JP6049504B2 - 塗装鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
[1] 鋼板と、前記鋼板上に形成されている塗膜とを有し、前記塗膜は、前記鋼板上に形成されている下塗り塗膜と、前記下塗り塗膜上に形成されている上塗り塗膜とを有し、前記下塗り塗膜は、樹脂、黒色顔料および防錆顔料を含有し、前記下塗り塗膜の膜厚から前記防錆顔料のメジアン径を引いた差は、0.5μm以上であり、前記防錆顔料の屈折率は、2.1以下であり、前記上塗り塗膜の屈折率は、1.45以上であり、前記上塗り塗膜のヘイズ値は、7%以下であり、ハンターのLab法でのL値が10以下であり、かつ60°光沢度が80%以上である、塗装鋼板。
[2] 前記防錆顔料の含有量は、前記樹脂100質量部に対して5〜50質量部である、[1]に記載の塗装鋼板。
[3] 前記上塗り塗膜の膜厚は、3μm以上である、[1]または[2]に記載の塗装鋼板。
[4] 前記鋼板の表面の算術平均粗さRaは、0.5μm以下である、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の塗装鋼板。
[5] 前記鋼板は、めっき鋼板である、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の塗装鋼板。
[6] 鋼板上に下塗り塗膜および上塗り塗膜をこの順で形成して、前記鋼板、前記下塗り塗膜および前記上塗り塗膜を有する塗装鋼板を製造する方法において、前記鋼板上に、樹脂、黒色顔料および防錆顔料を含有し、ハンターのLab法でのL値が30以下である前記下塗り塗膜を形成する工程と、前記下塗り塗膜上に、屈折率が1.45以上であり、かつヘイズ値が7%以下である前記上塗り塗膜を形成する工程と、を含む、ハンターのLab法でのL値が10以下であり、かつ60°光沢度が80%以上である塗装鋼板を製造する方法。
[7] 前記上塗り塗膜の膜厚は、3μm以上である、[6]に記載の塗装鋼板の製造方法。
[8] 前記鋼板の表面の算術平均粗さRは、0.5μm以下である、[6]または[7]に記載の塗装鋼板の製造方法。
[9] 前記鋼板は、めっき鋼板である、[6]〜[8]のいずれか一項に記載の塗装鋼板の製造方法。
ヘイズ(%)=(Td/Tt)×100
(Td:拡散透過率、Tt:全光線透過率)
まず、鋼板11上に、前述した下塗り塗膜13を形成する。下塗り塗膜13は、例えば下塗り塗膜用塗料の塗布とその焼き付け(1コート1ベーク)によって形成される。下塗り塗膜13のハンターのLab法でのL値は、通常、30以下である。L値が30よりも大きいと、塗膜12のL値が十分に低くならず、所望の黒さが得られない場合がある。下塗り塗膜13のL値は、30以下であれば、塗装鋼板10の十分な防錆効果が得られる範囲から適宜に決められうる。下塗り塗膜13のL値は、塗膜12のL値と同様の方法によって求められる。
(1.めっき鋼板の準備)
電気亜鉛めっき鋼板(板厚0.5mm、めっき付着量:片面20g/m2)を用意し、その表面の算術平均粗さRaを調質圧延により0.16μmに調整した。表面粗さを調整した当該めっき鋼板の表面を湯洗し、当該表面にクロムフリー化成処理液をバーコーターで塗布し、当該めっき鋼板を、鋼板の到達板温を100℃で10秒間維持するように加熱して、上記めっき鋼板の表面に化成処理皮膜を形成した。クロムフリー化成処理液には、チタンフッ化水素酸(H2TiF6):0.1mol/Lおよびジルコンフッ化水素酸(H2ZrF6):0.1mol/Lの混合溶液を用い、当該処理液を、TiおよびZrの総金属元素換算付着量が3.5mg/m2となるようにめっき鋼板にバーコーターで塗布した。こうして、Raが0.16μmであり、化成処理されためっき鋼板Aを得た。
