JP4725024B2 - 缶蓋用ラミネート金属板及び缶蓋の製造方法 - Google Patents

缶蓋用ラミネート金属板及び缶蓋の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4725024B2
JP4725024B2 JP2004069796A JP2004069796A JP4725024B2 JP 4725024 B2 JP4725024 B2 JP 4725024B2 JP 2004069796 A JP2004069796 A JP 2004069796A JP 2004069796 A JP2004069796 A JP 2004069796A JP 4725024 B2 JP4725024 B2 JP 4725024B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
lid
layer
resin
metal plate
processing
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2004069796A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2005254627A (ja
Inventor
啓 久保
威 鈴木
安秀 大島
克己 小島
浩樹 岩佐
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
JFE Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Steel Corp filed Critical JFE Steel Corp
Priority to JP2004069796A priority Critical patent/JP4725024B2/ja
Publication of JP2005254627A publication Critical patent/JP2005254627A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4725024B2 publication Critical patent/JP4725024B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Containers Opened By Tearing Frangible Portions (AREA)
  • Laminated Bodies (AREA)

Description

本発明は、飲料缶や食缶などの缶蓋材として用いられ、特にイージーオープンエンドタイプの缶蓋に好適なラミネート金属板並びにこのラミネート金属板を用いた缶蓋の製造方法に関する。
近年、缶用材料の樹脂被覆はラミネート化が進んでおり、例えば飲料缶については、2ピース缶の底部及び缶胴部、3ピース缶の缶胴部がラミネート化されるようになってきた。このように缶用材料のラミネート化が志向されるようになった理由としては、塗装・焼付けの省略による製造工程の合理化、溶媒乾燥工程(焼付工程)の省略による低環境負荷化、塗料に含まれるBPA等の環境ホルモン溶出の回避、などが挙げられる。特に、環境ホルモンについては、極微量のBPAが人体に影響を及ぼすという報告もなされていることから、さらなる規制化の動きもある。また、一般的には、飲料缶よりも食缶の方がBPA溶出量は多いため、今後、食缶の分野においてもラミネート化が進むものと予測される。
しかしながら、現実の市場においては、例えば飲料缶の場合、2ピース缶の底部及び缶胴部についてはラミネート化が進んでいるのに対して、上蓋や3ピース缶の底蓋についてはラミネート化は進んでいない。同様に、食缶のラミネート蓋も一般的ではない。このように蓋材のラミネート化が進まない理由は、缶蓋固有の課題が解決されていないためであると考えられる。
蓋材のラミネート化を阻んでいる理由は種々あると考えられるが、蓋材をラミネート化する場合の最も困難な課題の一つは、印刷工程後に厳しい加工が施される場合があるという点である。昨今では、飲料缶用の上蓋はステイオンタブ式のイージーオープンエンド蓋が主流であり、また、食缶用では缶切不要のイージーオープンエンドタイプの蓋が増えつつある。この食缶用のイージーオープンエンドタイプの蓋は、蓋の開け方の説明が印刷されているものがほとんどである。通常、この印刷は蓋の加工前に行われ、その後、蓋の形へと成形(製蓋加工)される。ところが、印刷工程では焼付けの際に熱が加わるために、ラミネートフィルム(樹脂層)が劣化し、その後の製蓋加工においてフィルムが加工に追随できないためフィルム破断を生じ、その結果、耐食性が劣化してしまう。
