以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が好適に適用されるハイブリッド車両の駆動装置10を説明する骨子図である。この駆動装置10は、第1モータジェネレータMG1、動力源としてのエンジン12、トルクコンバータ14、遊星歯車式の自動変速機16、および第2モータジェネレータMG2を、同一の軸線上にその順番で備えている。第1モータジェネレータMG1は、主としてエンジン12のスタータとして用いられるもので、エンジン12のクランク軸に連結されているが、必要に応じて回生制御されることによりインバータ18(図5参照)を介して蓄電装置20を充電することができる。エンジン12は、燃料の燃焼で動力を発生するガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等の内燃機関であり、流体継手であるトルクコンバータ14を介して自動変速機16の入力軸22に連結されている。第2モータジェネレータMG2は、自動変速機16の出力軸24に連結されており、車両発進時に力行制御されることにより車両の発進をアシストする一方、ブレーキ操作時等に回生制御されることにより、車両に制動力を作用させるとともにインバータ18を介して蓄電装置20を充電する。出力軸24には、図5に示すようにプロペラシャフト26が連結され、差動歯車装置28を介して左右の駆動輪30L、30Rを回転駆動するようになっている。本実施例では、上記第2モータジェネレータMG2が請求項1に記載の電動機で、出力軸24が回転軸である。なお、駆動装置10は、エンジン12を除いて軸心に対して略対称的に構成されているため、図1の骨子図においては下側半分が省略されている。図11、図14の実施例についても同様である。
自動変速機16は、シングルピニオン型の第1遊星歯車装置32を主体として構成されている第1変速部34と、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置36およびダブルピニオン型の第3遊星歯車装置38を主体として構成されている第2変速部40とを備えている。第1変速部34を構成している第1遊星歯車装置32は、サンギヤS1、遊星歯車P1、その遊星歯車P1を自転および公転可能に支持するキャリヤCA1、遊星歯車P1を介してサンギヤS1と噛み合うリングギヤR1を備えており、サンギヤS1は非回転部材であるトランスミッションケース42(以下、単にケース42という)に一体的に固定され、リングギヤR1は前記入力軸22に連結されて一体的に回転駆動されるようになっている。上記キャリアCA1は中間出力部材として機能し、入力軸22に対して所定の減速比で減速回転させられる。
第2変速部40を構成している第2遊星歯車装置36は、サンギヤS2、遊星歯車P2、その遊星歯車P2を自転および公転可能に支持するキャリヤCA2、遊星歯車P2を介してサンギヤS2と噛み合うリングギヤR2を備えており、第3遊星歯車装置38は、サンギヤS3、遊星歯車P3A およびP3B 、その遊星歯車P3A およびP3B を自転および公転可能に支持するキャリヤCA3、遊星歯車P3A およびP3B を介してサンギヤS3と噛み合うリングギヤR3を備えている。そして、これ等の回転要素(サンギヤS2、S3、キャリアCA2、CA3、リングギヤR2、R3)の一部は互いに連結されて4つの回転要素RE1〜RE4が構成されており、第1回転要素RE1であるサンギヤS2は、第3クラッチC3を介して前記キャリアCA1に連結されて回転駆動されるとともに、第1ブレーキB1を介してケース42に一体的に連結されて回転停止させられるようになっている。第2回転要素RE2であるキャリアCA2およびCA3は互いに一体的に連結されており、第2クラッチC2を介して前記入力軸22に連結されて回転駆動されるとともに、第2ブレーキB2を介してケース42に一体的に連結されて回転停止させられるようになっている。第3回転要素RE3であるリングギヤR2およびR3は互いに一体的に連結されているとともに、前記出力軸24に一体的に連結されており、変速後の回転を出力するようになっている。第4回転要素RE4であるサンギヤS3は、第1クラッチC1を介して前記キャリアCA1に連結されて回転駆動されるようになっている。なお、上記キャリアCA2およびCA3、リングギヤR2およびR3は、それぞれ一体の部材にて構成されているとともに、第3遊星歯車装置38の外側の遊星歯車P3B は第2遊星歯車装置36の遊星歯車P2を兼ねており、所謂ラビニヨ型の歯車列を構成している。