ポリエステル樹脂(バイロン(東洋紡株式会社の登録商標)560、東洋紡株式会社製)100質量部およびメラミン樹脂(サイメル(サイテック テクノロジー コーポレーションの登録商標)303;日本サイテック インダストリーズ株式会社製)10質量部の混合物を、固形分が40質量%となるように溶剤に加えて樹脂溶液を調製した。この樹脂溶液に酸性触媒(キャタリスト600、日本サイテック インダストリーズ株式会社製)を0.5質量%加え、クリア塗料を調製した。このクリア塗料にカーボンブラック(MA−100、三菱カーボン株式会社製)を樹脂固形分100質量部に対して5質量部加え、さらに防錆顔料としてカルシウムシリケート(D50:3.8μm、D90:5.2μm、屈折率1.49)を10質量部加え、下塗り塗膜用塗料1を調製した。
めっき鋼板Aに下塗り塗膜用塗料1を塗布し、215℃で50秒間、めっき鋼板Aに焼き付けて、膜厚6μmの下塗り塗膜1を形成した。後述する塗装鋼板における測定方法と同じ方法によって、下塗り塗膜1の60°光沢度を光沢計によって測定し、下塗り塗膜1のハンターのLab法でのL値を、分光光度計による下塗り塗膜1の色の測定結果からハンター色差式により算出して求めたところ、下塗り塗膜1の光沢度は7.8%であり、L値は17.7であった。
カルシウムシリケートを加えなかった以外は下塗り塗膜用塗料1と同様にして下塗り塗膜用塗料0を調製し、下塗り塗膜0を形成した。下塗り塗膜0の光沢度は72.0%であり、L値は8.8であった。そして、塗装鋼板1と同様に上塗り塗膜を形成し、塗装鋼板0を製造した。
上塗り塗膜の膜厚を15μmとした以外は塗装鋼板1と同様にして、塗装鋼板2を製造した。
また、防錆顔料の含有量を20質量部とした以外は、下塗り塗膜用塗料1と同様にして下塗り塗膜用塗料2を調製し、下塗り塗膜2を形成した。下塗り塗膜2の光沢度は3.8%であり、L値は22.1であった。そして、上塗り塗膜の膜厚を15μmとした以外は塗装鋼板1と同様にして、塗装鋼板3を製造した。
防錆顔料にリン酸マグネシウム(D50:2.2μm、D90:3.9μm、屈折率1.6)を用いた以外は、下塗り塗膜用塗料1と同様にして下塗り塗膜用塗料4を調製し、下塗り塗膜4を形成した。下塗り塗膜4の光沢度は8.9%であり、L値は15.8であった。そして、上塗り塗膜の膜厚を2μmとした以外は塗装鋼板1と同様にして、塗装鋼板4を製造した。
上塗り塗膜の膜厚を5μmとした以外は塗装鋼板4と同様にして、塗装鋼板5を製造した。
また、防錆顔料の含有量を20質量部とした以外は、下塗り塗膜用塗料4と同様にして下塗り塗膜用塗料6を調製し、下塗り塗膜6を形成した。下塗り塗膜6の光沢度は4.2%であり、L値は21.6であった。そして、上塗り塗膜の膜厚を15μmとした以外は塗装鋼板4と同様にして、塗装鋼板6を製造した。
めっき鋼板Aに代えてめっき鋼板B〜Dをそれぞれ用いた以外は塗装鋼板6と同様にして、塗装鋼板7〜9をそれぞれ製造した。
防錆顔料にリン酸マグネシウム(D50:5.3μm、D90:7.0μm、屈折率1.6)を用いた以外は、下塗り塗膜用塗料6と同様にして下塗り塗膜用塗料10を調製し、膜厚を8μmとする以外は下塗り塗膜6と同様にして下塗り塗膜10を形成した。下塗り塗膜10の光沢度は2.0%であり、L値は24.4であった。そして、塗装鋼板6と同様にして、塗装鋼板10を製造した。
