JP2004319308A - リチウム二次電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】安全性及び信頼性に優れたリチウム二次電池を提供する。
【解決手段】二次電池は、電池容器内に捲回群が内蔵されており、捲回群の上下端面側に配設された電池蓋4の周端部と電池容器の開口周端部とが溶接されている。電池蓋4の一方には、電池内のガスを排出するガス排出口10が形成されている。また、ガス排出口10の電池蓋4の内側開口端周囲にはR加工が施されたR付け部10aが形成されており、内側開口端周囲の面積は外側開口端周囲の面積より大きく設定されている。ガス排出口10の電池蓋4の内側開口端周囲近傍には、ガス排出口10を閉塞し所定圧で開裂するガス排出弁が溶接されている。ガス排出口10の内側開口端周囲付近に集中するガスの流れに対する抵抗を抑制する。
【選択図】 図2
【解決手段】二次電池は、電池容器内に捲回群が内蔵されており、捲回群の上下端面側に配設された電池蓋4の周端部と電池容器の開口周端部とが溶接されている。電池蓋4の一方には、電池内のガスを排出するガス排出口10が形成されている。また、ガス排出口10の電池蓋4の内側開口端周囲にはR加工が施されたR付け部10aが形成されており、内側開口端周囲の面積は外側開口端周囲の面積より大きく設定されている。ガス排出口10の電池蓋4の内側開口端周囲近傍には、ガス排出口10を閉塞し所定圧で開裂するガス排出弁が溶接されている。ガス排出口10の内側開口端周囲付近に集中するガスの流れに対する抵抗を抑制する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はリチウム二次電池に係り、特に、電池容器内に正負極を有する電極群が内蔵され、電池容器の少なくとも一方上下端面に内圧の上昇に応じてガスを排出するための内圧低減機構を有する放電容量30Ah以上のリチウム二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
リチウム二次電池は、高エネルギ密度であるメリットを活かして、主にVTRカメラ、携帯電話等のポータブル機器の電源に使用されている。このリチウム二次電池は、通常帯状の正負極をセパレータを介して捲回した捲回群が電池容器となる円筒状の缶に収容され、電解液注液後、封口されている。一般的な円柱状リチウム二次電池の寸法は、18650型と呼ばれ小形民生用リチウム二次電池として広く普及している。電池容量は、おおむね1.3Ah〜1.7Ah、出力はおよそ10W程度である。18650型リチウム二次電池では、安全性を確保するために、異常時の電池内圧上昇に応じて作動する電流遮断機構(一種の切断スイッチ)が電池構造内に設けられている。
【0003】
一方、自動車産業界においては環境問題に対応すべく、排出ガスのない、動力源を完全に電池のみにした電気自動車や、内燃機関エンジンと電池との両方を動力源とするハイブリッド(電気)自動車の開発が加速され、一部実用化されてきている。このような電気自動車には高容量・高出力の二次電池が用いられている。
【0004】
高容量、高出力のリチウム二次電池では、安全性を確保するために、図6に示すように、電池の上下端面となる電池蓋4eのうち少なくとも一方に、内圧に応じて電池内のガスを排出する内圧低減機構を有している(例えば、特許文献1参照)。この電池の内圧低減機構は、ガスを排出するためのガス排出口35とガス排出口35を閉塞し所定圧で開裂する開裂部材(不図示)とで構成されており、ガス排出口35を模式的に拡大した拡大図に示すように、ガス排出口35の電池蓋4eの内底面側開口端周囲の直径Yと外側開口端周囲の直径Xとは同一の長さに設定されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−120272号公報(図2、段落番号「0020」)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、高容量、高出力のリチウム二次電池ともなると、大電流充電、大電流放電がなされるため、18650型リチウム二次電池に採用されているような電流遮断機構を電池構造内に設けることは実質的に不可能である。
【0007】
また、上記特許文献1の技術では、ガス排出口の電池蓋の内底面側開口端周囲にエッジ(端部)を有しており、特に高容量、高出力のリチウム二次電池の内圧上昇時には、この開口端周囲にガスが集中するため、スムーズにガスを排出しづらい、という問題点がある。
【0008】
本発明は、上記事案に鑑み、安全性及び信頼性に優れたリチウム二次電池を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、電池容器内に正負極を有する電極群が内蔵され、前記電池容器の少なくとも一方の上下端面に、ガスを排出するためのガス排出口及び該ガス排出口を閉塞し所定圧で開裂する開裂部材を有し内圧の上昇に応じてガスを排出する内圧低減機構を備えた放電容量30Ah以上のリチウム二次電池であって、前記ガス排出口は、前記電池容器の少なくとも一方の上下端面の内底面側開口端周囲にR付け又は面取り加工が施されている。
【0010】
本発明では、ガス排出口は、電池容器の少なくとも一方の上下端面の内底面側開口端周囲にR付け又は面取り加工が施されているため、ガス排出時にこの開口端周囲に集中するガスの流れに対する抵抗を抑制することができるので、ガスを電池容器外へスムーズに排出し高容量リチウム二次電池の安全性及び信頼性を向上させることができる。
【0011】
本発明において、ガス排出口は、上下端面の内底面側の開口端周囲の面積を少なくとも一方の上下端面の外面側の開口端周囲の面積より大きくすることが好ましい。また、ガス排出口は、上下端面の内底面側の開口端周囲の直径を少なくとも一方の上下端面の外面側の開口端周囲の直径より大きくしてもよい。更に、R付け加工の半径を、ガス排出口の電池容器の少なくとも一方の上下端面の外面側の開口端の最長部の長さ以上とすれば、ガスの流れに対する抵抗を更に抑制することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明を適用した捲回式円柱状リチウムイオン二次電池の実施の形態について説明する。
【0013】
(構成)
