JP4767300B2 - 蛍光寿命測定方法および装置 - Google Patents

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Description

本発明は、蛍光寿命測定装置および方法に関し、より詳くは、蛍光物質固有の光学的特性である蛍光寿命をより速い測定時間内に正確に測定することができ、測定された蛍光寿命の空間的分布に基づいてイメージを構成する蛍光寿命イメージング顕微鏡などに適合した蛍光寿命測定装置および方法に関する。
分子は、電子転移(electronic transition)によって入射した光を吸収し、ある分子では、励起した電子が基底状態(ground state)に回復しながら光を発する蛍光現象を起こすようになる。さらに、各分子は、固有の吸収波長と蛍光放出波長を有しており、これらの間にはストークス・シフト(Stoke’s shift)とも呼ばれる数十ナノメートルの波長の差がある。すなわち、吸収された光の波長よりも多少長い波長の光が蛍光現象によって放出されるようになる。蛍光物質は、光の吸収波長と放出波長によって特色付けられるが、このような特性は古典的な蛍光顕微鏡の原理となる。
蛍光顕微鏡では、対象蛍光物質に吸収される波長の励起光(excitation light)を試料に照射し、この励起光よりも長い波長のストークス・シフトされた蛍光信号が試料の特定地点で収集されるのかをフィルムやCCD(charge−coupled device)のような配列形態の光感知器(photo−detector)を用いて検出してイメージを得る。特に、共焦点顕微鏡(confocal microscope)構造では、光増幅管(photo−multiplier tube:以下、PMTという)などを活用してイメージを得るようになる。
蛍光顕微鏡の応用では、主に試料自体が特定の蛍光を有する分子を内包していたり(自体蛍光、autofluorescence)、あるいは外部から蛍光体を注入して特定の部位にラベリング(labeling)することによってイメージを得るようになり、主に細胞のような生物学的試料の分子的分布を研究するときに活用される。最近では、3次元的イメージを得るために、共焦点顕微鏡、多光子励起顕微鏡(multi−photon excitation fluorescence microscope)などが開発されている。
既存の蛍光顕微鏡では、蛍光物質から出る蛍光の光の強度に基づいてイメージを構成することに過ぎなかったが、蛍光の光の強度以外により一層高等的な分光学的情報を収集してイメージを構成する方法が最近になって開発されている。特に、蛍光物質固有の光学的特性である蛍光寿命の情報は、蛍光物質が置かれた環境に対する一層詳細な情報を提供するために重要である。蛍光分子において、電子は、励起光によって励起された後に励起状態(excited state)で一定時間留まった後、確率的に基底状態で移転し、このときに蛍光光子を生成するようになる。時間上で電子の転移確率、すなわち蛍光光子の生成確率は、電子の励起がなされた時点を頂点として指数関数的減衰(exponential decay)曲線を描くようになる。この指数関数的減衰曲線の特性減衰時間を蛍光寿命とするが、これは多数の蛍光光子の生成時間を調査することによって測定される。
本来、蛍光寿命は、外部の干渉がなければ各蛍光分子の特性値であるが、蛍光寿命は、蛍光物質が置かれた周囲環境に応じて変化することができる。すなわち、各蛍光物質の特性に応じて特定イオンの濃度や酸素の濃度、酸度(pH)などによってその値が変化するようになる。したがって、このような蛍光寿命に対する情報を介して前記した変数の空間的分布を調査する方式の蛍光寿命イメージング顕微鏡(fluorescence lifetime imaging microscope:以下、FLIMという)が開発されている。このような蛍光寿命イメージング顕微鏡は、既存の蛍光顕微鏡を介して得ることができなかったり不正確だった環境情報を正確に得ることができるという長所を有する。さらに、共焦点顕微鏡方式と結合した共焦点FLIMは、このような蛍光寿命に基づいた情報を3次元的分解能で得られるようになり、いわゆる「4次元イメージング」を可能にする。
一方、多光子励起蛍光顕微鏡と共焦点顕微鏡を含むスキャニング顕微鏡(scanning microscope;走査顕微鏡)では、瞬間ごとに空間上の一地点に対する測定がなされ、測定地点がスキャンされることによって、イメージ情報が順次に取得されるようになる。共焦点顕微鏡において、測定は、顕微鏡の対物レンズの焦点(focus)でなされるようになるが、この焦点は、対物レンズに入射するビームの方向や試料自体の動きによって空間的にスキャンされるようになる。また、共焦点顕微鏡の場合には、単に焦点から対物レンズに再入射した光のみが光感知器に到着できるように、ピンホール(pinhole)のような空間フィルタを有する。多光子励起蛍光顕微鏡の場合には、多光子励起現象が非線形光学現象であって、単に高い光強度を有する焦点でのみ効果的に起こるという点によって、ピンホールがなくても同じ効果を得られるようになる。
共焦点顕微鏡のこのような特性のため、共焦点顕微鏡に基づいたFLIMの蛍光寿命測定器具は、時分解分光学(time−resolved spectroscopy)の蛍光寿命測定器具と大きく相違しない。古典的な時分解分光学において、蛍光寿命の測定は、時間−相関光子計数器(time−correlated single photon counting:以下、TCSPCという)や位相蛍光測定器(phase fluorometer)を主に用いる。共焦点顕微鏡にこのような蛍光寿命測定器具を光検出システムとして採用することによって、共焦点FLIMシステムが具現されるようになる。
