JP4754073B2 - 表面活性をもつ人工ペプチドおよび人工のサーファクタントの製造におけるその使用 - Google Patents

表面活性をもつ人工ペプチドおよび人工のサーファクタントの製造におけるその使用 Download PDF

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Description

【0001】
本発明は、表面活性をもつ新規な人工ペプチドを提供する。特に、本発明は、適当な脂質と組み合わされた場合、気−液界面における表面張力を低下させるのに特に効果的であるSP−C類似体を提供する。
【0002】
かくして、本発明のペプチドは、呼吸困難症候群(RDS)、他のサーファクタント(surfactant)欠乏症もしくは機能障害、関連する肺性疾患、例えば肺炎、気管支炎、喘息、胎便性呼吸症候群、そしてまた他の疾患、例えば漿液性中耳炎(グルーイアー(glue ear))の治療において有用な人工のサーファクタントを製造するために、脂質との組み合わせにおいて、そして場合によっては、SP−Bもしくはその活性類似体もしくはSP−B代替物との組み合わせにおいて使用されてもよい。
【0003】
発明の背景
肺胞表面上のサーファクタントは、肺胞内層の気−液界面における表面張力を低下して、末端呼気における虚脱から肺を防御する。サーファクタント欠乏症は、早産児では普通の障害であり、そして呼吸困難症候群(RDS)を惹起するが、これは動物の肺から抽出される天然のサーファクタントにより効果的に治療することができる(Fujiwara,T.and Robertson B.(1992)In:Robertson,B.,van Golde,L.M.G.and Batenburg,B.(eds)Pulmonary Surfactant:From Molecular Biology to Clinical Practice Amsterdam,Elsevier,pp.561−592)。これらのサーファクタント調製物の主成分は、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DPPC)、ホスファチジルグリセロール(PG)のようなリン脂質、および疎水性のサーファクタントタンパク質BおよびC(SP−BおよびSP−C)である。C型(Ca2+依存性)膠質性レシチンであり、そして宿主防御系において最初に作用すると考えられる親水性のサーファクタントタンパク質SP−AおよびSP−Dは、使用される有機溶媒抽出操作のためにサーファクタント調製物中には通常は含まれない。
【0004】
SP−BおよびSP−Cは、サーファクタント量の約1−2%を構成するだけであるが、純粋な脂質調製物に比べて、なお、表面活性における劇的な改善を果たすことができる(Curstedt,T.et al.(1987)Eur.J.Biochem.168,255−262;Takahashi,A.,Nemoto,T.and Fujiwara,T.(1994)Acta Paediatr.Jap.36,613−618)。溶液におけるSP−BおよびSP−Cの1次および2次構造ならびにSP−Cの3次構造は、既に決定されている(4参照)。SP−Bは、鎖間ジスルフィド架橋により結合されたアミノ酸79個の2つの同一ポリペプチド鎖からなる(Curstedt,T.et al.,(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.87,2985−2989;Johansson,J.,Curstedt,T.and Joernvall,H.(1991)Biolchemistry 30,6917−6921)。各モノマー鎖は、3個の鎖内ジスルフィド架橋、そして1つの極性と1つの非極性面を示す少なくとも4個の両親媒性ヘリックスをもち、これらをとおして、SP−Bは、2つの脂質二重層と相互作用し、そしてそれらを密接に接近させることができる(Andersson,M.et al.(1995)FEBS Lett.362,328−332)。SP−Cは、残基9−34間にα−ヘリックスドメインをもつ35個のアミノ酸残基からなるリポタンパク質である(Johansson,J.et al.(1994)Biochemistry 33,6015−6023)。ヘリックスは、ほとんど、バリル残基からなり、そして脂質二重層中に埋没され、そして脂質アシル鎖と平行に配向されている(Vandenbussche,et al.(1992)Eur.J.Biochem.203,201−209)。2つのパルミトイル基は、ペプチドのN末端部分の位置5と6におけるシステイン残基に共有結合されている(Curstedt,T.et al.(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.87,2985−2989)。位置11と12における2つの保存された正荷電の残基、アルギニンおよびリジンは、脂質膜の負荷電の頭部の基と多分相互作用して、その強固さを増強する。脂質−ペプチド相互作用の強固さは、C末端が小さいかまたは疎水性残基のみを含有するので、それに向かって減少し、この部分を、リン脂質二重層において潜在的に一層動きやすくしている。SP−Cは、極端に安定なポリ・バリルヘリックスを介して周囲の脂質の濃厚さと流動性に影響すると考えられる(Johansson,J.and Curstedt,T.(1997)Eur.J.Biochem.244,675−693)。
