以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のプリンタ(以下、単にプリンタという)の実施形態について説明する。
まず、実施形態に係るプリンタの基本的な構成について説明する。図1は、実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。同図において、このプリンタは、イエロー,シアン,マゼンタ,黒(以下、Y,C,M,Kと記す)のトナー像を形成するための4つのプロセスユニット6Y,C,M,Kを備えている。これらは、画像形成物質として、互いに異なる色のY,C,M,Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっており、寿命到達時に交換される。Yトナー像を生成するためのプロセスユニット6Yを例にすると、図2に示すように、像担持体たるドラム状の感光体1Y、ドラムクリーニング装置2Y、除電装置(不図示)、帯電装置4Y、現像器5Y等を備えている。プロセスユニット6Yは、プリンタ本体に脱着可能であり、一度に消耗部品を交換できるようになっている。
帯電装置4Yは、図示しない駆動手段によって図中時計回りに回転せしめられる感光体1Yの表面を一様帯電せしめる。一様帯電せしめられた感光体1Yの表面は、レーザ光によって露光走査されてY用の静電潜像を担持する。このYの静電潜像は、Yトナーと磁性キャリアとを含有するY現像剤を用いる現像器5YによってYトナー像に現像される。そして、後述するベルト部材としての中間転写ベルト8上に中間転写される。ドラムクリーニング装置2Yは、中間転写工程を経た後の感光体1Y表面に残留したトナーを除去する。また、上記除電装置は、クリーニング後の感光体1Yの残留電荷を除電する。この除電により、感光体1Yの表面が初期化されて次の画像形成に備えられる。他色のプロセスユニット(6C,M,K)においても、同様にして感光体(1C,M,K)上に(C,M,K)トナー像が形成されて、中間転写ベルト8上に中間転写される。
現像器5Yは、そのケーシングの開口から一部露出させるように配設された現像ロール51Yを有している。また、互いに平行配設された2つの搬送スクリュウ55Y、ドクターブレード52Y、トナー濃度センサ(以下、Tセンサという)56Yなども有している。
現像器5Yのケーシング内には、磁性キャリアとYトナーとを含む図示しないY現像剤が収容されている。このY現像剤は2つの搬送スクリュウ55Yによって撹拌搬送されながら摩擦帯電せしめられた後、上記現像ロール51Yの表面に担持される。そして、ドクターブレード52Yによってその層厚が規制されてからY用の感光体1Yに対向する現像領域に搬送され、ここで感光体1Y上の静電潜像にYトナーを付着させる。この付着により、感光体1Y上にYトナー像が形成される。現像器5Yにおいて、現像によってYトナーを消費したY現像剤は、現像ロール51Yの回転に伴ってケーシング内に戻される。
2つの搬送スクリュウ55Yの間には仕切壁が設けられている。この仕切壁により、現像ロール51Yや図中右側の搬送スクリュウ55Y等を収容する第1供給部53Yと、図中左側の搬送スクリュウ55Yを収容する第2供給部54Yとがケーシング内で分かれている。図中右側の搬送スクリュウ55Yは、図示しない駆動手段によって回転駆動せしめられ、第1供給部53Y内のY現像剤を図中手前側から奥側へと搬送しながら現像ロール51Yに供給する。図中右側の搬送スクリュウ55Yによって第1供給部53Yの端部付近まで搬送されたY現像剤は、上記仕切壁に設けられた図示しない開口部を通って第2供給部54Y内に進入する。第2供給部54Y内において、図中左側の搬送スクリュウ55Yは、図示しない駆動手段によって回転駆動せしめられ、第1供給部53Yから送られてくるY現像剤を図中右側の搬送スクリュウ55Yとは逆方向に搬送する。図中左側の搬送スクリュウ55Yによって第2供給部54Yの端部付近まで搬送されたY現像剤は、上記仕切壁に設けられたもう一方の開口部(図示せず)を通って第1供給部53Y内に戻る。
透磁率センサからなる上述のTセンサ56Yは、第2供給部54Yの底壁に設けられ、その上を通過するY現像剤の透磁率に応じた値の電圧を出力する。トナーと磁性キャリアとを含有する二成分現像剤の透磁率は、トナー濃度と良好な相関を示すため、Tセンサ56YはYトナー濃度に応じた値の電圧を出力することになる。この出力電圧の値は、図示しない制御部に送られる。この制御部は、Tセンサ56Yからの出力電圧の目標値であるY用Vtrefを格納したRAMを備えている。このRAM内には、他の現像器に搭載された図示しないTセンサからの出力電圧の目標値であるC用Vtref、M用Vtref、K用Vtrefのデータも格納されている。Y用Vtrefは、後述するY用のトナー搬送装置の駆動制御に用いられる。具体的には、上記制御部は、Tセンサ56Yからの出力電圧の値をY用Vtrefに近づけるように、図示しないY用のトナー搬送装置を駆動制御して第2供給部54Y内にYトナーを補給させる。この補給により、現像器5Y内のY現像剤中のYトナー濃度が所定の範囲内に維持される。他のプロセスユニットの現像器についても、C,M,K用のトナー搬送装置を用いた同様のトナー補給制御が実施される。
先に示した図1において、プロセスユニット6Y,C,M,Kの図中下方には、潜像書込装置としての光書込ユニット7が配設されている。光書込ユニット7は、画像情報に基づいて発したレーザー光を、プロセスユニット6Y,C,M,Kにおけるそれぞれの感光体に照射して露光する。この露光により、感光体1Y,C,M,K上にY,C,M,K用の静電潜像が形成される。なお、光書込ユニット7は、光源から発したレーザー光を、モータによって回転駆動したポリゴンミラーで走査しながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体に照射するものである。
光書込ユニット7の図中下側には、紙収容カセット26、これらに組み込まれた給紙ローラ27など有する紙収容手段が配設されている。紙収容カセット26は、シート状の記録体たる転写紙Pを複数枚重ねて収納しており、それぞれの一番上の転写紙Pには給紙ローラ27を当接させている。給紙ローラ27が図示しない駆動手段によって図中反時計回りに回転せしめられると、一番上の転写紙Pが給紙路70に向けて送り出される。
