自動車に用いられる窓開閉制御装置(以下、「パワーウィンドウ装置」という。)は、スイッチの操作によりモータを正転または逆転させてドアの窓ガラスを昇降させ、窓を開閉する装置である。図11は、一般的なパワーウィンドウ装置の電気的構成を示したブロック図である。1は窓の開閉動作を制御するCPUからなる制御部、2はモータ3を駆動するモータ駆動回路、4はモータ3の回転に同期したパルスを出力するロータリエンコーダ、5はロータリエンコーダ4から出力されるパルスを検出するパルス検出回路、6はROMやRAM等から構成されるメモリ、7は窓の開閉を操作するための操作スイッチである。
操作スイッチ7を操作すると、制御部1に窓開閉指令が与えられ、モータ駆動回路2によりモータ3が正転または逆転する。モータ3の回転により、モータ3と連動する窓開閉機構が作動して窓の開閉が行われる。パルス検出回路5はロータリエンコーダ4から出力されるパルスを検出し、制御部1はこの検出結果に基づき窓の開閉量やモータ速度を算出して、モータ駆動回路2を介してモータ3の回転を制御する。
図12は、操作スイッチ7の一例を示した概略構成図である。操作スイッチ7は、軸Qを中心としてab方向に回転可能な操作ノブ71と、この操作ノブ71と一体に設けられたロッド72と、公知のスライドスイッチ73とから構成される。74はスライドスイッチ73のアクチュエータ、20は操作スイッチ7が組み込まれるスイッチユニットのカバーである。ロッド72の下端は、スライドスイッチ73のアクチュエータ74と係合しており、操作ノブ71がab方向に回転すると、ロッド72を介してアクチュエータ74がcd方向に移動し、その移動位置に応じてスライドスイッチ73の接点(図示省略)が切り換えられる。
操作ノブ71は、オート閉AC、マニュアル閉MC、中立N、マニュアル開MO、オート開AOの各位置へ切換可能となっている。図12は、操作ノブ71が中立Nの位置にある状態を示している。この位置から操作ノブ71をa方向に一定量回転させて、マニュアル閉MCの位置にすると、マニュアル動作で窓が閉じるマニュアル閉動作が行われ、この位置よりさらにa方向に操作ノブ71を回転させてオート閉ACの位置にすると、オート動作で窓が閉じるオート閉動作が行われる。また、操作ノブ71を中立Nの位置からb方向に一定量回転させて、マニュアル開MOの位置にすると、マニュアル動作で窓が開くマニュアル開動作が行われ、この位置よりさらにb方向に操作ノブ71を回転させてオート開AOの位置にすると、オート動作で窓が開くオート開動作が行われる。操作ノブ71には、図示しないバネが設けられており、回転した操作ノブ71から手を離すと、操作ノブ71はバネの力により中立Nの位置に復帰する。
マニュアル動作の場合は、操作ノブ71がマニュアル閉MCまたはマニュアル開MOの位置に手で保持され続ける間だけ、窓を閉じる動作または開ける動作が行われ、操作ノブ71から手を離してノブが中立Nの位置に復帰すると、窓の閉動作または開動作は停止する。一方、オート動作の場合は、一旦、操作ノブ71がオート閉ACまたはオート開AOの位置まで回転されると、その後は操作ノブ71から手を離してノブが中立Nの位置に復帰しても、窓の閉動作または開動作が継続して行われる。
図13は、車両の各窓に設けられる窓開閉機構の一例を示した図である。100は自動車の窓、101は窓100を開閉する窓ガラス、102は窓開閉機構である。窓ガラス101は、窓開閉機構102の作動により昇降動作を行い、窓ガラス101の上昇により窓100が閉じ、窓ガラス101の下降により窓100が開く。窓開閉機構102において、103は窓ガラス101の下端に取り付けられた支持部材である。104は一端が支持部材103に係合され、他端がブラケット106に回転可能に支持された第1アーム、105は一端が支持部材103に係合され、他端がガイド部材107に係合された第2アームである。第1アーム104と第2アーム105とは、それぞれの中間部において軸を介して連結されている。3は前述のモータ、4は前述のロータリエンコーダである。ロータリエンコーダ4はモータ3の回転軸に連結されており、モータ3の回転量に比例した数のパルスを出力する。所定時間内にロータリエンコーダ4から出力されるパルスを計数することにより、モータ3の回転速度を検出することができる。また、ロータリエンコーダ4の出力から、モータ3の回転量(窓ガラス101の移動量)を算出することができる。
