JP4800205B2 - 五環性タキサンの製造方法 - Google Patents
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Description
従って、本発明の目的は、四酸化オスミウムの使用を回避し、毒性が低く安価な原料を用い、高効率で安価に、経口投与可能な抗腫瘍性化合物として用いられるタキサン誘導体を製造する方法を提供するものである。
で表される化合物に、アルカリ金属過マンガン酸塩を作用させることを特徴とする、下記一般式(2)
で表される化合物、その塩、またはそれらの水和物もしくはそれらの溶媒和物の製造方法に関するものである。
1)下記一般式(1)
で表される化合物に、アルカリ金属過マンガン酸塩を作用させて、下記一般式(2)
で表される化合物を得る工程、
2)上記一般式(2)で表される化合物の−CH(OH)CH2OH基を−R3基{ここで、R3は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を意味し、これらのアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基は、アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アミノアルキル基、アルキルアミノアルキル基、シクロアルキルアミノ基および下記式(3−a)
で表される窒素原子を含む5員環又は6員環の飽和の複素環基(該複素環基は、その環の構成原子である炭素原子上にアルキル基を1個又は複数個有していてもよい。)からなる群から選ばれる基を置換基として1個または複数個有していてもよい。}に変換する反応からなる工程、
3)6位炭素と7位炭素との間の結合が二重結合の場合に単結合に変換する反応からなる工程、および
4)R2が保護基を有する水酸基である場合に該保護基を除去する反応からなる工程
を含むことを特徴とする下記一般式(3)
で表される化合物、その塩、またはそれらの水和物もしくはそれらの溶媒和物の製造方法に関するものである。
で表される化合物であることが好ましく、特に下記一般式(11)
で表される化合物であることが好ましい。従って、本発明は、更に、下記の(i)〜(iv)項に示す、精製が容易で、高効率且つ安価なタキサン誘導体の製造方法に関するものである。
(i) 下記一般式(4)
で表される化合物にアルカリ金属過マンガン酸塩を塩基存在下、含水ピリジン、含水テトラヒドロフランおよび含水アセトンからなる群から選択される少なくとも1種類の溶媒中で作用させることを特徴とする、下記一般式(5)
で表される化合物、その塩、またはそれらの水和物もしくはそれらの溶媒和物の製造方法。
で表される化合物にアルカリ金属過マンガン酸塩を塩基存在下、含水ピリジン、含水テトラヒドロフランおよび含水アセトンからなる群から選択される少なくとも1種類の溶媒中で作用させて、下記一般式(5)
で表される化合物を得る工程、
2)上記一般式(5)で表される化合物の−CH(OH)CH2OH基をジメチルアミノメチル基またはモルホリノメチル基に変換する反応からなる工程、
3)6位炭素と7位炭素との間の結合が二重結合の場合に単結合に変換する反応からなる工程、および
4)R5が保護基を有する水酸基である場合に該保護基を除去する反応からなる工程
を含むことを特徴とする下記一般式(6)
で表される化合物、その塩、またはそれらの水和物もしくはそれらの溶媒和物の製造方法。
で表される化合物に過マンガン酸カリウムを、含水ピリジン中で作用させるか、あるいは水酸化リチウムの存在下含水ピリジン中で作用させることを特徴とする、下記一般式(8)
で表される化合物、その塩、またはそれらの水和物もしくはそれらの溶媒和物の製造方法。
で表される化合物に過マンガン酸カリウムを、含水ピリジン中で作用させるか、あるいは水酸化リチウムの存在下含水ピリジン中で作用させることで、下記一般式(8)
で表される化合物を得、上記一般式(8)で表される化合物にアルカリ金属過ヨウ素酸塩を作用させた後、酢酸及びジメチルアミンの存在下、水素化アセトキシホウ素ナトリウムを作用させることで、下記一般式(9)