この給紙路70の末端付近には、レジストローラ対28が配設されている。レジストローラ対28は、転写紙Pを挟み込むべく両ローラを回転させるが、挟み込んですぐに回転を一旦停止させる。そして、転写紙Pを適切なタイミングで後述の2次転写ニップに向けて送り出す。
プロセスユニット6Y,C,M,Kの図中上方には、中間転写ベルト8を張架しながら無端移動せしめる転写ユニット15が配設されている。転写手段としての転写ユニット15は、中間転写ベルト8の他に、2次転写バイアスローラ19、ベルトクリーニング装置10などを備えている。また、4つの1次転写バイアスローラ9Y,C,M,K、駆動ローラ12、クリーニングバックアップローラ13、従動ローラ14、テンションローラ11なども備えている。中間転写ベルト8は、これらのローラに張架されながら、駆動ローラ12の回転駆動によって図中反時計回りに無端移動せしめられる。1次転写バイアスローラ9Y,C,M,Kは、このように無端移動せしめられる中間転写ベルト8を感光体1Y,C,M,Kとの間に挟み込んでそれぞれ1次転写ニップを形成している。これらは中間転写ベルト8の裏面(ループ内周面)にトナーとは逆極性(例えばプラス)の転写バイアスを印加する方式のものである。1次転写バイアスローラ9Y,C,M,Kを除くローラは、全て電気的に接地されている。中間転写ベルト8は、その無端移動に伴ってY,C,M,K用の1次転写ニップを順次通過していく過程で、感光体1Y,C,M,K上のY,C,M,Kトナー像が重ね合わせて1次転写される。これにより、中間転写ベルト8上に4色重ね合わせトナー像(以下、4色トナー像という)が形成される。
駆動回転体としての駆動ローラ12は、2次転写ローラ19との間に中間転写ベルト8を挟み込んで2次転写ニップを形成している。中間転写ベルト8上に形成された可視像たる4色トナー像は、この2次転写ニップで転写紙Pに転写される。そして、転写紙Pの白色と相まって、フルカラートナー像となる。2次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト8には、転写紙Pに転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、ベルトベルトクリーニング装置10によってクリーニングされる。2次転写ニップで4色トナー像が一括2次転写された転写紙Pは、転写後搬送路71を経由して定着装置20に送られる。
定着装置20は、内部にハロゲンランプ等の発熱源を有する定着ローラ20aと、これに所定の圧力で当接しながら回転する加圧ローラ20bとによって定着ニップを形成している。定着装置20内に送り込まれた転写紙Pは、その未定着トナー像担持面を定着ローラ20aに密着させるようにして、定着ニップに挟まれる。そして、加熱や加圧の影響によってトナー像中のトナーが軟化せしめられて、フルカラー画像が定着せしめられる。
定着装置20内でフルカラー画像が定着せしめられた転写紙Pは、定着装置20を出た後、排紙路72と反転前搬送路73との分岐点にさしかかる。この分岐点には、第1切替爪75が揺動可能に配設されており、その揺動によって転写紙Pの進路を切り替える。具体的には、爪の先端を反転前送路73に近づける方向に動かすことにより、転写紙Pの進路を排紙路72に向かう方向にする。また、爪の先端を反転前搬送路73から遠ざける方向に動かすことにより、転写紙Pの進路を反転前搬送路73に向かう方向にする。
第1切替爪75によって排紙路72に向かう進路が選択されている場合には、転写紙Pは、排紙路72から排紙ローラ対100を経由した後、機外へと配設されて、プリンタ筺体の上面に設けられたスタック50a上にスタックされる。これに対し、第1切替爪75によって反転前搬送路73に向かう進路が選択されている場合には、転写紙Pは反転前搬送路73を経て、反転ローラ対21のニップに進入する。反転ローラ対21は、ローラ間に挟み込んだ転写紙Pをスタック部50aに向けて搬送するが、転写紙Pの後端をニップに進入させる直前で、ローラを逆回転させる。この逆転により、転写紙Pがそれまでとは逆方向に搬送されるようになり、転写紙Pの後端側が反転搬送路74内に進入する。
反転搬送路74は、鉛直方向上側から下側に向けて湾曲しながら延在する形状になっており、路内に第1反転搬送ローラ対22、第2反転搬送ローラ対23、第3反転搬送ローラ対24を有している。転写紙Pは、これらローラ対のニップを順次通過しながら搬送されることで、その上下を反転させる。上下反転後の転写紙Pは、上述の給紙路70に戻された後、再び2次転写ニップに至る。そして、今度は、画像非担持面を中間転写ベルト8に密着させながら2次転写ニップに進入して、その画像非担持面に中間転写ベルトの第2の4色トナー像が一括2次転写される。この後、転写後搬送路71、定着装置20、排紙路72、排紙ローラ対100を経由して、機外のスタック部50a上にスタックされる。このような反転搬送により、転写紙Pの両面にフルカラー画像が形成される。
転写ユニット15と、これよりも上方にあるスタック部50aとの間には、ボトル支持部31が配設されている。このボトル支持部31は、Y,C,M,Kトナーを収容するトナー収容部たるトナーボトル32Y,C,M,Kを搭載している。トナーボトル32Y,C,M,Kは、互いに水平よりも少し傾斜した角度で並ぶように配設され、Y、C、M、Kという順で配設位置が高くなっている。トナーボトル32Y,C,M,K内のY,C,M,Kトナーは、それぞれ後述するトナー搬送装置により、プロセスユニット6Y,C,M,Kの現像器に適宜補給される。これらのトナーボトル32Y,C,M,Kは、プロセスユニット6Y,C,M,Kとは独立してプリンタ本体に脱着可能である。
