JP4752154B2 - リチウム二次電池の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リチウム二次電池の製造方法に係り、特に、リチウム複合酸化物を含有した正極合剤層を正極集電体上に形成した正極と、充放電によりリチウムイオンをドープ・脱ドープ可能な炭素材を用いた負極と、前記リチウムイオンの通過を許容するセパレータとを捲回した捲回群を備えるリチウム二次電池の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
リチウム二次電池は、高エネルギー密度であるメリットを活かして、主にVTRカメラやノートパソコン、携帯電話等のポータブル機器の電源に使用されている。この電池の内部構造は通常以下に示されるような捲回式にされる。電極は正負極共に活物質が金属箔に塗着された帯状であり、セパレータを挟んで正負極が直接接触しないように断面が渦巻き状に捲回され、捲回群を形成してる。そして、電池容器となる円筒状の缶に捲回群が収容され、電解液注液後、封口されている。
【0003】
一般的な円筒型リチウム二次電池の寸法は、18650型と呼ばれる、直径が18mm、高さが65mmとなっており、小形民生用リチウム二次電池として広く普及している。18650型のリチウム二次電池の正極活物質には、高容量、長寿命を特徴とするコバルト酸リチウムが主として用いられており、電池容量は、約1.3Ah〜1.7Ah、出力は約10W程度である。
【0004】
一方、自動車産業界においては環境問題に対応すべく、排出ガスのない、動力源を完全に電池のみにした電気自動車(EV)と、内燃機関エンジンと電池との両方を動力源とするハイブリッド(電気)自動車(HEV)の開発が加速され、一部実用化の段階にきている。
【0005】
EV用等の電源となる電池には当然高出力、高エネルギーが得られる特性が要求され、この要求にマッチした電池としてリチウム二次電池が注目されている。高出力、高エネルギーな電池を得るために、電極ディメンジョンの工夫がなされている。
【0006】
リチウム二次電池は、複数個接続した組電池として多くの用途に用いられており、組電池の高エネルギー密度化への要求が年々厳しくなっている。組電池を高エネルギー密度化する技術の一つとして、単電池を円筒型から扁平円筒型又は角型にして、個々の単電池間に生ずる空間を小さくする試みが活発に検討されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、EV用電源等に用いられるような大型のリチウム二次電池は、大電流で充電、放電が繰り返され、かつ高出力、高エネルギーを確保するために、正極、負極の対向面積を大きくしたり、電極の合剤層のかさ密度を大きくして導電ネットワークを強固にして抵抗を小さくする必要があるため、電極は長く、捲回回数も多い。大電流で充放電を繰り返すと正極集電体上に形成された正極合剤層は、膨張・収縮を繰り返すため、正極集電体と正極合剤層との密着強度が不十分であると、正極集電体と正極合剤層との界面で剥離が生じ、電池容量にバラツキが生じ、早期寿命に至る。特に過放電状態に至ったときには、正極合剤層の膨張が増大するため、正極集電体と正極合剤層との界面で剥離のみならず、正極集電体が破断して電池の安全性を低下させることもある。
【0008】
また、正極、負極及びセパレータを捲回した捲回群を作製するとき、セパレータへのしわの混入や電極の位置ずれを防止するために、捲回方向と逆方向に一定の力で電極及びセパレータを引っ張りながら捲回している。この際、電極の外周面側は延伸されやすく、歪みが生ずる。特に、扁平型の捲回群では、捲回半径の小さい部分で大きな歪みを生ずる。歪みは、最も密着強度の弱い部分、例えば正極集電体と正極合剤層との界面又は正極合剤層間で剥離を生ずることで小さくなるが、電池特性は低下する。電極内で部分的に剥離を生ずると電極反応が不均一となって早期寿命に至るのみでなく、電流の集中により発熱して電池の安全性を損ねる。
【0009】
