JP2008254255A - 耐汚染性、耐傷付性に優れた柚子肌状塗装板およびその製造方法 - Google Patents

耐汚染性、耐傷付性に優れた柚子肌状塗装板およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】表層に保護皮膜が形成され、柚子肌状の塗装外観を有し、耐汚染性、耐傷付性に優れた塗装板と、その製造方法を提供する。
【解決手段】基板上に、下地層と、撥剤を含有した有機樹脂を主成分とする第1中間層と、少なくとも有機樹脂、架橋剤が混合された第2中間層と、さらに、親水性有機樹脂を主成分とする表層が、この順序で積層された塗装板であって、前記表層の最外面におけるろ波うねり中心線平均(Wca)が0.35μm≦Wca≦1.25μmで、かつ、ろ波うねり平均山間隔(Wc−sm)が2800μm≦Wc−sm≦12500μmであり、前記第1中間層と前記第2中間層との境界面が波形であることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、耐汚染性、耐傷付き性に優れた塗装板に関する。本発明の塗装板は、塗装外観が凹凸状のうねりを示す柚子肌状であり、表面に傷が付いても目立たず、特に、屋外で使用した場合に、雨だれ等の汚れが付きにくいという優れた特徴を有する。また、本発明は、特に、同時多層塗布法により、容易に柚子肌状凹凸外観を形成できる塗装板の製造方法に関する。
本発明における「塗装板」とは、基板の少なくとも片面に塗膜を形成した板材料として定義され、基板としては、金属、紙、木材、合板等のほか、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)をはじめとする樹脂等の板を使用することができる。
塗装板の代表例の一つである塗装金属板は、建材、家電、雑貨、自動車などの分野において、金属板を成形加工して組み立てた後に塗装するという従来のポストコート方式に替わって、あらかじめ塗装された金属板を成形加工して組み立てて製品とするプレコート方式が多く採用されている。プレコート方式の導入によって、需要家での塗装工程が省略でき、塗装廃棄物等による公害・環境問題を解消できるメリットがある。
近年、屋根、外壁、内壁などの建材、家電・OA機器の筐体などでは、立体感や肉もち感があって、表面欠陥の目立ち難い柚子肌状の塗膜外観が注目されている。ポストコートの場合、スプレーコートや粉体塗料の静電塗装等によって、容易に柚子肌の形成が可能であった。ところが、プレコート金属板においては、塗装後に加工を施すため、最終製品の外観形状を柚子肌状にするのは容易ではなく、従来さまざまな方法が試みられてきた。
従来の柚子肌状外観の塗膜形成方法としては、主に(1)樹脂等のビーズを含有する塗料を塗布する方法、(2)表面張力の異なる二種類の塗料を下層皮膜、表層皮膜としてウェット状態で塗布する方法がある。
例えば、特許文献1には、平均粒径10〜50μmの熱可塑性樹脂粉末を含有する塗料組成物を使って、柚子肌状の外観の塗膜を得る方法(樹脂ビーズ法)が記載されている。
特許文献2には、塗膜最外表面のろ波うねり中心線平均およびろ波うねり平均山間隔を規定し、最表層塗膜とその下層塗膜との境界面が波状構造を有する塗装板について記載されている。さらには、ウェットオンウェット塗布、同時多層塗布等により本塗装板を製造する方法について開示されている。特許文献2開示の方法は、性質の異なる塗料から成る層を積層した多層塗膜が、加熱乾燥時に積層塗膜の境界層を乱して塗料の不均一流れを発生する現象に着目したものである。
そして、特許文献2は、上記塗料の不均一流れは、塗膜内の微細な対流現象ではあるが、塗膜の最外表層面に数ミリメートル単位の大きな凹凸変化を誘起することを確認し、さらに、各層を形成する塗料の表面張力と塗膜の加熱条件を最適化することにより、柚子肌状のなめらかな凹凸を塗膜表面に形成可能であることを開示している。
特許文献1に記載された樹脂ビーズ含有塗料を用いて柚子肌を形成する方法では、加熱過程での模様の再現性が必ずしも良くない上に、主として用いられるポリエステル製の樹脂ビーズでは価格が高いといった問題がある。
特許文献2に記載された表層塗膜とその下層塗膜との境界面が波状構造を形成する方法では、表層と下層の塗膜のみを被覆する場合は、優れた柚子肌状塗装板を得ることができる。しかし、表層に用いられる塗膜の材質によっては、屋根材や外壁等の屋外使用の際、雨(酸性雨)、煤、砂塵、鉄粉、太陽光線などの影響によって塗膜表面が汚れやすくなるという問題があった。
柚子肌状塗装板の耐汚染性を改善する手段の一つとして、柚子肌が形成された最表層にクリア塗料のような表層保護用皮膜を施すことで解決を図ることが考えられる。例えば、特許文献3には、金属板上に、下塗塗膜、着色上塗塗膜を介して、親水性被膜が形成されている汚れ防止性の良好な塗装鋼板について開示されている。
特許文献3には、使用初期において塗面に汚れが付きやすくなるが、最上層が親水性被膜であるため、この汚れが雨水によって洗い流されやすくなり、塗膜外観を良好に維持できる趣旨のことが記載されている。
しかし、一般的に施される皮膜は平滑であって、使用開始時は美観に優れるものの、時間の経過に伴って、次第に傷が目立ちやすくなる問題があった。単に、親水性皮膜を最上層に施すだけでは、美麗な外観を維持するには不十分であった。
