JP4765257B2 - 缶用ラミネート金属板 - Google Patents

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Description

本発明は、飲料缶や食缶などの材料として用いられる缶用ラミネート金属板に関する。
近年、缶用材料の樹脂被覆はラミネート化が進んでおり、例えば飲料缶については、2ピース缶の底部及び缶胴部、3ピース缶の缶胴部がラミネート化されるようになってきた。このように缶用材料のラミネート化が志向されるようになった理由としては、塗装・焼付けの省略による製造工程の合理化、溶媒乾燥工程(焼付工程)の省略による低環境負荷化、塗料に含まれるBPA等の環境ホルモン溶出の回避、などが挙げられる。特に、環境ホルモンについては、極微量のBPAが人体に影響を及ぼすという報告もなされていることから、さらなる規制化の動きもある。また、一般的には、飲料缶よりも食缶の方がBPA溶出量は多いため、今後、食缶の分野においてもラミネート化が進むものと予測される。
ラミネート用の樹脂フィルムとしては、ポリエステルフィルム、特にポリエチレンテレフタレートフィルムがバランスのとれた特性を有するフィルムとして注目され、これをベースとしたいくつかの提案がなされている。
例えば、二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムを低融点ポリエステルの接着層を介して金属板にラミネートし、缶用材料として用いる技術(特許文献1,2)、非晶性若しくは極く低結晶性の芳香族ポリエステルフィルムを金属板にラミネートし、缶用材料として用いる技術(特許文献3,4)。低配向で熱固定された二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムを金属板にラミネートし、缶用材料として用いる技術(特許文献5)などがあり、また、ポリエチレンテレフタレート系の短所を補うフィルムとして、ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートのブレンド物からなる樹脂フィルムも提案されている(特許文献6〜8)。
特開昭56―10451号公報 特開平1―192546号公報 特開平1―192545号公報 特開平2―57339号公報 特開昭64―22530号公報 特開平6−234188号公報 特開平7−314625号公報 特開平10−100315号公報
ポリエチレンテレフタレート系のラミネートフィルムの大きな特徴は、配向結晶量が特性に大きく影響し、その他の因子は影響度が小さいことにある。この特徴を活かし、要求性能に応じて配向結晶量を適切な量に制御することで所望の基本性能を有するラミネート鋼板を作り分けることができる。具体的な方法としては、二軸配向結晶フィルムを用い、熱圧着法でのラミネート条件を精密に制御し、配向結晶の残存量をコントロールする方法である。この方法は工業的に非常に都合がよく、同じ原料を用いて要求性能に合った様々な品種を作り分けることが可能である。飲料缶分野のラミネート鋼板は、主としてこの技術に立脚して発展してきたとも言える。しかし、この技術は、配向結晶量に対して相反する特性の双方を満足させようとする場合、これを実現するのは容易ではない。このようなケースでは、樹脂系を全く異なるタイプにして改善を試みる方法と、同様の系で不具合点だけを改善することを目的として付加的に新性能を付与する方法が考えられる。どちらの手法が好ましいかは定かではないが、従来技術を活かして付加的に新性能を付与する手法は、技術蓄積が利用できる反面、従来の皮膜設計を阻害した手法では意味が無いということも言える。ともあれ、飲料缶分野においては、従来技術を活かし付加的に新性能を付与する手法が主として選択されてきたし、大きな問題を生じているわけではなかった。
