本発明は、走行用の動力源として少なくとも電動機を備えておれば良いが、第2発明のように電動機とは別に動力源を備えているハイブリッド車両にも適用され得る。電動機としては、力行および回生が可能なモータジェネレータが好適に用いられるが、単に動力を発生するだけの電動モータ等を採用することもできる。他の動力源としては、例えば燃料の燃焼によって動力を発生する内燃機関等のエンジンが好適に用いられるが、他の原動機を採用することもできる。
上記他の動力源は、第2発明のように電動機が連結された回転軸を介して駆動輪を回転駆動するものでも良いが、他の発明の実施に際しては、電動機による駆動系とは別に駆動系が設けられて他の動力源により別の駆動輪を回転駆動する4輪駆動車両など、種々の態様が可能である。
第2発明のように共通の回転軸を電動機および他の動力源で回転駆動する場合、例えばエンジン等の他の動力源が自動変速機の上流側に設けられ、自動変速機の下流側に電動機が設けられるが、電動機および他の動力源を何れも自動変速機の上流側に設けることもできるなど、種々の態様が可能である。電動機および他の動力源の使い分けは、運転者の出力要求量(要求駆動力)等に応じて適宜定められるが、車両走行中のアクセルOFF→ON等による再加速要求時には、少なくとも電動機を用いて回転軸を回転駆動するように構成される。
本発明は、車両走行中のアクセルOFF→ON等による再加速要求時には、少なくとも電動機を用いて回転軸を回転駆動する再加速制御手段を有して構成される。この再加速制御手段は、電動機のみで再加速する場合であっても良いが、他の駆動源を有する場合に、電動機をアシスト的に作動させて再加速する場合であっても良い。
電動機が連結される回転軸は、例えば自動変速機の出力軸であるが、駆動輪の車軸など他の動力伝達軸に連結することも可能である。自動変速機としては、例えば遊星歯車式や平行軸式など、複数のクラッチやブレーキ(摩擦係合装置)の作動状態に応じて複数のギヤ段が成立させられる有段の自動変速機の他、変速比を無段階で変化させることができるベルト式等の無段変速機を用いることもできる。但し、本発明の実施に際しては必ずしも自動変速機は必要なく、自動変速機を備えていない電気自動車やハイブリッド車両にも適用され得る。
被駆動判断手段は、例えば第2発明のようにアクセル操作の解除(アクセルON→OFF)から所定時間が経過した時に被駆動状態を判断するように構成されるが、回転軸と動力源或いは電動機との回転位相の変化などから被駆動状態か否かを判断することもできるし、動力伝達経路にトルクコンバータ等の流体継手を備えている場合には、その流体継手の前後の回転速度の大小関係から被駆動状態か否かを判断することもできるなど、種々の態様が可能である。上記アクセル操作は、出力要求状態であることを意味するもので、必ずしも運転者がアクセル操作していることのみを意図するものではなく、オートクルーズ制御などの自動走行制御における出力要求状態を含む。
ガタ詰め制御手段は、車両走行中に被駆動状態になった場合に駆動側へガタ詰めするもので、前進走行時および後退走行時の両方に適用することが望ましいが、前進走行時および後退走行時の何れか一方に適用するだけでも良い。なお、前進走行時の駆動側は車両を前進走行させる回転方向で、後退走行時の駆動側は車両を後退走行させる回転方向であり、変速機(前進後退切換装置)よりも下流側に電動機が設けられる場合はガタ詰めのための駆動方向が逆方向になり、変速機(前進後退切換装置)よりも上流側に電動機が設けられる場合は、前進走行か後退走行かに拘らず同じ回転方向へ駆動すれば良い。
ガタ詰め制御手段によりガタ詰めを行うために電動機を作動させる際のトルクの大きさや時間は、実験やシミュレーション等により予め一定値、或いは一定のトルクパターン等が定められても良いが、車速やエンジン回転速度などの車両状態等をパラメータとして定められたデータマップ等から求められるようにしても良い。なお、バッテリー残量(SOC)が少ない場合には、このガタ詰め制御手段によるガタ詰め制御を中止することが望ましい。
第3発明では、ガタ詰めが完了した場合に電動機のトルクを低減するようになっているが、この時のトルクは、ガタ詰め状態が維持されるように回転軸に追従して電動機が回転する必要最小限のトルクとすることが望ましく、例えば車速や回転軸の回転速度等をパラメータとして設定される。
ガタ詰めが完了したか否かは、例えばガタ詰めのための一連のトルク制御に必要な予め定められた所定時間が経過したか否かを判断するだけでも良いが、例えばレゾルバ等の回転速度センサにより回転軸および電動機の回転位相をそれぞれ検出し、ガタ詰めに必要な回転位相量だけ両者の回転位相が相対的に変化したか否かによって判断することもできるし、電動機の回転速度が回転軸の回転速度よりも大きくなった後に再び回転軸の回転速度と一致するように低下したか否かによって判断することもできるなど、種々の態様が可能である。
第4発明でガタ詰めのための駆動制御(ガタ詰め制御)を中止する回転軸の回転速度は、電動機によるトルクアシストが不可の場合など所定のアシスト効果が得られない回転速度で、電動機のトルク特性等に応じて定められる。回転軸の回転速度に対して一定の関係を有する他の回転部材の回転速度を用いても良いことは勿論である。
第4発明および第5発明におけるガタ詰め制御の中止は、ガタ詰め制御が開始される前にその実行を中止する場合でも、ガタ詰め制御の実行中に途中で中止する場合でも良く、その両方で中止することが望ましいが、何れか一方だけで中止しても良い。
また、第4発明で回転軸の回転速度が所定速度以下になったり、第5発明でブレーキ操作が解除された場合には、ガタ詰め制御手段によるガタ詰め制御が直ちに開始され、或いはガタ詰め制御の実行中に中止された場合は直ちに再開されるようにすることが望ましい。