本発明は、上記事案に鑑み、電池容量のバラツキの小さい長寿命な電池の製造方法を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、リチウム複合酸化物を含有した正極合剤層を正極集電体上に形成した正極と、充放電によりリチウムイオンをドープ・脱ドープ可能な炭素材を用いた負極と、前記リチウムイオンの通過を許容するセパレータとを捲回した捲回群を備えるリチウム二次電池の製造方法であって、前記正極集電体には、二枚重ねで圧延した後に剥離して得られ表裏面の表面粗さが異なったアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔が用いられており、前記正極集電体の表面粗さ(Rz)が1μm乃至3μmであって、表面粗さの小さい面に対する前記表面粗さの大きい面の表面粗さの比が1.05以上であり、該表面粗さの大きい面が前記捲回群の外面となるように捲回されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の製造方法では、正極集電体に、二枚重ねで圧延した後に剥離して得られ表裏面の表面粗さが異なったアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔が用いられており、正極集電体の表面粗さ(Rz)が1μm乃至3μmであって、表面粗さの小さい面に対する表面粗さの大きい面の表面粗さの比が1.05以上の正極集電体を用いて、表面粗さの大きい面が捲回群の外面になるように捲回したため、正極集電体の外面と正極合剤層との接触面積を増加させて密着強度を確保できるので、正極集電体からの正極合剤層の剥離を抑制でき、電池容量のバラツキの小さい長寿命の電池とすることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明をHEV用の円筒型リチウムイオン二次電池に適用した実施の形態について説明する。
(正極集電体)
正極集電体には、最も多く採用されているA1085のアルミニウム箔、又は電池の高出力化、高エネルギー化が進むにつれて、近年使用量が増大しているA3003のアルミニウム合金箔を用いた。
【0014】
アルミニウム箔を用いる場合、厚さ3mmのA1085のマスタコイル(スカイアルミニウム(株)製)を冷間圧延機で数回繰り返し圧延して、厚さ約0.1mmまで製箔した。次に、製箔したアルミニウム箔の一方の表面に離型剤を塗布し離型剤層を形成した。更に、離型剤層表面に製箔したアルミニウム箔を重ねて巻き取った。この巻き取ったものを、更に高い精度で圧力制御が可能な冷間圧延機で数回繰り返し圧延して、全体の厚さが約40μmになるまで製箔した。その後、離型剤層でアルミニウム箔を剥離、洗浄、乾燥させて厚さ約20μmのアルミニウム箔を2枚得た。
【0015】
アルミニウム箔の表面粗さの小さいプレス面A(表面粗さの小さい面;図1参照)と、表面粗さの大きい離型剤層面B(表面粗さの大きい面)とで、それぞれ表面粗さ(Rz:十点平均粗さ)が異なるようにした。また、表面粗さを1μm〜3μmとして、プレス面Aの表面粗さに対する離型剤層面Bの表面粗さの比Rを1.05以上とした。また、アルミニウム合金箔を用いる場合も同様に作製した。
【0016】
(正極)
活物質のリチウム複合酸化物としてのマンガン酸リチウム(LiMn2O4)粉末と、導電材として鱗片状黒鉛(平均粒径:20μm)と、アセチレンブラックと、結着剤としてポリフッ化ビニリデンとを所定混合割合RP(重量%)で混合し正極合剤とし、これに分散溶媒のN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略称する。)を添加、混練してスラリを得た。このスラリを、所定表面粗さで上記作製したアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔(正極集電体)の両面に塗布し、乾燥させて、表面温度120゜Cに設定したロールプレス機を用いてプレスして正極合剤層を形成した。その後、裁断して幅300mm、所定長さ、正極合剤層(活物質塗布部)の厚さ(集電体の厚さは含まない。)が260μmの正極を得た。このとき正極の長手方向の一側に幅50mmの未塗布部を残し未塗布部に切り欠きを入れた。切り欠き残部はリード片とした。隣り合うリード片は、20mm間隔で設けた。またリード片の幅は10mmとした。正極合剤層のかさ密度は2.65g/cm3とした。
【0017】
(負極)