特開平4−370164号公報 特開2006−95518号 特開平8−80474号
柚子肌状塗装板に、従来から知られた塗装方法で保護被膜を形成することを試みた場合、それぞれに問題が生じる。
ロールコーター、刷毛塗りでは、その塗布方法本来の性格上、柚子肌状の凹凸を隠してしまい、平坦な表面になるため、所望の柚子肌形状が得られない。カーテンコーターでは、クリア塗料を薄く塗ることは難しく、これも、また、柚子肌状の凹凸を隠してしまい、問題がある。スプレー塗装では、ノズル詰まりを防止するために、塗料の粘性を下げる必要がある。
そのため、他の塗布方法よりも多くの溶媒を使って表層用塗料を希釈することになるが、これでは、柚子肌の凹部に塗料が溜まり易く、これも、平坦な表面になって、柚子肌感がなくなる恐れがある。一方、複数の皮膜を形成するためにウェット状態で重ね塗りする方法、いわゆる、ウェットオンウェット塗布法や、同時多層塗布法の場合は、表面張力の影響で、ウェット状態の表層が平坦な面になるような作用を受ける。
したがって、特許文献2、特許文献3に記載された方法に従って、ウェット状態の塗膜の上に、さらに、クリア皮膜を積層した場合、柚子肌状の凹凸面を平坦化してしまい、柚子肌感がなくなってしまう。
このように、乾燥固化した柚子肌状表面に、その凹凸形状を維持したまま保護用皮膜を形成することは困難であり、また、ウェット状態の塗膜に保護用皮膜を積層して柚子肌を形成することも、従来技術の適用では困難であった。
本発明は、表層に親水性保護皮膜が形成され、柚子肌状の塗装外観を有し、耐汚染性、耐傷付性に優れた塗装板と、このような塗装板の簡便な製造方法を提供することを目的とする。
本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)基板の片面または両面に、下地層と、撥剤を含有した有機樹脂を主成分とする第1中間層と、少なくとも有機樹脂、架橋剤が混合された第2中間層と、さらに、親水性有機樹脂を主成分とする表層が、この順序で積層された塗装板であって、
前記表層の最外面におけるろ波うねり中心線平均(Wca)が、0.35μm≦Wca≦1.25μmで、かつ、ろ波うねり平均山間隔(Wc−sm)が、2800μm≦Wc−sm≦12500μmであり、
前記第1中間層と前記第2中間層との境界面が波形である
ことを特徴とする耐汚染性、耐傷付性に優れた柚子肌状塗装板。
(2)前記第1中間層と前記第2中間層との境界面を塗膜厚み方向断面で観察した時に現れる波形曲線が、以下の3条件を満足することを特徴とする(1)に記載の耐汚染性、耐傷付性に優れた柚子肌状塗装板。
(I)前記第2中間層の外表面と前記波形曲線との距離をA、第2中間層の乾燥平均膜厚をBとした場合、A≦0.8Bの領域を持つとして定義される大波Wを含むこと
(II)大波W間の平均距離が750μm以下であること
(III)大波Wをはさんで、前記第1中間層の乾燥膜厚の極小値をC、極大値をDとしたとき、C≦0.3Dであること
(3)前記下地層、第1中間層、第2中間層および表層の合計膜厚が乾燥塗膜厚みで10〜50μmであることを特徴とする(1)または(2)に記載の耐汚染性、耐傷付性に優れた柚子肌状塗装板。
(4)基板の片面または両面に、下地層と、撥剤を含有した有機樹脂を主成分とする第1中間層と、少なくとも有機樹脂、架橋剤が混合された第2中間層と、さらに、親水性有機樹脂を主成分とする表層を、この順序で積層するにあたり、層のウェット状態における表面張力の値が、以下の関係にあることを特徴とする耐汚染性、耐傷付性に優れた柚子肌状塗装板の製造方法。
表層<第1中間層<第2中間層
(5)あらかじめ下地層が施された基板上に、前記第1中間層、第2中間層および表層を形成する塗料を、ともに、ウェット状態で塗布して塗膜を形成後、これらの塗膜を同時に加熱乾燥することを特徴とする(4)に記載の耐汚染性、耐傷付性に優れた柚子肌状塗装板の製造方法。
(6)あらかじめ下地層が施された基板上に、前記塗料を塗布するにあたり、ウェットオンウェット塗布法または同時多層塗布法により、第1中間層、第2中間層および表層を形成することを特徴とする(4)または(5)に記載の耐汚染性、耐傷付性に優れた柚子肌状塗装板の製造方法。
(7)前記第1中間層の塗料の表面張力δaと、第2中間層の塗料の表面張力δbの差が、0.1mN/m≦δb−δa≦5.0mN/mの範囲内にあることを特徴とする(4)〜(6)のいずれかに記載の耐汚染性、耐傷付性に優れた柚子肌状塗装板の製造方法。
(8)前記第1中間層の塗料の表面張力と、第2中間層の塗料の表面張力の少なくとも一方を、添加剤の添加により調整することを特徴とする(7)に記載の耐汚染性、耐傷付性に優れた柚子肌状塗装板の製造方法。
(9)前記添加剤が、界面活性剤、配合溶剤またはレベラーであることを特徴とする(8)に記載の耐汚染性、耐傷付性に優れた柚子肌状塗装板の製造方法。
本発明の塗装板は、柚子肌状の立体感のある意匠性を示し、傷が目立ちにくい特徴を有する。最表層として、親水性皮膜が形成されているため、耐汚染性に関して、優れた特性を示し、建材をはじめ、さまざまな用途向けに、長期間、美麗な状態で使用することができる。
