JP2006278478A - 赤外線センサ用薄膜、その製造方法、およびそれを用いた赤外線センサ - Google Patents
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Abstract
【課題】 室温においても優れた感度を示し、且つ、ノイズ発生も抑制された赤外線センサ用薄膜を提供する。
【解決手段】 単結晶構造基板上に、一般式(La1-xAEx)MnO3(ただし、0.02≦x≦0.5であり、AEは、BaまたはSr)で表される酸化物をエピタキシャル成長させて、赤外線センサ用薄膜を成膜する。前記基板の形成材料としては、前記酸化物の格子定数よりも大きい格子定数を有する材料であることが好ましい。
【選択図】 図1
【解決手段】 単結晶構造基板上に、一般式(La1-xAEx)MnO3(ただし、0.02≦x≦0.5であり、AEは、BaまたはSr)で表される酸化物をエピタキシャル成長させて、赤外線センサ用薄膜を成膜する。前記基板の形成材料としては、前記酸化物の格子定数よりも大きい格子定数を有する材料であることが好ましい。
【選択図】 図1
Description
本発明は、赤外線センサに使用するセンサ用薄膜、その製造方法、およびそれを用いた赤外線センサに関する。
赤外線センサは、例えば、赤外線カメラとして、セキュリティー、医学分野、科学計測機器等、多岐にわたる分野で応用されている。近年では、遠距離からの計測が必要な車載暗視カメラをはじめとする超高感度赤外線カメラの開発が行われており、中でも、冷却機構が不要である非冷却ボロメータ型(温度上昇検出型)センサは、ますます注目を集めているデバイスである。
しかしながら、現在市販されている非冷却赤外線センサには、以下のような問題がある。すなわち、非冷却赤外線センサのほとんどが、センサ薄膜の材料として酸化バナジウム(VOx)を使用しているが、感度やノイズが原因となり検出能が頭打ちの状態であるため、微小信号の検出が困難である(例えば、非特許文献1、非特許文献2参照)。このように検出能が低いため、透過率の高いレンズ材料を使用する必要があるが、高透過率のレンズ(例えば、ゲルマニウムあるいはシリコンレンズ)は高コストであるという問題がある。また、冷却機構による高コスト化を回避すべく、室温で使用可能な材料が望まれているが、適当な材料が見つかっていない状況である。
Jpn. J. Appl. Phys. 40(2001) 5281
Appl. Phys. Lett., 77(2000) 756
したがって、本発明は、例えば、室温においても優れた感度を示し、且つ、ノイズ発生も抑制された赤外線センサ用薄膜、その製造方法およびそれを用いた赤外線センサの提供を目的とする。
前記目的を達成するため、本発明の赤外線センサ用薄膜は、酸化物から形成された薄膜であって、前記酸化物が、一般式(La1-xAEx)MnO3(ただし、0.02≦x≦0.5であり、AEは、BaまたはSr)で表され、前記薄膜が、単結晶構造基板上に形成された薄膜であることを特徴とする。また、本発明の赤外線センサは、薄膜として前記本発明の赤外線センサ用薄膜を備えることを特徴とする。
また、本発明の赤外線センサ用薄膜の製造方法は、酸化物を基板上に成膜する薄膜の製造方法であって、前記酸化物が、一般式(La1-xAEx)MnO3(ただし、0.02≦x≦0.5であり、AEは、BaまたはSr)で表され、前記基板が、単結晶構造基板であり、前記単結晶構造基板上に、前記酸化物をエピタキシャル成長させて成膜を行うことを特徴とする。
本発明者らは、前記一般式で表される酸化物を、単結晶構造基板上にエピタキシャル成長させることによって、室温においても感度に優れ且つノイズが低減された赤外線センサ用薄膜が製造できることを見出した。このように感度向上およびノイズ低減を実現できるのは、前記単結晶構造基板上での前記酸化物のエピタキシャル成長により、形成される薄膜に歪みを与え、前記薄膜構造を前記基板の結晶構造により制御しているためと推測される。このような赤外線センサ用薄膜によれば、例えば、冷却機能が不要であり、微小信号であっても検出可能な赤外線センサを低コストで提供できるため、非常に有用である。
本発明の赤外センサ用薄膜は、前述のように、酸化物から形成される酸化物薄膜であって、前記酸化物が一般式(La1-xAEx)MnO3(ただし、0.02≦x≦0.5であり、AEは、BaまたはSr)で表され、前記酸化物薄膜が単結晶構造基板上に形成された薄膜であることを特徴とする。