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が好適に適用されるハイブリッド車両の駆動装置10を説明する骨子図である。この駆動装置10は、第1モータジェネレータMG1、動力源としてのエンジン12、トルクコンバータ14、遊星歯車式の自動変速機16、および第2モータジェネレータMG2を、同一の軸線上にその順番で備えている。第1モータジェネレータMG1は、主としてエンジン12のスタータとして用いられるもので、エンジン12のクランク軸に連結されているが、必要に応じて回生制御されることによりインバータ18(図5参照)を介して蓄電装置20を充電することができる。エンジン12は、燃料の燃焼で動力を発生するガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等の内燃機関であり、流体継手であるトルクコンバータ14を介して自動変速機16の入力軸22に連結されている。第2モータジェネレータMG2は、自動変速機16の出力軸24に連結されており、車両発進時に力行制御されることにより車両の発進をアシストする一方、ブレーキ操作時等に回生制御されることにより、車両に制動力を作用させるとともにインバータ18を介して蓄電装置20を充電する。出力軸24には、図5に示すようにプロペラシャフト26が連結され、差動歯車装置28を介して左右の駆動輪30L、30Rを回転駆動するようになっている。本実施例では、上記第2モータジェネレータMG2が請求項1に記載の電動機で、出力軸24が回転軸である。なお、駆動装置10は、エンジン12を除いて軸心に対して略対称的に構成されているため、図1の骨子図においては下側半分が省略されている。図10、図13の実施例についても同様である。
自動変速機16は、シングルピニオン型の第1遊星歯車装置32を主体として構成されている第1変速部34と、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置36およびダブルピニオン型の第3遊星歯車装置38を主体として構成されている第2変速部40とを備えている。第1変速部34を構成している第1遊星歯車装置32は、サンギヤS1、遊星歯車P1、その遊星歯車P1を自転および公転可能に支持するキャリヤCA1、遊星歯車P1を介してサンギヤS1と噛み合うリングギヤR1を備えており、サンギヤS1は非回転部材であるトランスミッションケース42(以下、単にケース42という)に一体的に固定され、リングギヤR1は前記入力軸22に連結されて一体的に回転駆動されるようになっている。上記キャリアCA1は中間出力部材として機能し、入力軸22に対して所定の減速比で減速回転させられる。
第2変速部40を構成している第2遊星歯車装置36は、サンギヤS2、遊星歯車P2、その遊星歯車P2を自転および公転可能に支持するキャリヤCA2、遊星歯車P2を介してサンギヤS2と噛み合うリングギヤR2を備えており、第3遊星歯車装置38は、サンギヤS3、遊星歯車P3A およびP3B 、その遊星歯車P3A およびP3B を自転および公転可能に支持するキャリヤCA3、遊星歯車P3A およびP3B を介してサンギヤS3と噛み合うリングギヤR3を備えている。そして、これ等の回転要素(サンギヤS2、S3、キャリアCA2、CA3、リングギヤR2、R3)の一部は互いに連結されて4つの回転要素RE1〜RE4が構成されており、第1回転要素RE1であるサンギヤS2は、第3クラッチC3を介して前記キャリアCA1に連結されて回転駆動されるとともに、第1ブレーキB1を介してケース42に一体的に連結されて回転停止させられるようになっている。第2回転要素RE2であるキャリアCA2およびCA3は互いに一体的に連結されており、第2クラッチC2を介して前記入力軸22に連結されて回転駆動されるとともに、第2ブレーキB2を介してケース42に一体的に連結されて回転停止させられるようになっている。第3回転要素RE3であるリングギヤR2およびR3は互いに一体的に連結されているとともに、前記出力軸24に一体的に連結されており、変速後の回転を出力するようになっている。第4回転要素RE4であるサンギヤS3は、第1クラッチC1を介して前記キャリアCA1に連結されて回転駆動されるようになっている。なお、上記キャリアCA2およびCA3、リングギヤR2およびR3は、それぞれ一体の部材にて構成されているとともに、第3遊星歯車装置38の外側の遊星歯車P3B は第2遊星歯車装置36の遊星歯車P2を兼ねており、所謂ラビニヨ型の歯車列を構成している。
上記クラッチC1、C2、C3、およびブレーキB1、B2(以下、特に区別しない場合は単にクラッチC、ブレーキBという)は、多板式のクラッチやバンドブレーキなど油圧アクチュエータによって係合制御される油圧式摩擦係合装置であり、油圧制御回路44(図5参照)のATソレノイドバルブの励磁、非励磁や図示しないマニュアルバルブによって油圧回路が切り換えられることにより、その係合解放状態が切り換えられ、シフトレバー46(図5、図6参照)の操作位置(シフトポジション)に応じて前進6段、後進1段の各ギヤ段が成立させられる。
