JP4758722B2 - 塩化水素ガスの精製方法 - Google Patents
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しかしながら、塩化水素の精製方式の一つである蒸留方式においては、塩化水素とフッ素系化合物が共沸しやすいため、沸点の近い化合物を除去するには多量の抽出剤を添加するか、大きな蒸留装置が必要であった。また、高純度の塩化水素ガスを使用しなければならない用途、例えば、前記の通り、エチレンジクロライド製造工程、塩化メチル製造工程または、塩化水素の酸化反応により塩素を製造する工程等に使用する場合には、更なる塩化水素ガスの精製が求められていた。
従って、本発明の目的は、クロロジフルオロメタン製造工程において、副生成物として排出される、少なくともフッ化カルボニルを含むフッ素系化合物を不純物とする塩化水素ガスを、該フッ素系化合物の含有量の極めて低い、高純度の塩化水素とする精製方法を提供することにある。
(a)クロロジフルオロメタンの製造において、副生成物として排出される、フッ化カルボニルを少なくとも含むフッ素系化合物を含有してなる塩化水素ガスを、水又は塩酸水溶液よりなる吸収液と接触せしめて、該塩化水素ガスを塩酸水溶液とする塩化水素吸収工程、
(b)前記塩化水素吸収工程より得られる塩酸水溶液を、空気および/または不活性ガスによりエアレーションするエアレーション工程、
(c)前記エアレーション工程より得られる塩酸水溶液を放散塔に導き、該放散塔の塔頂より塩化水素をガス状で回収する塩化水素ガス放散工程、及び
(d)前記塩化水素ガス放散工程より得られる塩化水素ガスを、該塩化水素ガスに含まれるフッ素系化合物との反応生成物が固体である除去剤または吸着剤と接触させる塩化水素ガス精製工程、
を含んでなり、かつ、上記(d)塩化水素ガス精製工程において、除去剤または吸着剤として、塩化水素を用いる酸化反応に使用される反応触媒、塩化水素の塩素化反応に使用される反応触媒のいずれか1種類の触媒または2種類以上の触媒を使用することを特徴とする塩化水素ガスの精製方法である。
以下、これらの工程についてより詳細に説明する。
本発明において、塩化水素吸収工程は、クロロジフルオロメタン製造工程で副生成物として排出される、フッ化カルボニルを少なくとも含むフッ素系化合物を含有してなる塩化水素ガスを、水又は塩酸よりなる吸収液に吸収させて、該塩化水素ガスを塩酸水溶液とする工程である。
本発明において、前記(a)塩化水素吸収工程で得られた塩酸水溶液は、次いで、エアレーション処理される。連続して前記塩酸水溶液を処理する場合には、該塩酸水溶液をエアレーション塔に導き、空気および/または不活性ガスを使用してエアレーションすることが好ましい。前記(a)塩化水素吸収工程で得られた塩酸水溶液をエアレーションすることにより、塩酸水溶液中に含まれるクロロジフルオロメタン、トリフルオロメタン含有量をさらに低減することができる。この工程でクロロジフルオロメタン、トリフルオロメタン等をさらに低減できるため、最終的に得られる塩化水素ガスの純度を高めることができる。
度等によって一概に限定することはできないが、一般には、温度20〜60℃、圧力50〜200Kパスカルゲージ下で、塩酸水溶液1m3/h当り、1〜200m3/hの不活性ガスを供給して行うことが好ましい。
また、本発明においては、前記(b)エアレーション工程より得られる塩酸水溶液を、後記に詳述する(c)塩化水素ガス放散工程で処理することも可能であるが、より高純度の塩化水素ガスを回収するためには、前記(b)エアレーション工程と(c)塩化水素ガス放散工程との間に、塩酸水溶液からフッ化水素を含むフッ素系化合物を除去する(e)塩酸水溶液精製工程を設けることが好ましい。該塩酸水溶液精製工程を設けることにより、最終的に得られる塩化水素ガスをより高純度なものとすることができる。
