JP4817082B2 - 浄水器及びその使用方法 - Google Patents

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本発明は、水を使用する器具毎に設置することが可能な小型の浄水滅菌器に関わるもので、特に浄水施設などで、処理されていない水に、ろ過及び塩素成分による滅菌を施すことが可能な浄水滅菌器に関わるものである。
国外、特に中国などの発展途上国で、経済的な発展が著しい地域においては、ウオッシュレット(登録商標)に代表される、水を用いる衛生機器の需要の伸長が顕著である。しかしながら、多くの地域においては、前記の動向に対応できるだけの水質の確保が困難であるため、洗浄水が直接肌に触れる構造の衛生機器の販売促進も困難となっている。
一方で、日本においては、事故などによる一時的な水質悪化の場合を除き、水道水の飲用が健康障害を起こすことが実質的に皆無であるが、それは、日本における水道水は、ダムや河川から取水した後、沈殿、ろ過の工程を経由して懸濁物を除いた後、次亜塩素酸ナトリウムなどの塩素化合物を注入して滅菌を施して、需要者に供給されていることによるものである。塩素化物は、低濃度でも強力な滅菌力を発現し、日本の水道法では、蛇口から給水される水の残留塩素濃度が0.1ppm以上でなければならないと定められている。
しかし、発展途上国においては、インフラストラクチャーの整備が不十分で、前記のような設備が必ずしも完備されていないのが実状である。これに対処するためには、個々の衛生機器に塩素系の滅菌剤を添加する装置を設置することが有用であると考えられる。
しかしながら、塩素系の滅菌剤は、前記のようにきわめて低濃度でも効果を発現する一方で、一定以下の濃度に維持しないと、生体に対しては毒物として作用する。従って、前記のような用途には、小型で、かつ低濃度で安定的に水に塩素系滅菌剤を添加し得る浄水滅菌器が必要となる。
水に塩素系の滅菌剤を添加するための技術の一例として、特許文献1には、次亜塩素酸ナトリウムなどの塩素系剤の注入量を自動制御する技術が開示されている。しかしながらこの技術においては、装置が高価になるという問題がある。
また、特許文献2には、塩化ナトリウムや塩化カリウムの水溶液を電気分解して、塩素化物イオンを生成する技術が開示されている。しかしながら、この技術においても、電気分解を行うための装置が別途に必要となり、コスト抑制が困難であるという問題がある。
特開2004−223448号公報 特開2007−209859号公報
従って、本発明の課題は、例えばウオッシュレットのような衛生機器などの、水を供給もしくは使用するための装置と、当該装置に水を供給する配管との間に設置可能な、小型の浄水滅菌器を提供することにある。
本発明は、前記の課題解決のため、水溶液中の成分を吸着し得る材料を用い、水が流れた状態でのみ当該吸着成分を溶出させることを検討した結果、ゼオライトが有用であることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
即ち、本発明は、使用状態における下側に設けられた入水口と上側に設けられた出水口を有する金属製の外装体と、前記外装体の内部に配され、入水口と出水口を有し、予め塩素系滅菌剤を吸着させたゼオライト成形体と、前記予め塩素系滅菌剤を吸着させたゼオライト成形体の他に、中空糸膜、活性炭の少なくともいずれかを充填してなるカートリッジを有することを特徴とする浄水滅菌器であって、前記カートリッジは、両端部に底面を備えた外筒と、前記外筒の内側に配された内筒を有し、前記内筒の内側の第一の空間と、前記外筒と前記内筒の間の第二の空間に区分され、前記第一の空間の底面には、前記入水口を経由して前記第一の空間へ水を導入する第一の貫通孔を備え、前記内筒の上端近傍には前記第一の空間から前記第二の空間へ水を導入する第二の貫通孔を備え、前記外筒の下端近傍には前記第二の空間からカートリッジ外部へ水を導出する第三の貫通孔を備え、前記出水口から外部へ水を排出することを特徴とする浄水滅菌器である。
また、本発明は、前記カートリッジの、前記第一の空間における前記第二の貫通孔より下の部分には、活性炭が充填され、前記第一の空間と前記第二の空間における前記第二の貫通孔近傍の部分には、中空糸膜が充填され、前記第二の内の空間における前記第二の貫通孔より下の部分には、前記予め塩素系滅菌剤を吸着させたゼオライト成形体が充填されてなることを特徴とする、前記の浄水滅菌器である。