図3は、上記自動変速機16の第1変速部34および第2変速部40の各回転要素(サンギヤS1〜S3、キャリアCA1〜CA3、リングギヤR1〜R3)の回転速度を直線で結ぶことができる共線図で、縦軸が回転速度を表しており、「1.0」は入力軸22と同じ回転速度を意味している。そして、クラッチCおよびブレーキBの作動状態に応じて、第1速ギヤ段「1st」〜第6速ギヤ段「6th」の6つの前進ギヤ段が成立させられるとともに、1つの後進ギヤ段「Rev」が成立させられる。第2変速部40の第3回転要素RE3(リングギヤR2、R3)の欄に示す「1st」〜「6th」、および「Rev」は、入力軸22の回転速度「1.0」に対する各ギヤ段の回転速度で、変速比に対応する。図2は、各ギヤ段とクラッチC、ブレーキBの作動状態(係合、解放)との関係をまとめて示す作動表で、「○」は係合、空欄は解放を表している。また、各ギヤ段における変速比は一例で、第1遊星歯車装置32、第2遊星歯車装置36、第3遊星歯車装置38の各ギヤ比(=サンギヤの歯数/リングギヤの歯数)ρ1、ρ2、ρ3によって適宜定められる。
前記シフトレバー46は、例えば図6に示すシフトパターンに従って駐車ポジション「P」、後進走行ポジション「R」、ニュートラルポジション「N」、前進走行ポジション「D」、およびSポジション「S」へ操作されるようになっており、「P」および「N」ポジションでは、自動変速機16の総てのクラッチCおよびブレーキBが解放されることにより動力伝達を遮断する遮断状態とされ、「P」ポジションでは図示しないメカニカルパーキング機構によって機械的に駆動輪の回転が阻止される。前進走行ポジション「D」では、総ての前進ギヤ段「1st」〜「6th」を用いて自動的に変速する最上位のDレンジ(自動変速モード)が成立させられ、Sポジション「S」では、自動変速が可能なギヤ段が制限された複数の変速レンジを運転者が任意に選択できるシーケンシャルモード(Sモード)が成立させられる。また、後進走行ポジション「R」では、後進ギヤ段「Rev」が成立させられる。上記「D」、「S」、「R」の各ポジションは、車両を走行させるための走行位置で、動力伝達を遮断するニュートラルポジション「N」および駐車ポジション「P」は中立位置である。
図4は、本実施例の駆動装置10が備えている制御系統を示すブロック線図で、電子制御装置50に入力される信号及びその電子制御装置50から出力される信号を例示している。この電子制御装置50は、CPU、ROM、RAM、及び入出力インターフェースなどから成る所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことによりエンジン12、第1、第2モータジェネレータMG1、MG2に関するハイブリッド駆動制御、自動変速機16の変速制御等の駆動制御を実行する。
電子制御装置50には、図4に示すような各センサやスイッチなどから、エンジン水温TEMPW を表す信号、シフトレバー46の操作位置であるシフトポジションPSHを表す信号、エンジン12の回転速度であるエンジン回転速度NEを表す信号、入力軸22の回転速度NINと等しいタービン回転速度NTを表す信号、ギヤ比列設定値を表す信号、Sモード(手動変速走行モード)を指令する信号、エアコンの作動を表す信号、出力軸24の回転速度NOUT に対応する車速Vを表す信号、自動変速機16の作動油温度TEMPO を表す信号、サイドブレーキ操作を表す信号、ブレーキペダル63(図5参照)の踏込み操作の有無を表す信号、触媒温度を表す信号、運転者の出力要求量に対応するアクセルペダル61(図5参照)の操作量であるアクセル開度θACC を表す信号、カム角を表す信号、スノーモード設定を表す信号、車両の前後加速度Gを表す信号、オートクルーズ走行を表す信号、蓄電装置20のバッテリー残量SOCを表す信号、各車輪の車輪速を表す信号、第1モータジェネレータMG1の回転速度(第1モータ回転速度)NM1を表す信号、第2モータジェネレータMG2の回転速度(第2モータ回転速度)NM2を表す信号、などが供給される。
また、上記電子制御装置50からは、エンジン12に備えられた電子スロットル弁のスロットル弁開度θTHを制御するスロットル駆動信号、燃料噴射装置による燃料供給量を制御する燃料供給量信号、点火装置によるエンジン12の点火時期を指令する点火信号、過給圧を調整するための過給圧調整信号、電動エアコンを作動させるための電動エアコン駆動信号、モータジェネレータMG1、MG2の作動を指令する指令信号、シフトインジケータを作動させるためのシフトポジション(操作位置)表示信号、ギヤ段を表示させるためのギヤ段表示信号、スノーモードであることを表示させるためのスノーモード表示信号、制動時の車輪のスリップを防止するABSアクチュエータを作動させるためのABS作動信号、Sモードが選択されていることを表示させるSモード表示信号、自動変速機16の油圧式摩擦係合装置(前記クラッチCおよびブレーキB)の油圧アクチュエータを制御するために油圧制御回路44(図5参照)に含まれる電磁弁を作動させるATソレノイド駆動信号、この油圧制御回路44の油圧源である電動油圧ポンプを作動させるためのポンプ駆動信号、電動ヒータを駆動するための信号、クルーズコントロール制御用コンピュータへの信号等が、それぞれ出力される。
図5は、電子制御装置50による制御機能の要部を説明するブロック線図であり、変速制御手段52およびハイブリッド制御手段54を備えている。変速制御手段52は、自動変速機16の変速制御を行うもので、例えばスロットル弁開度θTHおよび車速Vに基づいて予め設定された変速条件(変速マップなど)に従って変速すべきギヤ段を決定し、すなわち現在のギヤ段から変速先のギヤ段への変速判断を実行し、その決定されたギヤ段への変速作動を開始させる変速出力を実行するとともに、駆動力変化などの変速ショックが発生したりクラッチCやブレーキBの摩擦材の耐久性が損なわれたりすることがないように、それ等の油圧アクチュエータの油圧を連続的に変化させる。前記図2から明らかなように、本実施例の自動変速機16は、クラッチCおよびブレーキBの何れか1つを解放するとともに他の1つを係合させるクラッチツークラッチ変速により、連続するギヤ段の変速が行われるようになっている。
