JP4762778B2 - 金属製積層型カバー - Google Patents

金属製積層型カバー Download PDF

Info

Publication number
JP4762778B2
JP4762778B2 JP2006126841A JP2006126841A JP4762778B2 JP 4762778 B2 JP4762778 B2 JP 4762778B2 JP 2006126841 A JP2006126841 A JP 2006126841A JP 2006126841 A JP2006126841 A JP 2006126841A JP 4762778 B2 JP4762778 B2 JP 4762778B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
metal
cover
vibration
heat
thin plate
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2006126841A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2007297980A (ja
Inventor
一晃 三島
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sanwa Packing Industry Co Ltd
Original Assignee
Sanwa Packing Industry Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sanwa Packing Industry Co Ltd filed Critical Sanwa Packing Industry Co Ltd
Priority to JP2006126841A priority Critical patent/JP4762778B2/ja
Publication of JP2007297980A publication Critical patent/JP2007297980A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4762778B2 publication Critical patent/JP4762778B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Exhaust Silencers (AREA)

Description

本発明は、例として内燃機関の排気管など熱と振動を発生する熱源を覆い、熱源に対して制振作用及び遮熱作用を実現する金属性積層型カバーに関するものである。
このような熱と振動を発生する熱源の一例として内燃機関(以下、エンジン)が挙げられる。エンジン本体や、エンジンに接続されたエキゾーストマニホールド(以下、エキマニと略記)などの排気系からは、熱や騒音、振動などが外部に放散されている。このようなエンジン本体や排気系などの熱源から熱や振動が外部に無闇に放散される事態を防止するために、従来から、上記熱源に対してヒートインシュレータなど各種のカバーが用いられている。
図16は下記特許文献1に示される従来技術である消音器51の縦断面図である。以下、図16を参照して従来技術について説明する。本従来技術では、平均繊維径2.5μmのシリカアルミナ繊維から成る厚さ6mmのマット状基材層52の全表面に、焼成済みバーミキュライトの水性ディスパージョンを、刷毛を使用して固形分重量として100g/mとなるように塗布し、次いで150℃の熱風により約1時間乾燥してバーミキュライト被覆層53を形成させ、防音断熱材部分52、53を作製する。
前記焼成済みバーミキュライトの水性ディスパージョンは、市販のバーミキュライト(
0号、ニチアス株式会社製)を800℃で1時間焼成して結晶水を除去した後、その150gを蒸留水1リットルに投入し、さらに硫酸アンモニウム1g及びメチルセルローズ5gを添加した後、均一に攪拌して固形分約13重量%に調製して得られる。
消音器51の、壁面に多数の気孔55を有する貫通パイプ56の外表面に、上記の防音断熱材部分52、53のバーミキュライト被覆層53側が接するように、そして外側に基材層52となるように巻き付けた後、外側に略筒状のアウタシェル57を取り付けて防音断熱材部分52、53を挟む。
上記特許文献1において、このような防音断熱材部分52、53を含む消音器51の実機耐久テストが行われた結果、消音器51において、使用に伴なう吸音性の性能低下はなく、また、前記バーミキュライト被覆層53は一部薄くなる現象は発生したが、マット状基材層52の繊維の飛散・脱落は認められないと記載されている。また、比較例として、上記防音断熱材部分52、53において、バーミキュライト被覆層53を設けないE−ガラス繊維のマット状基材層52のみを使用した消音器に対する実機耐久テストが行われた場合には、マット状基材層52の繊維が約45%飛散して減量したとの現象が記載されている。
また、特許文献1に示されているマット状基材層52のような無機繊維層を使用する従来技術とは別に、下記特許文献2及び特許文献3に示されるような、金属製カバーに関する従来技術も知られている。これら、特許文献2及び特許文献3で示される従来技術では、金属シートを積層して金属製カバーを構成し、しかも、吸音性、制振性、遮熱性を有するとされているものである。
特開2003−266572公報(第47段落〜第50段落及び図3) 特開2001−347323公報 特開2002−113525公報
上記消音器などの音源からの騒音の放散を抑制しようとする従来技術において、上述したように、シリカアルミナ繊維やE−ガラス繊維などの無機繊維から成るマット状基材層を用いる技術が多く用いられている。しかしながら、このような従来技術では、前述したような、使用される無機繊維の粉末化による飛散、脱落が不可避である。このため、上記特許文献1に示されているように、無機繊維からなるマット状基材層を保持し、無機繊維の飛散や脱落を防止するための、バーミキュライト被覆層3などのような、何らかの被覆層が必要になる。
上記従来技術におけるように、マット状基材層と被覆層とを用いる従来技術では、被覆層をマット状基材層に塗布するなどして密着させている。従って、上記従来技術における消音器のように、熱源から熱と振動が発生する場合、この熱が被覆層を介して直ちにマット状基材層に伝達され、マット状基材層を構成する無機繊維の熱疲労、熱破壊を促進し、遮熱性能や制振性能の低下を招き、品質に関する耐久性が低下するという不具合を有している。
また、上記従来技術において、上述した被覆層の形成、或いは被覆層とマット状基材層との間の相互固定には、相応の製造工程が必要になり、音源に対して用いられ、遮熱作用や制振作用を実現するためのカバー類の製造に際して、工数が増大し、カバー類を構成する部品点数が増大するという不具合がある。
また、前記特許文献2及び特許文献3に示される従来技術の金属製カバーにおいて、熱源に臨んで内側に配置されている内側金属シートと、内側金属シートに関して熱源と反対側の外側に配置されている外側金属シートとは、相互に全面に亘って密着している。これにより、熱源から内側金属シートに到達した熱や騒音、振動などが容易に外側金属シートに伝わり、熱源からの熱や騒音、振動などが、金属製カバーの2層の金属シートを介して、金属性カバー外方に多大に放散されてしまい、金属製カバーの遮熱、遮音、吸音、制振に関する品質が低下するという不具合がある。
本発明は、上記不具合を解消すべくなされたものであり、その目的は、遮熱性能、遮音性能、吸音性能及び制振性能を向上できると共に、製品の耐久性を向上することができる金属製積層型カバーを提供することである。
