(第1の実施形態)
以下、移動体の制御装置を、サンルーフ装置93のサンルーフ本体94の制御装置10として適用した第1の実施形態について説明する。
図1に示すように、車両90には、サンルーフ装置93とそのサンルーフ装置93のサンルーフ本体94を制御対象とする制御装置10とが搭載されている。なお、以下の説明では、図1に矢印で示す前後方向を、車両90の前後方向として説明する。
車両90のルーフパネル91には、略四角形状の開口部92が開口している。ルーフパネル91には、開口部92を閉塞可能なサンルーフ装置93が配置されている。
サンルーフ装置93は、移動体としてのサンルーフ本体94と、サンルーフ本体94を前後方向にスライド移動可能に構成されている駆動機構95とを備えている。サンルーフ本体94は、ルーフパネル91の開口部92の開口形状に合わせた略四角形状になっている。以下では、サンルーフ本体94が開口部92の全体を閉塞している状態でのサンルーフ本体94の位置を閉位置という。駆動機構95によってサンルーフ本体94がスライド移動して、サンルーフ本体94が開口部92を全開したときのサンルーフ本体94の位置を開位置という。また、駆動機構95がサンルーフ本体94を閉位置から開位置へ向かって後方にスライド移動させることをサンルーフ本体94の開動作という。また、駆動機構95がサンルーフ本体94を開位置から閉位置へ向かって前方にスライド移動させることをサンルーフ本体94の閉動作という。
駆動機構95には、サンルーフ本体94を移動させる駆動源である電動のモータ96が設けられている。なお、駆動機構95には、モータ96の出力軸の回転を検出する回転センサが内蔵されている。この回転センサは、モータ96の出力軸が一回転する毎にパルスを発生し、そのパルス信号を出力する。また、駆動機構95には、モータ96を制御するための制御装置10が設けられている。
制御装置10は、演算装置、不揮発性の記憶部、揮発性の記憶部等を備えたコンピュータとして構成されている。また、制御装置10は、機能部として、駆動制御部11と検出部12と補正部13と車速取得部14と変化量算出部15とを備えている。なお、制御装置10には、車両90の室内に設けられている操作部81が電気的に接続されている。操作部81は、例えば、サンルーフ本体94をスライド移動させるための押しボタンによるスイッチを挙げることができる。
駆動制御部11は、操作部81からの信号に基づいてモータ96の駆動を制御する。具体的には、駆動制御部11は、モータ96の駆動を制御することで、サンルーフ本体94の開動作又は閉動作又はサンルーフ本体94の移動の停止を行う。
変化量算出部15は、モータ96の回転速度Mrpmを検出する。具体的には、変化量算出部15は、回転センサから出力されるパルス信号に基づいてモータ96の回転速度Mrpmを検出する。さらに変化量算出部15は、回転速度Mrpmの変化から、モータ96の回転速度Mrpmの単位時間あたりの変化量の大きさ(絶対値)として回転速度変化量ΔMrpmを算出する。なお、変化量算出部15は、モータ96の回転速度Mrpmの単位時間あたりの減少量も算出できるので、減少量算出部に相当する。
検出部12は、モータ96の回転速度Mrpmとモータ96の回転角度位置とに基づいてサンルーフ本体94の位置を推定し、サンルーフ本体94が開位置又は閉位置に到達したか否かを検出する。さらに検出部12は、開口部92とサンルーフ本体94との間に物体の挟み込みが発生したことを検出する挟み込み検出処理を実行する。検出部12は、挟み込みの発生を検出すると、挟み込みを解消する挟み込み解消処理を駆動制御部11に実行させる。また、検出部12は、挟み込みの発生を検出すると報知信号を報知部82に出力する。報知信号を受けた報知部82は、車両内の乗員に対する報知動作を実行する。なお、報知部82としては、例えば、車両90の室内に設けられて報知動作として点灯・点滅を行うランプ、報知動作として所定の警告画像を表示するディスプレイ、報知動作として所定の音声を発生するスピーカ等が挙げられる。