図1及び図2に示すように、本実施形態の円柱状リチウムイオン二次電池(以下、二次電池と略称する。)40は、ステンレス製の円筒状電池容器5内に円柱状の捲回群6が内蔵されている。捲回群6は、帯状の正負極板がリチウムイオンが通過可能なポリエチレン製セパレータを介してこれら両極板が直接接触しないように中空状ポリプロピレン製の軸芯11の周りに40回以上捲回されて形成されている。電池容器5は外径67mm、内径66mm、セパレータは厚さ40μm、幅310mm、軸芯11は直径14mm、内径8mmにそれぞれ設定されている。捲回群6の上下端面側には、アルミナ製で円盤状の電池蓋4が配設されており、電池蓋4の周端部と電池容器5の開口周端部とは溶接されている。
【0014】
図2に示すように、一方(上側)の電池蓋4の周端部側に偏倚した位置に、後述する所定圧になったときに二次電池40内のガスを排出するガス排出口10が形成されている。ガス排出口10の電池蓋4の内底面側開口(以下、内側開口という。)端及び電池蓋4の外面側開口(以下、外側開口という。)端は、それぞれ円形状とされている。内側開口端周囲にはR加工が施されたR付け部10aが形成されており、内側開口端周囲の面積は外側開口端周囲の面積より大きく設定されている。また、内側開口端周囲の直径Yは外側開口端周囲の直径Xより大きく設定されている。従って、ガス排出口10が形成する空間は、略釣鐘状の形状を有している。
【0015】
ガス排出口10の電池蓋4の内側開口端周囲近傍には、ガス排出口10を閉塞するステンレス製薄板状のガス排出弁17が溶接されている。ガス排出弁17は、電池の内圧上昇に応じて所定圧で開裂しガスを二次電池40の外部に排出する機能を有している。ガス排出弁17の開裂圧は、1.3×106〜1.8×106Pa(130〜180N/cm2)に設定されている。
【0016】
(正極板の作製)
充放電によりリチウムを放出・吸蔵可能な活物質であるコバルト酸リチウム(LiCoO2)粉末と、導電剤として平均粒径20μmの鱗片状黒鉛と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)と、を所定配合比で混合し、これに分散溶媒のN−メチル−2−ピロリドン(MNP)を添加、混練したスラリを、厚さ20μmのアルミニウム箔(正極集電体)の両面に塗布した。このとき、正極板長寸方向の一方の側縁に幅50mmの未塗布部を残した。その後乾燥、プレス、裁断して幅300mm、所定長さ及び正極活物質合剤塗布部所定厚さの帯状の正極板を得た。正極活物質合剤層の空隙率はいずれも35±1.5%とした。正極板のスラリ未塗布部に切り欠きを入れ、切り欠き残部をリード片とした。また、隣り合うリード片を20mm間隔とし、リード片の幅は10mmとした。
【0017】
(負極板の作製)
充放電によりリチウムを吸蔵・放出可能な黒鉛質炭素である大阪ガスケミカル株式会社(以下、大阪ガスケミカルという。)製のMCMB粉末や、非晶質炭素である呉羽化学工業株式会社(以下、呉羽化学という。)製カーボトロンP粉末92重量部に結着剤として8重量部のポリフッ化ビニリデンを添加し、これに分散溶媒のN−メチル−2−ピロリドンを添加、混練したスラリを、厚さ10μmの圧延銅箔(負極集電体)の両面に塗布した。このとき、負極板長寸方向の一方の側縁に幅50mmの未塗布部を残した。その後乾燥、プレス、裁断して幅305mm、所定長さ及び負極活物質塗布部所定厚さの帯状の負極板を得た。負極活物質層の空隙率はいずれも35±1.5%とした。負極板のスラリ未塗布部に正極板と同様に切り欠きを入れ、切り欠き残部をリード片とした。また、隣り合うリード片を20mm間隔とし、リード片の幅を10mmとした。
【0018】
(電池の作製)
上記作製した正極板と負極板とをセパレータを介して対向させ軸芯11の周りに40回以上捲回し捲回群6とした。このとき、正極板及び負極板のリード片(図1の符号9参照)が、それぞれ捲回群の互いに反対側の両端面に位置するようにした。捲回群径φは、正極板、負極板及びセパレータの長さを調整し、直径63±0.1mmとした。従って、捲回群周囲長さは、2π×(捲回群径φ)/2=197.82mmとなる。
【0019】
図1に示すように、正極板から導出されているリード片9を変形させ、その全てを、軸芯11のほぼ延長線上にある正極外部端子1周囲から一体に張り出している鍔部7周面付近に集合、接触させた後、リード片9と鍔部7周面とを超音波溶接してリード片9を鍔部7周面に接続し固定した。また、負極外部端子1’と負極板から導出されているリード片9との接続操作も、正極外部端子1と正極板から導出されているリード片9との接続操作と同様に行った。
【0020】
その後、正極外部端子1及び負極外部端子1’の鍔部7周面全周に絶縁被覆8を施した。この絶縁被覆8は、捲回群6外周面全周にも及ぼした。絶縁被覆8には、基材がポリプロピレンで、その片面にヘキサメタアクリレートからなる粘着剤を塗布した粘着テープを用いた。この粘着テープを鍔部7周面から捲回群6外周面に亘って少なくとも1周以上巻いて絶縁被覆8とした。
【0021】
次に、捲回群6を電池容器5内に挿入した後、電池蓋4裏面と当接する部分の厚さ2mm、内径16mm、外径25mmの第2のセラミックワッシャ3’を、図1に示すように、先端が正極外部端子1を構成する極柱、先端が負極外部端子1’を構成する極柱にそれぞれ嵌め込んだ。また、アルミナ製で厚さ2mm、内径16mm、外径28mmの平板状の第1のセラミックワッシャ3を電池蓋4に載置し、正極外部端子1、負極外部端子1’をそれぞれ第1のセラミックワッシャ3に通した。その後、電池蓋4周端面を電池容器5開口部に嵌合し、双方の接触部全域をレーザ溶接した。このとき、正極外部端子1、負極外部端子1’は、電池蓋4の中心に形成された穴を貫通して電池蓋4外部に突出している。そして、図1に示すように、第1のセラミックワッシャ3、金属製ナット2底面よりも平滑な金属ワッシャ14を、この順に正極外部端子1、負極外部端子1’にそれぞれ嵌め込んだ。
【0022】
次いで、ナット2を正極外部端子1、負極外部端子1’にそれぞれ螺着し、第2のセラミックワッシャ3’、第1のセラミックワッシャ3、金属ワッシャ14を介して電池蓋4を鍔部7とナット2の間で締め付けにより固定した。このときの締め付けトルク値は7N・mとした。なお、締め付け作業が終了するまで金属ワッシャ14は回転しなかった。この状態で、電池蓋4裏面と鍔部7の間に介在させたゴム(EPDM)製Oリング16の圧縮により電池容器5内部の発電要素は外気から遮断される。
