JP2000302351A - エレベータの非常停止装置 - Google Patents

エレベータの非常停止装置

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JP2000302351A
JP2000302351A JP11111345A JP11134599A JP2000302351A JP 2000302351 A JP2000302351 A JP 2000302351A JP 11111345 A JP11111345 A JP 11111345A JP 11134599 A JP11134599 A JP 11134599A JP 2000302351 A JP2000302351 A JP 2000302351A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 エレベータの非常停止装置におけるばね部材
の形成を容易にでき、所定の制動特性を容易に得ること
ができ、ばね力を容易に調節できるようにすること。 【解決手段】 かごの下降速度の超過でリフトロッド1
0とともに上昇する一対のくさび17の各背面にローラ
19を介して一対の案内板14を配設し、その案内板を
互いに対向方向に付勢するU字形のばね部材が設けられ
ているものにおいて、上記U字形のばね部材を互いに積
層された複数枚のU字形の平板ばね30によって構成し
た。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エレベータの非常
停止装置に関する。
【0002】
【従来の技術】エレベータでは、安全装置として、建築
基準法施行令において、下降するかごの速度が規定され
た値を超えると、かごの下降を自動的に制止する装置を
設けなければならないことが規定されている。
【0003】図9は、非常停止装置が設けられた一般的
なエレベータの概略構成を示す図であり、エレベータの
かご1は主ロープ2で吊られ巻上機3によって昇降路内
を昇降するとともに、その昇降路に設けられたガイドレ
ール4によってその昇降が案内される。上記かご1また
は主ロープ2の他端に設けられた均合いおもり5には非
常停止装置6が装着されており(図9にはかごにだけ非
常停止装置が装着されている例を示す)、主ロープ2が
切断したり巻上機3の回転速度が異常になりエレベータ
のかごの速度が定格速度以上になった場合に、ガイドレ
ール4を把み、かご1を機械的に停止させるように構成
されている。すなわち、エレベータの過速度を機械室に
設けられた調速機7が検知すると、この調速機7に組み
込まれているロープつかみ部が作動し、調速機7に巻装
されているガバナロープ8が把持される。このようにし
てガバナロープ8が把持されると、かご1に装着されて
いるリンク機構9を介して、左右のリフトロッド10が
上動し、これにより非常停止装置6が作動される。
【0004】ところで、この非常停止装置には、低速で
小形のかごに用いられる早利き非常停止装置と、高速の
かご用に用いられる次第利き非常停止装置とがある。
【0005】図10は、従来の次第利き非常停止装置の
一例を示す正面図、図11は図10のB−B断面図であ
る。
【0006】図10および図11において、この次第利
き非常停止装置は、かご1の下梁に上面が固定され図示
しない平面図ではほぼ正方形の上部端板11と、この上
部端板11とほぼ同形で板厚が僅かに薄い下部端板12
と、これらの上部端板11と下部端板12の両側の間に
縦設されて、これらの上部端板11と下部端板12に上
下が溶接される山形鋼製の図示しない一対の柱とで骨格
が構成されている。
【0007】これらの上部端板11と下部端板12の前
面中央部には、鎖線で示すガイドレール4の頭部が遊嵌
するU字状の溝11a,12aが形成されている。
【0008】上部端板11の前面両側には、段部11b
が形成され左右方向に延びる切欠部11cが形成されて