本発明の製造方法によれば、塗装ラインの生産性が向上する。即ち、ラインスピードが速く、塗装工程と加熱乾燥工程の集約化が図れる。さらに、塗料の選択性も広いため、製造コストを削減できる。また、本発明によれば、塗料の変更や注文ロットの変更に際しても、ビーズなどの固形分がない塗料を使用するため、塗装装置の洗浄などが容易であり、塗料変更作業による休止時間も短く、作業トラブルも生じにくい。
図1の模式図に示したように、本発明の塗装板10は、基板1と、基板1の上に形成した下地層2、第1中間層3、第2中間層4、さらに、表層5から構成される多層塗膜6を有する。図1では、塗膜の構造を見やすくするため、基板1の平面方向に対し塗膜の厚み方向(基板1の平面に垂直な方向)を大きく誇張して図示している。実際には、本発明の塗膜断面は、図2に示すように観察される。この図において、表層5の外表面は、ほとんど平滑に見えるが、実際には、柚子肌状の表面を呈している。
図1および2に示したように、本発明の柚子肌状塗装板では、第1中間層と第2中間層との界面は、塗膜加熱乾燥時に発生する乱流により乱れてはいるものの、ほぼ、実質的に連続性を維持している。
本発明の塗装板の塗膜には、各層とも熱硬化性樹脂を用いることができる。両者の表面張力が異なるように調整すれば、全く同一の樹脂であってもかまわない。したがって、各層の塗膜は、単一層に近い相互密着性を有することが可能である。また、同時乾燥するので、本発明では、上下樹脂間の架橋度も高くなっていると思われる。
本発明で用いる基板は、特に限定されず、金属、紙、木材、合板等のほか、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、その他の樹脂等の板を使用することができる。
金属板としては、例えば、鋼板、アルミニウム板、ステンレス鋼板、チタン板、銅板等が挙げられる。このうち、鋼板の例として、冷延鋼板、熱延鋼板、亜鉛めっき鋼板、合金化亜鉛めっき鋼板、亜鉛−鉄合金めっき鋼板、亜鉛−アルミニウム合金めっき鋼板、アルミニウムめっき鋼板、クロムめっき鋼板、ニッケルめっき鋼板、亜鉛−ニッケル合金めっき鋼板、錫めっき鋼板等が挙げられる。
金属板には、必要に応じて前処理を施すことができる。前処理としては、水洗、湯洗、酸洗、アルカリ脱脂、研削、研磨、クロメート処理、リン酸亜鉛処理、複合酸化皮膜処理その他のノンクロメート型の処理等がある。これらを、単独または組み合わせて、塗装前処理を行うことができる。塗装前処理の条件は、適宜選択すればよい。
本発明において、下地層に使用する塗料は、特に、限定されるものではなく、一般的に普及しているプライマー塗料を用いることができる。例えば、クロメート系防錆顔料、非クロメート系防錆顔料、体質顔料などを含むポリエステル系、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系塗料などの他に、電子線硬化型、紫外線硬化型などの任意の塗料を、塗装方法、硬化条件などを考慮して、選定、使用すればよい。なお、防錆顔料については、クロメート系、非クロメート系のいずれも使用可能であるが、環境面を考慮して、非クロメート系を採用することが望ましい。
第1中間層に使用する塗料は、先に述べたとおり、撥剤を含有した有機樹脂、いわゆる、「はじき塗料」であることが必要である。なお、ここで言う撥剤とは、接触する界面に対して著しく濡れ性を抑える性能を持ち備えた薬剤のことである。はじき塗料としては、例えば、一般に市販されているハンマートーン用塗料などがこれに該当し、好適に用いられる。
ハンマートーン用塗料は、本来、最外層として塗布し、独特の立体模様に仕上げる目的で用いられる。一方、本発明では、第1中間層として、これを塗布し、第1中間層が接触する下地層に対して、「はじき」現象が起こり、大きな波状のうねりを発生させる原動力を起こすために利用する。
本発明における第1中間層と下地層の「はじき」の程度は、一概に、両層の表面張力のバランスのみで決定されるものではなく、撥剤と他の塗膜成分の組合せによって、さまざまに「はじき」の程度が異なることを実験的に確認している。なお、はじき塗料を下地層上に単独で塗布したとき、十分なうねりが発生しないならば、最外層を柚子肌状の表面に形成することは困難である。
第2中間層を形成する樹脂としては、任意の樹脂を使用することができる。例えば、高分子ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、フッ素系樹脂、または、これらの変性樹脂などの樹脂成分を、ブチル化メラミン、メチル化メラミン、ブチルメチル混合メラミン、尿素樹脂、イソシアネートやこれらの混合系の架橋剤成分により架橋させたもの、または、電子線硬化型、紫外線硬化型などのものを使用すればよい。
また、これらの塗料には、必要に応じて、各種の着色用顔料を添加してもよい。さらに、これらの顔料として、意匠性に優れたアルミニウム粉末などのメタリック顔料も添加することができる。着色用顔料以外にも、レベリング剤、消泡剤、ワックスなどの界面活性剤を添加してもよい。
