JP4389897B2 - 自動車用ドアの開動作規制装置 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車用ドアの開動作を規制する装置に関する。
一般的な自動車用ドアはヒンジによって車体に取り付けられ、開閉動作はヒンジを中心とした旋回によって行なわれるので、ドアの開放時にはその開度に応じてドアは車体の外側に突出することになる。このため、このドア開放時のドアの突出領域に隣接車両等の障害物があると、ドアがこの障害物に干渉してしまう。
そこで、従来、自動車用ドアには、ドアを最大に開いた全開状態(全開位置)と、途中まで開いた半開状態(中間保持位置)とに停止させる機構として、いわゆるドアチェッカが装備されている。
このドアチェッカは、車体側のドアヒンジ部分の近傍に基端を揺動自在に取り付けられ先端にストッパを備えたアームと、ドア側に設けられ該アームに対して相対的に摺動するスライダを有する摺動部材とからなっている。ドアの全開時には、スライダがストッパに当接してドアのそれ以上の開放を完全に規制する。また、スライダはアームの周面に弾性力により押し付けられており、アームの中間部の周面には、縮径部等の屈曲部分がそなえられ、スライダがこの屈曲部分において大きな摺動抵抗を受けることで、ドアが中間保持位置に保持される。
この中間保持位置について図7を用いて説明する。図7は従来の自動車用ドアの開閉操作に必要な操作力(操作トルク)とドアの開度との対応関係を示すグラフである。図7に示すように、ドアの全閉位置(図中0)と全開位置(図中B)との間には中間保持位置(図中A)が設定されており、中間保持位置の前後では、上記のようにスライダのアームに対する摺動抵抗が増大するため、ドアの開閉操作を行う際のドアの開閉操作に必要な操作トルクが大きくなる。
このような中間保持位置を設けることにより、中間保持位置まで開いた状態ではドアを手で保持しなくてもドア操作者の意図に反してドアが開閉してしまうことを防止することができドアを半開状態で維持することができる。
この中間保持位置の個数や位置(ドア開度)あるいは中間保持位置からドアを開閉させるための操作トルク等の設定はドアチェッカのアームの形状やスライダのアームに対する押圧力により決定されている。
ところが、このようなドアチェッカにより設定しうる中間保持位置は、その構造上の条件(アーム長を大きくすることができず、中間保持のための屈曲部を多く形成できない)から1又は2箇所程度しか設けることができず、例えば狭い駐車場等、自車両と隣接する他車両等の障害物との距離が小さい場合にはドアを中間保持位置まで開放させる前にドアと障害物とが接触してしまうことがある。
このように障害物までの距離が近い場合には、ドアを中間保持位置まで開放させることができないため、ドアの障害物への接触を避けるためにドア操作者等が手などでドアを保持し続ける必要があり、これは大きな負担となる。
また、ドアチェッカの場合、中間保持位置における操作トルクを大きく設定しすぎると、ドアを中間保持位置からさらに大きく開く場合や中間保持位置から閉める場合に、操作者に大きな負担となることから、操作トルクが一定以下になるように設定しなくてはならない。このため、風による風圧や路面の傾斜等によりドアの自重がドアに加わることで、中間保持位置における操作トルクを上回る力がドアに作用して、ドアが中間保持位置から開放してしまうことがある。
このような課題に関して、特許文献1には、ドアの開放に支障が生じるような障害物をセンサにより検出し、障害物を検知した場合にはモータを駆動してストッパ杆を当接させることによりドアの開放をロックする技術が提案されている。
特開平8−128261号公報
ところで、特許文献1の技術によれば、障害物を検知した場合にドアの開放を任意のタイミング(つまり、無段階)で規制することができるが、ドアのヒンジ部分にモータやストッパ杆等の比較的複雑な機構を新たに追加する必要があり、コスト増を招く。また、障害物センサにより障害物を検知してからモータを作動させてストッパ杆を機械的に駆動してドアの開放を規制するため、障害物を検知してからドアの開放が規制されるまでの応答遅れが大きいことが考えられる。
