JP2010188526A - クロムフリー塗装鋼板およびこれを用いてなる筐体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 亜鉛系めっき鋼板を基材とする鋼板の一方の面に少なくとも2層からなる積層塗膜を備え、積層塗膜の最外層をなす上層塗膜が、表面の水に対する接触角が60°以下、塗膜のTgが40℃以下、主樹脂が高分子量樹脂からなり、かつ膜厚が2μm以上25μm以下を満たし、積層塗膜の最内層をなす下層塗膜が、塗膜のTgが40℃以下、主樹脂が高分子量樹脂からなり、膜厚が2μm以上15μm以下であって、さらに塗膜中に防錆顔料として、吸油量が50ml/100g以上のイオン交換シリカおよび/または多孔質シリカを含み、これらの合計量が塗料固形分に対し、5〜30質量%であることを満たす。
【選択図】 図1
Description
(1)耐雨だれ汚染性を発現させるべく塗膜表面を親水性にすると、耐雨だれ汚染性を付与していない塗膜と比較して、塗膜表面からの水、塩水等の侵入が多くなる。
(1)亜鉛系めっき鋼板を基材とするクロムフリー塗装鋼板であって、当該鋼板の一方の面に少なくとも2層からなる積層塗膜を備え、当該積層塗膜の最外層をなす上層塗膜が下記(i)〜(iii)を満たし、前記積層塗膜の最内層をなす下層塗膜が下記(iv)〜(vi)を満たすことを特徴とするクロムフリー塗装鋼板:
(i)上層塗膜の表面の水に対する接触角が60°以下。
(ii)上層塗膜のTgが40℃以下であって、当該上層塗膜を構成するバインダー成分における主樹脂が高分子量樹脂からなる。
(iii)上層塗膜の膜厚が2μm以上25μm以下。
(iv)下層塗膜のTgが40℃以下であって、当該下層塗膜を構成するバインダー成分における主樹脂が高分子量樹脂からなる。
(v)下層塗膜の膜厚が2μm以上15μm以下。
(vi)下層塗膜中に防錆顔料として、吸油量が50ml/100g以上のイオン交換シリカおよび多孔質シリカからなる群から選ばれる1種または2種以上を含み、これらの合計量が塗料固形分に対し、5質量%以上30質量%以下。
ここで、「おもて面」とは、本発明に係る塗装鋼板が筐体などの用途に使用されたときに、その使用状態において外側となる面をいう。なお、「うら面」とはおもて面の反対側の面をいう。「おもて面」の一部が使用状態において内側となる場合もあるが、一方の面の主要な領域が使用状態に置いて外側となるとき、その面が「おもて面」と定義され、このようにして定義されたおもて面の反対の面が「うら面」となる。
1.基材鋼板
本発明の塗装鋼板に用いられる基材鋼板は特に制限されず、一般的に塗装鋼板に使用される亜鉛を含有するめっき層を有する亜鉛系めっき鋼板、すなわち、亜鉛めっき鋼板もしくは亜鉛合金めっき鋼板またはこれらのめっきを基板と合金化させた合金化めっき鋼板を用いてもよい。
鋼板の厚さは、用途によって決定されるものではあるが、過度に厚い場合は加工性が低下することが懸念される。
塗装鋼板の製造では、塗膜密着性および耐食性を確保するため、塗装前に基材鋼板を前処理(塗装下地処理)するのが普通である。本発明に係る塗装鋼板も塗装下地処理としての塗装下地処理を施し、塗膜厚の低下による一般的な意味での耐食性の低下を最小限に抑えることとしている。
本発明に係る塗装鋼板を用いてなる筐体を有する製品においてその筐体の外側をなす面(本発明においてこの面を「おもて面」という。)の反対側の面(本発明においてこの面を「うら面」という。)は、まず基材をなす亜鉛系めっき鋼板上に上記の塗装下地処理がなされ、その上に少なくとも1層の塗膜からなる塗膜層が形成されることにより得られる。
うら面に備えられる1層の塗膜は、以下の(i)〜(iv)を満たすものである:
(i)塗膜の表面の水に対する接触角が60°超、
(ii)塗膜の膜厚が2μm以上10μm以下、
(iii)塗膜中の顔料の含有量が、塗料固形分に対し30質量%以上70質量%以下、および
(iv)この塗膜中の顔料のうち、顔料が単独で存在する場合は平均1次粒径が1μm以上であり、顔料同士が凝集して存在する場合は凝集時の顔料の粒径を表す平均2次粒径が1μm以上の顔料の合計量が塗料固形分に対し15質量%以上。
(i)塗膜の表面の水に対する接触角が60°以下、
(ii)塗膜の膜厚が2μm以上10μm以下、
(iii)塗膜中の顔料の含有量が、塗料固形分に対し15質量%以上70質量%以下、および
(iv)この塗膜中の顔料のうち、顔料が単独で存在する場合は平均1次粒径が1μm以上であり、顔料同士が凝集して存在する場合は凝集時の顔料の粒径を表す平均2次粒径が1μm以上の顔料の合計量が塗料固形分に対し5質量%以上。
このように塗膜を1層のみから構成することが端面赤錆の発生を抑制する観点から好ましい理由は次のように考えられる。すなわち、比較的薄い膜厚中に所定量以上の顔料を含有させ、かつ少なくともその一部は比較的大きな粒径、具体的には1μm以上の粒径の顔料とすることで、外界の水分が塗膜を通過して亜鉛系めっき層に到達しやすくなる。このため、亜鉛系めっき層からの亜鉛の溶解が進行し、その結果端面近傍のpHが上昇したり亜鉛化合物が形成したりすることにより、鋼板の腐食が抑制される。
顔料の種類は特に限定されず、防錆顔料、着色顔料などいずれを用いてもよい。
防錆顔料の例としては、トリポリリン酸アルミニウム、リン酸および亜リン酸のZn、Mg、Al、Ti、Zr、およびCe塩、Caイオン交換シリカ、ならびに吸油量100〜1000ml/100g、比表面積200〜1000m2/g、粒径2〜30μmの非晶質シリカ粒子が挙げられる。
(ii)吸油量が50ml/100g以上のイオン交換シリカ、ならびに非晶質シリカ
からなる群から選ばれる1種または2種以上の合計量が塗料固形分に対し5質量%以上。このうち、(ii)の吸油量が50ml/100g以上のイオン交換シリカ、ならびに非晶質シリカが特に好ましい。
また、顔料の粒径は塗膜の厚さよりも小さいことが好ましい。顔料の粒径が塗膜の厚さよりも大きいものが過度に多い場合には、塗装面の耐食性が低下することが懸念される。
バインダー成分は、バインダーの主成分であるバインダー樹脂、硬化剤、およびその他(硬化触媒等)、の成分から構成される。
バインダー成分の塗料固形分に対する含有量は、15〜90質量%とすることが好ましい。バインダー成分の含有量が過度に多い場合には相対的に顔料の含有量が低下し、耐食性が低下したり、所望の色調の着色が困難となったりする。一方、その含有量が過度に低い場合には、塗膜自身の硬度は上昇し耐疵付き性は向上するが、塗膜自身の伸びが低下するため、加工性が低下したりする。特に好ましい含有量の範囲は塗料固形分に対して30〜85質量%である。
うら面を構成する1層の塗膜中に含まれる成分としては、上記のバインダー成分および顔料以外に、レベリング剤、外観の凹凸を得るためのビーズ、溶接性や電磁波シールド性を向上させるための導電粉、加工性を向上させるためのワックス等が挙げられ、これらを必要に応じて適宜含有させてもよい。
うら面を構成する1層の塗膜の厚さは2〜10μmとする。耐端面赤錆性の観点からは塗膜の厚さが薄い方が有利であるが、2μm未満の場合には、塗膜による隠蔽性が得られにくくなり、うら面とはいえども外観の意匠性が低下することが懸念される。また、塗装面の耐食性も過度に低下するおそれがある。一方、塗膜が厚すぎると顔料の含有量を上記の範囲としても、端面の赤錆発生の抑制に必要な水分の塗膜透過量を確保することが困難となってしまう。なお、上述のように、塗膜の厚さは含有させた顔料の粒径以上とすることが好ましい。
