JP4818485B2 - プレコート金属板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、このような知見に基づいて完成されたものである。
まず、本発明の一実施形態に係るプレコート金属板の構成について詳細に説明する。
本実施形態に係るプレコート金属板では、着色塗膜層と意匠性塗膜層との境界面の中心線平均粗さRaが0.8μm以上であることが必要である。このように、着色塗膜層と意匠性塗膜層との境界面のRaを大きくすることにより、プレコート金属板が十分な光輝感および深み感を有し、さらには立体感をも有するため、プレコート金属板の意匠性を顕著に向上させることができる。着色塗膜層と意匠性塗膜層との境界面のRaが0.8μm未満であると、上記の意匠性の向上効果を十分に得ることができない。Raが1.0μm以上であると上記の意匠性が更に向上するため、より好適である。
着色塗膜層と意匠性塗膜層との境界面のRaは、着色塗膜層および意匠性塗膜層の塗布方法、着色塗膜層中の微粒子(顔料など)の濃度、着色塗膜層および意匠性塗膜層形成用の塗料の低シェアでの粘度や表面張力等により、制御することができる。例えば、着色塗膜層と意匠性塗膜層との境界面のRaを0.8μm以上としたプレコート金属板は、着色塗膜層と意匠性塗膜層の2層を積層する際に、表面張力を制御した着色塗膜層用の塗料(以下、「着色塗料」と称する。)と意匠性塗膜層用塗料(以下、「意匠性塗料」と称する。)を、乾燥および焼付け硬化させる前の未乾燥の状態で2層に積層し、積層した未乾燥状態の着色塗料および意匠性塗料を同時に乾燥および焼付け硬化させることにより得られる。
(概要)
本実施形態に係る着色塗膜層は、着色顔料とバインダ樹脂とを必須成分として含有する塗膜層であり、意匠性塗膜層よりも内層側、すなわち、基材である金属材により近い側に位置する。ただし、被覆層が、着色塗膜層および意匠性塗膜層に加えて、クリヤー塗膜層とプライマー塗膜層のうちのいずれか一方または双方を含む3層または4層構造である場合には、着色塗膜層は、プライマー塗膜層と意匠性塗膜層とに接して挟まれた部分に位置する層とする。また、被覆層が、着色塗膜層、意匠性塗膜層、クリヤー塗膜層、プライマー塗膜層以外の他の層を含む場合には、意匠性塗膜層とプライマー塗膜層との間に位置し、かつ、着色顔料を含有する全ての層を着色塗膜層とする。
着色塗膜層中に含有される着色顔料としては、着色された有機微粒子を用いても良いし、一般に公知の無機着色顔料を用いてもよい。有機微粒子としては、例えば、着色されたアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂等の微粒子を使用することができる。無機着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の白色顔料や、亜酸化銅、モリブデートオレンジ、黄色酸化鉄、鉄黒、べんがら、紺青、群青などを使用することができる。着色顔料が白色顔料、特に白色度の高い酸化チタンであると、白色度が高く光輝感や深み感のある意匠性に優れた白色のプレコート金属板が得られるため、より好適である。光輝感や深み感のある白色の意匠性に優れた塗装外観は、近年の流行でもあり、従来はスプレーによる後塗装(ポストコート)でしか実現できなかった塗装外観である。そのため、このような塗装外観がプレコート金属板で達成できると、生産性が格段に向上するため好ましい。
本実施形態に係る着色塗膜層は、平均粒径が100nm以上2000nm以下の微粒子を含んでいることが必要である。着色塗膜層中に前記粒径の微粒子が含まれていることにより、優れた意匠性を有する塗装外観を得ることができる。本実施形態に係る微粒子の粒径が100nm未満では、着色塗膜層と意匠性塗膜層との境界面のRaが0.8μm未満となり、立体感や深み感などが貧弱となり、意匠性が劣るおそれがある。一方、微粒子の粒径が2000nm超では、微粒子間に存在する隙間(空隙)の体積が大きくなりすぎて、乾燥・焼付け硬化時に、意匠性塗膜層を形成するためのバインダ樹脂が着色塗膜層中へ拡散し、着色塗膜層中の微粒子間の空隙部分に入り込みやすくなる。そのため、意匠性塗膜層と着色塗膜層とが混ざり合ったような状態となるので、両層の明確な境界面が存在しなくなり、外観の意匠性が低下するおそれがある。微粒子の粒径は、200〜1000nmとする必要があり、好ましくは250〜300nmである。