本発明はこのような課題に鑑み創案されたもので、より簡素な構成で応答性良くドアの開動を規制してドアと障害物との接触等を防止できるようにした、自動車用ドアの開動作規制装置を提供することを目的とする。
上述の目的を達成するために、請求項1記載の本発明の自動車用ドアの開動作規制装置は、車体のドア開口に開閉可能に取り付けられた自動車用ドアと、一端が前記車体に回動可能に取り付けられ他端が前記自動車用ドアに設けられた開口部に出入り可能に挿入されたアームと、前記自動車用ドアに設けられ前記アームに対して相対的に摺動する摺動部とを有し、前記自動車用ドアを全開位置と中間保持位置とに保持するドアチェッカと、前記ドアチェッカの前記アームの他端に先端部が係止されるとともに前記自動車用ドア側の部位に基端部が巻回されて支持され、前記自動車用ドアの開動に応じて繰り出し可能に設けられたワイヤと、前記ワイヤの基端部が係止されて前記ワイヤが巻回されるとともに前記ワイヤを巻き取る方向に常時付勢され、前記自動車用ドアの開方向への移動に応じて前記ワイヤの繰り出し方向に回転されるとともに前記自動車用ドアの閉方向への移動に応じて前記ワイヤの巻き取り方向に回転されるスプールと、断接を制御されて前記スプールの回転を規制しうるクラッチであって、前記スプールの回転を規制している際に、前記スプールに所定値以上の荷重が加わると前記スプールの回転を許容するよう回転規制力が制限されているクラッチを有し、前記クラッチの接合により前記スプールの回転を規制して前記自動車用ドアの開動に応じた前記ワイヤの繰り出しを停止するワイヤストッパと、前記ワイヤストッパの作動を操作するスイッチとを備えることを特徴としている。
また、請求項記載の本発明の自動車用ドアの開動作規制装置は、前記自動車用ドアの開動時に前記自動車用ドアの障害物への接近を検知する障害物センサと、前記障害物センサの検知結果に基づいて前記ワイヤストッパを作動させるコントローラをそなえたことを特徴としている。
また、請求項3記載の本発明の自動車用ドアの開動作規制装置は、前記コントローラが、前記ワイヤストッパの作動中に前記自動車用ドアが閉じられた場合に、前記自動車用ドアが閉じられた時点から所定時間後にワイヤストッパの作動を停止させて前記スプールの回転規制を解除することを特徴とする。
また、請求項4記載の本発明の自動車用ドアの開動作規制装置は、前記クラッチが、電磁クラッチであることを特徴とする。
また、請求項5記載の本発明の自動車用ドアの開動作規制装置は、前記クラッチが、前記スプールとの接合状態において、前記ワイヤの繰り出し方向の回転のみを規制するワンウェイクラッチであることを特徴とする。
請求項1記載の本発明の車両用ドアの開動作規制装置によれば、簡素な構成により応答性良く自動車用ドアの開動を無段階で規制することができるとともに、ドアの開動を規制中であってもドアを閉動させる場合にはワイヤが弛むことにより自動車用ドアを抵抗無く閉動させることができる。
請求項記載の本発明の車両用ドアの開動作規制装置によれば、車体に対して回動するヒンジ式ドアにおいて、ワイヤの繰り出しを規制することにより、一般的に用いられるドアチェッカのアームの出入りを規制するという簡易な構成で、ドアの開動を規制することができる。
請求項記載の本発明の車両用ドアの開動作規制装置によれば、ドア操作者がスイッチをオンとした時点におけるドア開度以上にドアが開放されることが規制されるので、例えば、ドア操作者が障害物と接触しない程度にドアを手動で開放させた時点でスイッチをオンとすれば、ドア操作者がドアを保持しなくても障害物との接触を防止することができる。
請求項記載の本発明の車両用ドアの開動作規制装置によれば、ワイヤを巻回したスプールの回転をクラッチにより規制するという簡易な構成でワイヤの繰り出しを規制して自動車用ドア開動を規制することができる。