請求項1記載の発明の金属製積層型カバーは、熱及び振動を発生する熱源の形状、或いは該熱源からの熱及び振動に対して保護すべき保護対象の形状のいずれかの形状に対応して立体形状に形成された高明度で光沢を有する金属材料から構成される金属製積層型カバーであって、金属材料からなり、全面に亘り相互に交差する複数の方向に沿ってコルゲート加工がそれぞれ施された複数の金属シートが、相互に空間を隔てて積層され、各金属シートには、コルゲート加工により形成された多数の隙間が全面に亘って形成され、各金属シートは外周部に離散的に設定された接合部位で点接触して相互に固定されているとともに、前記複数の金属シートのうち前記保護対象側の金属シートに、前記空間が前記保護対象側に臨む開口部を備えたことを特徴とする。
このような請求項1の発明において、金属製積層型カバーを構成する複数の金属シートには、前記多数の隙間が全面に亘って形成されており、また、各金属シートは相互に空間を隔てて積層されると共に、更に、その外周部に離散的に設定された接合部位で点接触して相互に固定されているとともに、前記複数の金属シートのうち前記保護対象側の金属シートに、前記空間が前記保護対象側に臨む開口部を備えている
従って、本発明の金属製積層型カバーは、熱源、金属製積層型カバー及び保護対象の近辺の空気に流れが生じている場合、前記保護対象側の金属シートに備えた開口部により、前記空間内の空気層にも流れが生じることになり、金属製積層型カバーは、効率的に冷却され、熱源に対する遮熱作用を効率的に行う。更に、前記熱源、金属製積層型カバー及び保護対象の近辺の空気の流れが停止している場合、前記空間内の空気層の流れは実質的に停滞する。このような場合でも、本発明の金属製積層型カバーは、前記空間内における空気層により、良好な遮熱作用を実現できる。
従って、本発明によれば、金属製積層型カバーの遮熱性能が格段に向上される。また、本発明の金属製積層型カバーにおいて、特段の遮熱用部材を用いる必要が解消され、簡便な構成で遮熱性能を向上することができる。
また、本発明の金属製積層型カバーは、各金属シート毎に前記多数の隙間から構成される空気層と、各金属シート間の空間における空気層との三重の空気層を保持していることになる。この三重の空気層は、熱源から発生した熱、騒音及び振動に関して絶縁層の作用を実現する。これにより、熱源から発生した熱、騒音及び振動が、金属製積層型カバーを通過して保護対象側に放散される程度が、上記三重の空気層の存在により、格段に抑制される。従って、金属製積層型カバーの遮熱性能、遮音性能、吸音性能、制振性能及びこれらの性能に関する耐久性を格段に向上することができる。
また、本発明において、マット状基材層が不要になるので、前記基材層の使用に伴なう熱疲労、熱破壊による遮熱性能や制振性能などの低下を補償するための被覆層も不要になる。これにより、金属製積層型カバーの製造工数と部品点数が格段に削減される。
また、金属製積層型カバーを構成する複数の金属シートは、外周部に離散的に設定された接合部位で点接触して相互に固定されているので、熱源に臨む金属シートから、保護対象側の金属シートへの熱、騒音及び振動の伝達が格段に抑制される。これによっても、熱源から発生した熱、騒音及び振動が、金属製積層型カバーを通過して保護対象側に放散される程度が格段に抑制され、金属製積層型カバーの遮熱性能、遮音性能、吸音性能、制振性能及びこれらの性能に関する耐久性が格段に向上される。
請求項2記載の発明の金属製積層型カバーは、前記請求項1の発明において、前記各金属シートが、金属からなる複数枚の金属板が相互に積層され、積層された複数枚の金属板に、谷部と隆起部とが交互に繰り返される波形形状が第1方向に沿って連なって形成され、該第1方向と交差する第2方向に沿って、谷部と隆起部とが交互に繰り返される他の波形形状が連なって形成されていることを特徴とする。
本発明において、各金属シートは、複数枚の金属板が積層されて構成されている。また、各金属シートに形成された波形形状はコルゲート形状である。従って、本発明では、請求項1で説明した作用効果と同様な作用効果が実現される。更に、本発明では、各金属シートが複数の金属板から構成されているので、各金属シートの板厚が増大され、また、前記多数の隙間から構成される空気層が、各金属シート毎に2層になる。これにより、金属製積層型カバーの遮熱性能、遮音性能、吸音性能、制振性能及びこれらの性能に関する耐久性が更に向上される。
請求項3記載の発明の金属製積層型カバーは、前記請求項1又は2の発明において、複数の金属シートは、相互に相異なる板厚に選ばれていることを特徴とする。
本発明において、相互に相異なる板厚の金属シートは、相互に空間を隔てて相互に固定され、その固定は、外周部に離散的に設定された接合部位で点接触して実現されている。これにより、各金属シートは実質的に個別に振動する。この金属シートの振動により、熱源から金属シートに伝達された振動のエネルギーの一部が、金属シートの振動エネルギーに変換され、金属製積層型カバーから保護対象側に放散される振動や騒音を低減することができる。
本発明において、熱源からの振動により各金属シートが振動するとき、各金属シートの板厚が相互に相異なることにより、各金属シートの共振周波数帯域が相互に異なることになる。従って、本発明の金属製積層型カバーにより、広範な周波数帯域の振動、騒音の外部への放散を抑制することができ、遮音性能、吸音性能、制振性能が向上される。
請求項4記載の発明の金属製積層型カバーは、前記請求項1〜3のいずれかの発明において、前記複数の金属シートのうち、前記保護対象に臨む金属シートには、少なくとも他の金属シートと前記空間を隔てる範囲に亘り、複数の透孔が形成されていることを特徴とする。
本発明の金属製積層型カバーがこのような構成を有することにより、ヘルムホルツ共鳴の原理による吸音作用を実現することができる。吸音すべき振動、騒音の周波数帯域に対応して、金属シートの板厚、開口率、穴径などが適宜選択されることにより、所望の周波数帯域に関する吸音作用を実現することができる。
従って、本発明では、上記請求項1〜3のいずれかに関して説明された作用効果に加え、更に金属製積層型カバーの遮音性能、吸音性能、制振性能が向上される。
本発明の金属製積層型カバーは、複数の金属シートから構成されているので、使用に伴なう時間経過で疲労や破壊が容易にもたらされる無機繊維などからなる部材を必須要件とする必要が解消されているので、耐久性が格段に向上され、製造工数と部品点数が格段に削減される。更に、金属製積層型カバーは、複数の金属シートの間に空間を含んでおり、また、本発明の金属製積層型カバーは、当該空間を含む三重の空気層を有しており、加えて、複数の金属シートが、外周部に離散的に設定された接合部位で点接触して相互に固定されるとともに、前記複数の金属シートのうち前記保護対象側の金属シートに、前記空間が前記保護対象側に臨む開口部を備えているので、遮熱性能、遮音性能、吸音性能、制振性能及びこれらの性能に関する耐久性が格段に向上されるという利点がある。
金属製積層型カバーは、熱及び振動を発生する熱源に装着され、遮熱性能、遮音性、吸音性能及び制振性能を向上し、製品の耐久性も向上するという目的を、極めて簡便な構成で実現した。
(実施形態1)
以下、図1〜図14を参照して、本発明の金属製積層型カバーの一実施形態のスターターカバー(以下、カバー)1について説明する。まず、図1〜図7を参照して、カバー1の構成の概略について説明する。図1は本発明の金属製積層型カバーの一実施形態のカバー1の正面図であり、図2はカバー1を装着したエンジン61の正面図であり、図3はエンジン61の左側面図であり、図4はカバー1のコイニング範囲を示す正面図であり、図5は図1の切断面線X5−X5から見た断面図であり、図6は図1の切断面線X6−X6から見た断面図であり、図7は図1の切断面線X7−X7から見た断面図であり、図8は図6の部分X8付近の拡大断面図である。