本発明において、前記エアレーション工程より得られる塩酸水溶液、または前記塩酸水溶液精製工程より得られる塩酸水溶液は、次いで放散塔に送られ、該放散塔の塔頂より塩化水素をガス状で回収する塩化水素ガス放散工程で処理される。
本発明においては、前記塩化水素ガス放散工程より得られる塩化水素ガスを精製する、塩化水素ガス精製工程を含んでなる。この塩化水素ガス精製工程を含むことにより、フッ化水素ガス等のフッ素系化合物を分離除去することができ、より高純度の塩化水素ガスを得ることが可能となる。特に、得られる塩化水素ガスは、エチレンジクロライド製造工程、塩化メチル製造工程、塩化水素酸化による塩化水素ガス製造工程において、原料として使用することができる。
図1において、クロロジフルオロメタン製造工程で副生成物として排出される不純物を含む塩化水素ガスは、塩化水素吸収工程としての吸収塔1に供給される。吸収塔1では、吸収液の散布により、塩化水素とともに不純物も吸収され、塩酸水溶液として取り出される。
図1に示す工程に従って、クロロジフルオロメタン製造工程において、副生成物として排出されるフッ素系化合物を含む塩化水素ガスの精製を実施した。実施例1においては、図1に示した塩酸水溶液精製工程を行なわず、エアレーション工程により得られた塩酸水溶液を、そのまま塩化水素ガス放散工程で処理を行った。尚、塩化水素ガス中の組成は、水分計、ガスクロマトグラフ、イオンクロマトグラフおよび赤外吸収スペクトル測定装置(IR)等で分析した。
排出された塩化水素ガスを吸収塔に供給し、20質量%の塩酸水溶液を散布して、ガス中のフッ化カルボニルを少なくともふくむフッ素系化合物を含有してなる塩化水素ガスを吸収させ、濃度23重量%塩酸水溶液を得た。この塩酸水溶液中の不純物と濃度は、クロロジフルオロメタン7ppm、トリフルオロメタン10ppm、フッ化水素53ppm、フッ化カルボニル30ppm(塩化水素重量に対して)であった。
次いで、前記塩酸水溶液を、連続的にエアレーション塔に導き温度40℃、圧力100Kパスカルゲージ下で、塩酸水溶液1m3/h当り、150m3/h の空気を吹き込みエアレーションした。エアレーションして得られた塩酸水溶液中の不純物は、クロロジフルオロメタン4ppm、トリフルオロメタン5ppm、フッ化水素60ppm、フッ化カルボニル16ppmのであった。
また、エアレーション塔から得られた塩酸水溶液を放散塔に導き、塩化水素ガスとして放散させた。放散塔としては、充填材を充填した充填層を有するものを使用し、供給段より上部が1理論段のものを用いた。放散条件は、塔底温度110℃、大気圧下とした。塔底より得られる20質量%の塩酸水溶液を吸収塔に循環供給した。放散塔より得られた塩化水素ガス中の不純物は、クロロジフルオロメタン4ppm、トリフルオロメタン7ppm、フッ化水素1.5ppmであり、フッ化カルボニル0.1ppmであった。
更に、前記放散塔塔頂から得られた塩化水素ガスを、210℃に加温した銅化合物含有アルミナ触媒(13%Cu/アルミナ触媒)を充填した塩化水素ガス精製塔に導き、塩化水素ガスと210℃に加温した吸着除去剤(13%Cu/アルミナ触媒)と接触させることによりフッ素系化合物濃度を低減させた。得られた精製塩化水素ガス中の不純物と濃度を測定した結果、フッ化水素0.3ppm、トリフルオロメタン1.2ppmであった。一方、フッ化カルボニル、クロロジフルオロメタンは検出されなかった。
