JP2008023840A - 塗装板およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた耐汚染性、抗菌性、防黴性などの性能を発揮し、かつ、その性能を長期間持続させることが可能な塗装板及びその製造方法を提供する。また、被膜の加工性(柔軟性)を確保することにより、被膜を形成した後に加工された場合でも、被膜の亀裂や剥離を防止することが可能なプレコート金属板に代表される塗装板及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の塗装板は、基材の表面に、有機系樹脂を含む下層被膜(III)と、無機成分を含む平均膜厚が1.0〜5.0μmのバリア被膜(II)と、無機・有機複合体中に光触媒を含有した平均膜厚が0.5〜4.0μmの表層被膜(I)と、が順次積層されており、バリア被膜(II)は、表層被膜(I)よりも軟質の被膜である。
【選択図】図1

Description

本発明は、耐汚染性と加工性に優れる塗装板およびその製造方法に関し、特に、例えば屋根材や壁材等の外装材としての用途に好適な塗装金属板およびその製造方法に関する。
光触媒は、一般的に、耐汚染性能、抗菌性能、防黴性能等の優れた特性を有しており、これを被膜中に混在させることによって被膜に付加価値を与えることはよく知られている。
ところが、被膜のバインダーとして有機系樹脂を用いた場合には、この有機系樹脂が、光触媒反応で生成する活性酸素に酸化分解されやすく(光触媒に対する耐性が低く)、被膜の剥離や劣化が起こるという問題がある。一方、被膜のバインダーとして有機系樹脂の代わりに無機系樹脂を用いると、光触媒に対する耐性は向上するが、被膜の加工性が悪化し、製品の用途が制約されるという問題が生ずる。
このような問題を解決するために、従来から種々の対策が提案されている。
第1の対策としては、有機・無機複合樹脂をバインダーとして用いる方法が提案されている。具体的には、例えば、シリカ−オルガノシラン系の複合塗膜を用いて光触媒による劣化を防止したもの(例えば、特許文献1を参照)や、固形分としてコロイド状シリカ:10〜60質量%、オルガノアルコキシシランの部分加水分解縮合物:10〜60質量%、不飽和エチレン性単量体の重合体または共重合体:20〜70質量%の割合で溶剤に添加した有機・無機複合バインダーを用いるもの(例えば、特許文献2を参照)などが開示されている。
第2の対策としては、光触媒層と有機質塗膜との間に、有機質塗膜を活性酸素から保護するアンダーコート層(バリア層)を設ける方法が提案されている。アンダーコート組成物として、無機酸化物粒子、シリコーン樹脂被膜を形成可能なシリコーン、シリコーン樹脂被膜を形成可能なシリコーン前駆体、およびシリカ被膜を形成可能なシリカ前駆体とからなる群から選択される一種と、溶媒とを少なくとも含んでなるアンダーコート被膜を設けるもの(例えば、特許文献3を参照)や、下地金属板上に、表層はワックスを含まない着色有機質塗膜、下層はシリカおよび少なくとも1種類の塩基性アルコキシシランの部分加水分解縮合物を含むアクリルシリケートからなるバリア層塗膜を順次積層しているプレコート金属板(例えば、特許文献4を参照)が開示されている。なお、特許文献4に記載のプレコート金属板によれば、後塗装の光触媒塗料による分解を防止し、加工性に富むバリア層塗膜を設けることができる。
第3の対策としては、塗膜にフッ化ビニリデン樹脂などの活性酸素に対して比較的安定なフッ素系樹脂やシリコン系ポリマーを用いる方法が提案されている(例えば、特許文献5および特許文献6を参照)。
第4の対策としては、光触媒を内包したカプセルをコーティング組成物に含有させて、塗膜の光劣化を防止する方法が提案されている。具体的には、例えば、直径2〜10μmの球状中空多孔質シリカに5〜9nmの光触媒を内包させたもの(例えば、特許文献7を参照)や、酸化チタンを粒子径2〜5μmの無機質中空多孔質に封入してカプセル化し、2液型ウレタン樹脂中に配合したもの(例えば、特許文献8を参照)などが開示されている。
第5の対策としては、光触媒をバインダー樹脂全体に混入させずに、塗膜表面上に分散させて付着させる方法が提案されている。具体的には、例えば、結合剤と混合した光触媒をグラビアコーターで被覆率が50〜95%となるように3次元ドット上に塗布したもの(例えば、特許文献9を参照)や、スプレー塗布により光触媒を分散塗布するもの(例えば、特許文献10および特許文献11を参照)などが開示されている。
特開平10−225658号公報 特開2002−249705号公報 特開平11−50006号公報 特開2003−225966号公報 特開平7−171408号公報 特開2000−63733号公報 特開2003−96399号公報 特開2002−137332号公報 特開2003−62471号公報 特開2001−54935号公報 特開2001−145971号公報
ところで、近年は、家電用、建材用、自動車用などの材料として、加工後に塗装する、いわゆるポストコート金属板に代わり、着色した有機被膜を予め被覆したプレコート金属板が使用されるようになってきている。この金属板は、そのままの金属板、または、めっきを施した金属板に有機被膜を被覆したものである。要求特性としては、美観と耐食性に加えて、加工性が重要視されている。プレコート金属板は、塗膜を被覆していない金属板の加工方法と同様の加工方法を適用することができるが、塗膜損傷(塗膜の亀裂や剥離)を防止するため、引張歪みのみが作用する曲げ加工を中心とした成形加工が行われているのが一般的である。
