この発明は、近距離にて単一指向性かつ広帯域性を有し、遠距離にて狭帯域性を有する2周波の共振型アンテナ動作をする非対称平面アンテナを備えた電子機器、電子機器システム及び通信方法に関する。詳しくは、所定の比帯域幅を有し、かつ、広帯域性を有する第1のアンテナを1以上設けた電子機器と、所定の比帯域幅を有し、かつ、広帯域性を有する第2のアンテナを1以上設けたホルダー(充電器)間で、第1及び第2のアンテナを近接対向させて当該電子機器及びホルダー間で無線通信処理して、電子機器及びホルダー間でアンテナを1対1に近接係合できるようにすると共に、電子機器及びホルダー間でリアルタイムに、大量の広帯域情報を送受信できるようにしたものである。
従来から、アンテナは携帯性を必要とする電子機器や、通信ケーブルを配線し難い宅内、構内及びビルといった遠隔間の通信機器等に使用される場合が多い。また、デザイン性を向上させるために筐体の内部にアンテナを配置することも行なわれてきた。大量の広帯域情報を送受信できる広帯域のアンテナとしては一般的に自己相似アンテナや自己補対アンテナが知られている。
一般に、平面パッチアンテナは、誘電体多層基板上に、接地層(GND層)をアンテナ背面に持つので、狭帯域性を有するようになる。従って、大量の広帯域情報を送受信できる広帯域性を確保するためには、GND層をアンテナ背面に持たない構造が一般的に採られる。
次に、一般的な多層基板上に構成される平面アンテナを示す。この平面アンテナは長方形で左右が対称である。しかし、アンテナパターンが広帯域性を有していない。図33は、従来例に係る長方形パッチアンテナ10”の構成例を示す上面図である。図33に示す長方形パッチアンテナ10”は、図示しない接地層(以下GND層という)及び絶縁体7が積層された多層基板8上に長方形状のアンテナパターン6を有して構成される。長方形パッチアンテナ10”は、アンテナパターン6の下層に絶縁層を介してGND層を有しているので、狭帯域性を示すものである。アンテナパターン6は、使用周波数の波長をλとしたとき、長手方向の長さがλ/2を有している。給電パターン1の中心を基準にして左右λ/4に区分したとき、左側のλ/4の形状と、右側のλ/4の形状とが同じになるものである。
この種の長方形パッチアンテナ10”に関連して、特許文献1には、超広帯域通信用のアンテナが開示されている。このアンテナによれば、基板上にパッチ及びグランド領域を備えて構成される。パッチは基板よりも小さく形成され、フィーダを介して電流が供給されると、励起してネルギーを放射するようになされる。グランド領域は、基板の表面のパッチ以外を領域を除去して広帯域性を有するようになされている。このようにアンテナを構成すると、超広帯域通信周波数帯域で、しかも、小型化、軽量化、高性能化及び安価化が可能なフラットパッチアンテナを提供できるというものである。
また、長方形パッチアンテナ10”を実装した電子機器に関連して、特許文献1には、電子機器が開示されている。この電子機器によれば、本体ケース(筐体)を有し、この本体ケースには機器構成ユニットを有するマザーボードが配置される。更に、他の機器構成ユニットを構成するドーターボードが備えられ、各々の機器構成ユニットには広帯域通信チップが設けられる。また、本体ケースの内部を電波吸収体で覆い、機器構成ユニット間で通信ノイズとなる電磁波を吸収するようになされる。このように電子機器を構成すると、設計余裕度を向上できると共に、機器構成ユニット間で高速データ伝送できるというものである。
ところで、従来例に係る電子機器システムによれば、大量の広帯域情報を送受信できる広帯域性を有するアンテナを用いて2つの電子機器間で信号処理をする場合に、アンテナを近接させ、近傍にて無線通信する方法が考えられるが、以下のような問題がある。
i.特許文献1に見られるようなフラットパッチアンテナによれば、給電線の間に整合回路が配置されている。従って、このようなアンテナ構造であると、整合回路を構成する面積が必要となるので、アンテナ配線を複雑化するおそれがある。
ii.更に、GND層をアンテナ背面に持たない構造なので、電子機器の筐体側面にアンテナを配置する場合に、その設置工夫が必要となり、筐体構造の設計スキルが必要となる。
iii.電子機器における使用周波数(データの伝送速度)が高くなり、無線通信で取り扱われる情報量が多くなると、例えば、映像の連続性を考慮したとき、それを短時間でリアルタイムに伝送しなくてはならない。従って、無線通信時、情報を多量に伝送するためには、アンテナが広帯域性を有すると共に単一指向性を有して電子機器間で、マルチメディアの伝送を行えるようにしなくてはならない。
そこで、この発明はこのような従来の課題を解決するものであって、平面アンテナの構造を工夫して、2つの筐体間でアンテナを1対1に近接係合できるようにすると共に、2つの筐体間でリアルタイムに大量の広帯域情報を送受信できるようにした電子機器、電子機器システム及び通信方法を提供することを目的とする。
上述した課題は、所定の比帯域幅を有し、かつ、広帯域性を有する第1のアンテナを1以上設けた第1の筐体と、所定の比帯域幅を有し、かつ、広帯域性を有する第2のアンテナを1以上設けた第2の筐体とを備え、第1及び第2のアンテナを近接対向させて第1及び第2の筐体間で無線通信処理をし、前記第1及び第2のアンテナは、絶縁性の基板又は絶縁層上に設けられた導電性の給電パターンと、前記給電パターンから延在した導電性のアンテナパターンとを備え、前記アンテナパターンは、使用周波数をλとしたとき、長手方向の長さがλ/2であり、前記給電パターンの中心を基準にして左右λ/4に区分したとき、左側のλ/4の階段形状と右側のλ/4の階段形状とが非対称な形状であり、前記階段形状の各階段の幅は、λ/整数値であるように形成されたことを特徴とする請求項1に係る電子機器によって解決される。
請求項1に係る電子機器によれば、第1及び第2の筐体間で2つのアンテナを1対1に近接係合することができ、第1及び第2の筐体間でリアルタイムに、大量の広帯域情報を送受信できるようになる。
請求項9に記載の電子機器システムは、所定の比帯域幅を有し、かつ、広帯域性を有する第1のアンテナを設けた第1の電子機器と、所定の比帯域幅を有し、かつ、広帯域性を有する第2のアンテナを設けた第2の電子機器とを備え、第1及び第2のアンテナを近接対向させて第1及び第2の電子機器間で無線通信処理をし、前記第1及び第2のアンテナは、絶縁性の基板又は絶縁層上に設けられた導電性の給電パターンと、前記給電パターンから延在した導電性のアンテナパターンとを備え、前記アンテナパターンは、使用周波数をλとしたとき、長手方向の長さがλ/2であり、前記給電パターンの中心を基準にして左右λ/4に区分したとき、左側のλ/4の階段形状と右側のλ/4の階段形状とが非対称な形状であり、前記階段形状の各階段の幅は、λ/整数値であるように形成されたことを特徴とするものである。
請求項10に係る電子機器によれば、本発明に係る電子機器が応用され、第1及び第2のアンテナを近接対向させて第1及び第2の電子機器間で無線通信処理をするようになされる。従って、第1及び第2の電子機器間で2つのアンテナを1対1に近接係合することができ、第1及び第2の電子機器間でリアルタイムに、大量の広帯域情報を送受信できるようになる。
請求項14に係る通信方法は、所定の比帯域幅を有し、かつ、広帯域性を有する第1のアンテナを設けた第1の電子機器と、所定の比帯域幅を有し、かつ、広帯域性を有する第2のアンテナを設けた第2の電子機器とを近接対向させて第1及び第2の電子機器間で無線通信処理をし、前記第1及び第2のアンテナには、絶縁性の基板又は絶縁層上に設けられた導電性の給電パターンと、前記給電パターンから延在した導電性のアンテナパターンとを備え、前記アンテナパターンは、使用周波数をλとしたとき、長手方向の長さがλ/2であり、前記給電パターンの中心を基準にして左右λ/4に区分したとき、左側のλ/4の階段形状と右側のλ/4の階段形状とが非対称な形状であり、前記階段形状の各階段の幅は、λ/整数値であるように形成された非対称平面アンテナが使用されることを特徴とするものである。
請求項16に係る通信方法によれば、第1及び第2の電子機器間で2つのアンテナを1対1に近接係合することができ、第1及び第2の電子機器間でリアルタイムに、大量の広帯域情報を送受信できるようになる。
請求項1に係る電子機器によれば、所定の比帯域幅を有し、かつ、広帯域性を有する第1のアンテナを1以上設けた第1の筐体と、所定の比帯域幅を有し、かつ、広帯域性を有する第2のアンテナを1以上設けた第2の筐体間で、第1及び第2のアンテナを近接対向させて当該第1及び第2の筐体間で無線通信処理をするようになされる。前記第1及び第2のアンテナは、絶縁性の基板又は絶縁層上に設けられた導電性の給電パターンと、前記給電パターンから延在した導電性のアンテナパターンとを備え、前記アンテナパターンは、使用周波数をλとしたとき、長手方向の長さがλ/2であり、前記給電パターンの中心を基準にして左右λ/4に区分したとき、左側のλ/4の階段形状と右側のλ/4の階段形状とが非対称な形状であり、前記階段形状の各階段の幅は、λ/整数値であるように形成される。
この構成によって、第1及び第2の筐体間で2つのアンテナを1対1に近接係合することができ、第1及び第2の筐体間でリアルタイムに、大量の広帯域情報を送受信できるようになる。これにより、携帯電子機器等の第1の筐体をホルダー又は充電器等の第2の筐体に保持し、又は、それを充電している状態でホルダー又は充電器側から携帯電子機器側へ、又は、携帯電子機器側からホルダー又は充電器側へ、大量の広帯域情報を送信できるようになる。
請求項9に係る電子機器システム及び請求項14に係る通信方法によれば、請求項1に係る電子機器が応用され、第1及び第2のアンテナを近接対向させて第1及び第2の電子機器間で無線通信処理をするようになされる。前記第1及び第2のアンテナは、絶縁性の基板又は絶縁層上に設けられた導電性の給電パターンと、前記給電パターンから延在した導電性のアンテナパターンとを備え、前記アンテナパターンは、使用周波数をλとしたとき、長手方向の長さがλ/2であり、前記給電パターンの中心を基準にして左右λ/4に区分したとき、左側のλ/4の階段形状と右側のλ/4の階段形状とが非対称な形状であり、前記階段形状の各階段の幅は、λ/整数値であるように形成される。
この構成によって、第1及び第2の電子機器間で2つのアンテナを1対1に近接係合することができ、第1及び第2の電子機器間でリアルタイムに、大量の広帯域情報を送受信できるようになる。これにより、携帯通信装置等の第1の電子機器を他の携帯通信装置等の第2の電子機器とを重ね合わせた状態、あるいは、極接近させた状態で、一方の携帯通信装置側から他方の携帯通信装置側へ、又は、他方の携帯通信装置から一方の携帯通信装置側へ、大量の広帯域情報を送信できるようになる。しかも、複数の電子機器を同期させた動作を行なわせることができる。
続いて、この発明に係る電子機器、電子機器システム及び通信方法の一実施の形態について、図面を参照しながら説明をする。
図1は、第1の実施例としての電子機器100の構成例を示す斜視図である。図1に示す電子機器100は、第1の筐体の一例となるデジタルカメラ101及び第2の筐体の一例となるホルダー102を有して構成される。デジタルカメラ101は、本体ケース12を有しており、携帯電子機器を構成する。本体ケース12には、所定の比帯域幅を有し、かつ、広帯域性を有する1以上の第1のアンテナが設けられる。この実施例で広帯域性とは比帯域幅11%以上を指すものとする。例えば、デジタルカメラ101の底面には第1のアンテナを構成する、アンテナ10a,10c,10eが配置され、その左右の側面にはアンテナ10g,10hが配置され、その天板面にはアンテナ10iが配置される。
ホルダー102は、デジタルカメラ101を保持するものであり、本体ケース15を有している。本体ケース15には、11%以上の比帯域幅を有し、かつ、広帯域性を有する第2のアンテナを1以上設けられる。例えば、ホルダー102の上面にはアンテナ10b,10d,10fが配置される。この例では、第1及び第2のアンテナを近接対向させてデジタルカメラ101及びホルダー102間で無線通信処理をするようになされる。上述のアンテナ10a〜10iには、図2〜図14で説明する非対称平面アンテナが使用される。
この例でデジタルカメラ101をホルダー102にセットしたとき、アンテナ10a,10bが対向され、アンテナ10c,10dが対向され、アンテナ10e,10fが対向される。このように構成すると、それぞれのアンテナ10a,10bや、アンテナ10c,10d、アンテナ10e,10f等を1対1で結ぶことにより、その繋がりを複数回介してデジタルカメラ101及びホルダー102間で、リアルタイムに広帯域の情報を伝送することができる。
アンテナ10g及び10hは、他のデジタルカメラ101と広帯域無線通信又は狭帯域無線通信を実行する際に使用される。例えば、複数のデジタルカメラ101が保持可能な図示しない長手のホルダーにセットしたとき、隣同士のデジタルカメラ101のアンテナ10gと、アンテナ10hを近接対向させると、広帯域情報を無線通信できるようになる。また、その狭帯域性を利用してGUI(Graphical User Interface)インターフェースの表示制御信号等を転送できるようになる。このように、ホルダー102を広帯域情報や狭帯域情報等のインターフェースとして使用できるようになる。