【0005】
当該技術の状態
動物組織から得られたサーファクタント調製物は、それらの限られた量における利用性、ならびにそれらが感染性因子を含有し、そして免疫反応を誘起する可能性等の、一定の短所を示すので、通常は、合成脂質および疎水性タンパク質から人工のサーファクタントを創造する試みがなされている(Johansson,J.and Curstedt,T.(1997)Eur.J.Biochem.244,675−693;Johansson,J.et.al.(1996)Acta Paediatr.85,642−646)。
【0006】
従来の研究では、合成SP−Cは、自然のペプチドを最適な表面活性について必要なα−ヘリックスコンホメーションのようには折り畳まず(Johansson,J.et.al.(1995)Biochem.J.307,535−541)、したがってサーファクタント脂質と適切に相互作用しないことが例証された。
【0007】
結論として、合成SP−C類似体は、自然のペプチドのように折り畳まれず、そしてサーファクタント脂質と適切に相互作用しない。この問題を回避するために、いくつかの試みが行われ、例えば、α−ヘリックスコンホメーションを強く支持するLeuにより自然のSP−C中のすべてのヘリックスのVal残基を置換することによって配列を改変した。対応する膜貫通性類似体、SP−C(Leu)は、DPPC:PG:PA(68:22:9)(w/w/w)と組み合わされた場合、気−液界面において良好な拡散を示した。しかしながら、周期的な(cyclic)表面圧縮の間の最大表面張力の値(γmax)は、自然のサーファクタントのそれよりも有意に高かった。さらにまた、多分ペプチドオリゴマーの形成によって、約20mg/mlより高い濃度の脂質−ペプチド混合液を調製することは不可能であった(Nilsson,G.et al.(1998)Eur.J.Biochem.255,116−124)。他の研究者は、生物活性のある種々の長さのポリロイシンSP−C類似体を合成した(Takei,T.et al.(1996)Biol.Pharm.Bull.19,1550−1555)。後者の研究では、自己オリゴマー化も、または高い脂質濃度のサンプルを作成する際の問題も、いずれも報告されなかった。
【0008】
種々の出版物は、天然のサーファクタントペプチドのペプチド性類似体を提供する問題を取り扱い、多数の異なる回答を出している。これらの刊行物の中で、Tokyo Tanabeの名におけるWO93 21225、EP733 645、WO96 17872は、天然のSP−Cのペプチド類似体を開示しており、これは、一般にはN末端部分の配列に関して自然のペプチドとは異なる。
Scripps Reseach Instituteの特許出願WO89 06657およびWO92 22315は、交互に並んでいる疎水性および親水性アミノ酸残基をもつSP−B類似体を開示している。他のものでは、ロイシンおよびリジン残基が交互に並んでいるペプチド(KL4)が特許請求されている。
【0009】
Clercx A.et al.,Eur.J.Biochem 229,465−72,1995は、ブタのSP−CのN末端に対応する種々の長さのペプチド、およびブタのSP−Cとバクテリオロドプシンから得られたハイブリッドペプチドを開示している。
【0010】
Johansson J.et al.,Biochem.J.307,535;41,1995は、いくつかのアミノ酸の置換による自然のブタSP−Cとは異なる合成ペプチドを開示している。
【0011】
California Biotechnology−Byk Guldenの名におけるWO89/04326、およびCalifornia Biotechnology−Scios Novaの名におけるWO91/18015は、天然のSP−Cの2つのCysが2つのSerによって置換されている、最初のN末端配列を含有するSP−C類似体を開示している。
【0012】
発明の記述
次の特徴:i)他の中性および疎水性残基によるVal残基の置換;ii)Ser残基によるCys残基の置換;iii)嵩高いまたは極性の残基による幾つかの中性アミノ酸残基の置換:を合わせもつSP−C類似体ペプチドは、表面張力低下のために特に好ましい性質を示すことが、ここに見い出された。特に、後者の特徴は、極性残基によって与えられた正電荷か、または嵩高い置換基によって与えられた立体障害の力で、自己オリゴマー化を回避させることが見い出された。