請求項記載の本発明の車両用ドアの開動作規制装置によれば、自動車用ドアの閉動に応じてワイヤがスプールに巻き取られるので、ワイヤが撓むことを防止してクラッチによりスプールの回転を規制した時点で応答性良くドアの開動を規制することができる。
請求項記載の本発明の車両用ドアの開動作規制装置によれば、クラッチの誤作動等によりドア操作者が意図せずにドアの開動が規制されてしまった場合でも自動車の搭乗者が車内に閉じ込められるような事態を回避することができる。
請求項記載の本発明の車両用ドアの開動作規制装置によれば、請求項1の効果に加え、ドア操作者がドアの開動の障害となる障害物を認識していない場合でも自動的にドアの開動が規制されるのでドアと障害物とが接触することを回避することができる。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。図1〜図5は本発明の一実施形態に係る自動車用ドアの開動作規制装置を説明するためのものであって、図1は自動車用ドアの開動作規制装置の概略構成を模式的に示す図、図2は車体とドア及びドアチェッカとの取付部の断面を示す断面図、図3はプーリ及びクラッチの構成を模式的に示す断面図、図4はドアの開動作規制装置の制御系にかかる電気回路図、図5は各スイッチの入力信号とクラッチの作動との対応関係を示す作動チャートである。
図1に示すように本実施形態のドアの開動作規制装置は車体1,ドア(自動車用ドア)2,ドアチェッカ3,ワイヤ4,プーリ(スプール)5,クラッチ(ワイヤストッパ)6,クラッチコントローラ7,ドア開閉センサ8,障害物センサ9,車室側操作部10,車外操作レバー11,ドア保持用スイッチ(スイッチ)12,電子制御装置(ECU)20等から構成されており、ドア2は図示省略のドアヒンジを介して車体1に回動可能に取り付けられている。なお、ドア保持用スイッチは、車内側から操作するスイッチ12Aと、車内側から操作するスイッチ12bとがあるが、これらのスイッチ12A及び12Bを合わせて表現する場合には符号12とする。
また図2に示すようにドアチェッカ3はドア2に設けられた開口に挿入されており、ドアチェッカ3はヒンジ部3A,アーム部(アーム)3B,摺動部材3C,ストッパ部3Dから構成されている。
ヒンジ部3Aはドア2の開口から突出して車体1に固設されている。アーム部3Bの一端はヒンジ部3Aを中心に回動可能に接続され、他端側にはアーム部3Bよりも十分に拡径したストッパ部3Dがアーム部3Bと一体に形成されている。
摺動部材3Cは、アーム部3Bの周面に弾性力によって押し付けられた状態でアーム部3Bに対して相対動するスライダ(図示略)がそなえられており、ドア2の内部にボルト等により固設されている。そしてアーム部3Bが摺動部3Cの中央部分に設けられた開口に挿通され、図2に2点鎖線で示すようにアーム部3Bがドア2の開閉動作に応じて摺動部3Cに対して相対的に進退することにより摺動部材3Cのスライダとアーム部3Bとが摺動するようになっている。
また、摺動部材3Cのスライダとアーム部3Bとの摺動範囲は摺動部3Cがストッパ部3Dと接触することにより規制されるようになっている。つまり、摺動部材3Cのスライダとストッパ3Dとが接触する位置がドア2の最大ドア開度となる。
なお、アーム部3Bの中央付近にはドア2の中間保持位置を規定するための凹部3Eが設けられており、摺動部材3Cのスライダがこの凹部3Eにおいてその屈曲面に圧接することにより大きな摺動抵抗を受けるようになっており、この摺動抵抗により、ドアを開閉方向に移動する際のドアの開閉に必要な操作力(操作トルク)が適度に設定されている。
ドアチェッカ3のストッパ部3Dにはワイヤ4の一端(先端部)が接続されている。そしてワイヤ4の他端側(基端部)はプーリ5に巻回された上でプーリ5に接続され、アーム部3Bの相対変位に応じてプーリ5が回転するとともにワイヤ4がプーリ5から繰り出されるようになっている。また、詳細な構成については後述するがプーリ5はワイヤ4を巻き取る方向(つまり、ドア2の閉方向)に付勢されており、車両用ドア2が閉方向に移動するにつれてワイヤ4がプーリ5に巻き取られるようになっている。