109はモータ3により回転駆動されるピニオン、110はピニオン109と噛合して回転する扇形のギヤである。ギヤ110は、第1アーム104に固定されている。モータ3は正逆方向に回転可能であり、正逆方向への回転によりピニオン109およびギヤ110を回転させて、第1アーム104を正逆方向へ回動させる。これに追随して、第2アーム105の他端がガイド部材107の溝に沿って横方向にスライドし、支持部材103が上下方向に移動して窓ガラス101を昇降させ、窓100を開閉する。
以上のようなパワーウィンドウ装置において、操作ノブ71が図12のオート閉ACの位置にあってオート閉動作が行われる場合は、物体の挟み込みを検出する機能が備わっている。すなわち、図14に示したように、窓100が閉まる途中で窓ガラス101の隙間に物体Zが挟み込まれた場合、これを検知して窓100の閉動作を開動作へ切り換えるようになっている。オート閉動作中は窓100が自動的に閉じるため、誤って手や首などが挟まれた場合に、人体に危害が加わるのを防止する必要性から、挟み込み検出機能が働いて窓100の閉動作が禁止される。挟み込みの検出にあたっては、パルス検出回路5の出力であるモータ3の回転速度を制御部1が随時読み込み、現在の回転速度と以前の回転速度とを比較して、その比較結果に基づいて挟み込みの有無を判定する。窓100に物体Zの挟み込みが発生すると、モータ3の負荷が増大して回転速度が低下するため、速度の変動量が大きくなり、この速度変動量が所定の閾値を超えたときに、物体Zが挟み込まれたと判定する。閾値はメモリ6にあらかじめ記憶されている。
ところで、モータ3の回転速度の変動は、異物の挟み込みだけではなく、ドアを閉じたときの振動によっても発生する。そして、このような振動により回転速度が変動すると、異物が挟み込まれていないにもかかわらず、異物が挟み込まれたと誤判定して窓が開いてしまうことが起こりうる。この対策として、挟み込みを判定するための閾値を高く設定することが考えられるが、単に閾値を高くしただけでは、挟み込みが検出される時点の荷重(以下、「挟み込み荷重」という。)が閾値を高くした分だけ増大するため、手や腕などが挟み込まれた場合に安全性が脅かされるという問題がある。
そこで、この問題の解決策として、下記の特許文献1では、ドアが閉じたことを検出してから一定時間だけ閾値を高くすることで、ドアの閉動作時には、振動によってモータの回転速度が変動しても、速度変動量が閾値を超えないようにして誤判定を防止し、ドアが閉じてから一定時間が経過した後は閾値を元に戻すことにより、通常の挟み込み検出を行うようにしたパワーウィンドウ装置が提案されている。特許文献2にも同様の技術が開示されている。
また、特許文献3には、ドアが開状態の場合はモータにかかる負荷を第1の閾値と比較し、ドアが閉状態の場合はモータにかかる負荷を第2の閾値と比較し、この比較結果に基づいて窓の閉成中における挟み込み状態を判断することで、ドアが閉じた場合のみならず、ドアが開いた場合にも挟み込みの誤検知を防止するようにしたパワーウィンドウ装置が示されている。特許文献4には、ブレ−キ操作、クラッチ操作、車速の存在、変速機のギア位置等に基づいて、運転者が運転席に存在することを検出したときに、窓を開方向に自動反転する動作を禁止するようにしたパワーウィンドウ装置が示されている。特許文献5には、リモコンから送信されたドアロック信号に応答してドアをロックするとともに、パワーウィンドウ装置を作動させて窓を閉じるキーレスエントリーシステムが記載されている。
特許第3156553号公報
特開平9−125815号公報
特許第3206327号公報
特許第3480093号公報
特開平7−54525号公報
次に、本発明の実施形態につき図を参照して説明する。以下では、背景技術の項で説明した図12〜図14を本発明の実施形態の一部として引用する。
図1は、本発明の実施形態であるパワーウィンドウ装置の電気的構成を示したブロック図である。図1では、図11と同一部分に同一符号を付してある。1は窓の開閉動作を制御するCPUからなる制御部、2はモータ3を駆動するモータ駆動回路、4はモータ3の回転に同期したパルスを出力するロータリエンコーダ、5はロータリエンコーダ4から出力されるパルスを検出するパルス検出回路、6はROMやRAM等から構成されるメモリ、7は窓の開閉を操作するための操作スイッチ(図12)である。メモリ6には、後述する第1の閾値および第2の閾値が記憶されている。