表層を構成するベースの樹脂は、任意のものを使用することができる。硬化剤についても、特に限定しないが、メラミン樹脂またはイソシアネートを使用することが好ましい。親水性を発現するための添加剤としては、アルコキシシランが、特に適している。アルコキシシランの具体的種類としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジメトキシシラン、ジエトキシシランなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明に用いる塗膜層(下地層、第1中間層、第2中間層、表層)には、加工性、硬度、耐汚染性、耐薬品性など多くの性能が要求されるため、塗膜層の形成に用いる塗料で使用する主成分となる樹脂の種類は、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂等が好適である。上下層の樹脂の組合せは、目的に応じて適宜選択すればよい。とりわけ加工性に優れ、硬度や耐汚染性など、他の性能とのバランスがとりやすいポリエステル樹脂が最も適している。
塗料で使用する架橋剤としては、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等のアミノ樹脂や、イソシアネート樹脂が、加工性と他の性能とのバランスの点で優れている。
塗料で用いる溶剤は、特に限定されず、いずれの溶剤も使用可能である。溶剤の種類は、樹脂の溶解に支障ない範囲で選択することが望ましい。また、塗装する際に必要な粘度、表面張力、塗装作業性を考慮して、その種類や量を選択できる。
界面活性剤としては、アクリル樹脂系、シリコーン系、フッ素系、炭化水素系などが好適であり、界面活性があれば、他のものでもよい。界面活性剤には、消泡剤、レベリング剤、分散剤、滑剤、発泡剤など、各種の目的に沿ったものがあるが、いずれも使用可能である。
表層を除く各層に用いる塗料は、任意の色を持つことができる。場合により、着色剤を使用して着色することもできる。また、第1中間層、第2中間層用の塗料は、同一の色であってもよく、異なる色であってもよい。両層の色を同一にする場合は、両層それぞれの膜厚で、単一層を形成したときの塗膜の色差が、JISZ8730−6.1で規定される色差1.0以下の塗料を用いる。
多層塗膜の乾燥後合計膜厚を10μm以上にすると、柚子肌の形成が容易である。さらに、好適には、乾燥後合計膜厚を15μm以上とする。乾燥後合計膜厚の上限は、特に、限定されないが、膜厚が厚くなると乾燥に時間がかかるため、経済性と生産性の観点から、50μm以下であることが望ましい。
本発明の塗装板は、表層の外表面のろ波うねり中心線平均(Wca)が0.35μm≦Wca≦1.25μmで、かつ、ろ波うねり平均山間隔(Wc−sm)が2800μm≦Wc−sm≦12500μmであることを必要とする。Wcaが0.35μmより小さいと塗膜の平滑感が強くなり、Wc−smによらず、柚子肌感がなくなる。
一方、Wcaが1.25μmより大きいと、ざらつき感が強くなり、滑らかな印象がなくなる。Wc−smが2800μmより小さいと、柚子肌感が強くなりすぎ、一方、12500μmより大きくなると、柚子肌感がなくなる。
ろ波うねり中心線平均(Wca)とは、断面曲線から波長の短い表面粗さの成分を除いて得られる曲線から、その中心線の方向に測定長さLの部分を抜き取り、その抜き取り部分の中心線をX軸、縦倍率の方向をZ軸とし、z=f(x)で表したとき、以下の数式で定義される値である。波長の短い表面粗さ成分は、80μm未満(カットオフ値80μm)とする。
Figure 2008254255
ろ波うねり平均山間隔(Wc−sm)とは、断面曲線から80μmをカットオフ値とした波長の短い表面粗さ成分を除去して得られる曲線(ろ波うねり曲線)から、ある測定長さLを抜き取り、その平均線を横切って山から谷へ向かう横断点(平均線との交点)から、次の山から谷へ向かう横断点までの間隔をSmiとするとき、間隔の総数をNとして、以下の数式で定義される値である。
Figure 2008254255
ろ波うねり中心線平均(Wca)とろ波うねり平均山間隔(Wc−sm)の測定には、任意の5箇所のサンプルを測定して、その平均を求めた。
本発明の塗装板では、第1中間層と第2中間層との境界面の形状が重要であり、目標とする柚子肌を形成させるためには、この境界面の形状を適正に管理し、境界面が波状構造を持つようにする必要がある。
具体的には、図3に示したように、第1中間層3と第2中間層4との波状の境界面を、塗膜厚み方向断面で観察した時に現れる波形の曲線Wが、(1)前記第2中間層の外表面と前記波形曲線との距離をA、第2中間層の平均膜厚をBとした場合、A≦0.8Bの領域(図中、斜線を施して示された領域)を持つとして定義される大波Wを含むこと、(2)大波W間の距離の平均(隣り合う大波の最大高さの点間の距離に相当し、図中ではX1、X2で表される距離の平均)が750μm以下であること、(3)大波Wをはさんで前記第1中間層の膜厚の極小値をC、極大値をDとしたとき、C≦0.3Dであること、という条件をすべて満足する場合に、良好な柚子肌が形成される。
(1)で定義された大波Wが塗膜断面に認められなければ、良好な柚子肌を安定して形成することは困難である。(2)の条件に関しては、大波間の平均距離が750μmを超えている場合は、加熱乾燥時における塗膜内部の塗料の対流現象が沈静化しており、表面の柚子肌が不明瞭となっている。さらに、(3)の条件を満たさない場合、第1中間層を構成するはじき塗料の「はじき」が十分ではなく、表層にクリア塗装を施しても、なお凹凸を発生させるだけの駆動力が得られず、結果的に、最外面の柚子肌感がなくなる場合がある。