このようなプレコート金属板に光触媒を適用するにあたっては、上記第1あるいは第2の対策のように、光触媒のバインダー樹脂やバリア被膜として多く用いられてきた従来の有機・無機複合塗膜は、硬質であるため加工性に劣るという問題があった。
また、上記第3の対策の有機・無機複合塗膜より軟質なフッ素系樹脂やシリコン系ポリマーをバインダー樹脂として使用した場合には、加工性は改善されるが、光触媒が紫外線を受けて発生させる活性酸素により徐々に分解劣化が進むため、塗膜寿命に問題があった。また、これらの樹脂やポリマーは比較的高価であるという問題もあった。
また、上記第4の対策の光触媒を内包したカプセルを用いてバインダー塗膜を保護する方法は、塗膜外観を変化させる点、及び成形加工性を悪化させる点で問題があった。
さらに、上記第5の対策のスプレー塗装やグラビアコーターを用いて光触媒を塗膜表面に分散塗布する方法は、下層との密着性が充分ではなく、寿命が短いという問題があった。
そこで、本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、屋外の建築材料等の用途や、屋内の各種家電製品、家具類、台所用品などの用途に用いられた場合に、優れた耐汚染性、抗菌性、防黴性などの性能を発揮し、かつ、その性能を長期間持続させることが可能な、新規かつ改良された塗装板及びその製造方法を提供することにある。
また、本発明の第2の目的は、被膜の加工性(柔軟性)を確保することにより、被膜を形成した後に加工された場合でも、被膜の亀裂や剥離を防止することが可能な、新規かつ改良されたプレコート金属板に代表される塗装板及びその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、被膜の最表層に含有させる光触媒の平均粒径を微細にすること、その光触媒の含有量を規定することにより、優れた耐汚染性、抗菌性、防黴性などの性能を発揮し、かつ、その性能を長期間持続できることを見出した。また、本発明者らは、光触媒を含有する最表層の膜厚を薄くすること、光触媒反応により発生する活性酸素から下層の有機系樹脂被膜を保護するバリア層を加工性に優れる軟質な被膜とすることにより、被膜の加工性を確保できることを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明がその要旨とするところは以下のとおりである。
(1)基材の表面に、有機系樹脂を含む下層被膜(III)と、無機成分を含む平均膜厚が1.0〜5.0μmのバリア被膜(II)と、無機・有機複合体中に光触媒を含有した平均膜厚が0.5〜4.0μmの表層被膜(I)と、が順次積層され、前記バリア被膜(II)は、前記表層被膜(I)よりも軟質の被膜であることを特徴とする塗装板。
(2)前記光触媒の平均粒径は、5.0〜100nmであることを特徴とする、(1)に記載の塗装板。
(3)前記光触媒は、前記表層被膜(I)中に5〜70体積%含有されることを特徴とする、(1)または(2)に記載の塗装板。
(4)前記表層被膜(I)の基材の表面の面積全体に対する被覆率は、50%以上であることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載の塗装板。
(5)前記バリア被膜(II)は、無機・有機複合体を含む被膜であることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかに記載の塗装板。
(6)前記表層被膜(I)中の無機成分の比率は、50〜95質量%であることを特徴とする、(1)〜(5)のいずれかに記載の塗装板。
(7)前記バリア被膜(II)中の無機成分の比率は、40〜80質量%であることを特徴とする、(1)または(5)に記載の塗装板。
(8)基材の表面に有機系樹脂を含む下層被膜(III)を形成し、次いで、無機成分を含む塗料(ii)と無機・有機複合体中に光触媒を含有する塗料(i)とを前記下層被膜(III)上に同時に塗布した後に、同時に乾燥焼付けし、基材の表面に前記下層被膜(III)と、無機成分を含む平均膜厚が1.0〜5.0μmのバリア被膜(II)と、無機・有機複合体中に光触媒を含有する平均膜厚が0.5〜4.0μmの表層被膜(I)とが順次積層された多層被膜を形成することを特徴とする、塗装板の製造方法。
(9)有機系樹脂を含む塗料(iii)と無機成分を含む塗料(ii)と無機・有機複合体中に光触媒を含有する塗料(i)とを基材の表面に同時に塗布した後に、同時に乾燥焼付けし、基材の表面に有機系樹脂を含む下層被膜(III)と、無機成分を含む平均膜厚が1.0〜5.0μmのバリア被膜(II)と、無機・有機複合体中に光触媒を含有する平均膜厚が0.5〜4.0μmの表層被膜(I)とが順次積層された多層被膜を形成することを特徴とする、塗装板の製造方法。
本発明によれば、屋外の建築材料等の用途や、屋内の各種家電製品、家具類、台所用品などの用途に用いられた場合に、優れた耐汚染性、抗菌性、防黴性などの性能を発揮し、かつ、その性能を長期間持続させることが可能な塗装板及びその製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、被膜の加工性(柔軟性)を確保することにより、被膜を形成した後に加工された場合でも、被膜の亀裂や剥離を防止することが可能なプレコート金属板に代表される塗装板及びその製造方法を提供することができる。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
<本発明に係る塗装板の構成>
まず、図1に基づいて、本発明に係る塗装板の構成について説明する。なお、図1は、本発明に係る塗装板の代表的な構成を示す断面図である。