上述したように市場での蓋材のラミネート化は進んでいないが、これに関する提案は数多くなされており、このこと自体、需要の大きさに較べ未解決の大きな課題が存在することを示している。特に、最も大きな課題であると考えられる補修塗装不要のイージーオープンエンド蓋の製造方法及びこれに用いる蓋用ラミネート鋼板に関して多数の提案がなされている。例えば、特許文献1では、ポリエステル樹脂を内面側にのみ適用して内面の無補修化を達成している。しかし、この手法では外面側は補修塗装の必要があるだけでなく、ラミネート後の印刷工程によるフィルムの劣化については全く考慮されておらず、ラミネート後に印刷が施される蓋に対しては適用が難しい。
また、特許文献2には、ポリエステルフィルムの二軸配向度などを制御した無補修型のイージーオープンエンド蓋用フィルムが開示されているが、これもラミネート後の印刷工程によるフィルムの劣化が考慮されていない。しかも、二軸配向フィルムはラミネート後の配向状態がその特性を大きく支配するにも拘わらず、ラミネート後の状態については何ら規定がなく、また、スコア加工法などの具体的な製蓋方法も明示されていない。
また、特許文献3や特許文献4は、ラミネート後のフィルム物性(面配向など)を規定したものであり、熱処理後の加工性についても考慮した開示があるが、スコア加工法などの具体的な製蓋方法については明示されておらず、また、本発明者らの調査によれば、一般的なスコア加工を行った場合には十分な耐食性が得られないことが判った。さらに、特許文献5には、スコア加工法と樹脂フィルムなどに関する規定があるが、これもラミネート後の印刷工程によるフィルムの劣化は考慮されていない。
特開2001−122258号公報 特開平9−309146号公報 特開平5−77358号公報 特開平5−77359号公報 特開2000−301268号公報
イージーオープンエンド蓋における製蓋加工後の板厚分布を調べると、最も大きな板厚変化を生じているのは、スコアと称される破断用溝の部分(以下、スコア部という)であった。このスコア部は通常、補修塗装により補修されが、特許文献5などに開示されているように、スコア加工法とラミネート鋼板の構成を工夫することによって、補修塗装を回避する方法も存在する。ところが、本発明者らによる調査の結果によれば、仮に特定のラミネート鋼板とスコア加工法を用いることによってスコア部でのフィルム(樹脂層)破断を無くしたとしても、その他の加工部位でフィルム破断が生じる場合があることが判った。破断箇所を詳細に調査していくと、フィルム破断が生じるのは、局部的に屈曲した加工部のヤマ側で、板厚の変化はほとんど無い部分であった。製蓋加工では、蓋の剛性を高めたり、スコア加工による肉余りを吸収したりすることを目的として、平板部(パネル部)に曲げ加工部(例えば、ビードやエンボス)を設けることが広く行われているが、このような曲げ変形を伴う加工部のヤマ側では、加工程度が僅かであってもフィルム破断が生じやすいことが判明した。この現象は、熱処理後ラミネート鋼板(例えば、ラミネート後の印刷工程で焼付け処理されたラミネート鋼板)に見られる特有の現象で、未熱処理のラミネート鋼板の加工挙動とは明らかに異なるものであることが判った。したがって、印刷工程を要する蓋材については、熱処理後の加工特性は必須であり、これに応じた蓋特有の皮膜設計が必要であると考えられる。以下、この特殊な加工を「局部曲げ加工」と称し、その他の加工を「一般加工」と称して区別することとする。
本発明の目的は、イージーオープンエンドタイプの缶蓋材に適用した場合に、スコア加工などの一般加工性だけなく、熱処理後に行われる局部曲げ加工での加工性にも優れた缶蓋用ラミネート金属板を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、上記のようなラミネート金属板を用いて良好な品質のイージーオープンエンド缶蓋を製造することができる缶蓋の製造方法を提供することにある。
上述のようにラミネート鋼板の局部曲げ加工部におけるフィルム破断は熱処理時にフィルムが劣化することが原因であると考えられたので、ポリエチレンテレフタレート系樹脂のラミネート鋼板を用い、その原因について詳細な調査・検討を行った。その結果、ポリエチレンテレフタレート系樹脂においては、熱処理時に球晶が生成していることが判った。一般に、球晶が生成するとフィルムは脆化することが知られており、このような球晶の生成によりフィルムが劣化し、熱処理(印刷工程)後の製蓋加工でフィルムに破断が生じるものと推定された。また、印刷工程の焼付条件を多少変更しても、一般のポリエチレンテレフタレート系樹脂においては球晶の生成を抑制することは困難であることも判った。
