JP4763884B2 - 非水電解質二次電池 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、チタン酸リチウムを正極活物質として用いた非水電解質二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、SRAMおよびRTCのメモリーバック電圧の低下や環境面を配慮した充電式腕時計の開発などにより、作動電圧が約1.5Vであり、かつサイクル特性および長期保存性に優れた非水電解質二次電池が要望されていた。このような要求を満たす電池として、特開平10−64592号公報や特開平10−334917号公報には、一般式LiTiで表わされるチタン酸リチウムを正極活物質(正極作用物質)として用い、負極活物質(負極作用物質)としてリチウムを含有した炭素質材料を用いた非水電解質二次電池が開示されている。また、特開平11−260412号公報には、正極と負極との容量バランスや上記のチタン酸リチウムの比表面積を特定の範囲に限定することによりサイクル特性を向上できることが開示されている。さらに、特開平11−329431号公報には、上記のチタン酸リチウムの二次粒子径を制御することにより生産性に優れ、かつ高容量の電池を提供できることが開示されている。
【0003】
しかしながら、近時、上述のようなチタン酸リチウムを正極活物質として用いた非水電解質二次電池は、時計等の用途を中心に、サイクル特性および長期保存性の向上ならびに高容量化などの従来からの要求事項に加えて、重負荷パルス放電時の作動電圧の向上といった重負荷放電特性の向上が求められている。しかも、電池の高容量化技術の発達によって電池サイズの小型化がなされつつあり、これに伴って電極面積が減少するため、電極単位面積当たりの重負荷放電特性を向上させることはますます重要な課題となっている。
【0004】
ところで、チタン酸リチウムは一般に次に説明するような固相合成法により合成される。すなわち、酸化チタンに水酸化リチウムや酸化リチウムなどを混合した後に、空気中または酸素雰囲気中で焼成処理される。このような固相合成法により得られたチタン酸リチウムは、その比表面積が合成条件により種々変化するが、概ね0.5〜2m/g程度となる。
【0005】
正極活物質としてチタン酸リチウムを用いた非水電解質二次電池において、重負荷放電特性を向上させるためには、放電時にリチウムイオンのチタン酸リチウム中への挿入反応を円滑に進行させることが必要である。そのための一つの手段として、チタン酸リチウムの比表面積を高めることによりチタン酸リチウムと電解液との接触面積を増大させることが有効であると考えられる。
【0006】
特開平11−260412号(特願平10−057043号)公報には、チタン酸リチウム合成時に比較的低温の700℃で焼成処理することにより、BET法(N吸着法)により求められる比表面積が10m/g程度となることが開示されている。
【0007】
また、特開平9−309727号公報には、チタン酸リチウムを高比表面積化するために、チタン酸リチウムを水熱法により合成することが開示されている。この公報によれば、チタン酸化合物とリチウム化合物とを熱水中で反応させ、一旦チタン酸リチウム水和物を得た後に、この水和物を乾燥して脱水する。これにより、長径1μm、短径0.8μm、厚さ0.01〜0.05μmの非常に薄い層状の粒子が連なる構造を有するチタン酸リチウム粉末が得られる。このような水熱法により合成されたチタン酸リチウムは、内部に多数の空隙を有するため、BET法により求められる比表面積が100m/g程度と非常に大きくなることが開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平11−260412号公報のチタン酸リチウムは、焼成温度を700℃と低温にしているため、結晶性(結晶化率)が低くなり、これを正極活物質として用いた電池は放電容量が低くなるという問題がある。また、チタン酸リチウムの表面活性が高くなり電解液の分解を引き起こすなどの問題を生じるおそれがある。
【0009】
