JP3553177B2 - 車載用防音遮熱板 - Google Patents

車載用防音遮熱板 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、車載用防音遮熱板に関し、特に自動車のエンジンに用いる立体形状の防音遮熱板に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車のエンジンは、熱源及び騒音発生源となることから、自動車のエンジンルーム内は各種の遮熱対策及び騒音対策が施されている。
また、自動車のエンジンルーム内には、エンジンのほかにエンジン制御、走行制御等を行うための種々の電子機器が配置されている。これら電子機器は高熱に弱いため、熱源としてのエンジン等から電子機器を保護するための遮熱板を設けてこれらの電子機器を保護している。すなわち、エンジンや排気マニホールドの周囲に所定の距離をおいて遮熱板を配置することにより電子機器への熱が遮熱される。さらに、エンジンや排気マニホールドは一般に騒音発生源でもあるため、前記遮熱板が防音機能も果たす防音遮熱板であることが要求されている。
【0003】
ところで、従来の防音遮熱板としては、単に金属板または複数枚の金属板を積層固定したもの、もしくはその間にアスベストシート等を挟設したものが知られているが、防音遮熱板として特に防音機能を十分に果たすものは知られていない。むしろ、かかる従来の防音遮熱板では、排気マニホールドからの固体伝播音による防音遮熱板の音響放射により騒音が高くなることがある。すなわち、排気マニホールドと防音遮熱板との間の空間が共鳴箱の役割を果たし、排気マニホールドからの騒音が上記空間内で反射を繰り返し、これにより騒音が増幅されて防音遮熱板を取り付けないときに比べて騒音値が上昇する。さらに、複数の金属板の間に吸音材としてアスベストシート等を挟設したものについても、騒音値が遮熱板を装着しないときと同じレベルとするのが限界で防音効果を得ることはできない。
【0004】
また、排気マニホールドを覆う排気マニホールドカバーが実開平1−158513号公報に開示されている。このカバーは、排気マニホールド側のインナープレートと、該インナープレートの外側のアウタープレートと、前記インナープレートとアウタープレートとの間に介装される吸音材とから構成され、前記インナープレートに複数の開口が形成されたものである。かかる構成のマニホールドカバーでは、インナープレートの開口を介して排気マニホールドの放射音が吸音材で吸収されるが、アウタープレートからの放射音は防止することができない。その結果、防音効果を得ることはできない。また、エンジンの振動等により、インナープレート開口部から繊維が飛散し易いという欠点を有していた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上述した従来技術の諸問題を解消し、防音、遮熱および耐久性に優れた車載用防音遮熱板を提供せんとするにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の車載用防音遮熱板は、無機繊維質吸音材と、該無機繊維質吸音材を挟むように設けられ線径が0.1〜1mmで網目が5〜100メッシュの金属線からなる織金網と、前記無機繊維質吸音材と前記織金網を貫通する取り付けボルト穴に嵌め込まれたハトメとを備えたものである。無機繊維質吸音材が、線径が0.1〜1mmで網目が5〜100メッシュの耐熱性および柔軟性に優れた金属線の織金網により挟設された車載用防音遮熱板は、それ自体剛性が低い金属線の織金網により挟設されているため従来の金属板からなる防音遮熱板のような固体伝播音による音響放射が無く、しかも、金属線の織金網は、放射音を反射させることないため、放射音を無機繊維吸音材に有効に吸収させることができることから防音機能において極めて優れている。かかる耐熱性および柔軟性の面から織金網を構成する金属線としてはステンレス鋼(SUS304)、真鍮または亜鉛メッキ鋼製のものが好適である。
【0007】