ところが、現実には、配向結晶量のコントロールだけでは解決できない技術的課題が幾つか存在する。そのうち最も大きな課題は、レトルト殺菌時の環境でフィルムが変色(レトルト白化)することである。飲料缶分野においてもレトルト処理による白化は問題であるが、白色フィルムを用いて隠蔽する手法などが選択されている。確かに白色フィルムは、その上面に施される印刷層を鮮明に見せる効果があり有用ではある。また、印刷による隠蔽も有効であり、意匠性が必要な缶胴部においては特に問題とならないケースもある。実際に市場を見回して見ると、主としてラミネート化が進んでいるのは、白色フィルムを用いた飲料用2ピース缶と3ピース缶の胴部である。3ピース缶の底蓋、飲料缶では白色フィルム以外の2ピース缶、上蓋、底蓋、及び食缶においてラミネート化が進んでいないのも、以上のような技術的課題と無縁ではない。
本来、フィルムの変色を顔料により隠蔽する方法は、顔料の種類によっては隠蔽力が低く、多様化する色調のニーズに対応できないこと、顔料コストがかかることなどの問題もあり、したがって、フィルムが変色しないことこそが最も望まれていることである。
レトルト白化を抑制するラミネート鋼板用のフィルムとして、特許文献9、特許文献10のような開示もある。しかし、このような従来技術のフィルムはどのような条件でラミネートしても十分な効果が得られるというものではなく、その他必要特性を考慮しつつ、適切なラミネート条件を選択することで初めてレトルト白化を抑制できることが判っている。しかも、仮に適切にラミネートしたとしても、イージーオープンエンド蓋や、DRD加工のような厳しい加工を施した場合に、製缶加工性と耐レトルト白化性を両立させることができない。
特開平5−331302号公報 特開平7−145252号公報 したがって本発明の目的は、製缶加工性と耐レトルト白化性がともに優れた缶用ラミネート金属板を提供することにある。
本発明者らはレトルト白化のメカニズムを調査し、その結果から、従来技術に比較してシンプル且つ合理的にレトルト白化を抑制できる皮膜構造を見出した。
まず、本発明者らがレトルト処理中に白化が起こる現象について調査した結果、以下のような事実が判明した。すなわち、(A)レトルト白化は、フィルム中に生じた水泡(又は気泡)が光を乱反射するためにフィルムが白く見える現象であること、(B)水泡(又は気泡)は、レトルト処理の極く初期にフィルム内に進入してきた水蒸気が内容物によって冷却され、凝縮した(或いはその後気化した)結果生じたものであること、(C)水泡(又は気泡)は、周囲の樹脂を押し広げて(変形させて)成長するため、鋼板と接している柔かい密着層(メルト層又は非晶層)に主に生じること、という事実が判った。したがって、レトルト白化の抑制とは、フィルム中に水泡(又は気泡)を生じさせないことであり、また、これを抑制するために有効な方法は、(1)レトルト中に水蒸気をフィルム内部に透過させないこと、(2)水泡(又は気泡)を成長させないこと、であることが判った。
従来技術においても知られているように、ポリエステル系樹脂は缶用材料の様々な要求特性を満足させる皮膜設計をする上で非常にバランスの良い材料である。しかしながら、レトルト時の水蒸気透過を有効に抑制し、なお且つ十分な加工性を得ることは困難である。例えば、二軸延伸法によって作製されたポリエチレンテレフタレートフィルムを配向結晶が多く残るような条件でラミネートすれば、水蒸気透過性がある程度改善されたラミネート鋼板を得ることができるが、蓋加工やDRD加工の際に加工性が追随しないために、フィルム破断を生じ、耐食性が劣ったものとなってしまう。したがって、実用的な残存配向結晶量の領域においては、水蒸気透過性を十分に抑制することは困難であると結論される。
次に、水泡(又は気泡)を成長させない方法について検討してみると、熱圧着法によるラミネートにおいては、鋼板と接する界面は必ずメルト層(非晶層)となり、柔らかい非晶層が不可避的に生じてしてしまう。メルト層を極力薄くする試みは可能であるが、フィルムの密着性に悪影響を及ぼす可能性があり、また、薄くしたとしてもメルト層が存在する以上抜本的な対策となり得ない。