補正部13は、検出部12によって実行される挟み込み検出処理において物体が挟み込まれたか否かの判定に用いられる判定値Dの設定を行う。補正部13には、判定値Dの初期値として設定されている基本判定値D0が予め記憶されている。基本判定値D0は、回転速度変化量ΔMrpmが基本判定値D0よりも大きければ挟み込みが発生していると判定するためのしきい値として実験等によって算出されている。また、補正部13は、補正部13に記憶されている補正係数を基本判定値D0に乗算することで補正後判定値D´を算出する。補正係数には、「1」よりも大きい定数が設定されている。したがって、補正後判定値D´は基本判定値D0よりも大きい値である。すなわち、判定値Dに補正後判定値D´が設定されているときは、判定値Dに基本判定値D0が設定されているときよりも、挟み込みの発生が検出されにくくなる。後述する判定値設定処理を補正部13が実行することによって、基本判定値D0又は補正後判定値D´が判定値Dに設定される。
車速取得部14は、車両90の車速VSを規定間隔毎に取得する。さらに、車速取得部14は、車速VSに基づいて加速度Gを算出する。例えば、車両90の速度として最後に取得した車速VSを第1の車速VS1とする。第1の車速VS1の取得タイミングをタイミング(n)として、タイミング(n)の直前のタイミング(n−1)で取得した車速VSを第2の車速VS2とする。車速取得部14は、第1の車速VS1と第2の車速VS2との差分から加速度Gを算出する。
図2を参照して、検出部12が実行する挟み込み検出処理の処理ルーチンについて説明する。本処理ルーチンは、車両90のイグニッション電源又はアクセサリー電源がオンであるときに、所定時間毎に繰り返し実行される。
本処理ルーチンの実行が開始されると、まずステップS101においてサンルーフ装置93が駆動中であるか否かを検出部12が判定する。操作部81が操作されてなくサンルーフ装置93が駆動中ではない場合(S101:NO)、本処理ルーチンが一旦終了される。一方、操作部81が操作されてサンルーフ装置93が駆動中である場合(S101:YES)、処理がステップS102に移行する。
ステップS102では、モータ96の回転速度変化量ΔMrpmが判定値Dよりも大きいか否かを検出部12が判定する。すなわち、ステップS102では、挟み込みが発生しているか否かを判定する。上述したとおり、判定値Dは、回転速度変化量ΔMrpmが判定値Dよりも大きければ挟み込みが発生していると判定するために設定されている値であり、補正部13によって設定される。モータ96の回転速度変化量ΔMrpmが判定値D以下である場合(S102:NO)、本処理ルーチンが一旦終了される。一方、モータ96の回転速度変化量ΔMrpmが判定値Dよりも大きい場合(S102:YES)、処理がステップS103に移行する。
ステップS103では、検出部12が挟み込み解消処理の実行を駆動制御部11に開始させる。挟み込み解消処理では、当該処理の実行開始前後でモータ96の出力軸から伝達される駆動力の回転方向を反転させる。例えば、サンルーフの開動作が行われているときに挟み込み解消処理の実行が開始されると、サンルーフ本体94の移動方向が切り換えられて閉動作が開始される。一方、サンルーフの閉動作が行われているときに挟み込み解消処理の実行が開始されると、サンルーフ本体94の移動方向が切り換えられて開動作が開始される。さらに、検出部12は、報知信号を出力する。挟み込み解消処理の実行開始後にサンルーフ本体94が閉位置又は開位置に移動したことが検出部12によって検出されると、駆動制御部11は、挟み込み解消処理の実行を終了する。その後、本処理ルーチンが終了される。
次に、図3を参照して、補正部13によって実行される判定値設定処理の処理ルーチンについて説明する。本処理ルーチンは、車両90のイグニッション電源又はアクセサリー電源がオンであるときに、所定時間毎に繰り返し実行される。
本処理ルーチンが実行されると、まずステップS201において、車両90の加速度Gが「0」以下の値であるか否かを補正部13が判定する。すなわち、車両90が加速しているかそうでないかを判定する。加速度Gが「0」よりも大きい値である場合(S201:NO)、処理がステップS203に移行する。ステップS203では、判定値Dに基本判定値D0が設定され、その後、本処理ルーチンが一旦終了される。一方、加速度Gが「0」以下の値である場合(S201:YES)、処理がステップS202に移行する。
ステップS202では、車速VSが規定速度VSth1以下であるか否かを補正部13が判定する。本実施形態では、規定速度VSth1には、車両が停車する直前であることを判定するための値として「10km/h」が設定されている。車速VSが規定速度VSth1よりも大きい場合(S202:NO)、処理がステップS203に移行する。ステップS203では、補正部13によって判定値Dに基本判定値D0が設定され、その後、本処理ルーチンが一旦終了される。