また、プーリ5にはプーリ5の回転を規制してワイヤ4の繰り出しを停止させるためのクラッチ6が接続されている。なお、クラッチ6は電磁クラッチであり、クラッチ6の断接はクラッチコントローラ7によって制御されるようになっている。
車室側操作部10はドア2のインナパネル(車室内側パネル)に取り付けられており、車室側操作部10の近傍にドア保持用スイッチ12Aが取り付けられている。車室側操作部10にはドアラッチの係合を解除するためのドア開レバー10Aとドア2の施錠及び解錠を行うドアロックボタン10Bとが備えられている。
車外操作レバー11はドア2のアウタパネル(車外側パネル)に取り付けられており、車外操作レバー11の近傍にドア保持用スイッチ12Bが取り付けられている。車外操作レバー10はドアラッチの係合を解除するためのレバーであり、ドアハンドルを兼ねている。
ドア保持用スイッチ12A,12Bはそれぞれ押しボタンとして構成されており、ボタンを1回押すとスイッチオンとなり、ボタンを1秒以内に2回押すとスイッチオフとなるように構成されている。このようにスイッチオフの際にボタンを2回押すように構成とするのは、誤操作等によってドア操作者の意図に反してスイッチオフとなることを防止するためであるが、単にボタンを押す毎にスイッチのオンとオフとが切り替わるように構成してもよい。また、ドア保持用スイッチ12Bは、例えば、キーレスオペレーションシステム等の他のシステムのスイッチと兼用としてもよい。
各ドア保持用スイッチ12A,12Bのオン信号はECU20に入力されるようになっている。また、ドア保持用スイッチ12A,12BにはそれぞれLED(発光ダイオード)12C,12Dが備えられており、後述するようにドア2の開動が規制中の状態となると各LED12C,12Dが点灯するようになっている。
つまり、ここではLEDの点灯によりドア操作者がドア2の開動が規制中であるか否かをLEDの点灯により視覚的に認識できるようになっているが、このLEDの点灯については省略してもよく、また、LEDの代わりに他の視覚的に認識させる手段やブザー等の聴覚的に認識させる手段を用いるようにしてもよい。
ドア開閉センサ8はドア2の開閉状態を検知するセンサであり、以下、ドア2が開いている場合をドア開閉センサ8がオン状態とする。そして、ドア開閉センサ8がオンの場合にはオン信号をECU20に入力するようになっている。
障害物センサ9はドア2の車両後方側の下部に設けられており、ドア2の開操作の障害となる障害物の接近を検知するようになっており、障害物の接近を検知した場合はオン信号をECU20に入力するようになっている。
プーリ5及びクラッチ6の構成についてより詳しく説明する。図3に示すように、プーリ5及びクラッチ6は共に軸部材13が挿通されている。軸部材13の両端部にはそれぞれリング状のリング部13A,13Bが形成されており、プーリ5及びクラッチ6の軸部材13からの脱落を防止するようになっている。
プーリ5は回転部材5A,ブシュ5B,5F,スプリング5C,カバー部材5D,トルク伝達板5H,コイルバネ5Iにより構成されている。回転部材5Aは各ブシュ5B,5Fを介して軸部材13に対して回転可能に装着されている。そして、回転部材5A及びスプリング5Cを覆うようにカバー部材5Dが設けられている。
回転部材5Aの凹部5Eにはワイヤ4が巻回され、回転部材5Aの回転に応じてワイヤ4が繰り出し及び巻き取り可能に構成されている。また、回転部材5Aは、一端をカバー部材5Dに係止されたスプリング5Cの他端と接続され、スプリング5Cによりワイヤ4を巻き取る方向(つまり、ドア2が閉じる方向)に常時付勢されている。
回転部材5Aのクラッチ6側には円筒状の嵌合部5Gが形成されており、トルク伝達板5Hに形成された嵌合溝5Jに挿入されている。また、回転部材5Aとトルク伝達板5Hとはコイルバネ5Iを介して接続されており、コイルバネ5Iによりトルク伝達板5Hが回転部材5A側に付勢されている。