本プリンタにおいては、モノクロ画像を形成するモノクロモードと、カラー画像を形成するカラーモードとで、感光体と中間転写ベルト8との接触状態を異ならせるようになっている。具体的には、転写ユニット15における4つの1次転写バイアスローラ9Y,C,M,Kのうち、K用の1次転写バイアスローラ9Kについては、他の1次転写バイアスローラとは別に、図示しない専用のブラケットで支持している。また、Y,C,M用の3つの1次転写バイアスローラ9Y,C,Mについては、それらを図示しない共通の移動ブラケットで支持している。この移動ブラケットについては、図示しないソレノイドの駆動によって、Y,C,M用の感光体1Y,C,Mに近づける方向と、感光体1Y,C,Mから遠ざける方向とに移動させることが可能である。移動ブラケットを感光体1Y,C,Mから遠ざける方向に移動させると、中間転写ベルト8の張架姿勢が変化して、中間転写ベルト8がY,C,M用の3つの感光体1Y,C,Mから離間する。但し、K用の感光体1Kと中間転写ベルト8とは接触したままである。モノクロモードにおいては、このように、K用の感光体1Kだけを中間転写ベルト8に接触させた状態で、画像形成動作を行う。このとき、4つの感光体のうち、K用の感光体1Kだけを回転駆動させ、Y,C,M用の感光体1Y,C,Mについては、駆動を停止させている。
上述の移動ブラケットを3つの感光体1Y,C,Mに近づける方向に移動させると、中間転写ベルト8の張架姿勢が変化して、それまで3つの感光体1Y,C,Mから離間していた中間転写ベルト8がそれら3つの感光体1Y,C,Mに接触する。このとき、K用の感光体1Kと中間転写ベルト8とは接触したままである。カラーモードにおいては、このように、4つの感光体1Y,C,M,Kの全てを中間転写ベルト8に接触させた状態で、画像形成動作を行う。かかる構成においては、移動ブラケットや上述したソレノイドなどが、感光体と中間転写ベルト8とを接離させる接離手段として機能している。
本プリンタは、4つのプロセスユニット6Y,C,M,Kや、光書込ユニット7などからなる作像手段の駆動を制御する制御手段として、図示しないメイン制御部を備えている。このメイン制御部は、演算手段たるCPU(Central Processing Unit)、データ記憶手段たるRAM(Random Access Memory)、データ記憶手段たるROM(Read Only Memory)などを具備しており、ROMに記憶しているプログラムに基づいて、プロセスユニットや光書込ユニット7の駆動を制御する。
また、メイン制御部とは別に、図示しない駆動制御部を有している。そして、この駆動制御部は、CPUや、ROM、データ記憶手段たる不揮発性RAMなどを具備しており、ROMに記憶しているプログラムに基づいて、後述する駆動モータの駆動を制御する。
実施形態に係るプリンタにおいて、各色のトナー像の中間転写ベルト8に対する転写位置が相対的にずれると、カラー画像に色ズレが発生してしまう。かかる色ずれは、各色トナー像の副走査レジストずれなどによって発生する。副走査レジストずれは、トナー像の正規の転写位置が中間転写ベルト8の移動方向である副走査方向に全体的にずれてしまう現象である。そして、副走査レジストずれの主な原因は、反射ミラーやレンズなどといった光書込ユニット7の部品が温度変化に伴って伸縮することにある。複数の記録紙に対して連続して画像を形成する連続プリント動作中には、光書込ユニット7が昇温を続けることから、連続動作時間が長くなるに従って色ズレ量が増加していく。
そこで、本プリンタのメイン制御部は、所定枚数のプリントを行う毎に、次のような書込位置補正処理を行う。即ち、各色の感光体にそれぞれ形成したトナー像をベルト上に並べて転写した後、それらトナー像を位置ずれ量検知手段としての光学センサで検知したタイミングに基づいて各色トナー像の位置ズレ量を検出する。そして、検出結果に基づいて、潜像書込開始タイミングを補正することで、副走査レジストズレ量を低減する。これにより、図3に示すように、連続プリントモードにおいて、連続プリント枚数の増加に伴って徐々に大きくなっていく色ずれ量を、書込位置補正処理の定期的な実施によって定期的にほぼゼロにリセットすることができる。
図4は、中間転写ベルト8の一部を位置ずれ量検知手段としての光学センサユニット136とともに示す拡大斜視図である。図示のように、中間転写ベルト8における駆動ローラ12に対する掛け回し箇所には、光学センサユニット136が所定の間隙を介して対向している。メイン制御部は、図示しない電源スイッチがONされた直後や、所定枚数のプリントを実施する毎に、書込位置補正処理を実施するようになっている。そして、この書込位置補正処理において、中間転写ベルト5の幅方向の一端部、中央部、他端部にそれぞれ、シェブロンパッチPVと呼ばれる複数のトナー像からなる色ずれ検知用画像を形成する。光学センサユニット136は、中間転写ベルト8の幅方向における一端部に対向する第1光学センサ137と、中央部に対向する第2光学センサ138、他端部に対向する第3光学センサ139とを具備している。そして、第1光学センサ137は、発光手段から発した光を集光レンズに通した後、中間転写ベルト8の表面で反射させ、その反射光を受光手段で受光して受光量に応じた電圧を出力する。中間転写ベルト8の一端部に形成されたシェブロンパッチPV内のトナー像が第1光学センサ137の直下を通過する際には、第1光学センサ137の受光手段による受光量が大きく変化する。これにより、メイン制御部は、中間転写ベルト8の幅方向の一端部に形成されたシェブロンパッチPV内における各トナー像を検知することができる。また、同様にして、第2光学センサ138からの出力に基づいて、中間転写ベルト8の中央部に形成されたシェブロンパッチPV内における各トナー像を検知することもできる。また、第3光学センサ139からの出力に基づいて、中間転写ベルト8の他端部に形成されたシェブロンパッチPV内における各トナー像を検知することもできる。そして、その検知タイミングに基づいて、各トナー像の位置ずれ量を検知することが可能である。このように、第1光学センサ137、第2光学センサ138、第3光学センサ139は、それぞれメイン制御部との組合せによって位置ずれ量検知手段として機能している。なお、発光手段としては、トナー像を検出するために必要な反射光を作り得る光量をもつLED等が用いられている。また、受光手段としては、多数の受光素子が直線状に配列されたCCDなどが用いられている。