本実施形態のエンジン61は、クランクケース62からシリンダ63を斜め上方へ傾斜させて配置し、エンジン61の上方に燃料タンク64とマフラ65を配置する。エンジン61の図2背面側であって図3左側には冷却ファンを収容したファンケース67が設置され、図2の右側にはエアクリーナ69が配置されている。クランクケース62の上方空間とシリンダ63上側面の一部にまたがるように、燃料タンク64が配置されている。
クランクケース62の左側面66の上部には、外観が略円筒形のセルスタータ68が図3の左右方向に延びて配置されている。エンジン61の図2左側にはスタータスイッチ70、マグネットスイッチ71が配置されている。マグネットスイッチ71は、エンジン61の図3左右方向に円筒体を配設して構成されている。前記燃料タンク64の図2及び図3下方には、少なくともスタータスイッチ70などを覆うスイッチカバー73が装着されている。上記セルスタータ68に対して、図2に二点鎖線で示される本実施形態のカバー1が装着される。
カバー1は、図2に示されるように、略円筒形状のセルスタータ68を覆う立体形状に形成され、カバー1の図2及び図3における上端は、燃料タンク64及びマグネットスイッチ71の下方に配置されている。更に、本実施形態のエンジン61において、カバー1に関して、セルスタータ68と反対側に熱源HSが配置される場合がある。この熱源は、エンジン61を図2の左右方向に並列配置する場合のクランクケース62やシリンダ63であり、或いはエンジン61の排気系の配置により、エンジン61のエキゾーストマニホールドなどの排気管などである。このような場合、熱源HSからの熱や振動などがセルスタータ68に熱的な振動的な悪影響を及ぼす場合がある。
以下、図5〜図7を併せて参照して、カバー1の形状と構造について説明する。カバー1は、熱及び振動を発生する熱源HSと保護対象であるセルスタータ68との間に配置され、保護対象であるセルスタータ68の形状に対応して立体形状に形成される。カバー1は、高明度で光沢を有する金属材料である一例としてアルミニウム或いはアルミニウム合金から形成される金属シートである一対の薄板材4、4aから、後述するように構成される。
各薄板材4、4aは、全面に亘り相互に交差する複数の方向に沿ってコルゲート加工がそれぞれ施され、相互に空間40を隔てて積層される。薄板材4、4aは、空間40の内部の空気流が、空間40よりも外方の金属シート4より更に外方の空気流よりも流速が遅く、実質的に停滞した空気流となるべく構成される。
具体的には、カバー1は、前述したように、図2に示される略円筒形状を有するセルスタータ68の外方側を覆う略半円筒形状の外形形に形成され、図5〜図7に示されるように、薄板材4よりも薄板材4aが小さく形成される。即ち、薄板材4aは、薄板材4によって覆われる態様になる。また、カバー1が全体としてセルスタータ68の形状に対応した湾曲した形状を有し、その湾曲形状に関してセルスタータ6側に、空間40が外方に臨む開口部41が位置する。
さらに、カバー1は、図1に示される平面視で約10cm×10cmの寸法であるのに対し、空間40を構成する薄板材4、4aの距離は約5mm程度に定められ、内部に空気層を包含する。ここで、エンジン61が装備された機器が移動するなどして、熱源HS、カバー1及びセルスタータ68の近辺の空気に流れが生じている場合、空間40内の空気層にも流れが生じることになり、カバー1は、効率的に冷却され、熱源HSに対する遮熱作用を効率的に行う。一方、熱源HS、カバー1及びセルスタータ68の近辺の空気の流れが停止している場合、空間40内の空気層の流れは実質的に停滞する。このような場合でも、本実施形態のカバー1は、後述するように、空間40内における空気層により、良好な遮熱作用を実現できる。
ここで、カバー1付近の空気の流れが、前述したように実質的に滞留する場合、空間40内の空気層も、その流れが停滞することになる。このような滞留した空気層が、熱に関して良好な遮熱性を有することが、図17の表1と図18の表2の各データから明らかである。
図17の表1は各材料の熱伝導率という固定の物理量を示しており、図18の表2は熱伝道抵抗の大きい順に、通常市販されている各種材料の厚さを配列したものである。表1からは空気の断熱性が他の材料よりも最も良好であることがわかる。更に、表2において断熱性が良好な材料は、内部に閉じ込められた空間を保有する材料であることが分かる。しかも、厚みに対して内部に可及的に高い割合で空気層を保有しているほど、断熱性能が高いことがわかる。本件発明者の実験によれば、本実施形態のカバー1は、アルミメッキ鋼板を2層にし、間にフェルト状断熱材を挟んだ従来技術のカバーよりも遮熱性が高いことが確認されている。
また、各金属シート4、4aは、外周部に離散的に設定された接
合部位42で点接触して、例としてスポット溶接などにより、相互に固定されている。
図4において、斜線を付して示す範囲は、コルゲート加工されて全面に凹凸が形成されている薄板材4、4aを全屈させるコイニング処理が施された範囲である。本実施形態において、カバー1のフランジ部位、穴あけを行う部位、刻印を施す部位など、コルゲート形状を有する金属板4、4aにおいて、折返し加工、穴あけ加工及び刻印加工などを行う必要がある部位は、これらの加工を容易に簡便に行うために、当該部位に対して前記のコルゲート形状がプレス加工などで押し潰され、略平板状に形成される。
従って、前記フランジや穴あけ部位など、フランジ形成のための折り曲げ加工や、穴あけのためのピアス加工、或いは刻印加工などの後加工を行う場合、加工対象部位を平板状の金属板と同様に取り扱うことができ、加工性、取扱い性が格段に向上される。
以下、図8を併せて参照して、カバー1をセルスタータ68に連結する際に用いられる緩衝装置について説明する。本実施形態の緩衝装置81において、ボルト83を外囲して、亜鉛メッキなど鋼板から形成されるカラー部材82が設けられている。カラー部材82は、筒部87と、筒部87の軸線方向両端に一体にそれぞれ形成されたフランジ部88とを含んで構成される。
カラー部材82の前記筒部87を外囲し、例としてステンレス鋼のエキスパンドメタルから構成され、表面に例として、ダクロタイズド(商標名)処理による亜鉛皮膜が形成された略環状の緩衝材84が配置される。緩衝材84は、エキスパンドメタル以外に、パンチングメタル、或いは各種形状のスリットなどを形成したステンレス鋼薄板などの平板状の材料から形成する場合がある。緩衝材84は、カラー部材82の筒部87の外径より大きな内径の挿通穴を有している。
緩衝材84とカバー1との間には、アルミニウム合金から形成され、図8に示されるように、断面が略S字状のグロメット85が備えられている。グロメット85は、カバー1を保持するために、内周側に凸状に屈曲された形状の第1保持部85aと、緩衝材84を保持するために、外周側に凸状に屈曲された形状の第2保持部85bとを備えている。本実施形態において、第2保持部85b及び第1保持部85aは、セルスタータ68側からこの順序で設けられている。
カラー部材82と緩衝材84とは、緩衝材84をカラー部材82に装着したとき、図8に示されるように、カラー部材82と緩衝材84との間に、ボルト83の軸線方向及び半径方向のいずれにも隙間が形成される。従って、このような緩衝材84は、内周がカラー部材82の筒部87に、ボルト83の軸線方向及び径方向に変位自在に装着されており、ボルト83からカバー1に伝達が進む振動を、その三次元成分に亘って緩衝し抑制する。
