JP4779629B2 - エレベーターおよびそれに用いる非常止め装置 - Google Patents

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Description

本発明はエレベーターに係り、特にエレベーターの速度が所定速度以上になったときに動作させるエレベーター用非常止め装置に関する。
エレベーターを駆動するロープの切断等により乗りかごが落下した際に、適切な減速度で乗りかごを停止させる安全装置である非常止め装置の例が、特許文献1に記載されている。この公報に記載の非常止め装置は、1000℃を超える耐熱性および高速・高応答下でも安定した制動特性を得るために、ブレーキ本体と、この本体の制動面側にその面から突出するように埋設された突出部が円柱状もしくは角を丸めた多角柱状のブレーキ片とを有している。そしてブレーキ片は、セラミック母材に他のセラミック粒子を分散させている。
セラミックのブレーキ片を用いた非常止め装置の他の例が、特許文献2に記載されている。この公報に記載の非常止め装置では、ブレーキ片の片当たりを防止するために、ブレーキ本体の制動面側に、その制動面から突出するようにセラミック製ブレーキ片を埋設し、この埋設部分に軟質金属を配置するとともに、軟質金属の変形を許す空隙を形成している。
特開平10−182031号公報 特開2000−191252号公報
上記特許文献1に記載のセラミックス製のブレーキ片を備えたエレベーター用非常止め装置では、制動面側に複数のセラミックス製のブレーキ片を配置しているので、各ブレーキ片の摺動面を平面に保って片当たりを防止させる必要があり、組み立ての工数が増す。また、万一片当たりが生じると、一部のブレーキ片のみが制動に寄与することになり、制動性能が低下する。
上記特許文献2に記載の非常止め装置では、軟い金属部材を介してセラミックス片を母材の金属に埋め込み、複数のセラミックス片をレールに均一に当てているので片当たりは防止される。しかし、非常止めが動作するとセラミックス片には1kN以上のせん断力が加わり、たわみが発生する。その結果、レールとセラミックス片との接触が片当たりになる恐れがある。片当たりが発生すると、同一のセラミックス片の摺動面において、摺動する部位としない部位が生じ、摺動面に摺動熱による不均一な熱分布が発生する。後述するように、この片当たりに起因するセラミックス片の摺動面の不均一な熱分布は、セラミックス片の破損を引き起こすことを、本発明者らは実験的研究により初めて解明した。
本発明はこのような知見の下になされたものであり、セラミックス片を有するエレベーター用非常止め装置の制動子において、熱応力によるセラミックスの摺動面破損を防止することを目的とする。さらにセラミックス片の破損を防止することにより、エレベーター用非常止め装置が緊急時に確実に乗りかごを停止させることを目的とする。
上記の目的を達成するために、エレベーターの昇降路壁に設置されたガイドレールを挟持可能であって乗りかごの下方に配置した制動子と、乗りかごが所定の速度以上になったときにこの制動子をガイドレールに押し付ける押し付け手段とを備えるエレベーター用非常止め装置において、制動子には複数の有底または無底の凹部が形成されており、この凹部にはセラミックス製の摩擦材が嵌合しており、この摩擦材を制動子に取り付けた状態でガイドレールに対向する側の端面下部を平板に、上部をガイドレールから離れるような傾斜面または曲面とした
そして、摩擦材は背面側が傾斜面に形成されており、この傾斜面に実質的に同じ傾斜の支持部材を当接させてもよく、摩擦材を制動子に固定する固定手段を設けてもよい。また、摩擦材の傾斜面または曲面は、上端から摩擦材の上下方向長さの少なくとも6分の1の位置まであることが望ましく、摩擦材を、制動子の表面から1〜3mm突出させてもよい。