メイン制御部は、シェブロンパッチPV内の各トナー像を検知することで、各トナー像における主走査方向の位置、副走査方向(ベルト移動方向)の位置、主走査方向の倍率誤差、主走査方向からのスキューをそれぞれ検出する。ここで言う主走査方向とは、ポリゴンミラーでの反射に伴ってレーザー光が感光体表面上で位相する方向を示している。シェブロンパッチは、図5に示すように、Y,C,M,Kの各色のトナー像を主走査方向から約45[°]傾けた姿勢で、副走査方向であるベルト移動方向に所定ピッチで並べたラインパターン群である。このようなシェブロンパッチPV内のY,C,Mトナー像について、Kトナー像との検知時間差を読み取っていく。同図では、紙面上下方向が主走査方向に相当し、左から順に、Y,C,M,Kトナー像が並んだ後、これらとは姿勢が90[°]異なっているK,M,C,Yトナー像が更に並んでいる。基準色となるKとの検出時間差tyk、tck、tmkについての実測値と理論値との差に基づいて、各色トナー像の副走査方向のズレ量、即ちレジストズレ量を求める。そして、そのレジストズレ量に基づいて、感光体に対する光書込開始タイミング、あるいは反射ミラーの傾きを補正して、各色トナー像のレジストズレを低減する。また、ベルト両端部間での副走査方向ズレ量の差に基づいて、各色トナー像の主走査方向からの傾き(スキュー)を求める。そして、その結果に基づいて、反射ミラーの面倒れ補正を実施して、各色トナー像のスキューズレを低減する。以上のように、色ずれ検知用画像であるシェブロンパッチPV内における各トナー像を検知したタイミングに基づいて光書込開始タイミングなどを補正してレジストズレやスキューズレを低減する処理が、書込位置補正処理である。
なお、光書込開始タイミングの補正によって感光体に対する潜像の書込位置を補正する場合には、その補正は次のように実施される。即ち、本プリンタのように、4つの感光体(1Y,C,M,K)に対する4つのレーザー光を、共通の1つのポリゴンミラーによって偏向せしめてそれぞれの感光体に対する主走査方向の光走査を行うものでは、各感光体に対する光書込開始タイミングが、1ライン分(1走査線分)の書込に相当する時間単位で補正される。例えば、2つの感光体間で、1/2ドットを超えるレジストズレが発生している場合、何れか一方の感光体に対する光書込開始タイミングが、1ライン分の書込時間の整数倍だけ前後にずらされる。より詳しくは、例えば3/4ドットの重ね合わせズレの場合には1ライン分の書込時間の1倍、7/4ドットの重ね合わせズレの場合には1ライン分の書込時間の2倍だけ、光書込開始タイミングがそれまでのタイミングよりも前後にずらされる。これにより、副走査方向における重ね合わせズレ量が1/2ドット以下に抑えられる。よって、書込位置補正処理を実施した直後であっても、各色のドットを完全にずれなく重ね合わせることができない場合がある。
また、光書込ユニット7の反射ミラーの傾きを調整することによって、各色のドットのレジストズレを抑える場合には、書込位置補正処理を実施した直後において、各色のドットをほぼずれなく重ね合わせることができる。
図6は、駆動制御手段としての駆動制御部200及びメイン制御部250と、これに電気接続される各種機器とを示す模式図である。中間転写ベルト8のループ内側でベルトを張架している張架部材の1つであり、ベルトの無端移動に伴って従動回転する従動ローラ14の線速は、中間転写ベルト8の線速と同じになる。よって、従動ローラ14の回転角速度や回転角変位は、中間転写ベルト8の無端移動速度を間接的に示すことになる。従動ローラ14の軸部材には、ロータリーエンコーダからなるローラエンコーダ171が固定されている。このローラエンコーダ171は、従動ローラ14の回転角速度や回転角変位を検知して、その結果を駆動制御部200に出力する。このようなローラエンコーダ171は、中間転写ベルト8の移動速度を検知する速度検知手段として機能している。駆動制御部200は、ローラエンコーダ171からの出力に基づいて、中間転写ベルト8の速度変動や無端移動速度を把握することができる。
なお、本プリンタでは、速度検知手段として、従動ローラ14の回転角速度や回転角変位を検知するローラエンコーダ171を用いたが、他の方式によって速度変動や速度を検知するものを用いてもよい。例えば、複数の目盛をベルト周方向に所定ピッチで配設したスケールを中間転写ベルトに設け、その目盛を検知する時間間隔に基づいてベルトの速度変動や速度を検知する光学センサを用いてもよい。また、パーソナルコンピュータの入力装置である光学式マウスなどに採用されている光学イメージセンサを、ベルト表面の速度変動や速度を検知する手段として用いてもよい。
メイン制御部250には、温度センサ300が接続されている。この温度センサ300は、先に図1に示したように、駆動ローラ12の近傍に配設されており、周知の技術によって駆動ローラ12の周囲の温度を検知して、その検知結果に応じた信号を出力する。この信号は、図示しないA/Dコンバーターによってデジタルデータに変換された後、メイン制御部250に入力される。
駆動ローラ12としては、中間転写ベルト8に対して強いグリップ力を発揮させるように、表面にゴム等の弾性材料からなる表面層を被覆したものを用いている。駆動ローラ12が偏心していると、駆動ローラ1回転あたりに1周期分のサインカーブを描くような特性の速度変動が中間転写ベルト8に発生する。また、駆動ローラ12の直径に誤差があると、駆動ローラ12を設計通りの角速度で回転させても、駆動ローラ12の線速や中間転写ベルト8の速度を目標の速度にすることができなくなる。
そこで、駆動制御部200は、ローラエンコーダ171から出力されるパルス信号の周波数を、基準クロックの周波数に合わせるように、駆動ローラ12の駆動源となっている駆動モータ162を加減速制御するPLL制御を行う。これにより、ローラエンコーダ171が取り付けられた従動ローラ14を一定の回転角速度で回転させることで、中間転写ベルト8の速度を目標ベルト速度で安定化させる。つまり、中間転写ベルト8の速度に基づいて、駆動モータ162の駆動速度を制御することで、中間転写ベルト8を、駆動ローラ12の径や偏心にかかわらず、目標ベルト速度で無端移動させるようにするベルト定速制御を実施する。かかる構成においては、中間転写ベルト8の速度の検知結果に基づくベルト定速制御を行うことで、中間転写ベルト8を駆動ローラ12の径や偏心にかかわらず目標ベルト速度で無端移動させることができる。
次に、本プリンタの特徴的な構成について説明する。