うら面が2層以上の塗膜から構成される場合において、端面の赤錆をさらに抑制する観点からは、最内層以外の少なくとも1層の塗膜である上塗り塗膜に、下記(A)および(B)の要件を満たす少なくとも1種の非クロム化合物を含有させることが好ましい:
(i)イオン交換水(電気伝導度:4μS/cm以下)に0.1質量%濃度で溶解させた時の水の電気伝導度が500μS/cm以上、
(ii)200℃までに熱分解を生じない。
なお、最内層をなす塗膜である下塗り塗膜については、組成および膜厚のいずれについても特に制限されず、公知の塗膜を形成すればよい。
本発明に係る塗装鋼板のおもて面には、まず基材をなす亜鉛系めっき鋼板上に上記の塗装下地処理がなされ、その上に少なくとも2層の塗膜からなる積層塗膜が形成される。
(1)上層塗膜の表面の水に対する接触角が60°以下。
(2)上層塗膜のTgが40℃以下であって、当該上層塗膜を構成するバインダー成分における主樹脂が高分子量樹脂からなる。
(3)上層塗膜の膜厚が2μm以上25μm以下。
(4)下層塗膜のTgが40℃以下であって、当該下層塗膜を構成するバインダー成分における主樹脂が高分子量樹脂からなる。
(5)下層塗膜の膜厚が2μm以上15μm以下。
(6)下層塗膜中に防錆顔料として、吸油量が50ml/100g以上のイオン交換シリカおよび多孔質シリカからなる群から選ばれる1種または2種以上を含み、これらの合計量が塗料固形分に対し、5%以上30%以下。
「Tg」とはガラス転移点温度を意味する。
(1)上層塗膜
上層塗膜とは、めっきと塗膜との密着性等を向上させるために行われた塗装下地処理により得られた下地処理層を介して、亜鉛系めっき鋼板上に形成される積層塗膜のうち、最も外側の層をなす塗膜をいう。
上層塗膜を構成するバインダー成分は、バインダーの主成分であるバインダー樹脂、硬化剤、およびその他の成分(硬化触媒など)から構成される。本発明においては、このバインダー樹脂のうち、主樹脂は、平均分子量が7000以上である高分子量樹脂であり、平均分子量が8000以上であることが好ましく、平均分子量が10000以上であればさらに好ましい。
「顔料」とは防錆や着色などを目的とした顔料全体をいう。本発明に係る上層塗膜は、クリア塗膜である場合には顔料を含有しないが、クリア塗膜でない場合には、使用時にユーザーの目に直接触れる塗膜であるから、顔料のうち少なくとも着色顔料を含有する。
(ii)200℃までに熱分解を生じない。
上記の赤錆発生を抑制するために添加される化合物の添加量としては、塗料固形分に対して1質量%以上10質量%以下含有することが好ましい。
上層塗膜中に含まれる成分としては、上記のバインダー成分および顔料以外に、レベリング剤、外観の凹凸やプレス性の向上を得るためのアクリルビーズやPTFE等の樹脂ビーズ、溶接性や電磁波シールド性を向上させるための導電粉、耐候性を改善するのに有効な紫外線吸収剤および光安定剤、加工性(プレス成形性)の改善に有効なワックス等が挙げられ、これらを必要に応じて適宜含有させてもよい。このほか、後述する表面特性を実現するために親水性付与剤を含有させてもよい。
本発明に係る上層塗膜は、加工性を維持する観点から、塗膜のTgが40℃以下である。Tgの下限は特に限定されないが、過度に低い場合には耐疵付き性などが低下することが懸念されるため、0℃以上とすることが好ましい。
本発明に係る上層塗膜の膜厚は、全体として2〜25μmとし、5〜20μmとすることが望ましい。塗膜厚が薄すぎると耐食性および隠蔽性が不十分であり、厚すぎるとコスト高および塗膜内部応力増大に伴う加工性、密着性が低下することが懸念される。
