JP4788274B2 - Ctr特性を有する酸化物導電体磁器および抵抗体 - Google Patents

Ctr特性を有する酸化物導電体磁器および抵抗体 Download PDF

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本願発明は、酸化物導電体磁器および抵抗体に関し、高温領域で抵抗変化率の大きい、具体的には150℃以上の領域において抵抗変化率の桁数が1桁以上である、CTR特性を有する酸化物導電体磁器およびそれを用いた抵抗体に関する。
サーミスタ特性を有する磁器組成物の代表的なものの一つに、CTR特性(Critical Temperature Resistor)を有するVO2系の磁器組成物が知られている(特許文献1)。
しかしながら、VO2は、抵抗が急激に変化する温度である転移温度は70℃付近であり、それより高い温度で使用することができないという問題点がある。
また、電磁気的性質を有する新規な材料として、近年、ダブルペロブスカイト構造を有するLnBaMn26(ただし、Ln=Yおよび/または希土類元素)などの物質が提案されるに至っており、実用化に向けての研究が進められている(非特許文献1および2)。なお、非特許文献1には、LnとしてYを添加した材料が開示されており、また、非特許文献2には、Lnとして、Y、Dy、Smを添加した材料が開示されている。なお、ここでいうダブルペロブスカイトとは、図5(a),(b)に示すような結晶構造をいう。
図5(a),(b)および図6(a),(b)は、例えば、Ln0.5Ba0.5MnO3の化学式で示される物質の結晶構造を示す図であって、図5(a),(b)は、ダブルペロブスカイト構造を示す図であり、図6(a),(b)は、通常のペロブスカイト構造(シングルペロブスカイト構造)を示す図である。
ところで、Ln0.5Ba0.5MnO3の化学式で示される物質は、シングルペロブスカイト構造の場合、図6(a),(b)に示すように、Aサイトは、ランダムにLn(希土類)とBaが占有し、BサイトはMnが占有した構造となるが、ダブルペロブスカイト構造の場合、図5(a),(b)に示すように、LnとBaがランダムにAサイトを占有するのではなく、MnO2層−LnO層−MnO2層−BaO層というような層状の構造となり、LnOと、BaOが交互にAサイトを占有し、図5に示すように層状に連なる方向に長周期構造をもつ結晶構造となる。なお、図6(b)において、(Ln+Ba)Oは、LnとBaとがランダムにAサイトを占有していることを示す。
ところで、LnBaMn26で示される物質は、所定の転移温度において、急激に抵抗が低下するCTR特性を有するものとして注目されている。
上述のようなダブルペロブスカイト構造を有する物質の場合、Aサイトを占める希土類元素とBaのイオン半径比すなわち、式:Ln(希土類元素)のイオン半径/Baのイオン半径で表される値により、電荷整列型絶縁体転移温度が変化し、希土類元素のイオン半径が小さくなると、転移温度が上昇する傾向があると推測される(非特許文献2の図4参照)。
しかしながら、例えば、自動車用やトランジスター回路用などの、実使用温度が高い用途によっては、より高い転移温度、具体的には150℃以上の転移温度を有していることが求められる。
そこで、上記非特許文献1および2に記載されている範囲で、実使用上望まれている、転移温度150℃以上を実現することが可能な希土類元素の種類を調べたところ、Dy、Yなどの希土類元素が有効であり、DyBaMn26、YBaMn26については、転移温度が以下のような値となることが判明した。
DyBaMn26 転移温度約220℃
YBaMn26 転移温度約240℃
しかしながら、希土類元素としてDy、Yを用いると、転移温度における抵抗変化が小さくなり、転移温度には問題がないものの、センシング能力が不足する傾向があることが確認された。
また、追試験を行った結果、例えば同じ希土類元素であるGdを用いたGdBaMn26では1桁以上の抵抗変化率を実現できるが、転移温度が120℃程度と低く、DyBaMn26、および、YBaMn26では0.5桁程度の抵抗変化率しか実現することができないことが分かった。すなわち、転移温度150℃以上の温度において、1桁以上の抵抗変化率を実現することが困難であることが確認された。