上記クラッチC1、C2、C3、およびブレーキB1、B2(以下、特に区別しない場合は単にクラッチC、ブレーキBという)は、多板式のクラッチやバンドブレーキなど油圧アクチュエータによって係合制御される油圧式摩擦係合装置であり、油圧制御回路44(図5参照)のATソレノイドバルブの励磁、非励磁や図示しないマニュアルバルブによって油圧回路が切り換えられることにより、その係合解放状態が切り換えられ、シフトレバー46(図5、図6参照)の操作位置(シフトポジション)に応じて前進6段、後進1段の各ギヤ段が成立させられる。
図3は、上記自動変速機16の第1変速部34および第2変速部40の各回転要素(サンギヤS1〜S3、キャリアCA1〜CA3、リングギヤR1〜R3)の回転速度を直線で結ぶことができる共線図で、縦軸が回転速度を表しており、「1.0」は入力軸22と同じ回転速度を意味している。そして、クラッチCおよびブレーキBの作動状態に応じて、第1速ギヤ段「1st」〜第6速ギヤ段「6th」の6つの前進ギヤ段が成立させられるとともに、1つの後進ギヤ段「Rev」が成立させられる。第2変速部40の第3回転要素RE3(リングギヤR2、R3)の欄に示す「1st」〜「6th」、および「Rev」は、入力軸22の回転速度「1.0」に対する各ギヤ段の回転速度で、変速比に対応する。図2は、各ギヤ段とクラッチC、ブレーキBの作動状態(係合、解放)との関係をまとめて示す作動表で、「○」は係合、空欄は解放を表している。また、各ギヤ段における変速比は一例で、第1遊星歯車装置32、第2遊星歯車装置36、第3遊星歯車装置38の各ギヤ比(=サンギヤの歯数/リングギヤの歯数)ρ1、ρ2、ρ3によって適宜定められる。上記前進6段および後進1段の各ギヤ段は、エンジン12からの動力を伝達する駆動状態である。
前記シフトレバー46は、例えば図6に示すシフトパターンに従って駐車ポジション「P」、後進走行ポジション「R」、ニュートラルポジション「N」、前進走行ポジション「D」、およびSポジション「S」へ操作されるようになっており、「P」および「N」ポジションでは、自動変速機16の総てのクラッチCおよびブレーキBが解放されることにより動力伝達を遮断する遮断状態とされ、「P」ポジションでは図示しないメカニカルパーキング機構によって機械的に駆動輪の回転が阻止される。前進走行ポジション「D」では、総ての前進ギヤ段「1st」〜「6th」を用いて自動的に変速する最上位のDレンジ(自動変速モード)が成立させられ、Sポジション「S」では、自動変速が可能なギヤ段が制限された複数の変速レンジを運転者が任意に選択できるシーケンシャルモード(Sモード)が成立させられる。また、後進走行ポジション「R」では、後進ギヤ段「Rev」が成立させられる。上記「D」、「S」、「R」の各ポジションは、車両を走行させるための走行位置で、動力伝達を遮断するニュートラルポジション「N」および駐車ポジション「P」は中立位置である。
図4は、本実施例の駆動装置10が備えている制御系統を示すブロック線図で、電子制御装置50に入力される信号及びその電子制御装置50から出力される信号を例示している。この電子制御装置50は、CPU、ROM、RAM、及び入出力インターフェースなどから成る所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことによりエンジン12、第1、第2モータジェネレータMG1、MG2に関するハイブリッド駆動制御、自動変速機16の変速制御等の駆動制御を実行する。
電子制御装置50には、図4に示すような各センサやスイッチなどから、エンジン水温TEMPW を表す信号、シフトレバー46の操作位置であるシフトポジションPSHを表す信号、エンジン12の回転速度であるエンジン回転速度NEを表す信号、入力軸22の回転速度NINと等しいタービン回転速度NTを表す信号、ギヤ比列設定値を表す信号、Sモード(手動変速走行モード)を指令する信号、エアコンの作動を表す信号、出力軸24の回転速度NOUT に対応する車速Vを表す信号、自動変速機16の作動油温度TEMPO を表す信号、サイドブレーキ操作を表す信号、フットブレーキ操作を表す信号、触媒温度を表す信号、運転者の出力要求量に対応するアクセルペダルの操作量であるアクセル開度θACC を表す信号、カム角を表す信号、スノーモード設定を表す信号、車両の前後加速度Gを表す信号、オートクルーズ走行を表す信号、蓄電装置20のバッテリー残量SOCを表す信号、各車輪の車輪速を表す信号、第1モータジェネレータMG1の回転速度(第1モータ回転速度)NM1を表す信号、第2モータジェネレータMG2の回転速度(第2モータ回転速度)NM2を表す信号、などが供給される。