図1に示すように、本発明に係る塗装板は、例えば金属板の表面に、有機系樹脂を含む下層被膜(III)と、無機成分を含む平均膜厚が1.0〜5.0μmのバリア被膜(II)と、無機・有機複合体中に光触媒を含有した平均膜厚が0.5〜4.0μmの表層被膜(I)と、が順次積層された3層の被膜が形成されている。また、バリア被膜(II)は、表層被膜(I)よりも軟質の被膜で形成されている。以下、本発明に係る塗装板について詳細に説明する。
(基材の種類)
本発明における塗装板の基材としては、有機系樹脂を含む下層被膜(III)との密着性が良く、耐汚染性と加工性の要求される基材であれば任意の材料を選択できる。この基材の代表例としては各種の金属板が挙げられる。例えば、鋼板、アルミニウム板、ステンレス板、チタン板、銅板等が挙げられる。このうち鋼板の例としては、冷延鋼板、熱延鋼板、亜鉛めっき鋼板、亜鉛−鉄合金めっき鋼板、亜鉛−アルミニウム合金めっき鋼板、アルミニウムめっき鋼板、クロムめっき鋼板、ニッケルめっき鋼板、亜鉛−ニッケル合金めっき鋼板、錫めっき鋼板等が挙げられる。
また、金属板には、必要に応じて前処理を施すことができる。このような前処理としては、水洗、湯洗、酸洗、アルカリ脱脂、研削、研磨、クロメート処理、リン酸亜鉛処理、複合酸化被膜処理等があり、これらを単独で又は組み合わせて塗装前処理を行うことができる。塗装前処理の条件は適宜選択すればよい。
(表層被膜(I)の構成)
表層被膜(I)は、無機・有機複合体中に光触媒を含有した被膜である。このような光触媒としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化錫、酸化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化ルテニウム、酸化コバルト、酸化銅、酸化マンガン、酸化ゲルマニウム、酸化鉛、酸化カドミウム、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化ロジウム、酸化レニウム、チタン酸バリウム等が好適に用いられる。なかでも、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化鉄、酸化ニオブは、100℃以下の低温で処理を行った場合でも高い活性を示すことから、特に好適に用いられる。なお、光触媒は、上記の成分の1種を選択して用いることもできるが、2種以上を混合して使用することも可能である。
本発明の表層被膜(I)中に含有する光触媒として用いる粒子の平均粒径(一次粒子径)は、5.0nm以上100nm以下であることが好ましい。一次粒子径が5nm未満のものは一般に入手が困難であるだけでなく、微細であるために取り扱いが著しく困難となる。また、被膜中に分散する過程で粒子の凝集が生じ易いため、微細な粒子を用いたことによる十分な効果は得られない。一方、一次粒子径が100nmを超える場合、光触媒活性が低下することや一次粒子径に加えて、光触媒を含有した表層被膜(I)とバリア被膜(II)との十分な密着性が得られないという問題点も生じる。このような観点から、より好ましい一次粒子径は5nm以上50nm以下であり、さらに好ましくは7nm以上50nm以下である。
ここで、上記の光触媒の粒子径は、例えば、レーザー光を使用した動的光散乱法を用いて測定することができる。この方法は簡便で精度の高いデータが得られるが、粒子が凝集している場合には、凝集体の大きさ(凝集粒子径)を測定する可能性があるため、併せて透過型電子顕微鏡(TEM)により、直接、一次粒子径を確認することが望ましい。TEM観察の結果、凝集粒子の存在が確認された場合には、分散条件を変えて、再度動的光散乱法で測定することが望ましい。また、完全に一次粒子のレベルまで分散することが困難な場合には、TEMで観察・測定した一次粒子の大きさを一次粒子径とすることもできる。この場合、測定する粒子の個数が問題となるが、本発明者らの経験では、およそ100個以上の粒子を任意に選択することにより、全体を代表する値が得られることがわかっている。
本発明の表層被膜(I)中に含有する光触媒は、表層被膜(I)中に5〜70体積%(乾燥焼付け後の体積濃度)含有されていることが好ましい。光触媒の含有濃度が5体積%未満であると光触媒の効力が不十分であり、逆に、70体積%を超えると被膜の形成が困難となり加工性も低下するため好ましくない。
本発明の無機・有機複合体中に光触媒を含有した表層被膜(I)の平均膜厚については、無機系の被膜は、一般的に硬い被膜であるため加工性に乏しく、これを補うために薄く形成する必要がある。具体的には、表層被膜(I)の平均膜厚は0.5μm〜4.0μmとする。表層被膜(I)の平均膜厚が0.5μm未満では光触媒の効果が持続しないことに加えて、均一な塗装が困難となるため、好ましくない。一方、表層被膜(I)の平均膜厚が4.0μm超では加工時に被膜にクラックが入り、被膜の脱落などの問題が発生する可能性があるため、好ましくない。