【0023】
その後、電池蓋4に設けた注液口15から電解液を所定量電池容器5内に注入し、その後注液口15を封止することにより放電容量が80Ahの二次電池40を完成させた。
【0024】
電解液には、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DME)とジエチルカーボネート(DEC)の体積比1:1:1の混合溶液中へ6フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1モル/リットル溶解したものを用いた。なお、二次電池40には、電池容器5の内圧の上昇に応じて電流を遮断する電流遮断機構は設けられていない。また、上述したように、捲回群6の直径は63mmであり、電池容器5の内(直)径は66mmであるので、(捲回群6の直径)/(電池容器5の内直径)の値は0.95である。
【0025】
(作用等)
本実施形態の二次電池40では、ガス排出口10の内側開口端周囲にR加工が施されたR付け部10aが形成されている。このため、高容量(80Ah)の二次電池40の内圧が上昇しガス排出弁17が開裂しても、内側開口端周囲に集中するガスの流れに対する抵抗を抑制することができるので、ガスを二次電池40外へスムーズに排出するこができる。従って、電池内圧上昇時の挙動が穏やかな安全性及び信頼性に優れた電池とすることができる。
【0026】
また、本実施形態の二次電池40では、内側開口端周囲の面積が外側開口端周囲の面積より大きく設定されている。すなわち、内側開口端周囲の直径Yが外側開口端周囲の直径Xより大きく設定されている。このため、内側開口端付近に集中するガスの抵抗を抑制してより速やかに排出することができるので、更に安全性及び信頼性に優れた二次電池40とすることができる。
【0027】
なお、本実施形態では、電気自動車用電源等に用いられる放電容量80Ahの二次電池について例示したが、放電容量30Ah以上の電池であれば、電池の用途や大きさには限定されない。また、有底筒状容器(缶)に電池上蓋がカシメによって封口されている構造の円柱状リチウムイオン二次電池にも適用可能である。
【0028】
また、本実施形態では、電池蓋4の内側開口端周囲にR加工を施す例を示したが、図3に示すように、電池蓋4bのガス排出口が形成する空間が裁頭四角錐状の形状となるように面取り部20aを形成し、ガス排出口の内側開口端周囲の面積Siを外側開口端周囲の面積Soより大きくしてもよい。更に、図4に示すように、電池蓋4cのガス排出口が形成する空間が裁頭円錐状の形状となるように面取り部30aを形成し、電池蓋4cの内側開口端周囲の直径Yを外側開口端周囲の直径Xより大きくしてもよい。また更に、図5に示すように、ガス排出口の電池蓋4dの内側開口端周囲のR付け加工の半径Rをガス排出口の外側開口端の直径X以上とすることがより好ましい。これらの変形形態を採用しても、ガス排出口の内側開口端周囲付近でのガス流れに対する抵抗を抑制することができるので、スムーズにガスを排出することができる。
【0029】
更に、本実施形態では、正極外部端子1側の電池蓋4にガス排出口10を形成する例を示したが、更に、負極外部端子1’側の電池蓋4にもガス排出口を形成するようにしてもよい。このようにすれば、電池内圧上昇時に確実にガスを排出することができる。
【0030】
更にまた、本実施形態では、本発明を捲回式円柱状二次電池に適用する例を示したが、正負極板がセパレータを介して積層された角型の電池に適用するようにしてもよい。
【0031】
また、本実施形態では、電流遮断機構を備えない二次電池について例示したが、本発明は電流遮断機構を備えた電池に適用するようにしてもよい。このようにすれば、例えば、車両衝突事故等の異常時に電気系の電流遮断機構が作動しなくても機械系のガス排出弁17等の内圧低減機構が作動するので、車載電池のより高い安全性が確保される。
【0032】
更に、本実施形態では、絶縁被覆8に、基材がポリプロピレンで、その片面にヘキサメタアクリレートからなる粘着剤を塗布した粘着テープを用いる例を示したが、これに限定されるものではなく、例えば、基材がポリイミドやポリエチレン等のポリオレフィンで、その片面又は両面にヘキサメタアクリレートやブチルアクリレート等のアクリル系粘着剤を塗布した粘着テープや、粘着剤を塗布しないポリオレフィンやポリイミドからなるテープ等を好適に使用することができる。
【0033】
また、本実施形態では、結着剤にポリフッ化ビニリデンを使用する例を示したが、リチウムイオン電池用極板活物質結着剤としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ブチルゴム、ニトリルゴム、スチレン/ブタジエンゴム、多硫化ゴム、ニトロセルロース、シアノエチルセルロース、各種ラテックス、アクリロニトリル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、フッ化プロピレン、フッ化クロロプレン等の重合体及びこれらの混合体等を用いてもよい。
【0034】
更に、本実施形態に示した以外のリチウム二次電池用正極活物質としては、リチウムを挿入・脱離可能な材料であり、予め十分な量のリチウムを挿入したリチウムマンガン複酸化物が好ましく、スピネル構造を有したマンガン酸リチウムや、結晶中のマンガンやリチウムの一部をそれら以外の元素で置換又はドープした材料を使用してもよい。また、層状岩塩構造を有するマンガン酸リチウム(LiMnO2)、結晶中のリチウムやマンガンの一部を異種金属で置換又はドープした材料や結晶中の酸素の一部をS、P等で置換又はドープした材料を使用するようにしてもよい。更に、リチウムとマンガンとの原子比が化学量論比からずれた活物質を使用しても本実施形態と同様の効果を得ることができる。EV用の高容量、高出力の電池の安全性を確実に確保するためには、正極活物質としてリチウム・コバルト複合酸化物やリチウム・ニッケル複合酸化物を用いるよりも、リチウムマンガン複酸化物であるマンガン酸リチウムを用いることがより好ましい。
【0035】