そして、シフトレバー46が前進走行ポジション「D」へ操作されると、総ての前進ギヤ段「1st」〜「6th」を用いて自動的に変速する最上位のDレンジ(自動変速モード)が成立させられる。また、「D」ポジションの隣に設けられたSポジション「S」へ操作されると、変速レンジを任意に選択できるシーケンシャルモードが成立させられる。すなわち、「S」ポジションには、車両の前後方向にアップシフト位置「+」、およびダウンシフト位置「−」が設けられており、シフトレバー46をそれ等のアップシフト位置「+」またはダウンシフト位置「−」へ操作することにより、Dレンジ〜Lレンジの間で変速レンジを任意にアップダウンさせることができる。4レンジでは第4速ギヤ段「4th」以下の前進ギヤ段で変速制御が行われ、3レンジでは第3速ギヤ段「3rd」以下の前進ギヤ段で変速制御が行われ、2レンジでは第2速ギヤ段「2nd」以下の前進ギヤ段で変速制御が行われ、Lレンジでは第1速ギヤ段「1st」に固定される。したがって、例えばDレンジの第6速ギヤ段「6th」で走行中に、シフトレバー46をダウシフト位置「−」側へ倒し操作すると、Dレンジから4レンジへ切り換えられ、第6速ギヤ段「6th」から第4速ギヤ段「4th」へ強制的にダウンシフトさせることができる。ダウンシフト位置「−」側への倒し操作を繰り返すと、変速レンジが4→3→2→Lへ順番に切り換えられ、第4速ギヤ段「4th」から更に第3速ギヤ段「3rd」、第2速ギヤ段「2nd」、第1速ギヤ段「1st」へ強制的にダウンシフトさせることができ、手動操作でギヤ段を変更することができる。シフトレバー46は、スプリング等の付勢手段により上記アップシフト位置「+」およびダウンシフト位置「−」から「S」ポジションへそれぞれ自動的に戻されるようになっている。
ハイブリッド制御手段54は、基本的にはアクセル開度θACC に応じてエンジン12の出力制御を行うもので、前記電子スロットル弁や燃料噴射装置、点火装置等を制御するが、発進時には第2モータジェネレータMG2を力行制御してトルクアシストを行う一方、フットブレーキの作動時には第2モータジェネレータMG2を回生制御して車両に制動力を作用させるとともに、発生した電気エネルギーで前記蓄電装置20を充電する。したがって、前進走行時に信号待ちなどで停車した場合には、エンジン12を停止してアイドリングストップを行うとともに、発進時には第2モータジェネレータMG2を用いて速やかに発進させることができる。すなわち、ブレーキ操作のOFF(解除)、或いはアクセルのON操作に伴って直ちにエンジン12を始動して車両を発進させるが、そのエンジン12による駆動力が得られるようになるまでの応答遅れを、第2モータジェネレータMG2によって補うことことにより、優れた応答性で車両を発進させることができるのである。エンジン12が作動状態のままの停車時においても、アクセルONの発進時に第2モータジェネレータMG2がアシストトルクを発生することにより、エンジン12のみで発進する場合に比較して発進応答性が向上する。第2モータジェネレータMG2は、このように発進時等に一時的にトルクアシストを行うものであるため、比較的小型なものを採用することが可能で、且つ自動変速機16と同軸に隣接して配設して出力軸24に連結するだけで良いため、簡単且つ安価に構成できる。なお、必要に応じて、第1モータジェネレータMG1を併用してトルクアシストや回生制御を行うこともできる。
ハイブリッド制御手段54はまた、再加速時アシスト手段56を備えており、車両走行中にアクセルペダル61のOFF(踏込み解除)操作により被駆動状態となり、その後アクセルペダル61のON(踏込み)操作に伴って再加速する場合に、第2モータジェネレータMG2を回転駆動するようになっている。すなわち、アクセルOFF→ONの再加速要求時には、アクセル開度θACC に応じてエンジン12のスロットル弁を開き制御するなどしてエンジントルクを増大させるが、第2モータジェネレータMG2をアシスト的に作動させることにより、優れた応答性で再加速することができるのである。この再加速時アシスト手段56は、再加速制御手段に相当する。
ハイブリッド制御手段54は更に、上記第2モータジェネレータMG2による再加速のアシスト時にガタ詰めショックが発生することを防止するため、被駆動判断手段57およびガタ詰め制御手段58を備えている。すなわち、第2モータジェネレータMG2と出力軸24とはスプライン嵌合されているため、所定のバックラッシを有し、そのバックラッシに起因してガタが存在する。そして、アクセルOFFの被駆動時には、出力軸24により第2モータジェネレータMG2が回転駆動される状態となり、被駆動側にガタ詰めが行われる一方、アクセルOFF→ONの再加速時に前記再加速時アシスト手段56により第2モータジェネレータMG2が駆動されると、駆動側にガタ詰めが行われて、その際にガタ詰めショックが発生するのである。
図7は、第2モータジェネレータMG2のロータ48と出力軸24との間のスプラインのガタを説明する図で、白抜き矢印で示す右まわりに回転駆動する場合(前進走行時)、(a) は第2モータジェネレータMG2のロータ48が被駆動側にガタ詰めされた被駆動状態で、(b) は第2モータジェネレータMG2のロータ48が駆動側にガタ詰めされた駆動状態であり、再加速時に第2モータジェネレータMG2が所定のトルクで駆動されて(a) から(b) の状態に切り換わる際にショックが発生する。回転方向が反対向きになる後退走行時には、駆動状態、被駆動状態が逆になり、(a) が駆動状態で、(b) が被駆動状態である。また、(c) は、ガタが中立の状態である。なお、出力軸24から駆動輪30L、30Rまでの間に存在する差動歯車装置28の噛合歯車部分などにもガタが存在し、ガタ詰め制御手段58は、第2モータジェネレータMG2から駆動輪30L、30Rまでのモータ駆動系の全体のガタ詰めを行う。