活物質の炭素材としての非晶質炭素である呉羽化学工業株式会社製カーボトロンP粉末92重量部に、結着剤としてポリフッ化ビニリデン8重量部を添加し、これに分散溶媒のN−メチル−2−ピロリドンを添加、混練してスラリを得た。このスラリを厚さ10μmの負極集電体の電解銅箔の両面に塗布し、乾燥させて、表面温度120゜Cに設定したロールプレス機を用いて線圧3.9×105N/m、ベント圧3.0×106Paでプレスして負極合剤層を形成し、裁断して幅305mm、所定長さ、かさ密度1.00g/cm3、負極合剤層(活物質塗布部)の厚さ60μm(集電体の厚さは含まない。)の負極を得た。このとき負極の長手方向の一側に幅50mmの未塗布部を残した。その後、未塗布部に正極と同様に切り欠きを入れた。切り欠き残部はリード片とした。隣り合うリード片は、20mm間隔で設けた。またリード片の幅は10mmとした。
【0018】
また、正極及び負極への活物質仕込量は、セパレータを介して対向する単位面積あたりで、正極の充電終止電位4.5V(Li/Li+基準)までの充電可能容量と負極の終止電圧0V(Li/Li+基準)までの充電可能容量とが同じになるようにした。ちなみに、正極活物質ではマンガン酸リチウムの単位活物質重量あたりの充電可能容量は105mAh/gであり、負極活物質の充電可能容量は450mAh/gであった。
【0019】
(電池の作製)
上記作製した正極及び負極が直接接触しないように厚さ40μmのポリエチレン製セパレータを介して捲回して捲回群6を作製した。このとき、図1に示すように、アルミニウム箔17の離型剤層面Bが捲回群6の外面になるようにした。また、正極及び負極のリード片9が、それぞれ捲回群6の互いに反対側の両端面に位置するようにした。正極、負極及びセパレータの長さを調整し、捲回群6の外径を65±0.1mmとした。また、正極と負極とを捲回したときに、捲回最内周では捲回方向に正極が負極からはみ出すことがなく、また、最外周でも捲回方向に正極が負極からはみ出すことがないように、負極の長さは正極の長さよりも18cm長くした。捲回方向に垂直の方向においても正極合剤層が負極合剤層からはみ出すことがないように、負極合剤層の幅を、正極合剤層の幅よりも5mm長くした。
【0020】
正極から導出されているリード片9を変形させ、その全てを、軸芯11のほぼ延長線上にある極柱(正極外部端子1)周囲から一体に張り出している鍔部7周面付近に集合、接触させた後、リード片9と鍔部7周面とを超音波溶接してリード片9を鍔部7周面に接続し固定した。また、負極外部端子1’と負極から導出されているリード片9との接続操作も、正極外部端子1と正極から導出されているリード片9との接続操作と同様に行った。
【0021】
その後、正極外部端子1及び負極外部端子1’の鍔部7周面全周に絶縁被覆8を施した。この絶縁被覆8は、捲回群6外周面全周にも及ぼした。絶縁被覆8には、基材がポリイミドで、その片面にヘキサメタアクリレートからなる粘着剤を塗布した粘着テープを用いた。この粘着テープを鍔部7周面から捲回群6外周面に亘って何重にも巻いて絶縁被覆8とした。捲回群6の最大径部が絶縁被覆8存在部となるように巻き数を調整し、該最大径をステンレス製の電池容器5の内径よりも僅かに小さくして、捲回群6を電池容器5内に挿入する。電池容器5の外径は67mm、内径は66mmである。
【0022】
そして、アルミナ製で円盤状電池蓋4裏面と当接する部分の厚さ2mm、内径16mm、外径25mmの第2のセラミックワッシャ3’を、先端が正極外部端子1を構成する極柱、先端が負極外部端子1’を構成する極柱にそれぞれ嵌め込んだ。また、アルミナ製で厚さ2mm、内径16mm、外径28mmの平板状の第1のセラミックワッシャ3を電池蓋4に載置し、正極外部端子1、負極外部端子1’をそれぞれ第1のセラミックワッシャ3に通した。その後、電池蓋4周端面を電池容器5開口部に嵌合し、双方の接触部全域をレーザ溶接した。このとき、正極外部端子1、負極外部端子1’は、電池蓋4の中心に形成された穴を貫通して電池蓋4外部に突出している。そして、第1のセラミックワッシャ3、金属製ナット2底面よりも平滑な金属ワッシャ14を、この順に正極外部端子1、負極外部端子1’にそれぞれ嵌め込んだ。なお、電池蓋4には電池の内圧上昇に応じて開裂する開裂弁10が設けられている。開裂弁10の開裂圧は、1.3×106〜1.8×106Paとした。
【0023】
次いで、ナット2を正極外部端子1、負極外部端子1’にそれぞれ螺着し、第2のセラミックワッシャ3’、第1のセラミックワッシャ3、金属ワッシャ14を介して電池蓋4を鍔部7とナット2の間で締め付けにより固定した。このときの締め付けトルク値は7N・mとした。なお、締め付け作業が終了するまで金属ワッシャ14は回転しなかった。この状態で、電池蓋4裏面と鍔部7の間に介在させたゴム(EPDM)製Oリング16の圧縮により電池容器5内部の発電要素は外気から遮断される。