一方、ステップS202において車速VSが規定速度VSth1以下である場合(S202:YES)、処理がステップS204に移行する。ステップS204では、車速VSが「0」であるか否かを補正部13が判定する。車速VSが「0」である場合(S204:YES)、処理がステップS205に移行する。
ステップS205では、車速VSが「0」になってからの経過時間Tが、規定時間Tth1よりも小さいか否かを補正部13が判定する。経過時間Tは、車速VSが「0」になった時点から補正部13によってカウントが開始され、車速VSが変化した時点で「0」に初期化される。また、規定時間Tth1は、車両の停止時に発生する虞のある車体の揺り戻しが、車両の停止時点から収束するまでの経過時間として、補正部13に予め記憶されている。経過時間Tが規定時間Tth1以上である場合(S205:NO)、処理がステップS203に移行する。ステップS203では、補正部13によって判定値Dに基本判定値D0が設定され、その後、本処理ルーチンが一旦終了される。一方、ステップS205において経過時間Tが規定時間Tth1よりも小さい場合(S205:YES)、処理がステップS206に移行する。ステップS206では、補正部13によって判定値Dに補正後判定値D´が設定され、その後、本処理ルーチンが一旦終了される。
ステップS204において車速VSが「0」ではない場合には(S204:NO)、ステップS205の処理がスキップされて処理がステップS206に移行する。ステップS206では、補正部13によって判定値Dに補正後判定値D´が設定され、その後、本処理ルーチンが一旦終了される。
図3に示す処理ルーチンが繰り返し実行されることによって、車両の状態に応じて、判定値Dに補正後判定値D´が設定されるか、判定値Dに基本判定値D0が設定されるかの切り換えが行われる。換言すれば、判定値Dを大きくする補正又は当該補正の初期化が実行される。すなわち、車速VSが規定速度VSth1以下であるとともに加速度Gが「0」以下であるときに、そうではないときに比して判定値Dを大きく設定することができる。
図4を参照して、第1の実施形態にかかる制御装置10の作用を説明する。図4には、車両90の車速VSと、加速度Gと、図3に示す処理ルーチンが実行されることによって設定される判定値Dを実線で示している。さらに図4には、比較例としての制御装置によって設定される判定値Dを二点鎖線で示している。比較例の制御装置は、車両の加速度Gが負の値であるときに判定値Dに補正後判定値D´を設定し、車両の加速度Gが負の値ではないときに判定値Dに基本判定値D0を設定する。
図4に示す例では、車両90はタイミングt11の時点から発進する。車両90は、タイミングt11からタイミングt13までの期間では一定の加速度Gで加速し、タイミングt13以降はタイミングt14まで等速で走行している。車速VSは、タイミングt12において規定速度VSth1に達している。なお、タイミングt11以前では、車両90は、車速VSが「0」になってからの経過時間Tが規定時間Tth1以上である状態で停車している。
タイミングt11よりも前では、車速VSが「0」になってからの経過時間Tが規定時間Tth1以上であるため(S205:NO)、実線で示すように判定値Dには基本判定値D0が設定される(S203)。タイミングt11からタイミングt13の期間では、加速度Gが正の値であるため(S201:NO)、判定値Dには基本判定値D0が設定される(S203)。タイミングt13からタイミングt14の期間では、車両90は等速走行しているため加速度Gが「0」であるが(S201:YES)、車速VSが規定速度VSth1よりも大きいため(S202:NO)、判定値Dには基本判定値D0が設定される(S203)。
車両90は、タイミングt14の時点から一定の加速度Gで減速を開始し、タイミングt16において車速VSが「0」になり停車する。なお、タイミングt15において車速VSが規定速度VSth1に達している。また、タイミングt17は、タイミングt16から規定時間Tth1経過後のタイミングである。タイミングt14からタイミングt15までの期間は、加速度Gが負の値であり(S201:YES)、車速VSが規定速度VSth1よりも大きいため(S202:NO)、判定値Dには基本判定値D0が設定される(S203)。タイミングt15からタイミングt16の間は、加速度Gが負の値であり(S201:YES)、車速VSが規定速度VSth1以下である(S202:YES)。さらに、車速VSが「0」ではないため(S204:NO)、判定値Dには補正後判定値D´が設定される(S206)。