いる。一方下部端板12の前部両側の上面には、略凸字
状のガイド受け13が固定されている。このガイド受け
13の外側上面には、水平な段部13aが前述した上部
端板11の段部11bと対称的に形成されている。
【0009】これらの段部11b,13aには、外側中
間部に切欠き14aが形成され略コ字状に形成された一
対の案内板14の外側上下端に突設された係止部14
b,14cが外側から挿入され、これらの案内板14の
対向面は、下側の間隔が広くなって傾斜している。
【0010】左右の案内板14の外側に設けられた切欠
き14aには、図11に示すようにU字状に形成された
厚板(約10mm)製のばね部材15の両先端部が遊嵌
されている。
【0011】このばね部材15の両端には、一対の押圧
具16が内側からあらかじめ挿入され、この押圧具16
頭部の半球部分の大部分は、案内板14の切欠き14a
の上下に形成された半球状の凹部に嵌合し、ばね部材1
5の復帰力によって凹部に押圧され、ばね部材15はそ
の姿勢を維持している。
【0012】符号10は、前述したリフトロッドを示
し、帯板状の鋼材から製作され、このリフトロッド10
の下端には、ピンを介して略台形状のくさび17の下端
が連結されている。このくさび17の前後面の外面側に
は、斜面と平行な案内溝が図11に示すように形成され
ている。同じく、先述した各案内板の対向側の前後面に
も、図11で示す案内溝が形成されている。
【0013】この案内板14に形成された案内溝と前述
したくさび17に形成された案内溝には、図11に示す
ように略樋状に形成されたローラ保持板18の両側の曲
げ部が嵌合している。
【0014】前後のローラ保持板18の中心線上に形成
された5カ所の軸穴には、ローラ19の両端に突設され
た軸部が挿入されている。したがって、ローラ保持板1
8は、案内板14に形成された溝に片側が嵌合した曲げ
部によって、ローラ19とともに上方に移動自由となっ
ている。
【0015】なお、この非常停止装置は、かごの他側に
も設けられ、更につり合いおもりにも取り付けられてい
る。
【0016】このように構成された非常停止装置におい
ては、かごの下降速度が規定された値を超えると、ガバ
ナロープが調速機のつかみ部で把持されてリフトロッド
10がかごより先に停止し、かごおよび案内板14に対
して相対的に上昇することで、このリフトロッド10の
下端に係止されたくさび17がかごに対して上昇する。
【0017】すると、一対のくさび17の対向面がガイ
ドレール4の頭部の側面に押圧されて、ガイドレール4
を両側から挟み、このガイドレール4とくさび17の対
向面との間の摩擦によってかごの下降は停止される。
【0018】くさび17とともに上昇するローラ保持板
18に挿入されたローラ19は、くさび17と案内板1
4との間に発生する摩擦を減らし、くさび17の上昇運
動を円滑にし、ガイドレール4への押圧力の低下を防止
する。
【0019】図12は、前述した次第利き非常停止装置
の他の一例を示す平面図、図13は、図12の前面図
で、図10に対応し、くさびを押圧するばねの形状が異
なる場合を示す。
【0020】図12および図13において、前述した図
10および図11で示した次第利き非常停止装置と大き
く異なるところは、後部にコイルばねを横設し、このコ
イルばねを後端で押圧し中間部の前方が軸支されたレバ
ーによって、くさびによるガイドレールの押圧力の反力
をコイルばねで受けることで、下降するかごの急停止に
伴う乗客への衝撃を減少するようにしたものである。
【0021】この次第利き非常停止装置は、高速(45
m/minを越える)エレベータでは、必ず採用しなけ
ればならないことが前述した法令で規定されている。
【0022】すなわち、図12および図13において、
略凹字状に鋳造品で製造された取り付け台20の下面に
軸受座21が設けられ、その軸受座21に貫設された支
軸で、レバー22の前端近傍部が軸支されている。そし
て、そのレバー22の前端の対向面に案内板14の背面