さらにエレベーターでは、上記いずれかの非常止め装置を乗りかごの下部に取り付けるのが望ましい。
本発明によれば、エレベーター用非常止め装置が有するセラミックス片の摺動面において、熱負荷による引っ張り応力の発生を低減したので、セラミックス片の破損が防止される。これにより、非常止め装置が有効に作用して、緊急時に確実に乗りかごを停止させることができる。
以下、本発明に係るエレベーターおよびそれに用いる非常止め装置の一実施例を、図面を用いて説明する。図1に、エレベーターが備える乗りかご1と、乗りかごの下部に取り付けた非常止め装置を斜視図で示す。乗客を乗せる乗りかご1は、ロープ3によって建物最上階にある図示しない駆動系に連結されている。この図1では、簡略化のためにドア開閉機と外枠の詳細の図示を省略している。昇降路60の両側に、乗りかご1の昇降時に乗りかご1をガイドする一対のガイドレール2,2が設置されている。
乗りかご1の底部には、断面T字型に形成された各ガイドレール2,2のT字の縦棒部を挟むように、一対の非常止め装置4,4が設置されている。一対の非常止め装置4,4は、図示しない接続機構により連結されている。非常止め装置4の詳細を、図2,図3を用いて説明する。図2に、非常止め装置4の縦断面図を、図3に非常止め装置4の斜視図を示す。
非常止め装置4は、ガイドレール2を挟んで左右対称形状に構成されている。非常止め装置4は、断面台形状に形成された一対の制動子10,10を有している。制動子10は上端側が短辺で下端が長辺である。一対の制動子10,10は、ガイドレール3を挟持可能にガイドレール2と僅かな隙間を持ってガイドレール3に略平行に配置されている。制動子10の背面は上窄まりの平滑な傾斜面になっている。
制動子10の傾斜面には、この制動子10と摺動する案内板5が配置されている。案内板5は、ガイド部材に保持されている。案内板5の図示しない凸部は、制動子10の凹部10aに嵌合しており、制動子10の左右方向の動きを規制しながら、制動子10を所定位置に案内する。ガイド部材6は内側が制動子10と同じ傾斜面であり、外側が垂直面となっている。ガイド部材6の外周部は、ガイドレール2に対向する側が開放されU字状に形成された弾性体8に囲まれている。
制動子10および案内板5,ガイド部材6,弾性体8は、筐体9内に収容されている。筐体9は、非常止め装置4を乗りかご11の底板に取り付けるための上板9bと、上板
9bの下面外周部に固定した側板9aと、側板9aの下端部に固定した受け板9cと、受け板9cを下方から支持する支持板9dと、支持板9dの下端部が固定されたベース板
9eとを有している。上板9bの中間部であってガイドレール2が通過する部分およびベース板9eの中間部であってガイドレールが通過する部分には、切り欠きが形成されている。
側板9aの複数箇所には、U字状の弾性体8をガイド部材6に押圧するため、ばねを介してねじ42が取り付けられている。制動子10の一端には、非常止め装置4を起動させる図示しない駆動手段が有する引き上げ棒50が接続されている。なお、ガイド部材6は筐体9に固定されている。
図3に、非常止め装置4が動作した状態を示す。制動子10の傾斜面には複数個の案内ローラ11が押し当てられている。ローラ11は、ガイド部材6に回転可能に保持されており、制動子50が上方に円滑に移動できるように作用する。上述したように、ガイド部材6は制動子10の傾斜面と平行な傾斜面を有しており、ガイド部材6の背面側が垂直面となっているので、ガイド部材6の垂直面を弾性体8が挟み込む。その結果、引き上げ棒50が引き上げられ、非常止め装置4が動作する。非常止め装置4が動作すると、凹部
10aを有する制動子10は、案内板5の凸部により左右方向の動きを規制され、ガイド部材6に対し引き上げられ、ガイド部材6を押し広げる。ガイド部材6が押し広げられた反力が制動子10に作用し、制動子10は互いの距離が狭まるように移動する。そして、ガイドレール2を挟持する。