以下、図9〜図14を併せて参照して、薄板材4、4aについて説明する。以下の説明では、薄板材4について説明するが、薄板材4aについても同様な説明が成立するものである。図9は薄板材4の拡大正面図であり、図10は図9の切断面線X10−X10から見た断面図であり、図11は図9の切断面線X11−X11から見た断面図であり、図12は図9の切断面線X12−X12から見た断面図であり、図13は図9の切断面線X13−X13から見た断面図であり、図14は薄板材4の拡大断面図である。
本実施形態のカバー1に用いられる前記薄板材4には、図9〜図13に示されるように、隆起部7と谷部8とが交互に繰り返された複数の波形形状9が第1方向A1に沿って延び連なった形状を有していると共に、他の波形形状9が上記第1方向A1と交差する方向、好適には直交する方向である第2方向A2に沿って延び連なった形状を有している。
隆起部7は、その長手方向に沿って、図9〜図13に示されるように、谷部8から高さH1を有して立上る第1起立部10と、高さH1より低い高さH2を有して立上る第2起立部11とが交互に配列されている。また、前記谷部8は、図12に示されるように平坦部12と突部13とが交互に配列されている。
前記第1起立部10は、谷部8から、図10に示されるように鈍角である角度θ1をなして略台形状に立上る一対の側壁14、15と、側壁14、15の各先端に図9の矢符A1方向に延びてそれぞれ形成される立上り部17、18と、立上り部位17、18の間の凹所16とを含んで構成されている。
一方、第2起立部11は、第1起立部10が後述するように所定の程度押し潰されて形成され、谷部8から図11に示されるように鈍角である角度θ2をなして略台形状に立上る一対の側壁19、20と、側壁19、20の先端が相互に近接方向に折返されて形成される一対の折返し部21、22と、折返し部21、22の間の凹部23とを含んで構成されている。前記折返し部21、22は、折返し方向が相互に近接する方向となるように屈曲されている。第2起立部11は、第1起立部10が押圧され屈曲されて形成されるので、前記谷部8と折返し部21、22との距離は前記高さH1より低い高さH2となる。
また、前記谷部8の前記突部13は、図10及び図11に示されるように、第2起立部11の側壁19、20の基端部が第2起立部11の立上り方向とは反対方向に、図3の矢符A1方向に沿って略円弧状をなしてそれぞれ凹んだ一対の溝部24、25が形成されて構成される。この溝部24、25は、薄板材4の第2起立部11の立上り方向と反対側では一対の突条26、27となり、図9の矢符A2方向に沿う屈曲に対する金属板4におけるリブの機能を実現する。また、谷部8には、前記溝部24、25を形成するプレス加工が施されるので、その長手方向に沿って、図12に示されるように周期的な凹凸が形成される。
このような各第2起立部11および突部13は、複数の波形形状9の延びる方向である前記第1方向A1と実質的に直交する方向である第2方向A2に沿ってそれぞれ破線状に連なるように形成される。また、前記側壁19、20の間の部位は、第1方向A1及び第2方向A2の少なくとも一方の方向に沿う波形形状9において、金属板4が折り返されて金属板4自身の上に折り重ねられた積層部45を構成している。
カバー1は、このような形状を有する薄板材4、4aを、セルスタータ68の外形形状に沿った立体形状にプレス加工することにより形成される。本実施形態において、図5に示されるように、立体形状に形成されたカバー1の側壁T1の外周部には、前記波形形状9が全屈されたフランジ28が形成され、このフランジ28はカバー1の内部側に折返されて折返し部29が形成される。この折返し部29を形成しない場合、カバー1の外周部は、ブランキングされた薄板材4の鋭利な切断端部が外部に直接露出した状態になる。従って、この折返し部29は、車両の製造工程におけるカバー1のセルスタータ68への組付け工程において、カバー1を持って作業する組付け作業者、或いは、製造後の車両のメンテナンスの際にカバー1を持つ可能性のある作業者や一般ユーザーが手指に創傷を負わないようにするものである。
また、このフランジ28は、カバー1が振動する際にこのフランジ28がリブの機能を実現し、カバー1の振動の振幅を減少することができ、カバーに1おけるクラックの発生を抑制することができる。
以下、図5を参照して、本実施形態のカバー1の特徴の一つについて説明する。本実施形態のカバー1は前述したようにセルスタータ68の立体的な外観形状に沿った立体形状に形成されるので、カバー1には図5に示されるように薄板材4の屈曲部である一つ或いは複数の稜線相当部位30が形成される。本実施形態では、波形形状9の長手方向である前記第1方向A1が、これら複数の稜線相当部位30のうちの後述する主要な稜線相当部位30に交差する方向となるように、薄板材4に対して立体形状へのプレス加工を施す。
ここで、前記主要な稜線相当部位30とは、カバー1の全体的な形状を特徴付ける比較的大きな曲率が連続する折り曲げ部位である。即ち、カバー1に形成される大小種々の折り曲げ部位のうち、カバー1の外観形状を実質的に決定付ける比較的長寸に亘って延びる折り曲げ部位を意味する。
カバー1がセルスタータ68に対して装着されるとき、前記熱源HSからの振動の伝達によりカバー1も振動する。この振動によりカバー1が振動するとき、前記主要な稜線相当部位30を中心にしてその両側のカバー1の部位がばたつくように振動する。このような振動を放置すると、カバー1の稜線相当部位30付近の部位が繰り返しの屈曲により金属疲労を生じクラックを発生しやすくなる。
これに対して、本実施形態では、カバー1に形成されている複数の波形形状9の第1方向A1が前記主要な稜線相当部位30に対して交差する方向、好適には直交する方向となるように定めるので、波形形状9が前記稜線相当部位30を中心とする振動に対してリブの作用を実現する。これにより、カバー1の振動を抑制することができ、カバー1のクラックの発生を防止することができ、カバー1の品質を格段に向上することができる。
更に、前述した稜線相当部位30の延びる方向に沿って発生する振動に対しては、前記第2方向A2に沿って断続的に延び、第1方向A1に沿って連なる図4〜図6に示される前記第2起立部11が、やはりリブの機能を実現して振動を抑制する。
図14は本実施形態のカバー1の作用を示す簡略化した断面図である。以下、図14を併せて参照してカバー1の作用について説明する。本実施形態のカバー1を構成する薄板材4には、前述したように、波形形状9が実質的に全面に形成され、薄板材4が重ね合わされた積層部45が構成されている。
このようなカバー1が受けた振動によってカバー1が面振動して振動を発生する場合、このような振動は、図14において動作の概略が示されているように、隆起部7及び谷部8が変形していない標準時の隆起部7の各折り返し部21、22を含む隆起部7の幅L4に対し、伸長部位では隆起部7の幅が前記標準時の間隔L4より大きな幅L5になる。また、圧縮部位では、隆起部7の幅が前記標準時の間隔L4より小さい幅L6になる。
カバー1の振動時には、このような伸縮動作がカバー1の全面に亘る各部位において発生する。本実施形態のカバー1において、外部から加えられる振動は、上述した伸縮動作がカバー1全面の各隆起部7や谷部8などで発生することにより、薄板材4自身の弾性変形によって相当部分が熱エネルギーに変換される。これにより、カバー1の振動が抑制されることができる。