また更に、本実施形態に示した以外のリチウムイオン電池用負極活物質を使用しても本発明の適用は制限されない。例えば、天然黒鉛や、人造の各種黒鉛材、コークスなどの炭素質材料等を使用してもよく、その粒子形状においても、鱗片状、球状、繊維状、塊状等、特に制限されるものではない。
【0036】
更に、本実施形態では、非水電解液として、一般的なリチウム塩を電解質とし、これを有機溶媒に溶解した電解液が用いられる例を示したが、リチウム塩や有機溶媒は特に制限されない。例えば、電解質としては、LiClO4、LiAsF6、LiPF6、LiBF4、LiB(C6H5)4、CH3SO3Li、CF3SO3Li等やこれらの混合物を用いることができる。
【0037】
そして、本実施形態以外の非水電解液有機溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ビニレンカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリル等又はこれら2種類以上の混合溶媒を用いることができ、更に、混合配合比についても限定されるものではない。
【0038】
<実施例>
以下、上記実施形態及びその変形形態に従って作製した実施例の二次電池について説明する。また、比較のために作製した比較例の電池についても併記する。
【0039】
(実施例1)
図2に示すように、実施例1では、ガス排出口10の内側開口端(エッジ)周囲にR付け加工を施した電池を作製した。
【0040】
(実施例2)
図3に示すように、実施例2では、ガス排出口が形成する空間の形状(以下、占有体積形状という。)を裁頭四角錐状とし、ガス排出口の電池蓋4bの内側開口端周囲の面積Siが外側開口端周囲の面積Soより大きい電池を作製した。
【0041】
(実施例3)
図4に示すように、実施例3では、ガス排出口の占有体積形状を裁頭円錐状とし、ガス排出口の内側開口端周囲の直径Yが外側開口端周囲の直径Xより大きい電池を作製した。
【0042】
(実施例4)
図5に示すように、実施例4では、ガス排出口の電池蓋4dの内側開口端周囲のR付け加工の半径Rをガス排出口の外側開口端の直径X以上とした電池を作製した。
【0043】
(比較例1)
図6に示すように、比較例1では、電池蓋4eに形成されたガス排出口35の電池蓋4eの内側開口端周囲の直径Yと外側開口端周囲の直径Xとが同一の長さかつ内側開口端周囲にR付け部又は面取り部が形成されていない電池を作製した。
【0044】
<試験・評価>
次に、以上のようにして作製した実施例及び比較例の各電池について、室温において45A定電流で連続充電する過充電試験を行い、電池挙動を観察した。過充電時の電池は、電圧の異常上昇による電解液の分解、ガス化で電池内圧が上昇し、ガス排出弁17が作動、ガス噴出する現象がみられる。このガス噴出時の排出状況を比較するために、ガス噴出時間とガス噴出時の最高内圧を測定する。また、ガス噴出後、電池容器の変形の有無を確認する。過充電試験の結果を下表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
表1に示すように、比較例1の電池では、ガス噴出時間が12秒と長く、電池容器には僅かな膨らみが確認された。これに対して実施例の電池では、ガス噴出時間は実施例4、2、3、1の順で短くなる傾向があり、電池容器の変形はいずれの電池においても確認されなかった。ガス排出時間が長くなるほどガスが電池容器内に溜まってしまうため、ガス排出中の電池容器内圧力は高くなっていると考えられる。比較例1の電池では、過充電現象はガス噴出の際に、ガス排出口からのガス排出がスムーズに行われなかったため、電池内容器の内圧が上昇し電池容器の変形に至ったのではないかと考えられる。これに対して、実施例の電池では、ガス噴出時のガス排出が実施例4、2、3、1の順でスムーズに行われていると考えられる。また、実施例2の電池では、ガス排出口20の開口端の面の形状が円形状でなくても他の実施例とほぼ同等の結果が得られていることが判明した。
【0047】
従って、ガス排出口10の内側開口端周囲にR付け部10a又は面取り部20a、30aを形成することで、ガス噴出時間を短縮し安全性及び信頼性を向上させることができることが判った。また、ガス排出能は、(外側開口端周囲の直径X)/(内側開口端周囲の直径Y)<1になる場合の方がX/Y=1の場合と比較してガス噴出現象は穏やかになることが判った。更に、上記効果を高めるためには、ガス排出口の内側開口端周囲に施されたR付け加工の半径Rをガス排出口の外側開口端の直径Xの長さ以上にすることが好ましいことが判った。
【0048】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ガス排出口は、電池容器の少なくとも一方の上下端面の内底面側開口端周囲にR付け又は面取り加工が施されているため、ガス排出時にこの開口端周囲に集中するガスの流れに対する抵抗を抑制することができるので、ガスを電池容器外へスムーズに排出し高容量リチウム二次電池の安全性及び信頼性を向上させることができる、という効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用可能な実施形態の円柱状リチウムイオン二次電池の断面図である。
【図2】実施形態の円柱状リチウムイオン二次電池の部分断面図及びガス排出口が形成する空間を拡大し模式的に示した拡大模式図である。
【図3】他の実施形態の円柱状リチウムイオン二次電池の部分断面図及びガス排出口が形成する空間を拡大し模式的に示した拡大模式図である。
【図4】別の実施形態の円柱状リチウムイオン二次電池の部分断面図及びガス排出口が形成する空間を拡大し模式的に示した拡大模式図である。
【図5】更に別の実施形態の円柱状リチウムイオン二次電池の部分断面図及びガス排出口が形成する空間を拡大し模式的に示した拡大模式図である。
【図6】従来の円柱状リチウムイオン二次電池の部分断面図及びガス排出口が形成する空間を拡大し模式的に示した拡大模式図である。
【符号の説明】
4、4b、4c、4d 電池蓋
5 電池容器
6 捲回群(電極群)
10 ガス排出口(内圧低減機構の一部)
10a、10d R付け部
17 ガス排出弁(内圧低減機構の一部、開裂部材)
20a、30a 面取り部
40 円柱状リチウムイオン二次電池(リチウム二次電池)
Si 内側開口端周囲の面積
So 外側開口端周囲の面積
