以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のプリンタ(以下、単にプリンタという)の一実施形態について説明する。
まず、本プリンタの基本的な構成について説明する。図1は、本プリンタを示す概略構成図である。同図において、このプリンタは、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック(以下、Y、M、C、Kと記す)のトナー像を生成するための4つのプロセスユニット6Y,M,C,Kを備えている。これらは、画像形成物質として、互いに異なる色のY,M,C,Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっており、寿命到達時に交換される。Yトナー像を生成するためのプロセスユニット6Yを例にすると、図2に示すように、ドラム状の感光体1Y、ドラムクリーニング装置2Y、除電装置(不図示)、帯電装置4Y、現像器5Y等を備えている。画像形成ユニットたるプロセスユニット6Yは、プリンタ本体に脱着可能であり、一度に消耗部品を交換できるようになっている。
上記帯電装置4Yは、図示しない駆動手段によって図中時計回りに回転せしめられる感光体1Yの表面を一様帯電せしめる。像担持体たる感光体1Yの一様帯電せしめられた表面は、レーザ光Lによって露光走査されてY用の静電潜像を担持する。このYの静電潜像は、Yトナーと磁性キャリアとを含有するY現像剤を用いる現像器5YによってYトナー像に現像される。そして、後述する中間転写ベルト8上に中間転写される。ドラムクリーニング装置2Yは、中間転写工程を経た後の感光体1Y表面に残留したトナーを除去する。また、上記除電装置は、クリーニング後の感光体1Yの残留電荷を除電する。この除電により、感光体1Yの表面が初期化されて次の画像形成に備えられる。他色のプロセスユニット(6M,C,K)においても、同様にして感光体(1M,C,K)上に(M,C,K)トナー像が形成されて、中間転写ベルト8上に中間転写される。
上記現像器5Yは、そのケーシングの開口から一部露出させるように配設された現像ロール51Yを有している。また、互いに平行配設された2つの搬送スクリュウ55Y、ドクターブレード52Y、トナー濃度センサ(以下、Tセンサという)56Yなども有している。
現像器5Yのケーシング内には、磁性キャリアとYトナーとを含む図示しないY現像剤が収容されている。このY現像剤は2つの搬送スクリュウ55Yによって撹拌搬送されながら摩擦帯電せしめられた後、上記現像ロール51Yの表面に担持される。そして、ドクターブレード52Yによってその層厚が規制されてからY用の感光体1Yに対向する現像領域に搬送され、ここで感光体1Y上の静電潜像にYトナーを付着させる。この付着により、感光体1Y上にYトナー像が形成される。現像器5Yにおいて、現像によってYトナーを消費したY現像剤は、現像ロール51Yの回転に伴ってケーシング内に戻される。
2つの搬送スクリュウ55Yの間には仕切壁が設けられている。この仕切壁により、現像ロール51Yや図中右側の搬送スクリュウ55Y等を収容する第1供給部53Yと、図中左側の搬送スクリュウ55Yを収容する第2供給部54Yとがケーシング内で分かれている。図中右側の搬送スクリュウ55Yは、図示しない駆動手段によって回転駆動せしめられ、第1供給部53Y内のY現像剤を図中手前側から奥側へと搬送しながら現像ロール51Yに供給する。図中右側の搬送スクリュウ55Yによって第1供給部53Yの端部付近まで搬送されたY現像剤は、上記仕切壁に設けられた図示しない開口部を通って第2供給部54Y内に進入する。第2供給部54Y内において、図中左側の搬送スクリュウ55Yは、図示しない駆動手段によって回転駆動せしめられ、第1供給部53Yから送られてくるY現像剤を図中右側の搬送スクリュウ55Yとは逆方向に搬送する。図中左側の搬送スクリュウ55Yによって第2供給部54Yの端部付近まで搬送されたY現像剤は、上記仕切壁に設けられたもう一方の開口部(図示せず)を通って第1供給部53Y内に戻る。
透磁率センサからなる上述のTセンサ56Yは、第2供給部54Yの底壁に設けられ、その上を通過するY現像剤の透磁率に応じた値の電圧を出力する。トナーと磁性キャリアとを含有する二成分現像剤の透磁率は、トナー濃度と良好な相関を示すため、Tセンサ56YはYトナー濃度に応じた値の電圧を出力することになる。この出力電圧の値は、図示しない制御部に送られる。この制御部は、Tセンサ56Yからの出力電圧の目標値であるY用Vtrefを格納したRAMを備えている。このRAM内には、他の現像器に搭載された図示しないTセンサからの出力電圧の目標値であるM用Vtref、C用Vtref、K用Vtrefのデータも格納されている。Y用Vtrefは、後述するY用のトナー搬送装置の駆動制御に用いられる。具体的には、上記制御部は、Tセンサ56Yからの出力電圧の値をY用Vtrefに近づけるように、図示しないY用のトナー搬送装置を駆動制御して第2供給部54Y内にYトナーを補給させる。この補給により、現像器5Y内のY現像剤中のYトナー濃度が所定の範囲内に維持される。他のプロセスユニットの現像器についても、M,C,K用のトナー搬送装置を用いた同様のトナー補給制御が実施される。
先に示した図1において、プロセスユニット6Y,M,C,Kの図中下方には、光書込ユニット7が配設されている。潜像形成手段たる光書込ユニット7は、画像情報に基づいて発したレーザ光Lにより、プロセスユニット6Y,M,C,Kにおけるそれぞれの感光体を走査する。この走査により、感光体1Y,M,C,K上にY,M,C,K用の静電潜像が形成される。なお、光書込ユニット7は、光源から発したレーザ光(L)を、モータによって回転駆動されるポリゴンミラー上での反射によって主走査方向に偏向せしめながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体に照射するものである。
光書込ユニット7の図中下側には、給紙カセット26、これらに組み込まれた給紙ローラ27など有する紙収容手段が配設されている。給紙カセット26は、シート状の記録体たる転写紙Pを複数枚重ねて収納しており、それぞれの一番上の転写紙Pには給紙ローラ27を当接させている。給紙ローラ27が図示しない駆動手段によって図中反時計回りに回転せしめられると、一番上の転写紙Pが給紙路70に向けて送り出される。
この給紙路70の末端付近には、レジストローラ対28が配設されている。レジストローラ対28は、転写紙Pを挟み込むべく両ローラを回転させるが、挟み込んですぐに回転を一旦停止させる。そして、転写紙Pを適切なタイミングで後述の2次転写ニップに向けて送り出す。
プロセスユニット6Y,M,C,Kの図中上方には、中間転写体たる中間転写ベルト8を張架しながら無端移動せしめる無端移動体たる転写ユニット15が配設されている。この転写ユニット15は、中間転写ベルト8の他、2次転写バイアスローラ19、クリーニング装置10などを備えている。また、4つの1次転写バイアスローラ9Y,M,C,K、2次転写バックアップローラ12、クリーニングバックアップローラ13、テンションローラ14なども備えている。中間転写ベルト8は、これら7つのローラに張架されながら、少なくとも何れか1つのローラの回転駆動によって図中反時計回りに無端移動せしめられる。1次転写バイアスローラ9Y,M,C,Kは、このように無端移動せしめられる中間転写ベルト8を感光体1Y,M,C,Kとの間に挟み込んでそれぞれ1次転写ニップを形成している。これらは中間転写ベルト8の裏面(ループ内周面)にトナーとは逆極性(例えばプラス)の転写バイアスを印加する方式のものである。1次転写バイアスローラ9Y,M,C,Kを除くローラは、全て電気的に接地されている。中間転写ベルト8は、その無端移動に伴ってY,M,C,K用の1次転写ニップを順次通過していく過程で、感光体1Y,M,C,K上のY,M,C,Kトナー像が重ね合わせて1次転写される。これにより、中間転写ベルト8上に4色重ね合わせトナー像(以下、4色トナー像という)が形成される。
上記2次転写バックアップローラ12は、2次転写ローラ19との間に中間転写ベルト8を挟み込んで2次転写ニップを形成している。中間転写ベルト8上に形成された可視像たる4色トナー像は、この2次転写ニップで転写紙Pに転写される。そして、転写紙Pの白色と相まって、フルカラートナー像となる。2次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト8には、転写紙Pに転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、クリーニング装置10によってクリーニングされる。2次転写ニップで4色トナー像が一括2次転写された転写紙Pは、転写後搬送路71を経由して定着装置20に送られる。