8は車両のドアが閉じたことを検出するドア閉検出スイッチであって、例えばドアの開閉に連動して車内のランプの点灯を制御するカーテシーランプスイッチを用いることができる。9はエンジンを始動させるためのイグニッションスイッチであって、車のキーがキー挿入口に差し込まれてエンジン始動位置まで回されたときに入状態(ON状態)となり、それ以外のときは切状態(OFF状態)となっている。10はドアロックの有無を検出するためのドアロック検出センサ、11は電源電圧を検出するための電源電圧検出回路である。ドアロック検出センサ10は、例えば、運転席のドアロックボタンが操作されたときの信号に基づいて、ドアがロックされたことを検知する。12は乗員検出センサであって、例えば乗員が座席に座ったことを検知する着座センサからなる。この着座センサは、本来、乗員の有無に応じてエアバッグの膨張速度を調節するために使用されるものである。13は車のキーの有無を検出するキー検出センサであって、例えばキー挿入口へキーが挿入されたときにこれを検知する。
図1において、操作スイッチ7を操作すると、制御部1に窓開閉指令が与えられ、モータ駆動回路2によりモータ3が正転または逆転する。モータ3の回転により、モータ3と連動する窓開閉機構102(図13、図14)が作動して窓100の開閉が行われる。パルス検出回路5はロータリエンコーダ4から出力されるパルスを検出し、制御部1はこの検出結果に基づき窓100の開閉量やモータ3の回転速度を算出して、モータ駆動回路2を介してモータ3の回転を制御する。モータ3の負荷は回転速度から求めることができる。
以上の構成において、ロータリエンコーダ4とパルス検出回路5とは、本発明における負荷検出手段の一例であり、制御部1は、本発明における比較手段、判定手段、制御手段の一例であり、ドア閉検出スイッチ8および制御部1は本発明における第1の検知手段の一例であり、イグニッションスイッチ9、ドアロック検出センサ10、電源電圧検出回路11、乗員検出センサ12およびキー検出センサ13と、制御部1とは、本発明における第2の検知手段の一例である。
図2は、本発明の実施形態に係るパワーウィンドウ装置の基本的な動作を示したフローチャートである。図中の「SW」は「操作スイッチ7」を表している(以下のフローチャートにおいても同じ)。ステップS1で、操作スイッチ7がマニュアル閉MCの位置にあれば、マニュアル閉動作の処理が行われ(ステップS2)、ステップS3で、操作スイッチ7がオート閉ACの位置にあれば、オート閉動作の処理が行われ(ステップS4)、ステップS5で、操作スイッチ7がマニュアル開MOの位置にあれば、マニュアル開動作の処理が行われ(ステップS6)、ステップS7で、操作スイッチ7がオート開AOの位置にあれば、オート開動作の処理が行われる(ステップS8)。また、ステップS7で、操作スイッチ7がオート開AOの位置になければ、操作スイッチ7は中立Nの位置にあって、何も処理を行わない。ステップS2、S4、S6、S8の詳細については、以下に順を追って説明する。
図3は、図2のステップS2での「マニュアル閉処理」の詳細手順を示している。この処理手順については、従来と変わりはない。図3の手順は、制御部1を構成するCPUにより実行される。最初に、マニュアル閉動作により窓100が完全に閉じたか否かをロータリエンコーダ4の出力に基づいて判定する(ステップS11)。窓100が完全に閉じれば(ステップS11:YES)処理を終了し、完全に閉じてなければ(ステップS11:NO)、モータ駆動回路2から正転信号を出力してモータ3を正転させ、窓100を閉じる(ステップS12)。続いて、窓100が完全に閉じたか否かを判定し(ステップS13)、完全に閉じれば(ステップS13:YES)処理を終了し、完全に閉じてなければ(ステップS13:NO)、挟み込みを検出したか否かを判定する(ステップS14)。この挟み込みの検出にあたっては、パルス検出回路5の出力に基づいてモータ3の回転速度を算出し、この回転速度からモータの負荷を求めて、負荷の変化量が所定の閾値を超えたときに、挟み込みがあったと判定する。
本実施形態では、閾値として第1の閾値と、この第1の閾値よりも大きい第2の閾値とを用いる。第1の閾値を使用して挟み込み判定を行う場合は、モータの負荷の変化量が第1の閾値を超えれば挟み込みと判定するが、第2の閾値を使用して挟み込み判定を行う場合は、モータの負荷の変化量が第1の閾値を超えたとしても挟み込みとは判定せず、第2の閾値を超えてはじめて挟み込みと判定する。ステップS14の挟み込み検出においては、第1の閾値が用いられる。