で表される化合物を得た後、該一般式(9)で表される化合物を水素ガス存在下、パラジウム炭素触媒で処理することにより、下記一般式(10)
で表される化合物へ還元し、その後、フッ化アンモニウム塩を作用させることを特徴とする下記一般式(11)
で表される化合物、その塩、またはそれらの水和物もしくはそれらの溶媒和物の製造方法。
で表される新規化合物、その塩、またはそれらの水和物もしくはそれらの溶媒和物)に関し、更に本発明は、上記一般式(12)で表される化合物に、次式(15);
で表される化合物を作用させることを特徴とする、次式(16);
で表される化合物、その塩、またはそれらの水和物もしくはそれらの溶媒和物の製造方法に関する。
で表される化合物、その塩、またはそれらの水和物もしくはそれらの溶媒和物であり、より好ましくは、下記一般式(14)
で表される化合物、その塩、またはそれらの水和物もしくはそれらの溶媒和物である。
従って、本発明は、上記一般式(13)で表される化合物に、次式(17)
で表される化合物を作用させることを特徴とする、次式(18);
で表される化合物、その塩、またはそれらの水和物もしくはそれらの溶媒和物の製造方法に関し、更に好ましくは上記一般式(14)で表される化合物を、次式(19);
で表される化合物と反応させることにより、下記一般式(7)
で表される化合物、その塩、またはそれらの水和物もしくはそれらの溶媒和物の製造方法に関する。
すなわち、本発明は、更に、上記一般式(14)で表される化合物を、上記一般式(19)で表される化合物と反応させることにより、上記一般式(7)で表わされる化合物を製造し、上記一般式(7)で表される化合物に過マンガン酸カリウムを、含水ピリジン中で作用させるか、あるいは水酸化リチウム存在下含水ピリジン中で作用させることで、上記一般式(8)で表される化合物を得、上記一般式(8)で表される化合物にアルカリ金属過ヨウ素酸塩を作用させた後、酢酸及びジメチルアミン存在下、水素化アセトキシホウ素ナトリウムを作用させることで、上記一般式(9)を得た後、該一般式(9)で表される化合物を水素ガス存在下、パラジウム炭素触媒で処理することにより、上記一般式(10)で表される化合物へ還元し、その後、フッ化アンモニウム塩を作用させることを特徴とする上記一般式(11)で表される化合物、その塩、またはそれらの水和物もしくはそれらの溶媒和物の製造方法に関するものである。
本明細書にて用いられる、“アルキル基”、“アルケニル基”および“アルキニル基”は直鎖でも分枝鎖でもよく、炭素数1(アルケニル基およびアルキニル基の場合は炭素数2)から炭素数6までのものが好ましい。
“アミノアルキル基”のアミノ基の結合位置はアルキル基のどの位置でもよい。また、アルキル基の炭素数は1から6が好ましい。
“アルキルアミノ基”とは、アミノ基にアルキル基が1個置換したもの、あるいはアミノ基にアルキル基が2個置換したもの(2個のアルキル基は同一でも異なっても良い。)を意味する。また、アルキル基の炭素数は1から6が好ましい。
R1の “アリール基”としては、フェニル基が好ましく、 “アルケニル基”としては、2−メチル−1−プロペニル基が好ましい。R1の複素環基としては、単環性の複素環基が好ましく、さらには、単環性の5員環または6員環の複素環基が好ましく、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、ピロリジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、イミダゾール、ピラゾール、イミダゾリジン、ピラゾリジン、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、ピリジン、ジヒドロピリジン、テトラヒドロピラン、ピペリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペラジン、ジオキサン、ピラン、モルホリンから導かれる置換基等が挙げられる。R1の複素環基の中では、単環性の5員環または6員環の複素環基で環構造の構成原子として酸素原子、窒素原子または硫黄原子を1個含む複素環基が特に好ましく、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、ピロリジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、ピリジン、ジヒドロピリジン、テトラヒドロピラン、ピペリジン、ピラン等から導かれる基が挙げられる。特に、単環性の5員環または6員環の複素環基で環構造の構成原子として酸素原子、窒素原子または硫黄原子を1個含む不飽和の複素環基が最も好ましいものとして挙げられ、具体的には、フラン、ピリジン、ピロールから導かれる基が最も好ましい。