また、特開平9−309727号公報のチタン酸リチウムを用いて、本発明者らが実際に電池を作製したところ、チタン酸リチウムが非常に薄い層状構造をなし、内部に多数の空隙を有するためにその充填密度が低下するため、作製した電池は単位体積当たりの放電容量が低下することが判明した。さらに、チタン酸リチウムの比表面積が大きすぎるため、電解液の分解が顕著になるなどの問題を生じることが判明した。
【0010】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、チタン酸リチウムを正極活物質に用いた非水電解質二次電池において、放電容量が大きく、かつ重負荷放電特性に優れた電池を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明者らが鋭意研究を積み重ねた結果、固相合成法により高い焼成温度で合成し、微粉砕処理したチタン酸リチウムを正極活物質として用いた非水電解質二次電池は、高い放電容量と優れた重負荷放電特性とを有するという知見を得た。本発明はこのような知見に基づいてなされたものである。
【0012】
本発明に係る非水電解質二次電池は、一般式LixTiy4で表わされ、xおよびyがそれぞれ0.8≦x≦1.4および1.6≦y≦2.2の範囲内である組成のチタン酸リチウムを正極活物質として用いた非水電解質二次電池において、前記チタン酸リチウムは、塊状かつ結晶質の粒子であり、粒径1μm未満の微粒子を粒子数で40%以上75%以下の範囲で含み、メジアン径が0.4μm以上1.5μm以下で、BET法による比表面積が4m 2 /g以上24m 2 /g以下の範囲内であることを特徴とする。
【0013】
正極活物質としてのチタン酸リチウムを、塊状かつ結晶質の粒子とし、粒径1μm未満の微粒子を粒子数で7%以上85%以下の範囲で含むようにすることにより、単に比表面積を増大させただけのチタン酸リチウムに比べて、表面活性が低くなり、電解液の分解を抑制できるとともに、個々の粒子におけるリチウムイオンの拡散距離が短くなり放電時に分極が生じるのを抑制できる。
【0014】
ここで、粒径1μm未満の微粒子数の割合を上述した特定の範囲に規定した理由は、この割合を7%未満にすると、重負荷放電特性の向上効果が得られないからである。一方、この割合を75%を超えるような微細粒ばかりにすると、正極活物質としての充填密度を高めるためにプレス圧を高くしなければならず、プレス割れが発生しやすくなる。したがって、この場合には、プレス圧を高くできず充填密度が低下するため、放電容量が低下するおそれがあるからである。
【0015】
ところで、この種の非水電解質二次電池の正極は、正極活物質としてのチタン酸リチウムと導電剤および結着剤とを混練してなる顆粒合剤をタブレット状に加圧成形して作製される。
【0016】
本発明におけるチタン酸リチウムは、塊状の粒子であるため、正極合剤の充填密度を高めることができ、高い放電容量の電池を得ることができる。また、本発明におけるチタン酸リチウムは、単一粒度のものと異なり、粗粒子と1μm未満の微粒子とが特定の配合割合で混在された状態であるとともに個々の粒子が塊状であるため、正極の作製にあたり、顆粒合剤の成形性を高めることができる。したがって、顆粒合剤の加圧成形時にクラックが発生するのを防止でき、成形体の強度を高めることができる。
【0017】
本発明によれば、正極活物質として用いるチタン酸リチウムは、固相合成法により750℃以上の焼成温度で合成した後に粉砕してなるものであることが好ましい。
【0018】
ここで、チタン酸リチウムの好ましい合成法として固相合成法を採用する理由は、水熱合成法により得られる層状のものとは異なり、塊状のチタン酸リチウムを得ることができるからである。また、固相合成法における焼成温度が高い程、チタン酸リチウムの結晶化が進み、焼成温度を750℃以上にすることにより高結晶性のものを得ることができる。この焼成温度は、850℃以上にすることがより好ましい。このようにチタン酸リチウムの結晶性を高めることにより、優れた重負荷放電特性を示す非水電解質二次電池を得ることができる。
【0019】