側が当接している。レバー22の後端には、ピン23を
介してクレビス形のばね座24の端部が連結されてい
る。
【0023】このばね座24には、図示しない側面図に
おける略正方形の座24aの各四隅に対して、両ねじボ
ルト25が貫挿され、左右のばね座24の座24aの間
に両端が平面にグラインダ加工されたコイルばね26が
挿入され、このコイルばね26は、両ねじボルト25の
両端から螺合されたダブルナットによって、所定の取り
付け圧力で圧縮されている。
【0024】なお、左右のレバー22の中間部には、両
ねじボルト27が貫挿され、この両ねじボルト27の両
端から螺合されたダブルナットによって締め付けられ、
この両ねじボルト27の中間部は、取り付け台20の後
部から図12に示すように突き出た一対の支持部を貫通
している。
【0025】
【発明が解決しようとする課題】非常停止装置の減速度
は、動作時に乗客やかご、つり合いおもりなどに損傷を
与えない様に規定され、例えば、日本工業規格(JI
S)では、動作時の制動距離において平均減速度0.3
5G〜1.0Gとなる様に決められている。ところが、
エレベータのかごは意匠上の要求により、例えば鋼板に
塗装した部材を使用したり、大理石を貼るなどしたり
し、かごの重量が仕様により大幅に増減するのが普通で
ある。また、積載荷重もかご室の大きさや、用途により
様々に増減するのが普通である。このため、非常停止装
置が制動しなければならない重量は、非常に幅がある。
これを従来のばね部材により調整しようとすれば、ばね
力の違いにより非常に多種類のばね部材を用意しなけれ
ばならなくなり、大きなストック品の置き場を必要と
し、多品種少量生産となることから、段取り作業が多発
し、経済性が悪い。また、客先の急な仕様変更により、
かご重量が変更された場合には、装置の改造に多大な労
力が必要となり、困難である。
【0026】また、制動する質量が大きい為に、大きな
ばね力を必要とする場合、図10および図11で示した
次第利き非常停止装置においては、ばね部材15の板厚
が厚くなるために、材料とするばね鋼平板が日本工業規
格(JIS)で規定されていなく、入手性に劣る場合が
ある。
【0027】また、材料を入手しても所定の形状に加工
することが困難となる。その理由は、このばね部材15
を曲げ成形する場合には、プレス機で行うが、板厚の大
きな材料の曲げ加工は非常に大きな力のプレス機を必要
とするため、特別に大きなプレス機が必要となり、経済
性が悪くなる。また、曲げ加工ができたとしても大形の
型を必要とするため製作費用が高価になる。さらに、材
料が厚いので加工時の材料の加熱や、取り扱いが困難と
なり、大きな労力が必要になるばかりか、ばね部材15
は、大形となり取り扱いが困難となる。
【0028】また、プレスによる曲げ成型では、このば
ね部材15を曲げ型からはずすとスプリングバックで弾
性復帰するので、所定の精度の製品を得るためには曲げ
幅の測定とプレス型への着脱を何度も繰り返すこととな
り、製作時間が長くなる。
【0029】また、図12および図13で示した次第利
き非常停止装置においては、大きなばね力のばねを用い
ると、レバー22が変形し所定の力でガイドレールを加
圧できなくなる。また、この非常停止装置を所定のばね
力に適応させると、レバー22は大形となり取付空間が
増える。すると、限られた昇降路の空間に、組み込むこ
とができなくなるだけでなく、かごの重量も増え、不経
済である。さらに、この非常停止装置を構成している部
品点数が多いため、製造コストが大きくなり、組立、調
整に多くの労力が必要となる。
【0030】本発明は、このような点に鑑み、外形を大
きくすることなく、ばね部材の形成を容易にでき、所定
の制動特性を容易に得ることができ、ばね力を容易に調
節することのできるエレベータの非常停止装置を提供す
ることを目的とする。
【0031】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、