本発明に係る上層塗膜は、その表面の水に対する接触角が60°以下である。このように表面が親水性を有することで耐雨だれ汚染性が得られる。
上層塗膜の製造方法は特に限定されない。常法にしたがって、上記の構成成分を適切な媒体に溶解および/または分散させて塗膜形成用液状組成物とし、後述する下層塗膜の上に任意の方法でこの組成物を所定の厚さで塗布し、加熱などを行って媒体を揮発させるとともにバインダー成分を硬化させて、固体の塗膜とすればよい。
続いて、下層塗膜について説明する。
下層塗膜とは、めっきと塗膜との密着性等を向上させるために行われた塗装下地処理により得られた下地処理層を介して、亜鉛系めっき鋼板上に形成される積層塗膜のうち、最下層をなし、下地処理層に接する塗装をいう。
なお、亜鉛系めっき鋼板上に形成された積層塗膜が3層以上の塗膜から構成されている場合には、最下層をなし下地処理層に接する下層塗膜と最外層をなす上層塗膜との間に位置する中間塗膜(一層であっても複数層であってもよい。)は、その塗膜のTgが40℃以下であって、その塗膜を構成するバインダー成分に含まれるバインダー樹脂のうち、全バインダー成分に対して50質量%以上を占める樹脂、すなわち主樹脂が高分子量樹脂(平均分子量が10000以上の樹脂)とすることが好ましい。
下層塗膜を構成するバインダー成分は、バインダーの主成分であるバインダー樹脂、硬化剤、およびその他の成分(硬化触媒など)から構成される。本発明においては、このバインダー樹脂のうち、平均分子量が10000以上である高分子量樹脂を主樹脂とする。かかる樹脂を用いることで、平均分子量が3000以下の低分子量樹脂を用いた場合に比べて、塗膜の硬度が過度に高まることが抑制され、優れた加工性が実現される。主樹脂の平均分子量の上限は特に限定されないが、平均分子量が過度に大きい場合には、これを含む組成物を基材上に塗布することが困難となる場合がある。具体的には、平均分子量が大きすぎる場合には溶剤への溶解度が低下するため、塗料作成に要する溶媒量が増加する。このため、塗布された塗料に含まれる溶剤の量が相対的に増加することになる。したがって、同一膜厚の塗膜を形成する場合、溶剤量の少ない塗膜と比較して、焼き付け時に揮発する溶剤の量が増え、その結果、オーブン焼き付け時、インシネへの負荷が大きくなりラインスピードを高めることが困難となる。また、厚膜化使用とした場合には、基材鋼板状に塗布される塗料の付着量を増やす必要があり、厚膜を形成することが困難になる。通常の手段で市場から入手できる樹脂材料における平均分子量の上限は30000であり、25000以下であれば上記のような塗布作業性の問題はほとんど生じない。
バインダー成分の含有量は、塗料固形分に対して50質量%以上95質量%以下とすることが好ましい。バインダー成分の含有量が過度に多い場合には相対的に顔料の含有量が低下し、耐食性が低下する。一方、その含有量が過度に低い場合には加工性が低下する。特に好ましい含有量の範囲は、塗料固形分に対して65質量%以上95質量%以下である。さらに好ましくは、70質量%以上95質量%以下である。
本発明に係るおもて面の下層塗膜は、吸油量が50ml/100g以上のイオン交換シリカおよび多孔質シリカからなる群から選ばれる1種または2種以上のシリカ化合物を防錆顔料として含む。かかる上記シリカ化合物からなる防錆顔料は、平面部耐食性に特に優れるため、上層塗膜表面を加工性に優れたかつ親水性(具体的には表面の水に対する接触角が60°以下)にした際の平面部の耐食性低下を抑制することができる。