すなわち、希土類元素の中でもGdを用いた場合、抵抗変化率の桁数は1桁以上になるものの、転移温度が150℃以上のものは得られず、希土類元素としてY、Dyを用いた場合、転移温度は150℃以上のものが得られるが、抵抗変化率の桁数が1桁未満になるという問題点がある。
なお、非特許文献2では、DyBaMn26において1桁程度の抵抗変化を実現できているように見受けられるが、転移前になだらかな抵抗変化が生じる領域があるため、転移点では0.5桁程度の抵抗変化率しか実現することができないのが実情である。
特開平5−152103号公報 T.Nakajima, H.Kageyama and Y.Ueda, "Successive Phase Transitions of New Metal-Ordered Perovskite Manganite YBaMn2O6" J.Phys. Chem. Solids 63 (2002) 913. T.Nakajima, H. Kageyama and Y.Ueda, "Structures and Physical Properties of Metal-Ordered Manganites RBaMn2O6 (R: Y and Rare Earth Elements)" Physica B 329-333 (2003) 844. (proceedings of 23rd International Conference on Low Temperature Physics)
本願発明は、上記課題を解決するものであり、高温領域で抵抗変化率の大きい、具体的には150℃以上の領域において抵抗変化率の桁数が1桁以上である、CTR特性を有する酸化物導電体磁器およびそれを用いた抵抗体を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、請求項1のCTR特性を有する酸化物導電体磁器は、
下記の式:(1)
(Ln(2-x-y)Baxy)Mn26 ……(1)
(ただし、LnはDyおよび/またはYであって、AはSrである)
で示されるダブルペロブスカイト構造を有する酸化物導電体磁器であって、
0.7≦x≦1.1
0.05≦y≦0.3
0.9≦x+y≦1.2
の要件を満たすことを特徴としている。
また、請求項CTR特性を有する酸化物導電体磁器は、
下記の式:(1)
(Ln(2-x-y)Baxy)Mn26 ……(1)
(ただし、LnはDyおよび/またはYであって、AはCaである)
で示されるダブルペロブスカイト構造を有する酸化物導電体磁器であって、
0.8≦x≦1.05、
0.05≦y≦0.2、
0.9≦x+y≦1.1
の要件を満たすことを特徴としている。
また、請求項の抵抗体は、請求項1または2記載の酸化物導電体磁器を主成分とするものであることを特徴としている。
請求項1のCTR特性を有する酸化物導電体磁器は、式:(Ln(2-x-y)Baxy)Mn26(ただし、LnはDyおよび/またはYであって、AはSrである)で示されるダブルペロブスカイト構造を有する酸化物導電体磁器において、
0.7≦x≦1.1
0.05≦y≦0.3
0.9≦x+y≦1.2
の要件を満たすようにしているので、150℃以上の領域において抵抗変化率の桁数が1桁以上である、高温領域で使用することが可能な、CTR特性を有する物質を提供することが可能になる。
また、請求項2のCTR特性を有する酸化物導電体磁器は、式:(Ln(2-x-y)Baxy)Mn26(ただし、LnはDyおよび/またはYであって、AはCaである)で示されるダブルペロブスカイト構造を有する酸化物導電体磁器において、
0.8≦x≦1.05、
0.05≦y≦0.2、
0.9≦x+y≦1.1
の要件を満たすようにしているので、150℃以上の領域において抵抗変化率の桁数が1桁以上である、高温領域で使用することが可能な、CTR特性を有する物質を提供することが可能になる。
また、請求項の抵抗体は、請求項1または2記載の、150℃以上の領域において抵抗変化率の桁数が1桁以上である酸化物導電体磁器を主成分とするものであることから、高温領域で使用可能な実用性の高い抵抗体を提供することが可能になる。
なお、本願発明の酸化物導電体磁器においては、ダブルペロブスカイトのBサイトを占有するMnのうち、価数3+のMnと、価数4+のMnがほぼ同じ割合で生成されている。低い温度領域では、規則的にMn3+、Mn4+が整列し、かつ、軌道も整列することにより、電子の移動が制約され絶縁体の状態にある(電荷整列状態)。一方、温度が上昇すると、電荷整列状態がくずれて電子の移動が可能となり、キャリアが凍結された状態から、溶融した状態となり、電気抵抗率が低下する。