【0024】
その後、電池蓋4に設けた注液口15から有機電解液を所定量電池容器5内に注入し、その後注液口15を封止することにより円筒型リチウムイオン二次電池20を完成させた。
【0025】
有機電解液には、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートの体積比1:1:1の混合溶液中へ6フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1モル/リットル溶解したものを用いた。なお、円筒型リチウムイオン電池20には、電池容器5の内圧の上昇に応じて電流を遮断する電流遮断機構は設けられていない。
【0026】
【実施例】
次に、上述した本実施形態に従って作製した実施例の円筒型リチウムイオン二次電池20について説明する。比較のために作製した比較例の電池についても併記する。
【0027】
(実施例1)
下表1に示すように、実施例1では、正極合剤の混合割合RPを80:8:2:10(重量%)とし、正極集電体に厚さ20μm、圧延時にプレスロールに接触するプレス面Aの表面粗さ(以下、Rzaという。)が2.0μm、圧延時に離型剤層に接触する離型剤層面Bの表面粗さ(以下、Rzbという。)が2.1μmのアルミニウム箔を用いた。表面粗さの大きい離型剤層面Bが捲回群の外面になるように捲回した捲回群を使用して電池を作製した。なお、アルミニウム箔17の表面粗さの測定は、JIS C 6511 10項に準拠して行った。
【0028】
【表1】
【0029】
(実施例2、3)
表1に示すように、実施例2及び実施例3では、正極集電体にRza=2.0μm、Rzbがそれぞれ2.5μm、3.0μmのアルミニウム箔を用いた以外は実施例1と同様に電池を作製した。
【0030】
(比較例1〜5)
表1に示すように、比較例1〜比較例5では、正極集電体にRza及びRzbが同じで、それぞれ0.8μm、1.0μm、2.0μm、3.0μm、3.5μmのアルミニウム箔を用いた以外は実施例1と同様に電池を作製した。
【0031】
(比較例6)
表1に示すように、比較例6では、正極集電体にRza=2.0μm、Rzb=3.5μmのアルミニウム箔を用いた以外は実施例1と同様に電池を作製した。
【0032】
(比較例7)
表1に示すように、比較例7では、正極集電体にRza=2.5μm、Rzb=2.0μmのアルミニウム箔を用い、表面粗さの小さい離型剤層面Bを捲回群の外面になるようにして捲回した捲回群を使用した以外は実施例1と同様に電池を作製した。
【0033】
(比較例8)
表1に示すように、比較例8では、正極集電体にRza=3.0μm、Rzb=2.0μmのアルミニウム箔を用い、表面粗さの小さい離型剤層面Bを捲回群の外面になるようにして捲回した捲回群を使用した以外は実施例1と同様に電池を作製した。
【0034】
(試験・評価)
次に、以上のように作製した実施例及び比較例の電池について、下記要領にて電池の寿命を判定するサイクル寿命試験を行った。
【0035】
<サイクル寿命試験>
作製した各電池を、室温で充電した後放電し、放電容量を測定した。充電条件は、4.2V定電圧、制限電流80A、3.5時間とした。放電条件は、20A定電流、終止電圧2.5Vとした。その後、作製した電池を50゜Cに設定した恒温槽内で、上記同様の充放電を繰り返し、初期容量の70%に至った時点を寿命と判断した。下表2にサイクル寿命試験の試験結果を示す。
【0036】
【表2】
【0037】
表1に示すように、正極集電体の表面粗さ(Rz)が1μm未満又は3μmを超えた比較例1、比較例5及び比較例6の電池では、正極集電体と正極合剤層との密着強度が低下し、正極集電体と正極合剤層との界面で剥離が生じ、捲回組立時に正負極端部から正負極合剤が剥離、落下して貫通短絡が発生する。表2に示すように、サイクル寿命試験でも、表面粗さ(Rz)が1μm〜3μmの正極集電体を用いた電池に比べて、サイクル数が200サイクル以下と早期に寿命に至っている。寿命後の電池を解体しても、正極合剤層が正極集電体界面で剥離していることが観察された。従って、正極集電体の表面粗さ(Rz)を1μm〜3μmとすることで、良好なサイクル寿命特性の電池を実現することができる。
【0038】
表2に示すように、正極集電体の表面粗さ(Rz)の大きい面が捲回群の内面になるように捲回した比較例7及び比較例8の電池は、捲回群の巻き締まりにより、正極合剤層が部分的に正極集電体から剥離しており、その結果電池容量及びサイクル寿命特性が低下した。