アルキルアミノ基のアルキル部分はC1 〜C3 アルキル基が好ましく、ジアルキル置換でもよい(ジアルキル置換の場合、その2つのアルキル基は同一でも異なっていてもよい)。
ここで、溶媒は上記塩基と異なる種類であっても同じ種類であってもよく、溶媒と塩基が同じである場合には、ピリジンが好ましく、含水ピリジンがより好ましい。
使用するR3H(例えば、ジメチルアミン)の量は、工程(b)で使用した一般式(1)で表される化合物のモル数を元に算出し、「一般式(1)で表される化合物」と「R3H」のモル比は典型的に1:0.5〜1:4、好ましくは1:1〜1:2、特に好ましくは1:1.5である。
一般式(2)で表される化合物に還元剤を作用させる際の溶媒としては、反応に不活性であれば格別限定されず、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル等の酢酸エステル系溶媒、その他アセトニトリル、ピリジン、ジメチルホルムアミド等を用いることができる。これらの溶媒のうち、テトラヒドロフラン、酢酸エチルが好ましい。
一般式(2)で表される化合物に還元剤を作用させる際の反応時間は約30分〜5時間、典型的には1時間〜3時間である。
使用するパラジウム炭素等の触媒の量は、工程(b)で使用した一般式(1)で表される化合物の重量を元に算出し、「一般式(1)で表される化合物」と「パラジウム炭素触媒等の触媒」の重量比は典型的に1:0.05〜1:1、好ましくは1:0.1〜1:0.5、特に好ましくは1:0.25で行うのが有利である。
使用する溶媒により異なるが、溶媒に水を加えるのが有利である。典型的な含水率は0〜50%であり、好ましくは0〜25%である。
反応温度は、使用する溶媒により異なるが、通常0℃から溶媒の沸点の範囲で、好ましくは20℃か60℃の範囲である。
反応時間は約1時間〜3日間にわたり、実質的に反応が完了するまで続けられる。
反応温度は使用する溶媒により異なるが、通常0℃から溶媒の沸点の範囲で、好ましくは20℃から溶媒の沸点の範囲である。
以下、一般式(11)で表される化合物を本発明に従い製造する方法について具体的に説明する。
化合物(14)は、化合物(20)とチオール基を有する化合物とを常法に従って反応させることによって得ることができる。具体的には、例えば、化合物(14)は、必要に応じて塩基の存在下で、適当な溶媒中で化合物(20)とチオール基を有する化合物とを反応させることにより得ることができる。チオール基を有する化合物としては、4−ブロモベンゼンチオール、4−クロロベンゼンチオール、2−メルカプトイミダゾール等が挙げられるがこれらに限定されない。チオール基を有する化合物としては、好ましくは、4−ブロモベンゼンチオールおよび4−クロロベンゼンチオールが挙げられ、より好ましくは4−ブロモベンゼンチオールである。
このチオエステル化反応は、塩基の存在下で行うことが好ましい。塩基としては格別限定されず、4−(ジメチルアミノ)ピリジン、トリエチルアミン、N,N−ピリジン等のアミン類、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、炭酸カルシウム等のアルカリまたはアルカリ土類金属塩類等を用いることができるが、好ましくは炭酸カリウムである。使用する塩基の量は、用いる塩基によっても異なるが、化合物(20)対塩基の重量比は、典型的に1:0.001〜1:1、好ましくは1:0.1〜1:0.3である。