本発明における酸化物は、前記一般式で表されるペロブスカイト型マンガン酸化物であればよいが、前記一般式において、AEはBaであることが好ましく、xは0.1〜0.33の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.15〜0.25であり、特に好ましくは(La0.8Ba0.2)MnO3で表される。
本発明において、前記酸化物薄膜は、前記単結晶構造基板上に、前記酸化物のエピタキシャル成長により成膜された薄膜であることが好ましい。このようにエピタキシャル成長させることにより、後述するように、形成される薄膜を基板の格子定数や晶系によって制御できる。
前記単結晶構造基板は、直交晶系構造であることが好ましい。また、前記単結晶構造基板の形成材料が、前記マンガン酸化物の格子定数よりも大きい格子定数を有する材料であることが好ましい。このように前記酸化物と基板の格子定数を設定すれば、格子定数の不整合(ミスマッチ)によって、形成される薄膜が面内方向において引っ張り歪みを受け、その結果、例えば、室温付近においてもTCRを十分に向上でき、同時にノイズも低減できる。前記酸化物の格子定数と前記単結晶構造基板の形成材料の格子定数との格子不整合は、例えば、0.1〜2%であることが好ましく、より好ましくは0.2〜1.5%であり、特に好ましくは0.3〜1%である。なお、前記格子不整合とは、下記式で表され、下記式において、Aは酸化物の格子定数、Bは単結晶構造基板の形成材料の格子定数をそれぞれ示す。
格子不整合(%)=100×(B-A)/A
格子不整合(%)=100×(B-A)/A
前記基板の形成材料は、例えば、前記マンガン酸化物の格子定数に応じて適宜選択できるが、例えば、Sr1-yBayTiO3(ただし、0<y≦1)、SrTiO3、NbドープSrTiO3、MgO、NdGaO3、YAlO3、LaSrGaO4、LaSrAlO4、およびLa0.3Sr0.7Al0.65Ta0.35O3等があげられる。また、前記一般式Sr1-yBayTiO3において、yは、0〜0.4が好ましく、より好ましくは0〜0.2である。
具体例としては、例えば、マンガン酸化物が(La0.8Ba0.2)MnO3であり、基板の形成材料がSrTiO3である場合、(La0.8Ba0.2)MnO3の格子定数(3.894Å)はSrTiO3の格子定数(3.905Å)よりも小さいため(格子不整合0.3%)、SrTiO3基板上に成膜した(La0.8Ba0.2)MnO3薄膜は、格子歪みによって面内方向に引っ張り歪みを受ける。また、SrTiO3の基板上にさらに約2000ÅのSr0.8Ba0.2TiO3(格子定数:3.933Å)を積層した場合には、格子不整合は1.1%と大きくなるため、その上に形成される薄膜はより一層格子歪みによる引っ張り歪みを受けることとなる。なお、格子不整合が大きいほど、また、後述するように酸化物薄膜の厚みが薄いほど格子歪みが大きくなり、転移温度(Tc)が向上する傾向にある。これを利用して、例えば、室温におけるTCRを向上でき、同時に厚みが薄い薄膜においてノイズパラメータを低減できる。
前記酸化物薄膜の厚みは、特に制限されないが、前述のように歪みの発生によって薄膜のTCRを十分に向上でき、同時にノイズを低減できることから、前記単結晶構造基板上での成膜時に、歪みを受ける厚みであることが好ましい。この厚みは、例えば、前述した格子不整合の程度に応じて適宜決定できる。
前記酸化物薄膜は、その厚みが薄いほど、例えば、引っ張りや圧縮による歪みを受け易い、換言すれば、前記基板から受ける歪みを緩和し難いことから、150nm以下であることが好ましく、より好ましくは10nm〜150nm、さらに好ましくは10nm〜100nmであり、特に好ましくは20nm〜60nmである。
具体例としては、前記単結晶構造基板の形成材料がSrTiO3である場合、前記酸化物薄膜の厚みは110nm以下であることが好ましく、より好ましくは、10nm〜110nm、さらに好ましくは20nm〜50nmである。また、前記単結晶構造基板の形成材料がSr1-yBayTiO3(ただし、0<y≦1)である場合、前記酸化物薄膜の厚みは150nm以下であることが好ましく、より好ましくは、10nm〜150nm、さらに好ましくは20nm〜80nmである。
本発明における酸化物薄膜の製造方法は、特に制限されないが、例えば、レーザーアブレージョン法、レーザーMBE法、CVD法をはじめとする従来公知のエピタキシャル成長法により、前記単結晶構造基板上に成膜する方法があげられる。レーザーアブレージョン法を用いる場合、その成膜条件は、例えば、基板温度650〜750℃、O2ガス雰囲気1×10-1〜5×10-1Paの範囲が好ましい。