上記の固相合成法では、焼成するにあたり、例えば、酸化チタンのようなチタン化合物に、水酸化リチウムや酸化リチウムなどのようなリチウム化合物を粉末又は水溶液の形態で添加混合した混合物を用いることができる。このとき、固相合成後に得られる化合物が、一般式LiTiで表わされ、xおよびyがそれぞれ0.8≦x≦1.4および1.6≦y≦2.2の範囲内の組成となるような混合割合とする。
【0020】
ところで、焼成温度が高温である程、上述したように結晶化が進むものの、焼結も進行するため、固相合成したままの状態で正極活物質として用いた場合、重負荷放電特性に劣る。本発明者らが鋭意検討した結果、固相合成法により得られた塊状のチタン酸リチウムに粉砕処理を施して、より小さな塊状粒子とし、かつ粒径1μm未満の微粒子数を粒子数で7%〜85%の割合にすることにより、放電容量が大きく、かつ優れた重負荷放電特性を発揮できることが判明した。
【0021】
上記の粉砕処理は、例えばボールミル、遊星ミル、石臼式粉砕機、気流粉砕機、竪型攪拌ミル、衝撃式粉砕機などによる粉砕方法を挙げることができ、特定の粉砕方法に限定されるものではない。また、上記の粉砕処理を施す前に、後述するメジアン径が10〜30μm程度にあらかじめ粗粉砕する予備処理を行なうようにしてもよく、これにより微粉砕処理後の粒度のばらつきを抑えることができる。さらに、必要に応じて、分級処理による粒度調整を行なうようにしてもよい。
【0022】
なお、1μm未満の微粒子以外の粒子は、その粒径が1μm〜50μmであることが好ましい。
【0023】
本発明によれば、正極活物質として用いるチタン酸リチウムは、メジアン径が0.3μm以上8μm以下の範囲内であることが好ましい。ここで、上記のメジアン径とは、粒子数が中央値(50%)となる粒径のことをいう。このメジアン径を0.3μm未満にすると、正極作製時に正極活物質としての充填密度が低下するおそれがある。一方、8μmを超えるメジアン径にすると、重負荷放電特性の向上効果を得ることができないおそれがある。
【0024】
また、本発明によれば、正極活物質として用いるチタン酸リチウムは、さらに、BET法(N吸着法)による比表面積が1m/g以上35m/g以下の範囲内であることが好ましい。比表面積を1m/g未満にすると、チタン酸リチウムの電解液との接触面積が低減し、重負荷放電特性が劣化するおそれがあるからである。一方、35m/gを超える比表面積にすると、電解液の分解を招き、放電容量が低下するなどの問題が生じるおそれがあるからである。
【0025】
さらに、チタン酸リチウムは、メジアン径が0.4μm以上1.5μm以下であり、かつ粒径1μm未満の微粒子を粒子数で40%以上75%以下の範囲で含むことが好ましい。この場合に、チタン酸リチウムは、BET法による比表面積が4m/g以上24m/g以下の範囲内であることが好ましい。このように規定されたチタン酸リチウムを正極活物質として用いることにより、高い放電容量とともに、より優れた重負荷放電特性を有する非水電解質二次電池を得ることができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施形態について図1を参照して説明する。
【0027】
(実施例)
(例1)
<正極1の作製>
まず、酸化チタンと水酸化リチウムとがモル比で5:4となるように酸化チタンに水酸化リチウム水溶液を添加混合し、この混合物を120℃で2時間加熱保持することにより水分を蒸発させて除去した。
【0028】
次に、水分除去した混合物を空気中、900℃の加熱温度下で12時間焼成した後に、空気中で5時間かけて徐冷することにより、結晶質である塊状チタン酸リチウム(組成式;Li1.33Ti1.67)を得た。
【0029】
次いで、得られたチタン酸リチウムにつき、ヤマト化学(株)製ラボミルを用いてあらかじめ粗粉砕処理を施した。この粗粉砕後に、セイシン企業製の粒度分布測定装置(型名;SK LASER MICRON SIZER PRO−7000S)を用いて調べたところ、粒径1μm未満の微粒子数は0.2%であり、メジアン径が25μmであった。
【0030】