上記被駆動判断手段57およびガタ詰め制御手段58によるガタ詰め追従制御のために、電子制御装置50には車速センサ60、アクセル開度センサ62、フットブレーキスイッチ64、SOCセンサ66、MG2回転速度センサ68等から、出力軸24の回転速度に対応する車速V、アクセル開度θACC 、ブレーキペダル63の踏込み操作の有無、蓄電装置20のバッテリー残量SOC、第2モータジェネレータMG2の回転速度である第2モータ回転速度NM2、等を表す信号がそれぞれ供給される。車速センサ60は例えば電磁ピックアップ式の回転速度センサなどで、アクセル開度センサ62は例えばホール効果を利用した非接触式のポジションセンサなどで、フットブレーキスイッチ64はON−FFスイッチなどで、SOCセンサ66は電圧計などで、MG2回転速度センサ68はレゾルバ式等の回転速度センサである。SOCセンサ66は、蓄電装置20に対する充放電量を逐次積算してバッテリー残量SOCを算出するものでも良い。
そして、被駆動判断手段57およびガタ詰め制御手段58は、図8に示すフローチャートに従って信号処理を行い、再加速に先立ってガタ詰めを行うように第2モータジェネレータMG2を駆動制御する。図8のステップS1は被駆動判断手段57に相当し、ステップS2〜S9はガタ詰め制御手段58に相当する。また、被駆動判断手段57により被駆動状態と判断されると、その後にアクセルペダル61がON操作された場合には前記再加速時アシスト手段56により第2モータジェネレータMG2によるアシスト制御が行われるようになっており、ガタ詰め制御手段58によるガタ詰め追従制御の実行中であっても、直ちにガタ詰め追従制御が終了させられ、第2モータジェネレータMG2によるアシスト制御が行われる。
図8は、シフトレバー46がDポジション、Rポジション等の走行位置へ操作されている場合に実行される。図8のステップS1では、アクセル開度θACC に基づいて、アクセルペダル61がON状態からOFF状態へ変化するON→OFF操作が為され、前進走行時には図7(a) に示す被駆動状態になったか否かを判断する。具体的には、ON→OFF操作されてからの経過時間が予め定められた所定時間time1に達したか否かを判断し、アクセルペダル61が再びON操作されること無く所定時間time1に達したら非駆動状態になったと判断する。
図9は前進走行時におけるタイムチャートで、時間t1 は、アクセルペダル61がON→OFF操作された時間であり、それまではエンジン12の動力伝達系は駆動状態である。図9における「駆動状態」の欄の(前進側)および(後退側)は、前進走行時には(前進側)が駆動状態で、(後退側)が被駆動状態であることを意味しており、時間t1 以前のアクセルON時には、エンジン12に連結されている自動変速機16内のガタ(AT内部のガタ)は駆動側へガタ詰めされている。これに対し、第2モータジェネレータMG2と出力軸24との間のガタは、第2モータジェネレータMG2の不可避的な回生トルク(最小回生トルク)により被駆動側(後退側)へガタ詰めされ、図7の(a) に示す状態とされており、図9の「回転位相」の欄では、実線で示す出力軸24の回転位相を基準として、第2モータジェネレータMG2の回転位相がガタ分だけ相対的に遅れていることを表している。なお、図9の「駆動状態」の欄の0は、例えば図7の(c) に示すようにガタが中立状態であることを意味している。
ここで、アクセルペダル61がON→OFF操作されても、エンジン12の出力低下により実際に自動変速機16内のガタが被駆動状態になるのは時間t2 で、時間t1 〜t2 の遅れ時間があり、その間にアクセルペダル61がON操作された場合には、ガタによる応答遅れを殆ど生じることなくエンジン12により速やかに再加速できるため、前記再加速時アシスト手段56による第2モータジェネレータMG2を使ったアシスト制御は不要である。このため、本実施例では自動変速機16内のガタが確実に被駆動状態になるのを待って、その後にアクセルペダル61がON操作されて再加速する場合に、再加速時アシスト手段56により第2モータジェネレータMG2を使ったアシスト制御が行われるように、アクセルOFFから前記所定時間time1が経過するまで待って被駆動状態の判断を行う。これにより、再加速時の無駄なアシスト制御が防止され、消費電力量が節約される。上記所定時間time1は、自動変速機16内のガタを含むエンジン駆動系のガタが確実に被駆動状態になるように、車速Vやエンジン回転速度NEなどの車両状態をパラメータとして、上記時間t1 〜t2 よりも十分に長い時間が設定されている。図9の時間t3 は、アクセルON→OFF操作から所定時間time1が経過して、被駆動状態になった旨の判断が為され、ステップS1の判断がYES(肯定)になった時間である。