蛍光寿命の測定は、同じ蛍光寿命を有する多数の蛍光分子が生成させた多数の光子や、1つの蛍光分子が多数回の励起によって生成させた多数の光子を対象としてなされる。概念的に、これは、時間軸で指数関数的減衰の形状を備えた蛍光波形を分析する過程である。もし、無限に近い蛍光光子が収集されたとすれば、得られる蛍光波形は、指数関数的減衰の形状を備えた蛍光の確率分布関数と同じになるであろう。極めて短いパルス幅を有する励起光照射がt=0時間になされるときに、これに伴って生成される蛍光の強度あるいは蛍光光子密度、I(t)は、
Figure 0004767300
の分布を有する。このとき、Iは初期値であり、τは蛍光寿命を意味し、u(t)関数はt<0であるとき0、t≧0であるとき1である階段関数を示す。すなわち、蛍光寿命は、蛍光光子の放出確率が初期値に比べて1/eだけ減少する時間を意味する。顕微鏡応用で活用される蛍光物質の蛍光寿命は、大部分0.1から5nsの範囲を有する。
TCSPCは、PMTやAPD(avalanche photo diode)のような高い信号利得を有する光感知器を用いて単一光子による応答を感知する。単一光子による応答パルスの形状が時間軸でどれくらい長い幅を備えるのかとは関係なく、単一光子の到着時間は精密に測定される。これを用いれば、0.1ナノ秒水準の蛍光寿命も測定できるようになる。もし、測定時ごとに単一光子だけが感知されれば、測定された単一光子応答の上昇エッジ(rising edge)の到着時間を検出することによって、単一光子の到着時間を測ることができる。原則的に、測定された到着時間の精密性は、光感知器の出力パルス幅とは関係ない。ただし、このような高利得の光感知器が有する原理上の問題として、通過時間拡散(transit time spread:TTS)の問題がある。PMTの場合は、通常、TCSPCでアナログインパルス応答パルス幅に比べて5倍水準の時間測定精密性を示す。このような方法で計数された単一光子の到着時間は、デジタル方法によって時間軸度数分布表(histogram)を描くのに活用され、数百から数千回以上計数された後には、度数分布表を蛍光光子放出の確率分布関数(PDF:probability distribution function)と見なし、指数減衰関数(exponential decay funiction)としてフィッティング(fitting)して蛍光寿命を計算する。度数分布表を分析して蛍光寿命を求め出すさらに他の分析方法としては、平均遅延計算法がある。指数的減衰関数の特性に基づいてその時間平均値、すなわち平均遅延の大きさは蛍光寿命の値と同じであり、この点を用いて度数分布表上の関数を分析することもできる。
TCSPCは、高感度の安定的な測定方法であって、時分解分光学とFLIM分野で多様に活用されている。しかしながら、TCSPCでは、根本的に単一光子係数方法が有する測定時間における制約問題が表れる。TCSPCでは、単に1つの光子のみが測定周期ごとに計数されるが、励起光パルスによって多数の蛍光分子から多数の蛍光光子が生成されても、計数器で計数される光子は各パルス別に1つだけとなるように意図的にその強度を減らさなければならない。もし、測定周期内に2つ以上の光子が計数器によって感知されれば、特に2つの光子の到着時間が2つのパルスに分解できないほど近ければ、計数器は単に先に到着した光子の値だけを計測し、これにより信号の損失が発生し、測定された蛍光寿命は実際の値よりも短くなる。
このような「単一光子条件」のため、TCSPCにおける蛍光寿命測定は、多数の励起光パルスが入射して多数回の光子係数がなされた後に完了するようになる。さらに、励起光パルス間の時間間隔は、測定しようとする蛍光物質の蛍光寿命よりも十分に長くなければならない。もし、励起光パルス間の時間間隔が蛍光寿命と類似した水準になれば、時間上で隣接した2つの蛍光発光の波形が互いに重なり、正確な値を得ることができなくなる。蛍光寿命の正確な測定のためには、励起光のパルス周期が蛍光寿命τの5倍以上となる必要がある。このため、もし測定する蛍光寿命が5nsであれば、励起光パルス周期は25nsよりも長くなければならず、パルス周期ごとに1つだけの蛍光光子が計数されるという条件で、光子係数の周期は40MHz(40×10光子/秒)よりも小さいであろう。実際には、無作為的特性を備えた蛍光光子の発光および計測確率のためにこのような単一光子条件を確実に満たすためには、周期ごとに計測される平均光子の数が1/10以下となることによって2つ以上が同時に計測される確率が1/100水準以下に制限され、正確な蛍光寿命の測定がなされるようになる。これに伴い、計測することができる最大光子計測率は4MHzよりも小さくなる。さらに、度数分布表を作成して蛍光寿命を得るためには、最小100個程度の光子が計測されなければならないという点を考慮すれば、蛍光寿命を最終的に決定するための時間は25マイクロ秒以上となる。
このような時間制約は、TCSPCを蛍光寿命測定機器として用いるFLIM共焦点顕微鏡のイメージ取得時間の上限を決定するようになる。顕微鏡イメージは、通常100万ピクセル程度で構成される。1ピクセルに対して蛍光寿命を測定するのに25マイクロ秒がかかるため、1枚のFLIMイメージ全体を取得するのにかかる時間は25秒以上となる。さらに、3次元イメージングは、対物レンズの焦点を垂直に移動していき、取得した2次元イメージを結合して得られる。もし、100枚の2次元イメージを取得して1つの3次元イメージを得ようとすれば、測定時間は2500秒以上となり、40分以上の時間を消耗するようになる。すなわち、最も理想的な条件でさえも、TCSPCを用いた蛍光寿命測定によるイメージを得るためには極めて長い測定時間を必要とするし、特に3次元イメージングでは、ほぼ1時間以上の時間が必要となる。動的な活動がある生きている生物体を詳察しようとするときには、このような処理時間は大きい制約にならざるを得ない。