【0039】
これに対して、正極集電体の表面粗さ(Rz)の大きい面が捲回群の外面になるように捲回した実施例1〜実施例3の電池は、良好なサイクル寿命特性を示し、特に表面粗さ(Rz)が1μm〜3μm、Rzaに対するRzbの比Rが1.05以上の場合、450サイクル以上のサイクル寿命特性を示し、良好である。また、450サイクル経過後の電池を解体しても、正極合剤層と正極集電体との剥離は全く見られなかった。従って、正極集電体の表面粗さ(Rz)の大きい面が捲回群の外面になるように捲回し、表面粗さ(Rz)が1μm〜3μm、Rzaに対するRzbの比Rを1.05以上とすることで、良好なサイクル寿命特性の電池を実現することができる。
【0040】
本実施例の電池は、電池容量のバラツキの小さい長寿命な電池とすることができ、特に電気自動車の電源等に用いられる大型のリチウム二次電池に適した電池である。
【0041】
なお、上記実施形態では、製箔するときに、2枚のアルミニウム箔を重ねて圧延した例を示したが、圧延方向の厚さのバラツキを小さくできると共に箔の歪みも小さくできるので、2枚以上箔を重ねて製箔するのが効果的である。特に、アルミニウム箔の薄膜化やアルミニウム合金を材質とする場合は、製箔時の圧延回数が増大し、圧延方向の厚さのバラツキが大きくなると共にアルミニウム箔やアルミニウム合金箔の歪みも大きくなるので、より有効である。
【0042】
また、圧延機の上下プレスロールの表面粗さを変更することで、表面粗さの異なるアルミニウム箔又はアルミニウム合金を得てもよい。
【0044】
更にまた、上記実施形態では、離型剤層面Bの表面粗さが、プレス面Aの表面粗さより大きいアルミニウム箔の例を示したが、離型剤層面Bの表面粗さがプレス面Aの表面粗さより小さくても、プレス面Aが捲回群の外面になるように捲回すればよい。
【0045】
更に、上記実施形態では、電気自動車用電源等に用いられる大型の二次電池について例示したが、電池の用途や大きさ及び電池容量に限定されるものでないことはいうまでもない。また、有底筒状容器(缶)に電池上蓋がカシメによって封口されている構造の円筒型リチウムイオン電池にも本発明の適用が可能である。しかしながら、電気自動車には比較的高容量、高出力の電池が要求されるので、本発明を適用した上記実施形態の電池の搭載が特に好ましい。
【0046】
また、上記実施形態では、電流遮断機構を備えない円筒型リチウムイオン二次電池について例示したが、本発明は電流遮断機構を備えた電池に適用するようにしてもよい。このようにすれば、車両衝突事故等の異常時に電気系の電流遮断機構が作動しなくても機械系の開裂弁10が作動するので、車載電池のより高い安全性が確保される。
【0047】
更に、上記実施形態では、絶縁被覆8に、基材がポリイミドで、その片面にヘキサメタアクリレートからなる粘着剤を塗布した粘着テープを用いたが、これに限定されるものではなく、例えば、基材がポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンで、その片面又は両面にヘキサメタアクリレートやブチルアクリレート等のアクリル系粘着剤を塗布した粘着テープや、粘着剤を塗布しないポリオレフィンやポリイミドからなるテープ等を好適に使用することができる。
【0048】
また更に、上記実施形態では、リチウムイオン電池用の正極にマンガン酸リチウム、負極に非晶質炭素、電解液にエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートの体積比1:1:1の混合液中へ6フッ化リン酸リチウムを1モル/リットル溶解したものを用いたが、本発明の電池の製造方法には特に制限はなく、また、負極活物質、非水電解液も通常用いられているいずれのものも使用可能である。電気自動車用途向け高容量、高出力の電池で、かつ安全性を確実に確保するためには、正極活物質としてリチウム・コバルト複合酸化物やリチウム・ニッケル複合酸化物を用いるよりも、リチウムマンガン複酸化物であるマンガン酸リチウムを用いることがより望ましい。また、導電補助材としてアセチレンブラックを例示したが、他の導電補助材を使用するようにしてもよく、また、導電補助材を使用しなくてもよい。
【0049】