本発明者らは、以上の基本的な構成を備えるプリンタ試験機において、近年の高速プリント化の要望に応えるべく、プリント速度をより高速化していく実験を行った。すると、記録紙として厚紙を用いた場合に、スジ状の画像乱れを顕著に引き起こしてしまった。このスジ状の画像乱れは、厚紙を2次転写ニップに進入させる際の衝撃に起因するものであることがわかった。具体的には、厚紙を2次転写ニップに進入させる際に、急激な負荷上昇によって中間転写ベルト8の移動速度を一瞬だけ大きく低下させてしまう。プリント速度を従来よりも高速化した条件下では、その低下率が従来よりも大きくなる。すると、その速度低下を駆動モータ162の駆動制御にフィードバックすると、中間転写ベルト8の速度を一瞬だけ過剰に速めてしまう。このように、厚紙のニップ進入時における一瞬の速度低下と、その後の一瞬の速度上昇とが連続して起こると、各色の1次転写ニップにおいて各色のトナー像が正常に転写されずに、スジ状の画像乱れを引き起こしていた。このスジ状の画像乱れは、駆動ローラ12の偏心に起因して生ずる色ずれよりも遙かに目立つため、色ずれよりも優先して対策を講ずる必要がある。
そこで、本プリンタのメイン制御部は、必要に応じて、駆動モータ162の制御方式をベルト定速制御からモータ定速制御に切り替えるようになっている。このモータ定速制御は、駆動モータ162のFG信号発電機から発せられるFG信号に基づいて、駆動モータ162のモータ軸を一定の回転速度で回転させるように駆動モータ162の駆動を制御する方式である。また、回転速度検知手段としてのFG信号発電機は、周知のように、駆動モータ162に内蔵され、駆動モータ162のモータ軸が所定の回転角度だけ回転する毎にパルス信号を発生させるものである。FG信号を所定の周波数にするように駆動モータ162を駆動制御することで、駆動モータ162を所定の回転速度で回転させることができる。厚紙がニップに進入する際には、中間転写ベルト8の速度が一瞬だけ大きく低下するが、このとき、ベルトの伸びやギヤ間微小ギャップの狭小化などが起こるため、駆動モータ162の回転速度はそれほど低下しない。このため、モータ定速制御においては、厚紙のニップ進入時に、モータ回転速度の急激な低下は検出されず、厚紙のニップ進入からニップ排出に至るまで、駆動モータ162を目標回転速度で安定して回転させ続ける。すると、厚紙のニップ進入直後にベルト部材の速度を一瞬だけ過剰にしてしまうことがなくなる。よって、必要に応じて駆動方式をベルト定速制御からモータ定速制御に切り替えることで、駆動ローラ12の偏心に起因する色ずれは許容してしまうものの、スジ状の画像乱れを抑えることができる。
メイン制御部250は、ベルト定速制御からモータ定速制御への切り換えを次のようにして行う。即ち、スジ状の画像乱れを引き起こす可能性が高いか否かを、ユーザーからの指示命令に基づいて把握する。具体的には、本プリンタは、2次転写ニップに送り込まれる記録紙の厚みの情報を取得する厚み情報取得手段を備えている。かかる厚み情報取得手段としては、ユーザーによって入力される厚み情報を受け付けるタッチパネル等の操作部を例示することができる。また、記録紙を挟み込みながら搬送する搬送ローラ対の紙挟み込み時の移動量に基づいて記録紙の厚みを検知する厚み検知手段でもよい。記録紙として、厚みの比較的小さいものが用いられる場合には、記録紙のニップ進入時におけるベルト速度変動がそれほど大きくならない。これに対し、記録紙として、厚みの比較的小さいものが用いられる場合には、記録紙のニップ進入時に比較的大きなベルト速度変動が生ずるので、スジ状の画像乱れを引き起こす可能性が高くなる。そこで、メイン制御部250は、厚み情報取得手段によって取得した厚み情報が所定の厚みを超えるものである場合に、駆動制御部200に対して、ベルト定速制御からモータ定速制御への切り換えを指示する信号を出力する。これにより、駆動制御部200は、駆動モータ162を一時的にモータ定速制御で駆動するようになる。
なお、本プリンタにおいては、プリント速度モードとして、画質優先の低速モード、通常モード、速度優先の高速モードの3つをユーザーからの命令に基づいて選択するようになっている。かかる構成においては、たとえ厚紙が用いられた場合であっても、低速モードや通常モードでは、ニップ進入時のベルト速度変動がそれほど大きくならない。そこで、メイン制御部250は、厚み情報取得手段によって取得した厚み情報が所定の厚みを超えるものである場合であっても、低速モードや通常モードの場合には、ベルト定速制御からモータ定速制御への切り換えを指示する信号を駆動制御部200に出力しない。よって、この場合、駆動制御部200は、ベルト定速制御によって駆動モータ162を駆動する。
また、本プリンタにおいては、色モードとして、上述のモノクロモードとカラーモードとをユーザーからの命令に基づいて選択するようになっている。モノクロモードにおいては、色ずれが発生しないので、必ずしもベルト定速制御を実行する必要はない。むしろ、ベルトに対する急激な負荷変動があった場合でもベルトを安定して走行させ得るモータ定速制御を実施した方が、メリットが大きい。そこで、メイン制御部250は、モノクロモードである場合には、記録紙の厚みにかかわらず、低速モードや通常モードの場合には、ベルト定速制御からモータ定速制御への切り換えを指示する信号を駆動制御部200に出力するようになっている。
このように、ニップ進入時に大きなベルト速度変動を発生させる可能性が高い場合やモノクロモードにおいて、制御方式をベルト定速制御からモータ定速制御へ切り換えることで、スジ状の画像乱れの発生を抑えることができる。