タイミングt16以降では、加速度Gが「0」であり(S201:YES)、車速VSが規定速度VSth1以下である(S202:YES)。さらに、車速VSが「0」である(S204:YES)。タイミングt16からタイミングt17の期間では、車速VSが「0」になったタイミングt16からの経過時間Tが規定時間Tth1よりも小さいため(S205:YES)、判定値Dには補正後判定値D´が設定される(S206)。そして、タイミングt17以降では、経過時間Tが規定時間Tth1以上であるため(S205:NO)、判定値Dには基本判定値D0が設定される(S203)。
対して比較例の制御装置では、二点鎖線で示すように、加速度Gが負の値ではないタイミングt14以前において、判定値Dに基本判定値D0が設定される。そして、加速度Gが負の値であるタイミングt14からタイミングt16の期間では、判定値Dに補正後判定値D´が設定される。タイミングt16以降では加速度Gが負の値ではないため、判定値Dに基本判定値D0が設定される。
次に、第1の実施形態にかかる制御装置10の効果について説明する。
(1)車速VSが10km/h以下であるときには、車両90がまもなく停車する可能性があると判定することができる。車両90が停車すると、その直後には車体の揺り戻しが発生することがある。こうした揺り戻しによってモータ96の回転速度が低下すると、誤った挟み込み検出の要因となり得る。特に、サンルーフ本体94が車両前後方向にスライド移動することによって開口部92を開閉するサンルーフ装置93の場合、車両90が停止した際に発生する揺り戻しによって、車体に対する相対加速度がサンルーフ本体94に作用して、モータ96の回転速度Mrpmが低下しやすく、誤った挟み込み検出が行われやすい。
ここで、図2を用いて説明した挟み込み検出処理の処理ルーチンによれば、判定値Dの値が大きいほど挟み込みの発生が検出されにくい。このため、図2及び図3に示す処理ルーチンが繰り返し実行されることによって、車速VSが規定速度VSth1以下であるとともに加速度Gが「0」以下であるときには、そうではないときに比して挟み込みの発生が検出されにくくなる。
制御装置10では、車速VSが規定速度VSth1以下であるという車体の揺り戻しが発生する虞があるときには、判定値Dに基本判定値D0よりも大きい補正後判定値D´が設定される。これによって、車体の揺り戻しが発生する虞があるときに挟み込みが検出されにくくなるため、誤った挟み込みの検出を抑制することができる。
(2)車速VSが10km/h以下であったとしても、すぐには車両90が停車せず、揺り戻しが発生しないこともある。制御装置10では、車両の加速度が「0」以下の値であることを、判定値Dに補正後判定値D´を設定する条件としている。これによって、車両90が停車する蓋然性が高い状況、換言すれば挟み込みの誤検出が発生しやすいときに限って、判定値Dを大きく設定することができる。一方、挟み込みの誤検出が発生しにくいときには判定値Dが大きく設定されないため、実際に挟み込みが発生した場合の検出精度の低下を抑制することができる。
(3)図4にて説明したように、同じ条件で走行している車両に対して本実施形態にかかる制御装置10を適用した場合と、比較例の制御装置を適用した場合とを比較すると、判定値Dが大きくされる期間が異なる。比較例の制御装置では、車両90が減速を開始するタイミングt14から車速VSが規定速度VSth1に達するタイミングt15までの期間にも、判定値Dに補正後判定値D´が設定される。対して制御装置10によれば、タイミングt14からタイミングt15までの期間では、判定値Dに基本判定値D0が設定される。すなわち、本実施形態の制御装置10によれば、挟み込みが検出されにくい期間を短くしつつ、挟み込みの誤検出を抑制することができる。
(4)制御装置10では、第1の車速VS1及び第2の車速VS2の二つの速度の差分から加速度Gを算出する。二点の速度から加速度Gの算出が可能であることによって、車速VSの変化に対する加速度Gの算出の応答性を高めることができる。すなわち、加速度Gの算出を遅延することなく行うことができ、車両90の走行状態に即して判定値Dを設定することができる。