X 内側開口端周囲の直径(開口端の最長部の長さ)
Y 外側開口端周囲の直径
R R付け加工の半径
【発明の属する技術分野】
本発明はリチウム二次電池に係り、特に、電池容器内に正負極を有する電極群が内蔵され、電池容器の少なくとも一方上下端面に内圧の上昇に応じてガスを排出するための内圧低減機構を有する放電容量30Ah以上のリチウム二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
リチウム二次電池は、高エネルギ密度であるメリットを活かして、主にVTRカメラ、携帯電話等のポータブル機器の電源に使用されている。このリチウム二次電池は、通常帯状の正負極をセパレータを介して捲回した捲回群が電池容器となる円筒状の缶に収容され、電解液注液後、封口されている。一般的な円柱状リチウム二次電池の寸法は、18650型と呼ばれ小形民生用リチウム二次電池として広く普及している。電池容量は、おおむね1.3Ah〜1.7Ah、出力はおよそ10W程度である。18650型リチウム二次電池では、安全性を確保するために、異常時の電池内圧上昇に応じて作動する電流遮断機構(一種の切断スイッチ)が電池構造内に設けられている。
【0003】
一方、自動車産業界においては環境問題に対応すべく、排出ガスのない、動力源を完全に電池のみにした電気自動車や、内燃機関エンジンと電池との両方を動力源とするハイブリッド(電気)自動車の開発が加速され、一部実用化されてきている。このような電気自動車には高容量・高出力の二次電池が用いられている。
【0004】
高容量、高出力のリチウム二次電池では、安全性を確保するために、図6に示すように、電池の上下端面となる電池蓋4eのうち少なくとも一方に、内圧に応じて電池内のガスを排出する内圧低減機構を有している(例えば、特許文献1参照)。この電池の内圧低減機構は、ガスを排出するためのガス排出口35とガス排出口35を閉塞し所定圧で開裂する開裂部材(不図示)とで構成されており、ガス排出口35を模式的に拡大した拡大図に示すように、ガス排出口35の電池蓋4eの内底面側開口端周囲の直径Yと外側開口端周囲の直径Xとは同一の長さに設定されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−120272号公報(図2、段落番号「0020」)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、高容量、高出力のリチウム二次電池ともなると、大電流充電、大電流放電がなされるため、18650型リチウム二次電池に採用されているような電流遮断機構を電池構造内に設けることは実質的に不可能である。
【0007】
また、上記特許文献1の技術では、ガス排出口の電池蓋の内底面側開口端周囲にエッジ(端部)を有しており、特に高容量、高出力のリチウム二次電池の内圧上昇時には、この開口端周囲にガスが集中するため、スムーズにガスを排出しづらい、という問題点がある。
【0008】
本発明は、上記事案に鑑み、安全性及び信頼性に優れたリチウム二次電池を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、電池容器内に正負極を有する電極群が内蔵され、前記電池容器の少なくとも一方の上下端面に、ガスを排出するためのガス排出口及び該ガス排出口を閉塞し所定圧で開裂する開裂部材を有し内圧の上昇に応じてガスを排出する内圧低減機構を備えた放電容量30Ah以上のリチウム二次電池であって、前記ガス排出口は、前記電池容器の少なくとも一方の上下端面の内底面側開口端周囲にR付け又は面取り加工が施されている。
【0010】
本発明では、ガス排出口は、電池容器の少なくとも一方の上下端面の内底面側開口端周囲にR付け又は面取り加工が施されているため、ガス排出時にこの開口端周囲に集中するガスの流れに対する抵抗を抑制することができるので、ガスを電池容器外へスムーズに排出し高容量リチウム二次電池の安全性及び信頼性を向上させることができる。
【0011】
本発明において、ガス排出口は、上下端面の内底面側の開口端周囲の面積を少なくとも一方の上下端面の外面側の開口端周囲の面積より大きくすることが好ましい。また、ガス排出口は、上下端面の内底面側の開口端周囲の直径を少なくとも一方の上下端面の外面側の開口端周囲の直径より大きくしてもよい。更に、R付け加工の半径を、ガス排出口の電池容器の少なくとも一方の上下端面の外面側の開口端の最長部の長さ以上とすれば、ガスの流れに対する抵抗を更に抑制することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明を適用した捲回式円柱状リチウムイオン二次電池の実施の形態について説明する。
【0013】
(構成)
図1及び図2に示すように、本実施形態の円柱状リチウムイオン二次電池(以下、二次電池と略称する。)40は、ステンレス製の円筒状電池容器5内に円柱状の捲回群6が内蔵されている。捲回群6は、帯状の正負極板がリチウムイオンが通過可能なポリエチレン製セパレータを介してこれら両極板が直接接触しないように中空状ポリプロピレン製の軸芯11の周りに40回以上捲回されて形成されている。電池容器5は外径67mm、内径66mm、セパレータは厚さ40μm、幅310mm、軸芯11は直径14mm、内径8mmにそれぞれ設定されている。捲回群6の上下端面側には、アルミナ製で円盤状の電池蓋4が配設されており、電池蓋4の周端部と電池容器5の開口周端部とは溶接されている。
【0014】
図2に示すように、一方(上側)の電池蓋4の周端部側に偏倚した位置に、後述する所定圧になったときに二次電池40内のガスを排出するガス排出口10が形成されている。ガス排出口10の電池蓋4の内底面側開口(以下、内側開口という。)端及び電池蓋4の外面側開口(以下、外側開口という。)端は、それぞれ円形状とされている。内側開口端周囲にはR加工が施されたR付け部10aが形成されており、内側開口端周囲の面積は外側開口端周囲の面積より大きく設定されている。また、内側開口端周囲の直径Yは外側開口端周囲の直径Xより大きく設定されている。従って、ガス排出口10が形成する空間は、略釣鐘状の形状を有している。
【0015】