そこで、本発明者らは、球晶が生成してもフィルム破断を生じることなく製蓋加工が可能な皮膜構造を得るために、以下のような検討を行った。ポリエチレンテレフタレート系樹脂のラミネート鋼板においては、皮膜特性に結晶配向度が大きな影響を与えることが知られているため、本発明者らはまず、結晶配向度を調整して課題の解決を図ることを検討した。二軸延伸ポリエチレンテレフタレートのラミネート条件を制御することで、各種配向度のポリエチレンテレフタレートフィルムが調製可能であり、これに基づき、配向度の異なる各種ラミネート鋼板を作製した。このラミネート鋼板に対して印刷焼付け工程相当の熱処理を加え、イージーオープンエンド蓋に製蓋加工した。その結果、問題の局部曲げ加工性に対しては高配向度のものが良好な結果を示すことが判った。一般加工においては、低配向度のものほど加工性に優れる傾向にあるが、この局部曲げ加工においては全く逆の結果となった。このことは、仮に蓋の加工が問題の局部曲げ加工のみであるか、或いはその他の一般加工を伴う場合でもその加工程度が十分小さい場合であれば、上述の手法によって配向度を適宜設定することで蓋成形が可能であることを意味している。実際に、底蓋などについては、この皮膜設計で十分対応できるケースもあることが判った。しかし、本発明が対象としているのは、そのような加工レベルの蓋材ではなく、イージーオープンエンド蓋のように局部曲げ加工と加工程度が大きい一般加工とが混在するような厳しい加工条件で加工される缶蓋であり、特に加工度の大きい無補修型のスコア加工(例えば、曲面状金型によるスコア加工)が適用されるような蓋をも対象とするものである。
イージーオープンエンド蓋の製蓋加工における特に厳しい加工部は、局部曲げ加工部を除くと、無補修型スコア加工(例えば、曲面状金型によるスコア加工)を適用する場合はスコア加工部、リベット加工部である。スコア加工に対して、熱処理による球晶生成の影響は無視できるレベルではないが、それでも配向結晶量の影響の方が格段に大きい。したがって、配向結晶量を適切に設定することでスコア加工は十分対応できる。リベット加工部は張り出し加工が施された後に、リベット加工(張り出し部を押し潰す加工)が加わる加工部である。張り出し加工はスコア加工と同様の傾向を示し、配向結晶量を適宜設定することで対応可能である。また、一般的にはスコア加工より易しい加工であると言える。一方、その後のリベット加工は、曲げ加工の要素が加わるため、熱処理による球晶生成の影響を無視できない。しかし、その加工の程度は局部曲げ加工の変形部より軽い傾向にある。したがって、リベット加工は一般加工の要素と局部曲げ加工の要素を併せ持つが、スコア部や局部曲げ部の加工に比べて、ややマイルドな加工であると言える。
一方、球晶の影響は局部曲げ加工に対しては非常に大きい。このため、単に配向結晶量を調整するだけでは、加工程度が厳しい一般加工部と局部曲げ加工部の加工性を両立させることはできない。
以上のような課題に対して本発明者らは、局部曲げ加工は変形量自体が非常に小さいという点に注目し、局部曲げ変形性に優れた特性を有する樹脂からなる副層(樹脂層)を主層(樹脂層)に併設した皮膜構造とすれば、仮にフィルムのバルク部分(主層部)が局部曲げ変形に追随しない特性を持つとしても、副層部の樹脂が局部曲げ変形性を補うことで全体としての加工性を確保できるのではないかという着想を得た。もちろん局部曲げ加工の加工程度が大きいと、副層部の変形のみでは全体の変形を補うことが難しくなり、破断に至る可能性もあるが、通常行われる局部曲げ加工は変形量が小さいため、その恐れはほとんどない。つまり、局部曲げ加工の加工程度が小さい範囲であれば、球晶の生成によってバルク部分(主層部)の局部曲げ加工性が劣化しても、局部曲げ加工性に優れる副層部がこれを補い得るのではないかと考えた。
以上のよう着想に基づき実験と検討を重ねた結果、以下のような特定の副層と主層とからなる皮膜構造とすることにより、上述したような加工特性を実現できることが判った。
上記副層部は局部曲げ変形性に優れた層であればよいが、同時にリベット加工性やスコア加工性などの一般加工性を阻害するものであってはならない。このような観点から副層部に好適な樹脂について検討した結果、ガラス転位点が低いもの(加工時の温度よりも十分低いもの)が局部曲げ変形性に優れることが判った。このようなガラス転位点が低い樹脂は、単体では強度不足によりリベット加工やスコア加工などの一般加工に追従できないが、副層として配置された場合、主層が強度を補うため、上記のような一般加工に追随できることが判った。また、主層としては、強度と伸び性のバランスが良好でリベット加工性やスコア加工性などの一般加工性に優れるという点から、ポリエステル系樹脂が好適であることが判った。