なお、上記第1の実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・上記第1の実施形態では、車速取得部14は、最後に取得した第1の車速VS1と、第1の車速VS1を取得したタイミング(n)の直前のタイミング(n−1)で取得した第2の車速VS2との差分から加速度Gを算出した。このような加速度Gの算出態様にかぎらず、複数のタイミングで取得した車速から加速度を検出すればよい。例えば、タイミング(n−1)の直前のタイミング(n−2)で取得した車速VSを第3の車速VS3として、タイミング(n)で取得した第1の車速VS1とタイミング(n−2)で取得した第3の車速VS3との差分から加速度Gを算出することもできる。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態にかかる制御装置について説明する。上記第1の実施形態では、補正部13が判定値設定処理として図3に示す処理ルーチンを実行したが、第2の実施形態では、補正部13は、判定値設定処理として図3に示す処理ルーチンに代えて図5に示す処理ルーチンを実行する。その他の構成については、第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
図5に示す処理ルーチンは、車速VSが開始速度VSth2以下から開始速度VSth2を超えたときに実行が開始され、車速VSが「0」になってから規定時間Tth1が経過するまでの期間に所定時間毎に繰り返し実行される。開始速度VSth2には、規定速度VSth1よりも高い速度が設定されている。
本処理ルーチンが実行されると、まずステップS301において、車速VSが規定速度VSth1以下であるか否かを補正部13が判定する。車速VSが規定速度VSth1よりも大きい場合(S301:NO)、処理がステップS302に移行する。ステップS302では、補正部13によって判定値Dに基本判定値D0が設定され、その後、本処理ルーチンが一旦終了される。
一方、ステップS301において車速VSが規定速度VSth1以下である場合(S301:YES)、処理がステップS303に移行する。ステップS303では、車速VSが「0」であるか否かを補正部13が判定する。車速VSが「0」である場合(S303:YES)、処理がステップS304に移行する。
ステップS304では、車速VSが「0」になってからの経過時間Tが、規定時間Tth1よりも小さいか否かを補正部13が判定する。経過時間Tが規定時間Tth1以上である場合(S304:NO)、処理がステップS302に移行する。ステップS302では、補正部13によって判定値Dに基本判定値D0が設定され、その後、本処理ルーチンが一旦終了される。一方、ステップS304において経過時間Tが規定時間Tth1よりも小さい場合(S304:YES)、処理がステップS305に移行する。ステップS305では、補正部13によって判定値Dに補正後判定値D´が設定され、その後、本処理ルーチンが一旦終了される。
一方、ステップS303において車速VSが「0」ではない場合(S303:NO)、ステップS304の処理がスキップされて処理がステップS305に移行する。ステップS305では、補正部13によって判定値Dに補正後判定値D´が設定され、その後、本処理ルーチンが一旦終了される。
図5に示す処理ルーチンが繰り返し実行されることによって、車速VSが規定速度VSth1以下であるときに、そうではないときに比して判定値Dを大きく設定することができる。
次に、図6を参照して、第2の実施形態にかかる制御装置10の作用を説明する。
図6では、車両90はタイミングt21の時点から発進する。車両90は、タイミングt21からタイミングt24の期間では一定の加速度Gで加速し、タイミングt24以降はタイミングt25まで等速で走行している。車速VSは、タイミングt22において規定速度VSth1に達し、タイミングt23において開始速度VSth2に達している。
車速VSが開始速度VSth2に達するタイミングt23以前では、図5に示す処理ルーチンの実行が開始されないため、判定値Dには初期値である基本判定値D0が設定されている。タイミングt23からタイミングt25の期間は、車速VSが規定速度VSth1よりも大きいため(S301:NO)、判定値Dに基本判定値D0が設定される(S302)。
車両90は、タイミングt25の時点から一定の加速度Gで減速を開始し、タイミングt27において車速VSが「0」になり停車する。なお、タイミングt26において車速VSが規定速度VSth1に達している。また、タイミングt28は、タイミングt27から規定時間Tth1経過後のタイミングである。