このように、既存の蛍光寿命測定技術の問題により、1ns以下の短い蛍光寿命を正確に測定すると同時に、測定時間が1マイクロ秒以下と高速FLIMを支持しつつ、信号処理が単純であり、究極的にはリアルタイム信号処理が可能な性格を有する技術は未だに開発されずにいる。これにより、FLIM共焦点顕微鏡は、3次元イメージ分野や動的な活動を示す試料の高速連続撮影に活用することができず、低速のイメージ取得分野にのみ限定されてきた。
本発明が解決しようとする技術的課題は、蛍光寿命をより早い時間に単純な計算によって正確性かつ精密性を有して測定することができ、測定された蛍光寿命の空間的分布に基づいてイメージを構成する蛍光寿命イメージング顕微鏡などに適合した蛍光寿命測定装置を提供することを目的とする。
また、本発明が解決しようとする他の技術的課題は、蛍光寿命をより早い時間に単純な計算によって正確性かつ精密性を有して測定することができ、測定された蛍光寿命の空間的分布に基づいてイメージを構成する蛍光寿命イメージング顕微鏡などに適合した蛍光寿命測定方法を提供することを他の目的とする。
前記技術的課題を解決するために、本発明に係る蛍光寿命測定装置は、蛍光分子を含む試料に照射するパルス型励起光を発生させる励起光発生部と、前記励起光を前記試料に照射して生成される蛍光光子を収集する蛍光光子収集部と、前記収集された蛍光光子をパルス型電気信号である蛍光電気信号に変換する光感知部と、事前に決定された装置遅延時間に対する相対的時間遅延であり、前記変換された蛍光電気信号の時間平均値、すなわち平均時間を求めて試料の蛍光寿命を決定する蛍光寿命信号処理部とを備えることを特徴とする。
ここで、前記励起光発生部によって発生した励起光を前記光感知部が変換して生成されるようにされた基準電気信号に対し、前記蛍光寿命信号処理部が基準電気信号の時間平均値、すなわち平均時間を求めて前記装置遅延時間が決定されることができる。
また、既決定された蛍光寿命を有する物質を前記試料として用い、前記蛍光寿命信号処理部が前記既決定された蛍光寿命と同じ値で蛍光寿命を決定するようにして装置遅延時間を決定することができる。
また、前記基準電気信号の平均時間は、前記蛍光寿命の計算以前に前記光感知部と前記蛍光寿命信号処理部を介して予め求められる。
また、前記励起光発生部は、パルス形態の励起光を生成する励起光源と、前記生成された励起光を集光して前記試料に照射するための対物レンズとを備えることができる。
また、前記蛍光光子収集部は、前記生成される蛍光光子を収集する蛍光光子収集レンズと、前記励起光が前記光感知部に受光されることを防ぐための励起光除去フィルタとを備えることができる。
また、前記基準電気信号は、前記試料および前記励起光除去フィルタが除去された状態で発生した励起光が前記光感知部で変換された結果生成されることができる。
また、前記蛍光寿命信号処理部は、前記光感知部で変換された前記蛍光電気信号および前記基準電気信号を測定する信号測定部と、前記蛍光電気信号の平均時間と前記基準電気信号の平均時間を計算し、その差を蛍光寿命として決定する蛍光寿命計算部とを備えることができる。
また、前記蛍光寿命測定装置は、光信号分離器および励起光反射器をさらに備え、前記励起光は、前記光信号分離器を介して前記試料と前記励起光反射器に分岐され、前記基準電気信号は、前記励起光反射器に分岐された励起光が前記励起光反射器で反射して前記光感知部で変換された結果生成される電気信号であり得る。
また、前記蛍光寿命測定装置は、前記試料に分岐された励起光あるいは励起光反射器に分岐された励起光を遅延させるための光ファイバ基盤の光信号遅延経路として光ファイバ遅延部をさらに備えることができる。
また、前記励起光発生部は、パルス形態の励起光を生成する励起光源と、前記励起光を集光して前記試料に照射するための対物レンズとを備えることができる。
また、前記蛍光光子収集部は、前記試料から生成される蛍光光子を収集する蛍光光子収集レンズを備えることができる。
また、前記光感知部は、前記励起光反射器から伝達される励起光および前記収集された蛍光光子をそれぞれ前記蛍光電気信号および前記基準電気信号に変換することができる。
また、前記蛍光寿命信号処理部は、前記光感知部で変換された前記蛍光電気信号および前記基準電気信号を測定する信号測定部と、前記蛍光電気信号の平均時間と前記基準電気信号の平均時間を計算し、その差を用いて蛍光寿命として決定する蛍光寿命計算部とを備えることができる。
上述した本発明に係る蛍光寿命測定装置および方法によれば、蛍光寿命をより早い時間に単純な計算によって正確性かつ精密性を有して測定することができる。本発明に係る蛍光寿命測定装置および方法は、測定された蛍光寿命の空間的分布に基づいてイメージを構成する蛍光寿命イメージング顕微鏡などに適合し、特に蛍光寿命イメージング顕微鏡で3次元のイメージを取得するのに必要な蛍光寿命測定装置および方法を提供することができる。
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。以下、説明および添付の図面で実質的に同一する構成要素は、それぞれ同一する符号で示すことで重複説明を省略する。また、本発明の説明において関連した公知機能あるいは構成に対する具体的な説明が本発明の要旨を不必要に不明確にすると判断される場合には、それに対する詳細な説明は省略する。
まず、本発明の好ましい実施形態の説明に先立ち、本発明に係る蛍光寿命の測定原理について説明する。
蛍光寿命を測定する最も直観的な方法は、短いパルス形態の励起光を試料に入射させ、放出する蛍光の時間波形を高速の光感知器を介して測定する方法である。短いパルス幅を有する励起光には、パルス型レーザを用いれば良い。しかしながら、蛍光の強度は通常極めて小さく、極めて大きい信号増幅能力を備えたPMT(photo−multiplier tube)やAPD(avalanche photo diode)を用いなければならない。さらに、このような光感知器の応答速度は遅い方なので、特に1ナノ秒以下の短い蛍光寿命を測定するには無理がある。なぜなら、光感知器を介して測定された波形は、蛍光の指数関数減衰波形に光感知器の応答が次の数学式のようにコンボリューション(convolution)されているためである。