下層塗膜についても、上層塗膜と同様にバインダー成分および顔料成分以外の成分を含有させてもよいが、耐食性確保の観点から、その他の成分の合計含有量は塗料固形分に対して10質量%以下とすることが好ましく、5質量%以下とすることが特に好ましい。
本発明に係る下層塗膜も、上層塗膜と同様に加工性を維持する観点から、塗膜のTgが40℃以下である。Tgの下限は特に限定されないが、過度に低い場合には耐疵付き性などが低下することが懸念されるため、0℃以上とすることが好ましい。
下層塗膜のうち、上記の多孔質シリカ顔料を所定の含有量で含む塗膜の厚さを2μm以上とする。膜厚を2μm未満とすると、所望の平面部耐食性を得ることが困難となる。一方、膜厚の上限は15μmを上限とする。これ以上の膜厚では、優れた加工性が得られず、かつ経済的な観点からも好ましくない。
下層塗膜の製造方法も特に限定されない。上層塗膜の場合と同様に、適切な媒体に溶解および/または分散させて塗膜形成用液状組成物とし、適切な方法で素地鋼板上にこれを所定の厚さで塗布し、加熱などを適宜行って塗膜とすればよい。なお、上記の吸油量が50ml/100g以上のシリカ化合物からなる防錆顔料を分散させやすくする観点からは、分散剤を添加することが好ましい。
焼き付け時間に関しても、上層塗膜と同様、10秒から120秒の範囲であることが好ましい。
本発明の塗装鋼板から、例えば、打ち抜き、プレス成型といった慣用の形状加工のための二次加工方法、すなわち成型加工により筐体を形成することができる。この筐体は耐雨だれ汚染性に優れているので、例えば、エアコン室外機や給湯器などの屋外で使用されることの多い機器のハウジングとして有用であり、雨水等にさらされても、雨スジ等の汚染が抑制される。
板厚0.8mmの溶融亜鉛めっき鋼板(亜鉛付着量:片面当たり45g/m2、寸法:300×250mm)からなる塗装基材に、アルカリ脱脂および水洗を行った後、日本ペイント(株)製のシリカ系クロムフリー化成処理液(製品名:サーフコートEC2330)を塗装下地処理液として用いて、この製品の指示通りに塗装下地処理を両面に施した。この処理における付着量は、Si付着量として4〜8mg/m2であった。
使用したベース塗料は次のとおりである。
(1)うら面下塗り塗膜用塗料、おもて面下層塗膜用塗料
表1記載のクリア塗料からなるバインダー成分(いずれも日本ファインコーティングス(株)製)に表2記載の顔料を添加して、表3記載の下塗り塗料を作製した。なお、表1における硬化剤の含有量は全バインダー樹脂100質量部に対する質量割合(単位:質量部)である。また、顔料分散時には、塗料質量100gに対して20gのガラスビーズを入れた容器をハイブリッドミキサーで20分間攪拌することにより、塗料中に均一に分散させた。また、表2における粒径は、顔料製造者が提供するカタログに記載された値である。
表4記載のいずれも日本ファインコーティングス社製のクリア塗料(顔料を含んでいない樹脂組成分からなる塗料)をバインダー成分とし、このバインダー成分に対して、表5に示されるように、着色顔料として表2に示されるチタニアを塗料固形分に対する質量%として35〜50質量%、さらに追加の添加顔料として非クロム化合物としてのリン酸二水素カリウムなどを塗料固形分に対する質量%として5〜15質量%添加し、顔料濃度(PWC)が塗料固形分に対する質量%として40〜60質量%である上塗り塗料を作製した。なお、表4における硬化剤の含有量は全バインダー樹脂100質量部に対する質量割合(単位:質量部)である。また、顔料分散時には、塗料質量100gに対して20gのガラスビーズを入れた容器をハイブリッドミキサーで20分間攪拌することにより、塗料中に均一に分散させた。
(A)イオン交換水(電気伝導度:4μS/cm以下)に0.1質量%濃度で溶解させた時の水の電気伝導度が500μS/cm以上、