エレベータのかごまたは均合いおもりに設けられ、上記
かごの下降速度の超過で引き上げられるリフトロッド
と、ガイドレールの両側に互いに対向して配設され、上
記リフトロッドとともに上昇する一対のくさびと、その
各くさびの背面にローラを介して対設され、上下端板に
係合された一対の案内板と、両案内板の外側面を押圧
し、その案内板を互いに対向方向に付勢するU字型のば
ね部材とを有するエレベータの非常停止装置において、
上記U字型のばね部材を、積層状態に組合せた複数枚の
U字形の平板ばねによって構成したことを特徴とする。
【0032】請求項2記載の発明は、請求項1記載の発
明において、U字形の平板ばねは、曲がり部の幅が広く
先端側腕部の幅が狭く形成されていることを特徴とす
る。
【0033】また、請求項3記載の発明は、請求項1ま
たは2記載の発明において、複数枚のU字形の平板ばね
が、その平板ばねを貫通する連結杆によって固定されて
いることを特徴とする。
【0034】さらに請求項4記載の発明は、請求項1ま
たは2記載の発明において、U字状の平板ばねと案内版
との間に押圧具を介装し、上記平板ばねには、その開口
端側対向面に上下方向に延びる半円柱状の凹部を形成す
るとともに、上記平板ばねと案内板との間に介装される
押圧具には、上記平板ばねが嵌挿される溝が形成されて
おり、その溝の溝底が上記平板ばねの半円柱状の凹部と
係合する凸曲面としてあることを特徴とする。
【0035】請求項5記載の発明は、請求項1乃至4の
いずれかに記載の発明において、複数枚のU字状の平板
ばねの間には間隔部材が介装されていることを特徴とす
る。
【0036】また、請求項6記載の発明は、請求項1乃
至5のいずれかに記載の発明において、U字状の平板ば
ねは支持具によって下側端板に支持されていることを特
徴とする。
【0037】さらに、請求項7記載の発明は、請求項1
乃至6のいずれかに記載の発明において、複数枚の平板
ばねは、互いに寸法が異ならしめてあることを特徴とす
る。
【0038】
【発明の実施の形態】以下、本発明のエレベータの非常
停止装置の実施形態を添付図面を参照して説明する。な
お、図中、図10および図11と同一部分には同一符号
を付しその詳細な説明は省略する。
【0039】図1は、本発明のエレベータの非常停止装
置の第1の実施形態を示す図で、従来の技術で示した図
10に対応しており、図2は図1の右側面図である。
【0040】図1および図2において、従来の技術で示
した図10および図11と異なるところは、ばね部材を
複数枚の平板ばねを積層状態に組合せて構成したこと
で、他は従来の技術で示した図10および図11と同一
である。
【0041】すなわち、図1および図2に示したエレベ
ータの非常停止装置において平板ばねは、図10および
図11で採用した平板をU字状に曲げたばね部材15の
代わりに、平板を材料として切断加工により所定の形状
とした平板ばね30を積層方向に間隔をおいて配置する
ことで構成されている。
【0042】このように、複数枚の平板ばね30を積層
状態に組合せたばねが組み込まれたエレベータの非常停
止装置においては、平板ばね30の厚さが薄くなったた
め、これらの平板ばねを曲げ成型による製作ではなく、
安定した精度が得られるプレスによる打ち抜き加工で作
成することができ、製作が容易になるとともに、ばね形
状にばらつきがなくなり、さらに安定したばね特性を得
ることができる。また、材料が厚く、切削加工によりば
ねを製作した場合においても、従来不可能であった大形
のばねを新たな設備投資を必要とせず、一般的な加工機
により製作することができる。
【0043】また、ばね力を調節する場合には、組合せ
る平板ばね30の枚数およびその厚さを任意に変えるこ
とで、幅広いばね力の調節が可能であり、所定のばね定
数を容易に得ることができるだけでなく、ばね力の異な
る多種のばねが容易に作成できる。
【0044】図3は、本発明のエレベータの非常停止装