この電荷整列状態を維持することができる最高温度が転移温度であり、LnとしてDy、Yを用いた場合、高い転移温度が得られるが、抵抗変化率が小さくなることが発明者らの実験により分かった。その原因は必ずしも明らかではないが、LnBaMn26で示される物質には、Lnのうち、Dy、Yにおいて、電荷整列型絶縁体転移温度(Mn3+、Mn4+の電荷整列状態が乱れる温度)と、相転移温度(結晶構造が変化する温度)が20〜30℃ずれていることが分かり、このことが、抵抗変化率の低下に関与しているものと推測される。
そこで発明者らは鋭意検討を行い、種々ある元素の中から、例えば、Srなどのアルカリ土類金属を添加して、格子に変調を加え、電荷整列型絶縁体転移において同時に相転移を生じさせることが可能になることを見い出した。
また、Sr、Caなどのアルカリ土類金属元素は、必ずしもBaに置換されているとは限らず、一部のSr、Caなどのアルカリ土類金属元素が希土類元素に置換され、ホールを生成させていると推測される。そこで、製造工程で焼結体を酸化する工程において必然的に形成されてしまう酸素欠損を補償し、Mn3+/Mn4+の比を50/50に近づける機能を果たす場合もあるものと推測される。
また、本願発明の酸化物導電体磁器においては、主成分がダブルペロブスカイト構造を有する物質であればよく、必ずしも全体がダブルペロブスカイト構造を有する物質、すなわち、ダブルペロブスカイト単相の物質である必要はない。
さらに、本願発明の酸化物導電体磁器には、Zrや、他の希土類元素の酸化物などが不純物として数十ppmレベルで混入していてもよく、そのような量の場合、特性には影響を与えることはない。
以下に本願発明の実施例を示して、本願発明の特徴とするところをさらに詳しく説明する。
(1)成分原料として、炭酸バリウム(BaCO3)、酸化マンガン(Mn34)、酸化ディスプロシウム(Dy23)、酸化イットリウム(Y23)、および、炭酸ストロンチウム(SrCO3)、炭酸カルシウム(CaCO3)を、焼成後に表1に示す組成となるように秤量した。
表1において「Ln」は(Ln(2-x-y)Baxy)Mn26を構成する希土類元素の種類を示す。
なお、ここではx+y=1に固定し、「A」は、Baと置換したA元素の種類、「置換量(y)」は、BaへのA(A=Sr、Ca)の置換量(mol%)を示す。
また、抵抗変化率は転移温度前後での抵抗変化をlogで表した値である。
(2)そして、これに、分散剤、イオン交換水を所定量秤量して添加し、直径2mmのPSZボールを用いて24時間湿式混合を行った。
このとき、成分原料の形態に特別の制約はなく、上述のような酸化物や炭酸塩に限らず、金属もしくは水酸化物などを用いることも可能である。
(3)混合後、乾燥させた原料を、1300℃、高純度Ar雰囲気(99.9999%)で48時間焼成した後、粗粉砕を行った。このとき、酸素濃度が100ppm以下、好ましくは10ppm以下になるように必要に応じて雰囲気種を変えてもよい。例えば、Ar+H2、N2十Ar、N2、N2+H2などの雰囲気中で焼成してもよい。
(4)それから、粗粉砕した試料に再度、分散剤、水、PSZボール、およびバインダーを加えて48時間粉砕した後、乾燥し、プレス機により直径10mm、厚み2mmの単板を作製した。
(5)次に、作製した単板を、400℃、大気雰囲気中で2時間脱脂した後、再度1300℃、Ar雰囲気で24時間の焼成を行った。
(6)そして、焼結体である単板の両主面にAgペーストを塗布した後、800℃、酸素雰囲気下で48時間の熱処理を行うことにより、両主面にAg外部電極が形成された試料を得た。
そして、得られた試料について、以下の特性試験を行い、特性を評価した。
なお、ここでは外部電極の形成を酸素雰囲気下で行うことによって、単板の酸化処理を兼ねているが、例えば、得られた単板を先に酸素雰囲気中800℃で酸化処理を行った後に、Agペーストを大気中雰囲気で焼き付けて外部電極を形成してもよい。
[特性評価試験]
ケースレイ製パルスソースメーター2430と恒温槽を用い、0.001Vの電圧を印加して、試料の抵抗を−50℃〜260℃の範囲を10℃刻みで測定した。金属絶縁体移転時の抵抗変化率は、図1に示すように、低温度部の抵抗率(Logスケール)の温度依存性が直線から外れた時の抵抗率(ρi)と、完全に金属状態に転移したことを示す明確な変曲点における抵抗率(ρM)を求め、抵抗桁数=log(ρi/ρM)の式から桁数を算出した。