防錆顔料の含有量を3質量部とした以外は、下塗り塗膜用塗料6と同様にして下塗り塗膜用塗料11を調製し、下塗り塗膜6と同様にして下塗り塗膜11を形成した。下塗り塗膜11の光沢度は63.4%であり、L値は11.1であった。そして、塗装鋼板6と同様にして、塗装鋼板11を製造した。
上塗り塗膜用塗料をポリエステル系クリア塗料(FLC5100、日本ファインコーティング株式会社製)に変更した以外は塗装鋼板6と同様にして、塗装鋼板12を製造した。なお、塗装鋼板12の上塗り塗膜の屈折率は1.55であり、ヘイズ値は5.7であった。
防錆顔料に酸化亜鉛(D50:0.5μm、D90:1.5μm、屈折率2.0)を用いた以外は、下塗り塗膜用塗料6と同様にして下塗り塗膜用塗料13を調製し、下塗り塗膜6と同様にして下塗り塗膜13を形成した。下塗り塗膜13の光沢度は63.1%であり、L値は28.1であった。そして、塗装鋼板6と同様にして、塗装鋼板13を製造した。
防錆顔料に亜鉛粉末(D50:2μm、D90:4.1μm、屈折率2.4)を用い、防錆顔料の含有量を40質量部とした以外は、下塗り塗膜用塗料6と同様にして下塗り塗膜用塗料14を調製し、下塗り塗膜6と同様にして下塗り塗膜14を形成した。下塗り塗膜14の光沢度は7.8%であり、L値は32.1であった。そして、塗装鋼板6と同様にして、塗装鋼板14を製造した。
上塗り塗膜用塗料をフッ素系クリア塗料(Vフロン(大日本塗料株式会社の登録商標)#5000、大日本塗料株式会社製)に変更した以外は塗装鋼板6と同様にして、塗装鋼板15を製造した。なお、塗装鋼板15の上塗り塗膜の屈折率は1.45であり、ヘイズ値は7.9であった。
下塗り塗膜の膜厚を3μmとした以外は、下塗り塗膜3と同様にして下塗り塗膜16を形成した。下塗り塗膜16の光沢度は2.4%であり、L値は20.6であった。そして、塗装鋼板3と同様にして、塗装鋼板16を製造した。
防錆顔料の含有量を55質量部とした以外は、下塗り塗膜用塗料13と同様にして下塗り塗膜用塗料17を調製し、下塗り塗膜13と同様にして下塗り塗膜17を形成した。下塗り塗膜17の光沢度は8.8%であり、L値は35.1であった。そして、塗装鋼板13と同様にして、塗装鋼板17を製造した。
上塗り塗膜用塗料をフッ素系クリア塗料(ディックフロー(DIC株式会社の登録商標)EFクリア、日本ファインコーティング株式会社製)に変更した以外は塗装鋼板6と同様にして、塗装鋼板18を製造した。なお、塗装鋼板18の上塗り塗膜の屈折率は1.42であり、ヘイズ値は6.8であった。
(1.光沢)
塗装鋼板0〜18のそれぞれの塗膜の60°光沢度(%)を、光沢計(VG−2000、日本電色工業株式会社製)によって測定した。また、得られた60°光沢度を以下の基準で判定した。
◎:60°光沢度が87%超
○:60°光沢度が80%超87%以下
×:60°光沢度が80%以下
塗装鋼板0〜18のそれぞれの塗膜の色を分光測色計(CM3700d、コニカミノルタオプティクス株式会社製)で測定し、測定結果からハンター色差式によりL値を算出した。また、得られたL値を以下の基準で判定した。さらに、三名の被験者が、防錆顔料が配合されていない塗装鋼板0を基準に、塗装鋼板1〜17の塗膜の黒色度を目視にて評価し、以下の基準で判定した。
(L値の判定)
◎:L値が6.5以下
○:L値が6.5超10以下
×:L値が10超
(目視による判定)
○:「塗装鋼板0と比べて黒色度に違いが認められない」と判定した被験者が二名以上
×:「塗装鋼板0と比べて黒色度に違いが認められない」と判定した被験者が一名以下