次に、メルト層そのものを硬くする手法について、以下のような検討を行った。そもそもメルト層が柔らかいのは非晶状態であるためであり、一方、配向結晶層が硬いのは、非晶層中に存在する配向結晶が非晶分子の運動を抑制する働きをするためであると考えられる。であるならば、ラミネート直後は柔らかい非晶層でも、その後、非晶層を結晶化させることができれば、メルト層を硬くできるのではないかという発想に到った。ポリエチレンテレフタレートのような結晶性ポリエステルは、ガラス転位点以上の温度で球晶を生成しやすい傾向にある。したがって、ラミネート後に何らかの熱処理を施せば結晶化が進み、メルト層が硬くなると予測される。
そこで本発明者らは、ラミネート後の鋼板に200℃×10分の条件で熱処理を施し、この熱処理による結晶化がレトルト白化の抑制に効果があるかどうか検討を行った。その結果、熱処理を施したラミネート鋼板はフィルムのレトルト白化を完全に抑制できることが判った。つまり、レトルト白化を抑制するには、非晶層を拘束する結晶のようなものがあればよく、配向結晶に限らず、熱処理によって生成すると考えられる球晶のようなものでも十分効果があることが確かめられた。
しかしながら、ラミネート後に熱処理を施すことは不可能ではないが、工業的に見ると余分な工程が増えるため、合理的な方法ではない。そこで本発明者らは、余分な工程を追加することなくメルト層を結晶化させるための方法として、レトルト時の熱を利用するという着想を得た。しかし、レトルト白化そのものはレトルト時の極く初期に起こる現象であるため、上記方法を採るためには、レトルト白化の速度よりもメルト層が速く結晶化することが必要であり、そのためには結晶化速度の大きい樹脂をメルト層に配置しなければならない。
従来技術においては、ラミネート樹脂層として、(a)エチレンテレフタレート−エチレンイソフタレート共重合体、(b)ポリエチレンテレフタレート、(c)ポリエチレンテレフタレート−ポリブチレンテレフタレート共重合体(又は、ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートとのブレンド物)などが用いられているが、本発明者らによる調査の結果では、その結晶化速度の大きさは(c)>(b)>(a)であった。また、併せてポリブチレンテレフタレートの結晶化速度を測定したところ、上記(a)〜(c)の樹脂に比べて結晶化速度がかなり大きいことが判った。
以上の結果からして、上述したようなレトルト時の熱を利用してメルト層を短時間で結晶化させることによりレトルト白化を抑制する方法は、ポリブチレンテレフタレートをメルト層に配置することにより実現できることが判った。ここで、上記(a)〜(c)の従来材のなかで結晶化速度の最も大きいものはポリエチレンテレフタレート−ポリブチレンテレフタレート共重合体(又はポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートとのブレンド物)であるが、このような樹脂を用いてもメルト層を所望の短い時間で結晶化させることは困難であり、より大きい結晶化速度が得られるポリブチレンテレフタレートを用いる必要があることが判った。すなわち、ポリブチレンテレフタレートの比率を従来材より格段に高める必要があることが判った。
また、一般にポリブチレンテレフタレートはポリエチレンテレフタレートに較べて高価であり、製造コスト面からはその使用量を極力抑えることが望ましいため、ポリブチレンテレフタレートを用いた好ましい皮膜構成について検討を行った。その結果、結晶化速度が速いことが要求されるメルト層にのみポリブチレンテレフタレートを薄く配置し、その上層部分は他の要求特性に応じた皮膜設計(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート−ポリエチレンイソフタレート共重合体、ポリエチレンテレフタレート−ポリブチレンテレフタレート共重合体、ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートのブレンド物の中から選ばれる1種以上)とする方が合理的であるとの結論を得た。また、本発明者らの調査の結果では、ポリブチレンテレフタレートの耐レトルト白化性以外の特性は、上記のような従来材と同等以上であることも確認できた。