図4ないし図14を用いて、上記実施例に示したエレベーターに用いる制動子10の詳細を説明する。図4は、図2に示した右側の制動子10の斜視図である。制動子10は、乗りかご1の昇降方向に4個、制動子10の幅方向に2個の摩擦材12を有している。制動子10を構成する4角柱状の支持体10aは鋳鉄製であり、摩擦材12が嵌合する円柱状の孔が形成されている。
支持体10aの孔に、図5に斜視図で示す円柱状に形成された摩擦材12が例えば焼き嵌めで嵌合されている。摩擦材12は、窒化珪素,炭化珪素,アルミナまたはサイアロンなどのセラミックス(以下、セラミックスピンと称す)製であり、ガイドレール2に対向する端部は、支持体10aから突出ている。この突出し量は、本実施例では1〜3mmである。
セラミックスピン12のガイドレール2と摺動する摺動端面14は、支持体10aに取り付けた状態で、ガイドレール2に平行な平面である。ただし、支持体10aに取り付けた状態で上部になる部分(非常止め装置4が動作中に摺動方向の上方側になる部分)を、切り欠いた形状に形成している。さらに、円周の縁部(エッジ)を1mm以下の曲率にするか、または面取りしている。このように縁部を形成すれば、非常止め装置4が動作したときに、セラミックスピン12がガイドレール2に切削作用を及ぼすことができる。
上記構成の非常止め装置4の動作を、以下に説明する。乗りかご1の下降速度が、定格速度を超えて設定された異常検出速度に達すると、最上階に設置した速度感知装置が作動する。速度感知装置は、非常止め装置4に連結している図示しないガバナロープを把持する。ガバナロープは制動子10に連結しており、乗りかご1に取り付けた非常止め装置4に対し、制動子10を相対的に引き上げる。制動子10は、乗りかご1の両側の昇降路壁に設置したガイドレール2を挾持するとともに、制動子10を囲むように配置されたU字型の弾性体8を押し広げて弾性変形させ、ガイドレール2と制動子10の間に摩擦力を発生させる。その結果、乗りかご1は停止する。
図6に、制動子10がガイドレール2沿いに下降する様子を模式的に示す。セラミックスピン12がガイドレール2に当接しながら矢印10x方向に移動する。このとき、各セラミックスピン12のエッジ12aは、ガイドレール2の摺動面を切削するように移動する。その結果、ガイドレール2には切削抵抗が生じ、この切削抵抗が摩擦力として作用する。摩擦力によりガイドレール2およびセラミックスピン12が温度上昇し、摺動面では軟質材であるガイドレール2が溶けて凝着する。この凝着により摩擦力が増大し、制動力が得られる。
このようにガイドレール2に切削抵抗を生じさせるためには、セラミックスピン12のエッジを鋭利にしたほうが良い。しかしながらセラミックスピン12に鋭利な角部を形成すると、ガイドレール2にセラミックスピン12が当接したときに応力集中によりセラミックスピン12に割れや欠けが生じやすくなるので、応力集中を緩和する面取り処理を施す。摩擦材にセラミックスピン12を用いたので、乗りかご1の積載量が増大しても、摺動時の摺動熱による摩擦材12の軟化や焼きつきが防止される。その結果、所定の制動力が得られる。
非常止め装置4が作動したときの、セラミックスピン12の摺動部端面における応力状態を、図7に模式的に示す。図6に示すように、セラミックスピン12がガイドレール2に当接するときは、セラミックスピン12の先端にだけ摩擦力が作用して、セラミックスピン12が上方にたわむ。その結果、セラミックスピン12の端面には、ガイドレール2と接触して摺動する部分17と、接触しない部分16とが形成される。
セラミックスピン12が円柱形状の場合について、説明する。図7(a)は、セラミックスピン12がガイドレール2と摺動して高温になったときの状態であり、同図(b)は乗りかご1の速度が減少してセラミックスピン12の移動速度が低下し、冷却されて低温になった状態である。高温状態は、非常止め装置4が動作して制動子10がガイドレールを挟持し始めたときであって、乗りかご1の速度は高速である。