本発明は以上のような知見に基づきなされたもので、その特徴は以下の通りである。
[1]金属板の少なくとも片面に複層の有機樹脂層を有するラミネート金属板であって、前記複層の有機樹脂層のうちの一部の樹脂層がポリエステル系樹脂からなる厚さ9〜25μmの主層であり、他の一部の樹脂層がガラス転位点(Tg)が5℃以下のポリオレフィン系樹脂からなる厚さが1〜10μmの副層であり、主層と副層とが直接又は接着層を介して層状に重ねられた皮膜構造を有することを特徴とする缶蓋用ラミネート金属板。
[2]上記[1]の缶蓋用ラミネート金属板において、主層がポリエチレンテレフタレートを基本骨格とする樹脂からなり、副層がポリオレフィンからなることを特徴とする缶蓋用ラミネート金属板。
[3] 上記[1]又は[2]の缶蓋用ラミネート金属板において、主層がテレフタル酸又は/及びイソフタル酸からなるジカルボン酸成分とエチレングリコールからなるジオール成分との縮重合で得られたポリエステル系樹脂からなり、副層がポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマーの中から選ばれる1種以上からなることを特徴とする缶蓋用ラミネート金属板。
[4] 上記[1]〜[3]のいずれかの缶蓋用ラミネート金属板を用いたイージーオープンエンドタイプの缶蓋の製造方法であって、製蓋加工工程において先端の曲率半径が0.1〜1.0mmの曲面状金型を用いて破断用溝を成形することを特徴とする缶蓋の製造方法。
[5] 上記[4]の製造方法において、製蓋加工工程前に缶蓋材外面に印刷を施すことを特徴とする缶蓋の製造方法。
本発明の缶蓋用ラミネート金属板は、ラミネートされた有機樹脂層が、リベット加工やスコア加工などの一般加工性を満足する樹脂からなる主層と、局部曲げ加工性に優れた樹脂からなる副層が層状に重ねられたものであるため、イージーオープンエンドタイプの缶蓋材に適用した場合に、一般加工性をほとんど損なうことなく、優れた局部曲げ加工性が得られる。このため印刷工程を経て製蓋加工する場合においても、フィルム破断を生じさせることなく耐食性に優れた缶蓋を製造することができる。
また、本発明の缶蓋の製造方法によれば、イージーオープンエンドタイプの缶蓋の製蓋加工工程において、板厚変化が最も大きいスコア部の加工をフィルム破断を生じることなく適切に行うことができる。
本発明の缶蓋用ラミネート金属板は、金属板の少なくとも片面に複層の有機樹脂層を有するラミネート金属板であって、前記複層の有機樹脂層のうちの一部の樹脂層が、ポリエステル系樹脂からなる厚さ9〜25μmの主層であり、他の一部の樹脂層がガラス転位点(Tg)が5℃以下の樹脂からなる厚さが1〜10μmからなる副層であり、主層と副層とが直接又は接着層を介して層状に重ねられた皮膜構造を有する。なお、本発明では皮膜の本来的な機能を担う樹脂層を「主層」、付加的な機能を担う樹脂層を「副相」と称しており、したがって、主層・副層は樹脂層厚の大小と関係するものではない。
前記主層の主たる機能は、リベット加工性やスコア加工性(特に、曲面状金型を用いるスコア加工での加工性)などの一般加工性を確保することにあるが、本発明ではこの一般加工性を確保する観点から、主層を構成する樹脂としてポリエステル系樹脂を用いる。リベット加工性やスコア加工性などの一般加工性に対しては、適度な伸び性と強度のバランスが重要となるが、ポリエステル系樹脂はそのバランスに優れるためである。なお、この主層のポリエステル系樹脂は、本発明の主旨からしてガラス転位点(Tg)が5℃超のものである。本発明は、主層となるポリエステル系樹脂が局部曲げ加工性に劣るために、これを補う手段として副層を設けるものであり、ポリエステル系樹脂層のガラス転位点が5℃以下であればわざわざ副層を設ける意味はない。
ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート系樹脂が加工に対する伸び性や強度のバランスが良く、食品衛生適性もあるため好ましい。蓋加工においては、フィルムの伸び性や強度のバランスが良いことが望ましい。しかし、一般的には伸びと強度は相反する特性であり、伸び性が良いと強度が低く、強度が高いと伸び性が悪い傾向にある。食品衛生適性のある樹脂中では、ポリエチレンテレフタレート系ポリエステル樹脂が、蓋加工に対する伸びと強度のバランスに優れる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、テレフタル酸又は/及びイソフタル酸からなるジオール成分とエチレングリコールからなるジオール成分との縮重合で得られたポリエステル系樹脂、エチレンテレフタレート−ブチレンテレフタレート共重合体などがバランスの良い樹脂として挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