ガス排出口10の電池蓋4の内側開口端周囲近傍には、ガス排出口10を閉塞するステンレス製薄板状のガス排出弁17が溶接されている。ガス排出弁17は、電池の内圧上昇に応じて所定圧で開裂しガスを二次電池40の外部に排出する機能を有している。ガス排出弁17の開裂圧は、1.3×106〜1.8×106Pa(130〜180N/cm2)に設定されている。
【0016】
(正極板の作製)
充放電によりリチウムを放出・吸蔵可能な活物質であるコバルト酸リチウム(LiCoO2)粉末と、導電剤として平均粒径20μmの鱗片状黒鉛と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)と、を所定配合比で混合し、これに分散溶媒のN−メチル−2−ピロリドン(MNP)を添加、混練したスラリを、厚さ20μmのアルミニウム箔(正極集電体)の両面に塗布した。このとき、正極板長寸方向の一方の側縁に幅50mmの未塗布部を残した。その後乾燥、プレス、裁断して幅300mm、所定長さ及び正極活物質合剤塗布部所定厚さの帯状の正極板を得た。正極活物質合剤層の空隙率はいずれも35±1.5%とした。正極板のスラリ未塗布部に切り欠きを入れ、切り欠き残部をリード片とした。また、隣り合うリード片を20mm間隔とし、リード片の幅は10mmとした。
【0017】
(負極板の作製)
充放電によりリチウムを吸蔵・放出可能な黒鉛質炭素である大阪ガスケミカル株式会社(以下、大阪ガスケミカルという。)製のMCMB粉末や、非晶質炭素である呉羽化学工業株式会社(以下、呉羽化学という。)製カーボトロンP粉末92重量部に結着剤として8重量部のポリフッ化ビニリデンを添加し、これに分散溶媒のN−メチル−2−ピロリドンを添加、混練したスラリを、厚さ10μmの圧延銅箔(負極集電体)の両面に塗布した。このとき、負極板長寸方向の一方の側縁に幅50mmの未塗布部を残した。その後乾燥、プレス、裁断して幅305mm、所定長さ及び負極活物質塗布部所定厚さの帯状の負極板を得た。負極活物質層の空隙率はいずれも35±1.5%とした。負極板のスラリ未塗布部に正極板と同様に切り欠きを入れ、切り欠き残部をリード片とした。また、隣り合うリード片を20mm間隔とし、リード片の幅を10mmとした。
【0018】
(電池の作製)
上記作製した正極板と負極板とをセパレータを介して対向させ軸芯11の周りに40回以上捲回し捲回群6とした。このとき、正極板及び負極板のリード片(図1の符号9参照)が、それぞれ捲回群の互いに反対側の両端面に位置するようにした。捲回群径φは、正極板、負極板及びセパレータの長さを調整し、直径63±0.1mmとした。従って、捲回群周囲長さは、2π×(捲回群径φ)/2=197.82mmとなる。
【0019】
図1に示すように、正極板から導出されているリード片9を変形させ、その全てを、軸芯11のほぼ延長線上にある正極外部端子1周囲から一体に張り出している鍔部7周面付近に集合、接触させた後、リード片9と鍔部7周面とを超音波溶接してリード片9を鍔部7周面に接続し固定した。また、負極外部端子1’と負極板から導出されているリード片9との接続操作も、正極外部端子1と正極板から導出されているリード片9との接続操作と同様に行った。
【0020】
その後、正極外部端子1及び負極外部端子1’の鍔部7周面全周に絶縁被覆8を施した。この絶縁被覆8は、捲回群6外周面全周にも及ぼした。絶縁被覆8には、基材がポリプロピレンで、その片面にヘキサメタアクリレートからなる粘着剤を塗布した粘着テープを用いた。この粘着テープを鍔部7周面から捲回群6外周面に亘って少なくとも1周以上巻いて絶縁被覆8とした。
【0021】
次に、捲回群6を電池容器5内に挿入した後、電池蓋4裏面と当接する部分の厚さ2mm、内径16mm、外径25mmの第2のセラミックワッシャ3’を、図1に示すように、先端が正極外部端子1を構成する極柱、先端が負極外部端子1’を構成する極柱にそれぞれ嵌め込んだ。また、アルミナ製で厚さ2mm、内径16mm、外径28mmの平板状の第1のセラミックワッシャ3を電池蓋4に載置し、正極外部端子1、負極外部端子1’をそれぞれ第1のセラミックワッシャ3に通した。その後、電池蓋4周端面を電池容器5開口部に嵌合し、双方の接触部全域をレーザ溶接した。このとき、正極外部端子1、負極外部端子1’は、電池蓋4の中心に形成された穴を貫通して電池蓋4外部に突出している。そして、図1に示すように、第1のセラミックワッシャ3、金属製ナット2底面よりも平滑な金属ワッシャ14を、この順に正極外部端子1、負極外部端子1’にそれぞれ嵌め込んだ。
【0022】
次いで、ナット2を正極外部端子1、負極外部端子1’にそれぞれ螺着し、第2のセラミックワッシャ3’、第1のセラミックワッシャ3、金属ワッシャ14を介して電池蓋4を鍔部7とナット2の間で締め付けにより固定した。このときの締め付けトルク値は7N・mとした。なお、締め付け作業が終了するまで金属ワッシャ14は回転しなかった。この状態で、電池蓋4裏面と鍔部7の間に介在させたゴム(EPDM)製Oリング16の圧縮により電池容器5内部の発電要素は外気から遮断される。
【0023】
その後、電池蓋4に設けた注液口15から電解液を所定量電池容器5内に注入し、その後注液口15を封止することにより放電容量が80Ahの二次電池40を完成させた。
【0024】
電解液には、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DME)とジエチルカーボネート(DEC)の体積比1:1:1の混合溶液中へ6フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1モル/リットル溶解したものを用いた。なお、二次電池40には、電池容器5の内圧の上昇に応じて電流を遮断する電流遮断機構は設けられていない。また、上述したように、捲回群6の直径は63mmであり、電池容器5の内(直)径は66mmであるので、(捲回群6の直径)/(電池容器5の内直径)の値は0.95である。
【0025】
(作用等)
本実施形態の二次電池40では、ガス排出口10の内側開口端周囲にR加工が施されたR付け部10aが形成されている。このため、高容量(80Ah)の二次電池40の内圧が上昇しガス排出弁17が開裂しても、内側開口端周囲に集中するガスの流れに対する抵抗を抑制することができるので、ガスを二次電池40外へスムーズに排出するこができる。従って、電池内圧上昇時の挙動が穏やかな安全性及び信頼性に優れた電池とすることができる。
