JP4776802B2 - 防虫カバー - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、防虫カバーの改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、防虫カバーとしては、防虫成分を含有させたプラスチック製シートを閉塞状の袋体に形成し、その頂部にハンガーフックの取出し口を設けたものや、この袋体の前部シートを左右に二分し、その間に扉状のシートを重畳させたものなどが知られている。
しかしながら、従来の防虫カバーにおいては、衣類を吊るしたハンガーの防虫カバーへの出し入れは、一旦ハンガーバーからハンガーを取り外し、防虫カバーの下端、もしくは前部シートの扉部からハンガーを挿入後、頂部からハンガーフックを突出させて行わざるを得ず、操作が面倒であった。また、防虫成分としては一般的に揮散性の高いものが使用され、徐放性の点からプラスチック製シートに含有されることが多く、複雑な製造工程が避けられなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、▲1▼衣類を吊るしたハンガーをハンガーバーから取り外すことなく、衣類に防虫カバーを装着できる利便性、▲2▼長期間にわたってすぐれた防虫効果を維持すること、▲3▼製造性 の全てを満足する有用な防虫カバーを提供する目的でなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段、ならびに発明の実施の形態】
上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、前部シートの上方を開閉可能な構成とし、好ましくは不織布製後部シートに防虫成分を含有させ、更に防虫成分として常温揮散性ピレスロイド系防虫成分と非揮散性防虫成分の混合物を選択することによって、目的の防虫カバーが得られることを見いだし本発明を完成した。
【0005】
すなわち、請求項1の発明は、重なり部を有する前面片及び後面片からなる前部シートと、該前部シートと同形状の後部シートを重ね、両シートの側辺周縁部と下辺周縁部を融着する一方、前記重なり部の上端を含む上辺周縁部は開放した包袋状に形成し、該前部シートの上方の重なり部を左右に拡げることにより、衣類を吊るしたハンガーをハンガーバーから取り外すことなく、衣類に防虫カバーを装着できる構成となし、しかも該前部シートの上方の重なり部の一部に解除可能な封止手段を取り付け、前面片及び後面片が重なり部を有する前部シートはプラスチック製であって、後部シートが不織布製であり、この不織布製後部シートに、防虫成分として常温揮散性ピレスロイド系防虫成分と非揮散性防虫成分の混合物を含有させた防虫カバーに関するものである。
【0006】
本発明の防虫カバーで使用されるシートは、プラスチック製もしくは不織布製であり、前面片及び後面片が重なり部を有する前部シートはプラスチック製である。プラスチック製シートの材質としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニルコポリマーなどがあげられるが、これらに限定されるものでなく、単体に更に不織布製シートを積層させたシートを用いてもよい。一方、不織布製シートとしては、ポリプロピレンスパンボンドや、ポリエステル・レーヨン混成シートなどを例示できる。
【0007】
本発明防虫カバーは、前面片及び後面片が重なり部を有する前部シートと、これと同形状の後部シートを重ねて作製されるが、該前部シートの上方を容易に開閉可能に構成した点に一つの特徴を有する。すなわち、前面片及び後面片の重なり部の下端のみを融着し、上方の重なり部の一部を適当な封止手段で封脱着できるようになしたので、使用時に封止を解除し上方を拡げれば、衣類を吊るしたハンガーをハンガーバーから取り外すことなく、容易に防虫カバーの装着を行いうる。封止手段としては、シール材やピンなどを例示できるが、例えば使用期限表示付きシール材を採用すれば非常に便利である。
なお、防虫カバーの形状や大きさは任意であるが、幅50〜70cm、高さ100〜150cm、重なり部の幅5〜20cm程度のものが使いやすい。
【0008】