主層を構成する樹脂の配向結晶量は、一般加工の加工程度に応じて適宜設定すればよいが、勿論無配向としてもよい。むしろ、無配向系を選択することで、延伸フィルムを用いる必要がなくなるため、押し出しによるダイレクトラミネート法が適用可能となり、ラミネート加工する上で望ましい場合もある。
主層の厚さは、9〜25μmとする。主層の厚さは要求される一般加工の程度に応じて適宜選択されるが、9μm未満では主層が担う機能、すなわち伸び性と強度のバランスを保つという機能(強度が不足する)が十分に得られなくなり、スコア加工においてフィルムが破断する恐れがある。一方、厚さが25μmを超えると、加工性などの特性が飽和し、却ってコスト高となるため好ましくない。
副層を構成する樹脂としては、局部曲げ加工性が優れるとともに、リベット加工性やスコア加工性などの一般加工性を阻害しないものであることが必要であるが、このような特性はガラス転位点(Tg)が低い樹脂(蓋加工時の温度よりも十分低いもの)、具体的にはガラス転位点(Tg)が5℃以下の樹脂を用いることにより満足することができる。このようなガラス転位点が低い樹脂は、単体では強度不足によりリベット加工やスコア加工に追従できない傾向にあるが、副層として配置された場合には主層が強度を補うため、一般加工性が損なわれることはない。
ここで、樹脂のガラス転位点(Tg)は、ティー・エイ・インスツルメント社製Q100を用いたDSC法により求めた。すなわち、サンプル樹脂或いはフィルムを5mg採取し、昇温速度10℃/min、窒素ガス流量50ml/minの条件において測定を行い、接線法により交点を求め、Tgを定めた。
副層を構成する樹脂は、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマーなどが挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
副層の厚さは1〜10μm、好ましくは2〜4μmとする。副層の厚さが1μm未満では局部曲げ加工性が劣り、一方、10μmを超えると加工性に対する効果が飽和し、却ってコスト高となるため好ましくない。
主層と副層は、それぞれ複数層設けてもよい。例えば、2つの主層の間に副層をサンドイッチしたような層構造としてもよい。
主層と副層の配置関係は、副層が上層、下層のいずれであってもよく、また、上記サンドイッチ構造の場合のように中間層であってもよく、種々の要求特性に応じて適宜選択が可能である。例えば、内容物の色素吸着などによるフレーバー特性を重視する場合には、上層はポリエステル系樹脂である主層の方が望ましく、一方、内容物の取り出し性が要求される場合には上層は副層の方が一般的には望ましい。
主層と副層は直接重ねてもよいが、要求される加工によって主層−副層間で層間剥離が生じる恐れがあるような場合などには、主層−副層間に接着層を設けてもよい。また、副層を接着性が良好な変性樹脂で構成し、主層に直接重ねるようにしてもよい。
金属板にラミネートされる有機樹脂層は、上記主層・副層のみで構成してもよいが、本発明の効果を阻害しない限度において、他の樹脂層(例えば、最上層の樹脂層、金属板との接着層など)を設けてもよい。この場合、副層又は主層が中間層となってもよい。
主層及び副層には、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、顔料、帯電防止剤、潤滑剤、結晶核剤などの添加剤を含有させてもよく、また、上層側となる層の表層にワックス成分などを添加することもできる。
主層及び副層は、フィルムラミネート(フィルムシートの熱圧着)による方法で形成してもよいし、共押出し法、ダイレクトラミネート法で形成してもよい。
本発明のラミネート金属板の下地金属板に特別な制限はない。安価で且つ密着性に優れるという面ではティンフリースチールが好ましいが、ブリキなどの他の表面処理鋼板やアルミニウム板などを用いてもよい。
次に、本発明のラミネート金属板を用いた缶蓋の製造方法について説明する。
本発明のラミネート金属板を用いて缶蓋を製造する場合、とりわけ補修塗装不要の缶蓋を製造する場合には、板厚変化が最も大きいスコア部の加工を以下のような特定の方法で行うことが好ましいことが判った。
すなわち、製蓋工程においては、先端の曲率半径Rが0.1〜1.0mmの曲面状金型を用いてスコア加工することが望ましい。曲面状金型の曲率半径が小さすぎるとフィルムが強度不足により破断する恐れがあり、一方、曲率半径が大きすぎると加工度が大きくなってしまうため、成形が困難となる傾向がある。先端の曲率半径Rが0.1〜1.0mmの曲面状金型を用いた上記スコア加工では、例えば、上下一対の金型のうちのいずれか一方が先端曲率半径Rが0.1〜1.0mmの曲面状金型で、他方が平型の金型である場合、上下一対の金型が何れも先端曲率半径Rが0.1〜1.0mmの曲面状金型である場合、などのいずれでもよく、このような金型によって押圧成形を施すことにより破断用溝を形成する。