Figure 0004767300
IRF(t)は、励起光と光感知器のような蛍光寿命測定装置の全体応答を意味し、蛍光現象と関係のない装置固有の値であって、事前に測定が可能である。したがって、光感知部で検出された波形は、蛍光本来の指数関数減衰関数、I(t)とIIRF(t)のコンボリューションであり、Tだけ遅延した形態で表れるようになる。このように検出された波形が蛍光減衰関数とほぼ同一になるためには、IRFが時間軸で短いパルス波形形態を帯びなければならない。しかしながら、大部分の場合は、IRFは無視することができず、正確な蛍光寿命測定を妨害するようになる。すなわち、PMTやAPDに対してIRF波形の幅は、通常1ns以上である。したがって、FLIM応用で非常に長い方である5nsの蛍光寿命を測定するときでさえも、IRFによって引き起こる正確性の低下は、無視することができない。さらに、IRF波形の幅よりも短い蛍光寿命の測定は、ほぼ不可能となる。
測定されたアナログ波形からIRF波形の寄与を除去する方法として、フーリエ領域デコンボリューション(Fourier−domain deconvolution)を用いた方法を考慮できるであろう。この方法では、測定されたアナログ波形I(t)とIRF波形IIRF(t)をフーリエ変換を介して周波数領域でそれぞれI(f)とIIRF(f)に変換する。そして、I(f)/IIRF(f)を計算した後に逆フーリエ変換を実行すれば、フーリエ変換とコンボリューションの数学的特性によってI(t)だけが残るようになる。これは、フーリエ変換された周波数領域でコンボリューション関係が単純な乗算関係で変換されるためである。このようなデコンボリューション方法を介してIRFの寄与を最小化することができる。
逆フーリエ変換を実行せずに周波数領域ですぐに蛍光寿命を計算する方法を考慮することもできる。これは、位相蛍光測定器(phase fluorometer)の原理でもある。周波数領域において、蛍光寿命は、複素関数I(f)の絶対値の大きさあるいは位相成分の分析を介して得ることができる。これは、時間領域において測定結果を指数関数減衰曲線として曲線フィッティング(curve fitting)するのと同じように、周波数領域で指数関数減衰曲線の周波数領域表現曲線として曲線フィッティングしたものと解説することができる。位相成分のみで蛍光寿命を計算するフーリエドメイン位相値蛍光寿命測定方法は次の通りである。もし、ある周波数fに対して複素関数I(f)の位相成分とIIRF(f)の位相成分との差をθとすれば、蛍光寿命は、
Figure 0004767300
と示されるようになる。したがって、高い信号対雑音比を有する有効周波数範囲内で測定結果を上記関数で曲線フィッティングすれば、正確な蛍光寿命を見出せるであろう。このような方法によって測定された結果をフーリエ変換を介して周波数領域に変換すれば、IRFの寄与は単純な乗算(絶対値に対して)や加算(位相に対して)のような代数的関係で表れるようになり、IRFの寄与を容易に除去できるようになる。
しかしながら、このような方法は、フーリエ変換という演算量が多い性格の数学的変換に依存するようになる。フーリエ変換は、FFT(fast Fourier transformation)のような高速化アルゴリズムが開発されてはいるが、リアルタイム的に処理するには高演算量の過程である。このような問題は、古典的な位相蛍光測定器(phase fluorometer)でミキサ(mixer)に基づいたアナログ位相測定器を用いて迂回される。しかしながら、アナログ回路に依存した方式にはアナログ特有の測定エラーがあり、位相測定器の帯域幅問題などによってその測定速度にも制約が伴う。さらに、測定結果の正確性は、光漂白効果(photo−bleaching effect)のような問題によって劣化する。
上記したように、本発明に係る本発明が解決しようとする技術的課題のうち、蛍光寿命測定の高速性を得るためには、TCSPCでのような単一光子による応答でなく、多数の蛍光光子によって引き起こされたアナログ形態のパルス電気信号を処理して蛍光寿命を決定しなければならない。上述したように、このときには、PMTなどのような光感知器の制限された速度の応答による寄与、すなわちIRF波形の歪曲を考慮しなければならない。したがって、本発明のさらに他の技術的課題である蛍光寿命測定の正確性を得るためには、IRFに対する寄与を除去する属性を備えた信号処理の過程を介して蛍光寿命を決定しなければならない。また、これはフーリエ変換基盤アルゴリズムとは異なり、単純かつ高速演算が可能な形態でなければならない。
IRFに対する寄与を除去する行為は、光感知器から測定されたパルス電気信号が蛍光発光現象の固有の指数関数減衰曲線(exponential decay curve)とIRF波形がコンボリューション(convolution)されており、ここでIRF波形の寄与を除去するという点において、デコンボリューション過程(deconvolution process)と一般的に呼ぶことができる。さらに、デコンボリューション過程の本質は、積分の結合形態であるコンボリューション関係が乗算や加算の単純な代数的関係(algebraic relation)で変換されるある信号処理の領域を探し、この信号処理の領域でIRFの寄与分を代数的に除去し、純粋な蛍光発光の指数関数減衰曲線による寄与のみで蛍光寿命を決定するものと解説することができる。さらに、上述したように、フーリエ変換は、時間軸でコンボリューション関係を周波数軸で代数的関係に転換するという点において良い例となるであろう。