ステップS1の判断がYES(肯定)になると、ステップS2〜S4の追従制御開始条件が成立するか否かを判断する。ステップS2では、車速Vが予め定められた所定車速V0 以下か否かを判断し、V≦V0 であればステップS3を実行するが、V>V0 の場合はステップS5以下のガタ詰め追従制御を行うことなく終了する。所定車速V0 は、再加速時に第2モータジェネレータMG2によるトルクアシストが不可となる高車速で、第2モータジェネレータMG2のトルク特性に応じて定められている。ステップS3では、バッテリー残量SOCが十分か否か、すなわち第2モータジェネレータMG2を再加速時のトルクアシストに用いることができる予め定められたアシスト可残量以上か否かを判断し、アシスト可残量以上であればステップS4を実行するが、アシスト可残量に満たない場合は再加速時のトルクアシストが不可であるため、ステップS5以下のガタ詰め追従制御を行うことなく終了する。アシスト可残量は一定値であっても良いが、再加速時に必要なアシストトルクは車速V等によって異なり、そのアシストトルクに応じて必要なバッテリ残量SOCは相違するため、本実施例では車速V等の車両状態をパラメータとして設定される。ステップS4では、フットブレーキ63がOFFすなわち踏込み操作されていないか否かを判断し、ブレーキOFFの場合にはステップS5以下のガタ詰め追従制御を行うが、ブレーキONの場合は直ちに再加速する恐れが無いため、ガタ詰め追従制御を行うことなく終了する。なお、前記ステップS1のYES判断は履歴として残っており、アクセルOFF状態が継続している場合にはステップS1に続いてステップS2以下が繰り返し実行され、車速Vの低下でV≦V0 となったり、第2モータジェネレータMG2の回生制御などでバッテリー残量SOCが増加してアシスト可残量以上になったり、フットブレーキ63の踏込み操作が解除されたりすることにより、ステップS2〜S4の判断が総てYESになった場合には、ステップS5以下のガタ詰め追従制御が開始される。図9は、ステップS1の被駆動状態の判断に続いて行われた最初のサイクルにおけるステップS2〜S4の判断が総てYESで、被駆動状態になった旨の判断時t3 から直ちにステップS5以下のガタ詰め追従制御が開始された場合である。
ステップS5では、第2モータジェネレータMG2と出力軸24との間のガタを含めて駆動輪30L、30Rまでのモータ駆動系における駆動側のガタ詰めが行われるように、その第2モータジェネレータMG2を前進時には正回転方向、後退時には逆回転方向へ、それぞれ所定のガタ詰めトルクで作動させ、前進走行時であれば前記図7の(b) に示すようにロータ48を出力軸24に当接させた状態で右回りに回転させるガタ詰め追従制御を開始する。この時のガタ詰めトルクやガタ詰め時間、或いはガタ詰めトルクの変化パターンなどは、実験やシミュレーション等により車速Vやタービン回転速度NT等の車両状態をパラメータとして予め定められ、次のステップS6では、ガタ詰めが完了したか否かを判断する。ガタ詰めが完了したか否かは、本実施例では予め定められたパターンで行われるガタ詰めトルクの制御に必要な所定時間time2が経過したか否かによって判断されるが、例えば車速センサ60およびMG2回転速度センサ68によって検出される出力軸24およびロータ48の回転位相が、ガタ詰めに必要な位相量だけ相対的に変化したか否かによって判断するなど、他の判断手法を用いることもできる。図9の時間t4 は、上記所定時間time2が経過してガタ詰め完了の判断が為され、ステップS6の判断がYESになった時間である。
ステップS6の判断がYESになると、ステップS7を実行し、電力消費量を節減するために第2モータジェネレータMG2のトルクを比較的小さな追従トルクttuijuまで低減する。追従トルクttuijuは、駆動側へガタ詰めした状態を維持しつつ駆動輪30L、30Rの回転に追従して第2モータジェネレータMG2のロータ48が出力軸24と共に回転する必要最小限のトルクで、例えば車速V等をパラメータとして設定される。但し、車両が停止して車速V=0となった場合には、第2モータジェネレータMG2のトルクを0とすることも可能である。
その後、ステップS8を実行し、追従制御中止条件が成立したか否かを判断し、追従制御中止条件が成立した場合には、ステップS9で第2モータジェネレータMG2のトルクを0、或いは不可避的な最小回生トルクとすることにより追従制御を中止する。追従制御中止条件は、前記ステップS2〜S4の追従制御開始条件と同じ条件が定められ、何れか一つでも満たさなくなった場合、すなわち車速Vの上昇でV>V0 となった場合、第2モータジェネレータMG2の力行制御などでバッテリー残量SOCが低下してアシスト可残量を下回った場合、或いはフットブレーキ63が踏込み操作された場合には、何れも追従制御を中止する。この場合も、アクセルOFF状態が継続している限り前記ステップS1のYES判断は履歴として残っており、ステップS1に続いてステップS2以下が実行されることにより、ステップS2〜S4の追従制御開始条件が成立すれば直ちに追従制御が再開される。ステップS2〜S4の開始条件およびステップS8の中止条件は全く同じであっても良いが、所定のヒステリシスを持たせることも可能である。
このように、本実施例のハイブリッド車両の駆動装置10においては、出力軸24を含むエンジン駆動系が駆動輪30L、30Rによって駆動される被駆動状態になった旨の判断が為されてステップS1の判断がYESになり、ステップS5以下のガタ詰め追従制御が開始されると、第2モータジェネレータMG2が駆動制御されることにより、その第2モータジェネレータMG2と出力軸24との間のガタを含むモータ駆動系における駆動側のガタ詰めが行われるため、その後のアクセルON操作による再加速要求時に再加速時アシスト手段56により第2モータジェネレータMG2を用いてトルクアシストが行われる際に、駆動側へのガタ詰めショックが発生することが防止される。