なお、試験において、抵抗変化率が1桁以上で、転移温度が150℃より高いものを特性が良好であると判定した。試験の結果を表1に示す。
Figure 0004788274
なお、表1において、試料番号に*印を付した試料は、請求項の範囲外の試料および請求項の範囲外の試料であり、上記の良好な特性を備えていない試料であることを示している。
また、試料番号に☆を付した試料は従来から知られている試料(従来例)に該当する試料であることを示している。
表1から明らかなように、Baにアルカリ土類金属元素であるSr、Caをそれぞれ、Srの場合は5〜30mol%、Caの場合は5〜20mol%置換することにより、150℃以上の高い転移温度を有し、かつ1桁以上の抵抗変化率を実現することが可能な酸化物導電体磁器が得られることがわかる。
また、図1は、表1の、本願発明の要件を備えた試料番号17の試料について調べた温度(℃)と抵抗率(ρ)の関係を示す図である。
また、図2は、表1の、本願発明の要件を備えていない、試料番号14の試料について調べた温度(℃)と抵抗率(ρ)の関係を示す図である。
図1および図2に示すように、本願発明の要件を備えた試料番号17の試料の場合、1桁以上の抵抗変化率が得られているが、本願発明の要件を備えていない試料番号14の試料の場合、本願発明の要件を備えた試料番号17の試料に比べて、抵抗変化率が大幅に小さいことがわかる。
なお、SrあるいはCaの置換量が5mol%未満の場合、高い転移温度は得られるものの、抵抗変化率の十分な桁数を得ることができなくなる。
また、アルカリ土類金属元素がSrの場合、置換量が30mol%、Caの場合20mol%を超えると、シングルペロブスカイト構造の物質が生成しやすくなり、主要部がシングルペロブスカイト構造を有する物質となる。その結果、電荷整列転移に起因する抵抗変化率が小さくなり、場合によっては抵抗変化が確認できなくなる場合が生じる。
また、アルカリ土類金属元素がCaである場合、Caの置換量が20mol%を超えると異相が多くなり、明確な抵抗変化を確認することができなかった。
なお、SrあるいはCaの置換量は、いずれも、5〜10mol%の範囲とすることがより好ましい。
次に、YBaMn26、および、DyBaMn26で示される物質において、アルカリ土類金属元素としてSr、あるいはCaを添加するとともに、希土類金属元素であるYおよびDyと、アルカリ土類金属元素(すなわち、Ba+SrまたはBa+Ca)の比を変化させ、焼結後に表2〜5の組成となるように調整した試料を、上記実施例1と同様の方法により作製した。また、作製した試料について、上記実施例1と同じ方法で特性評価試験を行った。
[1]AとしてSrを用いた試料
上述のようにして作製した試料のうち、アルカリ土類金属元素AがSrである試料の組成と特性評価試験の結果を表2および表3に示す。
なお、表2および3において、試料番号に*印を付した試料は、請求項の範囲外の試料であり、試料番号に☆を付した試料は従来から知られている試料(従来例)に該当する試料であることを示している。
Figure 0004788274
Figure 0004788274
なお、表2および表3において、x,yは、化学式(Ln(2-x-y)Baxy)Mn26(Ln=Dy、Y、A=Sr)で示される物質における、Ba量、Sr量をそれぞれ示すxとyの値であり、このxとyを変化させることにより、物質の組成を変化させた。
表2および表3に示すように、組成範囲が本願発明の範囲である0.7≦x≦1.1、0.05≦y≦0.3、0.9≦x+y≦1.2の範囲外の試料においては、明確な抵抗変化が確認できなかったり、その変化率が1桁を下回ったりした。
一方、組成範囲が、本願発明の範囲内の試料においては、転移温度が155〜230℃と高く、かつ、1桁以上の抵抗変化率が維持されることが確認された。したがって、本願発明によれば、十分な抵抗変化率を確保しつつ、155℃から230℃の範囲で転移温度を自由に制御することが可能になる。
なお、表2,3に示すように、xが0.7未満の場合、明確な抵抗変化が確認できなくなることが確認された。
また、x+yが0.9未満の場合、抵抗変化率が低下するという問題を生じることが確認された。