本発明に係る蛍光寿命の測定は、平均時間領域で蛍光寿命を決定してデコンボリューション過程を減算過程で実行するようになる。上述したように、無限の個数の蛍光光子が生成するパルス電気信号は、そのうちの個別的な1つの蛍光光子に対して再び個別的なパルス電気信号、すなわち量子力学的に単位電荷量(電子の電気量)が後述する蛍光寿命信号処理部に到着する時間上の確率分布関数(probability distribution function:以下、PDFとする)と解説することができる。さらに、ランダム(random)信号に対して確率分布関数のコンボリューションは、各確率分布関数に対応する個別ランダム変数(random variable)の合となる。したがって、上記した数学式1によって次の数学式が成立する。
Figure 0004767300
ここで、M、E、F、Pは、それぞれI(t)、I(t)、I(t)、I(t)をPDFと見なしたときにそれぞれに対応する時間ランダム変数である。Tは、光経路による固定的遅延時間として決定された固定変数である。具体的に、Mは蛍光寿命信号処理部に到着する電子の到着時間、Eは励起光パルスの0でないパルス幅によって引き起こされる確率的吸収時間、Pは0でない光感知器のインパルス応答によって引き起こされる確率的電子の到着時間、Fは蛍光分子1つが蛍光光子1つを放出するのにかかる確率的遅延時間を意味する。1つの蛍光光子とこれによって引き起こされた1つの信号電子に対して、E、F、Pは確率的なランダム変数であったり、またはそのように見なされる。ランダム変数間に加算関係が成立すれば、そのランダム変数に対する期待値(expectation value)、すなわち平均値に対しても加算関係が成立する。すなわち、ランダム変数Tに対してその期待値をE[T]と表記すれば、時間に対する平均値、すなわち平均時間は次の数学式によって定義される。
Figure 0004767300
ここで、A(t)は、時間ランダム変数Tに対する時間確率分布関数を示す。積分区間TとTは、A(t)関数の0でない時間領域で設定されなければならない。蛍光発光の指数関数的減衰曲線に対しては、数学的に陽の無限大まで関数が0に到達しないが、十分に大きい積分区間に対して十分に正確な期待値を得ることが可能である。例えば、指数関数的減衰曲線における積分は、特定時相数τの5倍、すなわち減衰曲線最高値のe−5の大きさになる時間までの積分は陽の無限大までの理想的積分値の99.3%に至るようになり、十分な正確性を有すると見なすことができる。したがって、それ以上の時間に対しての積分とは大きい差がなくなる。これにより、本発明においては、有限な積分区分によって得た積分値を十分に正確な平均時間値として見なす。
前記数学式2から期待値演算の線形性にしたがい、平均時間に対して次の数学式が成立する。
Figure 0004767300
前記数学式に示すように、測定しようとする蛍光寿命τ、すなわちE(F)は、測定されたパルス電気信号波形の平均遅延時間E[M]から装置遅延時間である{E[E]+E[P]+T}を減算する方式で計算することができる。ここで、装置遅延時間は、蛍光発光現象とは関係ないものであり、測定装置システムの固有な特性値として理解することができる。
前記装置遅延時間は、多様な方法で計測あるいは計算することができる。最も原初的な方法としては、装置の各構成要素の平均的遅延時間を個別的に評価し、さらに各構成要素の伝達距離による時間遅延を計算して総合算する方法で求めることができる。この場合には、個別的評価と計算過程において多くの誤差が累積されるため実用的だとは言えない。これとは別途に、他の蛍光寿命測定方法によって正確に求められた蛍光試料の周知の蛍光寿命に対し、前記方法で測定した蛍光光子から引き起こったパルス電気信号波形に基づいて計算された平均遅延時間E[M]に対して減算を行うことで、最終的に決定された蛍光寿命を周知の蛍光寿命と同じように生成する装置遅延時間を決定することが可能である。
本発明が提案する簡単かつ正確な装置遅延時間の決定方法は、蛍光寿命が0と見なされる蛍光試料やこれに対応するものとして見なされる非蛍光現象の試料を用いて得られた光電変換したパルス型電気信号あるいは蛍光試料を用いずに、励起パルス光が直接光感知器に到達して得られるようになる光電変換したパルス型電気信号の平均遅延時間を計算し、これを装置遅延時間として決定する方法である。以下、このように蛍光寿命が0である場合に対応し、光感知器を介して得られた電気信号を「基準電気信号」と表現する。また、これに対応するように測定試料の蛍光現象を経て得られた電気信号を「蛍光電気信号」と表現する。
基準電気信号は、数学式4でF=0である場合に取得されたMに対応し、その期待値であるE[M]は、測定装置の経路変化がなければ{E[E]+E[P]+T}となる。すなわち、基準電気信号は、測定装置システムのIRFと同じ意味を有する。これにより、正確な装置遅延時間を基準電気信号の平均時間によって求めることができるようになる。もし、基準電気信号を得るための光学的および電気的経路が蛍光電気信号を得るための経路と固定的な差を有するとすれば、この差だけを計算上で引いて正確な装置遅延時間を求めることができるようになる。
本発明が提示する蛍光寿命測定方法は、上述したように光感知器を介して光電変換したアナログパルス波形の蛍光電気信号の平均遅延時間を測定して蛍光寿命を決定することを特徴とする。このような測定方法は、単一光子係数器基盤のTCSPCで測定された波形を分析するために、平均遅延時間を信号分析方法で用いる方法と類似するように見えることがある。しかしながら、TCSPCでは、純粋な波形分析の方法でのみ平均遅延時間を計算し、本発明が提示するように平均遅延時間が有するデコンボリューション特性を用いずに、単にTCSPC固有の高い時間分解能に依存する。これにより、本発明は、多数の蛍光光子によって生成されたアナログ波形を用いて平均遅延時間を計算するという点、またはこれによって多数の蛍光光子を同時に光感知して短時間内に測定を完了することができるという点において、TCPSC方法とは差別化される。