また、カバー1が受けた振動の比較的低周波帯域成分によって、カバー1が全体としてばたつくような振動を発生する場合、このような振動は、図14において、動作の一例が示されているように、隆起部7及び谷部8が変形していない標準時の隆起部7の各折り返し部21、22の先端部の間隔及び谷部8における幅L4に対し、カバー1の伸長部位では、複数の隆起部7に亘り、その折り返し部21、22の先端部の間隔が前記標準時の間隔より大きくなり、複数の谷部8に亘り、その幅も、前記幅L4より大きな伸長時幅L5になる。また、カバー1の圧縮部位では、複数の隆起部7に亘り、その折り返し部21、22の先端部の間隔が前記標準時の間隔より小さくなり、複数の谷部8に亘り、その幅も、前記幅L4より小さな伸長時幅L6になる。
このようなカバー1が全体に亘ってばたつくような振動を発生する場合でも、この振動は、薄板材4自身の弾性変形によって相当部分が熱エネルギーに変換される。この作用によってもカバー1の振動が抑制されることができる。
また、カバー1には前記積層部45が構成されているので、前記各部長さL1、L2、L3の寸法例の場合、本件発明者らは、波形形状9の屈曲に従って波形形状9の一周期の長さ(以下、周長)を計測した。その結果、周長L0は約17mmになり、前記波形形状9の1周期の長さL1(本例では、11mm)に対して、約55%の伸び代を実現できることになる。
プレス加工で製造される金属製品、一例として自動車部品は、鉄材やステンレス材を材料とするものが多い。これら鉄材やステンレス材は、比較的強度が高い点で使用頻度が高い。これに対し、本実施形態では、薄板材4が有する前記伸び代により加工性が向上される。即ち、深絞り加工を含むプレス加工を行う場合でも、従来の鉄素材と同等以上の加工性を有することが確認された。これにより、カバー1の材料として、上記制振合金体を用いることが可能であることが確認でき、制振性の向上に加え、軽量化と加工性が改善されたカバー1を実現することができる。
更に、本実施の形態において、前述したように、カバー1の不所望な変形や割れの発生が防止されるので、これを達成するために、カバー1を構成する薄板材4の板厚を大きくしたり補強部材を追加したりして、カバー1の剛性を増大させたり、カバー1のセルスタータ68に対する支持個所を増大させたりする必要が解消される。
これにより、カバー1の剛性を増大させたときに想定されるカバー1の重量の増大による支持個所付近での割れの可能性の増大や、カバー1の支持個所を増大させた際に想定される熱歪による割れの発生を防止することができる。これらの点でもカバー1の信頼性が格段に向上される。
以上のような本実施形態のカバー1は、各薄板材4、4a毎に、前記凹部23や谷部8などの多数の隙間から構成される空気層と、前記空間40との三重の空気層を保持していることになる。この三重の空気層は、熱源HSから発生した熱、騒音及び振動に関して絶縁層の作用を実現する。これにより、熱源HSから発生した熱、騒音及び振動が、カバー1を通過して保護対象であるセルスタータ68に対して放散される程度が、上記三重の空気層の存在により、格段に抑制される。従って、カバー1の遮熱性能、遮音性能、吸音性能、制振性能及びこれらの性能に関する耐久性を格段に向上することができる。
更に、本実施形態において、前記空間40は、空間40における空気層が実質的に停滞している場合でも、熱源HSから発生した熱が、カバー1を通過してセルスタータ68に放散される程度が、上記実質的に停滞した空気層により、格段に抑制される。従って、この点によっても、カバー1の遮熱性能が格段に向上される。また、この点によっても、特段の遮熱用部材を用いる必要が解消され、簡便な構成で遮熱性能を向上することができる。
また、本実施形態において、マット状基材層が不要になるので、前記基材層の使用に伴なう熱疲労、熱破壊による遮熱性能や制振性能などの低下を補償するための被覆層も不要になる。これにより、カバー1の製造工数と部品点数が格段に削減される。
また、カバー1を構成する複数の薄板材4、4aは、外周部に離散的に設定された接合部位42で点接触して相互に固定されているので、熱源HSに臨む薄板材4から、セルスタータ68側の薄板材4aへの熱、騒音及び振動の伝達が格段に抑制される。これによっても、熱源HSから発生した熱、騒音及び振動が、カバー1を通過してセルスタータ68に放散される程度が格段に抑制され、カバー1の遮熱性能、遮音性能、吸音性能、制振性能及びこれらの性能に関する耐久性が格段に向上される。
また、本実施形態のカバー1では、アルミニウム合金からなる薄板材4で熱源HSからの熱輻射や騒音が吸収され、また、このようなアルミニウム合金からなる薄板材4の熱伝導率は、従来から多く用いられているアルミニウムメッキ鋼板などよりも格段に低い熱伝導率を有しているので、カバー1における熱分布が容易に均等化され、カバー1に局部的に他の部分よりも高温のヒートスポットが形成される事態が防止される。
これにより、本例のカバー1を用いると、本実施形態におけるセルスタータ68などの各種電装機器類、ハーネス類或いは合成樹脂材料などからなるホースやダクト類などが上記熱輻射により過度に昇温し、特性が変化したり熱劣化するなどの熱害や、車室内の静粛性が損なわれたり、外部の騒音レベルを増大させたりする不具合の発生を防止することができる。
更に、本実施の形態において、カバー1の不所望な変形や割れの発生が防止されるので、これを達成するために、カバー1を構成する薄板材4の板厚を大きくしたり補強部材を追加したりして、カバー1の剛性を増大させたり、カバー1のセルスタータ68に対する支持個所を増大させたりする必用が解消される。これにより、カバー1の剛性を増大させたときに想定されるカバー1の重量の増大による支持個所付近での割れの可能性の増大や、カバー1の支持個所を増大させた際に想定される熱歪による割れの発生を防止することができる。これらの点でもカバー1の信頼性が格段に向上される。
本実施形態において、上記カバー1は、各1枚で一対の薄板材4、4aから構成される場合だけでなく、薄板材4に、異厚の薄板材を積層して金属シートを構成する場合を含み、更に、薄板材4に、他種の金属シートを積層する場合を含む。更に、薄板材4に、各種ゴム類やエンジニアリングプラスチックなどの合成樹脂類シートを積層した場合も含むものである。
また、本実施形態において、薄板材4、4aは、高明度で光沢を有する金属材料であればその材料を限定するものではない。上記実施形態では、薄板材4、4aはアルミニウム合金から形成されたが、その他、白色或いは白色に近い灰色などの高明度な表面色を有し、熱の反射のために光沢を有する金属材料であればよい。このような薄板材4、4aの特質は、例として、鋼板などにアルミメッキを施すなどの処理により実現するようにしてもよい。本発明に関して、要は、薄板材4、4aの表面性状が熱を良好に反射するものであれば、具体的な材料が限定されるべきではない。
図15は本発明の第2実施形態のカバー1aの断面図である。図15は第1実施形態の図10に対応する図である。本実施形態のカバー1aは、前記第1実施形態のカバー1と、その構造及び材料の点で類似し、対応する部分には同一の参照符号を付す。以下、図15を参照して、本発明の第2実施形態のカバー1aについて説明する。本実施形態の特徴は、図1〜図14に示される第1実施形態のカバー1における単層の金属シートである薄板材4に代えて、金属シートを、一例として、2層など複数層の積層体を用いたことであり、本実施形態では、金属シートを薄板材4.5からなる積層体としたことである。本実施形態の詳細は以下に説明される。
本実施形態のカバー1aに用いられる前記薄板材4、5は、前記第1実施形態において、図1〜図14を参照して説明したように、隆起部7と谷部8とが交互に繰り返された複数の波形形状9が前記第1方向A1に沿って延び、第1方向A1と交差する方向、好適には直交する方向である第2方向A2に沿って連なった形状を有している。隆起部7は、その長手方向に沿って、図9〜図13に示されるように、第1起立部10と第2起立部11とが谷部8から立上って交互に配列されている。また、前記谷部8は、図9〜図13に示されるように平坦部12と突部13とが交互に配列されている。