下地金属板として、板厚0.20mm、硬度T4のティンフリースチール原板を用いた。この下地金属板に対して、フィルムラミネート法又はダイレクトラミネート法を用いて有機樹脂層をラミネートし、缶蓋用ラミネート鋼板を製造した。
得られたラミネート鋼板の面配向係数の測定方法と製蓋特性評価の方法を以下に示す。
(1)面配向係数の測定
アッベ屈折計を用い、光源:ナトリウム/D線、中間液:ヨウ化メチレン、温度:25℃の条件で、フィルム面の縦方向の屈折率Nx、フィルム面の横方向の屈折率Ny、フィルムの厚み方向の屈折率Nzを各々測定し、下式により面配向係数Nsを算出した。
面配向係数(Ns)=(Nx+Ny)/2−Nz
(2)製蓋特性評価
ラミネート鋼板に210℃×10分の熱処理を行い、次いでイージーオープンエンドの製蓋加工を施した。スコア部は無補修型のスコア加工で、0.3mmRの曲面状金型を用いて成形した。成形された蓋の局部曲げ加工部、リベット加工部、スコア加工部の耐食性をそれぞれ評価した。耐食性の評価方法は、製蓋加工後の蓋の加工部の測定部位に電解液を含ませたスポンジを密着させ、6.0Vの電圧をかけた時の電流値を測定して、下記基準に基づき評価した。なお、電解液としては、1mass%KCl水溶液200mlに界面活性剤2滴を添加したものを用いた。
○:電流値0.1mA以下
×:電流値0.1mA超
表1〜表3に各実施例のラミネート鋼板の皮膜構成とラミネート方法を示し、表4に各実施例の製蓋特性評価の結果を示す。
表1〜表4において、発明例1〜4は上層に主層を、下層に副層を配置したもので、副層の厚みを種々変化させたものであるが、いずれの加工部の耐食性も良好である。発明例5は上層に副層を、下層に主層を配置したものであるが、実施例1〜4と同様、いずれの加工部の耐食性も良好であり、副層を配置する位置に拘わりなく、副層が効果的に機能していることが判る。また、発明例6は副層を2つの主層間の中間層として配置したものであるが、この場合もいずれの加工部の耐食性も良好である。
発明例7、8は主層の面配向係数を種々変化させたものであるが、いずれの加工部の耐食性も良好である。面配向係数は、スコア加工での加工程度などに応じて適宜選択されるものであるが、これら発明例からして、面配向係数がほぼ0.04以下であれば問題なく製蓋加工が行えることが判る。発明例9〜11は主層にポリエチレンテレフタレート−ポリエチレンイソフタレート共重合体を用い、その共重合比率を変化させたものであるが、いずれの加工部の耐食性も良好である。発明例12〜14は副層の樹脂種を様々に変化させたものであるが、ガラス転位点が本発明条件を満足しているため、いずれの加工部の耐食性も良好である。発明例15、16は、主層にポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート−ポリブチレンテレフタレート共重合体を用いたものであるが、いずれの加工部の耐食性も良好である。発明例17は、エチレンプロピレンゴムの副層を接着層を介して主層と重ねたものであるが、いずれの加工部の耐食性も良好である。
比較例1は、副層の厚さが本発明の下限を下回っている。この比較例1は、リベット加工部の耐食性は良好であり、僅かながら副層の効果が見られるが、局部曲げ変形部の耐食性が劣っている。比較例2は、副層を構成する樹脂のガラス転位点が77℃であって、本発明の条件を満たしておらず、このため局部曲げ加工部、リベット加工部ともに耐食性は劣っている。比較例3は、樹脂層をポリエチレンテレフタレート単層とした例であり、局部曲げ加工部、リベット加工部など曲げ加工要素がある部分の耐食性が劣っている。比較例4は、樹脂層を本発明の副層に使用する樹脂のみで構成したものであるが、スコア加工部、リベット加工部とも耐食性が劣っている。なお、この比較例は、リベット部の張り出し加工工程において既に皮膜損傷が確認された。比較例5は副層にポリ酢酸ビニルを用いたもので、この樹脂のガラス転位点は32℃である。このため局部曲げ加工部、リベット加工部とも耐食性が劣っている。比較例6は副層にポリカーボネートを用いたものであるが、この樹脂のガラス転位点は140℃であるため、局部曲げ加工部、リベット加工部とも耐食性が劣っている。
Figure 0004725024
Figure 0004725024
Figure 0004725024
Figure 0004725024