なお、トルク伝達板5Hはクラッチ6の通電によりクラッチ6側に移動するようになっているが、嵌合溝5Jの深さはトルク伝達板5Hがクラッチ6と接触する位置に移動しても嵌合部5Gとの間に十分にトルクを伝達可能な程度の深さに形成されている。
クラッチ6は軸部材13に固設されており、クラッチ6のプーリ5側の面には所定レベル以上の摩擦係数を有する摩擦面6A形成されている。
そして、クラッチコントローラ7によりクラッチ6が通電されるとトルク伝達板5Hがクラッチ6側に移動してクラッチ6の摩擦面6Aと互いに接触し、トルク伝達板5Hの回転が規制され、嵌合部5Gと嵌合溝5Jとの摩擦によって回転部材5Aの回転が規制されるようになっている。
なお、ここではクラッチ6は回転部材5Aの回転方向と関係なくクラッチ6に通電されると回転部材5Aの回転を規制するように構成しているが、クラッチ6は回転部材5Aのワイヤ繰り出し方向(つまり、ドア開動方向)の回転のみを規制するようなワンウェイクラッチを用いて構成してもよい。
また、誤作動時等の不測の事態が起こった場合を考慮してこの回転規制力は所定値以下に制限されており、プーリ5に回転規制力以上の回転トルクが加わると摩擦面6Aとトルク伝達板5Hあるいは嵌合溝5Jと嵌合部5Gとが滑ってプーリ5が回転できるようになっている。
ここで、ECU20の機能構成について説明する。図4に示すように、ECU20にはドア開閉センサ8,障害物センサ9,ドア保持用スイッチ12A,12Bからそれぞれのオン信号が入力されるようになっている。なお、図中では表現を簡単にするため各ドア保持用スイッチ12A,12Bは一つのスイッチとして図示すると共に各ドア保持用スイッチ12A,12BのLED12C,12Dも一つのものとして図示している。
ECU20は、ドア開閉センサ8がオンの状態で、且つ、障害物センサ9及び/又はドア保持用スイッチがオンの状態と場合に、クラッチコントローラ7にクラッチオンの信号を送信するように構成されている。
本発明の一実施形態に係る自動車用ドアの開動作規制装置は上述のごとく構成されているので、以下のような作用および効果を奏する。
図5を用いてECU20及びクラッチ6の作動態様について説明すると、T0の時点ではドア開閉センサ8のみがオンの状態であり、このときにはクラッチ6は通電せずドアの開動は規制されない。
そして、T1の時点でドア操作者がドア保持用スイッチ12A,12Bのいずれかのボタンを押すとドア保持用スイッチがオンとなりECU20にオン信号が入力される。このとき、ドア開閉センサ信号がオン且つドア保持用スイッチがオンの状態となり、ECU20はクラッチコントローラ7にクラッチオン信号を送信してクラッチ6の通電を開始する。
そして、クラッチ6が十分に通電されドア2の開動が十分に規制されるとドア2の開操作制御がオンの状態(つまり、ドア2の開動を規制中)であることを示すため各LED12C,12Dが点灯する。
上記のようにクラッチ6が通電されると、クラッチ6によりプーリ5の回転が規制されてワイヤ4のプーリ5からの繰り出しが規制されることとなり、ドアチェッカ3のアーム部3Bがドアの開き方向に相対変位することができずにドア2の開動が規制されることとなる。またこのとき、ドア2を閉動させた場合にはワイヤ4が弛むことにより通常通りにドア2が閉動され、規制力は働かない。
次にT2の時点では、ドア操作者がドア保持用スイッチ12A,12Bのいずれかのボタンを1秒以内に2回押すことによりドア保持用スイッチ信号がオフとなる。ドア保持用スイッチ信号がオフとされるとECU20はクラッチ6の通電を停止させる信号をクラッチコントローラ7に送信し、クラッチ6の通電が停止する。このときドア2の開動の規制が解除され、LED12C,12Dの点灯も中止される。
その後T3の時点では、再びドア保持用スイッチ信号がオンとされる。ECU20はクラッチコントローラ7に信号を送信してクラッチ6の通電を開始させる。そしてドアの開動が十分に規制されると各LED12C,12Dが点灯する。