本発明における前記マンガン酸化物薄膜は、結晶性が非常に高いことから、薄膜の結晶性向上のための熱処理は特に必要ではない。しかしながら、成膜時に多量の酸素欠損が生じた場合等は、前記基板上に形成した薄膜に、例えば、酸素気流中でアニール処理を施すことが好ましい。アニールの条件は、例えば、処理温度700〜1000℃、処理時間2〜20時間である。
このようにして得られた本発明の赤外線センサ用酸化物薄膜は、センサに使用した際に、室温での感度に優れ、且つ、ノイズの低減も実現できるため、従来の赤外線センサに比べて検出能を向上でき、特に、非冷却ボロメータ型赤外線センサに有用である。
本発明の酸化物薄膜は、金属-絶縁体転移を起こす温度(Tc)が、例えば、270K〜330Kの範囲である。また、抵抗温度係数(TCR)のピークを示す温度が、例えば、273K(0℃)以上であり、好ましくは278〜313Kであり、より好ましくは283〜308Kであり、特に好ましくは293〜303Kである。また、前述のように、前記酸化物薄膜の膜厚が薄くなるに従ってTCRピークが高温側となり、特に、40〜60nmの範囲に設定することによって、十分にTCRピークを室温付近(例えば、295〜305K)に調節できる。なお、TCRとは、一般に「1/R/dR/dT」で定義され、相対的にTCRが高い程、感度に優れると言える。
また、本発明によれば、室温付近(275〜315K)における抵抗温度係数(TCR)のピークが、例えば、3%/K以上(例えば、3〜8%/K)である酸化物薄膜が提供でき、好ましくはピークが5%/K以上、より好ましくは5〜8%/Kの範囲である。また、室温(298K:25℃)におけるTCRは、例えば、3%/K以上(例えば、3〜8%/K)、好ましくは4%/K以上(例えば、4〜8%/K)、より好ましくは5%/K以上(例えば、5〜8%/K)である。なお、TCRの値を感度とみなした場合、従来の酸化バナジウム(VOx)の室温におけるTCRは-2%/K程度であることから、本発明の赤外線センサ用薄膜は、酸化バナジウム薄膜の約2倍以上の感度を実現できるといえる。
また、本発明の酸化物薄膜は、赤外線センサに使用した場合、前述のようにTCRが高く(感度に優れ)且つノイズ指数も極めて小さい。本発明の酸化物薄膜のノイズ指数は、例えば、10-31m3〜10-30m3のオーダーを実現でき、例えば、10-31m3オーダー、好ましくは5×10-31m3以下である。なお、従来の酸化バナジウム(VOx)のノイズ指数は、1×10-29m3程度であることから、1桁以上低いノイズ指数を実現できると考えられる。前記ノイズ指数は「γ/n」で表され、γはHoogeパラメータ、nはキャリア密度を示す。
つぎに、本発明の赤外線センサは、センサ用薄膜として、前記本発明の赤外線センサ用薄膜を備えることを特徴とする。本発明の赤外線センサは、通常の酸化物薄膜に代えて本発明の赤外線センサ用薄膜を備えていればよく、その他の構成や構造等は何ら制限されない。このように本発明の赤外線センサ用薄膜を備えることから、本発明の赤外線センサは、特に非冷却ボロメータ型であることが好ましい。
(La 0.8 Ba 0.2 )MnO 3 薄膜の形成
まず、La2O3、Mn2O3、BaOの各パウダーを、(La0.8Ba0.2)MnO3の組成比となるように混合し、900℃で40時間の仮焼結を行った後、1300℃で24時間の本焼結を行うことにより(La0.8Ba0.2)MnO3ターゲットを作製した。
まず、La2O3、Mn2O3、BaOの各パウダーを、(La0.8Ba0.2)MnO3の組成比となるように混合し、900℃で40時間の仮焼結を行った後、1300℃で24時間の本焼結を行うことにより(La0.8Ba0.2)MnO3ターゲットを作製した。
そして、レーザMBE法によりArFエキシマレーザ(λ=193nm)をターゲット(La0.8Ba0.2)MnO3に照射して、基板温度700℃、酸素ガス圧1×10-1Paの条件で、SrTiO3(100)単結晶基板上に(La0.8Ba0.2)MnO3エピタキシャル薄膜を形成した。前記薄膜の膜厚は、20.2nm、40.5nmおよび62.5nmとした。なお、膜厚は、接触探針式の表面粗さ計によって測定した。得られた各薄膜をX線回折(XRD)解析した結果、前記SrTiO3(100)基板上にエピタキシャルに成長していることが確認できた。