「無機・有機複合体」とは、三次元網目構造状の無機成分の骨格をベースとして、部分的に有機成分が共重合しているもの、あるいは無機骨格の一部が有機成分で置換されているものを指す。無機成分の骨格とは、一般的には、金属元素あるいは非金属元素の一部であるB、Si、P等と酸素とから構成される骨格をいう。無機骨格として代表的なものとしては、≡Si−O−Si≡で示される無機のシロキサン結合等が挙げられる。ここで、無機骨格を形成する金属元素又は非金属元素は1種類である必要はなく、2種類以上からなるものであっても何ら問題はない。一方、有機成分とは、C、H、O、Nの結合によって構成される分子又は領域を指し、本発明に好ましい有機成分としては、炭素数1以上12以下のアルキル基、アリール基、カルボキシル基、アミノ基、水酸基などが挙げられる。また、有機成分の一部としてハロゲンを含有することも可能である。ここで、炭素数1以上12以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ドデシル基等、アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられる。また、本発明で用いる有機成分は、単独で用いることもでき、2種類以上のものを組み合わせて使用することもできる。
特に、本発明に係る塗装板では、光触媒を含有した無機・有機複合体において、無機成分が50〜95質量%の比率であると、光触媒反応により発生する活性酸素による被膜の劣化が起こりにくいため好適である。無機成分が50質量%未満では光触媒に対する耐性が劣り、95質量%超ではほとんどが無機成分となり、被膜の柔軟性が低下するため、加工性に問題が生じる可能性がある。
ここで、本発明の無機・有機複合体における無機成分比率とは、被膜全体に対する金属元素あるいは非金属元素の一部であるB、Si、P等と酸素とから構成される骨格の割合をいい、被膜を構成する成分から有機成分の割合を除いたものである。無機成分比率を検証する最も簡便な方法は、被膜全体を有機成分が揮散するような温度、例えば600℃〜1000℃程度の温度で加熱し、残分の質量を測定して当初の(加熱前の)質量に対する割合を求める方法である。この場合の加熱温度・加熱時間は、あらかじめ熱重量分析等の結果によって決めることが好ましい。すなわち、無機成分比率を測定したい被膜に対して、あらかじめ加熱減量曲線を求め、有機成分の揮散による質量減少が完了する温度を決定し、その温度プラス50℃程度に設定することができる。加熱時間は他に支障がない限り、長くすることが好ましい。
光触媒粒子を含有している被膜に対しては、以下の方法を用いることができる。光触媒は、基本的には無機質粒子であるため、上記の方法によって得られる加熱残分は、被膜中の無機成分量に光触媒の量が加算されたものとなる。したがって、光触媒の含有量をあらかじめ求めておき、それを除いた被膜成分に対して上述した方法を適用することで、被膜を構成する無機成分の比率を求めることができる。被膜中の光触媒の含有量は、被膜の断面を透過型電子顕微鏡、走査型電子顕微鏡、光学顕微鏡等の顕微鏡で観察し、被膜のいわゆるマトリックス部分が占める面積と光触媒粒子が占める面積を求め、その比率から計算することができる。この方法では、観察するサンプル数が少ないときに誤差を含む可能性が高くなるため、できるだけ多くのサンプルを観察する必要がある。この点、発明者らの経験では、およそ20サンプル(20視野)程度の観察を行うことで、誤差をほとんど含まない値を求められることがわかっている。光触媒を利用した耐汚染性を有する被膜では、最表面の光触媒を含有する被膜とその下のバリア被膜の2層となっている場合がほとんどであるが、この場合にはあらかじめそれぞれの被膜厚みを特定した上で上記の方法を適用することで被膜を構成する無機成分の比率を求めることができる。併せて、光触媒を含む表層被膜及びバリア被膜の平均膜厚、光触媒を含む表層被膜中に含まれる光触媒の含有量を求めることができる。
無機・有機複合体中に光触媒を含有した表層被膜(I)は、基材の表面の面積全体に対する被覆率が100%であることが望ましいが、本発明の場合、表層被膜(I)を薄くすることが好ましいため、製造技術上、完全な被覆が実現できない場合もありうる。しかし、表層被膜(I)の被覆率が、全表面積に対して50%以上あれば、光触媒単独の効果だけでなく、無機・有機複合体自体が有する耐汚染性との相乗効果により、本発明の優れた耐汚染性という効果を実現できる。さらに好ましくは、被覆率80%以上である。ここで、表層被膜(I)の被覆率は、例えば、電子線プローブマイクロアナライザ(EPMA)によって測定することができる。本発明の表層被膜(I)には光触媒粒子、例えば酸化チタン粒子が含まれているが、その下層被膜であるバリア被膜(II)にはこの粒子は含まれていない。従って、Tiを検出元素としてEPMAで測定することによって、表層被膜(I)の被覆率を求めることができる。この被覆率は、コンピュータによる画像解析を組み合わせたEPMA、すなわちCMAを使用することで、より迅速な測定が可能となる。
なお、本発明の実施品の長期使用によって表層被膜(I)にひび割れ等が生じて部分的な被覆となった場合でも、被覆率が上記好ましい範囲内(50%以上)であれば、本発明の耐汚染性の効果を持続することができる。
(バリア被膜(II)の構成)
バリア被膜(II)は、表層被膜(I)よりも軟質で加工性に優れる機能を有し、なおかつ、光触媒粒子の酸化作用により下地層である下層被膜(III)を侵すことがないように保護する機能を有している。
バリア被膜(II)の成分としては、少なくとも無機成分を含んでいればよく、すでに公知のもの、例えば、フッ素系樹脂やシリコン系樹脂等を選択することが可能であるほか、表層被膜(I)との密着性を確保するため、表層被膜(I)の無機・有機複合体と同様の成分組成とすることが好ましい。その中でも特に、無機成分として40〜80質量%を含み、残りが有機成分であるバリア被膜(II)は、耐加工性、バリア性、さらには表層被膜(I)や下層被膜(III)との密着性に優れるため好適である。バリア被膜(II)中の無機成分比率が40質量%未満ではバリア性が劣り、80質量%超では加工性に問題が生じる場合がある。