図2は、非対称平面アンテナ10の構造例を示す上面図である。図2に示す非対称平面アンテナ10はマイクロストリップ構造を基本とする平面アンテナであり、アンテナパターン3の背面にGND層を持ち、更に、広帯域性を有しているので電子機器の筐体構造設計の簡略化に寄与できるものである。非対称平面アンテナ10は、デジタルカメラ101やホルダー102等に実装される、アンテナ10a〜10iを構成し、近距離にて単一指向性かつ広帯域性を有し、遠距離にて狭帯域性を有する2周波の共振型アンテナ動作をするものである。非対称平面アンテナ10は、筐体間近接通信向けのアンテナ、例えば、数十GHz単位の使用周波数で動作する信号処理ユニットを備えた電子機器に適用して好適である。
非対称平面アンテナ10は、従来例で示した平面アンテナの帯域特性を改善したものであり、絶縁性の基板4(又は絶縁層)上に設けられた導電性の給電パターン1と、給電パターン1から延在した導電性のアンテナパターン3とを備え、アンテナパターン3は、給電パターン1を基準にして非対称な形状を有してなる。
アンテナパターン3は、非対称な形状の一例となる逆さ山字形状を有している。この逆さ山字形状は、本発明者が見出した形状であって、近距離にて単一指向性かつ広帯域性を有し、遠距離にて狭帯域性を有する等の機能項目を満足した形状である。アンテナパターン3は、その逆さ山字形状の中に階段形状部分を有しており、給電パターン1を中心線にして折り畳むと重なる部分が生ずる。ここに、非対称とは、給電線を中心線として両側の付加された長方形部分は左右で異なる面積になっている。つまり、非対称平面アンテナ10で、給電点が非対称なアンテナパターン3の中心線からずれた位置にある。
非対称平面アンテナ10は非対称なアンテナパターン3内に誘電体材質できまる波長と同程度の長さの辺を持つ。換言すると、非対称平面アンテナ10は非対称なアンテナパターン3内に給電パターン1を基準にしてその左右がλ/2波長でその約2倍程度である辺を持つ。例えば、アンテナパターン3は、使用周波数の波長をλとしたとき、アンテナパターン3の長さaがλ/2を有している。aは給電パターン1と直交するアンテナパターン3の長手方向の長さである。アンテナパターン3の短手方向の長さはb(a>b)である。給電パターン1の中心を基準にして左右λ/4に区分したとき、左側のλ/4の階段形状と、右側のλ/4の階段形状とが異なるものである。但し、左右の約λ/4には本アンテナの使用周波数が広帯域であるので、使用周波数f=c/λには、帯域内のいずれかの波長を左右の約λ/4に選ぶようにする。つまり、長さλが広帯域なので複数の選択肢が存在する。
この例で、基板4のほぼ中央下方から上方には導電性の給電パターン1が設けられる。また、給電パターン1から上方に延在して導電性のアンテナパターン3が設けられ、給電パターン1を介して電流が供給されると、励起してエネルギー(電波)を放射するようになされる。給電パターン1とアンテナパターン3とを結ぶ部分がアンテナ整合パターン2となされている。アンテナパターン3は、給電パターン1を基準にして左右非対称な形状を有している。給電パターン1、アンテナ整合パターン2及びアンテナパターン3は金、銀、銅、黄銅、青銅、白銅等の金属箔又は金属板、これらの金属層から構成される。
この例で、給電パターン1からアンテナパターン3へ至る部位が所定形状のアンテナ整合パターン2とされている。例えば、アンテナパターン3から延在する給電パターン部分が広くなり、その広くなった部分の一端側が給電点になっている。つまり、非対称平面アンテナ10は給電部分の形状が給電線よりも広い線幅になる。このように構成すると、整合回路を介在することなく、直接、半導体集積回路装置(以下でLSIという)からの配線を給電パターン1に接続して、LSIからの信号を給電パターン1に給電することができる。ここでいう整合回路とは、配線インピーダンスとアンテナパターン3とを整合させる回路をいう。
本発明では、非対称平面アンテナ10とLSIとの間に整合回路を挟む必要がなくなるので、アンテナパターン3とLSI装置等との間の接続に整合回路を必要とせず非対称平面アンテナ10とLSI装置等とを直接配線することができる。しかも、非対称平面アンテナ10とLSIとの間の配線長を可能な限り短くすることができる。なお、アンテナパターン3の下地層は、多層基板又は誘電体を金属層で挟んだ積層構造素子が使用される。多層基板には、通常の電子機器で使用されるものが使用できる。図2に示した基板4には、例えば、接地層を持つガラスエポキシやテフロン(登録商標)やセラミックス等を基材にする一般的な多層基板が使用される。
図3は、非対称平面アンテナ10に係るアンテナパターン3の積層例を示す断面図である。図3に示す非対称平面アンテナ10は、二層基板4上にアンテナパターン3を積層されて構成されるものである。二層基板4は、絶縁層(誘電体層)202、接地層(以下GND層という)203及び絶縁層204で構成される。
この例で、アンテナパターン3の下層には絶縁層202が設けられ、当該絶縁層202の下層には、更に大面積のGND層203が設けられる。アンテナパターン3の直接の下層には、金属層からなるGND層203を備えている。GND層203の面積は、アンテナパターン3よりも十分大きいものである。これは、非対称平面アンテナ10が単一指向性を示すようにするためである。これにより、多層基板4に平行なアンテナパターン3が存在する面上の電子部品や機械部品等の機構部品をその特性に影響を与えない範囲で高密度に実装できるようになる。
このときも、大きな面積のGND層203が、それらの機構部品の安定及び安全動作に有意義に働く(役立つ)ようになる。GND層203には、アンテナパターン3と同様な金属の他に不純物を含んだ半導体GaAsや多結晶シリコン等も使用される。これにより、アンテナパターン3と、その直下の金属層のGND層203とで絶縁層202(誘電体層)を挟んだ構成となる。この大きなGND層203は、LSIのGND層と共用化でき、LSIの安定動作にも機能するようになる。GND層203の下層には絶縁層204が設けられることで、アンテナパターン3の直接の下層に誘電体層を持つようになる。
なお、絶縁層202上にはアンテナパターン3の他に配線層が設けられる。このアンテナパターン3から延在する配線層は、信号バスやコネクタ等と置き換えることができるので、電子機器の構成を簡素化できる特徴を有する。また、図中、最上層の絶縁層201は、レジスト層やシルク層等が使用され、この他に空気(誘電率=1)が代用できる。つまり、図3において、アンテナパターン3(金属層)と絶縁層(誘電体層)201とを入れ替え、絶縁層(誘電体層)202とGND層203とを各々入れ替えた構成にすることも可能である。また、アンテナパターン3アンテナパターン3を立体形状に発展させることも可能である。このように、多層基板4の最も外側の配線層をアンテナパターン3にして、その次の配線層をGND層203にした多層基板4のアンテナパターン3を誘電体層で保護するような構造を提供できる。
図4は、他の非対称平面アンテナ10cに係るアンテナパターン3の積層例を示す断面図である。図4に示す他の非対称平面アンテナ10は、多層基板上にアンテナパターン3を積層されて構成されるものである。多層基板4’は、通常の電子機器に用いられ、絶縁層(誘電体層)202、GND層203、絶縁層204、配線層205及び絶縁層206・・・その他の層で構成される。その他の層には、通常の電子機器において用いられる多層基板の材料が用いられる。
非対称平面アンテナ10cは、そのアンテナパターン3の裏側に絶縁層202を有し、その下層に大きな面積のGND層203を有している。これにより、非対称平面アンテナ10は指向性を保持できるようになる。この例では、GND層203の下層に絶縁層204が設けられ、更に、絶縁層204の下層に配線層205を設けた多層構造を有している。配線層205は、図示しないLSI装置のピン又はその接続用の電極から引き出される。
非対称平面アンテナ10ではアンテナパターン3と配線層とが同一平面内に設けられるのに対して、非対称平面アンテナ10cではアンテナパターン3と配線層205とが異平面に設けられる点で構造が異なっている。なお、図4に示す絶縁層201は、図3に示した絶縁層201と同様にしてレジスト層やシルク層又は空気である。
以下で、図3に示した二層基板4上のアンテナパターン3や、図4に示した多層基板4’上のアンテナパターン3に着目して非対称平面アンテナ10,10cについて説明をする。
図5は、本発明の非対称平面アンテナ10や10c等に対する比較例としての非対称平面アンテナ10’の構成例を示す上面図である。図5に示す非対称平面アンテナ10’は、図33に示した従来方式の対称な長方形パッチアンテナ10”に対し、共振周波数を変化させる成分を追加して製作したものである。非対称平面アンテナ10’は、例えば、帯域特性を改善するために、図33に示した長方形パッチアンテナ10”の形状、すなわち、その長方形の形状の片側に長方形の短辺よりも短い辺を長辺とする、ある面積を持つ長方形形状を付加して、左右のパターンの面積を異ならせた構造である。
アンテナパターン3’は、使用周波数の波長をλとしたとき、長手方向の長さが約λ/2を有している。給電パターン1の中心を基準にして左右λ/4に区分したとき、左側のλ/4の形状と、右側のλ/4の形状とが異なるものである。右側のλ/4の形状から右に突出している部分は共振周波数を変化させる成分である。このようにアンテナパターンを非対称するには、パターンを減らす方法に限ることはなくパターンを付け加える方法であってもよい。但し、左右の約λ/4には本アンテナの使用周波数が広帯域であるので、使用周波数f=c/λには、帯域内のいずれかの波長を左右の約λ/4に選ぶようにする。
長方形パッチアンテナ10”は、その短辺の端から2つの電磁波を放射するので、2つの放射器を有すると考えられる。これを反射特性で考えると、2つの共振周波数を持つと考えることができる。
この比較例では、非対称平面アンテナ10’のアンテナパターン3’の短辺右端部の上下が欠けている。このように、アンテナパターン3’の左右の形状を変化させると、従来方式の長方形パッチアンテナ10”の2つの共振周波数(共振点)を例えば、低い周波数帯域に移動できるようになる。つまり、1つの共振周波数で電磁波を放射できる帯域を2つ重ね合わせることにより、電磁波を放射できる帯域が拡大可能となる。
このようなアンテナパターン3’と給電パターン1との整合条件を保ちながら、共振周波数を変化させる方法には、インダクタンス成分Lとキャパシタ成分Cと抵抗成分Rとを何らかの方法でアンテナパターン3’に加えるか、又は、アンテナパターン3’からこれらの成分を減らすことで対処できることがわかった。これから数GHz帯を例にして本発明の非対称平面アンテナの特性を説明するが、本発明の非対称平面アンテナの動作周波数は、説明に用いた帯域に限定されるものではなく、当該アンテナは、マイクロ波帯やミリ波帯等の様々な周波数帯において用いることができる。このように、ある多角形の形状を付加することでも、高効率かつ広帯域を有する非対称平面アンテナ10’を作成できるようになる。
なお、非対称平面アンテナ10’は対称な平面長方形パターンの短辺片側に短辺よりも短い長さを長辺とする長方形パターンを付加する場合について説明したが、これに限られることはなく、平面長方形パターンの短辺よりも長い辺を長辺とする長方形パターンを付加するようにしてもよい。
図6は、長方形パッチアンテナ10”及び非対称平面アンテナ10’に係る反射特性の比較例を示す図である。図6に示す縦軸は、長方形パッチアンテナ10”や非対称平面アンテナ10’等の反射特性S11[dB]である。横軸は、これらのアンテナの使用周波数[GHz]である。一点鎖線は、従来方式の長方形パッチアンテナ10”の反射特性Iであり、波線は、比較例としての非対称平面アンテナ10’の反射特性IIである。この非対称平面アンテナ10’の反射特性IIは、図33に示した従来方式の長方形パッチアンテナ10”の帯域AをBに改良したものである。
図中、従来方式の長方形パッチアンテナ10”の共振周波数は4.5GHzと、5.3GHzとを有している。比較例としての非対称平面アンテナ10’の共振周波数は4.4GHzと、5.0GHzを有している。この例では、搬送周波数を60GHz以上とし、情報伝送時に全帯域を使用しようとした場合、比帯域幅が11%以上となる場合を”広帯域性を有したアンテナ”と定義している。ここに比帯域幅とは、搬送波(キャリヤ)の使用周波数をfcとし、帯域幅をfbとしたとき、(fb/fc)×100[%]で与えられる。帯域幅fbは、アンテナの反射特性曲線が例えば、S11=−5.00E+00を切る上限周波数をfhとし、下限周波数をflとしたとき、fh−flで与えられる。
図中、白抜き矢印に示すように、長方形パッチアンテナ10”の帯域A(=帯域幅fb)が非対称平面アンテナ10’の帯域Bに広がっている。この例では、長方形パッチアンテナ10”の帯域Aは、4.75−4.3=0.45GHzである。非対称平面アンテナ10’の帯域Bは、5.2−4.2=1.0GHzである。