図14で示したような物体Zの挟み込みがあった場合は(ステップS14:YES)、モータ駆動回路2から逆転信号を出力してモータ3を逆転させ、窓100を開く(ステップS15)。これによって、挟み込みが解除される。そして、窓100が完全に開いたか否かを判定し(ステップS16)、完全に開けば(ステップS16:YES)処理を終了し、完全に開いてなければ(ステップS16:NO)、ステップS15へ戻ってモータ3の逆転を継続する。
ステップS14で挟み込みが検出されなかった場合は(ステップS14:NO)、操作スイッチ7がマニュアル閉MCの位置にあるか否かを判定する(ステップS17)。操作スイッチ7がマニュアル閉MCの位置にあれば(ステップS17:YES)、ステップS12へ戻ってモータ3の正転を継続し、マニュアル閉MCの位置になければ(ステップS17:NO)、オート閉ACの位置にあるか否かを判定する(ステップS18)。操作スイッチ7がオート閉ACの位置にあれば(ステップS18:YES)、後述(図4)のオート閉処理に移り(ステップS19)、オート閉ACの位置になければ(ステップS18:NO)、マニュアル開MOの位置にあるか否かを判定する(ステップS20)。操作スイッチ7がマニュアル開MOの位置にあれば(ステップS20:YES)、後述(図5)のマニュアル開処理に移り(ステップS21)、マニュアル開MOの位置になければ(ステップS20:NO)、オート開AOの位置にあるか否かを判定する(ステップS22)。操作スイッチ7がオート開AOの位置にあれば(ステップS22:YES)、後述(図6)のオート開処理に移り(ステップS23)、操作スイッチ7がオート開AOの位置になければ(ステップS22:NO)、何も処理せずに終了する。
図4は、図2のステップS4での「オート閉処理」の詳細手順を示している。この処理手順は、本発明の特徴をなすものである。図4の手順は、制御部1を構成するCPUにより実行される。最初に、閾値変更フラグを0にリセットする(ステップS31)。閾値変更フラグは、閾値が第1の閾値から第2の閾値へ変更された場合に1にセットされるフラグであって、メモリ6の所定領域に記憶される。なお、初期状態では、第1の閾値と第2の閾値のうち、第1の閾値が選択される。次に、オート閉動作により窓100が完全に閉じたか否かをロータリエンコーダ4の出力に基づいて判定する(ステップS32)。窓100が完全に閉じれば(ステップS32:YES)、ステップS47へ移行し、完全に閉じてなければ(ステップS32:NO)、ステップS33へ移行する。
ステップS33では、閾値変更フラグが0か否かを判定する。最初は、閾値変更フラグが0であるから(ステップS33:YES)、ステップS34aへ移行して、イグニッションスイッチ9(図1)が切状態(OFF状態)か否かを判定する。イグニッションスイッチ9が切状態の場合は(ステップS34a:YES)、ステップS35へ移り、ドアが開状態であるか否かを、ドア閉検出スイッチ8の検出出力に基づいて判定する。ドアが開状態であれば(ステップS35:YES)、閾値を大きくする(ステップS36)。すなわち、第1の閾値を第2の閾値に置き換える。そして、閾値変更フラグを1にセットする(ステップS37)。また、イグニッションスイッチ9が入状態(ON状態)の場合(ステップS34a:NO)、または、ドアが閉状態の場合(ステップS35:NO)は、ステップS36、S37を実行せず、閾値を第1の閾値のままにして、ステップS38へ移行する。
ステップS38では、モータ駆動回路2へ正転信号を出力してモータ3を正転させ、窓100を閉じる。続いて、窓100が完全に閉じたか否かを判定し(ステップS39)、完全に閉じれば(ステップS39:YES)、ステップS47へ移行し、完全に閉じてなければ(ステップS39:NO)、ステップS40へ移行して、挟み込みを検出したか否かを判定する。この挟み込みの検出にあたっては、前述のように、パルス検出回路5の出力に基づいてモータ3の回転速度を算出し、この回転速度からモータの負荷を求めて、負荷の変化量が所定の閾値を超えたときに、挟み込みがあったと判定する。このステップS40の挟み込み検出においては、ステップS34a、S35の判定結果に応じて、第1の閾値または第2の閾値のいずれかが用いられる。第2の閾値が用いられる場合(ステップS34a、S35の判定が共にYESの場合)は、閾値が上がることによって、ドア閉による振動があっても、これを挟み込みと誤判定してしまうのを防止することができる。