バリア被膜(II)の平均膜厚は、塗装板における加工性の観点から、できる限り薄くすることが好ましい。本発明においては、バリア被膜(II)の平均膜厚は、1.0〜5.0μmとする。バリア被膜(II)の膜厚が1.0μm未満であると、本来の目的であった光触媒粒子の酸化作用からの下層被膜(III)の保護を維持することが困難となり、光触媒がもたらす活性酸素による被膜破壊が発生するおそれがある。一方、膜厚が5.0μmを超えると、加工性が悪化するだけでなく、塗装コストの面からも好ましくない。
なお、上述した表層被膜(I)、バリア被膜(II)ともに、必要に応じて、微粒子状の充填剤、顔料、その他の添加剤を添加することができる。微粒子状の充填剤としては、例えば、SiO、TiO、Al、Cr、ZrO、Al・SiO、3Al・2SiO、ケイ酸ジルコニウム等の微粒子を使用することができる。顔料としては、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄、各種焼成顔料、シアニンブルー、シアニングレー等の着色顔料や、炭酸カルシウム、クレー、硫酸バリウム等の体質顔料を使用することができる。このほかに、例えば、アルミニウム粉末などの金属粉末、シリカ、アルミナ等の艶消し剤、紫外線吸収剤、ワックス等を含有することができる。
(下層被膜(III)の構成)
本発明における有機系樹脂を含む下層被膜(III)は、基材との密着性を改善する目的で設けられたものであり、基材が金属である場合の下層被膜(III)を構成する有機系樹脂としては、例えば、従来のプレコート金属板で用いられるポリエステル樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル系樹脂、ウレタン樹脂等、様々な種類の中から選択することができる。下層被膜(III)の平均膜厚は、1.0〜35μmの範囲で適宜選択することができる。1.0μmよりも薄いと密着性が確保できない場合があり、35μmよりも厚いと経済性に劣るとともに、加工性が低下する場合がある。好ましい平均膜厚は2.0〜30μmである。下層被膜(III)にも、表層被膜(I)、バリア被膜(II)と同様、必要に応じて、微粒子状の充填剤、顔料、その他の添加剤を添加することができる。微粒子状の充填剤としては、例えば、SiO2、TiO2(光触媒効果が発現しないもの)、Al23、Cr23、ZrO2、Al23・SiO2、3Al23・2SiO2、ケイ酸ジルコニウム等の微粒子を使用することができる。顔料としては、例えば、光触媒効果が発現しない二酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄、各種焼成顔料、シアニンブルー、シアニングレー等の着色顔料や、炭酸カルシウム、クレー、硫酸バリウム等の体質顔料を使用することができる。この他に、例えば、アルミニウム粉末等の金属粉末、シリカ、アルミナ等の艶消し剤、紫外線吸収剤、ワックス等を含有することができる。
<本発明の一実施形態に係る塗装板の製造方法>
以上、本発明に係る塗装板の構成について説明したが、次に、図2及び図3に基づいて、上述した構成を有する本発明に係る塗装板を製造するための製造方法について詳細に説明する。
本発明の一実施形態に係る塗装板の製造方法は、例えば金属板等の基材の表面に有機系樹脂を含む下層被膜(III)を形成し、次いで、無機成分を含む塗料(ii)と無機・有機複合体中に光触媒を含有する塗料(i)とを前記下層被膜(III)上に同時に塗布した後に、同時に乾燥焼付けし、基材の表面に、下層被膜(III)と、無機成分を含む平均膜厚が1.0〜5.0μmのバリア被膜(II)と、無機・有機複合体中に光触媒を含有する平均膜厚が0.5〜4.0μmの表層被膜(I)とが順次積層された多層被膜を形成するものである。このように、各層ごとに塗布、乾燥焼付けをするのではなく、バリア被膜(II)と表層被膜(I)の2層を同時に塗布した後に、同時に乾燥焼付けするものである。
また、本発明に係る塗装板の製造方法は、上記のように、バリア被膜(II)と表層被膜(I)の2層ではなく、下層被膜(III)とバリア被膜(II)と表層被膜(I)の3層を同時に塗布した後に、同時に乾燥焼付けするものであってもよい。具体的には、本発明の他の実施形態に係る塗装板の製造方法は、有機系樹脂を含む塗料(iii)と無機成分を含む塗料(ii)と無機・有機複合体中に光触媒を含有する塗料(i)とを例えば金属板等の基材の表面に同時に塗布した後に、同時に乾燥焼付けし、基材の表面に、有機系樹脂を含む下層被膜(III)と、無機成分を含む平均膜厚が1.0〜5.0μmのバリア被膜(II)と、無機・有機複合体中に光触媒を含有する平均膜厚が0.5〜4.0μmの表層被膜(I)とが順次積層された多層被膜を形成するものである。
本発明においては、主に加工性を確保するという観点から光触媒を含有する表層被膜(I)を薄く形成するために、例えば、多層カーテンコーターのような複数の層を同時に塗布した後に、同時に乾燥焼付けすることが可能な装置を使用することが好ましい。カーテンコーターとは、塗料をスリットの間からカーテン状の薄い膜として自由落下させ、その下を移動走行させた基材の上に塗装するものである。塗料をカーテン状の薄い膜にする方式としては、塗料を容器からオーバーフローさせるオーバーフローカーテンコーター、塗料をスリットの間から流下させるスリットカーテンコーター、塗料を回転する2本のローラーの間から流下させるローラーカーテンコーターなどがある。本発明に係る塗装板のように、光触媒を含有する塗料被膜を効率的かつ薄く形成するためには、多層カーテンコーター(例えば、特公昭49−24133号公報、特開平6−190335号公報、特開平8−252519号公報などを参照)を使用することが好ましい。