しかしながら、制御方式をベルト定速制御からモータ定速制御に切り替えた際に、顕著な色ずれを引き起こすおそれがある。この顕著な色ずれは、次のような原因によって引き起こされるものである。即ち、モータ定速制御においては、駆動モータ162を所定の目標回転速度で回転させる。駆動ローラ12の径が設計通りの値であれば、そのときの駆動ローラ12の平均線速は、目標ベルト速度とほぼ同じ値になる。しかしながら、駆動ローラ12として例え高精度に加工されたものを用いたとしても、そのローラ径は温度変化に伴って変動してしまう。ローラ径が設計値からずれている駆動ローラ12では、駆動モータ162を所定の目標回転速度で回転させた場合におけるローラ表面の平均線速が、目標ベルト速度から僅かにずれてしまう。このずれにより、モータ定速制御では、中間転写ベルト8をベルト定速制御とは異なる平均速度で走行させてしまう。書込位置補正処理については、ベルト定速制御の条件下で実施するが、その実施によって色ずれを抑えることができるのは駆動モータ162をベルト定速制御で駆動したときだけである。ベルト定速制御からモータ定速制御への切り換えによって中間転写ベルト8の平均速度を変化させてしまうと、顕著な色ずれを引き起こしてしまう。平均速度を変化させると、上流側の1次転写ニップから下流側の1次転写ニップに至るまでに要するベルト移動時間を変化させてしまうので、各1次転写ニップでトナー像をずれなく重ね合わせることができなくなるからである。
そこで、メイン制御部250は、ユーザーのもとで初めて電源が投入されたとき(初回運転時)において、モータ定速制御における駆動ローラ12の目標回転速度を駆動ローラ12の径に見合ったものに補正するモータ目標速度補正処理を実施するようになっている。また、転写ユニット15が新品に交換された場合には、それに伴って駆動ローラ12も交換されてその径が変化するので、その場合にもモータ目標速度補正処理を実施するようになっている。
図7は、モータ目標速度補正処理における処理フローを示すフローチャートである。モータ目標速度補正処理は、転写ユニット15が新品に交換された際、あるいは、ユーザーのもとでの初期運転時に実行される(ステップ1でY:以下、ステップをSと記す)。詳しくは、転写ユニット15の交換が検知されるか、あるいは初期運転時においては、その後の初めのプリントジョブに先立って、モータ目標速度補正処理が実行される。
モータ目標速度補正処理においては、まず、ベルト定速制御で駆動モータ162を駆動した後(S2)、上述した書込位置補正処理を実行する(S3)。これにより、ベルト定速制御で駆動モータ162を駆動している条件下における各色のドットの副走査方向におけるずれ量を低減する。次に、駆動モータ162の制御方式をベルト定速制御からモータ定速制御に切り替える(S4)。すると、中間転写ベルト8の平均速度が変化することで、色ずれ量が増加する。このような条件のもとで、色ずれ検知用画像を形成した後(S5)、色ずれ量を測定する。そして、その色ずれ量と、ベルト定速制御のもとで書込位置補正処理を実施した直後における色ずれ量との差を求める(S6)。具体的には、書込位置補正処理において、光書込ユニット7の反射ミラーの傾きを調整して各色の静電潜像の書込位置を補正する場合には、上述したように、各色のドットの位置ずれをほぼゼロにすることができる。よって、この場合、前述の色ずれ量の差は、S6で測定される色ずれ量の値そのものになる。一方、光書込開始タイミングの調整によって各色の静電潜像の書込位置を補正する場合には、上述したように、各色のドットの位置ずれ量を完全にゼロにすることができない場合がある。但し、ずれ量を1/2以下にまでは低減している。タイミング補正後に生じてしまう1/2以下のずれ量を書込位置補正処理で計算して記憶しておく。そして、そのずれ量と、S5で形成した色ずれ検知用画像における色ずれ量との差を、S6の工程で求める。
なお、S5の工程における色ずれ検知用画像としては、書込位置補正処理における色ずれ検知用画像(図5に示したもの)とは異なるものを形成する。具体的には、本プリンタでは、図7のS5の工程で形成する色ずれ検知用画像として、4色のうち、Yトナー像とKトナー像との2色だけからなるものを形成する。このような色ずれ検知用画像を形成する理由は、次の通りである。即ち、ベルト定速制御のもとで書込位置補正処理を実施した直後における色ずれ量と、モータ定速制御のもとで検知される色ずれ量との差は、ベルト定速制御とモータ定速制御とにおけるベルト線速差を示している。但し、ベルト線速差が同じであっても、色ずれ量の差は色によって異なってくる。詳しくは、例えばYトナー像の場合には、それがY用の1次転写ニップで中間転写ベルト8上に転写されてから、最下流側のK用の1次転写ニップへ移動するまでの間に、C用の1次転写ニップとM用の1次転写ニップとを順次通過することになる。これに対し、Cトナー像の場合には、それがC用の1次転写ニップで中間転写ベルト8上に転写されてから、最下流側のK用の1次転写ニップへ移動するまでの間に、M用の1次転写ニップしか経由しない。また、Mトナー像の場合には、それがM用の1次転写ニップで中間転写ベルト8上に転写されてから、最下流側のK用の1次転写ニップへ移動するまでの間に、何れの1次転写ニップも経由しない。1次転写ニップの間隔は等しいので、Yトナー像は、ベルトに転写されてからK用の1次転写ニップに進入するまでの時間が、Mトナー像の3倍になる。このため、中間転写ベルト8の平均速度が変化したことに起因するKトナー像とのずれ量も、Mトナー像の3倍になる。すると、YとKとの間では、MとKとの間に比べて、中間転写ベルト8の平均速度の変化量を3倍の感度で検知することになる。そこで、本プリンタにおいては、中間転写ベルト8の平均速度の変化量を最も感度良く検出することが可能なYとKとの間の色ずれ量だけを見るために、図7のS5において、Yトナー像及びKトナー像という2色だけからなる色ずれ検知用画像を形成するようになっている。
YとKとの2色間について、ベルト定速制御のもとで書込位置補正処理を実施した直後における色ずれ量と、その後に制御をベルト定速制御からモータ定速制御に切り替えたときの色ずれ量との差を算出したら、その差に基づいて、ベルト速度差を算出する。この算出は、前出の差に所定の係数を乗ずることによって行われる。そして、算出したベルト速度差に基づいて、モータ定速制御の際に用いる駆動モータ162の目標回転速度(FG信号の目標周波数)を補正する(S8)。これにより、以降のプリントジョブにおいて、モータ定速制御を実行する場合には、ベルト定速制御と同じ平均速度で中間転写ベルト8を駆動することができるようになるので、スジ状の画像乱れの発生を抑えることができる。
目標回転速度を補正したら、次に、そのときの温度(書込位置補正処理を実施したときに測定しておいた温度でもよい)を温度センサ300によって検知する(S9)。そして、その結果、補正後の目標回転速度に関連付けて、不揮発性RAMに記憶する(S10)。ここまでのフローが、モータ目標速度補正処理のフローである。
図8は、プリントジョブにおける処理フローを示すフローチャートである。ユーザーからのプリント命令を受信すると、まず、モノクロモードであるか否かを判断し、モノクロモードである場合には(S1でY)、駆動モータ162をモータ定速制御で駆動して、S6〜S8のようにプリントジョブを実行する。一方、モノクロモードでない場合には(S1でN)、紙厚が閾値を超え(S3でY)、且つ、速度モードが高速モードである(S4でY)、というニップ進入時のベルト速度変動を大きくする可能性の高い場合だけ、制御方式をベルト定速制御からモータ定速制御に切り替えてプリントジョブを実行する。
先に図7に示したモータ目標速度補正処理は、工場出荷後の初回運転時、あるいは転写ユニットが新品に交換された後(厳密には駆動ローラ12が交換された後)の初回運転時に実行されるものである。このモータ目標速度補正処理が実施されたときから、駆動ローラ12の径が全く変化しないのであれば、その後にモータ目標速度補正処理を行う必要はない。ところが、その後に温度が大きく変化すると、駆動ローラ12の径が変化する。すると、モータ定速制御の際に用いる目標回転速度を図7に示したモータ目標速度補正処理で補正したにもかかわらず、モータ定速制御の条件下における中間転写ベルト8の線速が目標速度からずれてしまう。
そこで、メイン制御部250は、図7に示したモータ目標速度補正処理を実施した後にも、モータ目標速度補正処理を定期的に実施するようになっている。以下、図7に示したモータ目標速度補正処理とは別に、定期的に実施するモータ目標速度補正処理を、特に目標速度定期補正処理という。
図9は、メイン制御部250によって実施される目標速度定期補正処理の処理フローを示すフローチャートである。メイン制御部250は、予め設定されたA枚分のプリントを行う毎に(S1でY)、温度変化量を確認する。この温度変化量は、前回の目標速度定期補正処理(初回の判断においてはモータ目標速度補正処理)を実施したときの温度と、現在の温度との差分である。温度変化量が所定の閾値を超えている(又は閾値以上である)場合には(S2でY)、目標回転速度を補正する必要があると判断して、後述するS3〜S5の処理を実施する。これに対し、温度変化量が閾値を超えていない場合には(S2でN)、目標回転速度を補正する必要はないと判断して、制御フローをS1にループさせる。
目標回転速度を補正する必要がる場合には、まず、現在の温度に対応する目標回転速度を不揮発性RAMに記憶しているか否かを判断する(S3)。記憶している場合には(S3でY)、その値をそのまま用いればよいので、現状の目標回転速度の設定値を、不揮発性RAM内に記憶している現温度に対応する値に補正する(S5)。これに対し、現温度に対応する目標回転速度を不揮発性RAM内に記憶していない場合には(S3でN)、目標速度定期補正処理を実施する(S4)。この目標速度定期補正処理の詳細フローは、図7に示したモータ目標速度補正処理と同じである。
このように、前回の目標速度定期補正処理実施時からの温度変化量が閾値を超えた場合には、そのときの温度に見合った値に目標回転速度を補正することで、目標速度定期補正処理の実施後に温度変化によって駆動ローラ12の径が変動しても、モータ定速制御で中間転写ベルト8を目標速度で駆動することができる。また、温度と駆動ローラ12の径とは相関関係があるため、過去に目標回転速度を調査している温度条件では、目標速度定期補正処理を省略して、目標回転速度を過去に調査済みの値に補正することで、目標速度定期補正処理の実施回数を減らして、装置のタウンタイムの発生を低減することができる。
なお、操作者は、タッチパネル等からなる操作表示部に対する入力操作により、S1の確認タイミングの時間間隔を変更することができる。具体的には、温度変化量を確認するタイミングは、上述したようにA枚プリント毎であるが、操作者による入力操作でそのAの値の変更が指示された場合には、メイン制御部250は、新たに操作者によって入力される値にAを変更する。かかる構成では、温度変化量を確認する時間間隔を操作者の意思によって変更することで、色ずれをそれほど気にしないユーザーでは、目標回転速度の補正よりも、ダウンタイミングの低減を優先してAの値を長くするなどといった具合に、目標速度定期補正処理の実施間隔をユーザーのニーズに見合った時間間隔に設定することができる。
また、操作者は、操作表示部に対する入力操作により、S2で用いる閾値を変更することもできる。このように閾値を変更することによっても、目標速度定期補正処理の実施間隔をユーザーのニーズに見合った時間間隔に設定することができる。
次に、変形例に係るプリンタについて説明する。なお、以下に特筆しない限り、変形例に係るプリンタの構成は、実施形態と同様である。
温度が変化すると、それに伴って駆動ローラ12の径が変化し、この変化に起因してモータ定速制御の条件下における中間転写ベルト8の速度が目標速度からずれてしまうことは既に述べた通りである。目標速度定期補正処理(又は初回のモータ目標速度補正処理)を実施してからの温度変化量と、回転数適正補正量とには、図10に示すように、「Y=aX」という関係が成立する。回転数適正補正量は、中間転写ベルト8を目標速度で駆動するのに適切な目標回転速度(目標FG)の補正量である。また、式中における係数aは、駆動ローラ12の材質に依存するものであり、材質の同じ駆動ローラ同士であれば、同じ値となる。メイン制御部250の不揮発性RAN内には、「Y=aX」という関数で示される回転数適正補正量算出式を記憶させている。
メイン制御部250は、図9のS2において、変化量について閾値を超えていると判断した場合には、図9のS3〜S5を実施する代わりに、次のような処理を実施する。即ち、温度変化量と、上記回転数適正補正量算出式とに基づいて、回転数適正補正量を求める。そいて、目標回転速度を前回補正したときの温度に比べて、現在の温度が上昇している場合には、目標回転速度を回転数適正補正量の減算によって補正する。これに対し、現在の温度が低下している場合には、目標回転速度を回転数適正補正量の加算によって補正する。