タイミングt25からタイミングt26の期間は、車速VSが規定速度VSth1よりも大きいため(S301:NO)、判定値Dに基本判定値D0が設定される(S302)。タイミングt26からタイミングt27の期間は、車速VSが規定速度VSth1以下である(S301:YES)。さらに、車速VSが「0」ではないため(S303:NO)、判定値Dには補正後判定値D´が設定される(S305)。タイミングt27からタイミングt28の期間では、車速VSが「0」になったタイミングt27からの経過時間Tが規定時間Tth1よりも小さいため(S304:YES)、判定値Dには補正後判定値D´が設定される(S305)。そして、タイミングt28以降では、経過時間Tが規定時間Tth1以上であるため(S304:NO)、判定値Dには基本判定値D0が設定される(S302)。
次に、第2の実施形態にかかる制御装置の効果について説明する。
(5)第1の実施形態と同様に、判定値設定処理の実行によって判定値Dを補正することができる。これによって、誤った挟み込みの検出が行われることを抑制できる。
(6)第1の実施形態と比較して、加速度Gの算出を伴わずに、判定値設定処理を実行することができる。すなわち、誤った挟み込みの検出が行われることを、加速度Gを算出することなく抑制できる。
その他、上記各実施形態に共通して変更可能な要素としては次のようなものがある。
・規定速度VSth1には、「10km/h」よりも小さい値を設定することもできる。例えば規定速度VSth1が「5km/h」でもよいし「0km/h」でもよい。規定速度VSth1として「10km/h」よりも小さい値が設定されていれば、規定速度VSth1を用いたステップS202(図3)又はステップS301(図5)の処理によって、車両が停車寸前であるか否かを判定することができる。なお、車体の揺り戻しが発生するのは、車両が停止した直後であるため、車両の速度が0km/h以下であるときに判定値を大きくすることによって、挟み込みが誤って検出されやすいときに誤検出を抑制できる。
・上記実施形態では、基本判定値D0に補正係数を乗算して補正後判定値D´を算出した。これに代えて、基本判定値D0に予め決められた補正値を加算して補正後判定値D´を算出してもよい。さらに、基本判定値D0よりも大きい値として緩和判定値D1が補正部13に予め記憶されている構成を採用することもできる。図3のステップS206又は図5のS305において、判定値Dに緩和判定値D1を設定することによって、車速VSが規定速度VSth1以下であるときには、そうではないときに比して判定値Dを大きい値に設定することができる。このように緩和判定値D1を設定する場合でも、基本判定値D0を緩和判定値D1に補正したといえる。
・上記各実施形態では、車速VSが規定速度VSth1以下になったときに、判定値Dに補正後判定値D´を設定することで判定値Dを大きくした。判定値Dを大きく設定する態様としては、図7に示すように車速VSが規定速度VSth1以下になったときから判定値Dを徐々に増加させることもできる。
図7に示す例では、車両が発進するタイミングt31から車両が減速して車速VSが規定速度VSth1に達するタイミングt35までの期間では基本判定値D0が判定値Dに設定される。タイミングt35の時点から判定値Dが徐々に大きくされる。判定値Dは、車速VSが「0」になるタイミングt36において補正後判定値D´と等しくなるように増加される。タイミングt36からタイミングt37までの期間では、判定値Dは補正後判定値D´に維持される。タイミングt36から規定時間Tth1が経過したタイミングt37において、基本判定値D0が判定値Dに設定される。
なお、判定値Dの増加度合い及び補正後判定値D´の大きさは、補正後判定値D´を算出する際に基本判定値D0に乗算する補正係数の値を変更することによって、車両の減速時における車速VSが大きいほど大きくすることもできる。或いは、車両の減速時に車輪に付与される制動力の大きさや、車両の運転者がブレーキペダル等の制動操作部材を操作する力が大きいほど、判定値Dの増加度合い及び補正後判定値D´を大きくすることもできる。車速VSが大きい状態から車両が停車した場合や、大きな制動力が付与されている場合には、車両の停止時に生じ得る揺り戻しが大きくなる虞がある。こうした場合に判定値Dを大きく設定して挟み込みが検出されにくくすることによって、揺り戻しに起因する挟み込みの誤検出をより抑制することができる。