境界面の断面波形曲線が上記の条件を満足するかどうかは、次のようにして判定することができる。
(a)まず、塗装板の任意の5箇所から断面サンプルを採取し、EPMAを用いて、それぞれ500倍に拡大した写真を撮影する。各サンプルの写真撮影にあたっては、横方向の実寸法が1.0mm分に相当する長さになるよう、連続写真を撮影する。即ち、5箇所のサンプルによって合計5.0mmに相当する断面写真を得る。
(b)個々のサンプル断面を観察して、以下の手順により、大波間の平均距離を計算する。
(1)第2中間層の膜厚を50μmピッチで測定する。各サンプル20点×5箇所=100点の測定値から平均膜厚Bを求める。0.8Bを算出し、写真上に、図3に示すような0.8Bの補助線を記入する。
(2)第2中間層と表層の境界面と、波状曲線との距離Aと前記0.8Bを比較し、A≦0.8Bを満たす大波の領域を決定する。
(3)各大波の領域の中で最も表層に近い部分を1点選び、その点を起点として隣り合う大波間の距離X1、X2、・・・・・・を測定する。
(4)各サンプル毎に大波間距離の平均値を求め、全サンプルの大波間距離を平均した値を、塗装板の大波間の平均距離とする。
本発明において、柚子肌が発生する原因は、明確ではないが、次のような機構が考えられる。
第1中間層は、ハジキ外観を生じさせる塗料であるため、ウェット状態で断面方向からみると、厚い部分と薄い部分が存在する。この第1中間層の上に、第2中間層および表層がウェット状態で積層されたとき、第1中間層と第2中間層の表面張力の大小関係が、第1中間層<第2中間層であると、両層間の界面が乱れ、ミクロ的な塗料の混合が発生する。
ミクロ的な塗料の混合とは、両層が完全に均一化するのではなく、両層は区別できるが、その界面が大きく波打ち、塗料成分の一部または全てが、界面を超えて混合している状態である。表面張力の異なる塗料が混合した場合、その表面張力は、混合前の各塗料の表面張力の平均的な値となる。
表面張力の低い第1中間層は、厚さが均一でないため、ミクロ的に混合した塗料の表面張力は、第1中間層が厚い部分は比較的表面張力が低く、薄い部分は高くなり、ウェット塗膜全体を見ると、表面張力の高い部分と低い部分が、海島状に不均一に存在する状態が生じる。そして、比較的表面張力の高い部分に塗料が引っ張られることによって、ウェットの状態から、若干の柚子肌状の外観を呈することになる。
この状態から加熱硬化させると、さらに、柚子肌感が強くなる。これは、上述の表面張力の不均一性により、加熱時の溶剤の揮発速度が、塗面内で不均一となり、それによって、温度差もできるため、塗膜に対流が生じる。この対流によって、塗膜中の場所による溶剤濃度差が生じ、それによって、表面張力差が生じ、この表面張力差によって、さらに、凹凸が生じる。このような現象の複合により、柚子肌が増強されるものと考えられる。
表層の塗料も、ウェット状態で積層された状態にあるが、表面張力の関係が、第2中間層>表層であると、エネルギー的に安定であるため、界面の大きな乱れを生ずることはなく、表層は、膜厚変動の少ない、きれいな単一層となる。さらに、第1中間層と第2中間層とがミクロ的に混合した場合でも、各層の表面張力が、表層<第1中間層<第2中間層の関係にある場合は、表層の表面張力が、それと接する下層よりも高くなることはあり得ないので、表層が、膜厚変動の少ない、きれいな単一層となることにかわりはない。
なお、特許文献2に記載された方法でも、柚子肌は発現するが、その塗料の組み合わせをそのまま使用し、さらに、その上層に、ウェット状態で、本発明と同一の表層塗膜を積層しても、柚子肌は発現しない。表層塗膜がない状態では、凹凸が生じても、表面張力の低い塗料を表層に積層すると、凹凸が押さえつけられて、平坦になってしまうためである。
表層を積層しても、なお、凹凸が失われないためには、特許文献2の柚子肌発現メカニズムとは異なるメカニズムに基づくものでなければならない。本発明の方法で表層を積層しても、なお、凹凸が失われないのは、塗料層内での表面張力の不均一を、より強力に発生させ、塗料をウェット状態で確実に収縮させて、凹凸を形成させることができるためであると考えられる。
本発明の柚子肌状塗装板の製造方法では、少なくとも、第1中間層、第2中間層および表層の塗膜を、ウェット状態で形成し、同時に、加熱乾燥することが必須である。塗膜形成のための塗料の塗布方法は、カーテンコーターやロールコーターによるウェットオンウェット法、または、スライドカーテンコーターによる同時多層塗布法、または、これらの組合せでよく、特に、表層を薄膜塗装する場合には、スライドカーテンコーターによる同時多層塗布法が好適である。
また、第1中間層を含めて同時多層塗布すると、カーテン形成性が良くない場合は、第1中間層をロールコーターにより塗布し、その後、第2中間層および表層をスライドカーテンコーターにより、2層同時塗布するとよい。
上記の表面張力の関係を得るために、各層の塗料の表面張力をコントロールするためには、各塗料に、レベラ―、消泡剤、ワックスなどに代表される界面活性剤を添加するか、各種の溶剤を、適宜選択して添加すればよい。なお、上記の添加剤の殆どは、表面張力が低下する方に作用する。
