JP4812314B2 - 低芳香族溶剤の製造方法 - Google Patents
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低芳香族溶剤のひとつとして、直鎖パラフィンを主体とする溶剤が挙げられるが、直鎖パラフィン類は低温において結晶化しやすく、低温流動性を悪化させるため、冬期あるいは寒冷地においては取り扱いに不便であり、また塗料等の溶解性が低いという問題がある。
原油を蒸留して得られる留出油には直鎖パラフィン分が比較的多く含まれているため、これらの留分を水素化することによって得られた生成油では、良好な低温流動性を持たせることが難しい。
このような背景のもと、低芳香族溶剤の製造方法として、特定の炭化水素留分を脱硫する工程、合成ゼオライトからなる分子ふるいによって直鎖パラフィンを除去する工程および直鎖パラフィンを除去した留分を水素化する工程を組み合わせた製造方法が提案されている(特許文献1)。しかしながら、この方法では工程が多く、また直鎖パラフィンの除去工程はゼオライトへの直鎖パラフィンの吸脱着工程を交互に行うための装置構成が複雑になるという問題がある。
また本発明は、前記の方法によって製造される、芳香族分が1容量%以下、ナフテン分が20〜38.8容量%、直鎖パラフィン含有量が25容量%以下、アニリン点が75〜95℃であり、かつ流動点が−18℃以下である低芳香族溶剤に関する。
本発明においては、水素化分解の原料(原料油(1))として軽油および/または減圧軽油が用いられる。
原料油(1)として用いられる軽油とは、原油の常圧蒸留によって得られる沸点範囲160〜380℃の留分であり、減圧軽油とは、減圧蒸留装置によって得られる沸点範囲360〜580℃の留分である。
これらの留分は蒸留装置によって分留された直留留分としてそのまま用いてもよく、水素化脱硫したのちに用いてもよく、直留留分と水素化脱硫した留分とを混合して用いても良い。
水素化分解の条件としては、水素圧力は9〜15MPaが好ましく、10〜12MPaがより好ましい。反応温度は360〜450℃が好ましく、380〜430℃がより好ましく、390〜420℃が最も好ましい。LHSVは0.1〜2h−1が好ましく、0.2〜1.2h−1がより好ましく、0.25〜0.85h−1が最も好ましい。水素/油比は300〜2000NL/Lが好ましく、350〜1800NL/Lがより好ましい。
水素化分解によって得られた分解生成物は、気液分離塔あるいは所定の硫化水素除去設備により、含まれる硫化水素をできるだけ除去しておくことが望ましい。水素化分解によって生成する留分には、分解軽油留分のほかにナフサ留分や灯油留分などが含まれる。このうち、ナフサ留分はナフサ改質装置によって改質されガソリン基材や化学品原料として用いることができ、灯油留分はディーゼル燃料や暖房用燃料として有効に使用することができる。
本発明においては、前記原料油(1)を水素化分解して得られた生成物のうち、沸点180〜380℃の分解軽油留分を次の水素化精製工程の原料油として用いる。
本発明でいう芳香族分とは、社団法人石油学会により発行されている石油学会誌JPI−5S−49−97「炭化水素タイプ試験法−高速液体クロマトグラフ法」に記載の方法に準拠して測定される芳香族分含有量の容量百分率(容量%)を意味する。
本発明でいう硫黄分とは、JIS K 2541「硫黄分試験方法」またはASTM−D5453に記載の方法に準拠して測定される硫黄分の質量含有量を意味する。
ここでいう直留軽油留分とは、常圧蒸留装置から得られる沸点180〜360℃の留分あるいはこのような留分を水素化脱硫処理した生成油をいう。分解軽油留分に対する直留軽油留分の混合割合は、混合油全量基準で30容量%以下であり、好ましくは10容量%以下であり、より好ましくは5容量%以下である。混合割合が30容量%より多い場合には得られる溶剤の低温流動性が悪化する傾向にあるため好ましくない。
なお本発明でいう沸点とは、JIS K 2254「蒸留試験方法」またはASTM−D86に記載の方法に準拠して測定される値である。
水素化触媒における活性金属の担持量は、触媒全量基準で0.1〜1.0重量%であることが好ましく、0.3〜0.8重量%であることがより好ましい。担持量が0.1重量%より少ない場合には十分な水素化活性を発揮できず、1重量%より多い場合には、かえって活性金属の凝集が促進されたり、触媒コストの増加を招く恐れがある。
なお、水素化触媒としては、円柱状、四葉状などの押し出し成形、あるいは球状の状態に成形加工して用いることができる。
また水素化精製油のうち、沸点240〜300℃の留分を90容量%以上含む留分については、ナフテン分が20〜70容量%含まれていることが好ましい。ナフテン分が20容量%未満の場合、溶剤として十分な溶解性が得られない懸念があり、70容量%より多い場合には、多環ナフテン類の部分的な脱水素などが起こり易く溶剤の安定性が低下する恐れがある。
本発明でいうナフテン分とは、ASTM D2786−91「Standard Test Method for Hydrocarbon Types Analysis of Gas-Oil Saturates Fraction by High Ionizing Voltage Mass Spectrometry」に記載の方法に準拠して測定されるナフテン分の含有量(容量%)を意味する。
なお、本発明でいう流動点とは、JIS K 2269「原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法」記載の方法に準拠して測定される値である。
なお、本発明でいうアニリン点とは、JIS K 2256「アニリン点及び混合アニリン点試験方法」記載の方法に準拠して測定される値である。