溶媒としては、反応に不活性であれば格別限定されず、ジイソプロピルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル系溶媒、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、1,3−ジメチルイミダゾリジノン等のアミド系溶媒、n−ヘプタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒、その他アセトニトリル、ピリジン、トルエン等を用いることができる。これらの溶媒のうち、ジイソプロピルエーテルが好ましい。
反応温度は、通常0℃から溶媒の沸点の範囲で、好ましくは15℃から溶媒の沸点の範囲である。反応は約1分〜36時間、典型的には5分〜3時間である。
化合物(19)対化合物(14)のモル比は典型的には1:1〜1:3、好ましくは1:1.5である。
この反応は、塩基の存在下で行うことが好ましい。塩基としては格別限定されず、水素化ナトリウム、水素化リチウム、水素化カリウム等の水素化アルカリ金属類、リチウムジイソプロピルアミド等のアルカリ金属アミド類を用いることができるが、好ましくは水素化ナトリウムである。化合物(19)対塩基のモル比は、典型的には1:1〜1:6、好ましくは1:2〜1:4である。
溶媒としては、反応に不活性であれば格別限定されず、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、その他アセトニトリル、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、トルエン等を用いることができる。これらの溶媒のうち、エーテル系が好ましく、特にジメトキシエタンが好ましい。
反応温度は使用する溶媒により異なるが、通常−78℃から溶媒の沸点の範囲で、好ましくは0℃から30℃の範囲である。反応は約10分〜10時間、典型的には1時間〜5時間にわたり実質的に完了するまで続けられる。
本工程は、窒素あるいはアルゴン等の不活性ガス雰囲気化で実施することが好ましい。
化合物(7)は、反応液を処理後、再結晶により単離することができる。溶媒としては、特に制限はないが、メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール系溶媒、ジイソプロピルエーテル等のエーテル系溶媒、その他アセトニトリル、酢酸エチル、トルエン等を用いることができる。これらの溶媒のうち、エタノールが好ましい。
再結晶された化合物(7)は、スラリー精製することで、さらに純度を高める事ができる。溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒およびその混液、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒、その他、ジイソプロピルエーテル、アセトニトリル等を用いることができる。これらの溶媒のうち、ヘキサン−シクロヘキサン混液が好ましい。
更に本発明によれば、上記工程(a)〜工程(e)を工業的規模で行うことができ、目的物である一般式(3)で表されるタキサン誘導体を効率よく得ることができる。
本発明で得られる化合物は、静脈内注射、筋肉内注射、皮下注射等の各種注射剤として、あるいは、経口投与、経皮投与等の種々の方法によって投与することができる。これらの投与法の中では、後に述べる効果達成の面から、経口投与が好ましい。経口投与の場合は遊離体や塩の何れでも良い。
本発明の化合物は哺乳類、特にヒトの癌治療に用いることができ、ヒトに投与する場合、1日あたり1回投与し、適当な間隔で繰り返すのが好ましい。
投与量としては、体表面積1m2につき約0.5mgから50mg、好ましくは約1mgから20mgの範囲で投与するのが好ましい。
本明細書において、簡便化のために以下の略語を用いる場合がある。
Boc:tert−ブトキシカルボニル基
Ac:アセチル基
Bz:ベンゾイル基
TIPS:トリイソプロピルシリル基
化合物14:S-(4-ブロモフェニル)(2R,3S)-3-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-3-(3-フルオロ-2-ピリジニル)-2-[(トリイソプロピルシリル)オキシ]プロパンチオエート