T4の時点ではドアが完全に閉じられドア開閉センサがオフとなる。ECU20はドア開閉センサ信号がオフとなった時点から所定時間(1〜2秒)後にクラッチ6の通電を停止するようにクラッチコントローラ7に信号を送信する。
このように、本発明の一実施形態に係る自動車用ドアの開動作規制装置によれば、自動車には通常一般的に備えられているドアチェッカ3にワイヤ4を接続し、ワイヤ4の繰り出しと巻き取りを行うプーリ5とプーリ5の回転を規制するクラッチ6を備える簡素な構成でドア2の開動を任意のドア開度において規制することができる。また、ドア2が開いた状態でドア操作者によりドア保持用スイッチがオンとされるか、あるいは、障害物センサ9が障害物の接近を検知した場合にはクラッチ6によりプーリ5の回転を規制することで応答性良くドア2の開動を規制できるという利点もある。
これにより、例えば、ドア操作者が障害物と接触しない程度にドアを手動で開放させた時点でドア保持用スイッチをオンとすれば、ドア操作者がドアを保持しなくてもドア2と障害物との接触を防止することができる。また、ドア操作者が障害物を認識していない場合でも障害物センサ9が障害物を検知することにより自動的にドアの開動が規制されるのでドアと障害物とが接触することを回避することができる。
さらに、ドア2の開動が規制中の状態であってもワイヤ4が弛むことによりドア2を通常通り閉動させることができるので、例えば、自車の側方を他車や自転車等を走行するような場合等必要に応じて円滑にドア2を閉じることができる。
また、ドア2の開動規制中にドア2が閉じられる等してワイヤ4が弛んだ状態のままでは、次回、ドア2の開動を規制する際にはプーリ5の回転を規制してもワイヤ4の弛み分だけドア2の開動が規制されるまでに応答遅れが生じることになる。そこで、本実施形態ではプーリ5がワイヤ4を巻き取る方向(ドア2が閉じる方向)にスプリング5Bにより付勢されているので、クラッチ6によるプーリ5の回転規制が解除されると自動的にワイヤ4がプーリ5に巻き取られ、次にドア2の開動を規制する際にワイヤ4の弛みによる応答遅れが生じることを防止することができる。なお、クラッチ6がワンウェイクラッチである場合にはワイヤ4は常に弛むことなくドア2の開度に応じて長さだけプーリ5から繰り出された状態となる。
次に本実施形態の変形例について図6を用いて説明する。図6は本実施形態の変形例にかかるプーリ及びクラッチの構成を模式的に示す断面図である。本変形例では上述の実施形態と比較してプーリ及びクラッチの構成のみが異なっている。図6に示すように、本変形例ではプーリ5及びクラッチ6に代わって2軸式のプーリ14及びクラッチ15を用いて構成されている。
プーリ14とギア16Aは直列に配置されており、プーリ14及びギア16Aには軸部材17が挿通されている。そして、軸部材17の両端部にはそれぞれリング状のリング部17A,17Bが形成されプーリ14及びギア16Aの脱落を防止するようになっている。
プーリ14は回転部材14A,スプリング14B,カバー部材14Cにより構成されており、回転部材14Aはブシュ14E,14Fを介して軸部材17に対して回転可能となっている。また、回転部材14A及びスプリング14Bを覆うようにカバー部材14Cが設けられている。
そして、回転部材14Aの凹部14Dにはワイヤ4が巻回され、回転部材14Aの回転に応じてワイヤ4が繰り出し及び巻き取り可能に構成されている。また、回転部材14Aは、一端をカバー部材14Cに係止されたスプリング14Bの他端と接続され、スプリング14Bによりワイヤ4を巻き取る方向(つまり、ドア2が閉じる方向)に常時付勢されている。
クラッチ15とギア16Bとは直列に配置され、クラッチ15及びギア16Bには軸部材18が挿通されている。そして、軸部材18の両端部にはそれぞれリング状のリング部18A,18Bが形成されクラッチ15及びギア16Bの脱落を防止するようになっている。
ギア16Bには一体となって回転する円板部16Cが形成されており、ギア16B及び円板部16Cは各ブシュ16G,16Hを介して軸部材18に対して回転可能となっている。また、ギア16Bはギア16Aと噛合しており、各ギア16A,16B間で動力を伝達可能に構成されている。