なお、本発明でいう直鎖パラフィン含有量とは、JIS K 2254「蒸留試験方法」またはASTM−D86に記載のガスクロ法によって、標準物質によって直鎖パラフィンを同定し、そのピーク強度の合計から算出される値である。
ケイ酸ナトリウム水溶液(濃度29質量%、2350g)をpH14でゲル化せしめた後、pH7で2時間熟成せしめて得たスラリーに、硫酸ジルコニウム(四水和物、350g)を含む水溶液を加え、さらにそのスラリーをpH7に調整してシリカ−ジルコニア複合水酸化物を生成せしめた。これを30分熟成せしめた後、硫酸アルミニウム(14水和物、420g)を含む水溶液を加えてpH7に調整し、シリカ−ジルコニア−アルミナ複合水酸化物を生成せしめた。このスラリーからシリカ−ジルコニア−アルミナ複合水酸化物をろ過し、洗浄した後、加熱濃縮によって水分を調整し、押し出し成型、乾燥、焼成を行い触媒担体(多孔質担体)を得た。得られた担体中の各構成成分の比率は、酸化物としてアルミナ20質量%、シリカ57質量%、ジルコニア23質量%であった。
この担体に、担体の吸水率に見合う容量になるように濃度を調整したテトラアンミン白金(II)クロライドとテトラアンミンパラジウム(II)クロライドの混合水溶液を用いて金属を含浸せしめ、乾燥、焼成を行い、水素化精製触媒(触媒1)を得た。触媒1における白金、パラジウムの担持量はそれぞれ触媒全体に対して0.3質量%、0.5質量%であった。
次に、触媒1(20ml)を充填した反応管(内径20mm)を固定床流通式反応装置に取り付けた後、反応前処理として水素分圧5MPa、300℃の条件で還元前処理を実施した。その後、中東系原油の常圧蒸留および減圧蒸留によって得られた減圧軽油留分を表1に示す水素化分解条件下で水素化分解して得られた分解軽油留分100容量%を原料油として水素化精製処理を実施した。原料油(分解軽油留分)の性状を表2に示す。水素化精製は、水素圧力5MPa、反応温度220℃、LHSV0.9h−1、水素油比440NL/Lの条件下で実施した。
水素化精製処理の開始から30日目に得られた生成油の性状を表3に示す。また、生成油のうち、沸点240〜300℃の留分を90容量%以上含む留分の性状を表4に示す。
触媒1(20ml)を反応管に充填し、原料油として直留軽油留分を水素化脱硫した留分100容量%を用いて実施例1と同様の条件において水素化精製処理を実施した。直留軽油留分の水素化脱硫条件を表1に、原料油(脱硫油)の性状を表2にそれぞれ示す。水素化精製処理の開始から30日目に得られた生成油の性状を表3に示す。生成油のうち、沸点240〜300℃の留分を90容量%以上含む留分の性状を表4に示す。
触媒1(20ml)を反応管に充填し、原料油として、実施例1で用いた分解軽油留分92容量%と、比較例1で用いた直留軽油留分を水素化脱硫した留分8容量%の混合原料油を用いて実施例1と同様の条件において水素化精製処理を実施した。原料油(混合油)の性状を表2に示す。水素化精製処理の開始から30日目に得られた生成油の性状を表3に示す。生成油のうち、沸点240〜300℃の留分を90容量%以上含む留分の性状を表4に示す。
Claims (6)
- 軽油あるいは減圧軽油を水素化分解触媒の存在下、水素圧力9〜15MPa、反応温度360〜450℃、LHSV0.1〜2h−1、水素/油比300〜2000NL/Lの条件下に水素化分解して得られる沸点180〜380℃の分解軽油留分または該分解軽油留分に沸点180〜360℃の直留軽油留分を30容量%以下混合した留分を、アルミナを含む無機酸化物からなる担体に、活性金属として周期律表第8族金属から選ばれる少なくとも1種類を触媒重量に対して0.1〜1重量%担持した水素化触媒の存在下、水素圧力2〜7MPa、反応温度130〜350℃、LHSV0.1〜2h−1、水素/油比200〜600NL/Lで水素化精製することによって得られる留出油のうち、沸点240〜300℃の留分を90容量%以上含む留分のナフテン分が20〜70容量%、アニリン点が75〜95℃であり、かつ流動点が−18℃以下であることを特徴とする低芳香族溶剤の製造方法。
- 水素化分解触媒が、アルミナ、シリカ、チタニア、ボリア、ジルコニアおよびゼオライトから選ばれる少なくとも2種類を組み合わせた無機酸化物からなる担体に、活性金属として周期律表第6族金属から選ばれる少なくとも1種類の金属を触媒重量に対して15〜30重量%と、周期律表第8族金属から選ばれる少なくとも1種類の金属を触媒重量に対して3〜15重量%を担持したものであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
- 前記沸点180〜380℃の分解軽油留分の直鎖パラフィン含有量が、25容量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法。
- 水素化触媒が、シリカ−アルミナ、チタニア−アルミナ、ボリア−アルミナ、ジルコニア−アルミナ、チタニア−ジルコニア−アルミナ、シリカ−ボリア−アルミナ、シリカ−ジルコニア−アルミナ、シリカ−チタニア−アルミナ又はシリカ−チタニア−ジルコニア−アルミナを含む無機酸化物からなる担体に、活性金属として周期律表第8族金属から選ばれる少なくとも1種類を触媒重量に対して0.1〜1重量%担持したものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
- 水素化精製によって得られる留出油のうち、沸点240〜300℃の留分を90容量%以上含む留分に含まれる直鎖パラフィン含有量が25容量%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
- 水素化精製によって得られる留出油に含まれる芳香族分が1容量%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
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