置の平板ばね30の形状を示す図で、その平板ばねは板
厚が薄く、腕部先端の幅wが狭く外側が傾斜しながら太
くなり、曲がり部での幅Wが広くなっており、力の作用
する付近は細く、柔軟であり、大きな応力が作用する曲
がり部は太くなっている。
【0045】一方、従来の板ばねは、図示しないが幅が
一様であり、小さな応力が作用する腕部の幅は、大きな
応力が作用する曲がり部と同じ幅である。このため、従
来の板ばねは、小さな応力しか作用しない腕部の幅は、
材料強度上必要な幅より広くなり、曲がり部で大きな応
力を受け止める形状となり、ばね力に比べ重量が大き
い。
【0046】しかし、本発明の平板ばねでは、曲がり部
の曲率や腕部の傾斜などを変え、応力を分散させるな
ど、最適なばね形状を取ることで、従来の板ばねよりも
小さくして、大きなばね力を出せるばねが得られる。ま
た、ばねの特性の設定の自由度が高くなり、外形を大き
くすることなく、所定の制動特性を容易に得ることがで
きるエレベータの非常停止装置が得られる。
【0047】次に、図4は、本発明のエレベータの非常
停止装置において他の実施形態を示す図で、複数枚の平
板ばね30A,30Bは、この平板ばね30A,30B
に設けられた穴31を貫通する連結杆32により互いに
固定されている。
【0048】この様に、複数枚の平板ばね30A,30
Bの重ね合わせで単一のばねを構成すると、ばね形状お
よび、ばね特性の自由度が高くなるとともに、その変更
が容易となる。すなわち、平板ばねを薄板材よりプレス
加工により製作することにより、プレスの型を変更する
だけで、断面形状の異なるばねを容易に作成でき、これ
らを重ね合わせることで、所要のばね特性を容易に得る
ことができる。また、厚さの異なる平板ばねを重ね合わ
せることにより、ばね力の調整を容易に行うことができ
るが、更に、この平板ばね30A,30Bに設けられた
穴31を貫通する連結杆32により、平板ばね30A,
30Bを互いに固定することで、この複数枚の平板ばね
30A,30Bは、これらを重ね合わせることで構成さ
れた単体の板ばねとして扱うことがてき、組立時の取付
作業が容易となる。
【0049】次に、図5は、本発明のエレベータの非常
停止装置における他の実施形態を示す図で、図6は図5
のA−A断面図である。
【0050】従来の非常停止装置では、図10の様にば
ね部材に設けた穴に半球状の頭部を持つ押圧具16を挿
入し、この押圧具16を案内板14に形成された半球状
の凹部と片側2箇所で嵌合させているが、本発明の平板
ばねにおいては、板厚が薄いため平板ばねの押圧部に穴
加工を行うことは、強度を確保できなくなったり、平板
ばねの板厚によっては穴加工が困難である。また、平板
ばねを複数枚使用するため、加工工数および押圧具等の
部品数が増加し、コストが高くなる。
【0051】そこで、本発明においては、図5および図
6に示すように、U字状の平板ばね30の開口端部にお
ける対向面に、上下方向(平板ばねの厚さ方向)に延び
る半円柱状の凹部33が形成されている。一方、案内板
14の外側面には押圧具34が接合されている。この押
圧具34の外側面には、各平板ばね30を係合する複数
の横方向に延びる溝35が形成されており、その溝35
の溝底36が、前記平板ばね30の半円柱状の凹部33
と係合する凸曲面としてある。
【0052】しかして、押圧具34の外側面に形成され
ている溝35に平板ばね30を嵌挿し、平板ばね30の
凹部33と押圧具34における溝底36の凸曲面とを互
いに係合することによって、押圧具34と平板ばね30
が連結されている。
【0053】しかして、この実施の形態においては、押
圧部の穴加工の省略、部品数の削減ができ、結果として
押圧部の構造を簡略化できる。また、平板ばね30と案
内板14が確実に連結され、本発明のエレベータの非常
停止装置が作動したときに生じる平板ばね30の運動が
無理なく案内板14に伝えられ、安定した制動特性を得