さらに、ヤマト化学(株)製ユニバーサルボールミルを用いて24時間、微粉砕処理することにより、正極活物質としてのチタン酸リチウム粉末を調製した。このチタン酸リチウム粉末について走査電子顕微鏡により観察を行なった結果、個々の粒子は塊状であった。
【0031】
このチタン酸リチウムについて、上記の粒度分布測定装置を用いて粒径1μm未満の微粒子の含有率およびメジアン径を調べた結果、粒径1μm未満の微粒子は粒子数で上述の特定範囲内である60%、メジアン径は上述の好ましい範囲内である0.7μmであった。また、BET法により比表面積を調べた結果、上述の好ましい範囲内である9.6m/gであった。
【0032】
なお、得られたチタン酸リチウム粉末の粒度分布を調べたところ、粒径0.07μm以上1μm未満の微粒子が占める領域と粒径1μm以上20μm以下の粗粒子が占める領域との2つのピーク領域を有し、それぞれのピークが極大値をとる粒径値、すなわち粒子数頻度が極大値をとる粒径値は0.3μmおよび4μmであった。
【0033】
得られたチタン酸リチウム94質量部と、カーボンブラック3質量部と、黒鉛粉末3質量部と、ポリテトラフルオロエチレン5質量部とを混合した混合物について所定量分取して加圧成形し、厚さ0.5mm、直径3.9mmであるタブレット状の成形体を得た。この成形体を80℃で12時間減圧乾燥し、正極1を作製した。
【0034】
<負極2の作製>
メソフェーズピッチ炭素繊維粉末95質量部に、スチレン・ブタジエンゴムおよびカルボキシメチルセルロースをそれぞれ2.5質量部加えて混合し、この混合物から所定量分取して加圧成形し、厚さ0.5mm、直径3.9mmであるタブレット状の成形体を得た。この成形体を80℃で12時間減圧乾燥した後、さらに電気化学的にリチウムをドープして負極2を作製した。
【0035】
<非水電解液の調製>
エチレンカーボネートとγ−ブチルラクトンとを体積比で1:1の配合割合で混合した非水溶媒にホウフッ化リチウムLiBFをその濃度が1モル/リットルとなるように溶解させて非水電解液を調製した。
【0036】
<電池の作製>
あらかじめ開口部に絶縁性のガスケット3が設けられたステンレス鋼からなる負極ケース4の内底面に前述の負極2を着設した。この負極2上にポリプロピレン不織布からなるセパレータ5を載置した。次いで、このセパレータ5に前述の非水電解液を含浸させた。その後、セパレータ5上に前述の正極1を載置した。しかる後、負極ケース4の開口部に、ガスケット3を介して正極ケース6を嵌合させ、この正極ケース6の開口部を加締めることにより図1に示す構成のコイン形非水電解質二次電池を作製した。作製した電池の最大直径は6.8mmであり、高さは1.4mmである。
【0037】
(例2〜例7)
微粉砕の処理時間を5時間(例2)、8時間(例3)、12時間(例4)、48時間(例5)、96時間(例6)、200時間(例7)とした以外は上述の例1と同様にして結晶質のチタン酸リチウム(組成式;Li1.33Ti1.67)粉末を調製した。
【0038】
これら例2〜例7のチタン酸リチウム粉末について走査電子顕微鏡により観察を行なった結果、いずれも個々の粒子は塊状であった。
【0039】
また、得られたチタン酸リチウム粉末につき、例1で説明したのと同様に、粒径1μm未満の微粒子数の割合、メジアン径および比表面積をそれぞれ調べた。その結果、例2〜例6のチタン酸リチウムはいずれも粒径1μm未満の微粒子が上述した特定範囲内の含有率で含有されているのみならず、メジアン径および比表面積がそれぞれ上述した好ましい範囲内であった。一方、例7のチタン酸リチウムは粒径1μm未満の微粒子が粒子数で94%と上述の特定範囲を逸脱していた。また、メジアン径は0.2μmであり、比表面積は58.2m/gであった。
【0040】
得られたチタン酸リチウム粉末を用いて上述の例1で説明したのと同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0041】
(例8)
微粉砕処理を行なわなかった以外は、例1と同様にして、粗粉砕されたチタン酸リチウム(組成式;Li1.33Ti1.67)を調製した。
【0042】
例8のチタン酸リチウムについて走査電子顕微鏡により観察を行なった結果、個々の粒子は塊状であった。
