である。該時間が上記範囲未満では、熱処理による効果が十分に得られず、上記範囲を超えては、PAS粒子同士が融着しやすくなり、2次粒子が著しく大きくなったり、容器缶壁への付着が生じ好ましくない。
【0028】
上記の加熱処理は、好ましくは空気、純酸素など、またはこれらと任意の適当な不活性ガスとの混合物のような酸素含有ガスなどの気相酸化性雰囲気下で実施される。不活性ガスとしては、水蒸気、窒素、二酸化炭素など、またはそれらの混合物が挙げられる。上記酸素含有ガス中の酸素の濃度は、好ましくは0.5〜50体積%、特に好ましくは10〜25体積%である。該酸素濃度が、上記範囲を超えてはラジカル発生量が増大し、溶融時の増粘が著しくなり、また色相が暗色化し、上記範囲未満では、熱酸化速度が遅くなり、いずれも好ましくない。
【0029】
6.ポリアリーレンスルフィドの回収(後処理)
本発明の方法では、上記のようにして得られたPASスラリーからのポリアリーレンスルフィド樹脂の回収は、常法に従って行うことができる。
例えば、PASスラリーをろ過し、溶媒を含むPASケーキを得、該PASケーキを、窒素ガス気流中、好ましくは温度150〜250℃にて、10分間〜24時間加熱して、得られたPAS粉末に水洗浄・ろ過を数回繰り返し行った後、乾燥してPASを得る溶媒乾燥処理法によりPASを得ることができる。
【0030】
あるいは、PASスラリーをろ過し、溶媒を除去後、水洗浄・ろ過を数回繰り返した後、乾燥してPASを得る直接水洗処理法によりPASを得ることもできる。
本発明の方法により製造されたPASは、粒子性状が安定しており、ろ過性能が優れている。
【0031】
7.生成PAS
本発明の方法で得られるPASは、粒子性状に優れ、成形加工する際には、慣用の添加剤、例えば、カーボンブラック、炭酸カルシウム、シリカ、酸化チタンなどの粉末状充填剤、または炭素繊維、ガラス繊維、アスベスト繊維、ポリアラミド繊維などの繊維状充填剤を混入することができる。さらに、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、離型剤、着色剤などの添加剤を配合することもできる。
【0032】
【実施例】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。なお、実施例における試験方法は、以下の通りである。
【0033】
(A)ろ過性:重合後に得られた反応スラリー100gを50℃に加熱した後、電動ポンプを用いて3.3×10Paの減圧下で、直径60mm、保留サイズ1μmのろ紙を用いて減圧ろ過を行った。この時のろ過が終了するまでのろ過時間と、ろ液量を計測し、下記式により、ろ過性を求めた。
ろ過性(g/sec)=ろ液量(g)/ろ過時間(sec)
【0034】
(B)溶融粘度(V6):島津製作所製フローテスター、CFT−500Cを用い、300℃、荷重:1.96×10Pa、L/D=10/1にて、6分間保持した後に測定した粘度(ポイズ)である。
【0035】
(C)粒度分布:湿式粒度分布測定装置(日機装(株)製マイクロトラックSRA)を用いて、得られた反応スラリーの粒度分布測定を行い、累積50体積%の粒径(D50は、体積換算における累積50%となる粒径)を求めた。
【0036】
【実施例】
実施例1(参考例1)
150リットルのオートクレーブに、フレーク状硫化ソーダ(60.91重量%NaS)15.375kgとNMP38.0kgを仕込んだ。窒素気流下にて攪拌しながら、216℃まで昇温して、水3.740kgを留出させた(硫化ソーダ1モル当たり水1.05モル)。その後、オートクレーブを密閉して180℃まで冷却し、p−ジクロロベンゼン(以下、「p−DCB」と略すことがある。)18.000kg、1,2,4−トリクロロベンゼン(以下、「1,2,4−TCB」と略すことがある。)21.8g(仕込み硫化ソーダ1モル当り0.10モル%)およびNMP16.0kgを仕込んだ。液温150℃で、窒素ガスを用いて9.8×10Paに加圧して昇温を開始した。液温200〜260℃の温度範囲を0.7℃/分の平均速度で昇温し、液温260℃になった時点で、オートクレーブ上部への散水を開始した。該温度で2時間保持して反応を行った。反応終了後、散水を止めて、室温まで冷却した。
【0037】
得られた反応スラリーを一部サンプリングして、ろ過性と粒度分布の測定を行った。残りの反応スラリーは、ろ過して溶媒を除去し、次いで常法により水洗浄、ろ過を7回繰り返した後、120℃で約8時間、熱風循環乾燥機中で乾燥し、粉末状のPPSを得た。