抵抗温度特性
つぎに、得られた各薄膜について、4端子法によって抵抗温度特性を測定した。
つぎに、得られた各薄膜について、4端子法によって抵抗温度特性を測定した。
まず、前記SrTiO3(100)基板上の(La0.8Ba0.2)MnO3薄膜に、UVフォトリソグラフィーおよびArイオンビームエッチングにより、パターニングを施した。そして、1atmの酸素ガス雰囲気下、10時間、750℃でアニーリングを行い、さらに白金電極を形成した。パターニングした前記(La0.8Ba0.2)MnO3薄膜の幅(70μm)と前記白金電極間の距離(40μm)が、ノイズ測定に供する(La0.8Ba0.2)MnO3パッドの大きさとなる(幅70μm×長さ40μm)。これを用いて4端子法により抵抗温度特性を測定した。これらの結果を図1に示す。同図は、各薄膜についての温度(K)に対するTCR(%/K)の変化を示すグラフであり、同図において□が膜厚20.2nm、△が膜厚40.5nm、○が膜厚62.5nmの結果である。
図1に示すように、全ての薄膜において、室温付近(280〜315K)で急激に電気抵抗変化が生じ、且つ、最大値4〜5%/K以上という高いTCRが確認された。このことから、これらの薄膜は室温付近での感度に優れ、特に非冷却ボロメータ型赤外線センサに有用であることがわかる。また、TCR最大値は、20.2nmの薄膜が5.2%/K、40.5nmの薄膜が4.8%/K、62.5nmの薄膜が4.5%/Kを示したことから、膜厚によってTCRが変動し、膜厚を薄くすることによって、感度を示すTCRを向上できることがわかった。また、一般的な酸化バナジウムは、室温付近でのTCR最大値が-2%/Kであることから、本発明のセンサ用薄膜であれば、従来の薄膜よりも約2倍程度、感度を向上できるといえる。なお、このように厚みの変化によって、電気抵抗変化がおきる金属-絶縁体転移温度(Tc)を室温付近に変化させ、高いTCRを実現できることは、他のペロブスカイト型マンガン酸化物では見られない(La1-xAEx)MnO3(ただし、0.02≦x≦0.25)に特有の性質である。
ノイズ特性
各膜厚の薄膜について、前記(La0.8Ba0.2)MnO3パッドを用いて2端子法によりノイズの測定を行った(測定温度:300〜313K)。なお、測定は、各薄膜がTCRピークを示す温度でそれぞれ行った。
各膜厚の薄膜について、前記(La0.8Ba0.2)MnO3パッドを用いて2端子法によりノイズの測定を行った(測定温度:300〜313K)。なお、測定は、各薄膜がTCRピークを示す温度でそれぞれ行った。
(ノイズのスペクトル密度)
各薄膜について、低周波電気ノイズのパワースペクトル(Svを印可電圧で企画化したもの)(Sv/V2)の結果を図2に示す。同図において□が膜厚20.2nm、△が膜厚40.5nm、○が膜厚62.5nmの結果である。なお、Svは下記式で表され、下記式において、γはHoogeパラメータ、nはキャリア密度、Vはバイアス電圧、Ωはサンプル体積、fは周波数、αは周波数依存性の「べき指数」を示す。
各薄膜について、低周波電気ノイズのパワースペクトル(Svを印可電圧で企画化したもの)(Sv/V2)の結果を図2に示す。同図において□が膜厚20.2nm、△が膜厚40.5nm、○が膜厚62.5nmの結果である。なお、Svは下記式で表され、下記式において、γはHoogeパラメータ、nはキャリア密度、Vはバイアス電圧、Ωはサンプル体積、fは周波数、αは周波数依存性の「べき指数」を示す。
SV=(γ/n)×(V2/Ω・fα)
図2の結果より、(La0.8Ba0.2)MnO3薄膜は、1/fタイプのノイズに依存していること、ノイズの主要因が抵抗ノイズ成分であることがわかった。
図2の結果より、(La0.8Ba0.2)MnO3薄膜は、1/fタイプのノイズに依存していること、ノイズの主要因が抵抗ノイズ成分であることがわかった。
(ノイズ指数)
各薄膜について、ノイズ指数(γ/n)の結果を図3に示す。なお、バイアス電圧は、5.0V、2.5Vとし、同図において、◇は2.5Vの結果、◆は5.0Vの結果をそれぞれ示す。
各薄膜について、ノイズ指数(γ/n)の結果を図3に示す。なお、バイアス電圧は、5.0V、2.5Vとし、同図において、◇は2.5Vの結果、◆は5.0Vの結果をそれぞれ示す。