【0013】
次の示すように、第1の態様によれば、本発明は、1文字のアミノ酸コードを用いて、次の一般式(I):
FeGfIPZZPVHLKR(XaB)n(XbB)n(XcB)mXdGALLMGL (I)
[式中、
Xは、V,I,L,Nle(ノルロイシン)からなる群から選ばれるアミノ酸であり;
Bは、オルニチン、K,I,W,F,Y,Q,Nからなる群から選ばれるアミノ酸であり;
Zは、SerもしくはCys残基が、結合された炭素原子12−22個を含有するアシル基と、エステルもしくはチオ−エステル結合を介して場合によっては、結合されていてもよいS,C,Fからなる群から選ばれるアミノ酸であり;
aは、1〜19からの整数であり、
bは、1〜19からの整数であり、
cは、1〜21からの整数であり、
dは、0〜20からの整数であり、
eは、0もしくは1であり、
fは、0もしくは1であり、
nは、0もしくは1であり、
mは、0もしくは1であるが、
条件:
− n+M>0、
− f≧e;
− (XaB)n(XbB)n(XcB)mdは、最大アミノ酸22個、好ましくは10〜22個をもつ配列であることを前提とする]
で示されるSP−C類似体を提供する。
【0014】
好適な式(I)のペプチドは、次の配列:
(Ia) FGIPSSPVHLKRX4BX4BX4BXGALLMGL
(Ib) FGIPSSPVHLKRX5BX5BX4GALLMGL
(Ic) FGIPSSPVHLKRX4BX11GALLMGL
(Id) FGIPSSPVHLKRX8BX7GALLMGL
(Ie) FGIPSSPVHLKRX11BX4GALLMGL
をもつ。
【0015】
配列(Ia)−(Ie)において、B=LysもしくはPheおよびX=Leu,IleもしくはNleをもつ配列が好適である。
【0016】
好適な実施態様によれば、式(Ia)−(If)のペプチドは、それぞれ、次の配列:
【0017】
【表2】
Figure 0004754073
【0018】
をもつ。
【0019】
本発明のより好適な実施態様では、Ser残基は、炭素原子12−22個を含有するアシル基と共有結合されている。
【0020】
式(I)のペプチドは、合成法もしくは組み換え技術によって製造することができる。
【0021】
慣用の合成法は、例えば、Schroeder et al.,”The peptides”,vol.1,Academic Press,1965;Bodanszky et al.,”Peptide synthesis”,Interscience Publisher,1996;Baramy & Merrifield,”The peptides;Analysis,Synthesis,Biology”,vol.2,chapter 1,Academic Press,1980において記述されている。該技術は、固相、溶液におけるペプチド合成、有機化学合成法またはそれらのすべての組み合わせを含む。
【0022】
S−もしくはO−アシル化ペプチドは、好ましくは、Yousefi−Salakdeh et al.Biochem J 1999,343,557−562に記述されるように、ニートのトリフルオロ酢酸中で塩化アシルによるアシル化されてないペプチドの処理によって合成される。合成および精製後、合成ペプチドは、次の「実施例」の節において報告されるように、生物化学的および生物物理学的に特徴付けられる。
【0023】
表面張力を低下させることにおいて、本発明のペプチドの活性は、脂質およびリン脂質、SP−B、SP−Bの類似体もしくはSP−Bの代替物との組み合わせにおいて評価された。特に、ペプチドは、SP−B、その活性類似体およびポリミキシンの有無において、DPPC(1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン)/PG(ホスファチジルグリセロール)/PA(パルミチン酸)と組み合わせられた。
【0024】
脈動性(pulsating)−気泡表面活性試験の結果は、本発明による合成ペプチドが、周期的な表面圧縮の間の最小および最大表面張力(γminおよびγmax)を、天然起源からのサーファクタントを用いて得られるものに匹敵する値まで強力に減少することを、明らかに示す。
【0025】
混合物ペプチド/脂質−リン脂質へのSP−Bもしくはその活性類似体の添加は、特に好ましい結果を与えた。さらにまた、驚くべきことに、ポリミキシン、特にポリミキシンBは、SP−Bの代替物として働き、そしてそれらの添加は、SP−Bにより達成されるものに匹敵する結果を与えることが見い出された。
【0026】
第2の態様によれば、本発明は、脂質および/またはリン脂質、そして場合によってはSP−B、その活性誘導体もしくはポリミキシンとが添加された状態で、1種以上の式(I)のペプチドを含んでなる合成サーファクタントを提供する。適当な脂質/リン脂質は、ホスファチジルコリン(好ましくはDPPC)、PG,PA,トリアシルグリセロール、スフィンゴミエリンからなる群から選ばれてもよい。