本実施形態に係る着色塗膜層中に空隙が存在すると、立体感や塗膜の深み感等が発現されて、意匠性がさらに向上するため、より好ましい。着色塗膜層中に空隙を存在させるようにするためには、乾燥・硬化後の塗膜中に、粒径100nm以上2000nm以下の微粒子が最密充填以上となるように存在するように、微粒子を高濃度で含有させればよい。微粒子を着色塗膜層中に高濃度で含有させることにより、微粒子間に形成された空隙の体積がバインダ樹脂の体積よりも大きくなる。そのため、顔料が最密充填未満となる濃度で含まれているような塗膜とは異なり、バインダ樹脂が存在しない部分を空隙として着色塗膜層中に存在させることができる。
本実施形態に係る着色塗膜層に使用するバインダ樹脂としては、特に限定されず、一般に使用されているバインダ樹脂、例えば、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等を用いることができる。ただし、本実施形態に係る着色塗膜層には、必要に応じて最密充填以上となる量の微粒子を添加するため、塗膜が脆くなりやすいことから、着色塗膜層に使用するバインダ樹脂としては、加工性や密着性に優れる樹脂を使用することが好ましい。具体的には、着色塗膜層に使用するバインダ樹脂として、例えば、ガラス転移温度が0℃〜40℃、数平均分子量が10000〜30000、水酸基価が10KOHmg/g未満のポリエステル樹脂(以下、「高分子量のポリエステル樹脂」と称する。)を用いると、加工性が向上するため好ましい。
本実施形態に係る着色塗膜層の膜厚は、優れた意匠性を得るためには、10μm以上であることが好ましく、より高い意匠性を求める場合には13μm以上であることがさらに好ましい。一方、着色塗膜層の膜厚が80μmを超えると、塗膜の加工性が低下するおそれがあるため、着色塗膜層の膜厚は80μm以下であることが好ましく、より高い加工性を求める場合には60μm以下であることがさらに好ましい。
続いて、本実施形態に係る意匠性塗膜層について説明する。
本実施形態に係る意匠性塗膜層は、前述した着色塗膜層の表層側、すなわち、基材である金属材からより遠い側に積層され、かつ、光輝顔料を含む被覆層である。被覆層が、着色塗膜層および意匠性塗膜層からなる2層構造の場合、これにさらにプライマー塗膜層を含む3層構造の場合、さらには、着色塗膜層が複数層存在する4層以上の構造等の場合には、意匠性塗膜層は、複数の被覆層のうち最表層に位置することとなる。ただし、意匠性塗膜層は、着色塗膜層の表層側に直接積層されていれば、必ずしも最表層に位置する必要はなく、後述するように、意匠性塗膜層のさらに表層側に、クリヤー塗膜層等の別途の被覆層が積層されていてもよい。
本実施形態に係る意匠性塗膜層に含まれる光輝顔料とは、パール顔料、ガラスフレーク顔料、メタリック顔料等の光輝感をもつ顔料のことであり、一般に公知のものを用いることができる。具体的には、パール顔料としては、マイカ、合成マイカなどの一般に公知のパール顔料を用いることができ、市販のものを使用しても良い。市販のマイカの例としては、日本光研工業社販売の「パールグレイズ」等が挙げられる。市販の合成マイカの例としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、二酸化ケイ素、フッ素化合物からなる日本光研工業社販売の「アルティミカ」等が挙げられる。ガラスフレーク顔料とは、フレーク状にしたガラス粉のことであり、表面に金属や金属酸化物でコーティングしたものを用いても良い。ガラスフレーク顔料としては、市販のものを使用しても良く、例えば、日本板硝子社製の「メタシャイン」等を用いることができる。また、メタリック顔料としては、例えば、アルミニウム、銀等の金属の微粒子やフレーク状の微粒子などを用いることができる。光輝顔料の添加量は、塗膜の光輝感を向上させるという観点から、意匠性塗膜層のバインダ樹脂に対し3質量%以上であることが好ましく、また、塗膜が脆くなることを防止し、加工性を向上させるという観点から、30質量%以下であることが好ましい。