従来の塗膜中に光触媒を混入分散させる方法では、塗膜中に埋没して紫外線が当たらずに有効に機能しない光触媒粒子が多く、高価な光触媒が無駄になる部分が多かった。しかし、本発明のように、多層カーテンコーター等の多層同時塗布が可能な装置を用いてプレコート金属板等の塗装板を製造すると、表層に光触媒を集中させ、有効に機能する光触媒粒子の数を増加させることができる。したがって、本発明に係る塗装板の製造方法によれば、塗膜に含有される光触媒の利用効率を高めることが可能であるため、従来の製品よりも光触媒量を削減しても同等以上の機能を有する安価な塗装板を製造することができる。
以下、図2及び図3に基づいて、多層カーテンコーターの一例として、スリットカーテンコーターを使用して塗装金属板を製造する場合を例に挙げて、本発明の一実施形態に係る塗装板の製造方法について説明する。なお、図2及び図3は、本発明の一実施形態に係る塗装板の製造方法に使用する多層カーテンコーターの一例としてのスリットカーテンコーター1の構成を示す図である。
図2及び図3に示すように、スリットカーテンコーター1のスライドホッパー2にはスライド傾斜面3が形成されており、このスライド傾斜面3には、3列のスリット状ノズル4a〜4c画配置されている。各ノズル4a〜4cには、それぞれに塗料樹脂を供給する塗料供給部5a〜5cが接続されている。この各塗料供給部5a〜5cは、供給管とポンプ(いずれも図示せず)を介して塗料タンク(図示せず)に接続され、塗料Pが各塗料供給部5a〜5cに供給されるようになっている。スライド傾斜面3の唇部3Aには、その両端部に接するように、塗料膜をガイドするカーテンガイド8が設けられ、唇部3Aの下方には、余剰の塗料Pを収容する塗料パン10が設けられている。
かかる構成を有するスリットカーテンコーター1によれば、スライドホッパー2のそれぞれの塗料供給部5a〜5cからスリット状ノズル4a〜4cを通じて塗料Pがスライド傾斜面3に幅方向に均一に供給され、スリット状ノズル4a〜4cからの各塗料膜6a〜6cがスライド傾斜面3上で積層される。複数の層に積層された塗膜はスライド傾斜面3上を下方に流動し、スライド傾斜面3の先端部(唇部3A)で塗料パン10に落下する際に、カーテンガイド8により幅方向に拡げられ、塗料カーテン7として幅方向に均一な塗料膜として流れる。この塗料膜に所定の速度で移動する金属板Sを通板させることにより、金属板S上に複数層(多層)の塗料膜層9を同時に形成することができる。その後、乾燥、硬化(焼付け)処理を施すことにより、多層の塗料膜が塗装された塗装金属板を製造することができる。
図2及び図3では、スライドホッパー2のスライド傾斜面3には、3個のスリット状ノズル4a〜4cが設けられているが、スライドホッパー2上のスリット状ノズルの数は特に限定されるものではなく、必要により増減できる。すなわち、光触媒を含有した表層被膜(I)とバリア被膜(II)の2層からなる塗装被膜をスリットカーテンコーター1により形成する場合には、スライドホッパー2のスリット状ノズルは、例えば、下流側の2つのスリット状ノズル4b、4cを使用するようにすればよい。一方、光触媒を含有した表層被膜(I)とバリア被膜(II)と下層被膜(III)の3層からなる塗装被膜をスリットカーテンコーター1により形成する場合には、スライドホッパー2の3つのスリット状ノズル4a〜4cを使用するようにすればよい。
例えば、光触媒を含有した表層被膜(I)、バリア被膜(II)および下層被膜(III)からなる塗装被膜を形成する場合は、図2及び図3に示したスライドホッパー2に設けられた3つのスリット状ノズル4a、4b、4cから、それぞれの被膜材料を別々に流出させ、より具体的には、スリット状ノズル4aからは下層被膜(III)用の材料を、スリット状ノズル4bからはバリア被膜(II)用の材料を、スリット状ノズル4cからは表層被膜(I)用の材料を流出させ、スライド傾斜面3上で3層からなる塗料樹脂膜を形成し、この樹脂膜をカーテン状に落下させる。このようにして、有機系樹脂の下層被膜(III)を下層とし、バリア被膜(II)を中間層とし、光触媒を含有した表層被膜(I)を上層とする塗膜を、走行する金属板S上に受けて塗布する。次いで、塗布後の塗膜を3層同時に乾燥焼付けすることによって、本発明の一実施形態に係る塗装金属板を製造することができる。かかる塗装金属板は、耐汚染性と加工性に優れている。
この本実施形態に係る塗装金属板の製造方法によれば、複数の層からなる塗膜を1つのヘッドで同時に塗布でき、かつ、塗布された塗膜を1回の乾燥焼付け処理により乾燥焼付けできるので、従来のように、塗布、乾燥焼付け処理を各層ごとに行う方法に比べて極めて効率が良い。また、塗膜間の密着性が極めて優れており、被覆後の金属板の加工においても塗膜間の剥離がなく、加工性に優れたものとすることができる。
さらに、スライド傾斜面3上で複数の各塗膜層が一体となった樹脂膜が形成されるので、各塗膜層は薄くても、カーテン状に落下する際の塗料膜は厚くなっており、本発明のように粒子状の光触媒を含有した場合でも、カーテン状塗膜の膜切れを起こすことがなく、安定したカーテン状塗膜を落下させることができる。
従って、多層カーテンコーターを用いれば、各被膜が極めて薄く、光触媒のような粒子状物質が含有されている場合においても、これを効率的に金属板上に塗布することが可能となる。