従って、図15に示されるように、薄板材4の隆起部7の内曲した内周部に、薄板材5の隆起部7の突出部が嵌り込む。また、第2起立部11でも、側壁19、20は、その基端部よりも先端部が幅広であり、内曲した形状に形成されている。このような第2起立部11でも、薄板材4の第2起立部11の内曲した内周部に、薄板材5の第2起立部11の突出部が嵌り込む。このような第1起立部10、第2起立部11及び谷部8などの部位は、外部からの振動や屈曲変位により、薄板材4、5が相互に摺動自在に噛合う噛合い部40として構成されている。
このような噛合い部40により、各薄板材4、5は、何らの特段の固定具、締結具を用いることなく、相互に強固に固定されることができる。これは、薄板材4、5の相互結合が、両者の機械的な噛合い関係によるからである。また、第1方向A1及び第2方向A2の少なくとも一方の方向に沿う波形形状9において、前記噛合い部40は、薄板材4、5が折り返されて薄板材4、5自身の上に折り重ねられた積層部45を構成している。
以下、図15を参照して、本実施形態のカバー1aの特徴の一つについて説明する。本実施形態のカバー1aは、前記実施形態のカバー1と同様に、セルスタータ68の立体的な外観形状に沿った立体形状に形成されており、更に、カバー1aには薄板材4、5の屈曲部である一つ或いは複数の稜線相当部位30が形成されている。本実施形態においても、波形形状9の長手方向である前記第1方向A1が、これら複数の稜線相当部位30のうちの主要な稜線相当部位30に交差する方向となるように、薄板材4、5に対して立体形状へのプレス加工を施す。
以上のように、本実施形態のカバー1aは、第1実施形態のカバー1と比較して、薄板材4の単層構造が薄板材4、5の積層構造に変更された点を除いては同様な構造であるので、本実施形態において、前記第1実施形態で説明された作用効果と同様な作用効果を実現できるのは明らかである。
本実施形態のカバー1aは、図15に示されるように、前記実施形態における薄板材4と同一の材料からなると共に、薄板材4と板厚が異なる薄板材5を併用し、これら一対の薄板材4、5が積層されて金属シート100を構成していることを特徴のひとつとする。
前記薄板材4、5は、一例として板厚0.3mmおよび板厚0.125mmであるように、板厚が相互に異なるように選択される。板厚が相互に異なる薄板材4、5の共振周波数は、相互に異なる。従って、相互に異なる板厚を選択することにより、薄板材4、5が相互に噛合わされた一対の金属シート100が、第1実施形態におけるように、相互に空間を空けて配置される。これにより、一対の金属シート100において、前述した凹部23や谷部8などからなる微小な隙間から構成される空気層が4層になり、前記空間と併せると五重の空気層を保有することになる。
これにより、本実施形態のカバー1aにおいて、遮熱性能、遮音性能、吸音性能及び制振性能が、第1実施形態におけるカバー1の場合よりも更に格段に向上される。また、本実施形態のカバー1aにおいて、各薄板材4、5の共振周波数が相互に打ち消されるので、カバー1a自身が発生する振動及び音響を格段に抑制することができる。
また、本実施形態のカバー1aにおいて、前述したように、波形形状9が実質的に全面に形成された弾性変形可能な材料である薄板材4、5が相互に摺動可能に構成されている噛合い部40が構成され、更に前記積層部45が構成されている。
本実施形態において、カバー1aは薄板材4、5が積層されているので、噛合い部40における複数の薄板材4、5の相互の摺動による薄板材4、5相互の摩擦によって振動の相当部分が熱エネルギーに変換される。これによってもカバー1aが受ける振動によるカバー1a自身の振動が更に抑制されることができる。
これにより、既存のアルミメッキ鋼板から製造されたカバー類よりも格段に高い制振性を実現するカバー1aは重量を格段に軽量化することができるので、カバー1aのセルスタータ68への取り付け箇所を削減することができる。従って、取り付け用のボルトの本数や、カバー1aの取り付け部位の数を削減することができ、カバー1aの構成を簡略化することができる。これにより、製造工程を簡略化できると共に製造コストをも削減することができる。また、カバー1aの軽量化を図ることができるので、振動に伴う前記セルスタータ68への取りつけ部位の疲労による破損などを抑制することができる。
また、カバー1、1aは、軽量化されているので、セルスタータ68に対する取り付け部位数や取り付けボルト数を削減することができるので、リサイクルを行う際に、カバー1、1aをセルスタータ68から取外す作業が格段に容易になる。この点でリサイクルの工数を格段に削減することができる。
本発明の更に他の実施形態を、第1実施形態に基づいて、図1〜図14を参照して説明する。本実施形態の特徴は、第1実施形態のカバー1において、セルスタータ68側の薄板材4aに多数の透孔を形成したことである。その他の構成は、一例として、第1実施形態のカバー1と同様である。
本実施形態のカバーがこのような構成を有することにより、本実施形態では、ヘルムホルツ共鳴の原理による吸音作用が実現される。吸音すべき振動、騒音の周波数帯域に対応して、薄板材4、4aの板厚、開口率、穴径などが適宜選択されることにより、所望の周波数帯域に関する吸音作用を実現することができる。
従って、本実施形態では、第1実施形態で説明した作用効果に加え、上記ヘルムホルツ共鳴による吸音作用も併せて奏することができ、遮音性能、吸音性能、制振性能が更に向上される。
本発明は、上記各実施の形態の例に権利範囲を限定されるものではなく、本発明の精神逸脱しない範囲で広範な変形例を含むものである。一例として、前記各実施形態がセルスタータ68に装着されるカバーを示しているのに対し、本発明は、自動車のエキゾーストマニホールドに装着されるカバーやアンダーカバー、シリンダヘッドカバー、マフラーを含む排気系統のパイプやダクト類に実施可能であり、更に、実施対象は自動車に限定されず、遮熱、防音、吸音、制振などの機能が要求される任意のカバー類に対して実施可能であることはいうまでもない。
本発明は、実施形態で説明された自動車のセルスタータ用のカバーに限らず、自動車のアンダーカバー、排気系のカバーなど、熱と振動の少なくともいずれかの遮蔽を必要とする産業分野で広く実施することができる。また、本発明は、自動車用途に限定されず、熱や振動を発生する熱源に対して、放散される熱や振動を抑制する広範な産業分野において、実施されることができる。
本発明の一実施形態のカバー1の正面図である。 カバー1を装着したエンジン61の正面図である。 エンジン61の左側面図である。 カバー1のコイニング範囲を示す正面図である。 図1の切断面線X5−X5から見た断面図である。 図1の切断面線X6−X6から見た断面図である。 図1の切断面線X7−X7から見た断面図である。 図6の部分X8付近の拡大断面図である。 薄板材4の拡大正面図である。 図9の切断面線X10−X10から見た断面図である。 図9の切断面線X11−X11から見た断面図である。 図9の切断面線X12−X12から見た断面図である。 図9の切断面線X13−X13から見た断面図である。 薄板材4の拡大断面図である。 本発明の第2実施形態のカバー1aの断面図である。 従来技術である消音器51の縦断面図である。 表1の図である。 表2の図である。
1、1a カバー
4、4a 薄板材
8 谷部
9 波形形状
23 凹部
40 空間
68 セルスタータ
100 金属シート
A1 第1方向
A2 第2方向