図14で示したような物体Zの挟み込みがあった場合は(ステップS40:YES)、モータ駆動回路2から逆転信号を出力してモータ3を逆転させ、窓100を開く(ステップS41)。これによって、挟み込みが解除される。そして、窓100が完全に開いたか否かを判定し(ステップS42)、完全に開けば(ステップS42:YES)、ステップS47へ移り、完全に開いてなければ(ステップS42:NO)、ステップS41へ戻ってモータ3の逆転を継続する。
ステップS40で挟み込みが検出されなかった場合は(ステップS40:NO)、操作スイッチ7がマニュアル開MOの位置にあるか否かを判定する(ステップS43)。操作スイッチ7がマニュアル開MOの位置にあれば(ステップS43:YES)、後述(図5)のマニュアル開処理に移り(ステップS44)、マニュアル開MOの位置になければ(ステップS43:NO)、オート開AOの位置にあるか否かを判定する(ステップS45)。操作スイッチ7がオート開AOの位置にあれば(ステップS45:YES)、後述(図6)のオート開処理に移り(ステップS46)、操作スイッチ7がオート開AOの位置になければ(ステップS45:NO)、ステップS33へ戻る。先のステップS36で閾値が第2の閾値に変更され、ステップS37で閾値フラグが1にセットされている場合は、ステップS33の判定はNOとなり、ステップS34a〜S37を省略して、ステップS38へ移る。すなわち、第2の閾値を維持したまま窓のオート閉動作を継続する。
ステップS32、S39、S42で判定がYESの場合、およびステップS44、S46の実行後は、ステップS47へ移り、閾値変更フラグを0にする。その後、閾値を第2の閾値から第1の閾値へ戻して(ステップS48)、処理を終了する。
以上のように、図4に示した実施形態においては、イグニッションスイッチ9が切状態であって、かつ、ドアが開状態の場合にのみ閾値を上げるようにしている。イグニッションスイッチ9が切状態でドアが開いたということは、乗員が降車する可能性が高いことを意味しており、やがてドアが閉じられることが想定される。したがって、この状況下で閾値を第1の閾値から第2の閾値に変更して閾値を上げることにより、ドア閉時の衝撃により挟み込みを誤検知して窓が開いてしまうのを未然に防ぐことができる。また、閾値を上げても、乗員は降車するため、挟み込みによる危険性は少ない。一方、イグニッションスイッチ9が入状態であったり、ドアが閉状態である場合は、乗員が降車する可能性は低いとみられるので、閾値を第1の閾値のままとすることで、車内にいる乗員が閉動作中の窓に誤って腕などを挟んだ場合でも、本来の挟み込み検知機能が働いて窓が開き、挟み込みによる危険性を回避することができる。
また、ドアの開閉状態やイグニッションスイッチ9の入切状態は、車両に備わっている既存のドア閉検出スイッチ8やイグニッションスイッチ9を利用して検出できるので、専用の検出手段を別に設ける必要はなく、簡易かつ安価に実現できる。さらに、ドアの開状態を検知して、ドアが閉じられる前に閾値を上げることができるので、ドアが閉じた時のドア閉検出信号により閾値を上げる場合のような、検出信号の遅延による閾値を上げるタイミングの遅れは発生せず、ドア閉時の誤作動を防止することができる。
図5は、図2のステップS6での「マニュアル開処理」の詳細手順を示している。この処理手順については、従来と変わりはない。図5の手順は、制御部1を構成するCPUにより実行される。最初に、マニュアル開動作により窓100が完全に開いたか否かをロータリエンコーダ4の出力に基づいて判定する(ステップS51)。窓100が完全に開けば(ステップS51:YES)処理を終了し、完全に開いてなければ(ステップS51:NO)、モータ駆動回路2から逆転信号を出力してモータ3を逆転させ、窓100を開ける(ステップS52)。続いて、窓100が完全に開いたか否かを判定し(ステップS53)、完全に開けば(ステップS53:YES)処理を終了し、完全に開いてなければ(ステップS53:NO)、操作スイッチ7がマニュアル開MOの位置にあるか否かを判定する(ステップS54)。操作スイッチ7がマニュアル開MOの位置にあれば(ステップS54:YES)、ステップS52へ戻ってモータ3の逆転を継続し、マニュアル開MOの位置になければ(ステップS54:NO)、オート開AOの位置にあるか否かを判定する(ステップS55)。操作スイッチ7がオート開AOの位置にあれば(ステップS55:YES)、後述(図6)のオート開処理に移り(ステップS56)、オート開AOの位置になければ(ステップS55:NO)、マニュアル閉MCの位置にあるか否かを判定する(ステップS57)。操作スイッチ7がマニュアル閉MCの位置にあれば(ステップS57:YES)、前述(図3)のマニュアル閉処理に移り(ステップS58)、マニュアル閉MCの位置になければ(ステップS57:NO)、オート閉ACの位置にあるか否かを判定する(ステップS59)。操作スイッチ7がオート閉ACの位置にあれば(ステップS59:YES)、前述(図4)のオート閉処理に移り(ステップS60)、操作スイッチ7がオート閉ACの位置になければ(ステップS59:NO)、何も処理せずに終了する。
