JP3726208B2 - エアゾール組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、殺虫成分を含有するエアゾール組成物の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、製剤の火災に対する危険性を軽減し、また環境問題の配慮から、水を配合した散布用水性殺虫剤や水性エアゾールに関して多数の提案がなされている。しかしながら、一般にその製剤化にあたっては、殺虫成分の疏水性を考慮し、均一な乳化安定性を得るためにアルコール等の水性有機溶剤を使用することが多かった。そして、これらの製剤は、水を含まない油性エアゾールに比べ、対象害虫の種類によっては殺虫効力面で劣る傾向があった。その理由は殺虫成分の害虫皮膚表面からの浸透性によるものと考えられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、引火性や爆発等に対する危険性を軽減し、しかも殺虫効力面で問題を生じないエアゾール組成物を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、特定の脂肪族炭化水素及び水、更に噴射剤の特定量を組み合わせた組成物を調製することによって目的を達成できることを知見し、本発明を完成した。
【0005】
すなわち請求項1の発明は、(a)殺虫成分、(b)界面活性剤、(c)炭素数が8〜16個の脂肪族炭化水素、及び(d)水を含有するエアゾール原液45〜85容量%と、(e)噴射剤15〜55容量%とからなるエアゾール組成物において、エアゾール原液中に、(a)殺虫成分が0.012〜6.7W/V%、(b)界面活性剤が0.1〜8.0容量%、(c)炭素数が8〜16個の脂肪族炭化水素が64〜83容量%、(d)水が15〜34容量%含有され、かつ、(c)炭素数が8〜16個の脂肪族炭化水素の(b)界面活性剤に対する比率が8〜200であるエアゾール組成物に係るものである。
【0006】
本発明で用いる(a) 殺虫成分としては、フェノトリン、ぺルメトリン、シフェノトリン、シペルメトリン、レスメトリン、フタールスリン、アレスリン、プラレトリン、フラメトリン、イミプロトリン、エトフェンプロックス等のピレスロイド系殺虫成分、シラフルオフェン等のケイ素系殺虫成分、有機リン剤等があげられる。有効性と安全性の点から、ピレスロイド系殺虫成分、シラフルオフェンが好ましく、化学構造中に不斉炭素あるいは二重結合等を含みこれに基づく光学異性体や幾何異性体等が存在する場合は、これらの各々または任意の混合物も本発明に含まれることはもちろんである。
殺虫成分は本発明エアゾール組成物全体量に対して0.01〜3.0W/V%配合される。0.01W/V%未満であると所望の殺虫効力が得られないし、一方、3.0W/V%を超えると乳化もしくは可溶化安定性の点で困難を伴う。
なお、前記配合範囲はエアゾール原液中に換算すると0.012〜6.7W/V%である。
【0007】
本発明で用いる(b) 界面活性剤としては、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンラウレート、ジグリセリルモノオレエート等を例示できるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
界面活性剤は、本発明エアゾール原液中に0.1〜8.0容量%配合されるのが適当である。0.1容量%未満であると十分な乳化もしくは可溶化性能が得られないし、一方8.0容量%を超えると殺虫効力に影響を及ぼすので好ましくない。
【0008】
本発明は、(c) 炭素数が8〜16個の脂肪族炭化水素を、エアゾール原液中に64〜83容量%配合したことに特徴を有する。64容量%未満であると害虫の皮膚浸透性が悪いため殺虫効力が低く、一方、83容量%を超えると乳化もしくは可溶化安定性を持続させるのが難しい。脂肪族炭化水素としては、n−パラフィン又はイソパラフィンがあげられるが、性能上n−パラフィンが好ましい。なお、本発明の特性を損なわない範囲において、他の種類の有機溶剤を使用してもよい。
また本発明では、所望の作用・効果を得るために、エアゾール原液中の(d) 水の配合量は15〜34容量%に設定される。15容量%未満であるとエアゾール原液における引火性の問題が解消されず、一方、34容量%を超えると殺虫効力の改善が難しい。
【0009】
更に本発明では、(c) 炭素数が8〜16個の脂肪族炭化水素の(b) 界面活性剤に対する比率が8〜200、より好適には10〜100に設定され、この範囲を採用することによって殺虫効力の改善の点でより有利となる。
【0010】
(e) 噴射剤としては、液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル、フロンガス、圧縮ガス(窒素ガス、炭酸ガス等)等があげられ、その配合量は爆発等に対する危険性を軽減するためエアゾール組成物全体量に対して15〜55容量%の範囲に抑えられる。なお、噴射剤の配合量を減らしたり、圧縮ガスを使用した場合、噴射圧の低下を招くことがあるので、その対策として例えば、プロパン/ブタン中のプロパン比率を高めた液化石油ガスを使用することは有用である。
【0011】
また、本発明エアゾール組成物には、殺虫成分以外に、殺ダニ剤、カビ類、菌類等を対象とした防カビ剤、抗菌剤や殺菌剤、あるいはピレスロイド系殺虫剤の共力剤、安定剤、香料、賦形剤等を適宜配合してもよい。殺ダニ剤としては、サリチル酸フェニル、3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメート等があり、一方、防カビ剤、抗菌剤や殺菌剤としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−(4−チアゾリル)ベンツイミダゾール、トリホリン、3−メチル−4−イソプロピルフェノール、o−フェニルフェノール等を例示できる。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の構成において、脂肪族炭化水素として、性能上好ましいn−パラフィンを用いたものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1又は2のいずれかの構成によると、エアゾール原液は非引火性であり、更に好ましくは噴射剤配合量を低減したので火災や爆発等に対する危険性が小さく、しかも種々の害虫に対して優れた殺虫効力を奏するエアゾール組成物が提供される。
通常、バルブ部分を装填した耐圧容器にエアゾール原液を入れた後、噴射剤を加圧充填し、使用が簡便なエアゾール剤を製造する。エアゾール剤は、その用途、使用目的、対象害虫等に応じて、適宜バルブ、噴口、ノズル等の形状を選択することができ、種々の実施の形態が可能である。
【0014】
こうして調製されたエアゾール組成物が有効な害虫としては、例えば、アカイエカ、ネッタイシマカ、ユスリカ類、イエバエ、チョウバエ、ブユ類、アブ類等の双翅目害虫、ゴキブリ類、アリ類、ヤスデ、ムカデ類、シロアリ類、コナダニ、チリダニ等の屋内塵性ダニ類等があげられ、その実用性は極めて高いものである。
【0015】
【実施例】
つぎに具体的実施例ならびに試験例に基づいて、本発明のエアゾール組成物を更に詳細に説明する。
【0016】
実施例1.
d−T80−レスメトリン 0.06g(エアゾール組成物全体量に対して、0.02W/V%)、d−T80−フタールスリン 0.45g(エアゾール組成物全体量に対して、0.15W/V%)、ソルビタンセスキオレエート主体の非イオン界面活性剤 2.4ml(エアゾール原液中、1.5容量%)、炭素数が 11 〜14個のn−パラフィン系脂肪族飽和炭化水素(商品名:デオトミゾール)125ml(原液中、78容量%)、及び水 30ml(原液中、19容量%)からなるエアゾール原液160mlをエアゾール容器に入れ、該容器にバルブ部分を取付け、該バルブ部分を通じて、液化石油ガスとジメチルエーテルの混合ガス140ml(エアゾール組成物全体量に対して、47容量%)を加圧充填して、本発明のエアゾール組成物を含むエアゾール剤を得た。
本発明で用いたエアゾール原液は、消防法の試験方法に基づく引火点が測定されず、火災に対する危険性は低いものと考えられた。一般に、水を配合したエアゾール剤は、水を含まない油性エアゾール剤に比べて低い殺虫効果を示すと言われているが、本発明のエアゾール組成物の効力は、同量の殺虫成分を含む油性エアゾール剤とほとんど遜色ないものであった。

【0017】
試験例1.
実施例1に準じて表1に示す各種エアゾール組成物を調製し、ガラスチャンバー法により殺虫効力試験を行った。即ち、60 cm 立方(0.216 m3) のガラスチャンバーにイエバエ(1群約 25 匹の雄雌成虫)を放った後、供試エアゾールを1秒間噴霧し、時間の経過に伴う仰転虫数を記録した。KT50値を求め、油性エアゾールに対する相対効力を表1に示した。また、クリーブランド開放式引火点測定器を用いてエアゾール原液の引火性を調べた。引火点が測定された場合を(+)、測定されなかった場合を (-)で示した。
【0018】
【表1】
Figure 0003726208
Figure 0003726208
【0019】
試験の結果、本発明のエアゾール組成物を構成するエアゾール原液は消防法の非危険物に該当し、エアゾール組成物としての引火性に対する危険性も非常に軽減された。また、殺虫効力についても対照の油性エアゾールに遜色なく極めて実用的であった。
これに対し、比較例2〜3のように、脂肪族炭化水素の配合量が少ない場合、相対効力が低下し好ましくなかった。また、比較例4〜5の如く、水の配合量が少ないと引火性の問題が解消されなかった。
【0020】
【発明の効果】
本発明は、引火性や爆発等に対する危険性を軽減し、しかも殺虫効力面で問題を生じないエアゾール組成物を提供する。

Claims (2)

  1. (a)殺虫成分、(b)界面活性剤、(c)炭素数が8〜16個の脂肪族炭化水素、及び(d)水を含有するエアゾール原液45〜85容量%と、(e)噴射剤15〜55容量%とからなるエアゾール組成物において、
    エアゾール原液中に、(a)殺虫成分が0.012〜6.7W/V%、(b)界面活性剤が0.1〜8.0容量%、(c)炭素数が8〜16個の脂肪族炭化水素が64〜83容量%、(d)水が15〜34容量%含有され、かつ、(c)炭素数が8〜16個の脂肪族炭化水素の(b)界面活性剤に対する比率が8〜200であることを特徴とするエアゾール組成物。
  2. (c)炭素数が8〜16個の脂肪族炭化水素が、n−パラフィンであることを特徴とする請求項1に記載のエアゾール組成物。
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