また、xが1.1を超える場合、および/または、x+yが1.2を超える場合、抵抗変化率が低下するという問題を生じることが確認された。
また、yが0.05未満の場合、または、yが0.30を超えた場合、抵抗変化率が1桁を下回ることが確認された。
なお、上記の範囲を超えた場合、ダブルペロブスカイト構造に加えシングルペロブスカイトが生成したり、過剰なSr、またはYおよびDyが粒界や三重点に偏析するなどにより、ダブルペロブスカイト構造物質の電荷整列型絶縁体転移に起因する抵抗変化が不鮮明になり、抵抗変化率が低下したり、さらには抵抗変化が確認できなくなったりする。また、ダブルペロブスカイト構造物質が主成分であったとしても、yが0.05未満である場合は、電荷整列型絶縁体転移と相転移が同時に起こらないことにより、抵抗変化率が1桁より小さくなる。
[2]AとしてCaを用いた試料
上述のようにして作製した試料のうち、アルカリ土類金属元素AがCaである試料の組成と特性評価試験の結果を表4および表5に示す。
なお、表4および5において、試料番号に*印を付した試料は、請求項の範囲外の試料であり、試料番号に☆を付した試料は従来から知られている試料(従来例)に該当する試料であることを示している。
Figure 0004788274
Figure 0004788274
表4および表5において、x,yは、化学式(Ln(2-x-y)Baxy)Mn26(Ln=Dy、Y、A=Ca)で示される物質における、Ba量、Ca量をそれぞれ示すxとyの値であり、このxとyを変化させることにより、物質の組成を変化させた。
表4および表5に示すように、組成範囲が本願発明の範囲である0.8≦x≦1.05、0.05≦y≦0.2、0.9≦x+y≦1.1の範囲外の試料においては、変化率が1桁を下回ることが確認された。
一方、組成範囲が、本願発明の範囲内の試料においては、転移温度が155〜220℃と高く、かつ、1桁以上の抵抗変化率が維持されることが確認された。したがって、本願発明によれば、十分な抵抗変化率を確保しつつ、155℃から220℃の範囲で転移温度を自由に制御することが可能になる。
また、xとyの関係についてみると、表4,5に示すように、xが0.8未満および/または、x+yが0.9未満の場合、抵抗変化率が低下するという問題を生じることが確認された。
また、xが1.05を超える場合、および/または、x+yが1.1を超える場合、抵抗変化率が低下するという問題を生じることが確認された。
また、yが0.05未満の場合、またはyが0.20を超えた場合、抵抗変化率が1桁を下回ることが確認された。
なお、上記の範囲を超えた場合、ダブルペロブスカイト構造に加えシングルペロブスカイトが生成したり、過剰なCa、またはYおよびDyが粒界や三重点に偏析するなどにより、ダブルペロブスカイト構造物質の電荷整列型絶縁体転移に起因する抵抗変化が不鮮明になり、抵抗変化率が低下することが確認された。また、ダブルペロブスカイト構造物質が主成分であったとしても、yが0.05未満である場合は、電荷整列型絶縁体転移と相転移が同時に起こらないことにより、抵抗変化率が1桁より小さくなることが確認された。
図3および図4は、本願発明の酸化物導電体磁器におけるxとyの値の好ましい範囲Rを示す図である。なお、図3はアルカリ土類金属元素AがSrである場合におけるSrの割合yとBaの割合xの関係を示す図、図4はアルカリ土類金属元素AがCaである場合におけるCaの割合yとBaの割合xの関係を示す図である。
なお、図3および図4において、xとyにより規定される長方形の領域R0のうち、一部欠けている領域R1,R2の領域は、x+yの要件を満たさないことから削除された領域である。
AがSrである場合のx+yの範囲を示す図3において、R1はx+yが1.2を超える領域であり、また、R2は、x+yが0.9未満の領域であり、長方形の領域R0から上記の領域R1およびR2を除いた領域Rのみが本願発明(請求項)におけるx,yおよびx+yの適正範囲となる。
また、AがCaである場合のx+yの範囲を示す図4において、R1はx+yが1.1を超える領域であり、また、R2は、x+yが0.9未満の領域であり、長方形の領域R0から上記の領域R1およびR2を除いた領域Rのみが本願発明(請求項)におけるx,yおよびx+yの適正範囲となる。