さらに、上記知見による皮膜構造において、上層にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート−ポリエチレンイソフタレート共重合体、ポリエチレンテレフタレート−ポリブチレンテレフタレート共重合体、ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートのブレンド物の中から選ばれる1種以上の樹脂を用いた場合、この2層皮膜構造は、下層樹脂(ポリブチレンテレフタレート)の融点が、上層樹脂の融点よりも低く、これによって以下のような大きな利点が生まれることが判った。すなわち、もしも下層・上層の融点が上記とは逆の関係であったとすると、フィルムを熱融着によってラミネートした場合、下層のポリブチレンテレフタレートが溶融する時には上層樹脂も不可避的に溶融してしまい、このため上層部は非晶層に限定されてしまう。これに対して下層樹脂の融点が上層樹脂の融点よりも低くければ、ラミネート時における上記のような問題も生じないので、例えば、二軸配向フィルムの配向結晶量を任意に残存させることができ、様々な要求特性に対応した皮膜が作り分けられることになる。すなわち、レトルト白化を最も効率的に抑制できるだけでなく、他の皮膜特性が阻害されない理想的な皮膜を得ることができる。
本発明は以上のような知見に基づきなされたもので、その特徴は以下の通りである。
[1]金属板の少なくとも片面に、金属板面に接してポリブチレンテレフタレート樹脂層が形成されたことを特徴とする缶用ラミネート金属板。
[2]金属板の少なくとも片面に、金属板面に接してポリブチレンテレフタレート下部樹脂層が形成され、その上層にポリエチレンテレフタレート、エチレンテレフタレート−エチレンイソフタレート共重合体、エチレンテレフタレート−ブチレンテレフタレート共重合体、ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートのブレンド物の中から選ばれる1種以上からなる上部樹脂層が形成された皮膜構造を有し、該皮膜中のメルト層の厚さが前記下部樹脂層の厚さ以下であることを特徴とする缶用ラミネート金属板。
[3]上記[2]の缶用ラミネート金属板において、二軸延伸フィルムを熱圧着法によってラミネートすることにより樹脂層が形成されたラミネート鋼板であり、ラミネート前の二軸延伸フィルムの上層樹脂と下層樹脂の融点差[上層−下層]が5〜40℃であることを特徴とする缶用ラミネート金属板。
[4]上記[3]の缶用ラミネート金属板において、二軸延伸フィルムのラミネートにより形成された樹脂層の面配向係数が0.040以下であることを特徴とする缶用ラミネート金属板。
本発明の缶用ラミネート金属板は、製缶加工性と耐レトルト白化性がともに優れている。
本発明の缶用ラミネート金属板は、金属板の少なくとも片面にラミネートされた樹脂層を有するラミネート金属板であって、金属板面に接してポリブチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートを高配合で含むポリエステルからなる樹脂層を形成すること、すなわち、メルト層が形成される樹脂層に結晶化速度の速いポリブチレンテレフタレートを用いることを基本とするものであり、このような樹脂層を金属板面に接して配置することにより、レトルト時の極く初期の段階でメルト層が短時間で結晶化し、この結果レトルト白化が効果的に抑制され、しかも、その上層に従来技術で用いられているような樹脂層をその性能を損なうことなく配置することができる。
本発明の缶用ラミネート金属板のラミネート樹脂層は、上記ポリブチレンテレフタレートからなる樹脂層のみで構成してもよいが、通常は、ポリブチレンテレフタレートからなる樹脂層(下部樹脂層)の上に上部層樹脂層が設けられる。
このように上部樹脂層(以下、単に「上層」という)を設ける場合、皮膜設計によっては、下部樹脂層(以下、単に「下層」という)の融点を高めに設定した方が良い場合や機能付与の目的で他の樹脂成分を配合した方が良い場合もあることから、下層は本発明の効果を損なわない限度で他の樹脂成分を含んでもよい。但し、本発明の効果を損なわないためには下層樹脂中のポリブチレンテレフタレートの割合は90mass%以上とする必要がある。したがって、下層樹脂としては、ポリブチレンテレフタレートの他、ポリブチレンテレフタレートの割合が90wt%以上である、エチレンテレフタレート−ブチレンテレフタレート共重合体、ポリエチレンテレフタレート−ポリブチレンテレフタレート共重合体、ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートのブレンド物などの1種以上を用いることができる。