・上記各実施形態の挟み込み検出処理では、モータ96の回転速度変化量ΔMrpmが判定値Dよりも大きいときに、検出部12が挟み込みを検出した。挟み込み検出処理としては、挟み込みが発生していない場合のモータ96の回転速度として定められている基準モータ回転速度に対する回転速度Mrpmの乖離量が、判定値Eよりも大きいときに、挟み込みを検出するように構成することもできる。すなわち、基準モータ回転速度に対する回転速度Mrpmの減少量が大きいときに挟み込みが発生していると判定する。この場合の判定値設定処理としては、車速VSが規定速度VSth1以下であるときに、そうではないときに比して判定値Eを大きい値に設定するようにするとよい。このように、誤った挟み込みの検出がされやすいときに挟み込みが検出されにくくするように判定値を設定することによって、上記各実施形態と同様に、誤った挟み込みの検出がされやすいときに挟み込みの誤検出を抑制することができる。
なお、基準モータ回転速度は、挟み込み検出処理が実行される時点でのサンルーフ本体94の位置に応じて推定することができる。例えば、補正部13が、サンルーフ本体94の位置と、車両90の停車中におけるモータ96の回転速度Mrpmとの関係を示すマップを記憶しており、当該マップに基づいてサンルーフ本体94の位置に相関する回転速度Mrpmを基準モータ回転速度としてすることができる。
・上記各実施形態の挟み込み検出処理では、モータ96の回転速度変化量ΔMrpmが判定値Dよりも大きいときに、検出部12が挟み込みを検出した。挟み込み検出処理としては、モータ96の回転速度Mrpmが、挟み込みが発生していない場合のモータ96の回転速度として定められている基準モータ回転速度よりも低い期間が判定時間Tth2よりも長く継続した場合に、挟み込みを検出するように構成することもできる。すなわち、サンルーフ装置93の駆動を開始したとしてもモータ96の回転速度Mrpmが上昇せずに低い状態が継続しているときに挟み込みが発生していると判定する。この場合の判定値設定処理としては、車速VSが規定速度VSth1以下であるときに、そうではないときに比して判定値としての判定時間Tth2を大きい値に設定するようにするとよい。これによって、上記各実施形態と同様に、誤った挟み込みの検出がされやすいときに挟み込みの誤検出を抑制することができる。
・判定値設定処理をサンルーフ本体94が閉動作中であるときにのみ実行することもできる。挟み込みが発生しやすい状況に限って判定値設定処理を実行することによって、判定値Dの補正が実行される頻度を少なくすることができる。
・上記各実施形態では、挟み込み解消処理としては、サンルーフ本体94の移動方向を反転させる処理を例示した。挟み込み解消処理としては、モータ96の駆動を停止してサンルーフ本体94の移動を停止する処理を採用することもできる。
・図3のステップS103において、検出部12は、駆動制御部11に挟み込み解消処理の実行を開始させるとともに、報知信号を出力した。報知信号を出力せずに挟み込み解消処理の実行を開始させてもよいし、挟み込み解消処理の実行を開始させずに報知信号を出力してもよい。また、これらの処理に代えて又は加えて、他の処理を実行してもよい。
・上記各実施形態では、移動体としてのサンルーフ本体94が車両前後方向にスライド移動することによって開口部92を開閉するサンルーフ装置93を例示した。サンルーフ装置93としては、車両前後方向へのスライド移動は行わず、車両上方への移動(チルトアップ)によって開口部を開放し、チルトアップした分だけ下降(チルトダウン)することによって開口部を閉塞するサンルーフを備えるサンルーフ装置を採用することもできる。
・移動体は、サンルーフ本体94に限らない。例えば、電動ハードトップ、アクティブスポイラーといった移動体にも、上記実施形態の制御装置10と同様の構成を適用することが可能である。その他、移動体としては、電動で開閉する窓ガラスやドア等を採用することもでき、こうした移動体にも、上記実施形態の制御装置10と同様の構成を適用することが可能である。
次に、上記実施形態から把握することのできる技術的思想を記載する。
(イ)前記減少量算出部は、単位時間あたりの前記モータの回転速度の減少量を前記減少量として算出する。
(ロ)前記減少量算出部は、挟み込みが発生していない場合の前記モータの回転速度として定められている基準モータ回転速度に対する実際のモータの回転速度の乖離量を前記減少量として算出する。
(ハ)前記回転速度が基準モータ回転速度よりも低い期間が判定時間以上であるときに、前記開口部と前記移動体との間への物体の挟み込みを検出する検出部を備える。