【0043】
また、得られたチタン酸リチウムにつき、メジアン径、粒径1μm未満の微粒子数の割合および比表面積をそれぞれ調べた。その結果、粒径1μm未満の微粒子が粒子数で0.2%と上述の特定範囲の下限値を大幅に下回る値であった。また、メジアン径は25μm、比表面積は0.5m/gであった。
【0044】
得られたチタン酸リチウムを用いて上述の例1で説明したのと同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0045】
以上のようにして作製した例1〜例8の電池について、それぞれ20℃の温度下で50μAの定電流放電を行ない、終止電圧が1.0Vになるまでの軽負荷放電容量を測定した。
【0046】
また、例1〜例8の電池について、それぞれ20℃の温度下で50μAの放電電流で16時間放電を行なった後、24時間放置した。しかる後、−10℃の温度下で300μAの定電流放電を行なった。ここで、300μAの定電流放電を開始してから5秒後に閉路電圧を測定し、この閉路電圧の値により重負荷放電特性を評価した。
【0047】
これらの評価結果を表1に示す。なお、微粉砕処理の処理時間(時間)および固相合成時の焼成温度(℃)と、粒径1μm未満の微粒子の含有率、メジアン径および比表面積につき調べた結果とを表1に併記する。
【0048】
【表1】
Figure 0004763884
【0049】
表1に示すように、例1〜例6の電池は、放電容量が1.63mA以上と高くなるとともに、閉路電圧が0.83V以上と高くなり、高い放電容量と優れた重負荷放電特性とをともに有することが判明した。特に、粒径1μm未満の微粒子を粒子数で40%以上75%以下の範囲で含み、かつメジアン径が0.4μm以上1.5μm以下であり、さらに比表面積が上述した好ましい範囲(4〜24m/g)内であるチタン酸リチウムを用いた例1、例4および例5の電池は、重負荷閉路電圧が1.22V(例1)、1.12V(例4)、1.23V(例5)とより高い値を示し、より優れた重負荷放電特性を有することが判明した。
【0050】
一方、粒径1μm未満の微粒子が粒子数で94%と特定範囲の上限値を超える含有割合のチタン酸リチウムを用いた例7の電池は、重負荷閉路電圧が0.97Vとなり優れた重負荷放電特性を有するものの、軽負荷放電時の放電容量が1.35Vと低い値となることが判明した。この例7の電池における放電容量の低下は、正極作製時の加圧成形において、正極活物質としてのチタン酸リチウムの充填密度を高めることができないことに起因するものと考えられる。
【0051】
また、粒径1μm未満の微粒子が粒子数で0.2%と特定範囲の下限値に満たない含有率のチタン酸リチウムを用いた例8の電池は、放電容量が1.67Vと高い値を示すものの、重負荷閉路電圧が0.39Vと著しく低くなり、重負荷放電特性に極めて劣ることが判明した。
【0052】
(例9〜14)
固相合成時の焼成温度を表2に示すように700℃(例9)、750℃(例10)、850℃(例11)、1000℃(例12)、1100℃(例13)、1200℃(例14)と変更した以外は、例1で説明したのと同様にして、結晶質のチタン酸リチウム(組成式;Li1.33Ti1.67)粉末を調製した。これら例9〜14のチタン酸リチウム粉末について走査電子顕微鏡により観察を行なった結果、いずれも個々の粒子は塊状であった。
【0053】
得られたチタン酸リチウムにつき、粒径1μm未満の微粒子数の割合、メジアン径および比表面積をそれぞれ調べた。その結果を表2に示す。
【0054】
表2に示すように例9〜例14のチタン酸リチウムは、いずれも粒径1μm未満の微粒子の含有率が40%以上75%以下の上述の好ましい範囲内であり、かつメジアン径が0.4μm以上1.5μm以下の上述の好ましい範囲内であった。また、例10〜例14では比表面積が4m/g以上24m/gの上述のより好ましい範囲内である一方、例9では比表面積が48.7m/gと高い値を示した。
【0055】
得られたチタン酸リチウムを用いて上述の例1で説明したのと同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0056】