上層を構成する樹脂種に特別な制限はないが、特に、ポリエチレンテレフタレート、エチレンテレフタレート−エチレンイソフタレート共重合体、エチレンテレフタレート−ブチレンテレフタレート共重合体、ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートのブレンド物の中から選ばれる1種以上を用いることが好ましい。これらの樹脂は、その優れた皮膜性能により従来のラミネート鋼板にも利用されてきた実績があり、また、ポリブチレンテレフタレートよりも融点が高いため、本発明の効果をより高めるとともに、皮膜設計の自由度を高めるのにも非常に有利である。
また、このように上層を有する皮膜構造の場合には、皮膜中のメルト層の厚さが下層の厚さ以下であること、つまりメルト層が上層に及ばないことが必要である。これは、上述したように本発明の効果は、メルト層に結晶化速度が大きい樹脂を用いることにより発揮されるものだからである。但し、エチレンテレフタレート−ブチレンテレフタレート共重合体、ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートのブレンド物であって、ポリブチレンテレフタレートの比率が90mass%以上のものを上層樹脂として用いる場合は、下層の条件を満たすのでこの限りではない。なお、この場合であっても、上層と下層は異なる成分の樹脂で構成されることは言うまでもない。
下層の厚さは2〜6μmとすることが好ましい。下層の厚さが2μm未満ではメルト層の厚みを下層の厚みの範囲に納めることが困難な場合が多く(すなわち、上層の一部にもメルト層が形成されてしまう)、一方、厚さが6μmを超えるとレトルト白化の抑制効果が飽和するため、経済性を損なう。
本発明のラミネート金属板のラミネート樹脂層を、二軸延伸フィルムを金属板面に熱圧着することにより形成する場合には、上層樹脂と下層樹脂の融点差[上層−下層]が5〜40℃である二軸延伸フィルム(ラミネート前の条件)を用いることが好ましい。このように上層樹脂と下層樹脂に所定の融点差がある二軸延伸フィルムを用いるのが好ましいのは、以下のような理由による。まず、上層樹脂と下層樹脂の融点差が5℃未満では、上層樹脂の配向結晶を高く設定するためのラミネート条件の制約が大きくなり過ぎ、実用上好ましくないためである。例えば、一般的な熱圧着法によって上層樹脂と下層樹脂との融点差が小さすぎる二軸延伸フィルムをラミネートする場合において、上層樹脂の配向結晶量を多く残存させようとした場合、ラミネート条件として、(1)極端にライン速度を上げる、(2)冷却ロールの温度を極端に低くする、(3)ラミネート後の冷却時間を極端に長くする、(4)圧着時間を極めて短くする、(5)上記(1)〜(4)の方法を複合化して行う、などの条件を採る必要がある。これらのラミネート条件は実験室レベルでは実施可能ではあるが、工業的には現実的な方法ではない。一方、上層樹脂と下層樹脂の融点差が40℃を超えると、上層樹脂の配向結晶量を低く設定した場合、下層樹脂が熱分解により劣化する恐れがある。実際には、融点差が40℃を超えてもその程度が十分低ければ、下層樹脂の劣化は一次的評価では認められない程度のものである。しかし、例えば、缶として内容物を長期保存した場合、分解生成物が内容物中へ溶出するなどの悪影響が懸念され、したがって、実質上、上記のような熱分解が無視できる条件範囲内でラミネートを行うことが好ましい。熱分析の結果から、上層樹脂と下層樹脂の融点差が40℃以下であれば、実質上、上記のような熱分解を無視できることが判った。したがって、上層樹脂と下層樹脂の融点差[上層−下層]が5〜40℃の範囲であれば、下層樹脂の熱分解を抑え、且つ上層樹脂の結晶配向の程度を任意に設定することが容易になる。