【0027】
本発明のさらに、より好適な実施態様では、パルミトイル鎖がSer残基にO−共有結合されているペプチドを含有するサーファクタント混合物が使用されるべきである。参照ペプチド(SP−C(Leu))のジパルミトイル化された形態を含有するサーファクタント混合物は、捕らわれた(captive)気泡系によって測定されるように、対応する非パルミトイル化ペプチドを含有する混合物に比較して、より高い表面膜の安定性と表面に関わる脂質リザーバー(reservoir)の増大されたサイズを示すことが分かった。ジパルミトイル化ペプチドの5%を含有するサンプルでは、γminは、1.5mN/m以下であり、そして表面張力が一定の気泡容積において10分以内に0.5mN/m未満増強されたように、膜は非常に安定であった。これに対して、非パルミトイル化ペプチドに関するγminは、ほぼ5mN/mであり、そして低い表面張力においてしばしば起きる起泡のクリッキング(clicking)によって観察されるように、膜は、より低い安定性であった。さらに、非パルミトイル化ペプチドを含有するサンプルについてのサブフェイス・デプレッション(subphase depletion)後、ゼロ安定表面張力近くに達する能力は、わずかな吸着段階後に失われたが、これに対して、ジパルミトイル化ペプチドによっては、膜の品質は、10膨張段階後でさえも劣化せず、そしてリザーバー材料の組み入れは、2つ以上の単層と同等であった。また、ジパルミトイル化ペプチドの改良された表面活性は、振動性気泡サーファクトメーター(surfactometer)によって例証された。さらに、アシル基の存在は、オリゴマーを形成する傾向をさらに低下させることが分かった。人工のサーファクタントの製造中、ペプチドのオリゴマー化が、20mg/mlより高い濃度における混合物の調製を妨げることが分かっているので、この発見は非常に重要である(Nilsson et al.Eur J Biochem 1998,255,116−124)。
【0028】
合成のサーファクタントは、ペプチドおよび脂質の溶液もしくは懸濁液を混合することによって、そして混合物を続いて乾燥することによって調製できる。
【0029】
この事象では、乾燥混合物は、サーファクタント欠乏症のための処置を必要とする被験者に対して、懸濁、分散されるか、またはそのままで投与されてもよい。
【0030】
合成サーファクタントは、好ましくは、気管内に、またはエアゾルにより投与できる。後者の投与形態は、適当な不活性噴射剤とサーファクタントの小粒子の組み合わせを必要とするであろう。また、サーファクタントの安定な液剤/懸濁剤の噴霧化もしくはスプレーのような他の投与形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【0031】
さらなる態様によれば、本発明は、成人もしくは新生児期のサーファクタント欠乏症もしくは機能障害に関連する肺性疾患、例えば肺炎、気管支炎、喘息、胎便吸引症候群のあらゆる症例、そしてまた他の疾患、例えば漿液性中耳炎(グルーイアー)において使用されるサーファクタント剤の製造のための前記ペプチドの使用を提供する。
【0032】
典型的には、サーファクタント剤は、しばしば早産児を冒す呼吸困難症候群の治療において、好ましくは、気管内投与により使用できる。
【0033】
次の実施例は、より詳細に本発明を説明する。
【0034】
実施例1
ペプチド合成および精製
SP−C、SP−C(LKS)の類似体(図1)は、Applied Biosystems 430A装置において、段階的固相技術およびtert−ブチルオキシカルボニル化学の使用によって合成された(Kent,S.B.H.(1988)Annu.Rev.Biochem.57,957−989)。樹脂−ペプチド結合の切断および側鎖の保護は、0℃で1.5時間、無水フッ化水素/メトキシベンゼン/ジメチルスルフィド、10:1:1(v/v/v)中で実施された。保護基およびスカベンジャーが、ジエチルエーテルによる反復抽出によって除去され、そしてペプチドが、ジクロロメタン/トリフルオロ酢酸(TFA)3:1(v/v)によって樹脂から続いて抽出され、その後ロータリーエバポレーターで処理された。粗ペプチド抽出物は、5%H2Oを含有するクロロホルム/メタノール1:1(v/v)中に濃度100mg/mlにおいて再溶解された。一定分量の10mgが、同じ溶媒においてSephadex LH−60カラム(40x1cm)に適用された(Curstedt,T.et al.(1987)Eur.J.Biochem.168,255−262)。画分2.5mlが収集され、そして214および280nmにおける吸光度が測定された。同定および定量はアミノ酸分析における遂行された。
【0035】