また、ステップS1を実行する被駆動判断手段57は、アクセルペダル61がON→OFF操作されてから所定時間time1が経過した時に被駆動状態になった旨を判断するため、エンジン12のトルク変化の応答遅れ等に拘らず被駆動状態になったことが的確に判断され、ステップS2〜S4の追従制御開始条件の成立を条件として直ちにステップS5以下のガタ詰めが行われるため、ガタ詰めによる電力消費を節減しつつ再加速時のガタ詰めショックを低減する効果を適切に享受できる。すなわち、実際に自動変速機16等のエンジン駆動系が被駆動状態になる前であれば、ガタによる応答遅れを殆ど生じることなくエンジン12により速やかに再加速できるため、ガタ詰め制御や再加速時アシスト手段56による第2モータジェネレータMG2を使ったアシスト制御は不要であるのに対し、本実施例では所定時間time1によりエンジン駆動系が確実に被駆動状態になるのを待って被駆動状態になった旨の判断が為されるため、被駆動状態になる前に無駄なガタ詰め制御が行われたり、再加速時に再加速時アシスト手段56により無駄なアシスト制御が行われたりして、電力が無駄に消費されることが防止されるのである。また、逆に被駆動状態になった旨の判断が遅くなると、ガタ詰めが行われる前に再加速要求が為され、第2モータジェネレータMG2を駆動して再加速する際にガタ詰めショックが発生する恐れがあるが、上記被駆動判断手段57により被駆動状態の判断が的確に行われ、その判断に応じてガタ詰め追従制御が行われることにより、判断遅れによるガタ詰めショックの発生が適切に防止される。
また、本実施例では、第2モータジェネレータMG2と出力軸24との間のガタを含むモータ駆動系における駆動側のガタ詰めが完了したか否かをステップS6で判断し、そのガタ詰めが完了した旨の判断が為されるまでは相対的に大きなトルクで第2モータジェネレータMG2を駆動制御し、ガタ詰めが完了した旨が判断されると相対的に小さな追従トルクttuijuで第2モータジェネレータMG2を駆動制御するため、大きなトルクでガタ詰めを速やかに行うことができる一方、ガタ詰め完了後はトルクが低減されることから、そのガタ詰め状態を維持しつつ第2モータジェネレータMG2を駆動することによって消費される消費電力量を節約することができる。
また、本実施例では車速Vが所定車速V0 よりも大きい場合には、ステップS2の判断がNO(否定)となってステップS5以下のガタ詰め追従制御が行われないとともに、追従制御中においてはステップS8の判断がYESになって追従制御が中止されるため、再加速時に第2モータジェネレータMG2によるトルクアシストを十分に行うことができないような高速回転での走行時に、ガタ詰めのための第2モータジェネレータMG2の作動で無駄に電力が消費されることが防止される。すなわち、高速回転ではモータトルクが低下するため、仮にガタ詰めすることはできても、再加速時に必要なアシストトルクを発生することができなくなるのであり、第2モータジェネレータMG2によるトルクアシストを行うことができないにも拘らず、ガタ詰めのために無駄に電力を消費することが防止されるのである。
また、本実施例では、フットブレーキ63が踏込み操作された場合には、ステップS4の判断がNO(否定)となってステップS5以下のガタ詰め追従制御が行われないとともに、追従制御中においてはステップS8の判断がYESになって追従制御が中止されるため、ガタ詰めのために第2モータジェネレータMG2を駆動することにより無駄に電力を消費することが防止される。すわなち、運転者がブレーキ操作を行っている間は再加速の意思が無いと見做せるため、ガタ詰めを行う必要はないのであり、再加速時にガタ詰めショックが発生することを抑制するという効果を損なうことなく、第2モータジェネレータMG2の無駄な作動による無駄な電力消費を防止することができるのである。
また、本実施例では、蓄電装置20のバッテリー残量SOCがトルクアシストに必要なアシスト可残量に満たない場合には、ステップS3の判断がNO(否定)となってステップS5以下のガタ詰め追従制御が行われないとともに、追従制御中においてはステップS8の判断がYESになって追従制御が中止されるため、ガタ詰めのために第2モータジェネレータMG2を駆動することにより無駄に電力を消費することが防止される。すわなち、バッテリー残量SOCがアシスト可残量に満たない場合は、再加速時に第2モータジェネレータMG2を力行制御してトルクアシストを行うことが不可であるため、ガタ詰めを行う必要はないのであり、第2モータジェネレータMG2の無駄な作動による無駄な電力消費を防止することができるのである。
なお、上記実施例では前進6段、後進1段の自動変速機16が用いられていたが、これはあくまでも一例であり、例えば図10〜図12に示す自動変速機70や、図13〜図15に示す自動変速機80など、種々の自動変速機を採用できる。
図10の自動変速機70は、前記自動変速機16に比較して第1変速部72、およびその第1変速部72と第2変速部40との連結関係が相違しており、前進8段および後進2段のギヤ段が成立させられるようになっている。第1変速部72は、ダブルピニオン型の第1遊星歯車装置74を主体として構成されており、その第1遊星歯車装置74は、サンギヤS1、遊星歯車P1A およびP1B 、その遊星歯車P1A およびP1B を自転および公転可能に支持するキャリヤCA1、遊星歯車P1A およびP1B を介してサンギヤS1と噛み合うリングギヤR1を備えている。そして、サンギヤS1はケース42に一体的に固定され、キャリアCA1は入力軸22に連結されて一体的に回転駆動されるとともに、第4クラッチC4を介して第2変速部40の第1回転要素RE1(サンギヤS2)と連結されるようになっており、リングギヤR1は、第1クラッチC1を介して第2変速部40の第4回転要素RE4(サンギヤS3)と連結されるとともに、第3クラッチC3を介して第1回転要素RE1(サンギヤS2)と連結されるようになっている。上記リングギヤR1は中間出力部材として機能し、入力軸22に対して所定の減速比で減速回転させられる。