二軸延伸フィルムのラミネートにより形成された樹脂層の面配向係数は0.040以下であることが好ましい。このような面配向係数とすることにより加工性が良好となり、例えば、イージーオープンエンド蓋のリベット加工などに対しても十分な加工性を発揮する。すなわち、厳しい加工が要求される用途に最適な皮膜となる。
金属板にラミネートされる樹脂層は、上述した単層(ポリブチレンテレフタレートからなる樹脂層)又は2層(下層+上層)のみで構成してもよいが、本発明の効果を阻害しない限度において、他の樹脂層(例えば、最上層の樹脂層、金属板との接着層など)を設けてもよい。
また、本発明のラミネート金属板の樹脂層には、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、顔料、帯電防止剤、潤滑剤、結晶核剤などの添加剤を含有させてもよく、また、上層側となる層の表層にワックス成分などを添加することもできる。
樹脂層は、上述したように二軸延伸フィルム等のラミネートフィルムを熱圧着する方法のほか、共押出し法、ダイレクトラミネート法などで形成してもよい。
本発明のラミネート金属板の下地金属板に特別な制限はない。安価で且つ密着性に優れるという面ではティンフリースチールが好ましいが、ブリキなどの他の表面処理鋼板やアルミニウム板などを用いてもよい。
本発明の缶用ラミネート金属板は、食缶や飲料缶などのような缶用途の別、缶胴材や蓋材(上蓋、底蓋)などのような部材の別、2ピース缶や3ピース缶などのような缶形態の別を問わず、あらゆる用途の缶用材料として用いることができる。
下地金属板として、板厚0.20mm、硬度T4のティンフリースチール原板を用いた。この下地金属板に対して、熱圧着によるフィルムラミネート法を用いて樹脂層をラミネートし、缶用ラミネート鋼板を製造した。
得られたラミネート鋼板のメルト層厚みの測定方法、面配向係数の測定方法、耐レトルト白化性及び製缶加工性の評価方法を以下に示す。
(1)メルト層厚みの測定方法
偏光顕微鏡を用い、偏光子と検光子をクロスニコルの状態に設定し、ラミネートされた樹脂層の断面を観察した。この観察において、断面構造が「明るい部分」と「暗い部分」の2つの領域(層)に別れるので、メルト層に対応する暗い部分の厚みを実測し、この値をメルト層の厚さとした。なお、この値は1視野5点平均×サンプル(n)5の平均値である。
(2)面配向係数の測定
アッベ屈折計を用い、光源:ナトリウム/D線、中間液:ヨウ化メチレン、温度:25℃の条件で、フィルム面の縦方向の屈折率Nx、フィルム面の横方向の屈折率Ny、フィルムの厚み方向の屈折率Nzを各々測定し、下式により面配向係数Nsを算出した。
面配向係数(Ns)=(Nx+Ny)/2−Nz
(3)耐レトルト白化性(試験)
ラミネート鋼板を底蓋形状に成形して試験に供した。まず、試験片を350cc容量用の缶胴に巻き締め、これに150gの氷と200ccの水を充填し、上蓋を巻き締めた後、レトルト試験器に装入し、130℃×30分の条件でレトルト処理を施した。このレトルト処理後において、樹脂層に白化が認められなかったものを“○”、白化が認められたものを“×”とした。
(4)製缶加工性(試験)
ラミネート鋼板に対して、以下の条件で第一段絞り、再絞りを順次行い、薄肉化深絞り缶を得た。
・第一段絞り条件
ブランク径:150〜160mm
1段絞りでの絞り比:1.65
・再絞り条件
第1次再絞りの絞り比:1.25
第2次再絞りの絞り比:1.25
再絞り工程のダイスコーナー部の曲率半径:0.4mm
再絞り時のしわ押さえ加重:39227N(4000kg)
・缶胴部の平均薄肉化率:成形前のラミネート鋼板の厚さに対して40〜55%
再絞り工程の第1次再絞りにおいて皮膜損傷が検出されたものを“×”、第2次再絞り後には皮膜損傷が検出されたが、第1次再絞りでは皮膜損傷が検出されなかったものを“○”、第2次再絞り後も皮膜損傷が検出されなかったものを“◎”とした。
表1及び表2に各実施例のラミネート鋼板の皮膜構成を示し、表3に各実施例の性能評価の結果を示す。