実施例1と同じ塩化水素ガスを使用し、図1に示す塩酸水溶液精製工程を追加して塩化水素ガスの生成を行なった。下記に示す以外の条件は、実施例1と同様に行なった。
次いで、エアレーションして得られた塩酸水溶液を、シリカゲルを充填した50℃に加温した塩酸水溶液精製塔に導き精製した。得られた塩酸水溶液中の不純物と濃度は、クロロジフルオロメタン4ppm、トリフルオロメタン5ppm、フッ化水素2ppm、フッ化カルボニル1ppm(塩化水素重量に対して)であった。
実施例2で得られた放散塔より得られた塩化水素ガスを、210℃に加温した銅化合物含有アルミナ触媒(13%Cu/アルミナ触媒)を充填した塩化水素ガス精製塔に導き、塩化水素ガス中の不純物を低減した以外は、実施例2と同様の操作を行なった。
クロロジフルオロメタン製造工程から排出された塩化水素ガス中の不純物と濃度が、クロロジフルオロメタン17ppm、トリフルオロメタン10000ppm、フッ化水素10ppm、フッ化カルボニル15ppm(塩化水素重量に対して)の塩化水素ガスを使用した以外は実施例1と同様に実施した。
図1に示す工程のエアレーション工程、塩酸水溶液精製工程および塩化水素ガス精製工程を行なわず、塩化水素吸収工程および塩化水素ガス放散工程により、塩化水素ガスの精製を行なった。塩化水素吸収工程および塩化水素ガス放散工程での条件は、実施例1と同様に実施した。
図1に示す工程のエアレーション工程を行なわなかった以外は、実施例2と同様の操作を行った。また、クロロジフルオロメタン製造工程から排出された塩化水素ガス中の不純物と濃度が、クロロジフルオロメタン15ppm、トリフルオロメタン16000ppm、フッ化水素50ppm、フッ化カルボニル45ppm(塩化水素重量に対して)であるものの精製を行なった。
2.エアレーション塔
3.塩酸水溶液精製塔
4.放散塔
5.塩化水素ガス精製塔
6.脱水塔
7.循環塩酸水溶液精製塔
Claims (3)
- 下記の(a)〜(d)工程、
(a)クロロジフルオロメタンの製造において、副生成物として排出される、フッ化カルボニルを少なくとも含むフッ素系化合物を含有してなる塩化水素ガスを、水又は塩酸水溶液よりなる吸収液と接触せしめて、該塩化水素ガスを塩酸水溶液とする塩化水素吸収工程、
(b)前記塩化水素吸収工程より得られる塩酸水溶液を、空気および/または不活性ガスによりエアレーションするエアレーション工程、
(c)前記エアレーション工程より得られる塩酸水溶液を放散塔に導き、該放散塔の塔頂より塩化水素をガス状で回収する塩化水素ガス放散工程、及び
(d)前記塩化水素ガス放散工程より得られる塩化水素ガスを、該塩化水素ガスに含まれるフッ素系化合物との反応生成物が固体である除去剤または吸着剤と接触させる塩化水素ガス精製工程、
を含んでなり、かつ、上記(d)塩化水素ガス精製工程において、除去剤または吸着剤として、塩化水素を用いる酸化反応に使用される反応触媒、塩化水素の塩素化反応に使用される反応触媒のいずれか1種類の触媒または2種類以上の触媒を使用することを特徴とする塩化水素ガスの精製方法。 - (e)前記エアレーション工程より得られる塩酸水溶液を、フッ化水素との反応生成物が固体である除去剤または吸着剤と接触させる塩酸水溶液精製工程を含んでなり、該塩酸水溶液精製工程より得られる塩酸水溶液を前記放散塔に導くことを特徴とする請求項1に記載の塩化水素ガスの精製方法。
- 前記塩化水素ガス精製工程において、塩化水素ガスを除去剤または吸着剤と接触させる際の温度を150〜350℃とする請求項1又は2記載の塩化水素ガスの精製方法。
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