円板部16Cのクラッチ15側には円筒状の嵌合部16Dが形成されており、トルク伝達板16Eに形成された嵌合溝16Gに挿入されている。また、円板部16Cとトルク伝達板16Eとはコイルバネ16Fを介して接続されており、コイルバネ5Iによりトルク伝達板16Eが円板部16C側に付勢されている。
なお、トルク伝達板16Eはクラッチ15の通電によりクラッチ15側に移動するようになっているが、嵌合溝16Gの深さはトルク伝達板16Eがクラッチ6と接触する位置に移動しても嵌合部16Dとの間に十分にトルクを伝達可能な程度の深さに形成されている。
クラッチ15は軸部材18に固設されており、クラッチ6の円板部16C側の面には所定レベル以上の摩擦係数を有する摩擦面15A形成されている。
そして、クラッチコントローラ7によりクラッチ15が通電されるとトルク伝達板16Eがクラッチ15側に移動してクラッチ15の摩擦面15Aとトルク伝達板16Eとが互いに接触し、トルク伝達板16Eの回転が規制され、嵌合部16Dと嵌合溝16Gとの摩擦によって円板部16Cの回転が規制されるようになっている。
したがって、クラッチコントローラ7によりクラッチ15が通電されると、円板部16Cとともにギア16Bの回転が規制され、ギア16Aを介してプーリ14の回転も規制される。そして、ワイヤ4の繰り出しが規制され、ドア2の開動が規制されることとなる。特に、本変形例によればクラッチ15とプーリ14とがギア16A,16Bを介して動力伝達可能に接続されているので、ギア16A,16Bのギア比を適切に設定することによりクラッチ15の必要な回転規制力を低減することができ、より安価又は小型のクラッチを用いることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
例えば、上述の実施形態においては障害物センサやドア開閉センサを備えるようになっているが必ずしもセンサ類を備える必要はない。
上述の実施形態のものにおいてECUに予め所定のドア開度(プーリの回転角度)を記憶させておき、記憶されたドア開度までドアが開いた場合にはクラッチオンとしてドアの開動を規制するように構成してもよい。このようにすれば例えば、同じ駐車場に頻繁に駐車する場合などドア自車から障害物までの距離がほぼ一定である場合にドア操作者がその都度ドア保持用スイッチをオンとする動作をしなくても済むという効果が得られる。
上述の実施形態のものにおいて予め人間の出入りが可能な程度の最低限のドア開度を設定しておき、最低限のドア開度に達するまではドアの開動の規制を禁止するように構成してもよい。具体的には、ドアが完全に閉じた状態で最低限のドア開度に応じた分だけワイヤをたるむようにする。このようにすれば、誤作動により搭乗者が車内に閉じ込められることを防止することができる。
また、上述の実施形態において、クラッチによるプーリの回転規制力(つまり、ドアの開動が規制された状態でのドア開方向の操作トルク)は適宜設定可能であるが、この回転規制力はドアチェッカによって設定される中間保持位置近傍での操作トルクよりも十分に大きく設定することが好ましい。このようにすれば、例えば、中間保持位置でもドアを保持できないような強い風等がある場合でもドアの開動を規制することができ、ドアと障害物との接触をより確実に防止することができる。
また、上述の実施形態ではワイヤストッパとして電磁クラッチを用いているが機械式のクラッチを用いても良く、また、クラッチに限らずワイヤの繰り出しを規制できる構成であればよい。
さらに、自動車用ドアとして実施形態ではヒンジを中心に旋回するヒンジ式のドアについて説明したがドアの形式についてもこれに限らず本発明をスライド式のドアに適用することも可能である。