図6は、図2のステップS8での「オート開処理」の詳細手順を示している。この処理手順については、従来と変わりはない。図6の手順は、制御部1を構成するCPUにより実行される。最初に、オート開動作により窓100が完全に開いたか否かをロータリエンコーダ4の出力に基づいて判定する(ステップS71)。窓100が完全に開けば(ステップS71:YES)処理を終了し、完全に開いてなければ(ステップS71:NO)、モータ駆動回路2から逆転信号を出力してモータ3を逆転させ、窓100を開ける(ステップS72)。続いて、窓100が完全に開いたか否かを判定し(ステップS73)、完全に開けば(ステップS73:YES)処理を終了し、完全に開いてなければ(ステップS73:NO)、操作スイッチ7がマニュアル閉MCの位置にあるか否かを判定する(ステップS74)。操作スイッチ7がマニュアル閉MCの位置にあれば(ステップS74:YES)、前述(図3)のマニュアル閉処理に移り(ステップS75)、マニュアル閉MCの位置になければ(ステップS74:NO)、オート閉ACの位置にあるか否かを判定する(ステップS76)。操作スイッチ7がオート閉ACの位置にあれば(ステップS76:YES)、前述(図4)のオート閉処理に移り(ステップS77)、操作スイッチ7がオート閉ACの位置になければ(ステップS76:NO)、ステップS72へ戻って、モータ3の逆転を継続する。
図7は、本発明の他の実施形態におけるオート閉処理の手順を示したフローチャートである。なお、マニュアル閉処理、マニュアル開処理、オート開処理の手順については、それぞれ図3、図5、図6で示したもの同じである。図7においては、図4のステップS34aがステップS34bに置き換わっているだけで、それ以外は図4と変わりがない。ステップS34bでは、ドアロックがされているか否かをドアロック検出センサ10の検出出力に基づいて判定し、ドアロックがされていない場合は(ステップS34b:YES)、ステップS35へ移り、ドアが開状態であるか否かを、ドア閉検出スイッチ8の検出出力に基づいて判定する。ドアが開状態であれば(ステップS35:YES)、閾値を大きくする(ステップS36)。すなわち、第1の閾値を第2の閾値に置き換える。そして、閾値変更フラグを1にセットする(ステップS37)。また、ドアロックがされていない場合(ステップS34b:NO)、または、ドアが閉状態の場合(ステップS35:NO)は、ステップS36、S37を実行せず、閾値を第1の閾値のままにしてステップS38へ移行する。ステップS38以降の手順については、図4の場合と同じである。
図7の実施形態においては、ドアロックがされておらず、かつ、ドアが開状態の場合にのみ閾値を上げるようにしている。ドアロックがされていない状態でドアが開いたということは、乗員が降車する可能性が高いことを意味しており、やがてドアが閉じられることが想定される。したがって、この状況下で閾値を第1の閾値から第2の閾値に変更して閾値を上げることにより、ドア閉時の衝撃により挟み込みを誤検知して窓が開いてしまうのを未然に防ぐことができる。また、閾値を上げても、乗員は降車するため、挟み込みによる危険性は少ない。一方、ドアロックがされていたり、ドアが閉状態にある場合は、乗員が降車する可能性は低いとみられるので、閾値を第1の閾値のままとすることで、車内にいる乗員が閉動作中の窓に誤って腕などを挟んだ場合でも、本来の挟み込み検知機能が働いて窓が開き、挟み込みによる危険性を回避することができる。
また、ドアの開閉状態やドアロックの有無は、車両に備わっている既存のドア閉検出スイッチ8やドアロック検出センサ10を利用して検出できるので、専用の検出手段を別に設ける必要はなく、簡易かつ安価に実現できる。さらに、ドアの開状態を検知して、ドアが閉じられる前に閾値を上げることができるので、ドアが閉じた時のドア閉検出信号により閾値を上げる場合のような、検出信号の遅延による閾値を上げるタイミングの遅れは発生せず、ドア閉時の誤作動を防止することができる。