図3の結果から、いずれも製品レベルとして十分に使用可能なノイズ指数を示し、中でも20.2nmと40.5nmの薄膜については、優れたノイズ指数の低下が見られた。これらの結果から、本発明のマンガン酸化物薄膜は、感度に優れるだけでなく、あわせてノイズの低減も十分に図ることができ、センサ用薄膜として極めて有用といえる。なお、20.2nmの薄膜が40.5nmの薄膜よりも高いノイズ指数を示す理由は、明らかではないが、パターニング時の影響と考えられる。
ボロメータとしての特性
作製したマンガン酸化物薄膜(膜厚40.5μm)について、ボロメータ型赤外線センサとしての能力を評価した。この評価は、一般的にセンサの性能を評価するために使用されるパラメータ「SNR」の算出によって行った。なお、比較として、従来のバナジウム酸化物(VOx)薄膜についても同様にしてSNRを算出した。なお、バナジウム酸化物については、報告されている市販品の一般的なデータを使用した。前記SNRは下記式より求められ、下記式において、TCRは各薄膜の室温(298K)におけるTCR(%/K)、γ/nは室温におけるノイズ指数を示す。前記マンガン酸化物薄膜および従来のバナジウム酸化物薄膜のデータを下記式に代入してSNR(%/K-1m-1)を求めた結果を下記表に示す。
SNR=|TCR|/Vn
=|TCR|/(膜厚)1/2×(γ/n)-1/2
作製したマンガン酸化物薄膜(膜厚40.5μm)について、ボロメータ型赤外線センサとしての能力を評価した。この評価は、一般的にセンサの性能を評価するために使用されるパラメータ「SNR」の算出によって行った。なお、比較として、従来のバナジウム酸化物(VOx)薄膜についても同様にしてSNRを算出した。なお、バナジウム酸化物については、報告されている市販品の一般的なデータを使用した。前記SNRは下記式より求められ、下記式において、TCRは各薄膜の室温(298K)におけるTCR(%/K)、γ/nは室温におけるノイズ指数を示す。前記マンガン酸化物薄膜および従来のバナジウム酸化物薄膜のデータを下記式に代入してSNR(%/K-1m-1)を求めた結果を下記表に示す。
SNR=|TCR|/Vn
=|TCR|/(膜厚)1/2×(γ/n)-1/2
(La 0.8 Ba 0.2 )MnO 3 薄膜 VOx薄膜
TCR 4.0 -2.0
膜厚 40.5 200
γ/n 3.0×10-31 1.0×10-29
SNR 15.0×1011 2.8×1011
TCR 4.0 -2.0
膜厚 40.5 200
γ/n 3.0×10-31 1.0×10-29
SNR 15.0×1011 2.8×1011
前記表に示すように、本発明のマンガン酸化物薄膜によれば、従来の酸化バナジウム薄膜に比べてSNRが約6倍を示すことから、センサとしての性能に優れ、ボロメータ型赤外線センサに極めて適しているといえる。
このように本発明の赤外線センサ用薄膜によれば、例えば、室温における感度に優れ、且つ、ノイズの低減も実現できることから、検出率に優れた赤外線センサを提供できる。特に、非冷却ボロメータ型赤外線センサとして、超高感度赤外線カメラ等への応用にも適している。
Claims (27)
- 酸化物から形成された赤外線センサ用薄膜であって、
前記酸化物が、一般式(La1-xAEx)MnO3(ただし、0.02≦x≦0.5であり、AEは、BaまたはSr)で表され、前記薄膜が、単結晶構造基板上に形成された薄膜であることを特徴とする赤外線センサ用薄膜。 - 前記薄膜が、前記単結晶構造基板上に前記酸化物のエピタキシャル成長により成膜された薄膜である、請求項1記載の赤外線センサ用薄膜。
- 前記単結晶構造基板の形成材料が、前記酸化物の格子定数よりも大きい格子定数を有する材料である、請求項1または2記載の赤外線センサ用薄膜。
- 前記酸化物の格子定数と前記単結晶構造基板の形成材料の格子定数との格子不整合が、0.1〜2%である、請求項3記載の赤外線センサ用薄膜。
- 前記単結晶構造基板が、直交晶系構造の基板である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の赤外線センサ用薄膜。
- 前記単結晶構造基板の形成材料が、Sr1-yBayTiO3(ただし、0<y≦1)、SrTiO3、Nbドープ SrTiO3、MgO、NdGaO3、YAlO3、LaSrGaO4、LaSrAlO4、およびLa0.3Sr0.7Al0.65Ta0.35O3からなる群から選択される少なくともひとつの材料である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の赤外線センサ用薄膜。