また、本発明は、前記ゼオライトの成形体を、予め次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素化合物の溶液に浸漬して溶質成分を吸着させ、請求項1または請求項2に記載の浄水滅菌器内を通過する水に、前記次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素化合物を溶出させることを特徴とする、水の浄化滅菌方法である。
また、本発明は、前記ゼオライトの成形体を、予め塩素化合物の溶液に浸漬して塩素成分を吸着させ、前記カートリッジ内を通過する水に、前記塩素成分を溶出させることを特徴とする、前記の浄水滅菌器の使用方法である。
ゼオライトは、天然に産出するアルミノ珪酸塩の総称で、その結晶構造から内部に、5〜8Åの微細な空孔を有する。その空孔を利用して、分子ふるい、イオン交換材、触媒、吸着材として用いられ、現在では天然産の他に、用途に合わせて、種々の特性を付与された合成品も生産され、工業的に重要な材料となっている。
前記の空孔に吸着された成分は、条件により空孔から放出されるので、被吸着成分として塩素系滅菌剤を用いれば、本発明の目的に適う吸着剤となる。形状としては、取り扱いの容易さを考慮して、ゼオライトの粉末をプレス成形し、焼結したものが望ましい。ただし、焼結の程度は、過度に緻密な焼結体としたのでは、塩素系滅菌剤の吸着、放出が円滑に行われなくなるので、保形性を付与する程度であることが望ましい。
また、活性炭も、周知のように内部に無数の微細な空孔を有し、種々の物質を吸着する機能材料として活用されている。その吸着機能は、主に脱臭、水質浄化に応用されていて、本発明にも適用できる。また、ゼオライトと同様に、形状としては、取り扱いの容易さを考慮すると粒状であることが望ましい。
また、中空糸膜は、ポリエチレンやフッ素系の高分子材料などを中空形状の繊維に延伸加工を施し、微細な空孔を形成したもので、精密ろ過や限外ろ過に用いられている。本発明においても、これを用いることで、水質の向上が期待できる。
なお、本発明においては、前記の材料を浄化滅菌の対象となる水の流路に、個別に設置する。これは、ゼオライトが塩素系滅菌剤を放出し終えた後、再度塩素系滅菌剤を吸着させることで、再利用するためと、活性炭や中空糸膜についても同様な再生が可能なためである。
具体的には、これらの材料を充填するカートリッジ内の空間を、貫通孔で連通された複数の空間に区分し、それぞれの空間に個々の材料を充填して用いることができる。カートリッジはプラスチックで形成することができるが、外装体は、給水の配管とネジで接合する必要があることと、供給される水の圧力に耐える必要があることから、機械的な強度を有する金属製であることが望ましい。
また、本発明で用いる塩素系滅菌剤としては、一般的に用いられる次亜塩素酸ナトリウムが用いられ、これをゼオライトに吸着させるには、適当な濃度で調製した水溶液にゼオライトの成形体を浸漬するという方法を用いることができる。
本発明の浄水滅菌器の一例を示す図、図1(a)は断面図、図1(b)はAA断面図。 本発明の浄水滅菌器に用いるゼオライトの成形体の一例を示す図、図2(a)は平面図、図2(b)は正面図。 浸漬時間と遊離残留塩素濃度の関係を示した図。
次に本発明の実施の形態を、図を参照しながら説明する。
図1は本発明の浄水滅菌器の一例を示す図で、図1(a)は断面図、図1(b)はAA断面図である。図1において、1は外装体、2は外装筒、3はカートリッジ、4は粒状の活性炭、5a、5bは中空糸膜、6はゼオライトの成形体、7は外装筒上蓋、8は外装筒下蓋、9はカートリッジの第一の空間、10はカートリッジの第二の空間、11a、11b、11cは貫通孔、12は接続管、13は配管接続用部材である。図における矢印は、水の流れの方向を示す。
本実施の形態で用いられる外装体1を構成する、外装筒2、外装筒上蓋7、外装筒下蓋8のそれぞれは、ネジ(図示せず)で接合され、材質としては、塩素系滅菌剤の腐食性を考慮して、ステンレスが用いられ、クロムメッキを施してもよい。全体の大きさは、概ね外径が50mmで、高さが75mmである。また、カートリッジには、一般的なポリオレフィンであれば十分な耐薬品製を具備しているので、ポリエチレンやポリプロピレンを用いることができる。
図1に示したように、本実施の形態のカートリッジは、同心円状の隔壁により二つの空間に区分され、処理の対象となる水は、第一の空間9の下面に設けられた貫通孔11aから供給され、第一の空間9を満たした後、貫通孔11bから第二の空間10に流入し、さらに貫通孔11cを経て、水を使用する機器へ供給される。
そして第一の空間9には、粒状の活性炭4が充填され、貫通孔11bの前後の部分には、中空糸膜5a、5bが設置され、第二の空間10には塩素系滅菌剤が吸着されたゼオライトの成形体6が充填されている。滅菌という目的には、ゼオライトの成形体から放出される塩素系滅菌剤が機能を発現するが、中空糸膜5a、5bと粒状の活性炭4を併用することにより、水の濁りや臭気をも除去することが可能となる。