表1〜表3において、発明例1はポリブチレンテレフタレート単層の皮膜構成を有するものである。この発明例1の樹脂層は面配向係数も0.030と低目に抑えられており、耐レトルト白化性、製缶加工性ともに良好である。耐レトルト白化性の観点からは、必ずしもポリブチレンテレフタレート単層にする必要はないが、高い耐衝撃性が求められるなどの用途で用いられるケースもある。
発明例2は、上層にポリエチレンテレフタレート、下層にポリブチレンテレフタレートを用いたものであり、いずれも良好な耐レトルト白化性と製缶加工性が得られているが、樹脂層は面配向係数が0.040を上回っているため、製缶加工性は“○”に留まっている。
発明例3〜5は、上層にエチレンテレフタレート−エチレンイソフタレート共重合体、下層にポリブチレンテレフタレートを用いたものであり、いずれも良好な耐レトルト白化性が得られており、また、面配向係数が低目に抑えられているため良好な製缶加工性が得られている。
参考例1は、下層にポリブチレンテレフタレートの割合が92mass%のポリエチレンテレフタレート−ポリブチレンテレフタレートブレンド物を用いたものであり、面配向係数が0.040を超えるため製缶加工性は“○”に留まっているが、良好な耐レトルト白化性が得られている。
発明例6は、上層にポリブチレンテレフタレートの割合が60mass%のポリエチレンテレフタレート−ポリブチレンテレフタレートブレンド物を用いたものであるが、良好な耐レトルト白化性と製缶加工性が得られている。
発明例7は、下層の厚さが小さいものであるが、良好な耐レトルト白化性が得られている。また、製缶加工性は、面配向係数が0.040を上回るため“○”に留まっている。
発明例8は、下層の厚さを厚くしたものであるが、良好な耐レトルト白化性と製缶加工性が得られている。
比較例1はポリエチレンテレフタレート単層の例であり、耐レトルト白化性が劣っている。
比較例2は下層にポリブチレンテレフタレートの割合が85mass%のポリエチレンテレフタレート−ポリブチレンテレフタレートブレンド物を用い、且つメルト層が下層の厚さを上回っている例であり、耐レトルト白化性が劣っている。
比較例3は下層にポリエチレンテレフタレート−ポリエチレンイソフタレート共重合体を用いた例であるが、耐レトルト白化性が劣り、また、面配向係数も特に高いため製缶加工性も劣っている。
比較例4は下層の膜厚が薄く、メルト層の厚さが下層の厚さを上回っている例であり、耐レトルト白化性が劣っている。
比較例5は、上層・下層の皮膜構成が本発明条件とは逆になっている例であり、耐レトルト白化性が劣っている。
比較例6は下層の膜厚は十分に厚いが、メルト層の厚さが下層の厚さを上回っている例であり、耐レトルト白化性が劣っている。
Figure 0004765257
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Claims (4)

  1. 金属板の少なくとも片面に、金属板面に接してポリブチレンテレフタレート樹脂層が形成されたことを特徴とする缶用ラミネート金属板。
  2. 金属板の少なくとも片面に、金属板面に接してポリブチレンテレフタレート下部樹脂層が形成され、その上層にポリエチレンテレフタレート、エチレンテレフタレート−エチレンイソフタレート共重合体、エチレンテレフタレート−ブチレンテレフタレート共重合体、ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートのブレンド物の中から選ばれる1種以上からなる上部樹脂層が形成された皮膜構造を有し、該皮膜中のメルト層の厚さが前記下部樹脂層の厚さ以下であることを特徴とする缶用ラミネート金属板。
  3. 二軸延伸フィルムを熱圧着法によってラミネートすることにより樹脂層が形成されたラミネート鋼板であり、ラミネート前の二軸延伸フィルムの上層樹脂と下層樹脂の融点差[上層−下層]が5〜40℃であることを特徴とする請求項2に記載の缶用ラミネート金属板。
  4. 二軸延伸フィルムのラミネートにより形成された樹脂層の面配向係数が0.040以下であることを特徴とする請求項3に記載の缶用ラミネート金属板。
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