化合物7:(1S, 2S, 3R, 4S, 5R, 8R, 9S, 10R, 13S)-4-アセトキシ-2-ベンゾイルオキシ-5,20-エポキシ-1-ヒドロキシ-9,10-[(1S)-2-プロペニリデンジオキシ]タクス-6,11-ジエン-13-イル (2R, 3S)-3-(tert-ブトキシカルボニルアミノ-3-(3-フルオロ-2-ピリジル)-2-トリイソプロピルシリロキシプロピオネート
化合物8:(1S, 2S, 3R, 4S, 5R, 8R, 9S, 10R, 13S)-4-アセトキシ-2-ベンゾイルオキシ-5,20-エポキシ-1-ヒドロキシ-9,10-[(1S)-2,3-ジヒドロキシプロピリデンジオキシ]タクス-6,11-ジエン-13-イル (2R, 3S)-3-(tert-ブトキシカルボニルアミノ-3-(3-フルオロ-2-ピリジル)-2-トリイソプロピルシリロキシプロピオネート
化合物9:(1S, 2S, 3R, 4S, 5R, 8R, 9S, 10R, 13S)-4-アセトキシ-2-ベンゾイルオキシ-9,10-[(1S)-2-(ジメチルアミノ)エチリデンジオキシ]-5,20-エポキシ-1-ヒドロキシタクス-6,11-ジエン-13-イル (2R, 3S)-3-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-(3-フルオロ-2-ピリジル)-2-トリイソプロピルシリロキシプロピオネート
化合物10:(1S, 2S, 3R, 4S, 5R, 8R, 9S, 10R, 13S)-4-アセトキシ-2-ベンゾイルオキシ-9,10-[(1S)-2-(ジメチルアミノ)エチリデンジオキシ]-5,20-エポキシ-1-ヒドロキシタクス-11-エン-13-イル (2R, 3S)-3-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-(3-フルオロ-2-ピリジル)-2-トリイソプロピルシリロキシプロピオネート
化合物11:(1S, 2S, 3R, 4S, 5R, 8R, 9S, 10R, 13S)-4-アセトキシ-2-ベンゾイルオキシ-9,10-[(1S)-2-(ジメチルアミノ)エチリデンジオキシ]-5,20-エポキシ-1-ヒドロキシタクス-11-エン-13-イル (2R, 3S)-3-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-(3-フルオロ-2-ピリジル)-2-ヒドロキシプロピオネート
<過マンガン酸カリウム(KMnO4)による化合物7のジオール化反応の確認>
KMnO4により化合物7のジオール化反応が進行するかどうかを確認した。化合物7、100mg(0.0995mmol)を2mLの溶媒と水(H2O)に溶解し、室温中、0.0995mmolのKMnO4を添加し、HPLCで反応の進行を確認した。結果を表1に示す。
<KMnO4による化合物7のジオール化反応における溶媒の影響>
実施例1に用いたTHF溶媒またはアセトン溶媒以外の反応溶媒を検討した。化合物7を溶解し、かつ、水との混合溶液で反応可能な溶媒を検討した結果、11種類の溶媒(ピリジン、アセチルアセトン、ジメトキシアセトン、エーテル、ピペリジン、トリエチルアミン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、酢酸、無水酢酸)のうち、ピリジン溶媒にて良好に反応が進行することが判明した。ピリジンに化合物7、100mg(0.0995mmol)を溶解し、H2Oを加えた後、KMnO4を添加し、15分後、HPLCにて反応の進行を確認した。結果を表2に示す。表2中のarea%とは、HPLCで得られた各ピーク面積を元にして算出した、各ピーク面積の総和に対する各ピーク面積の割合である。
<KMnO4による化合物7のジオール化反応における塩基の影響>
KMnO4による化合物7のジオール化反応における塩基の影響を検討した。各溶媒に溶解した50mgの化合物7(0.0497mmol)を種々の塩基の存在下で、室温にてKMnO4と反応させ、HPLCにて反応の進行を確認した。結果を表3に示す。表3中のarea%とは、HPLCで得られた各ピーク面積を元にして算出した、各ピーク面積の総和に対する各ピーク面積の割合である。
<KMnO4による化合物7のジオール化反応に対する溶媒の容積量の影響>