本実施形態に係る意匠性塗膜層に使用するバインダ樹脂としては、特に限定されず、一般に使用されているバインダ樹脂、例えば、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等を用いることができる。ただし、着色塗膜層との密着性や塗料原料の共通化等の観点から、着色塗膜層と同一の樹脂を意匠性塗膜層の樹脂の一部または全部として使用することが好ましい。具体的には、意匠性塗膜層に使用するバインダ樹脂の一部または全部として、例えば、着色塗膜層と同一の樹脂、すなわち、ガラス転移温度が0℃〜40℃、数平均分子量が10000〜30000、水酸基価が10KOHmg/g未満の高分子量のポリエステル樹脂を用いると、加工性や着色塗膜層との密着性が向上するため好ましい。また、バインダ樹脂には、硬化剤としてメラミン樹脂やイソシアネートなどの一般に公知の硬化剤を添加するとより好ましい。硬化剤の添加量は、バインダ樹脂の総量100質量部に対して5質量部〜30質量部であると、加工性および密着性を担保できるため好適である。硬化剤としては、市販のものを用いても良く、例えば、三井サイテック社製のメラミン樹脂「サイメル(登録商標)303」等を使用できる。
意匠性塗膜層には光輝顔料が添加されているため、意匠性塗膜層の膜厚が厚いほど、高い光輝感が得られる。ただし、意匠性塗膜層の膜厚が30μmを超えると、塗装時に沸きが発生しやすくなるために塗装性が劣化し、また、塗料コストの面でも好ましくない。一方、意匠性塗膜層の膜厚が3μm未満では、意匠性塗膜層による光輝感の向上効果が小さくなるため、意匠性塗膜層の膜厚を3μm以上30μm以下とすることが好ましい。安定した光輝感および塗装性を確保するという観点から、より好ましい意匠性塗膜層の膜厚は、5μm以上20μm以下である。
(概要)
本実施形態に係るプレコート金属板が有する被覆層は、前述した意匠性塗膜層の表層側に積層されたクリヤー塗膜層をさらに含んでいてもよい。本実施形態に係るクリヤー塗膜層は、顔料を含まない透明な塗膜層である。意匠性塗膜層上にさらにクリヤー塗膜層を塗装することにより、プレコート金属板の光沢が増し、光輝感が高くなり、意匠性をより向上させることができる。
本実施形態に係るクリヤー塗膜層に使用するバインダ樹脂としては、特に限定されず、一般に使用されているバインダ樹脂、例えば、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等を用いることができる。ただし、意匠性塗膜層との密着性や塗料原料の共通化等の観点から、意匠性塗膜層と同一の樹脂をクリヤー塗膜層の樹脂の一部または全部として使用することが好ましい。具体的には、クリヤー塗膜層に使用するバインダ樹脂として、例えば、意匠性塗膜層と同一の樹脂、すなわち、ガラス転移温度が0℃〜40℃、数平均分子量が10000〜30000、水酸基価が10KOHmg/g未満の高分子量のポリエステル樹脂を用いると、加工性や意匠性塗膜層との密着性が向上するため好ましい。また、これらのバインダ樹脂には、硬化剤としてメラミン樹脂やイソシアネートなどの一般に公知の硬化剤を添加するとより好ましい。硬化剤の添加量は、バインダ樹脂の総量100質量部に対して5質量部〜30質量部であると、加工性および密着性を担保できるため好適である。硬化剤としては、市販のものを用いても良く、例えば、三井サイテック社製のメラミン樹脂「サイメル(登録商標)303」等を使用できる。
本実施形態に係るクリヤー塗膜層の膜厚は、優れた意匠性を得るためには、3μm以上であることが好ましく、より高い意匠性を求める場合には10μm以上であることがさらに好ましい。一方、着色塗膜層の膜厚が20μmを超えると、塗膜に沸きが発生するおそれがあるため、着色塗膜層の膜厚は20μm以下であることが好ましく、15μm以下では沸きが更に抑制されるため好ましい。
(概要)