多層同時コーティングは、図2及び図3に示した例に限らず、複数のスリット状ノズルを備えたTダイ形式のダイコーターからそれぞれの塗料樹脂を下方に膜状に同時に押し出し、下方に落下させて所定の速度で移動する金属板に受けさせ、多層の塗膜を同時に形成する多層エクストルージョンコーター、複数のスリットを有する多層のヘッドからそれぞれの塗料樹脂を下方に膜状に同時に押し出し、傾斜したスライド面で多層に重ねた塗膜をカーテン状に落下させることなく、スライド面の下端を所定の速度で移動する金属板に近接させて塗料樹脂を塗布し、多層膜を同時に形成する多層スライドコーターなどを採用することもできる。
以下、実施例を用いて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例にのみ限定されるものではない。
(表層被膜(I)の検討)
まず、上述した方法に従って塗装鋼板を製造し、表層被膜(I)の組成等の塗装鋼板の性質(耐汚染性及び加工性)に与える影響について検討を行った結果について説明する。
本検討は、下層被膜(III)とバリア被膜(II)は共通のものを用い、光触媒を含む表層被膜(I)の組成や平均膜厚や被覆率等の条件を変えて行った。具体的には、下記の表1に示すように、表層被膜(I)中の光触媒の種類、光触媒の量、光触媒の平均粒径、無機成分の種類、有機成分の種類、無機成分比、平均膜厚、被覆率を変化させた。また、バリア被膜(II)としては、平均膜厚が2.2〜2.9μm、無機成分が−Si−O−Si−骨格からなるもの、有機成分の種類がフェニル基、無機成分の比率が60質量%のものを使用し、有機系樹脂の下層被膜(III)としては、光触媒効果が発現しない酸化チタンを顔料として含む平均膜厚15μmのメラミン硬化のポリエステル被膜を使用した。
また、本検討においては、製造された塗装鋼板の耐汚染性及び加工性の評価を、以下のようにして行った。
耐汚染性の評価の1つとして耐雨垂れ汚染性を次のように調べた。製造した塗装鋼板を幅110mm長さ245mmに切断し、長さ方向が垂直になるように配置して長さ方向の上から100mmのところで評価面が上になるように折り曲げ(曲げRは10mm)、長さ方向の下部が垂直となるように屋外暴露用の架台に設置した。そのまま6ヶ月間暴露試験を行い、垂直面の雨だれのつき方を目視観察し、次の基準により評価した。◎及び○を合格とし、△及び×を不合格とした。
◎:雨だれの筋なし
○:雨だれの筋がわずか
△:雨だれの筋が明確に認識できる
×:雨だれの筋が20mはなれた場所からも認識できる
また、耐汚染性の評価の1つとして耐油性インキ汚染性を次のように調べた。製造した塗装鋼板を50mm角に切断し、評価面に赤色のマジックインキ(登録商標)で3本の線を描き、20℃の雰囲気中に24時間放置後、線をエタノールで拭き取った。インキの色残りを目視で判定し、下記の基準で評価した。◎及び○を合格とし、△及び×を不合格とした。
◎:跡残りなし
○:わずかに色残り
△:色残りあり
×:ほとんど消えない
加工性の評価を次のように行った。製造した塗装鋼板を、評価面が表側になるように折り曲げ加工し、曲げ加工部における塗膜の亀裂の発生状況を10倍のルーペで観察した。折り曲げの際に、同じ鋼板をT枚間に挟んで折り曲げ、亀裂の入らない最小の板枚数Tを求めた。例えば、0Tは板を挟まずに折り曲げても塗膜に亀裂が入らないことを意味し、2Tは板を2枚挟んで折り曲げても塗膜に亀裂が入らないが、板を1枚挟んで曲げると塗膜に亀裂が入ることを表す。0T〜2Tを合格とし、3T以下を不合格とした。
Figure 2008023840
上記表1に示すように、無機成分比が0質量%、すなわち全て有機成分からなる比較例No.23は、耐汚染性が著しく劣っていた。これは、無機成分を有しないため、光触媒反応により発生する活性酸素による被膜の劣化が起こっているものと考えられる。また、無機成分比が100質量%、すなわち全て無機成分からなる比較例No.24は、耐汚染性には優れるものの、加工性が著しく劣っていた。これは、全て無機成分であるために、被膜が非常に硬質なものとなり、柔軟性が低かったためと考えられる。また、平均膜厚が本発明の範囲に満たない比較例No.25は、加工性には優れるものの、耐汚染性に劣っていた。さらに、平均膜厚が本発明の範囲を超える比較例No.26は、耐汚染性には優れるものの加工性に劣っていた。
また、光触媒の量が本発明の一実施形態で規定する量(5〜70体積%)未満の実施例No.16は、耐汚染性にやや劣る傾向にあった。一方、光触媒の量が本発明の一実施形態で規定する量を超える実施例No.17は、加工性にやや劣る傾向にあった。
また、光触媒の平均粒径が本発明の一実施形態で規定する量(5〜100nm)を超える実施例N0.18は、耐汚染性及び加工性にやや劣る傾向にあった。
また、無機成分比が本発明の一実施形態で規定する量(50〜95質量%)未満の場合には、耐汚染性にやや劣り(実施例No.21)、本発明の一実施形態で規定する量を超える場合には、加工性にやや劣る(実施例No.22)傾向があった。
また、被覆率が本発明の一実施形態で規定する範囲(50%以上)未満の場合には、耐汚染性にやや劣る傾向にあった(実施例No.19、No.20)。
(バリア被膜(II)の検討)
次に、上述した方法に従って塗装鋼板を製造し、バリア被膜(II)の組成等の塗装鋼板の性質(加工性)に与える影響について検討を行った結果について説明する。
本検討は、下層被膜(III)と表層被膜(I)は共通のものを用い、バリア被膜(II)の組成や平均膜厚等の条件を変えて行った。具体的には、下記の表2に示すように、バリア被膜(II)中の無機成分の種類、有機成分の種類、無機成分比、平均膜厚を変化させた。また、光触媒を含んだ表層被膜(I)としては、光触媒が50体積%の酸化チタンを含有させ、平均膜厚が2.6〜3.5μm、被覆率100%、無機成分が−Si−O−Si−骨格からなるもの、有機成分の種類がフェニル基、無機成分の比率が70質量%のものを使用し、有機系樹脂の下層被膜(III)としては、光触媒効果が発現しない酸化チタンを顔料として含む平均膜厚15μmのメラミン硬化のポリエステル被膜を使用した。