セラミックスピン12の端面では、摺動部17と非摺動部16が形成される。摺動部
17では、1000℃以上の高温となるので、セラミックスピン12は、摺動部で外側に向かって膨張し、図中破線18で示したようになる。一方、乗りかご1の速度が低速になると、膨張したセラミックスピン12が、(b)図の破線19で示したように内側に向かって収縮する。
このようにセラミックスピン12が変形すると、セラミックスピン12の摺動部17と非摺動部16の境界7では、摺動面内方向の引張り力が発生する。この引張り力がセラミックスピン12の素材であるセラミックスの材料強度以上になると、セラミックスピン
12では境界7で破損する。つまり、摺動部17と非摺動部16間の熱分布の勾配が大きくなればなるほど、セラミックスピン12は破損しやすくなる。この熱勾配は、大きな制動力またはばね押付け力を必要とする高速で大容量なエレベーターほど大きくなりやすい。その場合、熱応力によるセラミックスピン12の破損が発生しやすくなる。
このように高速で大容量のエレベーターで特に顕著になるセラミックスピン12の熱勾配の発生を抑制するために、セラミックスピン12の先端面に生じる摺動部17と非摺動部16について非定常熱解析した。この非定常熱解析から、セラミックスピン12の先端における温度分布を求め、この温度分布を基に熱応力を解析した。
図8に、セラミックスピン12の先端の摺動部17と非摺動部16の境界近傍での摺動面内応力の時間変化を示す。セラミックスピン12がガイドレール2と摺動し始めたときには、セラミックスの膨張に伴う圧縮応力がセラミックスピン12の境界部7に作用する。摺動が進むにつれて、セラミックスの収縮に伴う引張り応力が境界部7に作用している。
一般的に、セラミックスの材料強度は、引張り強度のほうが圧縮強度より低い。また、セラミックスの破損は、引張り強度を超えることで起きる。そこで、図5に示したセラミックスピン12のように、ピン12がたわんでガイドレール2と摺動しない部分を事前に切り欠いた形状として、摺動面内の熱応力による破損を防止する。
図9に、セラミックスピン12の切欠き形状諸元を示す。切欠きピンの直径をD、切欠き長さをL、切欠き角度をψとする。直径DがD=8〜16mmのセラミックスピン16を製作して、ピンオンディスク試験で摺動実験した。ディスクには、ガイドレール2の材料であるSS400材を用いた。ディスク面にセラミックスピン12を所定の押荷重にて押し付ける。それとともに、ディスクの回転を減速させて停止するまでの摩擦力を測定して摩擦係数を調べた。さらに、セラミックスピン12の摺動面破損の有無を、目視で確認した。
面圧20MPa〜100Mpa,摺動開始速度15m/sec で摺動実験した結果、40Mpa以下ではセラミックスピン12に破損が見られなかった。面圧を40MPa以上に高くすると破損確率は徐々に増え、100Mpaではほぼ全回数の試験でセラミックスピン12は破損した。そして、破損したピン12の破損部位置は、摺動面の上方端からピン直径Dの1/5〜2/3の範囲に位置していた。
このピンオンディスク実験の結果から、セラミックスピン12の切り欠き部長さLは、摺動面の上方端から少なくともピン直径Dの1/5以上の長さが必要であることが知られた。また、セラミックスピン12により所定の摩擦力を発生させるためには、ガイドレール2を切削するエッジを極力残す必要がある。そこで、最大切欠き位置をピン直径Dの半分以下にする。上述した実験によれば、切欠き部が形成されていないセラミックスピンでもピン直径Dの半分まで切り欠いた形状に形成したセラミックスピンでも、摩擦係数に大きな差は無く、必要な摩擦力を確保できた。