本実施形態に係るプレコート金属板が有する被覆層は、以上説明した着色塗膜層、意匠性塗膜層およびクリヤー塗膜層の他に、プライマー塗膜層を含んでいてもよい。このプライマー塗膜層は、金属板と着色塗膜層との間に形成される塗膜層であり、被覆層が、意匠性塗膜層、着色塗膜層およびプライマー塗膜層の3層、あるいは、これらの塗膜層にクリヤー塗膜層を含む4層からなる場合には、基材となる金属板に最も近い側の塗膜層となる。ただし、この場合、金属板から最も近い側の層であっても、金属板と塗膜との密着性向上や耐食性向上を目的として設ける膜厚1μm未満の被覆層は、本実施形態に係るプライマー塗膜層には該当せず、膜厚1μm未満の被覆層よりも表層側の被覆層をプライマー塗膜層とする。このように、着色塗膜層の内層側にさらにプライマー塗膜層を塗装することにより、塗膜密着性をより向上させることができる。
プライマー塗膜層のバインダとして用いる樹脂は、特に限定されず、一般に使用されているバインダ樹脂、例えば、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等を用いることができる。ただし、着色塗膜層との密着性や塗料原料の共通化等の観点から、着色塗膜層と同一の樹脂をプライマー塗膜層の樹脂の一部または全部として使用することが好ましい。具体的には、プライマー塗膜層に使用するバインダ樹脂の一部または全部として、例えば、着色塗膜層と同一の樹脂、すなわち、ガラス転移温度が0℃〜40℃、数平均分子量が10000〜30000、水酸基価が10KOHmg/g未満の高分子量のポリエステル樹脂を用いると、加工性や着色塗膜層との密着性が向上するため好ましい。
本実施形態に係るプライマー塗膜層には、顔料を添加してもよく、耐食性を高めるという観点からは、防錆顔料を添加することが好ましい。プライマー塗膜層に添加する防錆顔料としては、一般に公知の防錆顔料、例えば、クロム酸ストロンチウム、クロム酸カリウム等のクロム系防錆顔料、トリポリリン酸二水素アルミニウム、リン酸亜鉛、亜リン酸亜鉛等のリン酸系防錆顔料、シリカ、Caイオン吸着シリカ等のシリカ系防錆顔料などを使用することができる。ただし、クロム系防錆顔料は、環境負荷物質である6価クロムを含むため、リン酸系防錆顔料やシリカ系防錆顔料などのクロム系以外の防錆顔料が好適である。これらの防錆顔料としては、市販のものを用いてもよく、例えば、テイカ社製のトリポリリン酸二水素アルミニウムである「K−WHITE(登録商標)#105」や、グレース社製のCaイオン吸着シリカである「シールデックスC303」等を使用することができる。
プライマー塗膜層の膜厚については、膜厚が厚いほど、高い加工性や密着性が得られることから、これらの性能面を考慮すると、プライマー塗膜層の膜厚の上限値を設定する必要はない。しかし、プライマー塗膜層の膜厚が30μmを超えると、着色塗膜層と異なり、塗料中の顔料濃度が低いため、塗装時に沸きが発生しやすく、塗装性が劣化すること、また、塗料コストの観点からも好ましくない。よって、プライマー塗膜層の膜厚は30μm以下であることが好ましい。一方、プライマー塗膜層の膜厚が1μm未満では、プライマー塗膜層による加工性および密着性の向上効果が小さくなるため、プライマー塗膜層の膜厚は1μm以上であることが好ましい。安定した加工性、密着性および塗装性を確保するという観点から、より好ましいプライマー塗膜層の膜厚は、3μm以上20μm以下である。
本実施形態に係るプレコート金属板の基材に使用する金属板としては、一般に公知の鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、銅板、アルミ合金板、チタン板等を用いることができる。これら金属板の表面には、めっきが施されていてもよい。めっきの種類としては、亜鉛めっき、アルミめっき、銅めっき、ニッケルめっき等が挙げられ、これらの合金めっきであってもよい。本実施形態では、金属板として鋼板を用いると、成形加工性に優れるため好ましい。このとき、鋼板として亜鉛系めっき鋼板を用いると、耐食性がより向上するため、さらに好ましい。亜鉛系めっき鋼板としては、一般に公知のもの、例えば、溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、鉄−亜鉛合金めっき鋼板、アルミニウム−亜鉛系合金めっき鋼板、亜鉛−アルミニウム−マグネシウム系合金めっき鋼板等を用いることができる。