このように、従来方式の長方形パッチアンテナ10”に比べて、改良した非対称平面アンテナ10’では共振点の移動を利用して、帯域Aから帯域Bへ広げることができ、帯域Bは帯域Aの2倍強に改善されている。つまり、長方形パッチアンテナ10”の形状を変化させれば、共振周波数を変化させることができ、その共振周波数の変化により帯域Aから帯域Bのように改善できることが見出された。そこで、本発明者はアンテナパターン3(図33)の共振周波数を変化させる多くの解析を行なった。
その解析によれば、図33に示した従来方式の長方形パッチアンテナパターンが、実際には多数の共振点を有していることがわかった。従って、その多数の共振点をうまく利用することで、所望の帯域を持つ非対称平面アンテナ10等を設計できることが明確になった。本発明の実施形態では、このことを利用して遠方界以外の動作状態において、アンテナ内に整合回路パターンを有し、かつ、比帯域幅11%以上の広帯域を有し、アンテナ周辺に配置された電子部品や機械部品等による影響を受けない程度の単一の指向性を持つ、非対称平面アンテナ10を設計するための条件を見出した。これにより、本発明の非対称平面アンテナ10の実現に至ったものである。
図7は、長方形パッチアンテナ10”及び非対称平面アンテナ10に係る反射特性の比較例を示す図である。図7に示す縦軸は、従来方式の長方形パッチアンテナ10”や本発明の非対称平面アンテナ10等の反射特性S11[dB]である。横軸は、これらのアンテナの使用周波数[GHz]である。一点鎖線は、従来方式の長方形パッチアンテナ10”の反射特性Iであり、波線は、本発明に係る非対称平面アンテナ10の反射特性IIIである。この非対称平面アンテナ10の反射特性IIIは、図33に示した従来方式の長方形パッチアンテナ10”及び図5に示した比較例としての非対称平面アンテナ10’の帯域AやB等を帯域Cに改良したものである。非対称平面アンテナ10は広帯域アンテナとして機能する。広帯域アンテナは、単一指向性を有し、かつ、広帯域性を有し、遠方界以外で動作する。
図中、従来方式の長方形パッチアンテナ10”の共振周波数は4.5GHzと、5.3GHzとを有している。本発明に係る非対称平面アンテナ10の共振周波数は3.8GHzと、5.8GHzを有している。非対称平面アンテナ10の反射特性IIIによれば、S11=−5.00E+00を切る上限周波数fhが6.0[GHz]であり、下限周波数flが3.6[GHz]であり、帯域C(=帯域幅fb)は、2.4[GHz]である。
図7の白抜き矢印に示すように、図6に示した長方形パッチアンテナ10”の帯域Aが非対称平面アンテナ10の帯域Cに改善されている。この例で、帯域Cは、図6に示した帯域Bの2.4倍に拡大され、帯域Aにあっては5.3倍に拡大されていることがわかる。このように、従来方式の長方形パッチアンテナ10”や比較例としての非対称平面アンテナ10’に比べて、本発明の非対称平面アンテナ10では共振点の移動を利用することにより、帯域幅fbを帯域Aから帯域Cへ広げることができた。このように、非対称平面アンテナ10が広帯域性を有していることがわかる。
図8〜図10は、非対称平面アンテナ10における非対称なアンテナパターン3の形成例(その1〜3)を示す工程図である。
この実施形態では、非対称なアンテナパターン3の設計(形成)方法を最適化することで、図7に示したような広帯域の反射特性を有し、かつ、より良い整合状態に改善された非対称平面アンテナ10を形成できるようになる。
まず、図8Aに示すような長手方向がλ/2を有する長方形パッチアンテナ10”を2枚準備する。各々の長方形パッチアンテナ10”は、絶縁性の基板4又は絶縁層上で給電パターン1及びアンテナパターン3”を有してT字形状をなしたものである。給電パターン1及びアンテナパターン3”は、絶縁基板上の銅箔をT字形状に残したものを使用した。もちろん、給電パターン1及びアンテナパターン3”は銅箔に限られることはなく、銅以外の金、銀、黄銅、青銅、白銅等の金属箔又は金属板、これらの金属層から形成されたものが使用できる。
次に、給電パターン1から延在するアンテナパターン3であって、図1に示したような給電パターン1を基準にして非対称な形状のアンテナパターン3を形成する。例えば、長方形パッチアンテナ10”を短冊状のブロックに分けてその短冊の面積を変化させる。これは、共振周波数を変化させる成分の追加又は減少を行なうためであり、共振周波数を変化させつつ設計項目を満足するアンテナを探索するためである。
例えば、長方形パッチアンテナ10”の列方向をm=13行に分割して短冊状のブロックに区分する。その後、図8Bに示す短冊状のブロックを、その行方向でn=8列に分割して格子状の小パッチに区分する。このm×n=104個の小パッチを左右非対称に抜いて行く方法により、共振周波数を移動するようにした(パターン探索方法)。
ここで小パッチの分割位置をpmn(m=1〜13,n=1〜8)で示す。最初に図8Bに示すm×n個の小パッチの中から、図中○印で示す位置p13〜p113の小パッチを抜くと共に、位置p83〜p86及びp88〜p813の計21個の小パッチを抜く。小パッチの抜き取りは、領域を確定してエッチング液により銅箔を溶融剥離するか又は刃物により銅箔を削り取る方法により行なう。
これにより、図9Aに示すような中途段階の非対称アンテナパターンA1(3)が得られる。この非対称アンテナパターンA1(3)の反射特性を測定する。反射特性は、同じ位置の小パッチを抜いた非対称平面アンテナを対峙させ、一方の非対称平面アンテナに任意の使用周波数(例えば、3GHz〜7GHz)の搬送波を給電し、他方の非対称平面アンテナで受信利得を測定して共振周波数が移動することを検証する方法により行なう(図11参照)。
更に、図9Aに示す非対称アンテナパターンA1(3)の83個の小パッチの中から、図中○印で示す位置p45,p46,p55,p56,p65,p66,p75,p76及びp710〜p712の計11個の小パッチの各々を上述の方法により抜き取る。これにより、図9Bに示す非対称アンテナパターンA2(3)が得られる。この非対称アンテナパターンA2(3)の反射特性を測定する。
また、図9Bに示した非対称アンテナパターンA2(3)の72個の小パッチの中から、図中○印で示す位置p54,p510,p64,p610及びp74の計5個の小パッチを各々抜く。これにより、図10Aに示す非対称アンテナパターンA3(3)が得られる。この非対称アンテナパターンA3(3)の反射特性を測定する。
更に、図10Aに示した非対称アンテナパターンの67個の小パッチの中から、図中○印で示す位置p63,p611,p73,p711及びp712の計5個の小パッチの各々を上述の方法により抜き取る。これにより、図10B、すなわち、図1に示したような非対称アンテナパターン3を有する非対称平面アンテナ10が得られる。このように、平面上において非対称平面アンテナ10を多形状にすることが可能となる。
図10Bに示す非対称平面アンテナ10は、図8Bに示したm×n=104個の小パッチの中から、所望の位置の48個の小パッチを除き、位置p11,p12,p21〜p213,p31〜p313,p41〜p44,p47〜p413,p51〜p53,p57〜p59,p511〜p513,p61,p62,p67〜p69,p612〜p613,p71,p72,p77〜p79,p613,p81,p82及びp8の計64個を残留させた非対称形状を有している。この非対称アンテナパターン3の反射(通過)特性を測定する。
図11は、非対称平面アンテナ10の透過特性(通過特性)の測定例を示す斜視図である。図11に示す非対称平面アンテナ10の透過特性の測定例によれば、図10Bに示した同じ位置の小パッチを抜いた2つの広帯域を示す非対称平面アンテナ10a,10bを面対称に対峙させる。例えば、図11に示すように本発明の2つの非対称平面アンテナ10a,10bを離隔距離dを保持して面対称となるように配置する。これは、非対称平面アンテナ10a及び10bを面対称に対向して1対のアンテナとして使用するためである。
そして、一方の非対称アンテナ10aをアンテナ測定装置9の図示しない出力端子に接続し、その出力端子から非対称平面アンテナ10aに任意の使用周波数(例えば、3GHz〜7GHz)の搬送波を給電する。他方の非対称平面アンテナ10bをアンテナ測定装置9の入力端子に接続する。アンテナ測定装置9では、アンテナ間距離dを変化させたときの他方の非対称平面アンテナ10bの受信利得を測定して共振周波数が移動し、帯域幅fcが広がることを検証する(透過特性)。上記の本発明の非対称平面アンテナの設計方法は、シミュレータ上に図8Aの形状と図11の測定環境とを構築し、順次、最適な特性を探索するアルゴリズム、例えば組み合わせ問題等を用いる方法でも実現できる。
図12は、非対称平面アンテナ10bの透過特性例を示す図である。図12に示す透過特性例によれば、アンテナ間距離を近づけた場合、通過帯域が広っており、遠ざけた場合には2つの良好な通過特性が表れ、非対称平面アンテナ10b等が狭帯域性を示すことがわかる。この例で、図12は、2つの非対称平面アンテナ10a,10bを面対称に配置してそのアンテナ間距離dを変化させたとき、非対称平面アンテナ10bの透過特性IV、Vを示している。
図12に示す縦軸は、非対称平面アンテナ10bの透過特性S21[dB]である。横軸は、これらのアンテナの使用周波数[GHz]である。実線は、一方の非対称平面アンテナ10aを固定し、対向した他方の非対称平面アンテナ10bを近距離に配置した場合の透過特性IVである。ここに近距離とは、使用周波数[GHz]にもよるがアンテナ間距離dを数十mm単位以下に設定して配置した場合をいう。波線は、一方の非対称平面アンテナ10aを固定し、対向した他方の非対称平面アンテナ10bを遠距離に配置した場合の透過特性Vである。遠距離とは、アンテナ間距離dを近距離以外に設定して配置した場合をいう。
図12において、非対称平面アンテナ10aから非対称平面アンテナ10bを遠ざけて、アンテナ間距離dを広げた場合、図11に示した反射特性Vにおける帯域Cの範囲内において、大きな凸状の垂下減衰域が生じており、通過帯域が減少していることがわかる。つまり、非対称平面アンテナ10bは、アンテナ間距離dを遠ざける(広げる)と通過帯域が変化するようになる。これが非対称平面アンテナ10bの特徴である。
この例で、非対称平面アンテナ10aから非対称平面アンテナ10bを遠ざけると、2つの透過特性に優れる帯域Aが元の広帯域内に表れ、非対称平面アンテナ10a,10bが各々の狭帯域性を示すようになる。ここにアンテナ間距離dに関して通過帯域が変化する領域を「遠方界」としたとき、通過帯域が変化しない領域を「遠方界以外」と定義する。
図13は、非対称平面アンテナ10a,10bの対向回転時の透過特性の測定例を示す図である。この測定例では、図13に示す2つの非対称平面アンテナ10a,10bを面対称に配置し、一方の、例えば、非対称平面アンテナ10aを固定すると共に、アンテナ間距離dを固定し、もう一方の非対称平面アンテナ10bを図中の原点”O”を中心にして角度0°、90°、180°と同一面内で回転したとき、当該非対称平面アンテナ10bの受信利得をアンテナ測定装置9で測定して共振周波数が移動するか、帯域幅fcが広がるかを検証した。そのときの透過特性例を図14に示している。
図14は、非対称平面アンテナ10の回転時の透過特性例を示す図である。図14に示す透過特性例において、縦軸は、非対称平面アンテナ10bの透過特性S21[dB]である。横軸は、これらのアンテナの使用周波数[GHz]である。
図14に示す実線は、一方の非対称平面アンテナ10aを角度0°に固定し、対向した他方の非対称平面アンテナ10bを近距離に配置した場合の透過特性VIである。一点鎖線は、一方の非対称平面アンテナ10aを固定し、対向した他方の非対称平面アンテナ10b’を近距離に配置し、かつ、90°回転した場合の透過特性VIIである。波線は、一方の非対称平面アンテナ10aを固定し、対向した他方の非対称平面アンテナ10b”を近距離に配置し、かつ、180°回転した場合の透過特性IXである。
図14に示した非対称平面アンテナ10の回転時の透過特性例によれば、透過特性VIに示した回転角=0°のときに最も帯域が広くなっていることがわかる。また、透過特性VIIに示した回転角=180°のときに、最も伝送可能な帯域が減少している。透過特性IXに示した回転角=90°のときも、伝送可能な帯域が減少している。
このように、2つの非対称平面アンテナ10a,10bは、これらを面対称に近接対向して配置したときに、最も広い帯域を有し、回転角度によって帯域幅が減少するという特徴を有するようになる。また、非対称平面アンテナ10a,10bが面対称に配置されていないときには、2つ狭帯域性を持つアンテナ10a,10bとして動作させることが可能となる。