反応条件並びに得られたPPSのろ過性、粒度分布および溶融粘度を表1に示す。
【0038】
実施例2
仕込みに用いた1,2,4−TCBを、23.9g(仕込み硫化ソーダ1モル当り0.11モル%)とし、液温200〜260℃の温度範囲を0.33℃/分の平均速度で昇温したこと以外は、実施例1(参考例1)と同様にして粉末状のPPSを得た。反応条件並びに得られたPPSのろ過性、粒度分布および溶融粘度を表1に示す。
【0039】
実施例3
液温200〜260℃の温度範囲を0.17℃/分の平均速度で昇温したこと以外は、実施例1(参考例1)と同様にして粉末状のPPSを得た。反応条件並びに得られたPPSのろ過性、粒度分布および溶融粘度を表1に示す。
【0040】
実施例4
仕込みに用いたp−DCBを18.186kg、1,2,4−TCBを163.3g(仕込み硫化ソーダ1モル当り0.75モル%)とし、液温200〜260℃の温度範囲を0.33℃/分の平均速度で昇温したこと以外は、実施例1(参考例1)と同様にして粉末状のPPSを得た。反応条件並びに得られたPPSのろ過性、粒度分布および溶融粘度を表1に示す。
【0041】
実施例5
反応時間を3時間としたこと以外は、実施例2と同様にして、粉末状のPPSを得た。
反応条件並びに得られたPPSのろ過性、粒度分布および溶融粘度を表1に示す。
【0042】
実施例6
仕込みに用いたp−DCBを18.186kg、1,2,4−TCBを87.1g(仕込み硫化ソーダ1モル当り0.40モル%)とし、液温200〜260℃の温度範囲を0.33℃/分の平均速度で昇温し、240℃にて1時間、さらに昇温し260℃にて2時間反応を行ったこと以外は、実施例1(参考例1)と同様にして粉末状のPPSを得た。反応条件並びに得られたPPSのろ過性、粒度分布および溶融粘度を表1に示す。
【0043】
比較例1
液温200〜260℃の温度範囲を1.2℃/分の平均速度で昇温したこと以外は、実施例1(参考例1)と同様にして粉末状のPPSを得た。反応条件並びに得られたPPSのろ過性、粒度分布および溶融粘度を表1に示す。
【0044】
比較例2
1,2,4−TCBを1.0g(仕込み硫化ソーダ1モル当り0.0047モル%)としたこと以外は、実施例1(参考例1)と同様にして粉末状のPPSを得た。反応条件並びに得られたPPSのろ過性、粒度分布および溶融粘度を表1に示す。
【0045】
比較例3
1,2,4−TCBを348.4g(仕込み硫化ソーダ1モル当り1.6モル%)としたこと以外は、実施例1(参考例1)と同様にしてPPSの製造を行ったが、得られた反応スラリーに流動性が無かったため、ろ過性の測定は、できなかった。また、溶融粘度の測定においても十分な流れ性が得られず、測定不能であった。反応条件並びに得られたPPSのろ過性、粒度分布および溶融粘度を表1に示す。
【0046】
【表1】
Figure 0004820486
【0047】
【発明の効果】
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法によれば、重合助剤を用いることなく、反応途中に反応系に水を加えることもない簡便な方法にて、反応スラリーのろ過性を大幅に改善することができ、後処理工程が短時間で実施できるため、生産性が向上し、経済的に有利な方法であるとともに、溶融粘度の大きい高分子量ポリアリーレンスルフィド樹脂が得られる。

Claims (2)

  1. 有機アミド系溶媒中、アルカリ金属硫化物とジハロ芳香族化合物とを反応させてポリアリーレンスルフィド樹脂を製造する方法において、ポリハロ芳香族化合物をアルカリ金属硫化物1モルに対して、0.005〜1.5モル%添加し、反応缶の気相部分を冷却することにより反応缶内の気相の一部を凝縮させ、これを液相に還流せしめ、かつ反応系の180〜275℃の温度範囲における反応温度までの昇温速度を平均0.01〜0.33℃/分にすることにより、反応スラリー中のポリマーの粒径(D50)を51〜104μmの範囲として、ろ過性を改善し、溶融粘度が520〜1210poiseの高分子量ポリアリーレンスルフィド樹脂を得ることを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
  2. ポリハロ芳香族化合物をアルカリ金属硫化物1モルに対して、0.11〜0.75モル%添加することを特徴とする請求項1に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
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