(B)200℃までに熱分解を生じない。
なお、表6のNo.1−1〜1−24はおもて面上層塗膜を変更したときの諸性能への影響を評価するためのものであり、表7のNo.2−1〜2−18はおもて面下層塗膜を変更したときの諸性能への影響を評価するためのものであり、表8のNo.3−1〜3−16は赤錆性付与を評価するためのものであり、表9のNo.4−1〜4−12はおもて面を構成する各塗膜の厚みなどを変更したときの諸性能への影響を評価するためのものである。
(1)塗膜加工性
試験片に対して折り曲げ試験(23℃)を行い、10倍ルーペを用いて各折り曲げ厚みTでの塗膜クラック有無を調査した。判定基準は下記のとおりであり、○を合格とした:
○:0T〜1T、
×:2T以下。
作製した塗装鋼板を30mm×60mmのサイズの試験片をシャーリングにより切り出した試験片を湿潤試験条件(温度:49℃、相対湿度95%以上:結露有り)に15時間静置してからブロアーで十分に乾燥させた後、おもて面塗膜の水との接触角を測定した。
×:接触角が60°より大きい、
○:接触角が60°以下。
作製した塗装鋼板を30mm×60mmのサイズの試験片をシャーリングにより切り出した試験片を湿潤試験条件(温度:49℃、相対湿度95%以上:結露有り)に15時間静置してからブロアーで十分に乾燥させた後、カーボンブラックの懸濁液を垂らし、24時間静置後水を含んだガーゼで拭き取り、残り具合を確認した。判定基準は次のとおりであり、○を合格とした:
○:消えているか、ほとんど落ちている、
×:汚れ落ち無し。
塗装鋼板の各試験片から70mm×150mmのサイズの評価用試験片をシャーリングにより切り出し、切断端面にシールをした後、JIS2371に指定された条件で480時間の塩水噴霧試験に供した。その後、シールをした端面部分を除く平面部分からの白錆、赤錆の発生状況(面積率)を測定した。判定基準は下記の通りであり、○を合格とした:
○:白錆発生ほとんど無し(5%未満)、
×:白錆、赤錆面積率5%以上。
塗装鋼板の各試験片から70mm×150mmのサイズの評価用試験片をシャーリングにより切り出し、切断端面にシールをした後、カッターナイフで、鋼板素地までクロスカットに切れ目を入れ、JIS2371に指定された条件で480時間の塩水噴霧試験に供した。その後、クロスカット部の塗膜フクレ幅を測定し、基準板と比較してフクレの大小を評価した。判定基準は下記のとおりであり、○を合格とした:
○:基準板と比較して±1mm未満、
×:基準板よりも1mm以上大きい、
測定不能 : 塗膜全面からフクレ、さび発生しており、測定不能。
塗装鋼板の各サンプルについて、1cm×4cmの長方形サイズ(端面長さの和は10cm)の試験片をシャーリングにて10個ずつ切り出し(各サンプルにおける合計の端面長さは1m)、10個の試験片を別々にビーカー内のイオン交換水20ml中に浸漬した。ビーカーを40℃の恒温槽に120時間放置した後、試験片を取り出し、各試験片の端面からの赤錆発生状況(端面から発生した赤錆により変色した溶液の色調を観察)を測定した。評価基準は次のとおりであり、○以上を合格とした:
◎:赤錆、白錆発生ほとんど無(溶液は透明でほとんど着色無し)、
○:白錆発生、赤錆発生ほとんど無し(溶液はやや白濁)、
×:赤錆発生あり(溶液中に赤錆の固形分が少しあり、溶液は赤茶色に着色)。