各塗装鋼板に対し、めっき鋼板のめっき層に達するようにナイフでX型のクロスカット傷を入れ、JIS Z2371に準じて35℃の5%塩化ナトリウム水溶液を、塗膜のクロスカット部に240時間噴霧する塩水噴霧試験を行った。当該試験後のクロスカット部の最大膨れ幅を測定し、以下の基準で判定した。なお、上記最大膨れ幅とは、(クロスカット部からのふくれの侵入深さが最大になっている幅)を言う。
◎:最大膨れ幅が2mm以下
○:最大膨れ幅が2mm超4mm以下
△:最大膨れ幅が4mm超5mm以下
×:最大膨れ幅が5mm超
塗装鋼板0〜18の塗膜の表面のRsおよびR(0.3)を像鮮明度光沢計(DGM−30;株式会社村上色彩技術研究所)を用いて測定し、下記式からD/I値(像鮮明度光沢度)を算出し、以下の基準で判定した。Rsは、30°正反射光の強弱(%)であり、R(0.3)は、正反射光のピーク角度の両脇30±0.3°の反射光の強弱(%)である。
(式)
D/I値={1−R(0.3)/Rs}×100
(判定基準)
○:D/I値が70以上
×:D/I値が70未満
11 鋼板
12 塗膜
13,13a,13b 下塗り塗膜
14 上塗り塗膜
15 樹脂
16 黒色顔料
17 防錆顔料
18 拡散反射光
Claims (9)
- 鋼板と、前記鋼板上に形成されている塗膜とを有し、
前記塗膜は、前記鋼板上に形成されている下塗り塗膜と、前記下塗り塗膜上に形成されている上塗り塗膜とを有し、
前記下塗り塗膜は、樹脂、黒色顔料および防錆顔料を含有し、
前記下塗り塗膜の膜厚から前記防錆顔料のメジアン径を引いた差は、0.5μm以上であり、
前記防錆顔料の屈折率は、2.1以下であり、
前記防錆顔料のメジアン径は、0.5〜10μmであり、
前記上塗り塗膜の屈折率は、1.45以上であり、
前記上塗り塗膜のヘイズ値は、7%以下であり、
ハンターのLab法でのL値が10以下であり、かつ60°光沢度が80%以上である、塗装鋼板。 - 前記防錆顔料の含有量は、前記樹脂100質量部に対して5〜50質量部である、請求項1に記載の塗装鋼板。
- 前記上塗り塗膜の膜厚は、3μm以上である、請求項1または2に記載の塗装鋼板。
- 前記鋼板の表面の算術平均粗さRaは、0.5μm以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の塗装鋼板。
- 前記鋼板は、めっき鋼板である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の塗装鋼板。
- 鋼板上に下塗り塗膜および上塗り塗膜をこの順で形成して、前記鋼板、前記下塗り塗膜および前記上塗り塗膜を有する塗装鋼板を製造する方法において、
前記鋼板上に、樹脂、黒色顔料、および、0.5〜10μmのメジアン径の防錆顔料を含有し、ハンターのLab法でのL値が30以下である前記下塗り塗膜を形成する工程と、
前記下塗り塗膜上に、屈折率が1.45以上であり、かつヘイズ値が7%以下である前記上塗り塗膜を形成する工程と、を含む、ハンターのLab法でのL値が10以下であり、かつ60°光沢度が80%以上である塗装鋼板を製造する方法。 - 前記上塗り塗膜の膜厚は、3μm以上である、請求項6に記載の塗装鋼板の製造方法。
- 前記鋼板の表面の算術平均粗さRは、0.5μm以下である、請求項6または7に記載の塗装鋼板の製造方法。
- 前記鋼板は、めっき鋼板である、請求項6〜8のいずれか一項に記載の塗装鋼板の製造方法。
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