ることができる。さらに、この横方向の溝35を持つ押
圧具34によって、平板ばね30を前述の平板ばねの円
柱状の凹部33の上下方向から支持する事により、隣り
合う平板ばねを適度な間隔で保持できるとともに、各平
板ばねの運動を干渉することなく案内板14に伝えるこ
とができる。また、円柱状の凹部で嵌合部の平板ばねの
動きを拘束することで、平板ばね30がその自重により
傾いたり、下に滑り降りるといったことを防ぐことがで
きる。これらにより要求された制動特性を確実に得るこ
とができ、結果として、本発明のエレベータの非常停止
装置の信頼性の向上につながる。
【0054】さらに、従来の非常停止装置では、ばね部
材と案内板が片側2点で嵌合しているため、押圧具の取
付精度や加工精度が悪いと、ばね部材の取付け性が悪く
なるとともに嵌合部の結合軸がずれ、ばね力を効率よく
伝えることができなくなるが、本発明による嵌合機構で
は押圧具34と平板ばね30の押圧部が円柱状の曲面で
接触しているため、非常停止装置の動作に伴い自動的に
結合軸が合致し、これによりばね力が無理なく案内板1
4に伝えられる。また、この自動的に結合軸が合致する
作用のため、平板ばね30を取付ける際の調整作業が簡
略化できる。
【0055】次に、図7は、本発明のエレベータの非常
停止装置においてさらに他の実施形態を示す図であり、
特に図2と異なるところは、重ね合わされた複数枚の平
板ばね30の間に、間隔具37が介装されており、下部
端板12に取り付けられた支持具38により、この重ね
合わされた複数枚の平板ばね30が支持されている。
【0056】図7の様に、平板ばね30の間に間隔具3
7を挟み込むことにより、各平板ばね30の間に常に間
隙を保て、各平板ばね30の運動が干渉することなく、
この平板ばね30を保持する事ができる。これにより、
平板ばねの自動調心機能が効率よく作用する範囲内に平
板ばねを保持する事ができ、さらに間隔具37に平滑性
を持たせることで、間隔具37により間隙が保たれた平
板ばね30の運動を滑らかに支持することができ、ばね
力を効率よく案内板14に伝える事ができ、結果とし
て、非常停止装置の信頼性が向上する。
【0057】また、この平板ばね30を下側端板12に
取り付けられた支持具38で支持することにより、平板
ばね30の不要な運動を拘束でき、平板ばね30が押圧
具34の嵌合部において、無理な力が作用することな
く、前述の積層方向に組合わされた平板ばねを支持する
ことができ、平板ばね30と押圧具34の結合がより確
かなものとなる。さらに、この下側端板12に取り付け
られた支持具38の長さを変えることにより、くさびが
平板ばねにより押圧される位置を容易に変える事がで
き、結果として、くさびに作用するばね力の分布が変化
する。したがって、平板ばね30がくさびを押圧する位
置を変えることにより、くさびに作用するばね力の分布
を最適化することができ、くさびとガイドレールとの間
に印加される押圧力を上下ほぼ均一にすることもでき
る。これにより、偏荷重によるくさびの摺動面の偏摩耗
を防ぐことができ、制動特性を向上させることができる
と同時に、この偏摩耗に伴う保守・点検の頻度の増加を
防ぐことができる。
【0058】また、本発明による平板ばねは、垂直方向
の寸法が小さいことを特徴とするため、曲げ強度が低下
し、自重によって平板ばね30自身が下側に撓んだり、
非常停止装置が動作し平板ばね30が弾性変形した際な
どに、平板ばねがねじれ、隣り合う平板ばねと干渉する
可能性が考えられる。この様に隣り合う平板ばねが干渉
することにより、平板ばねに上下方向より無理な力が作
用し、ばね力を効率よく案内板に伝える事ができなくな
るばかりか、平板ばね30が脱落する危険性も生じる。
さらに、非常停止装置作動時には非常に大きな力や揺れ
が発生するため、この力や揺れにより平板ばね30に不
要な移動や変形が生じ、隣り合う平板ばねに与える干渉
力が大きくなり、非常停止装置作動時にもかかわらず安
定したばね力を提供できなくなり、所要の制動特性が得