本発明の一実施形態に係る自動車用ドアの制御装置を説明するためのものであって、自動車用ドアの開動作規制装置の概略構成を模式的に示す図である。 本発明の一実施形態に係る自動車用ドアの制御装置を説明するためのものであって、車体とドア及びドアチェッカとの取付部の断面を示す断面図である。 本発明の一実施形態に係る自動車用ドアの制御装置を説明するためのものであって、プーリ及びクラッチの構成を模式的に示す断面図である。 本発明の一実施形態に係る自動車用ドアの制御装置を説明するためのものであって、ドアの開動作規制装置の制御系にかかる電気回路図である。 本発明の一実施形態に係る自動車用ドアの制御装置を説明するためのものであって、各スイッチの作動を示す作動チャートである。 本発明の実施形態の変形例に係る自動車用ドアの制御装置を説明するためのものであって、プーリ及びクラッチの構成を模式的に示す断面図である。 従来技術を説明するためのものであって、自動車の側部のドアの開閉操作に必要な操作力(操作トルク)とドアの開度との対応関係を示すグラフである。
符号の説明
1 車体
2 ドア(自動車用ドア)
3 ドアチェッカ
3A ヒンジ部
3B アーム部(アーム)
3C 摺動部
3D ストッパ部
4 ワイヤ
5 プーリ(スプール)
5C スプリング
6,14 クラッチ(ワイヤストッパ)
9 障害物センサ
12,12A,12B ドア保持用スイッチ(スイッチ)
14 プーリ(スプール)
14B スプリング
15 クラッチ(ワイヤストッパ)

Claims (5)

  1. 車体のドア開口に開閉可能に取り付けられた自動車用ドアと、
    一端が前記車体に回動可能に取り付けられ他端が前記自動車用ドアに設けられた開口部に出入り可能に挿入されたアームと、前記自動車用ドアに設けられ前記アームに対して相対的に摺動する摺動部とを有し、前記自動車用ドアを全開位置と中間保持位置とに保持するドアチェッカと、
    前記ドアチェッカの前記アームの他端に先端部が係止されるとともに前記自動車用ドア側の部位に基端部が巻回されて支持され、前記自動車用ドアの開動に応じて繰り出し可能に設けられたワイヤと、
    前記ワイヤの基端部が係止されて前記ワイヤが巻回されるとともに前記ワイヤを巻き取る方向に常時付勢され、前記自動車用ドアの開方向への移動に応じて前記ワイヤの繰り出し方向に回転されるとともに前記自動車用ドアの閉方向への移動に応じて前記ワイヤの巻き取り方向に回転されるスプールと、
    断接を制御されて前記スプールの回転を規制しうるクラッチであって、前記スプールの回転を規制している際に、前記スプールに所定値以上の荷重が加わると前記スプールの回転を許容するよう回転規制力が制限されているクラッチを有し、前記クラッチの接合により前記スプールの回転を規制して前記自動車用ドアの開動に応じた前記ワイヤの繰り出しを停止するワイヤストッパと、
    前記ワイヤストッパの作動を操作するスイッチとを備える
    ことを特徴とする、自動車用ドアの開動作規制装置。
  2. 前記自動車用ドアの開動時に前記自動車用ドアの障害物への接近を検知する障害物センサと、
    前記障害物センサの検知結果に基づいて前記ワイヤストッパを作動させるコントローラとを備えた
    ことを特徴とする、請求項1記載の自動車用ドアの開動作規制装置。
  3. 前記コントローラが、前記ワイヤストッパの作動中に前記自動車用ドアが閉じられた場合に、前記自動車用ドアが閉じられた時点から所定時間後にワイヤストッパの作動を停止させて前記スプールの回転規制を解除する
    ことを特徴とする、請求項2記載の自動車用ドアの開動作規制装置。
  4. 前記クラッチが、電磁クラッチである
    ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載の自動車用ドアの開動作規制装置。
  5. 前記クラッチが、前記スプールとの接合状態において、前記ワイヤの繰り出し方向の回転のみを規制するワンウェイクラッチである
    ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の自動車用ドアの開動作規制装置。
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