防虫成分は、後部シートに含有される。薬剤含有シートの材質はプラスチック製でも不織布製でも構わないが、不織布製シートの方が製造上有利で、薬剤を含有させるにあたってはグラビア印刷塗工法など適宜採用しうる。例えば、前部シートを無薬剤のプラスチック製シートとし、後部シートを薬剤含有不織布製シートで構成するのが好ましく、この場合、長期間防虫効果を持続させるうえで、防虫成分として揮散性の高い防虫成分に加え、非揮散性防虫成分を併用するのがよい。
【0009】
本発明防虫カバーで使用される揮散性の高い防虫成分としては、常温揮散性ピレスロイド系防虫成分が好適であり、例えば、1ーエチニルー2ーメチルー2ーペンテニル クリサンテマート(エムペントリン)、1ーエチニルー2ーフルオロー2ーペンテニル 2,2ージメチルー3ー(2,2ージクロルビニル)シクロプロパンー1ーカルボキシレート(以降、化合物A)、2,3,5,6ーテトラフルオロベンジル 2,2ージメチルー3ー(2,2ージクロルビニル)シクロプロパンー1ーカルボキシレート(トランスフルトリン)、4−メチル−2,3,5,6ーテトラフルオロベンジル 2,2ージメチルー3ー(1−プロペニル)シクロプロパンー1ーカルボキシレート(以降、化合物B)などがあげられる。なお、化学構造中に不斉炭素に基づく光学異性や二重結合に起因する幾何異性が存在する場合、それぞれ異性体の単独、ならびに任意の混合物が本発明に包含されるのはもちろんである。前記ピレスロイド系防虫成分のなかでは、防虫効力、入手性などの点からエムペントリンが使いやすい。
【0010】
一方、非揮散性防虫成分としては、フェノトリン、シフェノトリン、エトフェンプロックス、シラフルオフェンなどがあげられるが、防虫効果、人体に対する安全性、1年以上の長期にわたる化学的安定性など、あらゆる点ですぐれたシラフルオフェンが特に好ましい。常温揮散性ピレスロイド系防虫成分と非揮散性防虫成分の当初の混合比は、4:1〜1:2が適当であり、この混合比では常温揮散性ピレスロイド系防虫成分の揮散が適度に抑えられることが認められた。
なお、本発明の性能を損なわない限り、アレスリン、プラレトリンなどの他のピレスロイド剤、ディート、フタル酸ジメチルなどの害虫忌避剤、ヒノキチオール、リナロール、シトロネロール、オイゲノールなどの抗菌性香料、o−フェニルフェノール、p−クロル−m−キシレロール、3ーメチルー4ーイソプロピルフェノール、イソチオシアン酸アリルなどの防黴剤、防微生物剤、その他の消臭剤、芳香剤、安定剤、着色剤などを適宜配合して多目的防虫シートとすることも可能である。
【0011】
本発明の防虫カバーでは、前記防虫成分を含む薬液が好ましくは不織布製後部シートに含有され、その含有量として例えば、常温揮散性ピレスロイド系防虫成分を300mg/m2 、非揮散性防虫成分を200mg/m2 程度とすれば、およそ1年間にわたり、イガ、コイガ、ヒメカツオブシムシ、ヒメマルカツオブシムシなどの衣料害虫に対して防虫効果を保持することができる。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1の構成において、常温揮散性ピレスロイド系防虫成分としてエムペントリンを、非揮散性防虫成分としてシラフルオフェンを選択した防虫カバーである。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1又は2のいずれかの構成において、前部シートの上方の重なり部の一部に取り付けられる封止手段として、シール材を用いた防虫カバーである。
【0015】
かかる本発明の防虫カバー、好ましくは、前部シートがプラスチック製で、後部シートが不織布製であり、この不織布製後部シートに、常温揮散性ピレスロイド系防虫成分と非揮散性防虫成分の混合物を含有させた防虫カバーは、ハンガーバーに吊るした状態でスーツ、ワンピースなどの衣類の上からかぶせられるため使いやすく、更に長期間にわたる防虫効果や、製造性の点でもすぐれており、実用性は極めて高い。
【0016】
【実施例】
つぎに図面を参照し、具体的実施例ならびに試験例に基づいて、本発明の防虫カバーを更に詳細に説明する。図1は本発明の防虫カバーの一実施例を、図2は衣類に装着する際の参考斜視図を示す。
【0017】
実施例1.