界面活性剤としては、アクリル樹脂系、シリコーン系、フッ素系、炭化水素系などが好適であり、界面活性があれば、他のものでもよい。界面活性剤には、消泡剤、レベリング剤、分散剤、滑剤、発泡剤など、各種の目的に沿ったものがあるが、いずれも、使用可能である。
塗料で使用する溶剤の種類を変えることによっても、表面張力の調整が可能である。例えば、N−メチルピロリドンは約42mN/mと高い表面張力を示し、エトキシエチルプロピオネートは約27mN/m、キシレンは約32mN/mの表面張力を示す。塗料の表面張力は、20℃での白金リング引き上げ法による静的表面張力の値を適用すればよい。
本発明の柚子肌を形成するには、第1中間層の塗料の表面張力δaと第2中間層の塗料の表面張力δbの差が、0.1mN/m≦δa−δb≦5.0mN/mの範囲内にあることが重要である。表面張力差が0.1mN/m未満では、塗膜内で対流現象が発生しても塗膜表面の表面張力の不均一が起こり難く、柚子肌が形成され難い。一方、5.0mN/mを超えると、上下層の大きい表面張力差によって、第1中間層と第2中間層の界面が大きく乱れ、上下層が逆転する危険性がある。
本発明においては、塗膜の加熱乾燥による塗料樹脂の硬化中に、第1中間層と第2中間層の一部が適度に再配置されて対流が生じ、上下層の境界面が波状構造を形成して、良好な柚子肌外観を得ることができる。このような機構により、柚子肌を形成するためには、上下層の表面張力の差を、前記の範囲内に維持する必要がある。
第1中間層および第2中間層の塗料は、それらの粘度が低いほど流動の障壁がなくなるため、柚子肌が発生し易くなる。塗料の粘度は、0.2〜1.0Pa・sの範囲に調整し、望ましくは、0.5〜1.0Pa・sの範囲とする。塗料の粘度の調整は、塗料中の溶剤量や溶剤種類の変更によって行うことができる。また、増粘剤などの添加剤によって粘度を調整することも可能であり、公知の方法によればよい。
上述の塗料条件の調整に加え、柚子肌形成のもう一つの重要なファクターが、塗膜の加熱乾燥条件である。本発明では、加熱方法については、特に限定されないが、赤外線輻射、熱風、超音波加熱、誘導加熱などが、代表的な方法である。製品の種類に応じて適宜選択すればよい。
基板の加熱条件は、樹脂の種類や膜厚などによって、適宜決定される。一般に、PMT(Peak Metal Temperature:最高板温度)は200〜300℃、昇温時間は20秒〜180秒程度である。昇温時間は、生産性とワキの発生しない範囲を考慮して、適宜、決めるとよい。
次に、実施例により、本発明を、さらに説明する。なお、当然ながら、本発明が以下の実施例に限定されるものでない。
使用した原板は、溶融亜鉛めっき鋼板(GI)、Zn−Al−Mg−Si系合金めっき鋼板(SD)の2種類であって、前処理として、市販薬剤による非クロメート処理、または、クロメート処理を施して、基板を作成した。
非クロメート処理は、日本パーカライジング社製のCTE300Nを、付着量にして、100mg/m2をバーコーターにて塗布し、オーブンにて、80℃、30秒乾燥させた。クロメート処理は、日本パーカライジング社製のZM1300を、クロム付着量にして、40mg/m2をスピンコーターにて塗布し、オーブンにて、80℃、30秒乾燥させた。
この基板上に、各種の塗膜を形成し塗装板を作製した。これらの塗膜は、乾燥平均膜厚約5μmの下地層、乾燥平均膜厚約9μmの第1中間層、乾燥平均膜厚20〜26μmの第2中間層、乾燥平均膜厚約1μm(一部の実施例は5μm)の表層から構成されている。
下地層には、次の2種類のプライマーを使用した。プライマーは、いずれの種類も、バーコーターで塗布し、熱風オーブンにて、PMTを、215℃の条件で乾燥させた。
プライマーA:ポリエステル樹脂/イソシアネート硬化系非クロメートプライマー
プライマーB:ポリエステル樹脂/メラミン樹脂硬化系クロメートプライマー
第1中間層の主成分となるクリア樹脂塗料は、同じ種類のものを用いた。本発明における柚子肌形成のための条件を確認するため、撥剤添加と無添加のものについて比較した。また、ウェット状態における表面張力を調整するため、塗料に、溶剤と界面活性剤の量を加減しながら混合した。
撥剤添加塗料:ポリエステル樹脂/メラミン樹脂硬化系クリア塗料(撥剤添加)
撥剤無添加塗料:ポリエステル樹脂/メラミン樹脂硬化系クリア塗料(撥剤無添加)
第2中間層には、3種類の着色塗料を用いた。ウェット状態における表面張力の調整は、着色塗料の種類だけではなく、溶剤、界面活性剤の添加量を加減する方法も、併せて採用した。
白色:高分子ポリエステル樹脂/メラミン樹脂硬化系白色塗料
黒色:高分子ポリエステル樹脂/メラミン樹脂硬化系黒色塗料
メタリック:高分子ポリエステル樹脂/メラミン樹脂硬化系メタリック塗料
溶剤の添加によって表面張力を調整する場合、例えば、N−メチルピロリドンは約42mN/mと高い表面張力を示し、エトキシエチルプロピオネートは約27mN/m、キシレンは約32mN/mの表面張力を示すので、条件に応じて、これらを適宜選択し、添加した。