Claims (4)

  1. 熱及び振動を発生する熱源の形状、或いは該熱源からの熱及び振動に対して保護すべき保護対象の形状のいずれかの形状に対応して立体形状に形成された高明度で光沢を有する金属材料から構成される金属製積層型カバーであって、
    該金属材料からなり、全面に亘り相互に交差する複数の方向に沿ってコルゲート加工がそれぞれ施された複数の金属シートが、相互に空間を隔てて積層され、
    各金属シートには、該コルゲート加工により形成された多数の隙間が全面に亘って形成され、
    各金属シートは外周部に離散的に設定された接合部位で点接触して相互に固定されているとともに、
    前記複数の金属シートのうち前記保護対象側の金属シートに、前記空間が前記保護対象側に臨む開口部を備えた
    金属製積層型カバー。
  2. 前記各金属シートは、前記金属からなる複数枚の金属板が相互に積層され、各金属シートに、谷部と隆起部とが交互に繰り返される波形形状が第1方向に沿って連なって形成され、該第1方向と交差する第2方向に沿って、谷部と隆起部とが交互に繰り返される他の波形形状が連なって形成されている
    ことを特徴とする請求項1記載の金属製積層型カバー。
  3. 前記金属シートを構成する複数枚の金属板は、相互に相異なる板厚に選ばれている
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の金属製積層型カバー。
  4. 前記複数の金属シートのうち、前記保護対象に臨む金属シートには、少なくとも他の金属シートと前記空間を隔てる範囲に亘り、複数の透孔が形成されている
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の金属製積層型カバー。
JP2006126841A 2006-04-28 2006-04-28 金属製積層型カバー Active JP4762778B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006126841A JP4762778B2 (ja) 2006-04-28 2006-04-28 金属製積層型カバー