【0026】
また、本実施形態の二次電池40では、内側開口端周囲の面積が外側開口端周囲の面積より大きく設定されている。すなわち、内側開口端周囲の直径Yが外側開口端周囲の直径Xより大きく設定されている。このため、内側開口端付近に集中するガスの抵抗を抑制してより速やかに排出することができるので、更に安全性及び信頼性に優れた二次電池40とすることができる。
【0027】
なお、本実施形態では、電気自動車用電源等に用いられる放電容量80Ahの二次電池について例示したが、放電容量30Ah以上の電池であれば、電池の用途や大きさには限定されない。また、有底筒状容器(缶)に電池上蓋がカシメによって封口されている構造の円柱状リチウムイオン二次電池にも適用可能である。
【0028】
また、本実施形態では、電池蓋4の内側開口端周囲にR加工を施す例を示したが、図3に示すように、電池蓋4bのガス排出口が形成する空間が裁頭四角錐状の形状となるように面取り部20aを形成し、ガス排出口の内側開口端周囲の面積Siを外側開口端周囲の面積Soより大きくしてもよい。更に、図4に示すように、電池蓋4cのガス排出口が形成する空間が裁頭円錐状の形状となるように面取り部30aを形成し、電池蓋4cの内側開口端周囲の直径Yを外側開口端周囲の直径Xより大きくしてもよい。また更に、図5に示すように、ガス排出口の電池蓋4dの内側開口端周囲のR付け加工の半径Rをガス排出口の外側開口端の直径X以上とすることがより好ましい。これらの変形形態を採用しても、ガス排出口の内側開口端周囲付近でのガス流れに対する抵抗を抑制することができるので、スムーズにガスを排出することができる。
【0029】
更に、本実施形態では、正極外部端子1側の電池蓋4にガス排出口10を形成する例を示したが、更に、負極外部端子1’側の電池蓋4にもガス排出口を形成するようにしてもよい。このようにすれば、電池内圧上昇時に確実にガスを排出することができる。
【0030】
更にまた、本実施形態では、本発明を捲回式円柱状二次電池に適用する例を示したが、正負極板がセパレータを介して積層された角型の電池に適用するようにしてもよい。
【0031】
また、本実施形態では、電流遮断機構を備えない二次電池について例示したが、本発明は電流遮断機構を備えた電池に適用するようにしてもよい。このようにすれば、例えば、車両衝突事故等の異常時に電気系の電流遮断機構が作動しなくても機械系のガス排出弁17等の内圧低減機構が作動するので、車載電池のより高い安全性が確保される。
【0032】
更に、本実施形態では、絶縁被覆8に、基材がポリプロピレンで、その片面にヘキサメタアクリレートからなる粘着剤を塗布した粘着テープを用いる例を示したが、これに限定されるものではなく、例えば、基材がポリイミドやポリエチレン等のポリオレフィンで、その片面又は両面にヘキサメタアクリレートやブチルアクリレート等のアクリル系粘着剤を塗布した粘着テープや、粘着剤を塗布しないポリオレフィンやポリイミドからなるテープ等を好適に使用することができる。
【0033】
また、本実施形態では、結着剤にポリフッ化ビニリデンを使用する例を示したが、リチウムイオン電池用極板活物質結着剤としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ブチルゴム、ニトリルゴム、スチレン/ブタジエンゴム、多硫化ゴム、ニトロセルロース、シアノエチルセルロース、各種ラテックス、アクリロニトリル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、フッ化プロピレン、フッ化クロロプレン等の重合体及びこれらの混合体等を用いてもよい。
【0034】
更に、本実施形態に示した以外のリチウム二次電池用正極活物質としては、リチウムを挿入・脱離可能な材料であり、予め十分な量のリチウムを挿入したリチウムマンガン複酸化物が好ましく、スピネル構造を有したマンガン酸リチウムや、結晶中のマンガンやリチウムの一部をそれら以外の元素で置換又はドープした材料を使用してもよい。また、層状岩塩構造を有するマンガン酸リチウム(LiMnO2)、結晶中のリチウムやマンガンの一部を異種金属で置換又はドープした材料や結晶中の酸素の一部をS、P等で置換又はドープした材料を使用するようにしてもよい。更に、リチウムとマンガンとの原子比が化学量論比からずれた活物質を使用しても本実施形態と同様の効果を得ることができる。EV用の高容量、高出力の電池の安全性を確実に確保するためには、正極活物質としてリチウム・コバルト複合酸化物やリチウム・ニッケル複合酸化物を用いるよりも、リチウムマンガン複酸化物であるマンガン酸リチウムを用いることがより好ましい。
【0035】
また更に、本実施形態に示した以外のリチウムイオン電池用負極活物質を使用しても本発明の適用は制限されない。例えば、天然黒鉛や、人造の各種黒鉛材、コークスなどの炭素質材料等を使用してもよく、その粒子形状においても、鱗片状、球状、繊維状、塊状等、特に制限されるものではない。
【0036】
更に、本実施形態では、非水電解液として、一般的なリチウム塩を電解質とし、これを有機溶媒に溶解した電解液が用いられる例を示したが、リチウム塩や有機溶媒は特に制限されない。例えば、電解質としては、LiClO4、LiAsF6、LiPF6、LiBF4、LiB(C6H5)4、CH3SO3Li、CF3SO3Li等やこれらの混合物を用いることができる。
【0037】
そして、本実施形態以外の非水電解液有機溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ビニレンカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリル等又はこれら2種類以上の混合溶媒を用いることができ、更に、混合配合比についても限定されるものではない。
【0038】
<実施例>
以下、上記実施形態及びその変形形態に従って作製した実施例の二次電池について説明する。また、比較のために作製した比較例の電池についても併記する。
【0039】
(実施例1)
図2に示すように、実施例1では、ガス排出口10の内側開口端(エッジ)周囲にR付け加工を施した電池を作製した。
【0040】
(実施例2)