図8は、本発明の他の実施形態におけるオート閉処理の手順を示したフローチャートである。なお、マニュアル閉処理、マニュアル開処理、オート開処理の手順については、それぞれ図3、図5、図6で示したもの同じである。図8においては、図4のステップS34aがステップS34cに置き換わっているだけで、それ以外は図4と変わりがない。ステップS34cでは、電源電圧が所定値より低いか否かを電源電圧検出回路11の出力に基づいて判定し、所定値より低い場合は(ステップS34c:YES)、ステップS35へ移り、ドアが開状態であるか否かをドア閉検出スイッチ8の検出出力に基づいて判定する。ドアが開状態であれば(ステップS35:YES)、閾値を大きくする(ステップS36)。すなわち、第1の閾値を第2の閾値に置き換える。そして、閾値変更フラグを1にセットする(ステップS37)。また、電源電圧が所定値以上の場合(ステップS34c:NO)、または、ドアが閉状態の場合(ステップS35:NO)は、ステップS36、S37を実行せず、閾値を第1の閾値のままにしてステップS38へ移行する。ステップS38以降の手順については、図4の場合と同じである。
図8の実施形態においては、電源電圧が所定値より低く、かつ、ドアが開状態の場合にのみ閾値を上げるようにしている。エンジンが作動しているときは、発電機の発電により電源電圧は例えば13.5Vとなるが、エンジンが作動しなくなると発電機の発電は停止し、電源電圧は例えば12V(バッテリー電圧)に低下する。したがって、電源電圧が低下した状態でドアが開いたということは、エンジンが停止して乗員が降車する可能性が高いことを意味しており、やがてドアが閉じられることが想定される。したがって、この状況下で閾値を第1の閾値から第2の閾値に変更して閾値を上げることにより、ドア閉時の衝撃により挟み込みを誤検知して窓が開いてしまうのを未然に防ぐことができる。また、閾値を上げても、乗員は降車するため、挟み込みによる危険性は少ない。一方、電源電圧が低下していなかったり、ドアが閉状態にある場合は、乗員が降車する可能性は低いとみられるので、閾値を第1の閾値のままとすることで、車内にいる乗員が閉動作中の窓に誤って腕などを挟んだ場合でも、本来の挟み込み検知機能が働いて窓が開き、挟み込みによる危険性を回避することができる。
また、ドアの開閉状態や電源電圧低下の有無は、車両に備わっている既存のドア閉検出スイッチ8や電源電圧検出回路11を利用して検出できるので、専用の検出手段を別に設ける必要はなく、簡易かつ安価に実現できる。さらに、ドアの開状態を検知して、ドアが閉じられる前に閾値を上げることができるので、ドアが閉じた時のドア閉検出信号により閾値を上げる場合のような、検出信号の遅延による閾値を上げるタイミングの遅れは発生せず、ドア閉時の誤作動を防止することができる。
図9は、本発明の他の実施形態におけるオート閉処理の手順を示したフローチャートである。なお、マニュアル閉処理、マニュアル開処理、オート開処理の手順については、それぞれ図3、図5、図6で示したもの同じである。図9においては、図4のステップS34aがステップS34dに置き換わっているだけで、それ以外は図4と変わりがない。ステップS34dでは、乗員が在席しているか否かを乗員検出センサ12の検出出力に基づいて判定し、乗員が在席していない場合は(ステップS34d:YES)、ステップS35へ移り、ドアが開状態であるか否かを、ドア閉検出スイッチ8の検出出力に基づいて判定する。ドアが開状態であれば(ステップS35:YES)、閾値を大きくする(ステップS36)。すなわち、第1の閾値を第2の閾値に置き換える。そして、閾値変更フラグを1にセットする(ステップS37)。また、乗員が在席している場合(ステップS34d:NO)、または、ドアが閉状態の場合(ステップS35:NO)は、ステップS36、S37を実行せず、閾値を第1の閾値のままにしてステップS38へ移行する。ステップS38以降の手順については、図4の場合と同じである。
図9の実施形態においては、乗員が在席しておらず、かつ、ドアが開状態の場合にのみ閾値を上げるようにしている。乗員の在席を検知しなくなってドアが開いたということは、乗員が降車する可能性が高いことを意味しており、やがてドアが閉じられることが想定される。したがって、この状況下で閾値を第1の閾値から第2の閾値に変更して閾値を上げることにより、ドア閉時の衝撃により挟み込みを誤検知して窓が開いてしまうのを未然に防ぐことができる。また、閾値を上げても、乗員は降車するため、挟み込みによる危険性は少ない。一方、乗員が在席していたり、ドアが閉状態にある場合は、乗員が降車する可能性は低いとみられるので、閾値を第1の閾値のままとすることで、車内にいる乗員が閉動作中の窓に誤って腕などを挟んだ場合でも、本来の挟み込み検知機能が働いて窓が開き、挟み込みによる危険性を回避することができる。