工業レベルで化合物を生成する際は、反応基質に対する溶媒量も重要な検討事項である。反応基質に対して使用する溶媒の量が少ないほど、生産効率が向上する。そこで、KMnO4による化合物7のジオール化反応に対する含水ピリジン溶媒の量について検討した。
化合物7、50mg(0.0497mmol)、KMnO4(0.0647mmol)および水酸化リチウム(0.00995mmol)の量を一定に保ち、化合物7(重量)に対する含水ピリジン(体積)の倍量を変化させた。結果を表4に示す。表4中のarea%とは、HPLCで得られた各ピーク面積を元にして算出した、各ピーク面積の総和に対する各ピーク面積の割合である。
<(1S, 2S, 3R, 4S, 5R, 8R, 9S, 10R, 13S)-4-アセトキシ-2-ベンゾイルオキシ-5,20-エポキシ-1-ヒドロキシ-9,10-[(1S)-2-プロペニリデンジオキシ]タクス-6,11-ジエン-13-イル (2R, 3S)-3-(tert-ブトキシカルボニルアミノ-3-(3-フルオロ-2-ピリジル)-2-トリイソプロピルシリロキシプロピオネート(化合物7)の合成>
(3R,4S)-1-(tert-ブトキシカルボニル)-4-(3-フルオロ-2-ピリジル)-3-トリイソプロピルシリロキシ-2-アゼチジノン(化合物20)の濃縮残渣(70.9mmol)をジイソプロピルエーテル240mLに溶解し、4−ブロモチオフェノール15.5g(82.0mmol)、炭酸カリウム3gを加え、室温で25分攪拌した。(3R,4S)-1-(tert-ブトキシカルボニル)-4-(3-フルオロ-2-ピリジル)-3-トリイソプロピルシリロキシ-2-アゼチジノンの消失を確認後、水200mL、ジイソプロピルエーテル120mLを加え、分液した。有機層を分離後、水150mL次いで飽和食塩水150mLで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後減圧濃縮し、残渣としてS-(4-ブロモフェニル)(2R,3S)-3-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-(3-フルオロ-2-ピリジニル)-2-[(トリイソプロピルシリル)オキシ]プロパンチオエート(化合物14)45.3gを得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3, TMS) δ :1.07-1.10 (21H, m), 1.42 (9H, s), 4.82 (1H, d, J=4.2 Hz), 5.58 (1H, dd, J=9.5, 4.2 Hz), 6.10 (1H, d, J=9.5 Hz), 7.18 (2H, d, J=8.5 Hz), 7.25-7.30 (1H, m), 7.41 (1H, t, J=8.8 Hz) 7.52 (2H, dt, 8.5, 2.2 Hz) 8.39 (1H, d, J=4.6 Hz)
水素化ナトリウム6.37g(含量55%,146mmol)にジメトキシエタン179mLを加え、系内を窒素ガスで置換した後、氷水冷却下、ジメトキシエタン204mLに溶解した(1S, 2S, 3R, 4S, 5R, 8R, 9S, 10R, 13S)-4-アセトキシ-2-ベンゾイルオキシ-5,20-エポキシ-1,13-ジヒドロキシ-9,10-[(1S)-2-プロペニリデンジオキシ]タクス-6,11-ジエン25.5g(44.9mmol)を滴下した。次にジメトキシエタン128mLに溶解した先の反応の残渣S-(4-ブロモフェニル)(2R,3S)-3-[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]-3-(3-フルオロ-2-ピリジニル)-2-[(トリイソプロピルシリル)オキシ]プロパンチオエート45.0g(約67.4mmol)を10分間で滴下後、氷水冷却を止め、約1時間攪拌した。反応の終了を確認後、4%炭酸水素ナトリウム水溶液300mLと酢酸エチル500mLを加えて抽出、分液した。有機層を分取し、飽和食塩水300mLで洗浄後、減圧濃縮した。濃縮残渣にエタノール510mLを加え、50℃で加温溶解した後、室温で一夜攪拌した。その後、氷水冷却下、4時間攪拌を継続し、析出晶を濾取した。結晶をヘプタン530mLでスラリーした後、濾取し、50℃減圧乾燥することにより標記化合物31.7g(31.5mmol)を得た。