このように、第1の実施例に係る電子機器100によれば、デジタルカメラ101及びホルダー102間で2つのアンテナ10a,10bや、アンテナ10c,10d、アンテナ10e,10fを1対1に近接係合することができ、デジタルカメラ101及びホルダー102間でリアルタイムに、大量の広帯域情報を送受信できるようになる。これにより、デジタルカメラ101等の携帯電子機器を充電器等のホルダー102に保持し、又は、それを充電している状態でホルダー102又は充電器側からデジタルカメラ101へ、又は、デジタルカメラ101からホルダー102又は充電器側へ、大量の広帯域情報を送信できるようになる。ホルダー102や充電器を広帯域情報のインターフェースとして利用できるようになる。
図15は、非対称平面アンテナ10を応用した第2の実施例として電子機器200の構造例を斜視図である。この実施例では、一般的な多層基板又は誘電体を金属層で挟んだ積層構造素子上に、LSI装置22を配置し、このLSI装置22が配置された多層基板又は積層構造素子を筐体内に収納し、この筐体側面に本発明のアンテナパターン3をレイアウト(配置)したアンテナ21を設ける構造を挙げている。
図15に示す電子機器200は、多層基板24上にLSI装置22を備えて信号処理基板を構成し、この信号処理基板を筐体の一例となる樹脂ケース内に収納し、この樹脂ケース側面に本発明のアンテナ21を設ける構成され、アンテナ21とLSI装置22とが伝送線路25で接続されて信号処理をするようになされる。樹脂ケース27の図示しない反対側にも、アンテナ21’が設けられ、伝送線路25を通じてLSI装置22に接続されて信号処理をするようになされる。
樹脂ケース27は、ユーザが直接、電子部品や機械部品等の機構部品に触れないようにするために設けられる。ただし、金属ケースで信号処理基板を覆う場合は、アンテナパターン3の上層を金属層で覆うことはしない。これは、アンテナパターン3の上層が金属層で覆われると電磁遮蔽(シールド)されてしまい、電波の送受信が困難となるためである。LSI装置22には内部に無線IC(半導体集積回路)を有したものが使用される。
アンテナ21には本発明に係る非対称平面アンテナ10が使用される。非対称平面アンテナ10は、絶縁層202’上に設けられた導電性の給電パターン1と、この給電パターン1から延在した導電性のアンテナ整合パターン2及びアンテナ整合パターン2から延在した導電性のアンテナパターン3を有して構成される。給電パターン1、アンテナ整合パターン2及びアンテナパターン3には、銅箔が使用される。これらのパターン1〜3には銅箔に限られることはなく、銅以外の金、銀、黄銅、青銅、白銅等の金属箔又は金属板、これらの金属層から形成されたものが使用できる。
多層基板24は、最上層に絶縁層202を有しており、その下層にはアンテナパターン3の投影面積よりも大きな面積を有したGND層23aを備え、更に、絶縁層202’の下層にもGND層23bを備えている。GND層23a及び23bは、アンテナ21が単一指向性を有するように設けられる。GND層23a及び23bは、電気的に接続される。GND層23aの下層は、一般の多層基板と同様にして、図3に示したような絶縁層204、配線層205及び絶縁層206・・・が積層されて構成される。
絶縁層202上に設けられたLSI装置22と、アンテナ21のアンテナパターン3とは伝送線路25、給電パターン1及びアンテナ整合パターン2を通じて接続される。アンテナパターン3は、給電パターン1を基準にして非対称な形状を有してなる。このような非対称平面アンテナを実装すると、周波数共振点が調整されたアンテナ反射特性を有する非対称平面アンテナを利用した筐体間で情報高速伝送処理を実現できるようになる。
続いて、電子機器200の製造方法について説明する。まず、GND層23を含む多層基板24を形成する。この例では、両面に銅箔を形成された両面銅箔基板(プリプレグ絶縁基板)や片面に銅箔を形成された片面銅箔基板を使用して、多層基板24を形成する。図3に示した多層基板4’によれば、片面銅箔基板の絶縁基板及び銅箔を利用して絶縁層202及び、伝送線路25となる配線層を形成する。例えば、伝送線路用の配線パターンを象ったマスクを使用し、銅箔上にレジストをパターニングして、露光現像し、不要部分の銅箔を除去して、絶縁層202上に図示しない所定形状の伝送線路用の配線層を得るようになされる。
また、片面銅箔基板の絶縁基板及び銅箔を利用して絶縁層204及びGND層203を形成する。例えば、接地パターンを象ったマスクを使用し、銅箔上にレジストをパターニングして、露光現像し、不要部分の銅箔を除去して、所定形状のGND層23aを得るようになされる。上述の2つの片面銅箔基板を積層することで、多層基板24を形成することができる。
次に、多層基板24上に設けるLSI装置22及び筐体側面に設けるアンテナ21を形成する。例えば、アンテナ21とLSI装置22とを別途形成して多層基板24上及び筐体側面に接着する方法を採る。アンテナ21は、両面銅箔基板を利用してGND層23b、絶縁層202’、給電パターン1、アンテナ整合パターン2及びアンテナパターン3を形成する。給電パターン1、アンテナ整合パターン2及びアンテナパターン3は、図8〜図10に示したパターン探索方法に基づいて見出された非対称形状に基づいて形成される。なお、アンテナ整合パターン2はアンテナパターン3に至る部位に同時に形成され、その形状は、アンテナパターン3と同時に探索され画定されている。
これらを条件にして、例えば、給電パターン1、アンテナ整合パターン2及びアンテナパターン3を象ったマスクを使用し、片側の銅箔上にレジストをパターニングして、露光現像し、不要部分の銅箔を除去して、図15に示すような非対称形状のアンテナパターン3を有するアンテナ21(=非対称平面アンテナ10)を得る。反対側の銅箔部分は、所定形状のGND層23bを残すようになされる。これにより、絶縁層202’上に形成された導電性の給電パターン1から延在するアンテナパターン3であって、当該給電パターン1を基準にして非対称な形状の導電性のアンテナパターン3を形成することができる。
この例では、多層基板24上にLSI装置22に設ける。LSI装置22には、当該信号処理用に予め準備された半導体チップ形状又はパッケージ形状のものが使用される。LSI装置22は、多層基板24上に接着剤を使用して物理的に接続される。LSI装置22はアンテナ入出力用のパッドを有している。このパッドと絶縁層202上の伝送線路25とを、例えば、コンタクトホールや、ビアホール、バンプ、ワイヤ等による接続方法を利用して電気的に接続(ボンディング)する。このように形成された信号処理基板を所定の収納スペースを有した樹脂ケース27に収納する。樹脂ケース27には伝送線路25の終端電極部をケース側面のアンテナ取付位置に形成するようになされる。
次に、アンテナ21を樹脂ケース27の所定の位置に、例えば、接着剤を使用して接続される。このとき、アンテナパターン3と伝送線路25の終端電極部とを電気的に接続する。例えば、アンテナ21の給電パターン1と終端電極部とをコンタクトホールや、ビアホールを介して接続する。コンタクトホールや、ビアホール等の内部には、例えば、導電材料を充填して熱処理するようになされる。これにより、樹脂ケース内の多層基板24の一方の面に信号処理用のLSI装置22を備え、及び樹脂ケース側面に本発明のアンテナ21を配置した電子機器200を形成できるようになる。
このように、第2の実施例としての電子機器200によれば、アンテナ21とLSI装置22とを伝送線路25により接続して信号処理をする場合に、アンテナ21には、非対称平面アンテナ10が応用される。このような構成の電子機器200を2台準備し、2台の電子機器200間又は図1に示したホルダー102と近接対向させて広帯域無線通信を実行するものである。
従って、電子機器200と他の電子機器200の間で2つのアンテナ21,21を1対1に近接係合することができ、電子機器200と他の電子機器200の間でリアルタイムに、大量の広帯域情報を送受信できるようになる。これにより、電子機器間の信号配線の引き回し工程から開放されるばかりか、電子機器間で広帯域情報を高速伝送できるようになる。
図16は、第3の実施例としての電子機器300の構成例を示す断面図である。この実施例では、第2の実施例の電子機器200と異なり、非対称平面アンテナ10を電子機器300の金属保護筐体を利用して形成するようにしたものである。
図16に示す電子機器300は、金属保護容器の一例を構成する本体金属ケース30を有しており、アンテナ31の接地層(GND層)を兼用するようになされる。アンテナ31には非対称平面アンテナ10が応用される。電子機器300は、デジタルカメラ101やホルダー102等に適用される。この例では、図16に示した電子機器300を正面方向から見た断面図において、本体金属ケース30をGND層203として兼用すると共に、その本体金属ケース30の所定部位上(次の層)に第1の絶縁層202(誘電体層)を配置(積層)し、更にその絶縁層202の次の層にアンテナパターン3を配置(積層)して、更に次の層に第2の絶縁層201(誘電体層)を配置(積層;被覆)したものである。
絶縁層201(誘電体層)には、空気や、電波吸収体、ABC樹脂、一般的な基板材料(FR−4)、ガラスコーティング部材(PPO)、テフロン(登録商標)樹脂、化合物半導体、シリコン等を使用するようになされる。絶縁層202(誘電体層)には、空気を除く上述の絶縁材料が使用できる。
図示しない給電パターン1と、本体金属ケース内の信号処理基板とは、当該本体金属ケース30及び絶縁層202を開口して形成されたコンタクトホール(図示せず)を介して接続される。アンテナパターン3は、絶縁層201と絶縁層202との間に挟まれたアンテナ描画層31’に形成される。ここに形成された非対称平面アンテナ10がアンテナ31である。この構造によって、本体金属ケース30をGND層203とした非対称平面アンテナ10を提供できるようになる。
図17A〜Cは、電子機器300におけるアンテナ31の形成例を示す工程図である。
この実施例では、金属保護容器の一例を構成する所定形状の本体金属ケース30が予め準備される。この本体金属ケース30には、伝送線路接続用の開口部(コンタクトホールとなる)が形成される。
これを形成条件にして、図17Aにおいて、本体金属ケース30をGND層203として兼用するために、当該本体金属ケース30の所定部位上に絶縁層202(誘電体層)を積層する。例えば、絶縁層202として膜厚数十μm程度のテフロン(登録商標)樹脂を所定の加工装置を使用して形成する。その後、アンテナパターン描画位置であって、給電パターン1が形成される位置に伝送線路接続用の開口部32を形成する。開口部32は、本体金属ケース30と絶縁層202とを貫通するように形成される。好ましくは、本体金属ケース30の開口部32は絶縁層202の開口部32よりも大きな口径で開口される。給電パターン1から伝送線路に至るアンテナ配線33と本体金属ケース30との絶縁性を向上させる、及びアンテナ配線33と本体金属ケース30との間の静電容量を低減するためである。
次に、図17Bにおいて、絶縁層202の上層(次層)にアンテナパターン3を描画するためのアンテナ描画層31’を形成する。例えば、金、銀、銅、黄銅、青銅、白銅等の金属箔又は金属板を貼り付ける。アンテナ描画層31’の膜厚は数十μm程度である。次に、これらにエッチングにより型抜き加工を施す。例えば、給電パターン1、アンテナ整合パターン2及びアンテナパターン3を象ったマスクを使用し、絶縁層202上の例えば銅層(膜)上にレジストをパターニングして、露光現像し、不要部分の銅を除去して、図15に示すような非対称形状のアンテナパターン3を得る。これにより、絶縁層202上にアンテナパターン3を有するアンテナ31(=非対称平面アンテナ10)を形成することができる。
次に、図17Cにおいて、アンテナパターン3が描画されたアンテナ描画層31’上に絶縁層201(誘電体層)を積層する。例えば、絶縁層202として膜厚数十μm程度のテフロン(登録商標)樹脂を所定の加工装置を使用して形成する。これにより、図16に示したような本体金属ケース30をGND層203とした非対称平面アンテナ10を形成できるようになる。
このように、第3の実施例としての電子機器300によれば、本体金属ケース30をGND層203として兼用すると共に、その本体金属ケース30の所定部位上(次の層)に絶縁層202(誘電体層)を配置(積層)し、更にその絶縁層202の次の層にアンテナパターン3を配置(積層)して、更に次の層に絶縁層201(誘電体層)を配置(積層;被覆)したものである。
このような構成の電子機器300を例えば、2台準備し、この2台の電子機器300間又は1台の電子機器300と図1に示したホルダー102とを近接対向させて広帯域無線通信を実行できるようになる。従って、電子機器300と他の電子機器300の間で2つのアンテナ31,31を1対1に近接係合することができ、電子機器300と他の電子機器300の間でリアルタイムに、大量の広帯域情報を送受信できるようになる。これにより、第2の実施例と同様にして電子機器間の信号配線の引き回し工程から開放されるばかりか、電子機器間で広帯域情報を高速伝送できるようになる。
上述の例では、アンテナパターン3が樹脂等の誘電体素材を用いて隠蔽される場合を示したが、これに限られることはなく、アンテナ31が配置されている部分を肉眼で見えるようにしてもよい。例えば、図16に示した絶縁層201(誘電体層)とアンテナパターン3とに光透過性の物質を用いると、金属保護容器等のいわゆる金属色の電子機器筐体が直接見えるようなデザインを施すことも可能となる。換言すると、アンテナパターン3の存在を感じさせない構造とすることができる。