図3に示すように、実施例2では、ガス排出口が形成する空間の形状(以下、占有体積形状という。)を裁頭四角錐状とし、ガス排出口の電池蓋4bの内側開口端周囲の面積Siが外側開口端周囲の面積Soより大きい電池を作製した。
【0041】
(実施例3)
図4に示すように、実施例3では、ガス排出口の占有体積形状を裁頭円錐状とし、ガス排出口の内側開口端周囲の直径Yが外側開口端周囲の直径Xより大きい電池を作製した。
【0042】
(実施例4)
図5に示すように、実施例4では、ガス排出口の電池蓋4dの内側開口端周囲のR付け加工の半径Rをガス排出口の外側開口端の直径X以上とした電池を作製した。
【0043】
(比較例1)
図6に示すように、比較例1では、電池蓋4eに形成されたガス排出口35の電池蓋4eの内側開口端周囲の直径Yと外側開口端周囲の直径Xとが同一の長さかつ内側開口端周囲にR付け部又は面取り部が形成されていない電池を作製した。
【0044】
<試験・評価>
次に、以上のようにして作製した実施例及び比較例の各電池について、室温において45A定電流で連続充電する過充電試験を行い、電池挙動を観察した。過充電時の電池は、電圧の異常上昇による電解液の分解、ガス化で電池内圧が上昇し、ガス排出弁17が作動、ガス噴出する現象がみられる。このガス噴出時の排出状況を比較するために、ガス噴出時間とガス噴出時の最高内圧を測定する。また、ガス噴出後、電池容器の変形の有無を確認する。過充電試験の結果を下表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
表1に示すように、比較例1の電池では、ガス噴出時間が12秒と長く、電池容器には僅かな膨らみが確認された。これに対して実施例の電池では、ガス噴出時間は実施例4、2、3、1の順で短くなる傾向があり、電池容器の変形はいずれの電池においても確認されなかった。ガス排出時間が長くなるほどガスが電池容器内に溜まってしまうため、ガス排出中の電池容器内圧力は高くなっていると考えられる。比較例1の電池では、過充電現象はガス噴出の際に、ガス排出口からのガス排出がスムーズに行われなかったため、電池内容器の内圧が上昇し電池容器の変形に至ったのではないかと考えられる。これに対して、実施例の電池では、ガス噴出時のガス排出が実施例4、2、3、1の順でスムーズに行われていると考えられる。また、実施例2の電池では、ガス排出口20の開口端の面の形状が円形状でなくても他の実施例とほぼ同等の結果が得られていることが判明した。
【0047】
従って、ガス排出口10の内側開口端周囲にR付け部10a又は面取り部20a、30aを形成することで、ガス噴出時間を短縮し安全性及び信頼性を向上させることができることが判った。また、ガス排出能は、(外側開口端周囲の直径X)/(内側開口端周囲の直径Y)<1になる場合の方がX/Y=1の場合と比較してガス噴出現象は穏やかになることが判った。更に、上記効果を高めるためには、ガス排出口の内側開口端周囲に施されたR付け加工の半径Rをガス排出口の外側開口端の直径Xの長さ以上にすることが好ましいことが判った。
【0048】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ガス排出口は、電池容器の少なくとも一方の上下端面の内底面側開口端周囲にR付け又は面取り加工が施されているため、ガス排出時にこの開口端周囲に集中するガスの流れに対する抵抗を抑制することができるので、ガスを電池容器外へスムーズに排出し高容量リチウム二次電池の安全性及び信頼性を向上させることができる、という効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用可能な実施形態の円柱状リチウムイオン二次電池の断面図である。
【図2】実施形態の円柱状リチウムイオン二次電池の部分断面図及びガス排出口が形成する空間を拡大し模式的に示した拡大模式図である。
【図3】他の実施形態の円柱状リチウムイオン二次電池の部分断面図及びガス排出口が形成する空間を拡大し模式的に示した拡大模式図である。
【図4】別の実施形態の円柱状リチウムイオン二次電池の部分断面図及びガス排出口が形成する空間を拡大し模式的に示した拡大模式図である。
【図5】更に別の実施形態の円柱状リチウムイオン二次電池の部分断面図及びガス排出口が形成する空間を拡大し模式的に示した拡大模式図である。
【図6】従来の円柱状リチウムイオン二次電池の部分断面図及びガス排出口が形成する空間を拡大し模式的に示した拡大模式図である。
【符号の説明】
4、4b、4c、4d 電池蓋
5 電池容器
6 捲回群(電極群)
10 ガス排出口(内圧低減機構の一部)
10a、10d R付け部
17 ガス排出弁(内圧低減機構の一部、開裂部材)
20a、30a 面取り部
40 円柱状リチウムイオン二次電池(リチウム二次電池)
Si 内側開口端周囲の面積
So 外側開口端周囲の面積
X 内側開口端周囲の直径(開口端の最長部の長さ)
Y 外側開口端周囲の直径
R R付け加工の半径
Claims (4)
- 電池容器内に正負極を有する電極群が内蔵され、前記電池容器の少なくとも一方の上下端面に、ガスを排出するためのガス排出口及び該ガス排出口を閉塞し所定圧で開裂する開裂部材を有し内圧の上昇に応じてガスを排出する内圧低減機構を備えた放電容量30Ah以上のリチウム二次電池であって、前記ガス排出口は、前記電池容器の少なくとも一方の上下端面の内底面側開口端周囲にR付け又は面取り加工が施されたことを特徴とするリチウム二次電池。
- 前記ガス排出口は、前記内底面側の開口端周囲の面積が前記少なくとも一方の上下端面の外面側の開口端周囲の面積より大きいことを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池。
- 前記ガス排出口は、前記内底面側の開口端周囲の直径が前記少なくとも一方の上下端面の外面側の開口端周囲の直径より大きいことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のリチウム二次電池。
- 前記R付け加工の半径が、前記ガス排出口の前記少なくとも一方の上下端面の外面側の開口端の最長部の長さ以上であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池。
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