られない可能性も考えられる。そのため、間隔具37に
緩衝機能を持たせ、上記の様な各平板ばねの運動を間隔
具37で吸収することにより、隣り合う平板ばねに与え
る干渉力や、平板ばね30の嵌合部に作用する反力が低
減し、非常停止装置作動時においてもばね力を確実に案
内板14に伝えることができる。さらに、支持具38と
組み合わせ、平板ばね30の下向きの動きを拘束する事
により、上記の効果はより確かなものとなり、本発明に
よる非常停止装置の信頼性が更に向上する。
【0059】この様にして構成されたばねを用いたエレ
ベータの非常停止装置は、製作、調整が容易になるばか
りか、制動特性をくさびの材料やかごの仕様や重量、ま
た、定格速度などに応じて最適に調整でき、かご停止時
の衝撃を減らすことができるとともに、確実な制動特性
が得られる。
【0060】次に、図8は、本発明のエレベータの非常
停止装置におけるさらに他の実施形態を示す図であっ
て、第1の実施形態で示した図1と異なるところは、断
面形状寸法の異なる複数枚の平板ばね30a,30b,
30c,30d,30eを重ね合わせた点である。
【0061】この様に断面形状寸法の異なる平板ばねを
組み合わせることにより、各平板ばねの押圧部に作用す
るばね力を容易に変えることができ、くさび17が上方
に引き上げられた状態、すなわち、くさび17とガイド
レール4との間の圧力が最大となる状態において、制動
面に作用する押圧力を任意に変更することができる。こ
れにより、くさび17とガイドレール4の間に印加され
る押圧力を上下ほぼ均一にすることができ、偏荷重によ
るくさびの摺動面の偏摩耗を防げ、この偏摩耗に伴う保
守・点検の頻度の増加を防ぐこともできる。
【0062】さらに、この様にして構成されたばねを用
いたエレベータの非常停止装置は、製作、調整が容易に
なるばかりか、押圧力に起因する制動特性をくさびの材
料やかごの仕様、重量、また、定格速度などに応じて、
最適に調整でき、かご停止時の衝撃を減らすことができ
る。
【0063】なお、上記実施形態では、かごに取り付け
られた非常停止装置の例で説明したが、つり合いおもり
に取り付けられた場合にも、全く同様に適用することが
できる。
【0064】
【発明の効果】以上説明したように、本発明において
は、U字型のばね部材を複数枚の平板ばねを積層状態に
組合せて構成したので、曲げ加工を不要として、製作を
容易にすると共に、ばね特性の設定の自由度を上げたの
で、外形を大きくすることなく、所定の制動特性を容易
に得ることのできるエレベータの非常停止装置を得るこ
とができる。
【0065】また、平板ばねの曲がり部の幅を広くし腕
部の幅を狭くした場合には、ばね特性の設定の自由度を
上げ外形を増すことなく、所定のばね特性を容易に得る
ことができる。
【0066】また、平板ばねを貫通する連結杆により互
いに固定した場合には、ばねの取り扱いが容易になると
共に、ばね特性の設定の自由度を更に上げたので、外形
を大きくすることなく、所定の制動特性を容易に得るこ
とができる。
【0067】さらに、平板ばねの開口端部の対向面に円
柱状の凹部を設け、その平板ばねの開口端に凸曲面を有
する溝を有する押圧具を嵌合させたことで、構造が簡単
で組立が容易となったので、信頼性が高く、安定した制
動特性を得ることができる。
【0068】また、平板ばねの間に間隔具を介在させ、
或は平板ばねを下側端板から支持具により支持すること
で、ばねの動きを無理なく支持できると共に、ばね力を
効率よく伝える事ができるので、信頼性が高く、安定し
た制動特性を得ることができる。
【0069】さらに、U字型のばね部材を外形寸法の異
なる複数枚の平板ばねの組み合わせにより構成すること
で、板ばねを薄くして、製作を容易にすると共に、制動
面に作用する押圧力を任意に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のエレベータの非常停止装置の一つの実