また、本検討においては、製造された塗装鋼板の加工性の評価を、以下のようにして行った。すなわち、製造した塗装鋼板を、評価面が表側になるように折り曲げ加工し、曲げ加工部における塗膜の亀裂の発生状況を10倍のルーペで観察した。折り曲げの際に、同じ鋼板をT枚間に挟んで折り曲げ、亀裂の入らない最小の板枚数Tを求めた。例えば、0Tは板を挟まずに折り曲げても塗膜に亀裂が入らないことを意味し、2Tは板を2枚挟んで折り曲げても塗膜に亀裂が入らないが、板を1枚挟んで曲げると塗膜に亀裂が入ることを表す。0T〜2Tを合格とし、3T以下を不合格とした。
Figure 2008023840
上記表2に示すように、平均膜厚が本発明の範囲に満たない比較例No.17は、加工性には優れるものの、長期間の使用により、光触媒反応で発生する活性酸素による塗膜破壊が発生した。これは、平均膜厚が小さいことから、短期間では問題なかったが、長期間の使用により活性酸素によるバリア被膜(II)の劣化が徐々に進んでいったためと考えられる。また、平均膜厚が本発明の範囲を超える比較例No.18は、加工性に著しく劣るということがわかった。
また、無機成分比が100質量%のもの(実施例N0.10〜14)及び無機成分比が本発明の一実施形態の範囲を超えるもの(実施例No.16)は、いずれも加工性がやや劣る傾向にあった。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
なお、本発明は、主として耐汚染性と加工性が要求されるプレコート塗装板を対象としているが、これのみに限定することなく広範囲に適用することができる。例えば、屋外の建築材料としてポストコート塗装板を使用する場合、運搬・施工作業時、あるいは施工後の強風による飛来物の衝突や地震等によって、塗装板に意図しない変形加工が加わることが容易に想定される。本発明の塗装板によれば、このような場合においても塗膜に亀裂が入り難く、従来に比べて製品寿命を伸ばすことが可能で、優れた効果を奏する。
本発明に係る塗装板の構成を示す断面図である。 本発明の一実施形態に係る塗装板の製造方法に使用する多層カーテンコーターの一例を示す斜視図である。 本発明の一実施形態に係る塗装板の製造方法に使用する多層カーテンコーターの一例を示す通板方向に平行な垂直断面の要部模式図である。
符号の説明
1 スリットカーテンコーター
2 スライドホッパー
3 スライド傾斜面
3A 唇部
4a、4b、4c スリット状ノズル
5a、5b、5c 塗料供給部
6a、6b、6c 塗料膜
7 塗料カーテン
8 カーテンガイド
9 塗料膜層
10 塗料パン
S 金属板
P 塗料

Claims (9)

  1. 基材の表面に、有機系樹脂を含む下層被膜(III)と、無機成分を含む平均膜厚が1.0〜5.0μmのバリア被膜(II)と、無機・有機複合体中に光触媒を含有した平均膜厚が0.5〜4.0μmの表層被膜(I)と、が順次積層され、
    前記バリア被膜(II)は、前記表層被膜(I)よりも軟質の被膜であることを特徴とする塗装板。
  2. 前記光触媒の平均粒径は、5.0〜100nmであることを特徴とする、請求項1に記載の塗装板。
  3. 前記光触媒は、前記表層被膜(I)中に5〜70体積%含有されることを特徴とする、請求項1または2に記載の塗装板。
  4. 前記表層被膜(I)の基材の表面の面積全体に対する被覆率は、50%以上であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の塗装板。
  5. 前記バリア被膜(II)は、無機・有機複合体を含む被膜であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の塗装板。
  6. 前記表層被膜(I)中の無機成分の比率は、50〜95質量%であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の塗装板。
  7. 前記バリア被膜(II)中の無機成分の比率は、40〜80質量%であることを特徴とする、請求項1または5に記載の塗装板。
  8. 基材の表面に有機系樹脂を含む下層被膜(III)を形成し、次いで、無機成分を含む塗料(ii)と無機・有機複合体中に光触媒を含有する塗料(i)とを前記下層被膜(III)上に同時に塗布した後に、同時に乾燥焼付けし、基材の表面に前記下層被膜(III)と、無機成分を含む平均膜厚が1.0〜5.0μmのバリア被膜(II)と、無機・有機複合体中に光触媒を含有する平均膜厚が0.5〜4.0μmの表層被膜(I)とが順次積層された多層被膜を形成することを特徴とする、塗装板の製造方法。
  9. 有機系樹脂を含む塗料(iii)と無機成分を含む塗料(ii)と無機・有機複合体中に光触媒を含有する塗料(i)とを基材の表面に同時に塗布した後に、同時に乾燥焼付けし、基材の表面に有機系樹脂を含む下層被膜(III)と、無機成分を含む平均膜厚が1.0〜5.0μmのバリア被膜(II)と、無機・有機複合体中に光触媒を含有する平均膜厚が0.5〜4.0μmの表層被膜(I)とが順次積層された多層被膜を形成することを特徴とする、塗装板の製造方法。

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