(例15)
固相合成時の焼成温度を700℃とし、微粉砕処理を行なわなかった以外は、例1と同様にして、粗粉砕された結晶質のチタン酸リチウム(組成式;Li1.33Ti1.67)を調製した。
【0057】
得られたチタン酸リチウムについて走査電子顕微鏡により観察を行なった結果、個々の粒子は塊状であった。また、粒径1μm未満の微粒子の含有率、メジアン径および比表面積につき調べた結果を表2に示す。このチタン酸リチウムは、粒径1μm未満の微粒子が粒子数で2%と特定範囲の下限値を下回る値となった。また、メジアン径は15μmであり、比表面積は10.0m/gであった。
【0058】
得られたチタン酸リチウムを用いて上述の例1で説明したのと同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0059】
以上のようにして作製された例9〜例15の電池について、前述した例1〜例8で説明したのと同様にして放電容量および重負荷閉路電圧を測定した。その結果を表2に併記する。
【0060】
【表2】
Figure 0004763884
【0061】
表2から、750℃以上の高い焼成温度で合成し、微粉砕処理したチタン酸リチウムを用いた例10〜例14の電池は、いずれも放電容量が高い値であるとともに閉路電圧が高い値となり、高い放電容量および優れた重負荷放電特性を有することが判明した。
【0062】
一方、700℃と低い焼成温度で合成し、微粉砕処理したチタン酸リチウムを用いた例9の電池は、重負荷閉路電圧が高い値となり優れた重負荷放電特性を有するものの、軽負荷放電時の放電容量が1.24mAhと低い値となることが判明した。これは、チタン酸リチウムの結晶化が不十分であり、活物質当たりの放電容量が低い上にチタン酸リチウムの表面の活性度が高いため、放電末期に電解液の分解が生じたことによる。
【0063】
(例16)
例16では、例1で説明した粗粉砕処理の前に、500℃で5時間保持する仮焼を行なった。次いで例1で説明したのと同様にヤマト化学(株)製ラボミルを用いた粗粉砕処理を施した後にヤマト化学(株)製ユニバーサルボールミルを用いて24時間微粉砕処理を行なった。しかる後、900℃、12時間で本焼成を行ない、チタン酸リチウム(組成式;Li1.33Ti1.67)を調製した。
【0064】
得られたチタン酸リチウムにつき、粒径1μm未満の微粒子数の割合、メジアン径および比表面積を調べた。その結果、粒径1μm未満の微粒子は粒子数で0.8%含有され、メジアン径は21μmであり、比表面積は0.6m/gであった。このように、例16では、微粉砕処理後に本焼成を行なったため、微粒子同士の焼結が進行して粒成長し、1μm未満の微粒子数が大幅に減少するとともに、メジアン径が増大した。
【0065】
調製したチタン酸リチウムを用いて上述の例1で説明したのと同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0066】
(例17)
酸化チタン80gを、容器内に収容した蒸留水1.7リットル中に分散させ、スラリーとした後、3Mの水酸化リチウム水溶液0.33リットルを1時間かけて徐々に加え、さらに3.2Mのアンモニア水溶液0.38リットルを加えた。次いで容器内の内容物を1時間攪拌した後、この内容物をオートクレーブにて170℃で4時間かけて水熱合成を行なった。この合成により得られたスラリーを濾別し、乾燥してチタン酸リチウム水和物を得た。
【0067】
次に、得られたチタン酸リチウム水和物をヤマト化学(株)製ラボミルを用いて粗粉砕した後に、空気中、580℃で2時間加熱して脱水することによりチタン酸リチウム(組成式;Li1.33Ti1.67)粒を調製した。
【0068】
得られたチタン酸リチウム粒の形状について走査電子顕微鏡を用いて観察したところ、長径1μm、短径0.8μm、厚さ0.01〜0.05μmである非常に薄い層状粒子が多数連なる形態であった。
【0069】
このチタン酸リチウムにつき、メジアン径、粒径1μm未満の微粒子数の割合および比表面積をそれぞれ調べた。その結果、粒径1μm未満の微粒子は粒子数で6.1%含有され、メジアン径は9.3μmであり、比表面積は39.3m/gであった。