ピンオンディスク実験では、切欠き角度ψも変化させて実験した。切欠き角度ψは、ψ=15゜〜45゜の範囲で変化させた。この範囲では、セラミックスピン12に破損が生じなかった。この理由は、セラミックスピンの端面から摺動しない部分が取り去られたか、あるいは摺動しない部分があっても非一様な温度分布により蓄積された応力ひずみが、面外に逃げやすい緩斜面形状になっているからである。この実験結果からは、切欠き角度ψが最大で45゜までであれば、蓄積された応力ひずみが面外に逃げやすくなることが知られる。
実際のエレベーターおける制動負荷について、以下に説明する。積載量5ton の乗りかご1が昇降するエレベーターの場合である。乗りかご1,吊りロープ3および付帯機器を含めた総落下質量は、約26ton である。エレベーターの異常時の落下開始速度が800m/min であれば、落下後20m以内で停止させるためには、制動子10とガイドレール2間の摩擦係数を0.25〜0.5として、制動子10の押付け力は最大で400kN以上必要である。ここで、制動子10とガイドレール2間の摩擦係数は、ガイドレール2を鋼材、制動子10の摩擦材12をセラミックス材としたときの標準的な値である。
昇降方向長さ200mm,幅方向長さ40mmの摺動面を有する制動子10に、複数本のセラミックスピン12を保持したときの面圧は、最低でも50Mpa以上である。したがって、このエレベーターにセラミックスピン12を有する非常止め装置4を搭載するときには、セラミックスピン12の摺動面の熱応力による破損を考慮する必要がある。
図10に、セラミックピン12の種々の変形例を示す。これらのセラミックピンは上述した熱応力による破損を防止する形状となっている。同図(a)に、断面が切頭円形状をしたピン21を示す。摺動面を、略半月形状にしたので非摺動部がほとんど無くなっている。半月部のエッジで、ガイドレール2を切削するとともに、摺動面が凝着摩耗して制動力が発生する。制動子10の支持体10aの孔形状もこのピン21形状に合わせれば、セラミックスピンの向きを揃えることができるとともに、軸回りに回転するのを防止できる。
同図(b)に、円柱状に形成したピン22の周縁部を、偏心した円で面取りしたエッジ偏面取り形状ピン22を示す。摺動面側のエッジ部22aに少なくとも1mm以上の曲率を設けて熱応力によるひずみを面外に逃がしやすくしている。ただし、エッジ全体に曲率を設けると、エッジによるガイドレール2の切削抵抗が小さくなり制動力が低下する。そこで、非常止め装置4が動作中に摺動方向上方側になる摺動しない部分にだけ、曲率を設ける。
図10(c)に、円柱を斜めの平面でカットした形のくさび形状ピン20を示す。先端部20aは斜めの楕円形状である。摺動部が先端だけとなり、摺動熱による温度勾配が小さく破損しにくい。先端部20aでガイドレール2を切削して制動力を得るが、ガイドレールを凝着摩耗させる作用は少ないので摩擦係数が低下する。図10(d)に、先端を丸くした先端曲率形状ピン23を示す。先端を大曲率23aに形成したので、ひずみを面外に逃がしやすい。ただし、ガイドレール2を切削する力は殆ど作用しないので、摩擦係数が低下する。これらくさび形状ピン20や先端曲率形状ピン23では、摩擦係数が低下しやすいので、押付力を増加させて制動力を確保する。
セラミックスピンの他の実施例を、図11に斜視図で示す。本実施例では、セラミックスピンは円柱形状ではなく、多角形状の多角ピン15である。ガイドレール2と摺動する端面は、ほぼ垂直な面15cとその垂直な面15cの上方に形成した傾斜面15aを有する。傾斜面15aの代わりにある程度の曲率を有する形状であってもよい。側面の角部は、面取り15aを施すのが望ましい。
上記実施例では、セラミックスピン12の切削効果をより高めるために、セラミックスピン12を支持体10aから僅かに突出させている。この突出量を、以下の理由から1〜3mmに設定する。摩擦材12の突出量は、摩擦材12の大きさにもよるが、摩擦材12に作用する摩擦力により支持体10aとの嵌合部で破断しないように設定する。そして、摩擦材12の突出量が短すぎると、制動子10とガイドレール2間の摩擦力で発生したガイドレール2の切削粉が、制動子10とガイドレール2間に蓄積する。