アシル化では、精製ペプチド(典型的には約5mg)が乾燥され、蒸留TFA(100μl)中に溶解され、そして塩化アシル(ペプチドに比べて10−20当量)が添加された。10分後、反応が80%エタノール水溶液(1.9ml)を用いて停止される。アシルペプチドの精製は、塩化エチレン/メタノール1:4(v/v)中でLipidex5000におけるクロマトグラフィーの使用と、続く、60%(水性)メタノール/0.1%TFAまたは75%(水性)エタノール/0.1%TFA中に流入する2−プロパノール/0.1%TFAの直線濃度勾配を用いてC18カラム上での逆相HPLCによって行われる。
【0036】
実施例2
生物学的特徴付け
ペプチドの純度は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)(Phast−system,Pharmacia,Sweden)によって、そしてC18カラムおよび60%メタノール水溶液/0.1%TFAおよびイソプロパノール/0.1%TFAの直線勾配を用いる逆相高速度液体クロマトグラフィー(HPLC)によってチェックされた(Gustafsson,M.et al.(1997)Biochem.J.326,799−806)。
【0037】
分子質量は、マトリックス−アシステッド(matrix−assisted)レーザー デソープション イオニゼーション−タイム−オブ−フライト(laser desorption ionization−time−of−flight)(MALDI−TOF)質量分析(Lasermat 2000,Finnigan MAT)によって、血管作動性腸ペプチド(Mr 3326.8)により校正されて決定された。
【0038】
ペプチドの2次構造は、円二色性(CD)分光法(Jasco−720 Jasco,Japan)を用いて研究された。トリフルオロエタノール(TFE)を用いて溶解後、スペクトルが、スキャン速度20nm/minおよび解像度2データポイント/nmを用いて260から184nmまで記録された。残余モルエリプティーシー(residual molar ellipticy)が計算され、そしてkdeg x cm2/dmolにおいて表された。208および222nmにおけるモルエリプティシティー(ellipticities)は、ヘリックス構造の含量を評価するために利用された(Barrow,C.J.et al.(1992)J.Mol.Biol.225,1075−1093)。
【0039】
CD分光法を用いるSP−C(LKS)の2次構造研究は、α−ヘリックスのペプチドについて典型的なスペクトルを示し、そしてα−ヘリックス含量約75%が、208nmおよび222nm最小値から概算された。もしペプチドが純TFE中に可溶化されるならば、2次構造は、12%TFEまでのH2Oによる段階的希釈後には安定のまま留まった。
【0040】
SP−C(LKS)のSDS−PAGEは、ヘリックス部分においてLysを欠くSP−C(Leu)がオリゴマーを形成するのに対して、自然のSP−Cに類似する単一バンドを示した。20mg/mlより高い濃度において可溶化するのが困難であるSP−C(Leu)/脂質混合物による本発明者らの経験(Nilsson,G.et al.(1998)Eur.J.Biochem.255,116−124)に反して、脂質濃度80mg/mlおよびポリペプチド/脂質比0.03をもつSP−C(LKS)/脂質混合物を作成することが可能であった。
【0041】
実施例3
ペプチド/脂質混合物の調製
DPPC、PGおよびPAは、すべてSigma Chemical Co.(St Louis,MO)から購入された。クロロホルム/メタノール98:2(v/v)に溶解された脂質は、比率DPPC:PG:PA68:22:9(w/w/w)またはDPPC/PG7:3(w/w)において混合された。サーファクタント調製物は、全ポリペプチド/脂質重量比0−0.05において、各脂質混合物に対して、SP−C(LKS)単独またはSP−C(LKS)とSP−Bを添加することによって調製された。混合物は、窒素下で蒸発され、そしてNaCl 150mmol/l中、またはNaCl 140mmol/lとCaCl22.0mmol/lを含有するHepesバッファーpH6.9 10mmol/l中に、脂質濃度10−80mg/mlにおいて再懸濁された。繰り返される凍結および音波処理(50W,48kHz)が、均質懸濁液が得られるまで実施された。若干の場合には、最終懸濁液は、45℃で1次間インキュベートされた。
【0042】
NaCl 150mmol/l中に懸濁されたサーファクタント調製物は、pH3.5−5.5を有した。より低いpH値3.5−4.5は、SP−Bを含有する調製物において観察された。自然のSP−Bは、酸性化された有機溶媒を用いて精製されるので(Curstedt et al.(1987)Eur.J.Biochem.168,255−262)、少量の酸が調製物中に残っていてもよい。近似の生理学的pHは、NaCl 140mmol/lとCaCl2 2mmol/lを含有するHepesバッファーpH6.9中にサーファクタント調製物を懸濁することによって得られた(表1)。緩衝化されてない生理食塩水中の対応する調製物に比較して、DPPC/PG7:3(w/w)が脂質混合物として使用された場合は、γmaxもしくはγminの変化はなかった。しかしながら、PAが脂質混合物中に含まれた場合は、両γmaxおよびγminは、より高いpHにおいて増加した(表1および2)。