続いて、他の電子機器における非対称平面アンテナ10の配置例(場所)について説明する。図18A〜Cは、第4の実施例としての電子機器400の構成例を示す正面図及びX1−X1,X2−X2の矢視断面図である。
図18Aに示すデジタルカメラ104は電子機器400を構成し、液晶表示ディスプレイ16を有しており、図1に示したホルダー102や後述する充電器等と組み合わせて使用可能なものである。この例では、液晶表示ディスプレイ16の表示面と直交する面にアンテナ41が配置される。アンテナ41には非対称平面アンテナ10が応用される。
例えば、図18Bに示す本体ケース内の液晶表示ディスプレイ16の後方にアンテナ41が配置される。アンテナ41は、図示しない充電器等のアンテナ81と近接対向させて広帯域無線通信及び狭帯域無線通信ができるようになされている(図22参照)。
また、図18Cに示すデジタルカメラ104の本体ケース12の底面には、第1の実施例で説明したような非対称平面アンテナ10aが配置される。この非対称平面アンテナ10aは、図1に示したデジタルカメラ101の天板面に配置された非対称平面アンテナ10iと1対1、又は、図1に示したホルダー102の非対称平面アンテナ10bに近接対向させて広帯域無線通信ができるようになされている。
これらの非対称平面アンテナ10a〜10iや、アンテナ21,31,41等は平面に設置したものを示しているが、これらに限られることはなく、アンテナパターン3が凸凹状に盛り上がった立体構造をなすものであっても適用できる。非対称平面アンテナ10a〜10iや、アンテナ21,31,41等は、上述した場所の他にデジタルカメラ101、ホルダー102等の電子機器の本体ケースの側面部(曲面を含む)や液晶表示面、ボタンスイッチの裏側、ヒンジ部、カバー部等に配置できるものである。
このように、第4の実施例としての電子機器400によれば、デジタルカメラ104の液晶表示ディスプレイ16の表示面と直交する面や、その本体ケース12の底面に非対称平面アンテナ10をなすアンテナ41が配置される。このような構成のデジタルカメラ104を2台準備し、2台のデジタルカメラ104を近接対向させ、又は、1台のデジタルカメラ104を図1に示したホルダー102と近接対向させて広帯域無線通信を実行できるようになる。
従って、デジタルカメラ104と他のデジタルカメラ104との間で2つのアンテナパターン41,41を1対1に近接係合することができ、デジタルカメラ104と他のデジタルカメラ104との間でリアルタイムに、大量の広帯域情報を送受信できるようになる。これにより、第2及び3の実施例と同様にして電子機器間の信号配線の引き回し工程から開放されるばかりか、電子機器間で広帯域情報を高速伝送できるようになる。
図19A〜Cは、第5の実施例としての電子機器500の構成例を示す正面図、拡大図及び断面図である。この実施例では、アンテナ描画層31’に光透過性の物質を用いると共に、平面表示素子を構成する表示層の中に透明電極を用いたアンテナパターン層を形成する場合を示している。
図19Aに示すデジタルカメラ105は電子機器500を構成し、平面表示素子の一例となる液晶表示ディスプレイ16を有している。液晶表示ディスプレイ16は表示枠16aを有しており、後述するICカードや、携帯電話機、ホルダー102、充電器等と組み合わせて使用可能なものである。この例では、液晶表示ディスプレイ16の表示面と平行する面にアンテナ51が配置される。アンテナ51には非対称平面アンテナ10が応用される。
例えば、図19Bに示す液晶表示ディスプレイ16の表示面右下方にアンテナ51が配置される。アンテナ51は、図示しない携帯電話機等のアンテナ91と近接対向させて広帯域無線通信及び狭帯域無線通信ができるようになされている。
この例でデジタルカメラ105は、液晶表示ディスプレイ16の液晶基板や配線層等の金属層16bが接地層(GDN層203)を兼用するものである。例えば、図19Cに示す液晶表示ディスプレイ16の金属層16b上の所定部位には絶縁層202が積層され、この絶縁層202上には透明電極を用いたアンテナパターン3が積層される。このアンテナパターン3を含む絶縁層202上には絶縁層201が積層される。このように非対称平面アンテナ10をなすアンテナ51を構成すると、アンテナパターン3の前後を絶縁層201,202(誘電体層)で挟み、そのアンテナパターン3の下部のユーザが見る側と反対の金属層16bをGND層203とする構造を提供できるようになる。
電子機器500は、デジタルカメラ105に限られることはなく、平面表示素子そのものであってもよい。例えば、電子機器500が有機ディスプレイ(EL)装置や、プラズマディスプレイ(PDP)装置等であって、これらの平面表示素子の表示面の所定の位置に非対称平面アンテナ10をなすアンテナ51が配置される。アンテナ51は、図示しない他の電子機器等の非対称平面アンテナ10と近接対向させて広帯域無線通信及び狭帯域無線通信ができるようになされる。
このように、第5の実施例としての電子機器500によれば、デジタルカメラ105には、アンテナ描画層31’に光透過性の物質が用いられると共に、その液晶表示ディスプレイ16の表示画面の中に透明電極を用いたアンテナパターン3を形成した非対称平面アンテナ10をなすアンテナ51が備えられるものである。
このように構成したデジタルカメラ105を2台準備し、2台のデジタルカメラ105を間又は図1に示したホルダー102と近接対向させて広帯域無線通信を実行できるようになる。従って、デジタルカメラ105と他のデジタルカメラ105の間で2つのアンテナパターン51,51を1対1に近接係合することができ、デジタルカメラ105と他のデジタルカメラ105の間でリアルタイムに、大量の広帯域情報を送受信できるようになる。これにより、第2〜第4の実施例と同様にして電子機器間の信号配線の引き回し工程から開放されるばかりか、電子機器間で広帯域情報を高速伝送できるようになる。
図20は、第6の実施例としての電子機器600の構成例を示す斜視図である。図20に示す電子機器600は、ノート型のパーソナルコンピュータ(以下でパソコン106という)を構成し、パソコン本体62及びモニタ66を有している。パソコン本体62にはキーボード63が設けられる。
パソコン本体62は、上部ケース62a及び下部ケース62bから構成され、上部ケース62a及び下部ケース62bにアンテナ61a〜61dが配置される。アンテナ61a〜61dには非対称平面アンテナ10が応用される。例えば、アンテナ61aは上部ケース62aのモニタ66の左下隅に配置され、アンテナ61bはそのモニタ外枠の右上隅に配置される。
また、アンテナ61cは、キーボード63の左角部に配置され、アンテナ61dは、下部ケース62bの底面に配置される。これらのアンテナ61a〜61dは、他のパソコン106のアンテナ61a〜61d又は、他の電子機器である携帯電話機、ICカード、デジタルカメラ等のアンテナと1対1に向かい合わせる。例えば、上部ケース62aと下部ケース62bとを閉じた状態で2台のパソコン106を重ね合わせる。これにより、2台のパソコン106間で広帯域情報や狭帯域情報等を無線通信できるようになる。
このように、第6の実施例としての電子機器600によれば、パソコン106には、上部ケース62aや下部ケース62bに非対称平面アンテナ10をなすアンテナ61a〜61dが備えられるものである。
このような構成のパソコン106を2台準備し、2台のパソコン106間又は図示しない携帯電話機や、ICカード、デジタルカメラと近接対向させて広帯域無線通信を実行できるようになる。従って、パソコン106と他のパソコン106の間で2つのアンテナパターン61b,61dを1対1に近接係合することができ、パソコン106と他のパソコン106の間でリアルタイムに、大量の広帯域情報を送受信できるようになる。これにより、第2乃至第5の実施例と同様にして電子機器間の信号配線の引き回し工程から開放されるばかりか、電子機器間で広帯域情報を高速伝送できるようになる。
図21A及びBは、第7の実施例としての電子機器700の構成例を示す斜視図である。
図21Aに示す電子機器700は、例えば、セットボックス701(据え置き型装置)と、ICカード702を備えて構成される。セットボックス701は、電子機器の一例を構成するものである。セットボックス701はゲーム機や、通信モデムを構成するものであり、本体ケース72を有している。
本体ケース72には、アンテナ71a〜71d(71c、71dは図示せず)が配置される。アンテナ71a〜71dには非対称平面アンテナ10が応用される。例えば、アンテナ71aは本体ケース72の前面の左下部に配置され、アンテナ71bはその右上部に配置される。他のアンテナ71c及び71dは、本体ケース72の背面の所定の位置に配置される。
図21Bに示すICカード702は、カード本体73及びICチップ74を有している。カード本体73の例えば、前面の左下部にはアンテナ71eが配置され、その右上部にはアンテナ71fが配置される。アンテナ71e及び71fには非対称平面アンテナ10が応用される。ICカード702は、例えば、セットボックス701と組み合わせて使用される。もちろん、これに限られない。
セットボックス701のアンテナ71a〜71dは、ICカード702のアンテナ71e、71f又は携帯電話機、デジタルカメラ等のアンテナと1対1に向かい合わされ、セットボックス701及びICカード702間で広帯域情報や狭帯域情報等を無線通信できるようになる。
このように、第7の実施例としての電子機器700によれば、ICカード702等の携帯しやすい電子機器と、据え置き型のセットボックス701とに、非対称平面アンテナ10をなすアンテナ71a〜71dや、アンテナ71e〜71fを備えられるものである。
このような構成の電子機器700を複数台準備し、複数のセットボックス701と、複数のICカード702等とを近接対向させて広帯域無線通信を実行できるようになる。従って、セットボックス701とICカード702の間で、例えば、2つのアンテナ71a及び71eを1対1に近接係合することができ、セットボックス701とICカード702の間でリアルタイムに、大量の広帯域情報を送受信できるようになる。これにより、第2〜第6の実施例と同様にして電子機器間の信号配線の引き回し工程から開放されるばかりか、電子機器間で広帯域情報を高速伝送できるようになる。
図22は、第8の実施例としての電子機器800の構成例を示す斜視図である。この実施例では、デジタルカメラ108及び充電器109を備え、これら両者の所定の位置には、第1のアンテナ81aの指向性パターンと第2のアンテナ81bの指向性パターンとを整合させるための位置合わせ用のマーク82(標識)が設けられる。これらのデジタルカメラ108及び充電器109の間で大量の広帯域情報を送受信できるようになされる。
図22に示す電子機器800は、デジタルカメラ108及び充電器109を有して構成される。デジタルカメラ108には、その底面にアンテナ81aが配置される。充電器109はデジタルカメラ108に内蔵される電池を充電するものであり、この例では、広帯域情報のインターフェースとしても使用される。充電用の端子は省略している。充電器109には、装着機構86(機械機構)が設けられる。装着機構86は凹状部を有しており、この凹状部がガイドレール等のケースガイド部87をなしている。
ケースガイド部87は、位置合わせマークを兼ねており、ケースガイド部87には、デジタルカメラ108の側面が位置合わせされて装着される。充電器109には、そのケースガイド部87の内側底部にアンテナ81bが配置される。アンテナ81a,81bには非対称平面アンテナ10が応用される。装着機構86は、アンテナ81a,81bの対向位置を自動整合するようになされる。
デジタルカメラ108の側面には、位置合わせを容易にするために、位置合わせ用のマーク82が設けられている。マーク82は、例えば、下向き矢印をなし、充電器109のケースガイド部87の中にあるアンテナ81bの向きを指示するようになされる。このマーク82によって、アンテナ81a,81bが最も効率良く使用できる状態(向き)にセットできるようになる。
装着機構86では、デジタルカメラ108を矢印の方向にスライドしてケースガイド部87に装着すると、図示しない充電用の端子がデジタルカメラ108の底面に配置された電源用の端子に接続するようになされる。これと共に、アンテナ81a及び81bが最も効率良く使用できる状態(向き)にセットできるようになる。このように、デジタルカメラ108と充電器109とに位置合わせ用のマークを施すことで、デジタルカメラ108や携帯電話機等の電子機器800を持つユーザ同士、又は、これらの電子機器800と充電器109等の間において効率良くアンテナ81a,81bとを接続できる向きに合わせることができる。
図23は、デジタルカメラ108における装着確認用のアイコン83の表示例を示す図である。