続いて、上述したような構成を有するプレコート金属板の製造方法について詳細に説明する。
以上説明したように、本実施形態によれば、従来よりも光輝感、立体感、深み感等が増した意匠性に優れたプレコート金属板およびその製造方法を提供することが可能となる。従って、家電用、建材用、土木用、機械用、自動車用、家具用、容器用等の分野において、生産性の低いポストコート材ではなく、生産性の高いプレコート金属板を用いて意匠性に優れた製品を製造および組み立てられるようになり、作業効率が向上するなどの効果が得られるようになる。このように、本実施形態に係るプレコート金属板とその製造方法は、産業上の極めて価値が高いものといえる。
プレコート金属板の基材となる金属板として、板厚0.5mmの溶融亜鉛めっき鋼板を用いた。この溶融亜鉛めっき鋼板としては、亜鉛付着量が片面45g/m2のものを用いた。
シランカップリング剤を5g/l、水分散シリカ(微粒)を1.0g/l、および水系アクリル樹脂を25g/lを含む水溶液を調製し、本実施例で使用する化成処理液とした。なお、シランカップリング剤としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、水分散シリカとしては、日産化学社製「スノーテック−N」、水系アクリル樹脂としては、ポリアクリル酸を使用した。
東洋紡社製のポリエステル樹脂である「バイロン(登録商標)290」(ガラス点移点72℃、数平均分子量22,000、水酸基価5KOHmg/g)をシクロメキサノン/ソルベッソ150=1/1の質量比で混合した混合溶剤(以下、「混合溶剤」と称する。)に溶解した。この溶液に三井サイテック社製のメラミン樹脂「サイメル(登録商標) 303」を、樹脂固形分の質量比で、ポリエステル樹脂固形分100質量部に対して10質量部となるように添加した。さらに、このポリエステル樹脂とメラミン樹脂の混合溶液に、三井サイテック社製の酸性触媒「キャタリスト(商標)600」を0.5質量%添加してプライマー塗膜層用クリヤー塗料を作製した。
東洋紡社製のポリエステル樹脂である「バイロン(登録商標)300」(ガラス転移点7℃、数平均分子量23,000、水酸基価5KOHmg/g)(本樹脂を以降は「高分子樹脂」と称する。)を混合溶剤に溶解した。この溶液に三井サイテック社製のメラミン樹脂「サイメル(登録商標)303」を、樹脂固形分の質量比で、ポリエステル樹脂固形分100質量部に対して10質量部となるように添加した。さらに、このポリエステル樹脂とメラミン樹脂の混合溶液に、三井サイテック社製の酸性触媒「キャタリスト(商標)600」を0.5質量%添加して高分子クリヤー塗料を作製した。
東洋紡社製のポリエステル樹脂である「バイロン(登録商標)300」(ガラス転移点7℃、数平均分子量23,000、水酸基価5KOHmg/g)を混合溶剤に溶解した。この溶液に三井サイテック社製のメラミン樹脂「サイメル(登録商標)303」を、樹脂固形分の質量比で、ポリエステル樹脂固形分100質量部に対して10質量部となるように添加した。さらに、このポリエステル樹脂とメラミン樹脂の混合溶液に、三井サイテック社製の酸性触媒「キャタリスト(商標)600」を0.5質量%添加して高分子クリヤー塗料を作製した。
金属板の裏面、すなわち、着色塗料や意匠性塗料等を塗装する面の裏側の面に塗装する裏面塗料として、日本ファインコーティングス社製の裏面塗料のオルガ100のベージュ色を準備した。
上記1で準備した金属板をFC−4336(日本パ−カライジング製)を2質量%濃度含む60℃の温度の水溶液中に10秒間浸漬することで脱脂を行い、水洗後、乾燥した。次いで、上記2で調製した化成処理液を脱脂後の金属板の両面にロールコーターにて塗布し、熱風乾燥炉で乾燥して化成処理皮膜層を得た。化成処理液は、乾燥後の塗膜全体の付着量が100mg/m2となるように塗装した。化成処理乾燥時の到達板温は60℃とした。次に、化成処理を施した金属板表面に、上記3で作製したプライマー塗料をロールコーターにて乾燥膜厚5μmとなるように塗装し、さらに、他方の面には、上記6で準備した裏面塗料をロールコーターにて乾燥膜厚5μmとなるように塗装し、熱風を吹き込んだ誘導加熱炉にて金属板の到達板温が210℃となる条件で乾燥焼付けすることで、プライマー塗膜層を形成した。乾燥焼付け後に、塗装された金属板へ水をスプレーにて拭きかけ、水冷した。