さらに、織金網は線径が 0.1〜 1.0mmで、網目が5〜 100メッシュである。線径が 0.1mm未満の場合、柔軟性には優れるが、耐久性が不十分であり、一方 1.0mmを超えると、耐久性には優れるが、柔軟性が劣り、加工性が悪くなる。特に、0.2〜 0.3mmの線径が好ましい。
また、網目が5メッシュより粗いと、無機繊維吸音材が自動車の振動や走行風等により該網目から脱落して飛散し、一方 100メッシュより細かくなると、放射音を反射させて防音効果が低減する。網目は40〜50メッシュが好ましい。
【0008】
無機繊維質吸音材が、セラミックファイバー、アルミナファイバー、シリカファイバー、ロックウールおよびグラスウールから選ばれるいずれか少なくとも一種の不織布または織布であることが好ましい。
セラミックファイバとしては、アルミナセラミックファイバまたはシリカアルミナセラミックファイバを用いるのが好ましく、これらは無機繊維吸音材の中で、最も一般的で、コストも安価で安全性も高い。セラミックファイバを用いる場合には、平均繊維径が 1.5〜20μm、平均繊維長が5mm以上であるものが好ましい。また、セラミックファイバは耐熱性および耐久性にも優れている。耐熱性に対する要求があまり重要でない場合には、コストの面からグラスウールが好ましい。
【0009】
本発明において、無機質繊維よりなる無機繊維吸音材は次のようにして騒音を吸収する。すなわち、無機質繊維の繊維同志の間隙が侵入した音のエネルギーを毛細管の粘性抵抗により熱エネルギーに変換するか、あるいは繊維自体が侵入した音のエネルギーで振動して熱エネルギーに変換する。このようにして、無機質繊維が吸音材の役割を果たす。
【0010】
本発明の防音遮熱板は、表側の織金網と裏側の織金網が、ステンレス線での縫い付け、リベット止め、ハトメ止めまたはホチキス止めにより固定されている。前記固定は、生産性の面からはリベット止めまたはホチキス止めが好ましい。また、耐久性の面からはステンレス線での縫い付けが好ましく、この場合無機繊維吸音材と金網を完全に密着することができる。
本発明の防音遮熱板は、取り付けボルト穴が設けられており、そのボルト穴には、防音遮熱板を取り付けるときに、ボルトの回転による締め付けで防音遮熱板の形状が変形するのを防止するハトメが設けられている。また、ボルト穴周りは直接振動が加わるところであり、ハトメで剛性を向上し、金網の亀裂・破損を防止することができる。
【0011】
本発明の防音遮熱板は、織金網の最外周部に金属板のクリンチ、織金網のクリンチさらに金属板のスポット溶接または金網のスポット溶接を施すことにより、無機繊維吸音材の周縁部を被覆固定することができる。
このクリンチ加工処理又はスポット溶接処理により、無機繊維吸音材が側面方向へはみ出すことがなくなり、織金網の端部が側面に現れない。従って、防音遮熱板の取り付け作業のときに手が端部に触れても、怪我等の心配がなく安全である。
【0012】
本発明において、無機繊維吸音材の表面または裏面に金属箔を配置し、無機繊維吸音材への液体の浸透を防止することができる。
例えば、エンジンのエキゾーストマニホルドに本発明の防音遮熱板を装着したとき、該エキゾーストマニホルドの近くにはエンジンオイル交換口が有り、エンジンオイルが付着し、金属箔が無いと無機繊維吸音材に浸透する。金属箔の配置により、エンジンオイルの浸透による無機繊維吸音材の吸音効果の低下が防止できる。また、エキゾーストマニホルド周辺の高熱によるエンジンオイルの発火が防止できる。
金属箔は、安価で耐蝕性に優れたステンレス箔またはアルミ箔か好ましい。
【0013】
本発明において、防音遮熱板は、自動車のエンジンまたは走行中の振動による変形または破損を防止するため、無機繊維吸音材の表面や裏面にエキスパンドメタル、パンチングメタルまたは金属板からなる補強を施すことができる。
前記無機繊維吸音材としては、シートの形態で製造され、所定の形状に打抜き加工された不織布あるいは織布を使用することがコスト的にも有利であるが、繊維不織布の湿式抄造法に用いる抄造金型に織金網を脱着自在に配設し、湿式抄造することにより、織金網と一体に成形されたもの使用することもできる。
また、特にディーゼルエンジンのように振動の大きいものに対しては、前記無機繊維吸音材として不織布と織布の積層物を用いることが効果的である。