Claims (5)

  1. 金属板の少なくとも片面に複層の有機樹脂層を有するラミネート金属板であって、前記複層の有機樹脂層のうちの一部の樹脂層がポリエステル系樹脂からなる厚さ9〜25μmの主層であり、他の一部の樹脂層がガラス転位点(Tg)が5℃以下のポリオレフィン系樹脂からなる厚さが1〜10μmの副層であり、主層と副層とが直接又は接着層を介して層状に重ねられた皮膜構造を有することを特徴とする缶蓋用ラミネート金属板。
  2. 主層がポリエチレンテレフタレートを基本骨格とする樹脂からなり、副層がポリオレフィンからなることを特徴とする請求項1に記載の缶蓋用ラミネート金属板。
  3. 主層がテレフタル酸又は/及びイソフタル酸からなるジカルボン酸成分とエチレングリコールからなるジオール成分との縮重合で得られたポリエステル系樹脂からなり、副層がポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマーの中から選ばれる1種以上からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の缶蓋用ラミネート金属板。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のラミネート金属板を用いたイージーオープンエンドタイプの缶蓋の製造方法であって、製蓋加工工程において先端の曲率半径が0.1〜1.0mmの曲面状金型を用いて破断用溝を成形することを特徴とする缶蓋の製造方法。
  5. 製蓋加工工程前に缶蓋材外面に印刷を施すことを特徴とする請求項4に記載の缶蓋の製造方法。
JP2004069796A 2004-03-11 2004-03-11 缶蓋用ラミネート金属板及び缶蓋の製造方法 Expired - Fee Related JP4725024B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004069796A JP4725024B2 (ja) 2004-03-11 2004-03-11 缶蓋用ラミネート金属板及び缶蓋の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004069796A JP4725024B2 (ja) 2004-03-11 2004-03-11 缶蓋用ラミネート金属板及び缶蓋の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2005254627A JP2005254627A (ja) 2005-09-22
JP4725024B2 true JP4725024B2 (ja) 2011-07-13