図1は、本発明に係る蛍光寿命の測定を説明するための1対の概念的グラフである。ここで、上側に配置されたグラフは装置応答関数、すなわち基準電気信号IIRF(t)を、下側に配置されたグラフは蛍光電気信号I(t)を示す。図1を参照すれば、装置応答関数IIRF(t)の時間平均<t>IRFは上述した装置遅延時間を示し、蛍光発光によって光感知器で得られる波形I(t)の時間平均<t>Mは上述した平均遅延時間を示す。このとき、装置応答関数と光感知器で得られる波形の開始点は同じでなければならない。図1に示すような2つの波形の平均時間の差を用いれば、E[F]すなわち蛍光寿命τを求められるようになる。
図2は、本発明の一実施形態に係る蛍光寿命測定装置を示すブロック図である。
図2を参照すれば、励起光発生部100は、蛍光分子を含む試料Sに照射する励起光を発生するモジュールであり、パルス形態の励起光を生成する励起光源110と、生成された励起光を集光して試料Sに照射するための対物レンズ120とからなる。
蛍光光子収集部200は、試料Sに照射して生成される複数の蛍光光子を収集するモジュールであり、試料から生成された複数の蛍光光子を収集する蛍光光子収集レンズ210と、励起光が後述する光感知部300に受光されることを防ぐための励起光除去フィルタ220とからなる。
光感知部300は、蛍光光子収集レンズ210で収集されて励起光除去フィルタ220を通過した蛍光光子を蛍光電気信号に変換する。光感知部300としては、例えば、PMT(photo−multiplier tube)やAPD(avalanche photo diode)を用いることができ、この場合、変換した蛍光電気信号の光電子(photo−electron)の数が増大して信号の大きさが増幅する。
蛍光寿命信号処理部400は、光感知部300で変換された電気信号を用いて蛍光寿命を求めるモジュールであり、光感知部300で変換された電気信号を測定する信号測定部410と、測定された結果に基づいて蛍光寿命を計算する蛍光寿命計算部420とからなる。ここで、信号測定部410としては、アナログ回路に依存した方法で計算することもできるし、アナログ波形をアナログ−デジタル変換器によってデジタル情報に転換した後、後述する蛍光寿命計算部によってデジタル演算で計算することもできる。デジタル演算方法の場合、信号測定部はアナログ−デジタル変換器で具現される。
蛍光寿命計算部420は、信号測定部410で測定された蛍光電気信号の平均時間と、励起光が試料Sを通らずに直接に光感知部300に到達して変換された基準電気信号の平均時間との差を用いて蛍光寿命を計算する。前記基準電気信号は上述したI(t)に該当し、その平均時間は上述した平均遅延時間に該当し、前記基準電気信号は上述した装置応答関数IIRF(t)に該当し、その平均時間は上述した装置遅延時間に該当するようになる。
本実施形態において、前記基準電気信号の平均時間は、蛍光寿命の計算とは独立して測定および計算され、蛍光寿命の決定以前になされなければならない。基準電気信号は、試料Sと励起光除去フィルタ220を除去して励起光が光感知部300に直接に到達するようにし、このとき光感知部300で変換された電気信号を信号測定部410で測定し、蛍光寿命計算部420でその平均時間を求めることによって測定される値である。
以下、論議の単純化のために、測定された蛍光電気信号および基準電気信号は0の値でない有効な電気信号の領域が時間軸基準点(t=0)の右側にくるように設定されたものと仮定する。もし、このようになるように電気信号が時間上で移動したデータであれば、移動の大きさを計算した後に減算してその正確な平均時間を求めることができるようになる。
蛍光寿命計算部420において、前記第1電気信号の平均時間E[t]は、次の数学式を用いて計算される。
Figure 0004767300
ここで、A(t)は前記第1電気信号を示し、Tは積分区間であって、蛍光寿命測定の要求される正確度に応じて特定値で設定することができる。
また、蛍光寿命計算部420において、前記基準電気信号の平均時間E[t]は、次の数学式を用いて計算される。
Figure 0004767300
ここで、B(t)は前記基準電気信号を示し、Tは前記数学式5における積分区間と同じ値である。
蛍光寿命計算部420は、上記のように計算された蛍光電気信号の平均時間と基準電気信号の平均時間との差、E[t]−E[t]を最終測定された蛍光寿命として決定する。
図3は、本発明の他の実施形態に係る蛍光寿命測定装置を示すブロック図である。本実施形態に係る蛍光寿命測定装置は、図2とは異なり、蛍光電気信号と基準電気信号を同時に測定し、このために基準電気信号発生のための励起光を分離し、このような励起光を別途の準備された経路を介して光感知器に到達するようにする。このとき、光感知器に到達するパルス型の励起光と蛍光が互いに時間的に区分されるように一側にのみ選択的に時間的遅延効果を加えるようになる。このような具現方法では、基準電気信号の測定が蛍光電気信号の測定と時間的に完全に分離されて表れる時間的変化による測定誤差を最小化することができる。
図3を参照すれば、パルス形態の励起光を生成する励起光源110と、励起光を純粋に短波長化する目的の第1帯域フィルタ130と、励起光を試料Sに視準するための励起光視準レンズ140と、励起光を集光して試料Sに照射するための対物レンズ120とが、蛍光分子を含む試料Sに照射する励起光を発生する励起光発生部をなしている。
また、試料から生成した複数の蛍光光子を収集する蛍光光子収集レンズ210と、収集された蛍光光子を低い損失で通過させ、励起光は高い損失で相対的に少ない量のみを通過させる第2帯域フィルタ180とが、試料Sに照射して生成される複数の蛍光光子を収集する蛍光光子収集部をなしている。