【0043】
表1:生理学的食塩溶液における人工サーファクタントの調製物の表面の性質
測定は、サンプルの調製後または45℃で1時間インキュベーション後、直接実施された。リン脂質濃度は、NaCl 150mmol/l中10mg/mlであった。記録は、37℃における振動性気泡サーファクトメーターにより種々の時間、50%表面圧縮において、そして速度40サイクル/minにおいて得られた。値は、3−5測定値の平均値(標準偏差)であった。略記は本文において定義された。
【0044】
【表3】
Figure 0004754073
【0045】
表2:バッファー塩溶液における人工サーファクタントの調製物の表面の性質
測定は、順に、NaCl 140mmol/lおよびCaCl2 2.0mmol/lを含有するHepesバッファー(pH6.9)中、濃度10mg/mlにおいてリン脂質を含有するサンプルにおいて実施された。記録は、37℃における振動性気泡サーファクトメーターにより種々の時間、50%表面圧縮において、そして速度40サイクル/minにおいて得られた。値は、3−5測定値の平均値(標準偏差)であった。略記は本文において定義された。
【0046】
【表4】
Figure 0004754073
【0047】
実施例4
SP−C(LKS)およびポリミキシンBを含むリン脂質混合物の調製
DPPCおよびPGは、Sigma Chemical Co.(St Louis,MO)から購入された。クロロホルム/メタノール98:2(v/v)に溶解されたリン脂質は、比率DPPC:PG7:3(w/w)において混合された。SP−C(LKS)は、全ポリペプチド/リン脂質重量比0.03において、リン脂質混合物に添加された。混合物は、窒素下で蒸発され、そしてNaCl 140mmol/lおよびCaCl22.0mmol/lを含有するHepesバッファーpH6.9 10mmol/l中に、またはポリミキシンB(PxB)(Sigma Chemical Co.,St Louis,MO)を含有する同じバッファー中に、室温において再懸濁された。繰り返される凍結および音波処理(50W,48kHz)が、均質懸濁液が得られるまで実施された。両調製物の最終リン脂質濃度は、10mg/mlであった。PxBの添加は両γmaxおよびγminを減少し、そして最適表面活性が得られた(表3)。
【0048】
表3:ポリミキシンBの有無における人工サーファクタントの表面の性質
記録は、37℃における振動気泡サーファクトメーターにより種々の時間および速度40サイクル/minにおける50%表面圧縮において得られた。値は、5−11測定値の平均値(SD)である。略記は本文において定義されている。
【0049】
【表5】
Figure 0004754073
【0050】
実施例5
生物物理学的特徴付け
表面拡散速度論が、Willhelmy表面圧計(Biegler,Vienna,Austria)を用いて約34−37℃において測定された。表面張力は、ひずみ計に接続され、そしてテフロン水槽中のNaCl 150mmol/lの20mlの水相に1mm挿入された白金板を用いて10分間モニターされた。懸濁液が、全量では脂質1mgを小滴として、白金板から4cmの水相上に添加された。
【0051】
Willhelmy表面圧計を用いて、DPPC/PG7:3(w/w)における3重量%SP−C(LKS)の速度論的測定は、3秒後に表面張力28mN/mをもつ急速な拡散を示した(図2)。拡散は、同じ脂質混合物における1重量%SP−C(LKS)を用いると若干遅かった(データ未提示)。2重量%SP−Bの添加は、拡散速度または平衡表面張力を有意には変化させなかった(図2)。45℃で1時間の混合物のインキュベーション後に、改善は観察されなかった(データ未提示)。同じような結果が、脂質混合物としてDPPC:PG:PA,68:22:9(w/w/w)を用いて得られた(データ未提示)。
【0052】
動的表面張力は、脈動性起泡サーファクトメーター(Surfactometer International,Toronto,Canada)を用いて、起泡表面の50%周期的圧縮の間37℃において、そして頻度40サイクル/minにおいて記録された。全測定は、5分間、脂質濃度10mg/mlにおいて行われた。起泡壁を横切る圧力勾配(gradiens)が、一定の時間間隔で測定され、そして最小(γmin)および最大(γmax)起泡サイズにおける表面張力を算出するために使用された。
【0053】