また、ドアの開閉状態や乗員の在席有無は、車両に備わっている既存のドア閉検出スイッチ8や乗員検出センサ12(着座センサなど)を利用して検出できるので、専用の検出手段を別に設ける必要はなく、簡易かつ安価に実現できる。さらに、ドアの開状態を検知して、ドアが閉じられる前に閾値を上げることができるので、ドアが閉じた時のドア閉検出信号により閾値を上げる場合のような、検出信号の遅延による閾値を上げるタイミングの遅れは発生せず、ドア閉時の誤作動を防止することができる。
図10は、本発明の他の実施形態におけるオート閉処理の手順を示したフローチャートである。なお、マニュアル閉処理、マニュアル開処理、オート開処理の手順については、それぞれ図3、図5、図6で示したもの同じである。図10においては、図4のステップS34aがステップS34eに置き換わっているだけで、それ以外は図4と変わりがない。ステップS34eでは、車のキーの有無をキー検出センサ13の検出出力に基づいて判定する。キー検出センサ13は、車のキーが所定箇所にセットされているか否かを検出する。例えば、通常のキーの場合であれば、キー挿入口にキーが差し込まれているか否かを検出し、スマートエントリーキーの場合であれば、所定の位置にキーが載置されているか否かを検出する。キーが検出されない場合は(ステップS34e:YES)、ステップS35へ移り、ドアが開状態であるか否かを、ドア閉検出スイッチ8の検出出力に基づいて判定する。ドアが開状態であれば(ステップS35:YES)、閾値を大きくする(ステップS36)。すなわち、第1の閾値を第2の閾値に置き換える。そして、閾値変更フラグを1にセットする(ステップS37)。また、キーが検出された場合(ステップS34e:NO)、または、ドアが閉状態の場合(ステップS35:NO)は、ステップS36、S37を実行せず、閾値を第1の閾値のままにしてステップS38へ移行する。ステップS38以降の手順については、図4の場合と同じである。
図10の実施形態においては、キーが検出されず、かつ、ドアが開状態の場合にのみ閾値を上げるようにしている。キーを検出しなくなってドアが開いたということは、キーが抜かれて乗員が降車する可能性が高いことを意味しており、やがてドアが閉じられることが想定される。したがって、この状況下で閾値を第1の閾値から第2の閾値に変更して閾値を上げることにより、ドア閉時の衝撃により挟み込みを誤検知して窓が開いてしまうのを未然に防ぐことができる。また、閾値を上げても、乗員は降車するため、挟み込みによる危険性は少ない。一方、キーが検出されていたり、ドアが閉状態にある場合は、乗員が降車する可能性は低いとみられるので、閾値を第1の閾値のままとすることで、車内にいる乗員が閉動作中の窓に誤って腕などを挟んだ場合でも、本来の挟み込み検知機能が働いて窓が開き、挟み込みによる危険性を回避することができる。
また、ドアの開閉状態やキーの有無は、車両に備わっている既存のドア閉検出スイッチ8やキー検出センサ13を利用して検出できるので、専用の検出手段を別に設ける必要はなく、簡易かつ安価に実現できる。さらに、ドアの開状態を検知して、ドアが閉じられる前に閾値を上げることができるので、ドアが閉じた時のドア閉検出信号により閾値を上げる場合のような、検出信号の遅延による閾値を上げるタイミングの遅れは発生せず、ドア閉時の誤作動を防止することができる。
以上述べた実施形態では、モータ3の負荷を回転速度に基づいて検出するようにしたが、これに代えて、モータ3に流れる電流に基づいて負荷を検出するようにしてもよい。この場合は、負荷検出手段として電流検出回路を設ければよい。また、上記実施形態では、第2の閾値を第1の閾値より大きく設定したが、負荷変化量の計算式によっては、第1の閾値を第2の閾値より大きく設定してもよく、要は、第1の閾値と第2の閾値とが異なった値であればよい。
なお、実施形態で示したような、ドアが開いた状態でイグニッションスイッチが切状態であったり、ドアが開いた状態で乗員の在席やキーが検知されなかったりする状況は、降車時だけでなく乗車時にも起こりうるが、乗車する前は窓の開閉操作ができないので、オート閉動作による挟み込みの心配はない。一方、降車時は、キーを抜いても一定時間(例えば30秒間)オート閉動作のできる車種があるので、この場合には本発明が有効なものとなる。