一方、光ファイバカプラ170は、帯域フィルタ130を通過した励起光を、試料Sに照射する励起光と後述する励起光反射器160で反射する励起光とに分離し、試料S側に分離した励起光は、光ファイバ遅延部150を通過しながら所定の時間遅延を経るようになる。
本実施形態によれば、光ファイバカプラ170で分岐された励起光のうちの1つは、光ファイバ遅延部150、励起光視準レンズ140と対物レンズ120を通過して試料Sに照射され、これによって発生した複数の蛍光光子が蛍光光子収集レンズ210によって収集され、光ファイバカプラ170を再び通過して第2帯域フィルタ180に入力される。また、励起光反射器160は、光ファイバカプラ170で分岐された励起光のうちの他の1つを反射させ、反射した励起光も光ファイバカプラ170を再通過して第2帯域フィルタ180に入力される。したがって、試料Sから発生した複数の蛍光光子と励起光反射器160で反射した蛍光光子は、上述した光ファイバ遅延部150によって所定の時間遅延を有して第2帯域フィルタ180に入力される。そして、第2帯域フィルタは、励起光に対して選択的に損失を加えて励起光の強度が蛍光の強度と類似した水準になるようにし、蛍光と励起光を後述する光感知部に伝達する。
光感知部300は、帯域フィルタ180を通過した、励起光反射器160で反射した励起光と、これよりも所定の時間遅延をおいて遅く入力される試料Sからの多数の蛍光光子をそれぞれ電気信号に変換する。したがって、光感知部300では、時間的に分離した2つのパルス電気信号、すなわち蛍光光子収集部で収集された蛍光光子が変換された電気信号と、励起光反射器160で反射した励起光が変換された電気信号が生成される。ここで、前者は図2で説明した蛍光電気信号に該当し、後者は基準電気信号に該当する。
また、光感知部からの電気信号、すなわち蛍光電気信号と基準電気信号を測定する信号測定部410と、測定された結果に基づいて蛍光寿命を計算する蛍光寿命計算部420とが、蛍光寿命信号処理部をなす。蛍光寿命計算部420は、蛍光電気信号の平均時間を上記した数学式5によって計算し、基準電気信号の平均時間を上記した数学式6によって計算した後、その差を蛍光寿命として決定する。
図3の実施形態は、パルス形態の蛍光電気信号と基準電気信号が相互間に時間遅延によって分離された状態でほぼ同時に測定されるという点と、このために基準電気信号発生のための励起光は、その一部が他の経路によって光感知部に到達するようになるということを特徴とする。具体的な具現方法においては、多様な改良が可能であろう。図3の実施形態では、光ファイバを用いて装置の構成と連結を便利にしたが、光ファイバを用いずに同じ効果を得ることができる。特に、光ファイバカフラは一形態の光信号分離器であり、他の種類の光信号を分離する器具、例えばビームスプリッタ(beam splitter)などによって代替することができる。一方、光ファイバ遅延部は、図3のように試料側の経路に設定されることもできるが、励起光反射器側の経路に設置されて前記基準電気信号が前記蛍光電気信号よりも時間的に遅く光感知部に到達するように具現されても問題ない。
上述した図2と図3の実施形態において、光学フィルタの使用は、本発明の具現において必須的でない場合もある。図3の第1帯域フィルタは、励起光源が励起光以外に波長帯域において無視できない水準の雑音要素を含む場合にのみ必須的である。また、図2の励起光除去フィルタは、光学的器具構成などの方法によって励起光が光感知部に到達できないように具現された場合には、その使用が必須的でない。
図4は、上述した図3に係る実施形態にしたがってAlexa Fluor 633という蛍光染料を試料とし、信号測定部410で測定された蛍光電気信号の波形A(t)と基準電気信号の波形B(t)の例を示したグラフである。この蛍光染料は、635nmの吸収波長と650nmの放出波長を有し、20℃の水に希釈されているときに3.2nsの蛍光寿命を有する。図4を参照すれば、図3に関して説明したように、所定の時間遅延をおいて測定された蛍光電気信号の波形A(t)と基準電気信号の波形B(t)とをそれぞれ示している。もちろん、図2に係る実施形態によって第1電気信号と第2電気信号を個別的に測定しても、図4に示したような波形を得ることができるであろう。蛍光寿命計算部420では、図4に示すように、測定された各波形の平均時間を計算し、その差を蛍光寿命として決定することができる。
図5は、上述した本発明によって前記蛍光染料を試料として測定された蛍光寿命と、フーリエドメイン位相差測定方法を用いて測定された蛍光寿命に対する標準偏差を比較した結果を示す図である。本発明によって測定された蛍光寿命は3.27nsであり、フーリエドメイン位相差測定方法を用いて測定された蛍光寿命は3.22nsであり、本発明によって測定された蛍光寿命とフーリエドメイン位相差測定方法を用いて測定された蛍光寿命はほぼ類似した結果を示した。また、図5に示すように、蛍光光子の数による蛍光寿命の標準偏差を測定した結果でも、本発明によって測定された蛍光寿命の標準偏差の変化とフーリエドメイン位相差測定方法を用いて測定された蛍光寿命の標準偏差の変化も大差がないことが分かる。このような結果は、本発明に係る蛍光寿命の測定がその正確度と精密度において基準のフーリエ変換基盤の方法よりも衰えないことを証明する。
上述したように、本発明に係る蛍光寿命測定装置および方法は、平均遅延時間と装置遅延時間の測定、または加減算演算など比較的簡単な計算によって極めて短い時間に装置応答関数の寄与を除去しながら、正確性かつ精密性を有して蛍光寿命を測定データから計算することができる。平均遅延時間の測定と装置遅延時間の測定は、単純な積分演算によって実行される上に、これはデジタル回路だけでなく単純なアナログ回路を介しても可能である。