塗装鋼板の各サンプルについて、0.5cm×4.5cmの細片サイズ(端面長さの和は10cm)の試験片をシャーリングにて100個ずつ切り出した(各サンプルにおける試験片の合計端面長さは10m)。これら100個の試験片を、超音波振動装置に載置したビーカー内の50℃のイオン交換水200ml中に一緒に浸漬した。50℃の温度を保持したまま、ビーカーに40kHzの超音波振動を30分間付与した(使用装置:アズワン株式会社製 US CLEANER)。超音波振動の付与が終了した後、試験片を直ちに取り除き、得られた水溶液(浸漬水)を用いて、電気伝導度計(堀場製作所社製D−54SE)にて電気伝導度を測定した。判定基準は、次のとおりであり、○を合格とした:
○:30μS/cm以上、
×:30μS/cm未満。
得られた塗装鋼板のおもて面について、目視にて外観評価を行った。判定基準は次のとおりであり、○を合格とした:
○:隠蔽性がある、
×:隠蔽性がない。
Claims (9)
- 亜鉛系めっき鋼板を基材とするクロムフリー塗装鋼板であって、
当該鋼板の一方の面に少なくとも2層からなる積層塗膜を備え、
当該積層塗膜の最外層をなす上層塗膜が下記(1)〜(3)を満たし、
前記積層塗膜の最内層をなす下層塗膜が下記(4)〜(6)を満たすことを特徴とするクロムフリー塗装鋼板:
(1)上層塗膜の表面の水に対する接触角が60°以下。
(2)上層塗膜のTgが40℃以下であって、当該上層塗膜を構成するバインダー成分における主樹脂が高分子量樹脂からなる。
(3)上層塗膜の膜厚が2μm以上25μm以下。
(4)下層塗膜のTgが40℃以下であって、当該下層塗膜を構成するバインダー成分における主樹脂が高分子量樹脂からなる。
(5)下層塗膜の膜厚が2μm以上15μm以下。
(6)下層塗膜中に防錆顔料として、吸油量が50ml/100g以上のイオン交換シリカおよび多孔質シリカからなる群から選ばれる1種または2種以上を含み、これらの合計量が塗料固形分に対し、5質量%以上30質量%以下。 - 前記上層塗膜中の主樹脂がポリエステル樹脂であり平均分子量が10000以上である請求項1記載のクロムフリー塗装鋼板。
- 前記下層塗膜中の主樹脂がポリエステル樹脂であり平均分子量が10000以上である請求項1または2記載のクロムフリー塗装鋼板。
- 前記少なくとも2層からなる積層塗膜を備える面が塗装鋼板としてのおもて面である、請求項1から3のいずれか記載のクロムフリー塗装鋼板。
- 前記上層塗膜中に少なくとも1種の非クロム化合物を含有する、請求項1から4のいずれか記載のクロムフリー塗装鋼板であって、この塗装鋼板を0.5cm×4.5cmの長方形に切断したサンプル100個を50℃のイオン交換水(電気伝導度:4μS/cm以下)200mlに周波数40kHzの超音波振動付与下で30分浸漬した時の浸漬水の電気伝導度が30μS/cm以上であることを特徴とするクロムフリー塗装鋼板。
- 前記非クロム化合物がアルカリ金属リン酸塩である、請求項5記載のクロムフリー塗装鋼板。
- 前記アルカリ金属リン酸塩が、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム一水和物、およびリン酸二水素ナトリウム二水和物からなる群から選ばれた少なくとも1種である、請求項6に記載のクロムフリー塗装鋼板。
- 前記塗装鋼板のおもて面が少なくとも2層からなる積層塗膜から形成され、かつ、うら面が1層の塗膜から形成されており、
該うら面塗膜の表面の水に対する接触角が60°超の場合には、うら面塗膜の顔料の含有量が塗料固形分に対して30質量%以上70質量%以下であり、
該うら面塗膜の表面の水に対する接触角が60°以下の場合には、うら面塗膜の顔料の含有量が15質量%以上70質量%以下である
請求項4〜7のいずれか記載のクロムフリー塗装鋼板。 - 請求項1から8のいずれか記載のクロムフリー塗装鋼板を成型加工して得られた筐体。
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