脈動性起泡サーファクトメーターにおいて、DPPC:PG:PA,68:22:9(w/w/w)における3重量%SP−C(LKS)は、最小起泡半径において、1mN/m未満の表面張力(γmin)を生じたが、一方、γmin9−14mN/mが、DPPC/PG,7:3(w/w)における3重量%SP−C(LKS)を用いて観察された(表1)。最大起泡半径における表面張力(γmax)は、両場合において約40mN/mであった。2重量%SP−Bの添加は、両脂質調製物についてγmax値31−33mN/mおよびγmin0−2mN/mを与えた。これらの値は、天然起源から単離されたサーファクタント調製物により得られた値に非常に類似している(Robertson,B.et al.(1990)Prog.Respir.Res.25,237−246)。45℃で1時間の調製物のインキュベーションは、表面活性には有意な影響をもたなかった(表1)。SP−B量を、DPPC/PG,7:3(w/w)における3重量%SP−C(LKS)において0.5重量%まで減少することは、γminを増大する傾向を示したが、その結果は、統計的な有意性には達しなかった(表1)。SP−Bとは対照的に、DPPC:PG:PA,68:22:9(w/w/w)における3重量%SP−C(LKS)に対して2重量%KL4(Cochrane,C.G.and Revak,S.D.(1991)Science 254,566−568)の添加は、γmaxを低下せず、これは比較的高く41−42mN/mに留まっていた。
【0054】
実施例6
ジパルミトイル化および非パルミトイル化参照ペプチドを含有する混合物間の比較
DPPC/PG/PA 68:22:9 w/w/wから作られた各脂質混合物に対して、3%w/wSP−C(Leu)もしくはジパルミトイル化SP−C(Leu)を添加することによって作成された。混合物は、窒素下で蒸発され、そしてNaCl 150mmol/l中に脂質濃度10mg/mlにおいて再懸濁された。また、SP−B代替物が使用されたサンプルでは、ポリミキシンB1%w/wが添加された。
【0055】
ポリミキシンBの有無においてジパルミトイル化SP−C(Leu)を含有する混合物は、5分におけるγmaxを、そしてより早期の時間間隔においてγminを低下することに、特に有意な改善を示した。
【0056】
表4:表面の性質
混合物の表面張力は、脈動起泡サーファクトメーターを用いて得られた。平衡の2分後、記録は、種々の期間、37℃で50%表面圧縮において、そして速度40サイクル/minにおいて得られた。
【0057】
【表6】
Figure 0004754073
【0058】
実施例7
イン・ビボでの測定
幼若な肺の機械的性質に及ぼすサーファクタント療法の効果が、妊娠27日令の期前の新産ウサギ9匹において評価された。動物は、誕生時に気管切開され、そしてそれらの5匹は、前記比率においてポリミキシンBの有無におけるDPPC、PGおよびSP−C(LKS)を含有する人工サーファクタント2.5ml/kg2回を気管カニューレを通して受けた。外因性サーファクタントの全リン脂質濃度は、40mg/mlであった。ネガティブ対照として使われた2匹の動物は、気管チューブによる物質を受けず、そしてポジティブ対照として使われた他の2匹は、40mg/mlに希釈された同用量の改変された天然サーファクタント(Curosurf,Chiesi Farmaceutici Spa,Parma,Italy)により処置された。1匹の動物は、用量2.5ml/kgにおいて生理食塩水中DPPCおよびPGの混合液(上記と同じ濃度)により処置された。全動物は、温度30℃における肢体血量計ボックス中に維持され、そして頻度40分および50%吸気時間に設定されたServo Ventilator 900B(Siemens−Elema,Solna,Sweden)を用いて、100%酸素により60分間並行して換気された。呼吸量は、各血量計ボックスに接続された呼吸速度描写器(pneumotachygraph)により測定された。動物は、標準化された呼吸量8−10ml/kgにより、そしてポジティブな末端呼気圧(PEEP)なしで換気された。肺−胸郭屈従は、呼吸量とピークの吸気圧間の比として定義され、そしてml/cmH2Okgとして表された。
【0059】
未処置の対照動物との比較において、コンプライアンス(compliance)は、人工サーファクタントで処置された動物において、特にポリミキシンBを含有するサーファクタントを受けている動物において有意に改善された。注目すべきことに、改善は、同用量の改変された天然のサーファクタントによる処置後に見られたものよりも優れていると思われる(図3)。
【図面の簡単な説明】
【図1】 SP−Cおよびその類似体のアミノ酸配列およびらせん回転表示