着色塗膜層と意匠性塗膜層との境界面の中心線平均粗さRaは、JIS B 6061に準拠して、次のように測定した。
プレコート金属板を塗膜断面が観察できるように垂直に切断し、切断したプレコート金属板を樹脂に埋め込んだ後に断面部を研磨して、1000倍の光学顕微鏡による塗膜の断面写真を撮影した。次に、透明の樹脂シート(市販のOHPシートを使用)を写真上にかぶせて、塗膜界面の凹凸を正確にトレースした。次に、図1に示すように、境界面曲線の平均線の方向に基準長さlだけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線の方向にX軸を、縦倍率方向にY軸を取り、界面曲線をy=f(x)で表したときに、以下の式(I)によって求められる値をRaとして算出した。5回の測定の平均値を、プレコート金属板の着色塗膜層と意匠性塗膜層との境界面の中心線平均粗さRaとして採用した。
作製した各プレコート金属板について、垂直断面方向から光学顕微鏡により観察して、実膜厚を測定し、これより単位面積当たりの付着体積量を算出した。
[空隙体積率]=([単位面積当たりの付着体積量]−[単位面積当たりの塗膜成分体積量])×100/[単位面積当たりの付着体積量] (II)
各プレコート金属板の5箇所で得た値の平均を、プレコート金属板の着色塗膜層の空隙体積率として採用した。
作製した各プレコート金属板を垂直断面方向に切断し、その塗膜層の表面に垂直な断面を平滑にして、10000倍の走査型顕微鏡で写真を撮影した。そして、切断した断面における空隙面積率を画像解析により測定した。各プレコート金属板の5箇所で得た値の平均を、プレコート金属板の着色塗膜層断面の空隙面積率として採用した。
JIS K 5600.5.2に準拠したカッピング試験装置(一般に、エリクセン試験装置とも呼ばれる)を用いて、作製したプレコート金属板の評価面が凸側となるように加工し、さらにJIS K 5600.5.6「付着性」の7.2.6に記載のテープを用いた塗膜の除去方法(一般に、テープ剥離試験と呼ばれる)に準拠して加工した凸部の塗膜上にテープを付着させた後にテープを引き離し、凸部の塗膜の剥離状況を10倍ルーペにて観察した。
作製した各プレコート金属板の評価面の塗膜に、カッターナイフにて金属板素地に達するスクラッチを入れたサンプルを作製し、これをJIS K 5600.7.1に記載の耐中性塩水噴霧性について調査した。塩水の噴霧の暴露時間は240時間とした。
作製したプレコート金属板の評価面の鏡面光沢度をJIS K 5600.4.7に準拠した試験装置にて測定した。入射光の軸が試料面の法線に対して60°となるようにした。各プレコート金属板の5箇所で得た値の平均を、プレコート金属板の鏡面光沢度として採用した。
塗膜の意匠感は、官能的な指標であるため、無作為に選んだ5名の人による官能評価を行った。以下の項目について各評価者に点数付けを行ってもらい、(a)〜(c)を合計した1人あたりの平均点数が2.5点以上のサンプルを○、1.5点以上2.5点未満のものを△、1.5点未満のものを×と評価した。なお、評価者に評価を依頼するときは、見本の白色塗装サンプルと黒色塗装サンプルを準備して、これらの見本サンプルと比較しながら官能評価をしてもらった。
非常に光輝感が感じられた場合:3点
少し光輝感があると感じた場合:2点
全く光輝感が感じられないと感じた場合:1点
(b)立体感
非常に立体感が感じられた場合:3点
少し立体感が感じられた場合:2点
全く立体感が感じられない場合:1点
(c)深み感
非常に深み感が感じられた場合:3点
少し深み感が感じられた場合:2点
全く深み感が感じられない場合:1点