この例でデジタルカメラ108又は充電器109に光や音等を発する報知手段が設けられ、充電器109の装着機構86にデジタルカメラ108が装着されたことを報知するようになされる。この報知手段によって、アンテナ81a,81bが最も効率良く使用できる状態にセットされたことを光、音等の人間の感覚にて確認できるようになる。
図23に示すデジタルカメラ108のモニタ16には、装着確認用のアイコン83が表示される。アイコン83は、カメラ本体を充電器109に装着したときに表示される。アイコン83は、例えば、3本のバー(棒)の絵を表示して報知するようになされる。この例では、アンテナ81a、81bを通じて伝送されるデータの伝送速度に基づいてバーの絵が変化する。データ伝送速度が「高速」状態である場合、例えば、10Gbpsを越える超広帯域情報である場合は、最長のバーが表示される。データ伝送速度が「中速」状態である場合、例えば、1乃至10Gbpsの広帯域情報である場合は中間長のバーが表示される。データ伝送速度が「低速」状態である場合、例えば、1Gbpsに満たない狭帯域情報である場合は、最小のバーが表示される。これにより、バーの長さでアンテナ81a、81bが送受信しているデータの伝送速度を目視確認できるようになる。
装着確認用の手段は、アイコン83に限られることはなく、例えば、本体ケース12の左上部(モニタの角部位)にLED84(発光素子)を取り付けて、これを光らせてもよい。このようなLED84を設けると、デジタルカメラ108と充電器109や、又は、非対称平面アンテナ付きの携帯電話機やICカード等の電子機器を持つユーザ同士がうまくアンテナ81a,81bの向きが整合されているかを確認できるようになる。
また、通信種別を色別にLED表示するようにしてもよい。例えば、電子機器間で広帯域無線通信を実行している場合は、例えば、赤色表示するようにLED84を表示制御し、電子機器間で狭帯域無線通信を実行している場合は、例えば、緑色表示するようにLED84を表示制御するようにしてもよい。LED発光用の電子回路は、デジタルカメラ108又は充電器109に備えることで対処できる。これにより、LED光を使った装着確認機構を提供できるようになる。
電子機器と充電器等が又は電子機器を持つユーザ同士がうまくアンテナの向きを合わせられているかを確認できる信号をケーブル等を通して外部出力できる電子回路を持っていることもある。上述の装着確認用の手段の取付位置は、デジタルカメラ108や充電器109に限られない。例えば、デジタルカメラ108又は充電器109に外部引出用の通信線(通信ケーブル)を接続し、この通信線に外部機器を接続し、この充電器109の装着機構86にデジタルカメラ108が装着されたことを示す信号を当該外部機器に出力するようにしてもよい。このように構成すると、通信線に接続された外部機器によって、アンテナ81a,81bが最も効率良く使用できる状態にセットされたことを確認できるようになる。
このように、第8の実施例としての電子機器800によれば、デジタルカメラ108及び充電器109を備え、これら両者の所定の位置には、アンテナ81aの指向性パターンとアンテナ81bの指向性パターンとを整合させるための位置合わせ用のマーク82が設けられる。装着機構86では、デジタルカメラ108を矢印の方向にスライドしてケースガイド部87に装着するようになされる。
従って、デジタルカメラ108や携帯電話機等の電子機器800を持つユーザ同士、又は、これらの電子機器800と充電器109等の間において効率よくアンテナ81a,81bとを接続できる向きに合わせることができる。また、充電用の端子がデジタルカメラ108の底面に配置された電源用の端子に接続される。これらのデジタルカメラ108及び充電器109の間でリアルタイムに大量の広帯域情報を送受信できるようになされる。
これにより、第2〜第7の実施例と同様にして電子機器間の信号配線の引き回し工程から開放されるばかりか、電子機器間で広帯域情報を高速伝送できるようになる。
図24は、第9の実施例としての電子機器システム900の構成例を示す斜視図である。電子機器システム900では、複数の携帯電話機が相互に遠距離にて、アンテナの狭帯域性を利用した通信が行なわれる。この実施例では、非対称平面アンテナ1を設けた複数の携帯電話機を備え、携帯電話機間で狭帯域無線通信を行えるようにすると共に、2台の携帯電話機間で広帯域無線通信を行えるようにしたシステムを提供する。
図24に示す電子機器システム900では、例えば、各々のユーザが1台づつ所持する計4台の携帯電話機#1〜#4が備えられる。携帯電話機#1は第1の電子機器の一例を構成し、その操作面側にはアンテナ91aが設けられる。携帯電話機#1の背面にはアンテナ91bが設けられる。もちろん、背面用のアンテナ91b(アンテナ91aと面対称)を携帯電話機#1のモニタ96の側、すなわち、アンテナ91aの配置側でそれと並べて配置してもよい。
広帯域無線通信時、携帯電話機#1のモニタ96の側と、携帯電話機#2のモニタ96の側とを重ね合わせることができる。この例では、広帯域無線通信時、携帯電話機#1のモニタ96の側と、携帯電話機#2の背面側とを重ね合わせる場合を例に挙げる。アンテナ91a及び91bは、11%以上の比帯域幅を有し、かつ、広帯域性を有している。携帯電話機#2は第2の電子機器の一例を構成し、その操作面側にはアンテナ91cが設けられる。携帯電話機#2の背面にはアンテナ91dが設けられる。アンテナ91c及び91dは、11%以上の比帯域幅を有し、かつ、広帯域性を有している。
他の携帯電話機#3及び#4も、第1又は第2の電子機器を構成する。携帯電話機#1〜携帯電話機#4は、携帯型の通信装置を構成するものである。携帯電話機#3の操作面側にはアンテナ91eが設けられ、その背面にはアンテナ91fが設けられる。携帯電話機#4の操作面側にはアンテナ91gが設けられ、その背面にはアンテナ91hが設けられる。アンテナ91e〜91hも、11%以上の比帯域幅を有し、かつ、広帯域性を有している。いずれのアンテナ91a〜アンテナ91hも、絶縁性の基板又は絶縁層上に設けられた導電性の給電パターン1と、給電パターン1から延在した導電性のアンテナパターン3とを備え、アンテナパターン3は、給電パターン1を基準にして非対称な形状を有してなる。アンテナ91a〜91hには非対称平面アンテナ10が応用される(図2参照)。
ここで、非対称平面アンテナ1を設けた例えば、4台の携帯電話機#1〜#4の1つ目の使用例について説明する。2台の携帯電話機の近接対向させない使用方法、例えば、携帯電話機#1のアンテナ91aと、アンテナ91bを除く、他の携帯電話機#2〜携帯電話機#4のアンテナ91c〜91hを1対多、又は、携帯電話機#1〜携帯電話機#4のアンテナ91a〜91hと、携帯電話機#1〜携帯電話機#4のアンテナ91a〜91hとを多対多で結び、携帯電話機#1、携帯電話機#2、携帯電話機#3又は携帯電話機#4間にて狭帯域の情報(以下狭帯域情報という)を伝送を行なうことができる。
狭帯域情報には、制御信号、RF信号の同期処理に必要な情報、又は伝送帯域が狭くても信号処理に有意になる情報であって、無線による放送型式で伝送(配信)することが利点になる情報が含まれる。例えば、狭帯域情報には、携帯電話機#1等の認証や携帯電話機間を同期させて動作させるための情報及び制御信号が含まれる。
このように、狭帯域無線通信では、携帯電話機#1〜#4のアンテナ91a〜91hの狭帯域性を利用して、狭帯域にて伝送することが可能な制御信号、RF信号の同期に必要な情報、暗号鍵情報などの伝送帯域が狭くてもよい情報を伝送する。これにより、少し離れたユーザの間で、又は、4名のユーザの携帯電話機#1〜#4の間において、狭帯域情報の交換ができ、携帯電話機#1〜#4間を連携させた使い方をすることができる。
図25A及びBは、広帯域無線通信時の携帯電話機#1及び#2の取扱例を示す正面図である。この実施例では、非対称平面アンテナ10を設けた、2台の携帯電話機#1、#2の2つ目の使用例について説明する。この例では、図25Aに示した携帯電話機#1及び#2を図25Bに示すように非常に接近させて使用する点で、図24に示した携帯電話機#1及び#2と異なっている。
この例では、図25Aに示した2台の携帯電話機を接近させて、例えば、図25Bに示す携帯電話機#1及び携帯電話機#2のアンテナ91aとアンテナ91d、又は、アンテナ91bとアンテナ91cとを近接対向させる。この例では、携帯電話機#1のモニタ96の側と、携帯電話機#2の背面側とが重ね合わされる。この重ね合わせで、広帯域の通信が確立され、当該2台の携帯電話機#1及び携帯電話機#2間で多量な情報を交換することが可能な無線通信処理を実行する。これにより、多量に広帯域情報を交換する範囲を、ある狭い領域に限定するような無線通信を実行できるようになる。狭帯域無線通信時には、4台の携帯電話機#1〜#4を適当な距離を置いた状態で、無線通信処理をする状態と異なっている。
この例で、携帯電話機#1等は、無線通信処理をする際に、例えば、携帯電話機#2との間の離隔距離を測定する。ここで、測定された離隔距離の結果情報に基づいて当該携帯電話機#1と携帯電話機#2との間が遠い、又は、当該携帯電話機#1と携帯電話機#2との間が近いかを判別する。この判別された結果に基づいて当該携帯電話機#1と携帯電話機#2との間で広帯域無線通信(広帯域無線通信)又は狭帯域無線通信(狭帯域無線通信)を実行する。これにより、アンテナ91a,91bの向きの指示方法を適時選択できるようになる。
携帯電話機#1や、携帯電話機#2等は、広帯域無線通信によって送受信される広帯域情報に関して秘密鍵暗号通信の有無を判別する。この判別の結果に基づいて秘密鍵データ通信又は公開鍵データ通信を実行する。このように構成すると、近接対向時、それぞれの携帯電話機#1や、携帯電話機#2等のアンテナ91aとアンテナ91d、又は、アンテナ91bとアンテナ91cとを1対1で結ぶことにより、その繋がりを複数回介して携帯電話機#1と携帯電話機#2との間において、リアルタイムに広帯域の情報(以下広帯域情報という)を伝送を行なうことができる。広帯域情報には、その情報量が多量であり、小さな量にして送ることが難しく、リアルタイム性が要求される信号、例えば、映像情報や音声情報等のデータ、コンピュータ画像情報を一括したマルチメディア情報等が含まれる。
図26は、携帯電話機#1内のLSI装置92及びその周辺回路の構成例を示すブロック図である。図26に示す携帯電話機#1は、信号処理用のLSI装置92、モニタ96、共用器901(アンテナスイッチ等)、CPU905、メモリ906及び操作部908を有して構成される。
操作部908は、無線通信処理時に、送信モードや受信モードを設定するように操作される。操作部908には、図示せずも、数字「0」〜「9」、「*」や、「#」等のテンキーや各種設定ボタンが備えられる。送信モードや受信モードを設定するとCPU905に操作データDを出力するようになされる。
CPU905は、無線通信処理時、送信モードや受信モードに基づいて情報処理をするようになされる。例えば、CPU905は、無線通信処理をする際に、携帯電話機#2との間の離隔距離を図示しない測定手段により測定する。ここで、測定された離隔距離の結果情報に基づいて当該携帯電話機#1と携帯電話機#2との間が遠い、又は、当該携帯電話機#1と携帯電話機#2との間が近いかを判別する。この判別された結果に基づいて当該携帯電話機#1と携帯電話機#2との間で広帯域無線通信又は狭帯域無線通信を実行する。
LSI装置92は、通信部902、位相同期発振部903、信号処理部904及びI/Oインターフェース907を有しており、これらの集積回路が同一半導体基板上に1チップ化されている。LSI装置92は共用器901に接続される。共用器901は3端子T1〜T3を有しており、端子T1にはアンテナ91aが接続される。アンテナ91aには非対称平面アンテナ10が応用される。アンテナ91aは広帯域性を利用して隣接する、例えば、携帯電話機#2のアンテナ91dとの間で広帯域情報の無線通信処理を実行する。
通信部902は、変調部93、復調部94及びクロックデータ再生部95を有している。
通信部902には、信号処理部904が接続され、信号処理部904で処理されたデータが通信部902にて無線伝送に必要な処理を施される。信号処理部904は、I/Oインターフェース907を介して不図示の内部機器に接続される。
I/Oインターフェース907(入出力I/F部)は、内部機器の配線を使用して転送されている信号を入力する部分である。I/Oインターフェース907と内部機器とを結ぶ有線部は、通常のシリアルデータ又はパラレルデータで通信を行なっている。有線通信方式には、例えばシリアルATA(Advanced Technology Attachment)、USB、PCI EXPRESSやパラレルATA等が採用される。
この例で、信号処理部904は、情報送信時、例えば、内部機器から入力した映像信号や音声信号等の入力データDinを信号処理し、広帯域信号と狭帯域信号とを通信部902に出力する。信号処理部904はローカルCPUやマイコン等により構成される。図中において、矢印太線は広帯域信号を示し、矢印波線は狭帯域信号を示している。