定着装置20は、内部にハロゲンランプ等の発熱源を有する定着ローラ20aと、これに所定の圧力で当接しながら回転する加圧ローラ20bとによって定着ニップを形成している。定着装置20内に送り込まれた転写紙Pは、その未定着トナー像担持面を定着ローラ20aに密着させるようにして、定着ニップに挟まれる。そして、加熱や加圧の影響によってトナー像中のトナーが軟化さしめられて、フルカラー画像が定着せしめられる。
定着装置20内でフルカラー画像が定着せしめられた転写紙Pは、定着装置20を出た後、排紙路72と反転前搬送路73との分岐点にさしかかる。この分岐点には、第1切替爪75が揺動可能に配設されており、その揺動によって転写紙Pの進路を切り替える。具体的には、爪の先端を反転前送路73に近づける方向に動かすことにより、転写紙Pの進路を排紙路72に向かう方向にする。また、爪の先端を反転前搬送路73から遠ざける方向に動かすことにより、転写紙Pの進路を反転前搬送路73に向かう方向にする。
第1切替爪75によって排紙路72に向かう進路が選択されている場合には、転写紙Pは、排紙路72から排紙ローラ対100を経由した後、機外へと配設されて、プリンタ筺体の上面に設けられたスタック50a上にスタックされる。これに対し、第1切替爪75によって反転前搬送路73に向かう進路が選択されている場合には、転写紙Pは反転前搬送路73を経て、反転ローラ対21のニップに進入する。反転ローラ対21は、ローラ間に挟み込んだ転写紙Pをスタック部50aに向けて搬送するが、転写紙Pの後端をニップに進入させる直前で、ローラを逆回転させる。この逆転により、転写紙Pがそれまでとは逆方向に搬送されるようになり、転写紙Pの後端側が反転搬送路74内に進入する。
反転搬送路74は、鉛直方向上側から下側に向けて湾曲しながら延在する形状になっており、路内に第1反転搬送ローラ対22、第2反転搬送ローラ対23、第3反転搬送ローラ対24を有している。転写紙Pは、これらローラ対のニップを順次通過しながら搬送されることで、その上下を反転させる。上下反転後の転写紙Pは、上述の給紙路70に戻された後、再び2次転写ニップに至る。そして、今度は、画像非担持面を中間転写ベルト8に密着させながら2次転写ニップに進入して、その画像非担持面に中間転写ベルトの第2の4色トナー像が一括2次転写される。この後、転写後搬送路71、定着装置20、排紙路72、排紙ローラ対100を経由して、機外のスタック部50a上にスタックされる。このような反転搬送により、転写紙Pの両面にフルカラー画像が形成される。
上記転写ユニット15と、これよりも上方にあるスタック部50aとの間には、ボトル支持部31が配設されている。このボトル支持部31は、Y,M,C,Kトナーを収容するトナー収容部たるトナーボトル32Y,M,C,Kを搭載している。トナーボトル32Y,M,C,Kは、互いに水平よりも少し傾斜した角度で並ぶように配設され、Y、M、C、Kという順で配設位置が高くなっている。トナーボトル32Y,M,C,K内のY,M,C,Kトナーは、それぞれ後述するトナー搬送装置により、プロセスユニット6Y,M,C,Kの現像器に適宜補給される。これらのトナーボトル32Y,M,C,Kは、プロセスユニット6Y,M,C,Kとは独立してプリンタ本体に脱着可能である。
図3は、4つの感光体1Y,M,C,Kの周囲構成を示す拡大構成図である。同図において、感光体1Y,M,C,Kは、それぞれ、図示しない軸受けにより、その回転中心に設けられた回転軸201Y,M,C,Kを中心にして回転可能に支持されている。回転軸201Y,M,C,Kの一端部には、感光体1Y,M,C,Kよりも遙かに大きな経の個別ギヤたる感光体ギヤ202Y,M,C,Kが固定されている。K用の感光体ギヤ202Kには、K感光体モータ90Kのモータ軸に固定されたK原動ギヤ95が噛み合っている。K用の感光体1Kは、このかみ合いにより、K感光体モータ90Kの回転駆動力が伝達されて回転駆動せしめられる。一方、M用の感光体ギヤ202MとC用の感光体ギヤ202Cとの間には、カラー原動ギヤ96がこれら感光体ギヤに噛み合うように配設されている。このカラー原動ギヤ96は、カラー感光体モータ90YMCのモータ軸に固定されており、カラー感光体モータ90YMCの駆動力をM用の感光体ギヤ202Mと、C用の感光体ギヤ202Cとに伝達する。これにより、M用の感光体1Mと、C用の感光体1Cとがそれぞれ回転駆動せしめられる。また、Y用の感光体ギヤ202Yと、M用の感光体ギヤ202Mとの間には、アイドラギヤ97がこれら感光体ギヤに噛み合うように配設されている。これにより、カラー感光体モータ90YMCの駆動力が、カラー原動ギヤ96、M用の感光体ギヤ202M、アイドラギヤ97、Y用の感光体ギヤ202Yを順次介して、Y用の感光体1Yに伝達される。
かかる構成により、K以外の3つの感光体1Y,M,Cは、1つのカラー感光体モータ90YMCによって回転駆動せしめられる。3つの感光体1Y、M、Cにそれぞれ対応する感光体ギヤ202Y,M,Cは、それぞれその最大偏心箇所を同期させて回転するように、組立時にこれらギヤの噛み合わせ位置が調整されている。本プリンタでは、各感光体の配設ピッチはそれぞれ等しく且つ各感光体ギヤの周長の整数倍に設定されているため、各感光体ギヤの回転位相を互いに同期させることで、次のことが可能になるからである。即ち、Y用の感光体ギヤ202Yの1周あたりにおいてY用の感光体1Yが最も速い線速で駆動されているときに中間転写ベルトに転写されたYトナー像箇所の上に、M用の感光体ギヤ202Mの1周あたりにおいてM用の感光体1Mが最も速い線速で駆動されているときにM用1次転写ニップに進入したMトナー像箇所が重ね合わせて転写される。また、中間転写ベルト上におけるこれらの重ね合わせ箇所の上に、C用の感光体ギヤ202Cの1周あたりにおいてC用の感光体1Cが最も速い線速で駆動されているときにC用1次転写ニップに進入したCトナー像箇所が重ね合わせて転写される。このようにして、同じ駆動源たるカラー感光体モータ90YMCによって駆動される3つの感光体1Y,M,Cについては、感光体ギヤ202Y,M,Cの組み付け姿勢の調整により、それらギヤの偏心に起因する重ね合わせズレを抑えるようになっている。
K用の感光体1Kは、他の感光体とは別の駆動源であるK感光体モータ90Kによって回転駆動される。K用の感光体1Kだけ駆動源が別になっているのは、モノクロプリントの需要がカラープリントに比べて高いことに起因する。需要の高いモノクロプリント時においては、K用の感光体1Kだけを駆動させるようにすることで、他の感光体1Y,M,Cやモータの消耗を抑えたり、省エネルギー化を図ったりするためである。なお、モノクロプリント時には、このようにしてK感光体1Kだけが駆動されるが、このとき、図1に示した転写ユニット15は、4つの感光体1Y,M,C,Kのうち、K用の感光体1Kだけに中間転写ベルト8を接触させるような姿勢をとる。
モノクロプリント時には、このようにして、K用の感光体1Kだけが回転駆動されることから、K用の感光体ギヤ202Kと、他の感光体ギヤ202Y,M,Cとの最大偏心箇所の位相は、どうしても異なってくる。そこで、本プリンタでは、プリント動作開始時に、K用の感光体ギヤ202Kと、他の感光体ギヤ202Y,M,Cとの回転位相差をゼロに合わせる位相差合わせ制御を実施するようになっている。
図4は、4つの感光体の周囲構成を図3とは逆側から示す拡大構成図である。同図において、K用の感光体1Kの回転軸201Kにおける感光体ギヤ202Kとは反対側の端部には、K回転円盤203Kが固定されている。このK回転円盤203Kには、部分的に径が大きくなる大径部204Kが一体形成されており、これはK用の感光体ギヤ202Kが所定の回転位置になったときに、透過型フォトセンサからなるKギヤセンサ91Kによって検知される。
一方、C用の感光体1Cの回転軸201Cにおける感光体ギヤ202Cとは反対側の端部には、カラー回転円盤203YMCが固定されている。このカラー回転円盤203YMCにも、部分的に径が大きくなる大径部204YMCが一体形成されており、これはY,M,C用の感光体ギヤ202Y,M,Cがそれぞれ所定の回転位置になったときに、透過型フォトセンサからなるカラーギヤセンサ91YMCによって検知される。