本実施例の着色塗料に用いた高分子樹脂を用いて作製したクリヤー塗料と酸化チタンを用いて、クリヤー塗料の樹脂固形分100質量部に対して酸化チタンを100質量部添加した塗料を本実施例で用いた溶融亜鉛めっき鋼板に1層のみをワイヤーバーにて乾燥膜厚20μmで塗装して、熱風乾燥炉にて到達板温230℃の条件で焼き付けることにより、白色塗装サンプル板を作製した。
本実施例の着色塗料に用いた高分子樹脂を用いて作製したクリヤー塗料とカーボンブラックを用いて、クリヤー塗料の樹脂固形分100質量部に対してカーボンブラックを5質量部添加した塗料を本実施例で用いた溶融亜鉛めっき鋼板に1層のみをワイヤーバーにて乾燥膜厚20μmで塗装して、熱風乾燥炉にて到達板温230℃の条件で焼き付けることにより、黒色塗装サンプル板を作製した。
Claims (11)
- 金属板表面の一部または全部に、着色顔料を含む第1の塗膜層と、当該第1の塗膜層の表層側に積層された光輝顔料を含む第2の塗膜層と、を含む少なくとも2層以上の被覆層を有し、前記第1の塗膜層は、平均粒径が100nm以上2000nm以下の微粒子を含み、
前記第1の塗膜層中における前記微粒子と前記バインダ樹脂との固形分体積比率は、前記微粒子の体積をV1、前記バインダ樹脂の体積をV2とすると、V1/V2=30/70〜95/5であって、
前記第1の塗膜層と前記第2の塗膜層との境界面の中心線平均粗さRaが0.8μm以上であることを特徴とする、プレコート金属板。 - 前記第1の塗膜層中には、空隙が存在することを特徴とする、請求項1に記載のプレコート金属板。
- 前記空隙の含有率は、前記第1の塗膜層中の固形分の全体積と前記空隙の体積の合計量に対して、3体積%以上40体積%以下であることを特徴とする、請求項2に記載のプレコート金属板。
- 前記第1の塗膜層の表面に垂直な断面を平滑にして、10000倍の走査型顕微鏡で写真撮影した場合に、前記断面全体の面積に対する前記空隙が存在する部分の占める面積率が、1%以上40%以下であることを特徴とする、請求項2に記載のプレコート金属板。
- 前記微粒子は、着色顔料であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のプレコート金属板。
- 前記第1の塗膜層に含まれる前記着色顔料は、白色顔料であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のプレコート金属板。
- 前記白色顔料は、酸化チタンであることを特徴とする、請求項6に記載のプレコート金属板。
- 前記被覆層は、前記第2の塗膜層の表層側に配置された第3の塗膜層をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のプレコート金属板。
- 前記被覆層は、前記第1の塗膜層と前記金属板との間に配置された第4の塗膜層をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のプレコート金属板。
- 前記金属板には、化成処理が施されていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載のプレコート金属板。
- 着色顔料を含む第1の塗料と光輝顔料を含む第2の塗料とを、多層同時塗布またはウェットオンウェット方式により、前記第2の塗料が前記第1の塗料よりも表層側となるように、金属板表面の一部または全部に塗布し、前記金属板表面に塗布された未乾燥状態の前記第1の塗料および前記第2の塗料を同時に乾燥硬化させることにより、前記着色顔料を含む第1の塗膜層と、前記光輝顔料を含む第2の塗膜層と、を前記第1の塗膜層と前記第2の塗膜層との境界面の中心線平均粗さRaが0.8μm以上となるように形成し、前記第1の塗膜層中の微粒子の平均粒径が100nm以上2000nm以下であって、前記第1の塗膜層中における前記微粒子と前記バインダ樹脂との固形分体積比率は、前記微粒子の体積をV1、前記バインダ樹脂の体積をV2とすると、V1/V2=30/70〜95/5であることを特徴とする、プレコート金属板の製造方法。
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