施形態を示す正面図。
【図2】図1の右側面図。
【図3】本発明のエレベータの非常停止装置の平板ばね
の平面図。
【図4】本発明のエレベータの非常停止装置の他の実施
形態を示す一部断面側面図。
【図5】本発明のエレベータの非常停止装置のさらに他
の実施形態を示す正面図。
【図6】図8のA−A線に沿う断面図。
【図7】本発明のエレベータの非常停止装置の他の実施
形態を示す右側面図。
【図8】本発明のエレベータの非常停止装置のさらに他
の実施形態を示す正面図。
【図9】非常停止装置が設けられた一般的なエレベータ
の概略構成図。
【図10】従来の次第利き形のエレベータの非常停止装
置の一例を示す正面図。
【図11】図10のB−B線に沿う断面図。
【図12】従来の次第利き形のエレベータの非常停止装
置の図10と異なる一例を示す平面図。
【図13】図12の正面図。
【符号の説明】
1 かご 4 ガイドレール 6 非常停止装置 10 リフトロッド 11 上部端板 12 下部端板 14 案内板 15 ばね部材 16,34 押圧具 17 くさび 18 ローラ保持板 19 ローラ 22 レバー 30 平板ばね 32 連結杆 33 凹部 35 溝
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小 林 英 彦 東京都府中市東芝町1番地 株式会社東芝 府中工場内 Fターム(参考) 3F304 DA45 DA47

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】エレベータのかごまたは均合いおもりに設
    けられ、上記かごの下降速度の超過で引き上げられるリ
    フトロッドと、ガイドレールの両側に互いに対向して配
    設され、上記リフトロッドとともに上昇する一対のくさ
    びと、その各くさびの背面にローラを介して対設され、
    上下端板に係合された一対の案内板と、両案内板の外側
    面を押圧し、その案内板を互いに対向方向に付勢するU
    字型のばね部材とを有するエレベータの非常停止装置に
    おいて、上記U字型のばね部材を、積層状態に組合され
    た複数枚のU字形の平板ばねによって構成したことを特
    徴とするエレベータの非常停止装置。
  2. 【請求項2】U字形の平板ばねは、曲がり部の幅が広く
    先端側腕部の幅が狭く形成されていることを特徴とす
    る、請求項1記載のエレベータの非常停止装置。
  3. 【請求項3】複数枚のU字形の平板ばねが、その平板ば
    ねを貫通する連結杆によって固定されていることを特徴
    とする、請求項1または2記載のエレベータ非常停止装
    置。
  4. 【請求項4】U字状の平板ばねと案内版との間に押圧具
    を介装し、上記板ばねには、その開口端部対向面に上下
    方向に延びる半円柱状の凹部を形成するとともに、上記
    押圧具には、上記平板ばねが嵌挿される溝が形成されて
    おり、その溝の溝底が上記平板ばねの半円柱状の凹部と
    係合する凸曲面としてあることを特徴とする、請求項1
    または2記載のエレベータ非常停止装置。
  5. 【請求項5】複数枚のU字状の平板ばねの間には間隔部
    材が介装されていることを特徴とする、請求項1乃至4
    のいずれかに記載のエレベータ非常停止装置。
  6. 【請求項6】U字状の平板ばねは支持具によって下側端
    板に支持されていることを特徴とする、請求項1乃至5
    のいずれかに記載のエレベータ非常停止装置。
  7. 【請求項7】複数枚の平板ばねは、互いに寸法が異なら
    しめてあることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれ
    かに記載のエレベータ非常停止装置。
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