これまで、ベルト定速制御の条件のもとで書込位置補正処理を実施する構成のプリンタについて説明したが、モータ定速制御の条件のもとで書込位置補正処理を実施するようにしてもよい。この場合、転写ユニットの交換を検知した場合には、次のような処理を実施させるようにする。即ち、まず、モータ定速制御の条件のもとで書込位置補正処理を実施した後、ベルト定速制御の条件の下で位置ずれ検知用画像を形成して、モータ定速制御のときとのずれ量の差を求める。そして、その結果に基づいて、ベルト定速制御のときと同じ平均速度でベルトを走行させ得る値に、ベルト定速制御における目標ベルト速度を補正する。
以上、実施形態や変形例に係るプリンタにおいては、駆動回転体たる駆動ローラ12の周辺の温度を環境変動検知手段たる温度センサ300に検知させるようにしているので、駆動ローラ12の温度変化に伴う径変化を正確に捉えることができる。
また、実施形態に係るプリンタにおいては、温度変動量について閾値を超えているか否か(閾値以上であるか否かでもよい)を判定する時間間隔を反映するプリント枚数Aを、ユーザーからの入力情報に基づいて決定する処理を実施するように、メイン制御部250を構成している。かかる構成では、既に説明したように、目標速度定期補正処理の実施間隔をユーザーのニーズに見合った時間間隔に設定することができる。
また、実施形態に係るプリンタにおいては、環境検知手段として温度検知手段たる温度センサ300を用いている。そして、補正後の目標回転速度(目標ベルト速度でもよい)を、書込位置補正処理を含むモータ目標速度補正処理や目標速度定期補正処理の実施時の温度に関連付けてデータ記憶手段たる不揮発性RAMに記憶させる処理を実施するように、メイン制御部250を構成している。かかる構成では、過去の目標回転速度の補正値について、どのような温度に適したものなのかを知ることができる。
また、実施形態に係るプリンタにおいては、閾値を超える(閾値以上でもよい)変化量の温度変化が発生したときの温度に対応する目標回転速度(目標ベルト速度でもよい)が不揮発性RAMに記憶されている場合には(図9のS3でY)、組合せとしても目標速度定期補正処理を実施する代わりに、目標回転速度(目標ベルト速度でもよい)を、不揮発性RAMに記憶されている、温度に対応する値に補正する処理を実施するように、メイン制御部250を構成している。かかる構成では、過去に目標回転速度の補正を行ったことのある温度条件では、目標速度定期補正処理を省略しつつ目標回転速度をそのときの温度に見合った値に適切に補正して、装置のダウンタイムを低減することができる。
また、実施形態に係るプリンタにおいては、上記閾値を、ユーザーからの入力情報に基づいて変更する処理を実施するように、メイン制御部250を構成している。かかる構成においても、目標速度定期補正処理の実施間隔をユーザーのニーズに見合った時間間隔に設定することができる。
また、変形例に係るプリンタにおいては、工場出荷後の初回運転時、あるいは、駆動ローラ12が新品のものに交換された後の初回運転時にモータ目標速度補正処理を実施した後には、上記閾値を超える(又は閾値以上でもよい)変化量の温度変化が発生する毎に、目標速度定期補正処理を実施する代わりに、そのときの温度と、温度変化量と、所定のアルゴリズムである「Y=aX」とに基づいて、目標回転速度(目標ベルト速度でもよい)の設定値を補正する処理を実施するように、メイン制御部250を構成している。かかる構成では、目標速度定期補正処理を実施することなく、目標回転速度を適切に補正することができる。
また、実施形態は変形例に係るプリンタにおいては、中間転写ベルト8の存在を光学的に検知する光学センサなどの検知結果に基づいてベルトユニットたる転写ユニット15の交換を検知する交換検知手段を設けている。そして、工場出荷後の初めのプリントジョブを実施するのに先立ってモータ目標速度補正処理を実施することに加えて、交換検知手段によって転写ユニット15の交換が検知された場合にも、検知後の初めのプリントジョブを実施するのに先立ってモータ目標速度補正処理を実施するように、メイン制御部250を構成している。かかる構成では、転写ユニット15の交換に伴って駆動ローラ12の径を変化させてしまった後でも、モータ定速制御における駆動モータ162をその径に応じた目標回転速度で回転させることができる。
また、モータ目標速度補正処理では、色ずれ検知用画像として、各色の感光体のうち、互いに最も離れた距離に配設されたY感光体とK感光体とによるYトナー像及びKトナー像だけを含むものを形成するように、メイン制御部250を構成している。かかる構成では、中間転写ベルト8の平均速度の変化を最も感度良く検出することができるY、Kの2色だけを形成することで、速度変化を最も感度良く検出するとともに、余計な色のトナー像を形成することによる無駄なトナー消費の発生を回避することができる。
また、ユーザーからのプリント指示命令がどのような厚みの記録紙に対する画像形成を指示するものであるのか、即ち、記録紙の厚み情報に応じて、ベルト定速制御及びモータ定速制御のうちの一方を選択させるように、メイン制御部250を構成している。かかる構成では、比較的厚みの大きな記録紙が用いられるという、ニップ進入時に比較的大きなベルト速度変動をきたす可能性が高い場合に、制御方式をベルト定速制御からモータ定速制御に切り替えることができる。
また、ユーザーからのプリント指示命令がカラー画像の形成を指示するものであるのか、あるいは単色画像の形成を指示するものであるのか、即ち、モノクロモードであるのか否か、に応じて、ベルト定速制御及びモータ定速制御のうちの一方を選択させるように、メイン制御部250を構成している。かかる構成では、色ずれを発生させることのないモノクロモードでは、ベルトに対する急激な負荷変動に強いモータ定速処理を実行して、負荷変動による画質劣化を有効に抑えることができる。
また、ユーザーからのプリント指示命令がどのような画像形成速度の条件で画像の形成を指示するものであるのか、即ち、速度モードに応じて、ベルト定速制御及びモータ定速制御のうちの一方を選択させるように、メイン制御部250を構成している。かかる構成では、高速モードという、ニップ進入時に比較的大きなベルト速度変動をきたす可能性が高い場合に、制御方式をベルト定速制御からモータ定速制御に切り替えることができる。