幅約35cm、高さ約140cmのポリプロピレン製前面片(1)及び同形のポリプロピレン製後面片(2)を、重なり部(4)の幅が約10cmとなるように重ねて、幅約60cm、高さ約140cmの前部シート(3)を形成した。一方、前部シート(3)と同形で、防虫成分としてエムペントリンとシラフルオフェンを、それぞれ300mg/m2 と200mg/m2 の割合で含有させたポリプロピレンスパンボンド(不織布)製後部シート(5)を作成した。両シートを重ね合わせ、両シートの側辺周縁部(6)と下辺周縁部(7)を融着し、一方、重なり部(4)の上端を含む上辺周縁部(約12cm)を開放状態として本発明防虫カバーを得た。
本発明防虫カバーの使用に際しては、前部シート(3)の上方の重なり部(4)を前開きすることによって、ワンピースを吊るしたハンガーをハンガーバーから取り外すことなく、防虫カバーをワンピースの上にかぶせることができ、しかる後、重なり部(4)を元に戻し、使用期限表示付きシール材(8)を用いて重なり部(4)の一部を封止した。
かかる本発明防虫カバーは、利便性にすぐれ、また混合防虫成分の作用で1年以上にわたり防虫効果を維持した。
【0018】
試験例1.
実施例1に準じて表1に示す各種防虫カバーを作成し、下記の性能試験を実施した。表1にその結果も示す。
▲1▼使用性試験
衣類をハンガーに吊るしハンガーバーに掛けた状態で、防虫カバーを装着した。結果は、装着しやすいものから順に、○、△、×の評価で示した。
▲2▼食害防止試験
衣類をハンガーに吊るし各種防虫カバーを装着してクローゼット内で保管した。1年後に防虫カバー内の衣類上にイガ5頭を放飼し、1週間にわたり衣類の食害状況を観察した。なお、食害状況の結果は次の基準で評価した。
○;全く食害なし.
△;僅かに食害が認められる.
×;食害が認められる.
【0019】
【表1】
【0020】
試験の結果、本発明の防虫カバーは使いやすく、また長期間にわたりすぐれた防虫効果を示した。なお、防虫成分としては、揮散性の高い防虫成分と非揮散性防虫成分の混合物を用いたものがより好ましかった。
これに対し、対照の従来品、例えば、前開き構成でなく、下辺(すそ)が開口した防虫カバー(対照1)では、防虫カバーの装着に際し、衣類を吊るしたハンガーを必ずハンガーバーから取り外す必要があり面倒であった。また、前部シートと後部シートの下辺周縁部を融着しない防虫カバー(対照2)は、閉塞性が不足し長期間にわたって防虫効果を維持しえなかった。
【0021】
【発明の効果】
本発明は、衣類を吊るしたハンガーをハンガーバーから取り外すことなく、衣類に装着できる利便性の高い防虫カバーを提供する。なかんずく、前部シートがプラスチック製で、後部シートが不織布製であり、更に不織布製後部シートに、常温揮散性ピレスロイド系防虫成分と非揮散性防虫成分の混合物を含有させた防虫カバーは、長期間にわたる防虫効果や、製造性の点でもよりすぐれているので好ましい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の防虫カバーの一実施例である。
【図2】これをハンガーに吊るした衣類に装着する際の参考斜視図である。
【符号の説明】
1:前面片
2:後面片
3:前部シート
4:重なり部
5:後部シート
6:側辺周縁部
7:下辺周縁部
8:シール材
Claims (3)
- 重なり部を有する前面片及び後面片からなる前部シートと、該前部シートと同形状の後部シートを重ね、両シートの側辺周縁部と下辺周縁部を融着する一方、前記重なり部の上端を含む上辺周縁部は開放した包袋状に形成し、該前部シートの上方の重なり部を左右に拡げることにより、衣類を吊るしたハンガーをハンガーバーから取り外すことなく、衣類に防虫カバーを装着できる構成となし、しかも該前部シートの上方の重なり部の一部に解除可能な封止手段を取り付け、しかも前部シートがプラスチック製で、後部シートが不織布製であり、この不織布製後部シートに、防虫成分として常温揮散性ピレスロイド系防虫成分と非揮散性防虫成分の混合物を含有させたことを特徴とする防虫カバー。
- 常温揮散性ピレスロイド系防虫成分がエムペントリンで、非揮散性防虫成分がシラフルオフェンであることを特徴とする請求項1に記載の防虫カバー。
- 前部シートの上方の重なり部の一部に取り付けられる封止手段が、シール材であることを特徴とする請求項1又は2に記載の防虫カバー。
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