【0014】
【発明の効果】
本発明にかかる防音遮熱板は、自動車のエンジンまたは排気系に装着したときエンジンまたは排気系の固体伝播音による音響放射することが極めて少なく、しかも、エンジンまたは排気系からの騒音が無機繊維吸音材により効率的に吸収される。また、直接振動が加わるボルト穴周りの剛性をハトメで高めることにより、金網の亀裂・破損が防止される。
【0015】
織金網は無機繊維吸音材を保持するために配置されているので、音は該織金網の網目を介して無機繊維吸音材に達するため、無機繊維吸音材の吸音効果が極めて有効に発揮される。また、織金網はそれ自体固体伝搬音による音響放射が極めて少ない。
さらに、無機繊維吸音材は遮熱効果に優れており、エンジン等から発生する熱、特に排気マニホールドからの高熱も容易に遮断することができる。
また、本発明にかかる防音遮熱板においては、上述したように織金網により無機繊維吸音材が支えられているので、無機繊維吸音材のズレ、粉化、飛散または流出が防止されて耐久性が増す。
【0016】
本発明によれば、固体伝搬音による音響放射が極めて少なく、防音、遮熱および耐久性に優れた車載用防音遮熱板を提供することができる。
本発明の車載用防音遮熱板は、エンジンボンネット吸音断熱材、エンジンアンダーカバー吸音断熱材、エンジンカバー、マフラー、ターボチャージャーカバーおよび触媒コンバータ等の高熱および騒音発生機器等に適用でき、防音および遮熱材として優れた効果を発揮することができる。また、騒音発生部位のいかなる場所に取り付けても吸音力で騒音を低減することができる。特に、エンジンルームの様な密閉された空間に取り付けることは効果的である。
【0017】
【実施例】
次に本発明を図面を参照して実施例に基づいて説明する。
実施例1
本例の防音遮熱板は自動車の排気マニホールドに防音遮熱板として用いるものである。
図1〜図4に示すように、防音遮熱板1は無機繊維吸音材2と該無機繊維吸音材2の表面及び裏面に配置された織金網3及び織金網4とからなり、その取り付けボルト穴周りは図2に示すようなハトメ5加工が施されている。
また、織金網3と織金網4の固定は図3に示すようなリベット6で行なわれている。さらに、防音遮熱板1の最外周部は図4に示すようなクリンチ7加工が施されている。
無機繊維吸音材2としては、平均繊維径 2.2μm、平均繊維長さ30mmのシリカアルミナセラミックファイバを湿式抄造することにより得られた平均厚さ4mm、平均嵩密度0.25g/cmのペーパー(イビデン(株)製)を使用し、織金網3と織金網4としては、網目が50メッシュ、線径が0.18mmのステンレス鋼(SUS304)製の平織金網を使用し、ハトメ5としては、厚さが 0.8mmのステンレス鋼板(SUS304)を使用し、クリンチ7としては厚さが 0.6mmのアルミメッキ鋼板(SACD80)を使用する。
このようにして作製した防音遮熱板1を2リットル、4気筒のディーゼルエンジンの排気マニホールドの周囲に5〜30mmの間隔で取り付け、該エンジンを毎分4000回転で運転し、この間にエンジンの騒音を測定し、その結果を表1に示す。
表1に示す値はエンジンから右、左、前および上に各1m離れた位置で測定した騒音の値のエネルギー平均値である。
【0018】
次いで、防音遮熱板1から 220mmの長さと10mmの幅とを有する短冊状の試験片を作成し、この試験片を用いてJIS−G−0602に規定された制振鋼板の振動減衰特性試験法に従って各周波数における損失係数を測定し、その結果を表2に示す。また、防音遮熱板1から円盤状試験片を作成し、この試験片を用いてJIS−A−1405に規定された管内法による垂直入射吸音率測定法に従って各周波数における吸音率を測定し、その結果を表3に示す。
【0019】
実施例2
実施例1と同じ構造を有する防音遮熱板に図5に示すような厚さが0.2mmのステンレス(SUS304)箔8を装着することにより作成した防音遮熱板11を作成した。
このように作成した防音遮熱板を2リットル、4気筒のディーゼルエンジンの排気マニホールドの周囲に取付け、実施例1と同様の方法でエンジンの騒音を測定し、その結果を表1に示す。また、各周波数における損失係数および吸音率を実施例1に記載した方法により測定し、その結果を表2および3に示す。