通信部902は、図示しない信号多重部を有しており、広帯域信号と狭帯域信号とを重畳(多重)して送信信号を出力する。更に、通信部902は変調部93を有しており、所定の変調形式により送信信号を変調し、所定の周波数の搬送波に基づいて変調信号を送出するようになされる。無線伝送に用いる変調方式は、特に明記しないがASK変調や、PSK変調、OFDM変調、UWB変調等である。変調部93は上述した共用器901の端子T2に接続される。
上述の共用器901の端子T3には通信部902の復調部94及びクロックデータ再生部95が接続される。クロックデータ再生部95では、情報受信時に、所定の周波数の搬送波に基づいて搬送されてくる変調信号からクロックデータを再生する。クロックデータ再生部95には、位相同期発振部903が接続され、クロックデータの位相を検出し、このクロックデータに同期したクロック信号CLKを発振する。クロック信号CLKは、変調部93、復調部94、クロックデータ再生部95及び信号処理部904に出力される。位相同期発振部903は信号処理部904に接続される。
一方、復調部94では、情報受信時に、所定の周波数の搬送波に基づいて搬送されてくる変調信号を入力して、所定の復調形式により受信信号を復調するようになされる。無線伝送に用いる復調方式は、ASK復調や、PSK復調、OFDM復調、UWB復調等である。
通信部902には、図示しない信号分離部が設けられ、受信信号から広帯域信号(広帯域情報)と狭帯域信号(制御情報)とを分離するようになされる。広帯域信号と狭帯域信号は、通信部902から信号処理部904へ出力される。信号処理部904では、狭帯域信号(制御情報)に基づいて広帯域信号(広帯域情報)を、例えば、フィルタ処理等をして映像信号や音声信号等を内部機器や、I/Oインターフェース907を通じてメモリ906等に出力する。
信号処理部904にはメモリ906が接続され、制御情報や、映像情報号、音声情報等を一時記憶するようになされる。メモリ906にはハードディスク装置、光磁気記録ディスク装置、光記録ディスク装置、テープ記録装置等が使用される。これらの記憶装置は半導体メモリよりも大容量であり、所定の読込み書込み速度を有した機器が使用される。
CPU905は情報判別部の一例を構成し、情報受信時に、広帯域無線通信によって受信される広帯域情報の信号処理要否を、狭帯域無線通信によって受信される狭帯域情報及び当該広帯域情報に付加された付加情報に基づいて判別する。CPU905にはメモリ906(記憶装置)が接続され、信号処理要と判別された広帯域情報を記憶するようになされる。
なお、上述のI/Oインターフェース907にはモニタ96が接続され、図23に示したようなアイコンが表示される。例えば、3本のバーの絵を表示して報知するようになされる。アンテナ91a、91dの整合具合によって、携帯電話機#1と携帯電話機#2とが電波強度=「強」状態で整合している場合は、最長のバーが表示される。中間状態で整合している場合は、中間長のバーが表示される。「弱」状態で整合している場合は、最小のバーが表示される。これにより、バーの長さで携帯電話機#1のアンテナ91aと、携帯電話機#2のアンテナ91dの整合具合を目視確認できるようになる。
続いて、本発明に係る通信方法について説明する。図27A〜Hは、広帯域情報D11の処理例を示す遷移図である。図27Aに示す広帯域情報D11は、本発明に係る電子機器100〜800や、携帯電話機#1〜#4等で取り扱われ、信号処理前に、図27Bに示すようなブロック単位に分割される。広帯域情報D11は、リアルタイム性が要求される映像情報や音声情報等であって、携帯電話機#1等のLSI装置92に直接入力されるものである。携帯電話機#1ではCPU905が広帯域情報D11をブロック単位に分割して有意広帯域情報D12となされる。
図27Cに示すID情報D13(付加情報)は、図27Bに示したブロック単位に分割された有意広帯域情報D12に付加するようになされる。ID情報D13は、有意広帯域情報D12を情報処理させる携帯電話機#1等(LSI装置92等)を指定する制御情報である。制御情報には、LSI装置92又はCPU905等で信号処理要否を判別するためのフラグ情報が含まれる。例えば、フラグ情報=1で信号処理「要」を示し、フラグ情報=0で信号処理「否」を示す。CPU905は当該ブロック単位に分割した有意広帯域情報D12の先頭にID情報D13を合成(結合)する。
この例で、有意広帯域情報ブロックのデータD14のフレーム構成は、図27Dに示すような付加情報IDを付与された有意広帯域情報フレームとなる。有意広帯域情報ブロックのデータD14は、有意広帯域情報D12にID情報D13が合成されて形成される。有意広帯域情報ブロックは、LSI装置92にて一括して情報処理を行なう必要のあるデータ単位である。ID情報D13は、信号処理中、有意広帯域情報D12の先頭に合成されて管理される。図27Eに示すID情報付きの有意広帯域情報ブロックのデータD14’は、信号処理が終了した場合に、メモリ906に転送され格納される。信号処理終了後のデータD14’は、例えば、携帯電話機#2へ転送される場合がある。
図27Fに示すID情報D13’は、信号処理終了後の有意広帯域情報ブロックのデータD14’から分離するようになされる。ID情報D13’は、携帯電話機#1でCPU905が信号処理部904を制御することで、データD14’から分離される。図27Gに示す有意広帯域情報D12’は、データD14’からID情報D13’を分離すると得られる。
ID情報分離後の有意広帯域情報D12’は、CPU905の制御を受けた信号処理部904により、リアルタイム性を保証した情報に変換するようになされる。図27Hに示す広帯域情報D11’は、リアルタイム性を保証したものである。信号処理部904では、例えば、有意広帯域情報D12’を映像情報や音声情報等の広帯域情報D11’に変換するようになされる。これにより、LSI装置92で有意広帯域情報D12を処理することができる。
図28A〜Hは、映像情報D21の処理例を示す遷移図である。この例で、広帯域情報が映像信号の場合には、有意映像情報ブロックのデータD24のフレーム構成は、図28Dに示すような有意広帯域情報フレームになる。フレーム構成としては上述の構成に限らずその他のものでもよく。例えばIEEEの802.11に準拠するようなものでもよい。この例では、広帯域情報が外部から入力される映像情報D21である場合を挙げている。
図28Aに示す広帯域情報D21は、本発明に係る電子機器100〜800や、携帯電話機#1〜#4等で取り扱われ、信号処理前に、図28Bに示すようなフィールド単位に分割される。映像情報D21は、リアルタイム性が要求され、携帯電話機#1又は直接にLSI装置92に入力されるものである。携帯電話機#1ではCPU905が映像情報D21をフィールド単位に分割して有意映像情報D22となされる。
図28Cに示すID情報D23(付加情報)は、図28Bに示したフィールド単位に分割された有意映像情報D22に付加するようになされる。ID情報D23は、有意映像情報D22を例えばフィルタ処理させる携帯電話機#1等(LSI装置92等)を指定する制御情報である。制御情報には、LSI装置92又はCPU905等で信号処理要否を判別するためのフラグ情報が含まれる。
例えば、フラグ情報=1で信号処理「要」を示し、フラグ情報=0で信号処理「否」を示す。CPU905は当該フィールド単位に分割した有意映像情報D22の先頭にID情報D23を合成(結合)する。このように、入力された映像情報が1フィールド分毎に分割され、1フィールド分の映像情報の先頭にID情報が付加されて1つの有意映像情報ブロックが形成される。ID情報は、通常の映像情報に含まれるブランキング期間に付加するようにしてもよい。
図28Dに示す有意映像情報ブロックのデータD24は、有意映像情報D22にID情報D23が合成されて形成される。有意映像情報ブロックは、LSI装置92において、一括して情報処理を行なう必要のあるデータ単位である。ID情報D23が付加された有意映像情報ブロックは、LSI装置92において信号処理がなされる。
有意映像情報ブロックは、信号処理中、フィールド単位の有意映像情報の先頭に合成されて管理される。例えば、ID情報D23は、制御信号及びフィールド番号の他に、LSI装置92において信号処理された結果生じた情報が含まれる。なお、狭帯域情報とID情報D23をキー情報(鍵)とした当該携帯電話機#1等での信号処理が指定されないことが判別された場合は、当該有意映像情報ブロックの信号処理がなされない。狭帯域情報は、制御信号やLSI装置92において信号処理された結果生じた情報も含まれる。狭帯域情報は、例えば、アンテナ91aの狭帯域性を利用して送信される。
図28Eに示すID情報付きの有意映像情報ブロックのデータD24’は、信号処理が終了した場合に得られる。信号処理終了後のデータD24’は、例えば、携帯電話機#1から携帯電話機#3等へ転送される。図28Fに示すID情報D23’は、信号処理終了後の有意映像情報ブロックのデータD24’から分離するようになされる。ID情報D23’は、携帯電話機#1でCPU905が信号処理部904を制御することで、データD24’から分離される。図28Gに示す有意映像情報D22’は、データD24’からID情報D23’を分離すると得られる。
ID情報分離後の有意映像情報D22’は、CPU905の制御を受けた信号処理部904により、リアルタイム性を保証した情報に変換するようになされる。図28Hに示す映像情報D21’は、リアルタイム性を保証したものである。信号処理部904では、例えば、有意映像情報D22’を映像情報や音声情報等の映像情報D21’に変換するようになされる。これにより、携帯電話機#1のLSI装置92で有意映像情報D22を処理することができる。
図29及び30は、送信モード時の携帯電話機#1等の動作例(その1及び2)を示すフローチャートである。
この実施例では第1及び第2の電子機器には、図25A及びBに示した携帯電話機#1及び#2を用いる場合を例に挙げる。もちろん、第1及び第2の電子機器が、デジタルカメラ108と、これを載せる充電器109やホルダー等であってもよい。
この例では、11%以上の比帯域幅を有し、かつ、広帯域性を有するアンテナ91aを設けた携帯電話機#1と、11%以上の比帯域幅を有し、かつ、広帯域性を有するアンテナ91dを設けた携帯電話機#2とを備え、広帯域無線通信時は、近接対向させて携帯電話機#1及び携帯電話機#2間で無線通信処理をする。狭帯域無線通信時は、これらを離して携帯電話機#1及び携帯電話機#2間で無線通信処理をする場合を前提とする。
アンテナ91a及びアンテナ91dには、非対称平面アンテナが使用される。携帯電話機#1〜#4間の認証及びデータ通信には暗号化方式が採用される。暗号化方式には、AES(Advanced Encryption Standard)方式等が用いられる。この方式においける公開鍵暗号は、自分の所有している携帯電話機#1であることと、その携帯電話機#1がどういう種類のものであるかを確認するために採用される。つまり、始めにユーザ自身又はメーカーが生成した秘密鍵をユーザが持つ場合、携帯電話機#1〜#4において共有するようになされる。
アンテナ91a,91d等の狭帯域性を用いた通信を行なう場合は、暗号に用いる鍵情報の交換は行わない。また、広帯域性を用いた通信を行なう場合には鍵情報の交換を行う。なお、携帯電話機#1が送信モードに設定され、携帯電話機#2が受信モードに設定される場合を例に挙げる。
これらを通信処理条件にして、まず、図29に示すフローチャートのステップST1で送信モード又は他のモード処理の選択に基づいて制御を分岐する。送信モード又は他のモード処理の選択は、操作部908を操作することで設定される。この例では、送信モードが選択されているので、ステップST2に移行して通信部902にて信号送信処理を実行する。他のモード処理には受信モードが含まれる。
次に、ステップST3で当該携帯電話機#1(電子機器)の回りに、他の電波を出す携帯電話機#2(電子機器)が無いかを確認するために携帯電話機#1はビーコン信号を送信する。その後、ステップST4で近くに他の携帯電話機#2があれば、ビーコン信号の送信をやめてステップST5に移行する。ステップST5で、次のビーコン信号の送信開始時刻を決定するために乱数を発生する。そして、一定の間隔を経た後に、ステップST3に移行して再度、ビーコン信号を送信するようになされる。
近くに他の電波を出す携帯電話機#2が存在しない(無い)場合には、ステップST6に移行し携帯電話機#1及び#2間にて狭帯域無線通信のリンクを確立して、アンテナ91a及び91dの狭帯域性に収まる信号を用いた通信(狭帯域無線通信)に移行するようになる。
この例では、ステップST7に移行して、狭帯域無線通信又は広帯域無線通信をしようとする携帯電話機#1及び#2間(電子機器間)の物理的な距離を測定し、両者の距離の長短を判断する。この際の判断には、電波・光・音波・信号処理等を用いられる。図26に示したCPU905は、当該携帯電話機#1と他の携帯電話機#2との間の離隔距離を測定し、ここで測定された離隔距離の結果情報に基づいて携帯電話機#1と携帯電話機#2との間が遠い、又は、携帯電話機#1と携帯電話機#2との間が近いかを判別する。この判別結果に基づいて携帯電話機#1と携帯電話機#2との間で広帯域無線通信又は狭帯域無線通信を実行する。