表層の保護皮膜には、4種類の塗料を用いた。このうち3種類は、本発明の構成をなす親水性を有する耐汚染性塗料、他の1種類は、比較例として、撥水性を有する耐汚染性塗料である。必要に応じて、各塗料への溶剤の添加量を変えることにより、ウェット状態の表面張力を調整した。
親水性樹脂A:ポリエステル樹脂/メラミン樹脂硬化系耐汚染性クリア塗料(テトラメトキシシラン添加)
親水性樹脂B:高分子ポリエステル樹脂/メラミン樹脂硬化系耐汚染性クリア塗料(テトラブトキシシラン添加)
親水性樹脂C:ポリエステル樹脂/メラミン樹脂硬化系耐汚染性白色塗料(テトラメトキシシラン添加)
撥水性樹脂:フッ素樹脂クリア塗料
塗装方法は、以下の5条件で行なった。本発明の方法として塗装方法A、B、比較例の方法として塗装方法C、D、Eを採用した。
塗装方法A:第1中間層をバーコートで塗布後、第2中間層と表層を、スライドカーテンコーターで同時塗布。その後、3層同時焼付け。
塗装方法B:第1中間層、第2中間層および表層を、スライドカーテンコーターで、同時塗布。その後、3層同時焼付け。
塗装方法C:第1中間層をバーコートで塗布後、焼付け。次に、第2中間層と表層を、スライドカーテンコーターで、同時塗布。その後、2層同時焼付け。
塗装方法D:第1中間層をバーコートで塗布後、焼付け。次に、第2中間層を、バーコートで塗布後、焼付け。さらに、表層を、バーコートで塗布後、焼付け。
塗装方法E:第1中間層を、バーコートで塗布後、焼付け。次に、第2中間層を、バーコートで塗布後、焼付け。さらに、表層を、スプレー塗装後、焼付け。
各塗膜の平均膜厚測定は、先に述べたとおり、EPMAによる塗膜の断面写真に基づく方法で行なった。
各塗膜のWca、Wc−smの測定を、東洋精密社製の表面粗度測定機Surfcomを用い、測定長さ25mm、カットオフ80μm、測定速度0.5mm/sで行なった。
塗料の表面張力測定は、所定の割合で配合調整した塗料を、高速ディスパ装置(東洋精機社製ペイントシェーカーモデルSCD)にて、2000rpmで5分間強攪拌した後、20分間静置し、BYK社製のダイノメーターを用い、20℃における白金リング引き上げ法によって、静的表面張力の値を測定した。
本発明においては、製造された塗装鋼板の柚子肌外観、耐汚染性および耐傷付性の評価を以下のようにして行った。
柚子肌外観の評価を以下の基準で目視により判断した。◎および○を合格とし、×を不合格とした。
◎:滑らかな凹凸を有する柚子肌の外観
○:凹凸の滑らかさにやや欠ける、あるいは、やや不均一であるが柚子肌感がある外観
×:柚子肌感が不足し平滑な外観、または、柚子肌感が強過ぎてざらつきのある外観、または、混層により上下層が逆転した外観
耐汚染性の評価の1つとして耐雨だれ汚染性を次の試験方法で調べた。製造した塗装板をJIS規格A4サイズに切断し、長さ方向が垂直になるように配置して、長さ方向の上から100mmのところで、評価面が上になるように折り曲げ(曲げRは10mm)、長さ方向の下部が垂直となるように、屋外暴露用の架台に設置した。千葉県富津地区の海浜地帯に3ヶ月間暴露試験を行い、垂直面の雨だれのつき方を目視観察し、次の基準により評価した。◎および○を合格とし、△および×を不合格とした。
◎:雨だれの筋なし
○:雨だれの筋がわずか
△:雨だれの筋が明確に認識できる
×:雨だれの筋が10mはなれた場所からも認識できる
本発明における耐傷付性評価とは、塗装板の表層の硬さを評価するものではなく、傷の目立ち方を目視で感覚的に評価するものである。本発明で採用した耐傷付性の評価方法は、はがきを指で塗膜表面に荷重約5kgで押し当てて、塗膜表面上を30回往復させて擦った後の、塗膜表面の傷付き具合を目視観察し、次の基準により評価した。
○:傷がほとんど見えない
△:若干の傷が見える
×:傷が目立つ
塗装板の表面が柚子肌状であると、凸部の限られた面積しか傷が付かないため傷が目立ち難い。○および△を合格とし、×を不合格とした。
柚子肌外観、耐雨だれ汚染性、および、耐傷付性の成績により総合評価を行なった。いずれも、×のない例を合格、一つでも×のある例を不合格とした。なお、合格の場合は、その成績に応じて「優」、「良」、「可」の判定を行なった。
本発明に係る比較例、実施例について、表1は、各層の幾何学的形態と製品の評価結果の対応関係をまとめたものであり、表2は、主に各層の表面張力や塗装方法を示すものである。以下、表1、表2に沿って、比較例と実施例を説明する。
Figure 2008254255
Figure 2008254255
比較例1〜6は、本発明の一実施形態で規定する要件、すなわち、Wca、Wc−smの数値範囲を満たさないため、好ましい柚子肌外観が得られず、いずれも、耐傷付性に劣っていた。
比較例1において柚子肌外観が得られなかった原因は、第1中間層を構成する塗料に、撥剤が添加されなかったことに起因すると考えられる。また、比較例2において柚子肌外観が得られなかった原因は、塗装時に各層の表面張力の関係が、「表層<第1中間層<第2中間層」の条件を満たさず、先に説明したメカニズムによって、第1中間層と第2中間層の境界面が、本発明で規定した波形曲線にならなかったためと考えられる。
さらに、比較例3、4、6に関しては、各層をウェット状態で積層しない塗装方法を選択したことが原因で、境界面が、本発明で規定した波形曲線にならなかったためと考えられる。比較例5は、波形曲線の条件の一つであるA≦0.8Bを満たさず、Wcaが本発明の規定値を外れ、平滑で柚子肌感のない外表面を形成した。