- 前記酸化物が、一般式(La1-xBax)MnO3(ただし、0.02≦x≦0.25)で表される酸化物である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の赤外線センサ用薄膜。
- 前記酸化物が、(La0.8Ba0.2)MnO3で表される酸化物である、請求項7記載の赤外線センサ用薄膜。
- 前記薄膜の厚みが、前記単結晶構造基板上に前記酸化物を成膜した場合に、歪みを受ける厚みである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の赤外線センサ用薄膜。
- 前記酸化物薄膜の厚みが、150nm以下である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の赤外線センサ用薄膜。
- 前記単結晶構造基板の形成材料がSrTiO3であり、前記薄膜の厚みが110nm以下である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の赤外線センサ用薄膜。
- 前記単結晶構造基板の形成材料がSr1-yBayTiO3(ただし、0<y≦1)であり、前記薄膜の厚みが150nm以下である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の赤外線センサ用薄膜。
- 前記薄膜の抵抗温度係数(TCR)のピークが、273K(0℃)以上である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の赤外線センサ用薄膜。
- 前記薄膜の抵抗温度係数(TCR)のピークが、273〜313Kの範囲である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の赤外線センサ用薄膜。
- 前記薄膜の抵抗温度係数(TCR)が、室温(298K(25℃))において2〜8%/Kの範囲である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の赤外線センサ用薄膜。
- 前記薄膜が、非冷却ボロメータ用の薄膜である、請求項1〜15のいずれか一項に記載の赤外線センサ用薄膜。
- センサ用薄膜を備えた赤外線センサであって、前記センサ用薄膜が、請求項1〜16のいずれか一項に記載の赤外線センサ用薄膜であることを特徴とする赤外線センサ。
- 非冷却ボロメータ型センサである、請求項17記載の赤外線センサ。
- 酸化物を基板上に成膜する工程を含む請求項1〜16のいずれか一項に記載の赤外線センサ用薄膜の製造方法であって、
前記酸化物が、一般式(La1-xAEx)MnO3(ただし、0.02≦x≦0.5であり、AEは、BaまたはSr)で表され、前記基板が、単結晶構造基板であり、前記単結晶構造基板上に、前記酸化物をエピタキシャル成長させて成膜することを特徴とする赤外線センサ用薄膜の製造方法。 - 前記単結晶構造基板の形成材料が、直交晶系構造を有する材料である、請求項19記載の製造方法。
- 前記酸化物の格子定数と前記単結晶構造基板の形成材料の格子定数との格子不整合が、0.1〜2%である、請求項19または20記載の製造方法。
- 前記単結晶構造基板の形成材料が、Sr1-yBayTiO3(ただし、0<y≦1)、SrTiO3、Nbドープ SrTiO3、MgO、NdGaO3、YAlO3、LaSrGaO4、LaSrAlO4、およびLa0.3Sr0.7Al0.65Ta0.35O3からなる群から選択される少なくともひとつの材料である、請求項19〜21のいずれか一項に記載の製造方法。
- 前記酸化物が、(La0.8Ba0.2)MnO3で表される酸化物である、請求項19〜22のいずれか一項に記載の製造方法。
- 前記薄膜の厚みが、前記単結晶構造基板上に前記酸化物を成膜した場合に、歪みを受ける厚みである、請求項19〜23のいずれか一項に記載の製造方法。
- 前記酸化物薄膜の厚みが、150nm以下である、請求項19〜24のいずれか一項に記載の製造方法。
- 前記単結晶構造基板の形成材料がSrTiO3であり、前記薄膜の厚みが110nm以下である、請求項19〜25のいずれか一項に記載の製造方法。
- 前記単結晶構造基板の形成材料がSr1-yBayTiO3(ただし、0<y≦1)であり、前記薄膜の厚みが150nm以下である、請求項19〜25のいずれか一項に記載の製造方法。
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