携帯電話機#2が近くにあるか無いかは、携帯電話機#1を基準にして、距離確認処理で判断する。その方法としては、携帯電話機#2が近くにあるかどうかを判別するドップラー効果を用いるか、送信器より決められた波形パターンを送信し、その波形を受信器が受け取り、その波形を受信した受信器が再度その波形を送信して最初に送った送信器が受け取り、送信した送信器内にて、元の送った波形との時間差を計算することで距離を確認する等により実行される。
次に、ステップST8で先の距離確認処理結果に基づいて通信したい携帯電話機#2が遠方に存在するか又は近接した状態にあるかを判別する。通信したい携帯電話機#2が近くにある場合には、ステップST9に移行してアンテナ91a,91dの広帯域を用いた通信リンクの確立を行なう。次に、ステップST10に移行して、この広帯域無線通信が通信したい携帯電話機#2を認証する場合か、又は、データ通信する場合かを判断する。つまり、暗号通信の有無を判別する。このとき、CPU905は、広帯域無線通信によって送受信される広帯域情報に関して、秘密鍵暗号通信の有無を判別し、この判別の結果に基づいて秘密鍵データ通信又は公開鍵データ通信を実行する。
秘密鍵データ通信を実行する場合は、秘密鍵が通信したい携帯電話機#2に存在するので、秘密鍵を用いて暗号化した広帯域情報のデータ通信を行なう。このとき、アンテナ91a,91dの広帯域特性を利用して先頭に付加情報とID情報D13とを付加した広帯域情報を伝送する。
その後、ステップST12に移行して、全データを送信していない場合や、データ通信途中に通信環境が変った場合には、ステップST9に戻って広帯域無線通信のリンク確立を行なう。全データを送信した場合は情報処理を終了する。
上述のステップST9で通信したい携帯電話機#2を認証する場合には、ステップST13に移行して公開鍵の生成を行なう。このとき、生成された公開鍵は、ユーザがデータ通信をしたい携帯電話機#1〜#4間において共有するようになされる。その後、ステップST14に移行して公開鍵暗号方式による通信が実行可能かどうかを確認して終了する。上述の公開鍵は、狭帯域情報又は有意広帯域情報フレームに付けてデータ通信をするようになされる。
また、上述のステップST8で通信したい携帯電話機#2が遠方の場合には、ステップST15に移行して、先に交換した公開鍵を持つ携帯電話機#2との間でデータを送受信するために公開鍵を用いて暗号化したデータを通信したい携帯電話機#2に送る。その後、ステップST16に移行して、全データを送信したかを検出する。全データを送信した場合は情報処理を終了する。なお、全データを送信していない場合や、通信途中で通信状態が変った場合等は、再度、ステップST6に戻って狭帯域無線通信のリンク確立処理を実行する。なお、ステップST1で他のモードが選択されている場合は、ステップST17に移行して他のモード処理を実行して終了する。例えば、受信モードを実行する。
図31及び32は、受信モード時の携帯電話機#2の動作例(その1及び2)を示すフローチャートである。
この実施例では、携帯電話機#2には受信モードが設定される場合を例に挙げる。これを通信処理条件にして、図31のフローチャートのステップST21で受信モードの設定処理をする。受信モードは、操作部908を操作することで設定される。次に、ステップST22で携帯電話機#2は受信待機状態となされる。ビーコン信号を受信できるようにするためである。その後、ステップST23で携帯電話機#2の通信部902は狭帯域信号(ビーコン信号)を受信する。
次に、ステップST24で携帯電話機#2でビジーか否かを判別する。これは受信側となった当該携帯電話機#2で情報処理をする余裕があるかどうかを判断するためである。ビジーの場合(処理する余裕が無い場合)はステップST24に移行して待機信号(命令)を相手方の携帯電話機#2へ送信する。ビジーでない場合、すなわち、当該携帯電話機#2で情報処理をする余裕がある場合は、ステップST25に移行して狭帯域無線通信のリンク確立処理を実行する。このとき、通信したい携帯電話機#1に距離の情報を返信するために信号処理等を行なう場合もある。
次に、ステップST26に移行して、その通信相手方の携帯電話機#1と当該携帯電話機#2の間の物理的な距離を電波・光・音波・信号処理等を利用して判別する。携帯電話機#1が近くにあるか無いかは、携帯電話機#2を基準にして、距離確認処理で判断する。その方法としては、携帯電話機#1が近くにあるかどうかを判別するドップラー効果を用いるか、送信器より決められた波形パターンを送信し、その波形を受信器が受け取り、その波形を受信した受信器が再度その波形を送信して最初に送った送信器が受け取り、送信した送信器内にて、元の送った波形との時間差を計算することで距離を確認する等により実行される。
次に、ステップST27で先の距離確認処理結果に基づいて通信したい携帯電話機#1が遠方又は近接かを判別する。このとき、通信したい携帯電話機#1が近くにある場合には、ステップST28に移行してアンテナ91dの広帯域を用いた通信リンクの確立を行なう。次に、ステップST29に移行して、この広帯域無線通信内容が通信したい携帯電話機#1を認証する場合か、秘密データ通信する場合かを判断する。
秘密データ通信の場合、秘密鍵が通信したい携帯電話機#1に存在するので秘密鍵を用いて暗号化した広帯域のデータ通信を行なう。このとき、CPU905は、広帯域無線通信によって送受信される広帯域情報の信号処理要否を、狭帯域無線通信によって受信される狭帯域情報及び当該広帯域情報に付加された付加情報に基づいて判別し、信号処理要と判別された広帯域情報をメモリ906に記憶するようになされる。付加情報は、暗号鍵や信号処理結果情報やその広帯域情報の順序を示す番号などである。
その後、ステップST30に移行して、全データを受信していない場合や、データ通信途中に通信環境が変った場合には、広帯域無線通信のリンク確立を行なう。全データを受信した場合は通信処理を終了する。メモリ906に記憶された広帯域情報は、その後、読み出され狭帯域情報に基づいて信号処理部904で信号処理される。通信したい携帯電話機#1を認証する場合には、ステップST32に移行して公開鍵の生成を行ないステップST33に移行して公開鍵暗号方式の通信が行なえるかどうかの確認をして通信処理を終了する。
なお、ステップST27で通信したい携帯電話機#1が遠方の場合には、ステップST34に移行して、先に交換した公開鍵を持つ携帯電話機#1との間でデータの送受信を実行するために公開鍵を用いて暗号化したデータを通信したい携帯電話機#1に送る。次に、ステップST35に移行して全データを受信したかを検出する。全データを受信した場合は通信処理を終了する。なお、全データを受信していない場合や、通信途中で通信状態が変った場合等は、再度、ステップST25に戻って狭帯域無線通信のリンクを確立処理を実行する。
このように、第9の実施例に係る電子機器システム900及び通信方法によれば、本発明に係る携帯電話機#1〜#4が応用され、広帯域無線通信時、アンテナ91a及びアンテナ91dを近接対向させて携帯電話機#1及び携帯電話機#2間で無線通信処理をするようになされる。狭帯域無線通信時、携帯電話機#1〜携帯電話機#4をそれぞれ離した状態で、これらの携帯電話機#1〜携帯電話機#4間で無線通信処理をするようになされる。
従って、携帯電話機#1及び携帯電話機#2間で2つのアンテナを1対1に近接係合することができ、携帯電話機#1及び携帯電話機#2間でリアルタイムに、大量の広帯域情報を送受信できるようになる。これにより、携帯電話機#1を他の携帯電話機#2とを重ね合わせた状態、あるいは、極接近させた状態で、一方の携帯電話機#1側から他方の携帯電話機#2側へ、又は、他方の携帯電話機#2から一方の携帯電話機#1側へ、大量の広帯域情報を送信できるようになる。
この他に、電子機器システム900によれば、複数の電子機器において1対1の広帯域な情報伝送ができる。また、複数の電子機器において、1対多又は多対多の狭帯域な情報伝送ができる。非対称平面アンテナ10の簡素な構造により電子機器筐体への実装が容易になり、コスト削減に寄与することができる。ユーザはGUIインターフェースに関して、複数の表示制御用の配線の煩わしさから開放され、かつ、広帯域の通信を実現することができる。ユーザは複数の電子機器を同期させた動作を行なわせることができる。なお、設計者はアンテナ設置の設計コスト及び配線レイアウトの設計コストを削減することができる。
第9の実施例では、第1及び第2の電子機器に関して携帯電話機#1及び#2(#3,#4)について説明したが、これに限られることはなく、第1の電子機器がデジタルカメラ108であって、第2の電子機器が充電器109である場合、第1の電子機器がパソコン106であって、第2の電子機器が携帯電話機#1,#2,#3又は#4である場合であっても、同様な効果が得られることはいうまでもない。
この発明は、近距離にて単一指向性かつ広帯域性を有し、遠距離にて狭帯域性を有する2周波の共振型アンテナ動作をする電子機器間の無線通信向けのアンテナを用いた映像処理装置や情報処理装置等に適用して極めて好適である。
第1の実施例としての電子機器100の構成例を示す斜視図である。
非対称平面アンテナ10の構造例を示す上面図である。
非対称平面アンテナ10に係るアンテナパターン3の積層例を示す断面図である。
他の非対称平面アンテナ10cに係るアンテナパターン3の積層例を示す断面図である。
本発明の非対称平面アンテナ10や10c等に対する比較例としての非対称平面アンテナ10’の構成例を示す上面図である。
長方形パッチアンテナ10”及び非対称平面アンテナ10’に係る反射特性の比較例を示す図である。
長方形パッチアンテナ10”及び非対称平面アンテナ10に係る反射特性の比較例を示す図である。
非対称平面アンテナ10における非対称なアンテナパターン3の形成例(その1)を示す工程図である。
非対称平面アンテナ10における非対称なアンテナパターン3の形成例(その2)を示す工程図である。
非対称平面アンテナ10における非対称なアンテナパターン3の形成例(その2)を示す工程図である。
非対称平面アンテナ10の透過特性の測定例を示す斜視図である。
非対称平面アンテナ10bの透過特性例を示す図である。
非対称平面アンテナ10a,10bの対向回転時の透過特性の測定例を示す図である。
非対称平面アンテナ10の回転時の透過特性例を示す図である。
非対称平面アンテナ10を応用した第2の実施例として電子機器200の構造例を斜視図である。
第3の実施例としての電子機器300の構成例を示す断面図である。
(A)〜(C)は、電子機器300におけるアンテナ31の形成例を示す工程図である。
(A)〜(C)は、第4の実施例としての電子機器400の構成例を示す正面図及びX1−X1,X2−X2の矢視断面図である。
(A)〜(C)は、第5の実施例としての電子機器500の構成例を示す正面図、拡大図及び断面図である。
第6の実施例としての電子機器600の構成例を示す斜視図である。
(A)及び(B)は、第7の実施例としての電子機器700の構成例を示す斜視図である。
第8の実施例としての電子機器800の構成例を示す斜視図である。
デジタルカメラ108における装着確認用のアイコン83の表示例を示す図である。
第9の実施例としての電子機器システム900の構成例を示す斜視図である。
(A)及び(B)は、広帯域無線通信時の携帯電話機#1及び#2の取扱例を示す正面図である。
携帯電話機#1内のLSI装置92及びその周辺回路の構成例を示すブロック図である。
(A)〜(H)は、広帯域情報D11の処理例を示す遷移図である。
(A)〜(H)は、映像情報D21の処理例を示す遷移図である。
送信モード時の携帯電話機#1等の動作例(その1)を示すフローチャートである。
送信モード時の携帯電話機#1等の動作例(その2)を示すフローチャートである。
受信モード時の携帯電話機#2の動作例(その1)を示すフローチャートである。
受信モード時の携帯電話機#2の動作例(その2)を示すフローチャートである。
従来例に係る長方形パッチアンテナ10”の構成例を示す上面図である。
符号の説明
1・・・給電パターン、2・・・アンテナ整合パターン、3・・・アンテナパターン、4,24・・・多層基板(基板)、10,10’,10a〜10i・・・広帯域アンテナ(非対称平面アンテナ)、10”・・・長方形パッチアンテナ、11,21,31,41,51,61,71,81,91・・・アンテナ、12・・・本体ケース、13・・・レンズ、14・・・シャッターボタン、16・・・モニタ、22,92・・・LSI装置(半導体集積回路装置)、23a,203・・・GND層、25・・・伝送線路、26・・・コンタクトホール、30・・・本体金属ケース(筐体)、47・・・樹脂ケース、86・・・装着機構、100,200,300,400,500,600,700,800・・・電子機器、101・・・デジタルカメラ(第1の筐体)、102・・・ホルダー(第2の筐体)、201,202,204,206・・・絶縁層、205・・・配線層、900・・・電子機器システム、901・・・共用器、902・・・通信部、903・・・位相同期発振部、904・・・信号処理部、905・・・CPU、906・・・メモリ(記憶装置)