なお、ダブルペロブスカイト構造は、基本的に、アルカリ土類金属元素Aのイオン半径をある程度大きくしないとシングルペロブスカイト構造化してしまう場合があるものと考えられる。その結果、Srよりもイオン半径の小さいCaの方が置換許容量が少なくなっているものと考えられる。
すなわち、CaとSrとで最適組成範囲が異なる理由は、SrよリCaの方がイオン半径が小さいため、Caを用いた場合に得られるダブルペロブスカイト構造を有する物質は不安定となりやすく、CaをSrと同じ量だけ添加したり、CaでSrと同じ量だけBaを置換したりすると、異相が多く生成してしまい、所望の特性が得られなくなるためと推測される。
なお、本願発明の酸化物導電体磁器は、温度センサーの用途に好適に用いることが可能であり、また、自動車用やトランジスター回路などの温度補償などの用途にも用いることが可能である。
本願発明は、上記の各実施例に限定されるものではなく、Lnの種類、Ba、Sr量をそれぞれ示すxとyの値、(Ln(2-x-y)Baxy)Mn26で示されるダブルペロブスカイト構造を有する酸化物導電体磁器を構成するA、すなわち、アルカリ土類金属元素の種類などに関し、発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることができる。特にLnの希土類元素としては、Y、Dy以外にHoなどを使用することも可能であり、Y、Dyなどと同時に使用することができる。
上述のように、本願発明の酸化物導電体磁器は、(Ln(2-x-y)Baxy)Mn26で示される物質であり、上記Aとして、Ba以外のアルカリ土類金属元素を用いるようにしているので、高温領域で抵抗変化率の大きい、具体的には150℃以上の領域において抵抗変化率の桁数が1桁以上である、CTR特性を有する物質を提供することが可能になる。
また、上記Aとして、CaまたはSrは所定の割合で添加することにより、さらに確実に、高温領域で抵抗変化率が大きい、CTR特性を有する物質を提供することが可能になる。
また、本願発明の抵抗体は、上記酸化物導電体磁器を含有しているので、高温領域で使用可能な実用性の高い抵抗体を提供することが可能になる。
したがって、本願発明は温度センサや、電子回路の温度補償などの用途に広く利用することが可能である。
本願発明の要件を備えた、表1の試料番号17の試料について調べた温度(℃)と抵抗率(ρ)の関係を示す図である。 本願発明の要件を備えていない、表1の試料番号14の試料について調べた温度(℃)と抵抗率(ρ)の関係を示す図である。 本願発明の酸化物導電体磁器であって、AとしてSrを用いた場合におけるx、yおよびx+yの値の好ましい範囲を示す図である。 本願発明の酸化物導電体磁器であって、AとしてCaを用いた場合におけるx,yおよびx+yの値の好ましい範囲を示す図である。 (a),(b)は、Ln0.5Ba0.5MnO3nの化学式で示される物質の結晶構造を示す図であって、ダブルペロブスカイト構造を示す図である。 (a),(b)は、Ln0.5Ba0.5MnO3nの化学式で示される物質の結晶構造を示す図であって、シングルペロブスカイト構造を示す図である。
R x,yおよびx+yの値の好ましい領域
R0 xとyにより規定される長方形の領域
R1,R2 領域R0のうちx+yの要件を満たさない領域

Claims (3)

  1. 下記の式:(1)
    (Ln(2-x-y)Baxy)Mn26 ……(1)
    (ただし、LnはDyおよび/またはYであって、AはSrである)
    で示されるダブルペロブスカイト構造を有する酸化物導電体磁器であって、
    0.7≦x≦1.1
    0.05≦y≦0.3
    0.9≦x+y≦1.2
    の要件を満たすことを特徴とする、CTR特性を有する酸化物導電体磁器
  2. 下記の式:(1)
    (Ln(2-x-y)Baxy)Mn26 ……(1)
    (ただし、LnはDyおよび/またはYであって、AはCaである)
    で示されるダブルペロブスカイト構造を有する酸化物導電体磁器であって、
    0.8≦x≦1.05、
    0.05≦y≦0.2、
    0.9≦x+y≦1.1
    の要件を満たすことを特徴とする、CTR特性を有する酸化物導電体磁器
  3. 請求項1または2記載の酸化物導電体磁器を主成分とするものであることを特徴とする抵抗体。
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