<(1S, 2S, 3R, 4S, 5R, 8R, 9S, 10R, 13S)-4-アセトキシ-2-ベンゾイルオキシ-9,10-[(1S)-2-(ジメチルアミノ)エチリデンジオキシ]-5,20-エポキシ-1-ヒドロキシタクス-11-エン-13-イル (2R, 3S)-3-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-(3-フルオロ-2-ピリジル)-2-ヒドロキシプロピオネート(化合物11)の合成法1>
HRMS (FAB) m/z : 1039.4967 [M+H]+としての計算値 1039.4999
<(1S, 2S, 3R, 4S, 5R, 8R, 9S, 10R, 13S)-4-アセトキシ-2-ベンゾイルオキシ-9,10-[(1S)-2-(ジメチルアミノ)エチリデンジオキシ]-5,20-エポキシ-1-ヒドロキシタクス-11-エン-13-イル (2R, 3S)-3-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-(3-フルオロ-2-ピリジル)-2-ヒドロキシプロピオネート(化合物11)の合成法2>
<(1S, 2S, 3R, 4S, 5R, 8R, 9S, 10R, 13S)-4-アセトキシ-2-ベンゾイルオキシ-9,10-[(1S)-2-(ジメチルアミノ)エチリデンジオキシ]-5,20-エポキシ-1-ヒドロキシタクス-11-エン-13-イル (2R, 3S)-3-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-(3-フルオロ-2-ピリジル)-2-ヒドロキシプロピオネート(化合物11)の合成法3>
本発明の実施例6に記載される方法に従って化合物7から化合物11を得る場合と、特開2002−332287号公報に記載される方法に従って化合物7のジオール化反応に四酸化オスミウムを用いて化合物7から化合物11を得る場合との間で、収率の差を比較した。結果を以下の表に示す。また、実施例7または8に記載の方法においても同様に、従来法と比較して収率が向上した。
本出願は、2004年4月30日出願の日本特許出願(特願2004−136359)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
Claims (4)
- 下記一般式(7)
で表される化合物に、過マンガン酸カリウムを含水ピリジン中で作用させることで、下記一般式(8)
で表される化合物を得、上記一般式(8)で表される化合物にアルカリ金属過ヨウ素酸塩を作用させた後、酢酸及びジメチルアミンの存在下、水素化アセトキシホウ素ナトリウムを作用させることで、下記一般式(9)
で表される化合物を得た後、該一般式(9)で表される化合物を水素ガス存在下、パラジウム炭素触媒で処理することにより、下記一般式(10)
で表される化合物へ還元し、その後、フッ化アンモニウム塩を作用させることを特徴とする、下記一般式(11)
で表される化合物、その塩、またはそれらの水和物もしくはそれらの溶媒和物の製造方法。 - 下記一般式(7)
で表される化合物に、過マンガン酸カリウムを、炭酸カリウム、トリエチルアミン、水酸化ナトリウムおよび水酸化リチウムからなる群から選択される少なくとも1種類の塩基の存在下、含水ピリジン中で作用させることで、下記一般式(8)
で表される化合物を得、上記一般式(8)で表される化合物にアルカリ金属過ヨウ素酸塩を作用させた後、酢酸及びジメチルアミンの存在下、水素化アセトキシホウ素ナトリウムを作用させることで、下記一般式(9)
で表される化合物を得た後、該一般式(9)で表される化合物を水素ガス存在下、パラジウム炭素触媒で処理することにより、下記一般式(10)
で表される化合物へ還元し、その後、フッ化アンモニウム塩を作用させることを特徴とする、下記一般式(11)
で表される化合物、その塩、またはそれらの水和物もしくはそれらの溶媒和物の製造方法。
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