Family

ID=35080826

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004069796A Expired - Fee Related JP4725024B2 (ja) 2004-03-11 2004-03-11 缶蓋用ラミネート金属板及び缶蓋の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4725024B2 (ja)

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH11235784A (ja) * 1998-02-20 1999-08-31 Ueno Hiroshi 樹脂被覆金属板、金属缶及び缶蓋
JP3893229B2 (ja) * 1999-04-20 2007-03-14 Jfeスチール株式会社 樹脂被覆鋼板製イージーオープン缶蓋およびその製造方法
JP2001328216A (ja) * 2000-05-23 2001-11-27 Dainippon Ink & Chem Inc 複合シート及び装飾金属板成型方法
JP4079207B2 (ja) * 2001-02-28 2008-04-23 東洋製罐株式会社 樹脂被覆シームレス缶
JP2003072005A (ja) * 2001-09-03 2003-03-12 Teijin Ltd 金属板貼合せ成形加工用積層ポリエステルフィルム

Also Published As

Publication number Publication date
JP2005254627A (ja) 2005-09-22

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR20090061065A (ko) 2 피스 캔체용 라미네이트 강판, 및 라미네이트 강판제 2 피스 캔체와 그 제조 방법
JP6309741B2 (ja) 樹脂被覆金属板及びシームレス缶
JP5463876B2 (ja) 缶切不要蓋の製造方法
JP3768145B2 (ja) 熱可塑性樹脂被覆金属板およびそれを用いた缶
JP2677172B2 (ja) 保香性及び耐衝撃性に優れたラミネート絞り容器
AU785244B2 (en) Resin-coated seamless can
KR101218534B1 (ko) 2 피스 캔체용 라미네이트 강판 및 2 피스 캔체의 제조 방법, 그리고 2 피스 라미네이트 캔체
KR101002841B1 (ko) 2피스 캔용 라미네이트 강판, 2피스 캔의 제조방법 및 2피스 라미네이트 캔
JP4725024B2 (ja) 缶蓋用ラミネート金属板及び缶蓋の製造方法
EP1627820B1 (en) Laminated steel sheet
JPH0639979A (ja) 金属板貼合せ成形加工用ポリエステルフィルム
JP4149226B2 (ja) 易開性を有する缶蓋用ポリエステル樹脂被覆アルミニウム合金板
JP4725025B2 (ja) 缶蓋用ラミネート金属板の製造方法
JP6289914B2 (ja) 金属板積層用樹脂フィルム、樹脂積層金属板、それを用いた容器及び容器蓋
JP2005254626A (ja) 缶蓋用ラミネート金属板及び缶蓋の製造方法
JP6281668B1 (ja) 金属容器蓋用ラミネート金属板及びその製造方法
WO2010137550A1 (ja) スチール製絞りしごき缶及びその製造方法
JP4765257B2 (ja) 缶用ラミネート金属板
JP2015134875A5 (ja)
JP2567588B2 (ja) 積層体及びその製造方法
JP2001047554A (ja) 一般缶用ラミネート鋼板
JP3747743B2 (ja) 金属板ラミネート用樹脂フィルムおよびラミネート金属板並びにその製造方法
WO1996002387A1 (fr) Feuille mince en polyester stratifie pour stratifie metallique
JP2002193255A (ja) ラミネート缶蓋
JP2003063519A (ja) 樹脂被覆シームレス缶

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20070129

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20090513

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090526

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090725

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20100601

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20110315

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20110328

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140422

Year of fee payment: 3

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees