JP3903232B2 - 防虫消臭脱臭シート - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、害虫を防除するとともに周囲近傍の悪臭の除去および付着防止することを目的とした防虫消臭脱臭シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
これまで、消臭脱臭剤をシート状基材に担持させた消臭脱臭シートは多く実用化されている。また、防虫剤をシート状基材に担持させた防虫シートも実用化されている。しかし、これらの機能を併せもつ満足いく防虫消臭脱臭シートについては全く実用化されていなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来、防虫消臭脱臭シートが実用化されていなかった原因としては、消臭脱臭剤と防虫剤の相性不良によるもの、つまり消臭脱臭剤が防虫剤を吸着および分解することによるものと考えられる。したがって、単に両者を組み合わせただけのシートにおいては、消臭脱臭剤と防虫剤の組み合わせによっては製造から販売までの流通中に変色、異臭等の発生により商品性に問題が起きる頻度が高いばかりか、そのシートを使用することで衣類・食品・家具、器物等に重大な損傷を与えることとなる。また、運良く変色、異臭の発生をまぬがれたとしても使用時に消臭脱臭、防虫の両機能が十分に効果を発揮せず、結果的に衣類・食品・家具、器物等に損害を与えることになる。また、消臭脱臭シートと防虫シートを別々に購入し、同時に併用することによっても上記のように両機能が十分に効果を発揮せず、結果的に衣類・食品・家具、器物等に損害を与える等の問題点が発生した。
【0004】
本発明の目的は防虫、消臭脱臭の両機能が同時に十分に発揮でき、製剤自身の安定性が高く、経済性も高い防虫消臭脱臭シートを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため本発明によれば、活性炭、シリカゲル、活性アルミナ、ゼオライト、セラミックから選ばれた1つ以上の組み合わせからなる消臭脱臭剤を、シート状基材に5〜200g/m担持させ、このシート状基材とは別のシート状基材にピレスロイド系防虫剤を5〜300mg/m担持させ、その各シート状基材を積層したことを特徴とする防虫消臭脱臭シートが提供される。
前記シート状基材としては紙、布、不織布、樹脂フィルムから選ばれた1つ以上の組み合わせを積層したものが用いられる。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明者らが消臭脱臭剤および防虫剤の併用に関して鋭意研究を重ねた結果、活性炭、シリカゲル、活性アルミナ、ゼオライト、セラミックから選ばれた1つ以上の組み合わせからなる消臭脱臭剤およびピレスロイド系防虫剤をシート状基材に担持させたものを用いた場合、消臭脱臭、害虫防除の両機能が同時に十分に発揮でき、製剤自身の安定性が高く、経済性も高い防虫消臭脱臭シートを提供しうることを見出した。
【0007】
さらに驚くべきことに、消臭脱臭剤が悪臭成分を吸着し、ピレスロイド系防虫剤が害虫を防除するという単なる両機能の組み合わせのみならず、相互に悪影響を与えることがないばかりか、害虫防除効果においては単独で使用した場合に比べ、むしろ効果の向上がみられることを見出した。この原因についての詳細は定かではないが、ピレスロイド系防虫剤の雰囲気を害虫が察知するのを消臭脱臭剤の効果によって防ぎ、害虫が躊躇なくピレスロイド系防虫剤と接するためと考えられる。
【0008】
そのうえ消臭脱臭剤が水蒸気、酸素、各種酸性ガス、塩基性ガスを吸着することによりピレスロイド系防虫剤そのものの安定性も向上し、保存流通中の安定性向上のみならず、使用時においても長期の害虫防除効果を得られることを見出した。さらには、消臭脱臭剤にはピレスロイド系防虫剤の分解臭に対しても吸着作用があることも見出した。しかも、前記消臭脱臭剤は不必要な物質を放出することもなく、人畜に対する安全性も高い。
【0009】
前記消臭脱臭剤は、活性炭、シリカゲル、活性アルミナ、ゼオライト、セラミックから選ばれた1つ以上の組み合わせのものであるので、使用時に衣料およびタンス、収納容器、家具等へのにじみ出しや変色等の悪影響が無く、また消臭脱臭効果が高い。
【0010】
前述の消臭脱臭剤は主にアンモニア、酪酸、トリメチルアミン、硫化水素、酢酸、メチルメルカプタン、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒドに代表される各種悪臭成分を消臭脱臭する。たばこ臭、食品臭、かび臭、汗臭、糞尿臭、腐敗臭、香料臭、建材等に由来する接着剤をはじめとした各種有害化学物質といった複合臭をも消臭脱臭することはいうまでもない。また、消臭脱臭剤の特性および対象臭に応じて公知の各種添着剤、効力増強剤を添加するのは任意である。特に活性炭に関しては酸性臭、塩基性臭、中性臭等の対象に応じて多くの添着剤、改質剤、PH調節剤が知られている。
【0011】
前記消臭脱臭剤の性状に関しては、製造性の点から粉末あるいは顆粒状であることが望ましく粒度10〜330メッシュが好ましく、さらには18〜200メッシュがより好ましい。10メッシュより大きいとシート状基材の表面の凹凸が大きくなり、見栄えが悪いばかりか、使用時に衣類、家具、器物等にキズを付けることになる。また330メッシュより細かいと製造時の扱いにおいて浮遊、静電気等による影響を受けやすく煩雑であるばかりか、シート状基材からのこぼれ落ちが発生して使用時に衣類、家具、器物等を汚す可能性がある。
【0012】
前記消臭脱臭剤をシート状基材へ担持させる量は消臭脱臭剤にもよるが5〜200g/mが好ましく、さらには10〜100g/mがより好ましい。すなわち、5g/mより少ないと消臭脱臭効果が得られず、200g/mより多いとシート状基材の柔軟性が失われる。
【0013】
前記消臭脱臭剤のシート状基材への担持方法としては、粉体そのままでも良いが各種溶剤、バインダーと組み合わせて分散、液状化すること等も可能であり、印刷、塗布、接着、散布、熱プレス、サンドイッチ、基材材質への練り込み等といった手法および溶剤系接着剤、エマルジョン系接着剤等といった材料を任意に組み合わせることが可能であるがこれ限定されない。
【0014】
前記ピレスロイド系防虫剤としては、各種害虫に対して防殺虫効果を有するものであれば特に限定されない。例えば、ピレトリン、アレスリン、レスメトリン、フタルスリン、フラメトリン、フェノトリン、シフェノトリン、プラレトリン、ペルメトリン、シペルメトリン、デカメスリン、フェンバレレート、シフルトリン、シハロトリン、エトフェンプロックス、トラロメスリン、エムペントリン、テフラメトリン、テラレトリン、トランスフルスリン等が挙げられる。これらの防虫剤において蒸気圧が10−4mmHg(25℃)未満のものが消臭脱臭剤との相性という点では好ましい。また、これらのピレスロイド系防虫剤は単独で用いても良いが2種以上を任意に組み合わせることも可能である。
【0015】
前記防虫剤をシート状基材へ担持させる量としては5〜300mg/mが好ましく、さらには10〜100mg/mがより好ましい。すなわち、シート状基材の材質、目付量(単位面積あたりの重量)、性状、防虫剤の種類にもよるが5mg/mより少ないと十分な防虫効力が得られず、300mg/mより多いと衣類や家具へのにじみ出しの心配がある。
【0016】
シート状基材への防虫剤の担持方法については、防虫剤そのままでも良いが各種樹脂、バインダー、溶剤等と任意に組み合わせることが可能であり、各種版を使った印刷、含浸、浸漬、スプレー塗布、滴下、基材材質への練り込み等が挙げられるが特に制限はない。
【0017】
消臭脱臭剤とピレスロイド系防虫剤を別々のシート状基材にそれぞれ担持して積層しても良いし、同一のシート状基材の表裏面にそれぞれ担持しても良く、さらには同一のシート状基材に離隔してそれぞれ担持したり、重ねて担持しても良い。この場合、消臭脱臭剤とピレスロイド系防虫剤のシート状基材への担持順序については状況に応じて選択可能である。
【0018】
なお、ピレスロイド系防虫剤に対して公知の共力剤、例えばPBO(ピペロニルブトキサイド)、IBTA(イソボルニルチオシアノアセテート)、IBTE(イソボルニルチオシアノエチルエーテル)、S−421(オクタクロロジプロピルエーテル)、サイネピリン500(N−(2−エチルヘキシル)−1−イソプロピル−4−メチルビシクロ(2,2,2)オクト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)等を配合比1w/w%から300w/w%程度を加えることは任意であるほか、公知の安定化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、樹脂、界面活性剤、溶剤、変色防止剤、拡散剤を任意の割合で加えることが可能である。
【0019】
前記シート状基材としては特に限定されないが、経済性、汎用性という点からは紙、布、各種製法による不織布、樹脂フィルムから選ばれた1つ以上の組み合わせを積層したものが好ましい。シート状基材のエンボス加工、メッシュ化、孔開け、表面処理等の加工は任意である。材質としてはパルプ、綿、ウール、シルク、麻、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ナイロン、レーヨン、ポリ塩化ビニリデン、アルミニウム箔、アルミニウム蒸着フィルム、酸化ケイ素蒸着フィルム等があるが特に限定されない。シート状基材の目付量は好ましくは10〜300g/m,さらには20〜100g/mgがより好ましい。すなわち、10g/m以下では防虫剤および消臭脱臭剤の十分な担持能力や強度に欠け、300g/m以上ではシートの柔軟性や扱いやすさ、経済性等の点で不満足なものとなってしまう。
【0020】
本発明に係る防虫消臭脱臭シートの用途として、そのまま任意の寸法に裁断して引き出し、タンス内、台所、床下、衣装ケース、食品庫、食器棚等に代表される家屋家具内に敷設するほか、洋服カバー、袋、敷物、巾着、ハンガーカバー、タペストリー等の形態に加工して用いることができる。シート状であるがゆえに収納空間等を占有することなく、また使用後の廃棄もいたって簡便である。加工に際しては超音波接着、熱溶着、縫製、接着剤による積層等、各種手段が挙げられる。また、透明フィルムや着色フィルム、接着フィルム、固定具、ステッカー、ファスナー、スリット、ポリチャック等、他の素材と任意に組み合わせ可能である。さらに対象害虫としてはゴキブリ、ハエ、カ、屋内塵性ダニ等の衛生害虫、ハダニ、アブラムシ、ケムシ、コクゾウムシ等の農業害虫、イガ、コイガ、ヒメカツオブシムシ、シミ等の衣料害虫、アブ、ハチ、ゲジ、アリ、クモ等の不快害虫、シロアリ、キクイムシ等の木材害虫、その他すべての害虫に利用できることはいうまでもない。
【0021】
本発明に係る防虫消臭脱臭シートには、公知の害虫忌避剤、酸化防止剤、効力増強剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、溶剤、水、香料、着色剤、消臭剤、酸化チタンに代表される光触媒、蒸散性防カビ殺菌除菌剤、天然および合成植物精油、吸湿剤、吸水性ポリマー、昆虫成長制御ホルモン様物質、ジエチルトルアミド、インジケーター機能等を任意に加えることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、実施の形態を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらに限定されるものでないことはいうまでもない。
消臭脱臭剤、防虫剤をシート状基材に担持し、それらを組み合わせて下記表1に示す実施例1〜13の製剤を作成し、それらを形態に示す通り加工した。
【0023】
【表1】
Figure 0003903232
【0024】
同様に下記表2に示す比較例20〜30の製剤を作成し、それらを形態に示す通り加工した。
【0025】
【表2】
Figure 0003903232
【0026】
(試験例1)
実施例1〜13、比較例20〜30のそれぞれについて防虫効力試験を行った。
試験方法
各製剤をアルミラミネートフィルムを材質とする袋で密閉し、40℃にて1ケ月保管し、エージングを行う。その後、開封して25℃に設定された室内に放置する。
開封直後、3ケ月後、6ケ月後、12ケ月後に各製剤の切片(30×30cm)、衣料害虫(ヒメカツオブシムシ中令幼虫20頭)、羊毛布片をガラスシリンダー(内容積約20リットル)内に設置し、144時間後に羊毛布の食害量を計測し、食害阻止率を下式により算出する。
食害阻止率(%)=100−食害量(mg)/羊毛布初期重量(mg)×100
【0027】
試験結果を下記表3に示す。
【0028】
【表3】
Figure 0003903232
【0029】
表3から明らかなように実施例1〜13では12ケ月間にわたり十分な食害阻止(防虫効果)が得られているのに対し、比較例23〜30では初期以外はほとんど効力を得られていない。また、比較例20〜22では初期においても効力が得られていない。効力が得られない原因については定かでないが、エージング期間中の薬剤分解、又は吸着、試験開始後の薬剤分解又は吸着等が考えられる。また、害虫が製剤の切片を忌避したために、結果的に害虫と製剤が接触する機会が減少したものとも考えられる。
【0030】
(試験例2)
実施例1〜13,比較例23〜30のそれぞれについて消臭脱臭効力試験を行った。なお、比較例20〜22については防虫剤自体の臭気が強く、消臭脱臭剤としての効果が期待できないため消臭脱臭試験からは除外した。
試験方法
各製剤を25℃に空調された室内に吊下する。
吊下直後、3ケ月後、6ケ月後、12ケ月後に各製剤の切片(30×30cm)とタバコ臭を付着させた綿布片(30×30cm)とを密着し、24時間後に綿布の臭いの変化を官能にて評価する。臭い強度の評価は下記表4の基準によった。
【0031】
【表4】
Figure 0003903232
【0032】
試験結果を下記の表5に示す。
【0033】
【表5】
Figure 0003903232
【0034】
表5から明らかなように実施例1〜13では12ケ月間にわたり満足な消臭脱臭効力が得られているのに対し、比較例23〜29では初期の弱い効果以外はほとんど効力が得られない。比較例30は当然のことながら効果は全く無い。
【0035】
(試験例3)
実施例1〜13、比較例23〜30のそれぞれについて経時安定性試験を行った。
試験方法
各製剤をアルミラミネートフィルムを材質とする袋に密閉し、40℃の恒温槽内で保管する。
1ケ月後、3ケ月後、6ケ月後にシート状基材中の防虫剤残存量を有機溶剤にて抽出し、ガスクロマトグラフにて定量する。残存率を下表により算出する。
残存率(%)=防虫剤残存量(mg)/初期防虫剤量(mg)×100
【0036】
試験結果を下記表6に示す。
【0037】
【表6】
Figure 0003903232
【0038】
表6から明らかなように、実施例1〜13では6ケ月後でも十分な防虫剤残存率が得られているのに対し、比較例23〜29では残存率の低下が顕著である。ただし、蒸気圧が10−4mmHg(25℃)以上のもの(エムペントリン)ではわずかな残存率の低下がみられる。
【0039】
以上の試験結果から考察し、総合評価を以下の基準で判断した。総合評価を表7に示す。
【0040】
【表7】
Figure 0003903232

Claims (2)

  1. 活性炭、シリカゲル、活性アルミナ、ゼオライト、セラミックから選ばれた1つ以上の組み合わせからなる消臭脱臭剤を、シート状基材に5〜200g/m 担持させ、このシート状基材とは別のシート状基材にピレスロイド系防虫剤を5〜300mg/m 担持させ、その各シート状基材を積層したことを特徴とする防虫消臭脱臭シート。
  2. 前記シート状基材が紙、布、不織布、樹脂フィルムから選ばれた1つ以上の組み合わせを積層したものからなることを特徴とする請求項1記載の防虫消臭脱臭シート。
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