比較例7、8は、各層の表面張力の関係が本発明の条件を満たさなかったため、各層が混層になったものである。比較例9、10は、表層に撥水性樹脂を形成したものである。比較例11、12は、表層皮膜を施さず、第2中間層が、外表面として露出した状態のものである。これら6種類の比較例では、いずれも、耐雨だれ汚染性が著しく劣る結果となった。
実施例12〜20は、波形曲線を規定する3条件のうち、少なくとも一つ以上を満たさない例を示している。Wca、Wc−smは、本発明の規定値を満たし、柚子肌感はあるものの、凹凸の滑らかさにやや欠けるか、または、やや不均一な外観を示している。耐雨だれ汚染性、耐傷付性の面で、やや劣る傾向にある。実施例1〜11は、滑らかな凹凸を有する柚子肌を呈する場合の例であり、耐雨だれ汚染性、耐傷付性のいずれも優れている。
本発明による柚子肌状塗装板は、美的表面外観と意匠性が要求される建築材料を中心に、家電、日用雑貨、自動車などの分野においても広く使用される可能性がある。特に、本発明の柚子肌状塗装板は、屋外で長期間、風雨にさらされても、塗膜が損傷し難く、柚子肌状の美観を保つ特徴を有する。さらに、柚子肌状の意匠は、従来、粉体塗装や静電塗装法により形成されることが多かったが、これらの代替技術として、本発明によるプレコート塗装板の製造方法が利用される可能性が高い。
本発明の柚子肌状塗装板を模式的に説明する図である。 本発明の柚子肌状塗装板の実際の塗膜断面を拡大して示す図である。 本発明の柚子肌状塗装板における各塗膜の境界面の特徴を説明する図である。
符号の説明
1 基板
2 下地層
3 第1中間層
4 第2中間層
5 表層(親水性樹脂皮膜)
6 多層塗膜
10 柚子肌状塗装板

Claims (9)

  1. 基板の片面または両面に、下地層と、撥剤を含有した有機樹脂を主成分とする第1中間層と、少なくとも有機樹脂、架橋剤が混合された第2中間層と、さらに、親水性有機樹脂を主成分とする表層が、この順序で積層された塗装板であって、
    前記表層の最外面におけるろ波うねり中心線平均(Wca)が、0.35μm≦Wca≦1.25μmで、かつ、ろ波うねり平均山間隔(Wc−sm)が、2800μm≦Wc−sm≦12500μmであり、
    前記第1中間層と前記第2中間層との境界面が波形である
    ことを特徴とする耐汚染性、耐傷付性に優れた柚子肌状塗装板。
  2. 前記第1中間層と前記第2中間層との境界面を塗膜厚み方向断面で観察した時に現れる波形曲線が、以下の3条件を満足することを特徴とする請求項1に記載の耐汚染性、耐傷付性に優れた柚子肌状塗装板。
    (1)前記第2中間層の外表面と前記波形曲線との距離をA、第2中間層の乾燥平均膜厚をBとした場合、A≦0.8Bの領域を持つとして定義される大波Wを含むこと
    (2)大波W間の平均距離が750μm以下であること
    (3)大波Wをはさんで、前記第1中間層の乾燥膜厚の極小値をC、極大値をDとしたとき、C≦0.3Dであること
  3. 前記下地層、第1中間層、第2中間層および表層の合計膜厚が乾燥塗膜厚みで10〜50μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の耐汚染性、耐傷付性に優れた柚子肌状塗装板。
  4. 基板の片面または両面に、下地層と、撥剤を含有した有機樹脂を主成分とする第1中間層と、少なくとも有機樹脂、架橋剤が混合された第2中間層と、さらに、親水性有機樹脂を主成分とする表層を、この順序で積層するにあたり、層のウェット状態における表面張力の値が、以下の関係にあることを特徴とする耐汚染性、耐傷付性に優れた柚子肌状塗装板の製造方法。
    表層<第1中間層<第2中間層
  5. あらかじめ下地層が施された基板上に、前記第1中間層、第2中間層および表層を形成する塗料を、ともに、ウェット状態で塗布して塗膜を形成後、これらの塗膜を同時に加熱乾燥することを特徴とする請求項4に記載の耐汚染性、耐傷付性に優れた柚子肌状塗装板の製造方法。
  6. あらかじめ下地層が施された基板上に、前記塗料を塗布するにあたり、ウェットオンウェット塗布法または同時多層塗布法により、第1中間層、第2中間層および表層を形成することを特徴とする請求項4または5に記載の耐汚染性、耐傷付性に優れた柚子肌状塗装板の製造方法。
  7. 前記第1中間層の塗料の表面張力δaと、第2中間層の塗料の表面張力δbの差が、0.1mN/m≦δb−δa≦5.0mN/mの範囲内にあることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の耐汚染性、耐傷付性に優れた柚子肌状塗装板の製造方法。
  8. 前記第1中間層の塗料の表面張力と、第2中間層の塗料の表面張力の少なくとも一方を、添加剤の添加により調整することを特徴とする請求項7に記載の耐汚染性、耐傷付性に優れた柚子肌状塗装板の製造方法。
  9. 前記添加剤が、界面活性剤、配合溶剤またはレベラーであることを特徴とする請求項8に記載の耐汚染性、耐傷付性に優れた柚子肌状塗装板の製造方法。
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