切削粉が蓄積すると、ガイドレール2と支持体10aとの摺動熱が切削粉に貯まり、支持体10aを熱変形させてセラミックスピン12がガイドレール2に片当たりして、所定の摩擦力を確保できなくなる恐れがある。さらに、非常止め装置4が停止すると、セラミックスピン12の下方に蓄積された摺動熱が切削粉の塊を介して急速に奪われる。その結果、セラミックスピン12が収縮して引張応力が発生し、セラミックスピン12に割れが発生する恐れがある。
摩擦材であるセラミックスピン12は、高速でガイドレール2と摺動するので、支持体10aに嵌合した状態では、セラミックスピン12の軸回りに回転しやすい。そこで、この回転を防止する周り止めを設けることが望ましい。摩擦材12を支持体10aに焼き嵌めで嵌合したときには、摩擦材12および支持体10aの仕上げ状態により、支持体10aが摩擦材12を締め付ける締め代が少ないかあるいは全く締め代がないこともある。この場合、非常止め装置4が動作してセラミックスピン12の摺動面内に不均一な摩擦力が発生すると、セラミックスピン12はその軸回りに回転する可能性が生じる。
このような不具合を回避するために、セラミックスピン12に回り止めを施す。図12に、セラミックスピン12の回転を防止する構造を、断面図で示す。支持体10aは、ガイドレール2に対向する面側に配置される上板24と、この上板24の背面側に配置される底板26とを有している。上板24側からねじ28で、底板26を締め付ける。上板
24に形成したねじ28締結部用孔は、ねじ28の頭が突き出ないようにざぐられている。
底板26が上板24と対向する面には、セラミックスピン29の回転を抑える2本の円柱状のピン25,27が固定されている。このピン25,27に嵌合するようにセラミックスピン29の底面には、凹穴29a,29bが形成されている。ピン25,27でセラミックスピン29は位置決めされているので、焼き嵌め時の締め代が殆どなくても非常止め装置4の動作中に生じた不均一な摩擦力により、セラミックスピン29が回転するのを防止できる。また、図示しないが、ピン25,27および凹穴29a,29bの形状を、円柱以外のたとえば4角柱にすればピン25,27および凹穴29a,29bを1箇設けるだけでセラミックスピン29を周り止めできる。
セラミックスピンの回転を防止する他の実施例を、図13に断面図で示す。図12の場合よりも、セラミックスピンに作用する回転力が大きい場合に有効である。図12に示した実施例において、摩擦力が大きくなるとピン25,27に加わる力も大きくなり、ピン25,27が破損する恐れが生じる。
そこで、底板26の上板24側面に台座33を取り付ける。台座33は、ねじ32で底板26側から底板26に締結される。台座33がセラミックスピンと当接する面を傾斜面33aにし、この傾斜面33aの向きを底板26に固定した位置決めピン30,31で定める。セラミックスピン29の摺動面と反対端面である底面29aは、台座33の傾斜面と同じ傾斜に形成されており、セラミックスピン29は台座傾斜面33aにぴったりと当接する。
セラミックスピン29の先端面29bに作用する摩擦力が大きくても、台座33の傾斜面33aで回転力を支持するので、セラミックスピン29は回転しない。また台座33が支持する回転力をねじ32の締結力が支持するので位置決めピン30,31の破損を防止できる。さらに、傾斜面33aに低摩擦部材を処理すれば、台座33が支持する回転力をさらに小さくでき、台座33がより破損しにくくなる。
図14に、セラミックスピンのさらに他の実施例を斜視図で示す。セラミックスピン
36は断面切頭円形状であり、支持体10aに保持された状態で左右一方の側面が平面