図12は、自動変速機70の第1変速部72および第2変速部40の共線図で、クラッチC1〜C4およびブレーキB1、B2の作動状態に応じて、第1速ギヤ段「1st」〜第8速ギヤ段「8th」の8つの前進ギヤ段が成立させられるとともに、第1後進ギヤ段「Rev1」、第2後進ギヤ段「Rev2」が成立させられる。図11は、各ギヤ段とクラッチC1〜C4およびブレーキB1、B2の作動状態(係合、解放)との関係をまとめて示す作動表で、各ギヤ段における変速比は、第1遊星歯車装置74、第2遊星歯車装置36、第3遊星歯車装置38の各ギヤ比ρ1、ρ2、ρ3によって適宜定められる。
図13の自動変速機80は、シングルピニオン型の第1遊星歯車装置82およびダブルピニオン型の第2遊星歯車装置84を主体として構成されている第1変速部86と、シングルピニオン型の第3遊星歯車装置88およびダブルピニオン型の第4遊星歯車装置90を主体として構成されている第2変速部92とを備えており、前進9段および後進2段のギヤ段が成立させられるようになっている。
第1変速部86を構成している第1遊星歯車装置82は、サンギヤS1、遊星歯車P1、その遊星歯車P1を自転および公転可能に支持するキャリヤCA1、遊星歯車P1を介してサンギヤS1と噛み合うリングギヤR1を備えており、第2遊星歯車装置84は、サンギヤS2、遊星歯車P2A およびP2B 、その遊星歯車P2A およびP2B を自転および公転可能に支持するキャリヤCA2、遊星歯車P2A およびP2B を介してサンギヤS2と噛み合うリングギヤR2を備えている。そして、これ等の回転要素(サンギヤS1、S2、キャリアCA1、CA2、リングギヤR1、R2)の一部は互いに連結されて4つの回転要素RE1〜RE4が構成されており、第1回転要素RE1であるリングギヤR1は、第5クラッチC5を介して第2変速部92に連結されるようになっている。第2回転要素RE2であるキャリアCA1およびサンギヤS2は互いに一体的に連結されており、ケース42に一体的に固定されている。第3回転要素RE3であるリングギヤR2は、第1クラッチC1、第3クラッチC3を介して第2変速部92に連結されるようになっている。第4回転要素RE4であるサンギヤS1およびキャリアCA2は互いに一体的に連結されており、入力軸22に連結されて一体的に回転駆動されるとともに、第4クラッチC4を介して第2変速部92に連結されるようになっている。上記第3回転要素RE3(リングギヤR2)は、第1中間出力部材として機能し、入力軸22に対して所定の減速比で減速回転させられる。また、第1回転要素RE1(リングギヤR1)は、第2中間出力部材として機能し、入力軸22に対して逆回転方向へ所定の減速比で減速回転させられる。
第2変速部92は、第1実施例の第2変速部40と実質的に同じ構成で、第3遊星歯車装置88は、サンギヤS3、遊星歯車P3、その遊星歯車P3を自転および公転可能に支持するキャリヤCA3、遊星歯車P3を介してサンギヤS3と噛み合うリングギヤR3を備えており、第4遊星歯車装置90は、サンギヤS4、遊星歯車P4A およびP4B 、その遊星歯車P4A およびP4B を自転および公転可能に支持するキャリヤCA4、遊星歯車P4A およびP4B を介してサンギヤS4と噛み合うリングギヤR4を備えている。そして、これ等の回転要素(サンギヤS3、S4、キャリアCA3、CA4、リングギヤR3、R4)の一部は互いに連結されて4つの回転要素RE5〜RE8が構成されており、第5回転要素RE5であるサンギヤS3は、第3クラッチC3を介して前記第3回転要素RE3(リングギヤR2)に一体的に連結され、第4クラッチC4を介して前記第4回転要素RE4(サンギヤS1、キャリアCA2)に一体的に連結され、第5クラッチC5を介して前記第1回転要素RE1(リングギヤR1)に一体的に連結されるとともに、ブレーキB1を介してケース42に一体的に連結されて回転停止させられるようになっている。第6回転要素RE6であるキャリアCA3およびCA4は互いに一体的に連結されており、クラッチC2を介して前記入力軸22に連結されて回転駆動されるとともに、ブレーキB2を介してケース42に一体的に連結されて回転停止させられるようになっている。第7回転要素RE7であるリングギヤR3およびR4は互いに一体的に連結されているとともに、前記出力軸24に一体的に連結されており、変速後の回転を出力するようになっている。第8回転要素RE8であるサンギヤS4は、第1クラッチC1を介して前記第3回転要素RE3(リングギヤR2)に一体的に連結されるようになっている。なお、上記キャリアCA3およびCA4、リングギヤR3およびR4は、それぞれ一体の部材にて構成されているとともに、第4遊星歯車装置90の外側の遊星歯車P4B は第3遊星歯車装置88の遊星歯車P3を兼ねており、所謂ラビニヨ型の歯車列を構成している。
図15は、自動変速機80の第1変速部86および第2変速部92の共線図で、クラッチC1〜C5およびブレーキB1、B2の作動状態に応じて、第1速ギヤ段「1st」〜第9速ギヤ段「9th」の9つの前進ギヤ段が成立させられるとともに、第1後進ギヤ段「Rev1」、第2後進ギヤ段「Rev2」が成立させられる。図14は、各ギヤ段とクラッチC1〜C5およびブレーキB1、B2の作動状態(係合、解放)との関係をまとめて示す作動表で、各ギヤ段における変速比は、第1遊星歯車装置82、第2遊星歯車装置84、第3遊星歯車装置88、第4遊星歯車装置90の各ギヤ比ρ1、ρ2、ρ3、ρ4によって適宜定められる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
10:駆動装置 12:エンジン(動力源) 16、70、80:自動変速機 24:出力軸(回転軸) 30L、30R:駆動輪 50:電子制御装置 57:被駆動判断手段 58:ガタ詰め制御手段 60:車速センサ 62:アクセル開度センサ 64:ブレーキスイッチ MG2:第2モータジェネレータ(電動機) V:車速(回転軸の回転速度)