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006126841A JP4762778B2 (ja) 2006-04-28 2006-04-28 金属製積層型カバー

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2007297980A JP2007297980A (ja) 2007-11-15
JP4762778B2 true JP4762778B2 (ja) 2011-08-31

Family

ID=38767675

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2006126841A Active JP4762778B2 (ja) 2006-04-28 2006-04-28 金属製積層型カバー

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4762778B2 (ja)

Families Citing this family (11)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5208786B2 (ja) * 2009-01-30 2013-06-12 ヤンマー株式会社 横型エンジン
JP5257203B2 (ja) * 2009-03-31 2013-08-07 アイシン精機株式会社 エンジンカバー構造
KR100958733B1 (ko) * 2009-11-10 2010-05-18 주식회사 모팜 차열용 다층 롤포밍 시트 및 그 제조방법
JP5584453B2 (ja) * 2009-12-03 2014-09-03 三和パッキング工業株式会社 遮熱カバー
JP5842553B2 (ja) * 2011-11-09 2016-01-13 株式会社Ihi 過給機
KR101175222B1 (ko) 2012-01-03 2012-08-21 주식회사 새한산업 차열용 다층 시트재
KR101175221B1 (ko) 2012-01-03 2012-08-21 주식회사 새한산업 차열용 다층 시트재
KR101288869B1 (ko) * 2012-12-10 2013-07-23 주식회사 새한산업 다층 복합 판재
KR101461919B1 (ko) * 2013-12-31 2014-11-19 현대자동차 주식회사 다층 복합 판재
KR101550020B1 (ko) 2014-02-12 2015-09-04 울산대학교 산학협력단 히트 프로텍터
KR101880167B1 (ko) * 2016-11-30 2018-07-20 이승창 차량용 히트 프로텍터

Family Cites Families (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0313553Y2 (ja) * 1985-09-04 1991-03-27
JPH03124920A (ja) * 1989-10-11 1991-05-28 Daihatsu Motor Co Ltd 内燃機関におけるシリンダヘッドカバーの消音装置
JPH0566249U (ja) * 1992-02-20 1993-09-03 日産ディーゼル工業株式会社 ロッカーカバー
JPH11107774A (ja) * 1997-09-30 1999-04-20 Unipres Corp 吸音カバー
JP3730395B2 (ja) * 1998-03-16 2006-01-05 三菱自動車工業株式会社 吸音材構造及び吸音材の製造方法
US6555246B1 (en) * 1999-02-02 2003-04-29 Rieter Automotive (International) Ag Method of producing a sound-absorbent insulating element and insulating element produced according to this method
JP2002113525A (ja) * 2000-10-04 2002-04-16 Sanwa Packing Kogyo Co Ltd 金属製カバー、その製造方法及びそれに用いるプレス用金型

Also Published As

Publication number Publication date
JP2007297980A (ja) 2007-11-15

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4762778B2 (ja) 金属製積層型カバー
JP4472325B2 (ja) 緩衝装置
JP4601707B2 (ja) 加工用素材及びそれを用いる成型部材
KR20070108265A (ko) 다층의 오목한 열 차폐부
JP2010515859A (ja) 熱シールドならびに構成および設置方法
US20100035078A1 (en) Embossed thermal shield and methods of construction and installation
JP4446686B2 (ja) 緩衝装置及び金属製カバー
JP2009281379A5 (ja)
KR101912620B1 (ko) 히트 프로텍터
JP2012519626A (ja) 温度振動分離素子
JP2002113525A (ja) 金属製カバー、その製造方法及びそれに用いるプレス用金型
JP2001347323A (ja) 金属製カバー、その製造方法及びそれに用いるプレス用金型
KR20110100163A (ko) 차음 구조 및 차음 커버
JP2004092543A (ja) カバー装置
JP2002235800A (ja) 緩衝装置
JP3944174B2 (ja) 内燃機関接続パイプ用カバー
CN102996248B (zh) 隔音罩
JP3553177B2 (ja) 車載用防音遮熱板
JP2010025348A (ja) 結合部材
JP2010014278A5 (ja)
JP2007262927A (ja) 制振カバー装置
JP2010014278A (ja) 緩衝装置及び金属製カバー
JP2016121639A (ja) カバー部材
US20240039358A1 (en) Covering means for a component of an electrical drive system, and component provided therewith
CN102192010A (zh) 遮音构造以及遮音盖

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20090408

RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20100217

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100222

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20110228

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20110308

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20110502

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20110607

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20110608

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140617

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4762778

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250