36aになっている。図示はしないが支持体10aには、このセラミックスピン36が嵌合する断面切頭円形状の孔が形成されている。切り取った側面の角部36b,36cに面取りを施して、回転力が作用した際の応力を緩和することが望ましい。
平面36aの周方向位置は、制動子10が落下する方向37と同じ方向は避ける。落下方向は、非常止め装置4が動作したときにガイドレール2を切削する側であるから、最も大きな力が作用する。この方向に平面36aを位置させると、角部36dの鋭角な形状が破損する恐れがある。
これとは逆に、平面36aが落下方向の逆方向である上方に位置しておれば、図11
(a)に示した熱応力が緩和される形状であり、破損防止と周り止めの双方を達成できる。また、平面を複数形成してもよいが、数が増えるとガードレール2を切削する端面の長さが短くなり、所定の制動力が得られなくなる恐れがある。
本発明の上記各実施例によれば、制動子10の摺動側に複数のセラミックスピン摩擦材12を取り付け、ガイドレール2と摺動するセラミックスピン12の摺動端面の形状を非一様な面に形成したので、応力緩和が図られセラミックスピンの摺動熱による破損を防止できる。また、応力緩和した形状のピンでは、各ピンの向きを同方向に揃えるのが容易になる。また、焼き嵌めの締め代がなくても、セラミックスピンの軸回りの回転を防止できる。
本発明に係るエレベーター装置の一実施例の斜視図である。 図1に示したエレベーター装置に用いる非常止め装置の正面図である。 図2に示した非常止め装置の部分斜視図である。 図2に示した非常止め装置が有する制動子の斜視図である。 図4に示した制動子が有する摩擦材の斜視図である。 非常止め装置の動作を説明する図である。 図5に示した摩擦材の摺動状態を説明する図で、(a)は高温時を、(b)は低温時の状態を示す。 摩擦材の摺動面の応力変化の一例を表すグラフである。 摩擦材の他の実施例の斜視図である。 摩擦材の種々の変形例の斜視図である。 摩擦材のさらに他の実施例の斜視図である。 制動子の他の実施例の部分断面図である。 制動子のさらに他の実施例の部分断面図である。 摩擦材のさらに他の実施例の斜視図である。
符号の説明
1…乗りかご、2…ガイドレール、4…非常止め装置、5…案内板、6…ガイド部材、8…弾性体、10…制動子、12,20〜23…摩擦材(セラミックスピン)。

Claims (6)

  1. エレベーターの昇降路壁に設置されたガイドレールを挟持可能であって乗りかごの下方に配置した制動子と、乗りかごが所定の速度以上になったときにこの制動子をガイドレールに押し付ける押し付け手段とを備えるエレベーター用非常止め装置において、前記制動子には複数の有底または無底の凹部が形成されており、この凹部にはセラミックス製の摩擦材が嵌合しており、この摩擦材を制動子に取り付けた状態でガイドレールに対向する側の端面下部を平板に、上部をガイドレールから離れるような傾斜面または曲面としたことを特徴とするエレベーター用非常止め装置。
  2. 前記摩擦材は背面側が傾斜面に形成されており、この傾斜面に実質的に同じ傾斜の支持部材を当接させたことを特徴とする請求項に記載のエレベーター用非常止め装置。
  3. 前記摩擦材を前記制動子に固定する固定手段を設けたことを特徴とする請求項に記載のエレベーター用非常止め装置。
  4. 前記摩擦材の傾斜面または曲面は、上端から摩擦材の上下方向長さの少なくとも6分の1の位置までであることを特徴とする請求項記載のエレベーター用非常止め装置。
  5. 前記摩擦材を、前記制動子の表面から1〜3mm突出させたことを特徴とする請求項に記載のエレベーター用非常止め装置。
  6. 請求項に記載の非常止め装置を乗りかごの下部に取り付けたことを特徴とするエレベーター。
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