ヒトSP−Cの配列は、Johansson,J.et al.(1988)FEBS Lett.232,61−64から、そしてSP−C(Leu)の配列は、Nilsson,G.,et al.(1998)Eur.J.Biochem.255,116−124から採用した。SP−C(LKS)は、SP−Cの1次構造に基づくが、位置17を除く位置16−28のすべてのVal残基がLeu残基により置換され、Lys残基が、位置17,22および27に導入されていて、そして位置5および6のパルミトイル化Cysは、Serにより置換されている。
【図2】 合成サーファクタント調製物の表面の拡がり性
3重量%SP−C(LKS)(黒い四角、実線)、および2重量%SP−Bの添加とともに3重量%SP−C(LKS)(白い三角、点線)の拡散速度論。全調製物が、NaCl 150mmol/l中DPPC/PG,7:3(w/w)の10mg/mlの濃度において試験された。記録は、Wilhelmyバランスにより得られ、そして各データポイントは、3回の異なる記録の平均値である。
【図3】 イン・ビボの結果
早熟の新産ウサギ5匹(妊娠27日令)における肺−胸郭コンプライアンスが、標準化された呼吸量8−10ml/kgにより、そしてポジティブな末端呼気圧(PEEP)なしで換気された。コンプライアンスは、処置された動物において有意に改善された。ポリミキシンB(PxB)の添加は、人工サーファクタント調製物の効果を増強するように思われる。リン脂質の濃度は、すべてのサーファクタント調製物において同一、すなわち40mg/mlである。
【配列表】
Figure 0004754073
Figure 0004754073
Figure 0004754073

Claims (15)

  1. 1文字のアミノ酸コードにしたがって、一般式(I):
    efIPZZPVHLKR(XaB)(XbB)n(XcB)mdGALLMGL (I)
    [式中、
    Xは、I,L,Nle(ノルロイシン)からなる群から選ばれるアミノ酸であり;
    Bは、K,W,F,Y,オルニチンからなる群から選ばれるアミノ酸であり;
    Zは、Sであり、かつ、炭素原子12−22個を含有するアシル基とエステルもしくはチオ−エステル結合を介して結合されていてもよいアミノ酸であり
    aは、1〜19からの整数であり;
    bは、1〜19からの整数であり;
    cは、1〜21からの整数であり;
    dは、0〜20からの整数であり;
    eは、0もしくは1であり;
    fは、0もしくは1であり;
    nは、0もしくは1であり;
    mは、0もしくは1であるが、
    ただし、
    n+>0;
    f≧e;かつ、
    (XaB)(XbB)n(XcB)mdは、最大アミノ酸22個をもつ配列であることを条件とする]
    で示されるSP−C類似体。
  2. (X a B)(X b B) n (X c B) m d がアミノ酸10〜22個をもつ配列であることを条件とする、請求項1記載のSP−C類似体。
  3. 式(Ia):
    (Ia) FGIPSSPVHLKRX4BX4BX4BXGALLMGL
    で示される、請求項1記載のSP−C類似体。
  4. 式(Ib):
    (Ib) FGIPSSPVHLKRX5BX5BX4GALLMGL
    で示される、請求項1記載のSP−C類似体。
  5. 式(Ic):
    (Ic) FGIPSSPVHLKRX4BX11GALLMGL
    で示される、請求項1記載のSP−C類似体。
  6. 式(Id):
    (Id) FGIPSSPVHLKRX8BX7GALLMGL
    で示される、請求項1記載のSP−C類似体。
  7. 式(Ie):
    (Ie) FGIPSSPVHLKRX11BX4GALLMGL
    で示される、請求項1記載のSP−C類似体。
  8. Ser残基が、パルミトイル基によりアシル化されている、請求項1−7のいずれかに記載のSP−C類似体。
  9. Bがリジンもしくはフェニルアラニンであり、そしてXがロイシン、イソロイシンもしくはノルロイシンである、請求項1−8のいずれかに記載のSP−C類似体。
  10. Figure 0004754073
    からなる群から選ばれる、請求項記載のSP−C類似体。
  11. 脂質およびリン脂質との混合物の状態で請求項1−10のいずれかに記載の少なくとも1種のSP−C類似体を含んでなる合成サーファクタント。
  12. 質/リン脂質が、DPPC、PG、PAを含有する、請求項11記載の合成サーファクタント。
  13. SP−Bもしくはその活性誘導体またはポリミキシンを、さらに含有する、請求項11または12記載の合成サーファクタント。
  14. 溶液、分散液、懸濁液、乾燥粉末の形態にある、請求項11−13のいずれかに記載の合成サーファクタント。
  15. 呼吸困難症候群において使用される合成サーファクタントの調製のための、請求項1−10のいずれかに記載のSP−C類似体の使用。
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