次いで、防音遮熱板を連続加振機に装着し、実施例1に記載した方法により測定し、その結果を表4に示す。
【0020】
実施例3
実施例1と同様であるが、図6に示すような厚さが0.6mmのアルミニウムめっき鋼板製の金属バー9を装着側表面積の10%の領域を占める様に装着することにより作成した防音遮熱板21を作成した。
このように作成した防音遮熱板を2リットル、4気筒のディーゼルエンジンの排気マニホールドの周囲に取付け、実施例1と同様の方法でエンジンの騒音を測定し、その結果を表1に示す。また、各周波数における損失係数および吸音率を実施例1に記載した方法により測定し、その結果を表2および3に示す。
次いで、防音遮熱板を連続加振機に装着し、実施例1に記載した方法により測定し、その結果を表4に示す。
【0021】
比較例1
無機繊維吸音材として実施例1に記載したものを用い、織金網3の代わりにアルミメッキ鋼製のパンチングメタル(開口径6mm,開口率30%)を用い、織金網4の代わりにアルミメッキ鋼板(厚さ0.6mm)を用いて防音遮熱板を作製する。なお、パンチングメタルをその外周部で金属基板にスポット溶接により固定する。
このようにして作製した防音遮熱板2リットル、4気筒のディーゼルエンジンの排気マニホールドの周囲に取り付け、実施例1と同様の方法でエンジンの騒音を測定し、その結果を表1に示す。また、各周波数における損失係数および吸音率を実施例1に記載した方法により測定し、その結果を表2および3に示す。
次いで、防音遮熱板を連続加振機に装着し、実施例1に記載した方法により測定し、その結果を表4に示す。
【0022】
比較例2
無機繊維吸音材を用いることなく2枚のアルミメッキ鋼板(厚さ 0.6mm)を重ね、その外周部をスポット溶接により接合して防音遮熱板を作製する。このようにして作製した防音遮熱板を2リットル、4気筒のディーゼルエンジンの排気マニホールドの周囲に取り付け、実施例1と同様の方法でエンジンの騒音を測定し、その結果を表1に示す。また、各周波数における損失係数および吸音率を実施例1に記載した方法により測定し、その結果を表2および3に示す。
次いで、防音遮熱板を連続加振機に装着し、実施例1に記載した方法により測定し、その結果を表4に示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例における防音遮熱板の一部分図
【図2】実施例における防音遮熱板のハトメ部分の断面図
【図3】実施例における防音遮熱板のリベット部分の断面図
【図4】実施例における防音遮熱板のクリンチ加工部部分の断面図
【図5】実施例2における防音遮熱板の一部断面図
【図6】実施例3における防音遮熱板の一部分図
【符号の説明】
1・・・防音遮熱板
2・・・無機繊維吸音材
3・・・織金網
4・・・織金網
5・・・ハトメ
6・・・リベット
7・・・クリンチ
8・・・ステンレス箔
9・・・金属バー
11・・・防音遮熱板
21・・・防音遮熱板
【表1】
Figure 0003553177
【表2】
Figure 0003553177
【表4】
Figure 0003553177
【表3】
Figure 0003553177

Claims (3)

  1. 無機繊維質吸音材と、
    該無機繊維質吸音材を挟むように設けられ線径が0.1〜1mmで網目が5〜100メッシュの金属線からなる織金網と、
    前記無機繊維質吸音材と前記織金網を貫通する取り付けボルト穴に嵌め込まれたハトメと、
    を備えた車載用防音遮熱板。
  2. 無機繊維質吸音材が、セラミックファイバー、アルミナファイバー、シリカファイバー、ロックウールおよびグラスウールから選ばれるいずれか少なくとも一種の不織布または織布である請求項1に記載の車載用防音遮熱板。
  3. 無機繊維質吸音材と金属線の織金網の間に金属箔が配置されてなる請求項1に記載の車載用防音遮熱板。
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