このような本発明に係る蛍光寿命測定装置および方法は、多数回の積分演算を実行しなければならないフーリエ変換を介したデコンボリューション方法による演算量に比べて極めて少ない演算量を有するため、フーリエ変換基盤方法よりも極めて早い処理速度を得ることができる。例えば、離散フーリエ変換(Discrete Fourier Transform)の場合は、N個のデータポイントを有する信号に対して加算と乗算演算対の演算量がNとなる。高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform)の場合は、NlogNの演算量を有するものと評価される。反面、本発明に係る蛍光寿命測定装置および方法における演算量は4Nに過ぎず、極めて速い測度で計算が可能である。
TCSPC方法のような単一光子係数器による蛍光寿命測定装置と比較すれば、本発明が提示する蛍光寿命測定は単一光子の拘束条件がないため、1つの励起光パルスに対して多数の蛍光光子を生成および測定して高速の蛍光寿命測定が可能になる。十分に強い強度の励起光を用いる場合、1つの励起光パルスによって十分な数の蛍光光子を得ることがき、このとき、蛍光寿命の測定周期を励起光のパルス周期だけ短縮することが可能である。したがって、本発明に係る蛍光寿命測定装置および方法を蛍光寿命イメージング顕微鏡に適用する場合、リアルタイムで3次元イメージを取得することを可能にする。
一方、上述した本発明の実施形態が含まれる構成要素のうちの一部は、コンピュータで実行されるプログラムで作成が可能であり、コンピュータ読み取り可能な記録媒体を用いて前記プログラムを動作させる汎用デジタルコンピュータで実現することができる。前記コンピュータ読み取り可能な記録媒体は、磁気格納媒体(例えば、ROM、フロッピーディスク、ハードディスクなど)、光学的読み取り媒体(例えば、CD−ROM、DVDなど)、および搬送波(例えば、インターネットを介した送信)のような格納媒体を含む。
上述したように、本発明の好ましい実施形態を参照して説明したが、該当の技術分野において熟練した当業者にとっては、特許請求の範囲に記載された本発明の思想および領域から逸脱しない範囲内で、本発明を多様に修正および変更させることができることを理解することができるであろう。すなわち、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲に基づいて定められ、発明を実施するための最良の形態により制限されるものではない。
本発明に係る蛍光寿命の測定を説明するためのグラフである。 本発明の一実施形態に係る蛍光寿命測定装置を示すブロック図である。 本発明の他の実施形態に係る蛍光寿命測定装置を示すブロック図である。 図3に係る実施形態にしたがって、信号測定部410で測定された第1電気信号の波形と第2電気信号の波形の例を示すグラフである。 本発明によって測定された蛍光寿命と、フーリエ変換を介したデコンボリューションを用いて測定された蛍光寿命に対する標準偏差を比較した結果を示す図である。
符号の説明
100:励起光発生部
110:励起光源
120:対物レンズ
130:第1帯域フィルタ
140:励起光視準レンズ
150:光ファイバ遅延部
160:励起光反射器
170:カプラ
180:第2帯域フィルタ
200:蛍光光子収集部
210:蛍光光子収集レンズ
220:励起光除去フィルタ
300:光感知部
400:蛍光寿命信号処理部
410:信号測定部
420:蛍光寿命計算部
S:試料

Claims (6)

  1. 蛍光分子を含む試料に照射するパルス型励起光を発生させる励起光発生部と、
    前記励起光を前記試料に照射して生成される蛍光光子を収集する蛍光光子収集部と、
    前記収集された蛍光光子を電気信号である蛍光電気信号に変換する光感知部と、
    前記蛍光電気信号の平均時間E [t]と基準電気信号の平均時間E [t]の差 E [t]- E [t]を計算することによって前記試料の蛍光寿命を決定する蛍光寿命信号処理部を備え、ここで、前記E [t]は数式

    Figure 0004767300
    を用いて計算され、前記E 2 [t]は数式
    Figure 0004767300
    を用いて計算され、A(t)は前記蛍光電気信号であり、B(t)は前記基準電気信号であり、
    光信号分離器および励起光反射器をさらに備え、
    前記励起光は、前記光信号分離器を介して前記試料と前記励起光反射器に分岐され、
    前記基準電気信号は、前記励起光反射器に分岐された励起光が前記励起光反射器で反射して前記光感知部で変換された結果生成される電気信号であることを特徴とする蛍光寿命測定装置。
  2. 前記試料に分岐した励起光あるいは励起光反射器に分岐した励起光を遅延させるための光信号遅延経路として光ファイバ遅延部をさらに備えることを特徴とする、請求項に記載の蛍光寿命測定装置。
  3. 前記励起光発生部は、
    パルス形態の励起光を生成する励起光源と、
    前記励起光を集光して前記試料に照射するための対物レンズと、
    を備えることを特徴とする、請求項に記載の蛍光寿命測定装置。
  4. 前記蛍光光子収集部は、
    前記試料から生成される蛍光光子を収集する蛍光光子収集レンズ、
    を備えることを特徴とする、請求項に記載の蛍光寿命測定装置。
  5. 前記光感知部は、前記励起光反射器から伝達される励起光および前記収集された蛍光光子をそれぞれ前記蛍光電気信号および前記基準電気信号に変換することを特徴とする、請求項に記載の蛍光寿命測定装置。
  6. 前記蛍光寿命信号処理部は、
    前記光感知部で変換された前記蛍光電気信号および前記基準電気信号を測定する信号測定部と、
    前記蛍光電気信号の平均時間と前記基準電気信号の平均時間を計算し、その差を用いて蛍光寿命として決定する蛍光寿命計算部と、
    を備えることを特徴とする、請求項5に記載の蛍光寿命測定装置。
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