また、上記実施形態ではポリフッ化ビニリデンを結着剤として使用したが、リチウムイオン電池用極板活物質結着剤としては、テフロン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ブチルゴム、ニトリルゴム、スチレン/ブタジエンゴム、多硫化ゴム、ニトロセルロース、シアノエチルセルロース、各種ラテックス、アクリロニトリル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、フッ化プロピレン、フッ化クロロプレン等の重合体及びこれらの混合体等を用いることができる。しかしながら、上述したようにフッ素樹脂を用いることが好ましい。
【0050】
更にまた、上記実施形態に示した以外のリチウム二次電池用正極活物質としては、リチウムを挿入・脱離可能な材料であり、予め十分な量のリチウムを挿入したリチウムマンガン複酸化物が好ましく、スピネル構造を有したマンガン酸リチウムや、結晶中のマンガンやリチウムの一部をそれら以外の元素で置換又はドープした材料を使用するようにしてもよい。
【0051】
また、上記実施形態に示した以外のリチウムイオン電池用負極活物質には、例えば、天然黒鉛や、人造の各種黒鉛材、コークスなどの炭素質材料等があるが、これらを使用するようにしてもよく、その粒子形状においても、鱗片状、球状、繊維状、塊状等、特に本発明が制限されるものではない。
【0052】
更に、電解液としては、一般的なリチウム塩を電解質とし、これを有機溶媒に溶解した電解液を使用してもよく、リチウム塩や有機溶媒にも特に制限されるものではない。例えば、電解質としては、LiClO4、LiAsF6、LiPF6、LiBF4、LiB(C6H5)4、CH3SO3Li、CF3SO3Li等やこれらの混合物を用いることができる。
【0053】
また更に、上記実施形態以外の非水電解液有機溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリル等又はこれら2種類以上の混合溶媒を用いることができ、更に、混合配合比についても限定されるものではない。
【0054】
そして、上記実施形態では、種々の寸法等について例示したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、上述した特許請求の範囲において種々の態様を採ることができる。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、正極集電体に、二枚重ねで圧延した後に剥離して得られ表裏面の表面粗さが異なったアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔が用いられており、正極集電体の表面粗さ(Rz)が1μm乃至3μmであって、表面粗さの小さい面に対する表面粗さの大きい面の表面粗さの比が1.05以上の正極集電体を用いて、表面粗さの大きい面が捲回群の外面になるように捲回したため、正極集電体の外面と正極合剤層との接触面積を増加させて密着強度を確保できるので、正極集電体からの正極合剤層の剥離を抑制でき、電池容量のバラツキの小さい長寿命の電池とすることができる、という効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用可能な実施形態の円筒型リチウムイオン二次電池の断面図である。
【符号の説明】
A プレス面(表面粗さが小さい面)
B 離型剤層面(表面粗さが大きい面)
P 正極
N 負極
17 アルミニウム箔(正極集電体)
20 円筒型リチウムイオン二次電池(リチウム二次電池)
Claims (1)
- リチウム複合酸化物を含有した正極合剤層を正極集電体上に形成した正極と、充放電によりリチウムイオンをドープ・脱ドープ可能な炭素材を用いた負極と、前記リチウムイオンの通過を許容するセパレータとを捲回した捲回群を備えるリチウム二次電池の製造方法であって、前記正極集電体には、二枚重ねで圧延した後に剥離して得られ表裏面の表面粗さが異なったアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔が用いられており、前記正極集電体の表面粗さ(Rz)が1μm乃至3μmであって、表面粗さの小さい面に対する前記表面粗さの大きい面の表面粗さの比が1.05以上であり、該表面粗さの大きい面が前記捲回群の外面となるように捲回されていることを特徴とするリチウム二次電池の製造方法。
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