図2は、本発明の浄水滅菌器に用いるゼオライトの成形体6の一例を示す図で、図2(a)は平面図、図2(b)は正面図である。この成形体の形状は、直径と高さが同一の寸法で、ガス吸収のための充填塔などの用いられるラシヒリングの形状である。この形状によれば、大きな比表面積と充填密度を確保し、多量の塩素系滅菌剤の吸着と放出が可能となる。なお、本実施の形態で用いたものは、外径及び高さが7mmの寸法である。
中空糸膜5a、5bとしては、ポリエチレン製、ポリフッ化ビニリデン製の市販品が種々発売されているので、適宜選択して用いることができる。また、粒状活性炭とても同様に他種類の製品が市販されているので、適宜選択して用いることができる。
図3は、前記のゼオライトの成形体6を、次亜塩素酸ナトリウムの水溶液に浸漬した後、20ccの水に3分間浸漬し、当該水の遊離残留塩素濃度を測定し、さらに20ccの水を新規のものと取り換えて、ゼオライトの成形体6を3分間浸漬して、同様の測定を繰り返すという試験を行った結果で、浸漬時間と遊離残留塩素濃度の関係を示した図である。
ここで、ゼオライトの成形体6を浸漬した次亜塩素酸ナトリウムの水溶液の濃度は10重量%である。このような試験結果と、実際に用いる機器の容量や水の使用量などの数値により、本発明の浄水滅菌器を充填するゼオライトの成形体6の個数を算出できる。
以上に説明したように本発明によれば、小型で簡便な浄水滅菌器を提供できる。これによって、上水設備の整備が不十分な地域における、各種衛生機器で用いる水を浄化することができる。また、浅井戸や地下水を飲料として使用している地域においても角蛇口毎に取り付けることも可能なので、ろ過および滅菌により、安全で衛生的な水の供給が可能となる。
なお、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の分野における通常の知識を有する者であれば想到し得る、例えば、塩素系滅菌剤として、次亜塩素酸ナトリウム以外の薬品を用いるような、各種変形、修正を含む、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても、本発明に含まれることは勿論である。
1 外装体
2 外装筒
3 カートリッジ
4 粒状の活性炭
5a,5b 中空糸膜
6 ゼオライトの成形体
7 外装筒上蓋
8 外装筒下蓋
9 カートリッジの第一の空間
10 カートリッジの第二の空間
11a,11b,11c 貫通孔
12 接続管
13 配管接続用部材

Claims (3)

  1. 使用状態における下側に設けられた入水口と上側に設けられた出水口を有する金属製の外装体と、前記外装体の内部に配され、入水口と出水口を有し、予め塩素系滅菌剤を吸着させたゼオライト成形体と、前記予め塩素系滅菌剤を吸着させたゼオライト成形体の他に、中空糸膜、活性炭の少なくともいずれかを充填してなるカートリッジを有することを特徴とする浄水滅菌器であって、前記カートリッジは、両端部に底面を備えた外筒と、前記外筒の内側に配された内筒を有し、前記内筒の内側の第一の空間と、前記外筒と前記内筒の間の第二の空間に区分され、前記第一の空間の底面には、前記入水口を経由して前記第一の空間へ水を導入する第一の貫通孔を備え、前記内筒の上端近傍には前記第一の空間から前記第二の空間へ水を導入する第二の貫通孔を備え、前記外筒の下端近傍には前記第二の空間からカートリッジ外部へ水を導出する第三の貫通孔を備え、前記出水口から外部へ水を排出することを特徴とする浄水滅菌器。
  2. 前記カートリッジの、前記第一の空間における前記第二の貫通孔より下の部分には、前記活性炭が充填され、前記第一の空間と前記第二の空間における前記第二の貫通孔近傍の部分には、前記中空糸膜が充填され、前記第二の空間における前記第二の貫通孔より下の部分には、前記ゼオライトの成形体が充填されてなることを特徴とする、請求項1に記載の浄水滅菌器。
  3. 前記ゼオライトの成形体を、予め次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素化合物の溶液に浸漬して溶質成分を吸着させ、請求項1または請求項2に記載の浄水滅菌器内を通過する水に、前記次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素化合物を溶出させることを特徴とする、水の浄化滅菌方法。
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