【0070】
このチタン酸リチウムを用いて上述の例1で説明したのと同様にして非水電解質二次電池を作製した。
【0071】
以上のようにして作製された例16および例17の電池について、前述した例1〜例8で説明したのと同様にして放電容量および重負荷閉路電圧を測定した。その評価結果を表3に示す。なお、微粉砕処理の処理時間(時間)および固相合成時の焼成温度(℃)と、粒径1μm未満の微粒子の含有率、メジアン径および比表面積につき調べた結果とを表3に併記する。
【0072】
【表3】
Figure 0004763884
【0073】
表3に示すように、例16の電池は、軽負荷放電時の放電容量が1.67mAhと高い値を示すものの、重負荷閉路電圧の値が0.41Vと著しく低くなり、重負荷放電特性に極めて劣ることが判明した。また、例17の電池は、重負荷閉路電圧の値が0.81Vと比較的高い値を示すものの、軽負荷放電時の放電容量が1.21mAhと著しく低下することが判明した。これは、薄い層状のチタン酸リチウム粒を用いたため、正極作製時に正極活物質としての充填密度が上がらないことによるとともに、軽負荷放電時の放電末期に電解液の分解を招いたことによる。
【0074】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。
【0075】
例えば、上記の実施形態では負極2として負極活物質であるリチウムを炭素質材に電気化学的にドープしたものを用いたがこの限りではなく、負極活物質として金属リチウム、リチウム合金、窒化リチウム、リチウム含有珪素酸化物およびリチウム含有錫酸化物等から選ばれる1種又は2種以上を用いてもよい。
【0076】
また、上記の実施形態では電解液としてエチレンカーボネートとγ−ブチルラクトンとの混合溶媒にLiBFを溶解したものを用いたがこの限りではなく、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の炭酸エステル溶媒や1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン等の溶媒にリチウム塩を溶解したものを用いるようにしてもよい。さらに電解液の代わりに固体電解質を用いることもできる。
【0077】
さらに、電池形状はコイン形のものを用いて説明したが、これに限定されることなく、角形や円筒形等のような別の電池形状としてもよい。
【0078】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、一般式LiTiで表わされ、xおよびyがそれぞれ0.8≦x≦1.4および1.6≦y≦2.2の範囲内である組成のチタン酸リチウムを正極活物質として用いた非水電解質二次電池において、放電容量が大きく、かつ重負荷放電特性に優れた電池を提供できるので、その工業的な価値は非常に大きいものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る非水溶媒二次電池の一例を示す断面図。
【符号の説明】
1・・・正極、
2・・・負極、
3・・・ガスケット、
4・・・負極ケース、
5・・・セパレータ、
6・・・正極ケース。

Claims (2)

  1. 一般式LixTiy4で表わされ、xおよびyがそれぞれ0.8≦x≦1.4および1.6≦y≦2.2の範囲内である組成のチタン酸リチウムを正極活物質として用いた非水電解質二次電池において、
    前記チタン酸リチウムは、塊状かつ結晶質の粒子であり、粒径1μm未満の微粒子を粒子数で40%以上75%以下の範囲で含み、メジアン径が0.4μm以上1.5μm以下で、BET法による比表面積が4m 2 /g以上24m 2 /g以下の範囲内であることを特徴とする非水電解質二次電池。
  2. 前記チタン酸リチウムは、固相合成法により750℃以上の焼成温度で合成した後に粉砕してなることを特徴とする請求項1に記載の非水電解質二次電池。
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