なお、本プリンタでは、K回転円盤203Kの大径部204K、カラー回転円盤203YMCの大径部204YMCともに、感光体ギヤの最大径部分と同じ回転角度に位置させるようにそれぞれの回転円盤を取り付けている。
図5は本プリンタの電気回路の一部を示すブロック図である。図においてバス94には、プロセスユニット6Y,M,C,K、光書込ユニット7、給紙カセット26、レジストモータ92、データ入力ポート68、転写ユニット15、操作表示部93、制御部150などが接続されている。また、Y,M,C,Kプロセスユニット9Y,M,C,K、Kギヤセンサ91K、カラーギヤセンサ91YMCなども接続されている。レジストモータ92は、上述したレジストローラ対28の駆動源である。また、データ入力ポート68は、外部の図示しないパーソナルコンピュータ等から送られてくる画像情報を受信するものである。また、制御部150は、プリンタ全体の駆動制御を司るものであり、CPU1a、情報記憶手段たるRAM1a、ROM1bなどを有している。また、操作表示部93は、タッチパネル、あるいは液晶パネル及び複数のタッチキーから構成されるのもで、制御部150の制御によって様々な情報を表示したり、操作者からの入力情報を制御部150に送ったりする。
以上の構成の本プリンタにおいては、4つのプロセスユニット6Y,M,C,Kと光書込ユニット7との組み合わせにより、像担持体たる各感光体1Y,M,C,Kにそれぞれ可視像であるトナー像を形成する可視像形成手段が構成されている。
図6は、本プリンタの制御部150によって実施される位相差合わせ処理を説明するためのタイミングチャートである。同図において、K感光体ギヤ202Kと、C感光体ギヤ202C(ひいてはM,Y感光体ギヤ202M,Y)との回転位相を合わせるためには、Kギヤセンサ91Kと、カラーギヤセンサ91YMCとがそれぞれ少なくとも1回ずつ、感光体ギヤの大径部(204K、204YMC)を検知する必要がある。すると、図7に示すように、場合によっては、両感光体ギヤを約1周も回転させてから、位相差合わせを開始する必要が生じて、ファーストプリント時間を長くしてしまう。そこで、本プリンタにおいては、プリントジョブを終了する際に、各感光体ギヤをそれぞれ所定の角度範囲内で停止させる回転停止処理を実施するようになっている。
図8は、本プリンタの制御部150によって実施されるプリント動作処理の制御フローの要部を示すフローチャートである。制御部150は、パーソナルコンピュータ等から送られている画像情報を含むプリントアウト情報信号を受信すると(ステップ1でY:以下、ステップをSと記す)、まず、これから実施するプリント動作について、カラープリント動作であるか否かの判断をする(S2)。そして、カラープリントでない場合には(S2でN)、2つの感光体モータのうち、K感光体モータ(90K)だけを駆動させた後(S3)、後述する位相合わせ処理を行わないままに、画像形成動作を開始して、各感光体にトナー像を形成し始める。
一方、カラープリントである場合には(S3でY)、K感光体モータ(90K)に加えて、カラー感光体モータ(90YMC)の駆動も開始した後(S4)、位相差合わせ処理を実施する。この位相差合わせ処理では、まず、Kギヤセンサ(91K)による検知結果と、カラーギヤセンサ(91YMC)による検知結果とに基づいて、K感光体ギヤ(202K)と、他の感光体ギヤ(202Y,M,C)との回転位相差のゼロからのズレ量を把握する(S5)。上述のRAM(1a)には、回転位相差ズレ量と、そのズレ量を修正するための回転速度差データとを関連づけるデータテーブルが記憶されている。制御部(150)は、回転位相ズレ量を把握すると、それに対応する回転線速差を前述のデータテーブルから特定する(S6)。次いで、K感光体モータ90Kの駆動量たる回転速度と、カラー感光体モータ90YMCの回転速度とに、先に特定しておいた回転線速差を一時的にもたせて、回転位相差ズレを修正した後(S7)、再び、各ギヤセンサによる検知結果に基づいて回転位相差ズレ量を把握する(S8)。そして、その回転位相差ズレ量について所定の許容ズレ量を超えているか否かについて判断し(S9)、超えている場合には(S9でY)、制御フローを上述のS5に戻して、回転線速差をもたせた回転位相差ズレの修正を再び行う。これに対し、許容ズレ量を超えていない場合には(S9でN)、位相合わせ処理を終了する。
位相差合わせ処理を終了すると、次に、画像形成処理を開始して(S10)、各感光体にトナー像を形成し始める。その後、画像形成処理が終了すると、回転停止処理を実施する。
この回転停止処理では、まず、それまで行っていた画像形成動作について、カラープリント動作であった否かが判断され(S11)、カラープリント動作であった場合には(S11でY)、カラー感光体モータ90YMCと、K感光体モータ90Kとについて、それぞれ対応するギヤセンサ(91YMC,91K)からの検知信号を検知した後、所定時間内で駆動を停止する(S12)。一方、カラープリント動作でなかった場合には(S11でN)、カラー感光体モータ90YMCの駆動を開始する(S13)。そして、その後、上記S12の処理を行って、各感光体モータを停止させる。このような回転停止処理により、各感光体ギヤがそれぞれ所定の回転角度範囲内で停止する。これにより、先に図6に示した各感光体ギヤをそれぞれ互いに関連なく停止させる態様に比べて、図9に示すように次回のプリント動作開始時における位相差合わせ開始までの時間を大幅に短縮することができる。
なお、上記S11の判断処理と上記S13におけるカラー感光体の駆動とを行わずに、モノクロプリント動作の場合には、K感光体モータ90Kだけを、カラーギヤセンサ91Kによる検知タイミングから所定時間内に停止させるようにしてもよい。但し、モノクロプリント動作停止中に、転写ユニット15が揺動することによる反動をY,M,C感光体1Y,M,Cを介して受けて、Y,M,C用の感光体ギヤ202Y,M,Cがそれぞれ所定の回転角度範囲にある状態から範囲外にある状態に少しだけ回転せしめられている場合もあり得る。このような場合には、その後のファーストプリント時間に長時間を要してしまう。そこで、本プリンタでは、上記S11やS13の工程を取り入れている。これにより、前述のようなファーストプリント時間の長時間化を回避することができる。
次に、実施形態に係るプリンタを理解する上で参考になる各参考例のプリンタについて説明する。
[第1参考例]
第1参考例に係るプリンタは、上述の回転停止処理として、上述の位相差合わせ処理と同様に、各感光体ギヤの回転位相差を合わせてから、先に図8のS11〜S13に示した回転停止処理を実施するようになっている。かかる構成においては、各感光体ギヤを殆ど回転位相ずれがない状態で停止させる。これにより、次回のプリント開始時における位相合わせ開始までの時間を更に短縮することができる。参考までに、単に各感光体ギヤを互いに所定の回転角度差の関係で停止させる実施形態に係るプリンタの位相差合わせ処理におけるタイミングチャートを図10に示す。また、本第1実施例のように回転位相差ズレを解消してから各感光体ギヤを停止させるプリンタの位相差合わせ処理におけるタイミングチャートを図11に示す。両図の比較から、本プリンタが極めて迅速にファーストプリントを行える状態になることがわかる。
[第2参考例]
先に示した図3において、駆動源たるK感光体モータ90Kは、4つの感光体のうち、K用の感光体1Kだけに駆動を伝達するものであるので、駆動伝達先の感光体数が1となっている。これに対し、カラー感光体モータ90YMCは、4つの感光体のうち、3つのカラー感光体に駆動を伝達するものであるので、駆動伝達先の感光体数が3となっている。このように感光体数が異なる場合、当然ながら、両感光体モータに対する駆動負荷はそれぞれ異なってくる。カラー感光体モータ90YMCに対する駆動負荷の方が、K感光体モータ90Kに対する駆動負荷よりも大きくなる。かかる構成において、両モータに対する励磁をそれぞれギヤが同じ回転角度位置にある状態で同時に切った場合、その後の慣性による回転量は、カラー感光体モータ90YMCの方が、K感光体モータ90Kよりも小さくなる。即ち、カラー感光体モータ90YMCの方が、K感光体モータ90Kよりも早く停止する。すると、K感光体ギヤ202Kと、他の感光体ギヤとの回転停止位置の差が想定していた値よりも大きくなってしまうおそれがある。
そこで、第2参考例に係るプリンタは、駆動伝達先の感光体数が互いに異なるK感光体モータ90Kと、カラー感光体モータ90YMCとについては、それぞれ励磁を切ってから慣性による回転が停止するまでの時間(以下、慣性回転時間という)の想定値を互いに異ならせて駆動停止タイミングを決定するようになっている。具体的には、K感光体モータ90Kにおける慣性回転時間と、これよりも短くなるカラー感光体モータ90YMCにおける慣性回転時間とを予め調査しておく。そして、その調査結果に基づいて、慣性回転時間がより短くなるカラー感光体モータ90YMCにおける前述の想定値を、慣性回転時間がより長くなるK感光体モータ90Kにおける前述の想定値よりも小さくして、それぞれのモータの駆動停止タイミングを決定させるのである。かかる構成においては、両モータで、駆動伝達先の感光体数が互いに異なることに起因して、両モータにそれぞれ対応するK感光体ギヤ202Kとカラー感光体ギヤ202YMCとの回転停止位置の差を大きくしてしまうといった不具合を解消することができる。
なお、実施形態に係るプリンタにおいては、プリントジョブの開始時に上述の位相差合わせ処理によってK用の感光体ギヤ202KとC用の感光体ギヤ202Cとの回転位相差(本例では0°)を適切に調整している。このため、プリントジョブ終了直前のK用の感光体ギヤ202KとC用の感光体ギヤ202Cとにおける回転位相差の適正値からのズレは、全く無いか、あったとしてもほんの僅かである。よって、その回転位相の関係を維持したままで各感光体モータを停止させることができれば、次回のプリントジョブの開始時において、両感光体ギヤの回転位相の調整が不要になるか、必要であったとしてもごく僅かな調整で済む。
ところが、各感光体モータ(90K、90YMC)で駆動する感光体数が異なっているため、上述したように、励磁を停止してからモータの動きを完全に停止させるまでの時間が各感光体モータでそれぞれ異なってくる。このため、それぞれの感光体モータを回転位相差だけに基づいて停止させると、駆動中のときよりもK用の感光体ギヤ202KとC用の感光体ギヤ202Cとにおける回転位相差の適正値(本例では0°)からのズレが大きくなってしまう。そこで、回転位相差に加えて、上述した慣性回転時間の差も考慮して、K感光体モータ90Kの駆動停止タイミングと、カラー感光体90YMCの駆動停止タイミングとに差をもたせる。このようにすることで、両感光体ギヤを、それぞれ所望の位相差(本例では0°)をもたせた関係で停止させることができる。第1参考例のようにプリントジョブ停止時にも位相差合わせを行うといったことをしなくても、両感光体ギヤを所望の位相差の関係で停止させることができるのである。
[第3参考例]
K感光体モータ90Kやカラー感光体モータ90YMCに対する駆動負荷は、それぞれ温度や湿度の環境によって異なってくる。これは、温度や湿度の変化に伴って、各感光体に対する摩擦力や、各ギヤ間で生ずる摩擦力などが変化するからである。すると、それぞれのモータにおいて、温度や湿度によっては、上述の想定値がそれぞれ不適切になるおそれがある。このような想定値の不適切化が起こると、電気的には、各感光体ギヤをそれぞれ所定の回転角度範囲内で停止させる制御を実施していても、実際には、それぞれその回転角度範囲内で停止させていないといった事態が起こってしまう。
そこで、第3参考例に係るプリンタにおいては、プリンタ筺体内の湿度を検知する図示しない湿度センサと、温度を検知する温度センサとを設け、それぞれの検知結果を制御部に送るようにしている。そして、感光センサたるそれらセンサによる検知結果に応じて、それぞれ適切な上記慣性回転時間を反映させるように、上述の想定値を変化させるようになっている。これにより、各感光体モータの駆動停止タイミングも、それらセンサによる検知結果に応じて変化させることになる。かかる構成では、温度や湿度の変化に起因して、電気的には、各感光体ギヤをそれぞれ所定の回転角度範囲内で停止させる制御を実施していても、実際には、それぞれその回転角度範囲内で停止させていないといった事態が起こってしまうといった事態を抑えることができる。
[第4参考例]
K感光体モータ90Kやカラー感光体モータ90YMCに対する駆動負荷は、プリンタの使用に伴ってそれぞれ経時的に変化する。これは、各ギヤや感光体の摩耗によって、各感光体に対する摩擦力や、各ギヤ間で生ずる摩擦力などが変化するからである。すると、それぞれのモータにおいて、上述の想定値を経時的に不適切にしていくことになる。経時的な不適切化がかなり進行してしまうと、電気的には、各感光体ギヤをそれぞれ所定の回転角度範囲内で停止させる制御を実施していても、実際には、それぞれその回転角度範囲内で停止させていないといった事態が起こってしまう。
そこで、第4参考例に係るプリンタにおいては、プリンタの累積稼働時間を計時手段たる制御部によって計数させ、その検知結果に応じて、それぞれ適切な上記慣性回転時間を反映させるように、上述の想定値を変化させるようになっている。これにより、各感光体モータの駆動停止タイミングも、それらセンサによる検知結果に応じて変化させることになる。かかる構成では、累積稼働時間の増加に伴う駆動負荷の変化に起因して、電気的には、各感光体ギヤをそれぞれ所定の回転角度範囲内で停止させる制御を実施していても、実際には、それぞれその回転角度範囲内で停止させていないといった事態が起こってしまうといった事態を抑えることができる。
[第5参考例]
これまで述べてきたように、4つの感光体ギヤ201Y,M,C,Kがそれぞれ偏心している場合には、それぞれの回転位相差を調整して各色トナー像の重ね合わせズレを抑える必要がある。このとき、各感光体ギヤに設けるべき回転位相差の適正値(以下、理論適正位相差という)については、感光体1Y,M,C,Kの周長Laと、各感光体の配設ピッチLpとに基づいて求める。
具体的には、配設ピッチLp[mm]が周長La[mm]よりも小さい場合には、「理論適正位相差[°]=(配設ピッチLp[mm]−周長La[mm])/周長[mm]×360」という公式によって理論適正位相差を求める。「Lp<La」であるので、この公式によって求められる理論適正位相差は、マイナスの値になる。本プリンタでは、Y,M,C,Kという順序で4色の重ね合わせ1次転写工程が行われるため、4つの感光体ギヤ202Y,M,C,Kのうち、Y用の感光体ギヤ202Yの回転位相が基準になる。そこで、Y用の感光体ギヤ202Yの最大径部分(最小径部分でもよい)を例えば0[°]に位置させた状態で、M用の感光体ギヤ202Mの最大径部分を理論適正位相差[°]の分だけ0[°]よりも回転方向上流側にシフトさせる。また、C用の感光体ギヤ202Cの最大径部分を理論適正位相差の分だけ、M用の感光体ギヤ202Mの最大径部分の角度よりも回転方向上流側にシフトさせる。このようにシフトさせた状態で、3つの感光体ギヤ202Y,M,C,K、アイドラギヤ97、カラー原動ギヤ96、カラー感光体モータ90YMCをそれぞれ組み付ける。これにより、理論的には、Y,M,Cトナー像におけるそれぞれの伸び縮みのパターンをM,C用の1次転写ニップで同期させることができるようになる。一方、駆動源が別になっているK用の感光体ギヤ202Kについては、上述した位相差合わせ処理により、次のような関係にする。即ち、K用の感光体ギヤ202Kの最大径部分を理論適正位相差の分だけ、C用の感光体ギヤ202Cの最大径部分の角度よりも回転方向上流側にシフトさせるのである。これにより、理論的には、Y,M,C,Kトナー像におけるそれぞれの伸び縮みのパターンをK用の1次転写ニップで同期させることができるようになる。
配設ピッチLpが周長La以上である場合には、周長Laに対する配設ピッチLpの倍数Aを「倍数A=配設ピッチLp/周長La」という関係式によって求める。そして、得られた倍数Aにおける整数値である倍数整数値A1を「倍数整数値A1=int(倍数A)」という公式によって求める。この公式における「int」とは、小数点以下の数値を切り捨てる演算処理を表している。このようにして倍数整数値A1を求めたら、次に、配設ピッチLpにおける周長Laの整数倍を超える部分であるピッチ端数長Lp’を「ピッチ端数長Lp’=配設ピッチLp−(周長La×倍数整数値A1)」という公式によって求める。このピッチ端数長Lp’に相当するギヤの回転角度だけ回転位相差を設ければよいので、「理論適正位相差[°]=ピッチ端数長Lp’/周長[mm]×360」という公式によって理論適正位相差を求めることができる。このようにして求めたら、配設ピッチLpが周長Laよりも小さい場合と同様にして、Y,M,C用の感光体ギヤ202Y,M,C等を組み付ける。そして、同様の位相差合わせ処理を行えば、理論的には、Y,M,C,Kトナー像におけるそれぞれの伸び縮みのパターンをK用の1次転写ニップで同期させることができるようになる。なお、実施形態に係るプリンタでは、配設ピッチLpが周長Laと等しいため、理論適正位相差が0[°]になる。このため、各感光体ギヤの回転位相を同期させればよいのである。
本発明者らは、実施形態に係るプリンタと同様の構成を備えたプリンタ試験機を試作した。そして、K用の感光体1Kと、C用の感光体1Cとにそれぞれエンコーダを取り付けて、それぞれにおける回転速度変動の周期を調べる実験を行った。すると、理論的には、回転速度変動の周期が同期するはずなのであるが、僅かにずれていることがわかった。原因は定かではないが、感光体ギヤとは異なるギヤの偏心や、ガタツキなどによって変動周期が僅かにずれたのだと思われる。このような僅かなズレがあると、Kトナー像と他色のトナー像とで僅かな重ね合わせズレが起こってしまう。
そこで、第5参考例に係るプリンタでは、その変動周期の僅かなズレを考慮して、K用の感光体ギヤ202Kの回転位相と、C用の感光体ギヤ202Cの回転位相とに、その僅かなズレに相当する分の位相差を設けるような位相差合わせ処理を行うようになっている。変動周期の僅かなズレに相当する分の位相差[°]を補正位相差として求めておき、その分だけ両感光体ギヤ間に回転位相差を設けるようにするのである。これにより、各色トナー像の重ね合わせズレをより確実に抑えることができる。
このようにして、プリントジョブの始めには、理論適正位相差(本例では0[°])に所定の補正位相差を加算した関係でK用の感光体ギヤ202KとC用の感光体ギヤ202Cとを回転させる位相差合わせ処理を行うので、プリントジョブ終了時にも、同様の関係で各感光体ギヤを停止させた方がよい。そうすることで、ファーストプリント時間の長期化をより確実に抑えることができるからである。
そこで、本プリンタでは、プリントジョブを終了するにあたって、各感光体ギヤのうち、互いに異なる駆動源によって回転せしめられるK用の感光体ギヤ202Kと、Y,M,C用の感光体ギヤ202Y,M,Cとを、理論適正位相差と補正位相差の加算値の分だけ位相差をもたせた関係でそれぞれ停止させる回転停止処理を行うように、制御部(図5の150)を構成している。
本プリンタは、標準のプロセス線速(各感光体や中間転写ベルトの線速)でプリント動作を行う標準モードの他、標準モードより速いプロセス線速でプリント動作を行う高速プリントモードも実施することができる。また、標準モードより遅いプロセス線速でプリント動作を行う低速モードも実施することができる。高速プリントモードは画質よりもプリント速度の高速化を優先するモードであり、低速プリントモードはプリント測度よりも画質を優先するモードである。モードの切替については、プリンタに設けられた図示しない複数のキーボタンからなる操作部に対する入力操作や、図示しない外部のパーソナルコンピュータからのモード切替信号の入力などによって行うことができる。
本プリンタにおける制御部(150)のROM(150c)は、次の表1に示すようなデータテーブルを記憶している。
表1において、補正位相差は、上述したように、K用の感光体ギヤ202Kと、C用の感光体ギヤ202Cとを、理論適正位相差をもたせた回転位相で回転させてもなお生ずる両者間での回転速度変動周期の位相差と同じ値である。この補正位相差が、個々のプリンタ製品によってばらつく場合には、それぞれのプリンタ製品における補正位相差を工場出荷時に測定しておき、その値をROM(150c)に記憶させておくことが望ましい。但し、個々のプリンタ製品における補正位相差のバラツキがそれほどない場合には、標準機で測定した値を記憶させてもよい。
表1における「角度−時間換算係数」は、各感光体ギヤ(202Y,M,C,K)の回転角度を時間に変換するための係数である。プロセス線速が異なれば、即ち、各感光体の駆動速度が異なれば、各感光体ギヤを1[°]回転させるのに要する時間が異なってくる。このため、「角度−時間換算係数」として、高速モード用、標準モード用、低速モード用の3種類がデータテーブル内に格納されている。
表1における「K基本停止タイミング」は、先に図4に示したKギヤセンサ91KがK回転円盤203Kの大径部204Kを検知した時点から、K感光体モータ90Kに対する励磁を停止するまでの時間を表している。それぞれの速度モードでK基本停止タイミングが異ならせているのは、K用の感光体1Kの駆動速度が異なっても、K用の感光体ギヤ202Kの最大径部分を同じ回転角度位置で停止させる狙いがあるからである。駆動速度(回転速度)が速くなるほど、単位時間あたりにおける回転角度が大きくなるので、高速モードのK基本停止タイミングは低速モードよりも速いタイミングになっている。「YMC基本停止タイミング」は、K基本停止タイミングと同様に、カラーギヤセンサ91YMCがカラー回転円盤203YMCの大径部204YMCを検知した時点から、カラー感光体モータ90YMCに対する励磁を停止するまでの時間を表している。
本プリンタでは、これまで何度も述べているように、各感光体の配設ピッチLpを周長Laの整数倍にしているので、上述の補正位相差を考慮しなければ、基本的には各感光体ギヤの回転位相差をゼロにする。このため、基本的には、K基本停止タイミングとYMC基本停止タイミングとは同じタイミングになるはずである。しかし、表1に示すように、高速、標準、低速の何れのモードでも、YMC基本停止タイミングがK基本停止タイミングよりも遅いタイミングになっている。これは、感光体モータに対する励磁を停止してから、感光体モータが慣性による回転を停止させるまでの時間が、感光体駆動個数の違いによって、K感光体モータ90Kとカラー感応体モータ90YMCとで異なるからである。この時間差を予め測定しておき、その分だけカラー感光体モータ90YMCの停止タイミングを本来よりも遅らせている。カラー感光体モータ90YMCの停止タイミングを遅らせるのは、カラー感光体モータ90YMCの方が感光体駆動個数が多い(駆動負荷が大きい)ことにより、K感光体モータ90Kよりも励磁停止から回転停止までの時間が短くなるからである。短くなる分だけ余計に駆動することで、両感光体ギヤの最大径部分を同じ回転角度位置で停止させることが可能になる。
図13は、本プリンタの制御部(150)によって実施される回転停止処理の制御フローの一部を示すフローチャートである。同図で示されている一連のフローは、先に図8に示したS12のステップに相当する。このフローにおいては、まず、補正位相差θが表1から読み込まれた後(S12a)、速度モードに応じた角度−時間換算係数Kが表1から読み込まれる(S12b)。そして、「加算時間△t=補正位相差θ×角度〜時間換算係数K」という公式に基づいて、補正位相差θ[°]に相当する駆動時間である加算時間△tが求められる(S12c)。次に、速度モードに応じたYMC基本停止タイミングTymcが表1から読み込まれた後(S12d)、「Tymc’=Tymc+△t」という公式により、YMC基本停止タイミングTymcがYMC停止タイミングTymc’に補正される。この補正により、Y,M,C用の感光体ギヤ202Y,M,Cが、それぞれK用の感光体ギヤ202Kに対して補正位相差θをもった状態で回転停止されるようになる。YMC停止タイミングTymc’が求められると、次に、速度モードに応じたK基本停止タイミングTkが表1から読み込まれる(S12f)。そして、K感光体モータ90Kに対する励磁がK基本停止タイミングTkで停止された後(S12g)。カラー感光体モータ910YMCに対する励磁がYMC停止タイミングTymc’で停止される(S12h)。
このような回転停止処理により、例えば標準モードの場合には、加算時間△tが「(+60°)×3倍」という演算によって+180[msec]として求められた後、YMC停止タイミングTymc’が「60+180」という演算によって240[msec]として求められる。そして、Kギヤセンサ91KがK回転円盤203Kの大径部204Kを検知した時点から15[msec]後(表1参照)に、K感光体モータ90Kに対する励磁が停止される。また、カラーギヤセンサ91YMCがカラー回転円盤203YMCの大径部204YMCを検知した時点から240[msec]後に、カラー感光体モータ90YMCに対する励磁が停止される。
また、高速モードの場合には、加算時間△tが「(+60°)×2倍」という演算によって+120[msec]として求められた後、YMC停止タイミングTymc’が「40+120」という演算によって160[msec]として求められる。そして、Kギヤセンサ91KがK回転円盤203Kの大径部204Kを検知した時点から10[msec]後(表1参照)に、K感光体モータ90Kに対する励磁が停止される。また、カラーギヤセンサ91YMCがカラー回転円盤203YMCの大径部204YMCを検知した時点から160[msec]後に、カラー感光体モータ90YMCに対する励磁が停止される。
また、低速モードの場合には、加算時間△tが「(+60°)×4倍」という演算によって+240[msec]として求められた後、YMC停止タイミングTymc’が「80+240」という演算によって320[msec]として求められる。そして、Kギヤセンサ91KがK回転円盤203Kの大径部204Kを検知した時点から20[msec]後(表1参照)に、K感光体モータ90Kに対する励磁が停止される。また、カラーギヤセンサ91YMCがカラー回転円盤203YMCの大径部204YMCを検知した時点から320[msec]後に、カラー感光体モータ90YMCに対する励磁が停止される。
[
第6参考例]
第6参考例に係るプリンタは、K停止タイミングTkや、YMC停止タイミングTymc’の演算方法が第5実施例に係るプリンタと異なっている。次に示す表2は、本プリンタの制御部(150)のROM(150c)に記憶されているデータテーブルを示している。
このデータテーブルは、K基本停止タイミングやYMC基本停止タイミングとして、標準モードについての値だけしか格納されていな点が、表1に示したデータテーブルと異なっている。
図14は、本プリンタの制御部(150)によって実施される回転停止処理の制御フローの一部を示すフローチャートである。このフローにおいては、まず、速度モードにかかわらず、標準モードに対応するYMC基本停止タイミングTymcが表1から読み込まれた後(S12a)、標準モードに対応する角度−時間変換係数Kが読み込まれる(S12b)。そして、「θymc=Tymc×(1/K)」という公式により、YMC停止角度θymcが求められる(S12c)。このYMC停止角度θymcは、YMC感光体ギヤ202YMCを停止させたときの最大径部分の角度位置を表しており、この角度位置は速度モードにかかわらず同じでなければならない。K感光体ギヤ202Kについても同様である。例えば、先の実施例5の表1において、K基本停止タイミングを角度−時間換算係数の逆数の乗算によって角度に換算すると、速度モードにかかわらず、その換算値が5[°]になる。また、YMC基本停止タイミングを角度−時間換算係数の逆数の乗算によって角度に換算すると、速度モードにかかわらず、その換算値が20[°]になる。換言すれば、速度モードにかかわらず、同色の感光体ギヤについての最大径部分を同じ角度位置で停止させるように、速度モードに応じて基本停止タイミングを異ならせているのである。
上記S12cのステップでYMC停止角度θymcが求められると、次に、補正位相差θが表1から読み込まれた後(S12d)、「θymc=θymc+θ」という公式によってYMC停止角度θymcが補正される(S12e)。そして、速度モードにかかわらず、標準モードのK基本停止タイミングTkが読み込まれた後(S12f)、「θk=Tk×(1/K)」という公式により、K停止角度θkが求められる(12g)。次いで、速度モードに応じた角度−時間換算係数Kが読み込まれた後(12h)、「K基本停止タイミングTk=θk×K」という公式により、速度モードに応じたK基本停止タイミングTkが求められる(12i)。また、「YMC停止タイミングTymc’=θymc×K」という公式により、速度モードに応じたYMC停止タイミングTymc’が求められる(12j)。そして、K感光体モータ90Kに対する励磁がK基本停止タイミングTkで停止された後(S12k)。カラー感光体モータ910YMCに対する励磁がYMC停止タイミングTymc’で停止される(12l)。
このような回転停止処理により、例えば標準モードの場合には、「+60×(1/3)」という演算によってYMC停止角度θymcが20[°]として求められた後、補正位相差θ(+60°)の加算によって80[°]に補正される。そして、「+15×(1/3)」という演算によってK停止角度θkが5[°]として求められた後、「5×3倍」という演算によってK基本停止タイミングTkが+15[msec]として求められる。また、「80×3倍」という演算によってYMC停止タイミングTymc’が240[msec]として求められる。そして、Kギヤセンサ91KがK回転円盤203Kの大径部204Kを検知した時点から15[msec]後(表1参照)に、K感光体モータ90Kに対する励磁が停止される。また、カラーギヤセンサ91YMCがカラー回転円盤203YMCの大径部204YMCを検知した時点から240[msec]後に、カラー感光体モータ90YMCに対する励磁が停止される。
また、高速モードの場合には、「+60×(1/3)」という演算によってYMC停止角度θymcが20[°]として求められた後、補正位相差θ(+60°)の加算によって80[°]に補正される。そして、「+15×(1/3)」という演算によってK停止角度θkが5[°]として求められた後、「5×2倍」という演算によってK基本停止タイミングTkが+10[msec]として求められる。また、「80×2倍」という演算によってYMC停止タイミングTymc’が160[msec]として求められる。そして、Kギヤセンサ91KがK回転円盤203Kの大径部204Kを検知した時点から10[msec]後(表1参照)に、K感光体モータ90Kに対する励磁が停止される。また、カラーギヤセンサ91YMCがカラー回転円盤203YMCの大径部204YMCを検知した時点から160[msec]後に、カラー感光体モータ90YMCに対する励磁が停止される。
また、低速モードの場合には、「+60×(1/3)」という演算によってYMC停止角度θymcが20[°]として求められた後、補正位相差θ(+60°)の加算によって80[°]に補正される。そして、「+15×(1/3)」という演算によってK停止角度θkが5[°]として求められた後、「5×4倍」という演算によってK基本停止タイミングTkが+20[msec]として求められる。また、「80×4倍」という演算によってYMC停止タイミングTymc’が320[msec]として求められる。そして、Kギヤセンサ91KがK回転円盤203Kの大径部204Kを検知した時点から20[msec]後(表1参照)に、K感光体モータ90Kに対する励磁が停止される。また、カラーギヤセンサ91YMCがカラー回転円盤203YMCの大径部204YMCを検知した時点から320[msec]後に、カラー感光体モータ90YMCに対する励磁が停止される。
かかる構成の本プリンタでは、回転停止処理における処理ステップ数が多くなるものの、ROM(150c)に記憶しておく表1のデータ数を減らすことができる。
[
第7参考例]
第7参考例に係るプリンタも、K停止タイミングTkや、YMC停止タイミングTymc’の演算方法が第5実施例に係るプリンタと異なっている。次に示す表3は、本プリンタの制御部(150)のROM(150c)に記憶されているデータテーブルを示している。
このデータテーブルは、時間データであるK基本停止タイミングやYMC基本停止タイミングの代わりに、角度データであるK停止角度θkやYMC停止角度θymcを格納している点が、先に示した表2と異なっている。
図15は、本プリンタの制御部(150)によって実施される回転停止処理の制御フローの一部を示すフローチャートである。このフローにおいては、まず、K停止角度θkやYMC停止角度θymcが表1から読み込まれた後(S12a)、速度モードに応じた角度−時間変換係数Kが表1から読み込まれる(S12c)。そして、「K基本停止タイミングTk=θk×K」という公式により、速度モードに応じたK基本停止タイミングTkが求められる(12d)。また、「YMC停止タイミングTymc’=θymc×K」という公式により、速度モードに応じたYMC停止タイミングTymc’が求められる(12e)。そして、K感光体モータ90Kに対する励磁がK基本停止タイミングTkで停止された後(S12f)。カラー感光体モータ910YMCに対する励磁がYMC停止タイミングTymc’で停止される(12g)。
かかる構成の本プリンタでは、感光体モータの停止時間のパラメータとして、時間データであるK基本停止タイミングTkやYMC基本停止タイミングTymcの代わりに、角度データであるK停止角度θkやYMC停止角度θymcを表1に格納しておくことで、図14と図15との比較からわかるように、回転停止処理の処理ステップ数を大幅に減らすことができる。そして、これにより、停止時間のパラメータとして標準モードだけを表1に格納してデータ記憶量を減らしつつ、図13と図15との比較からわかるように、停止時間のパラメータとして各モードのものを表1に格納する場合よりも回転停止処理の処理ステップ数を減らすことができる。
以下、実施形態に係るプリンタの説明に戻る。実施形態に係るプリンタでは、プリントジョブの開始時に位相差合わせ処理を行っていることで、プリントジョブ終了直前のK用の感光体ギヤ202KとC用の感光体ギヤ202Cとにおける回転位相差の適正値からのズレは、全く無いか、あったとしてもほんの僅かになる。このため、基本的には、K感光体モータ90Kとカラー感光体モータ90YMCと(以下、両感光体モータという)を、次のようにして停止させれば、K、Y用の感光体ギヤ(以下、両感光体ギヤという)を、それぞれ所望の位相差(本例では0°)をもたせた関係で停止させることができる。即ち、それぞれ慣性回転時間の分だけタイミングをずらして停止させるのである。このようにして両感光体モータを停止させる上で、Kギヤセンサ91Kやカラーギヤセンサ91YMCの検知結果を参考にする必要はない。単に、駆動停止タイミングに時間差を設ければ済むからである。たとえ、第5、第6、第7参考例のように補正位相差θを考慮して停止させるにしても、回転停止処理時の両感光体ギヤにおける回転位相差の適正値(本例では0+θ[°])からのズレは殆ど無いので、慣性回転時間と補正位相差θとを考慮した時間差を両感光体モータの駆動停止タイミングにもたせればよい。
ところが、ギヤセンサの検知結果を参考にしないで、単に慣性回転時間と補正位相差θとを考慮して駆動停止タイミングを決定した場合には、回転円盤の被検部(大径部)をギヤセンサに対してどのような回転位置で停止させるのかが定まらなくなる。先に示した図6と図7との比較からわかるように、回転円盤の被検部がギヤセンサに対して比較的近い位置で停止している場合には、プリントジョブ開始後に直ちに被検部がギヤセンサに検知されるため、回転位相差の調整にいち早くとりかかることができる(図7)。これに対し、回転円盤の被検部がギヤセンサに対して比較的遠い位置で停止している場合には、プリントジョブ開始後、感光体が約1周回転してからようやく回転円盤の被検部がギヤセンサに検知されることになる(図6)。このため、回転位相差の調整に取りかかれるまでの時間がかなり長くなってしまう。ファーストプリント時間の短縮化という観点からすれば、図7のようないち早い調整が可能になるように、回転円盤の被検部をギヤセンサの比較的近い位置で停止させることが望ましい。
このようにするためには、回転停止処理においてもギヤセンサによる検知結果を参考にして、回転円盤の被検部をギヤセンサの近くで停止させ得るタイミングを見計らう必要がある。但し、この際、第5、第6、第7実施例のように、Kギヤセンサ91Kによる検知結果と、カラーギヤセンサ91YMCによる検知結果との両方を参考にする必要は必ずしもない。既に何度も述べているように、プリントジョブ終了直前には、両感光体ギヤがほぼ適正値の回転位相差をもって回転しているため、何れか一方のギヤセンサによる検知結果を、他方のギヤセンサによる検知結果とみなしても差し支えないからである。
そこで、実施形態に係るプリンタでは、回転停止処理時に、Kギヤセンサ91Kによる検知結果だけを参考にするように、制御部(150)を構成している。具体的には、本プリンタの制御部のROM(150c)は、先に表3に示したデータテーブルを記憶している。そして、図16にフローの一部を示すような回転停止処理を実行するようになっている。
図16において、S12a〜S12eまでのステップは、図15と同様である。S12fとS13gとを並行して行う点が、第7参考例に係るプリンタと異なっている。これは、第7参考例に係るプリンタがそれぞれの感光体モータの駆動停止タイミングを互いに個別のギヤセンサ(91K、90YMC)による検知結果に基づいて決定していたのに対し、本プリンタでは、Kギヤセンサ91Kによる検知結果だけに基づいて決定しているからである。K感光体モータ90Kの駆動停止タイミングだけでなく、カラー感光体モータ90YMCの駆動停止タイミングも、Kギヤセンサ91Kによる検知結果に基づいて決定しているのである。かかる構成では、第7参考例に係るプリンタに比べて、回転停止処理をより速く終えることができる。
なお、図13〜図16や、表1〜表3を用いて、補正位相差として角度データをROM(150c)に記憶させた例について説明したが、その角度に対応する時間データを記憶させてもよい。この場合、角度−時間換算係数Kによって角度を時間に変換する必要がなくなる。
また、第5〜第7参考例に係るプリンタや、実施形態に係るプリンタにおいては、第3参考例に係るプリンタと同様に、湿度センサや温度センサによる検知結果に応じて、YMC基本停止タイミングTymcやYMC停止角度θymcを変化させるようにしてもよい。また、第4参考例に係るプリンタと同様に、累積稼働時間に応じて、YMC基本停止タイミングTymcやYMC停止角度θymcを変化させるようにしてもよい。
また、第5〜第7参考例に係るプリンタや、実施形態に係るプリンタにおいては、K基本停止タイミングTk、YMC基本停止タイミングTymc、K停止角度θk、YMC停止角度θymcは、それぞれ、感光体モータに対する励磁を切ってから慣性による動きが停止するまでの時間の想定値として機能している。
次に、参考形態に係るプリンタの構成について説明する。なお、参考形態に係るプリンタの基本的な構成は、以下に特筆しない限り、実施形態に係るプリンタの基本的な構成と同様である。
本プリンタの制御部においても、先に図8にS5〜S9で示した位相合わせ処理を実施するように構成されている。但し、その処理内容が一部異なっている。
図12は、本プリンタの制御部によって実施される位相差合わせ処理のうちの一部を示す部分フローチャートである。同図において、位相差合わせ処理の全行程のうち、図示していない工程は、先に図8にS5〜S9で示した工程と同様である。即ち、位相差合わせ処理の前半においては、先に図8にS5〜S8と同じ工程が行われる。また、S8の工程の直後に、ずれ量について許容ずれ量を超えているか否かを判断するのも(図12ではS9−1)、図8に示した工程と同様である。図7の工程と異なるのは、このS9−1よりも後の工程である。
ずれ量について許容ずれ量を超えていないと判断すると(S9−1でN)、図8における位相差合わせ処理と同様に、画像形成動作処理を開始する(図7のS10)。これに対し、許容ずれ量を超えていると判断すると(S9−1でY)、次に、変数であるカウント値について、所定の閾値以下であるか否かを判断する(S9−2)。そして、閾値以下であると判断した場合には(S9−2でY)、カウント値に「1」を加算した後(S9−3)、制御フローを先に図8に示したS5の工程に戻して、回転線速差をもたせた回転位相差ズレの修正を再び行う。一方、カウント値について所定の閾値を超えていると判断すると(S9−2でN)、カウント値をゼロにリセットした後(S9−4)、図8に示したS10の工程に進む。
このような位相差合わせ処理においては、回転線速差をもたせた回転位相差ズレの修正の繰り返し回数を、閾値以下に留めることになる。そして、これにより、回転位相を所定時間内に調整することができなかった場合には、それ以上の回転位相差ズレの修正を行うことなく、そのまま画像形成処理を実施する。これにより、各感光体モータ(202K、202YMC)に対する駆動負荷の経時的な変化や、各ギヤセンサ(91K、91YMC)の故障に起因して、ファーストプリント時間を実状にそぐわないほど長くするといった事態を解消することができる。
なお、経時的な駆動負荷の変化や、環境変化などに起因して回転位相ずれを併せにくくなったために、所定の時間内で回転位相を完全に調整しないままに画像を形成したとしても、回転位相差ズレに起因する重ね合わせずれ量は最大でも20[μm]といった小さなものであるのが一般で、且つある程度まではそのずれを修正している。このため、重ね合わせずれは非常に小さなものとなる。よって、写真画像などの重ね合わせずれが目立ち易いベタ画像のプリントよりも、重ね合わせずれが目立ち難い文字画像のプリントの頻度が圧倒的に多いユーザーにとっては、回転位相差ズレを完全に解消しないでプリントを行ったことに起因する重ね合わせずれを認識させることがあまりない。また、重ね合わせずれが目立ち易いベタ画像のプリント頻度が比較的多いユーザーであっても、画質劣化に対する関知度合が比較的低いユーザーであれば、その僅かな重ね合わせずれを認識させることがあまりない。これらのユーザーに対し、回転位相差ズレを完全に解消できなかった旨のエラーメッセージを出して、保守点検や修理を促すことは、ユーザーの望まない過剰なサービスを押し付けることになりかねない。
そこで、本プリンタでは、回転位相差ズレを完全に解消しないままに画像形成処理を開始した場合であっても、その旨のエラーメッセージをユーザーに報知しないようになっている。これにより、ユーザーの望まない過剰なサービスを押し付けてしまうといった事態を回避することができる。なお、回転位相差ズレを完全に解消しないままに画像形成処理を開始したことによる僅かな重ね合わせずれに気付く敏感なユーザーであれば、何らかの異常が発生していることに気付くため、必要に応じて修理や保守点検依頼をすると考えられる。
このようにしてエラーメッセージを出さないと、後の何らかの異常の発生に伴って派遣されたサービスマンに対して、回転位相差ズレを完全に解消しないままに画像形成処理を開始するようになった時期を把握させることができなくなる。そこで、本プリンタにおいては、ユーザーにエラーメッセージを出さないが、そのエラーの発生履歴の情報を情報記憶手段たる上述のRAMに記憶させるようになっている。
これまで、各感光体1Y,M,C,Kの配設ピッチを感光体の周長の整数倍に設定したプリンタの例について説明してきたが、整数倍ではない設定にした画像形成装置にも本発明の適用が可能である。この場合、カラー感光体モータ90YMCによって駆動される感光体ギヤ202Y,M,Cと、K感光体モータ90Kによって駆動される感光体ギヤ202Kとの回転位相差や、停止時における位相差を次のようにすればよい。即ち、ゼロではなく、周長に対する配設ピッチの倍数における小数点の値に応じた角度だけずらせばよい。
以上、第1参考例に係るプリンタにおいては、回転角度検知手段たるKギヤセンサ91Kやカラーギヤセンサ91YMCによる検知結果に基づいて、各個別ギヤであるK用の感光体ギヤ202KとC用の感光体ギヤ202Cとの回転位相差を適正値に調整してから、両感光体モータをそれぞれ停止させる制御を実施するように、制御手段たる制御部150を構成している。かかる構成では、両感光体ギヤを、位相差の適正値からのズレが全くない状態でそれぞれ停止させることが可能になる。
また、実施形態に係るプリンタにおいては、プリントジョブを終了するにあたって、駆動源たる両感光体モータのうち、その一部であるK感光体モータ90Kしか駆動していないモノクロプリント時には、全ての感光体モータを駆動させて両感光体ギヤの回転位相を調整してから、それら感光体モータを停止する制御を実施している。かかる構成では、モノクロプリントを行っても、両感光体ギヤをそれぞれ所望の位相差で停止させることができる。
また、第2参考例に係るプリンタにおいては、駆動伝達先の像担持体の数である感光体数が互いに異なるK感光体モータ90Kとカラー感光体モータYMCとについて、それぞれ励磁を切ってから慣性による動きが停止するまでの時間である慣性回転時間の想定値を互いに異ならせて駆動停止タイミングを決定する制御を実施するように制御部150を構成している。かかる構成では、両感光体モータで、駆動伝達先の感光体数が互いに異なることに起因して、両感光体モータにそれぞれ対応するK感光体ギヤ202Kとカラー感光体ギヤ202YMCとの回転停止位置の差を大きくしてしまうといった不具合を解消することができる。
また、第3参考例に係るプリンタにおいては、環境センサたる湿度センサ及び温度センサを設け、それらによる検知結果に応じて慣性回転時間の想定値を変化させる制御を実施するように制御部150を構成している。かかる構成では、温度や湿度の変化に起因して、電気的には、各感光体ギヤをそれぞれ所定の回転角度範囲内で停止させる制御を実施していても、実際には、それぞれその回転角度範囲内で停止させていないといった事態が起こってしまうといった事態を抑えることができる。
また、第4参考例に係るプリンタにおいては、プリンタの累積稼働時間を計数する計時手段たる制御部150による累積稼働時間の検知結果に応じて、慣性回転時間の想定値を変化させる制御を実施するように制御部150を構成している。かかる構成では、累積稼働時間の増加に伴う駆動負荷の変化に起因して、電気的には、各感光体ギヤをそれぞれ所定の回転角度範囲内で停止させる制御を実施していても、実際には、それぞれその回転角度範囲内で停止させていないといった事態が起こってしまうといった事態を抑えることができる。
また、参考形態に係るプリンタにおいては、プリントジョブ開始時に、K感光体ギヤ202KとC感光体ギヤ202Cとの回転位相の調整が不完全なままで各感光体に対するトナー像の形成を開始した場合には、その調整が不完全であった旨の情報であるエラーの発生履歴の情報を情報記憶手段たるRAM150bに記憶させる制御を実施させるように制御部150を構成している。かかる構成では、後の何らかの異常の発生に伴って派遣されたサービスマンに対して、回転位相差ズレずれを完全に解消しないままにプリント処理を開始するようになった時期を把握させることができる。
また、実施形態に係るプリンタにおいては、複数の感光体ギヤにおける互いに異なる感光体モータによって回転せしめられるもののうち、何れか1つであるK感光体ギヤ202Kだけに対するKギヤセンサ91Kによる検知結果と、慣性回転時間の想定値とに基づいて、両感光体モータについての駆動停止タイミングをそれぞれ決定する制御を実施するように制御部150を構成している。かかる構成では、Kギヤセンサ91Kによる検知結果と、カラーギヤセンサ91YMCによる検知結果とに基づいて、K感光体モータ90Kの駆動停止タイミングとカラー感光体モータ90YMCの駆動停止タイミングとを決定する場合に比べて、回転停止処理をより速く終えることができる。
また、第5参考例や第6参考例に係るプリンタにおいては、慣性回転時間の想定値として、時間データであるK基本停止タイミングTkやYMC基本停止タイミングTymcを制御部150のROM150cに記憶させている。かかる構成では、それら時間データに基づいて、両感光体モータの駆動停止タイミングを決定させることができる。
また、第7参考例に係るプリンタにおいては、慣性回転時間の想定値として、各感光体ギヤの回転角度データであるK停止角度θkやYMC停止角度θymcを制御部150のROM150cに記憶させている。かかる構成では、それら角度データに基づいて、両感光体モータの駆動停止タイミングを決定させることができる。
また、第5参考例〜第7参考例や実施形態に係るプリンタにおいては、可視像たるトナー像の形成に先立つK用の感光体ギヤ202KとC用の感光体ギヤ202Cとの回転位相の調整(回転停止処理)で、互いに異なる感光体モータによって回転せしめられるK用の感光体ギヤ202KとC用の感光体ギヤ202Cとの回転位相を、周長Laと配設ピッチLpとに基づいて求められる理論適正位相差に所定の位相差である補正位相差θが加算された加算位相差をもたせた関係にし、且つ、プリントジョブを終了するにあたって、互いに異なる感光体モータによって回転せしめられるK用の感光体ギヤ202KとC用の感光体ギヤ202Cとをその関係で停止させる制御を実施するように制御部150を構成している。かかる構成では、両感光体ギヤの回転位相差の適正値が理論適正位相差ではなく加算位相差である場合でも、各色トナー像の重ね合わせずれを適切に抑えることができる。更には、加算位相差に相当する位相差で両感光体ギヤを停止させて、ファーストプリント時間の長時間化を抑えることもできる。
また、第5〜7参考例や実施形態に係るプリンタでは、複数の感光体を標準の駆動速度で駆動しながら画像を形成する標準モードと、標準の駆動速度よりも速い駆動速度で駆動する高速モードと、標準の駆動速度よりも遅い駆動速度で駆動する低速モードとを実施し、且つ、制御部150が、低速モード、高速モードでの画像形成動作における両感光体モータについてのそれぞれの停止タイミングを、標準速度モードでの画像形成動作であると仮定した場合の停止タイミングの補正によって求める。かかる構成では、ROM150cに記憶させておくデータテーブルのデータ量を低減することができる。