また、上記電子制御装置50からは、エンジン12に備えられた電子スロットル弁のスロットル弁開度θTHを制御するスロットル駆動信号、燃料噴射装置による燃料供給量を制御する燃料供給量信号、点火装置によるエンジン12の点火時期を指令する点火信号、過給圧を調整するための過給圧調整信号、電動エアコンを作動させるための電動エアコン駆動信号、モータジェネレータMG1、MG2の作動を指令する指令信号、シフトインジケータを作動させるためのシフトポジション(操作位置)表示信号、ギヤ段を表示させるためのギヤ段表示信号、スノーモードであることを表示させるためのスノーモード表示信号、制動時の車輪のスリップを防止するABSアクチュエータを作動させるためのABS作動信号、Sモードが選択されていることを表示させるSモード表示信号、自動変速機16の油圧式摩擦係合装置(前記クラッチCおよびブレーキB)の油圧アクチュエータを制御するために油圧制御回路44(図5参照)に含まれる電磁弁を作動させるATソレノイド駆動信号、この油圧制御回路44の油圧源である電動油圧ポンプを作動させるためのポンプ駆動信号、電動ヒータを駆動するための信号、クルーズコントロール制御用コンピュータへの信号等が、それぞれ出力される。
図5は、電子制御装置50による制御機能の要部を説明するブロック線図であり、変速制御手段52およびハイブリッド制御手段54を備えている。変速制御手段52は、自動変速機16の変速制御を行うもので、例えばスロットル弁開度θTHおよび車速Vに基づいて予め設定された変速条件(変速マップなど)に従って変速すべきギヤ段を決定し、すなわち現在のギヤ段から変速先のギヤ段への変速判断を実行し、その決定されたギヤ段への変速作動を開始させる変速出力を実行するとともに、駆動力変化などの変速ショックが発生したりクラッチCやブレーキBの摩擦材の耐久性が損なわれたりすることがないように、それ等の油圧アクチュエータの油圧を連続的に変化させる。前記図2から明らかなように、本実施例の自動変速機16は、クラッチCおよびブレーキBの何れか1つを解放するとともに他の1つを係合させるクラッチツークラッチ変速により、連続するギヤ段の変速が行われるようになっている。
そして、シフトレバー46が前進走行ポジション「D」へ操作されると、総ての前進ギヤ段「1st」〜「6th」を用いて自動的に変速する最上位のDレンジ(自動変速モード)が成立させられる。また、また、「D」ポジションの隣に設けられたSポジション「S」へ操作されると、変速レンジを任意に選択できるシーケンシャルモードが成立させられる。すなわち、「S」ポジションには、車両の前後方向にアップシフト位置「+」、およびダウンシフト位置「−」が設けられており、シフトレバー46をそれ等のアップシフト位置「+」またはダウンシフト位置「−」へ操作することにより、Dレンジ〜Lレンジの間で変速レンジを任意にアップダウンさせることができる。4レンジでは第4速ギヤ段「4th」以下の前進ギヤ段で変速制御が行われ、3レンジでは第3速ギヤ段「3rd」以下の前進ギヤ段で変速制御が行われ、2レンジでは第2速ギヤ段「2nd」以下の前進ギヤ段で変速制御が行われ、Lレンジでは第1速ギヤ段「1st」に固定される。したがって、例えばDレンジの第6速ギヤ段「6th」で走行中に、シフトレバー46をダウシフト位置「−」側へ倒し操作すると、Dレンジから4レンジへ切り換えられ、第6速ギヤ段「6th」から第4速ギヤ段「4th」へ強制的にダウンシフトさせることができる。ダウンシフト位置「−」側への倒し操作を繰り返すと、変速レンジが4→3→2→Lへ順番に切り換えられ、第4速ギヤ段「4th」から更に第3速ギヤ段「3rd」、第2速ギヤ段「2nd」、第1速ギヤ段「1st」へ強制的にダウンシフトさせることができ、手動操作でギヤ段を変更することができる。シフトレバー46は、スプリング等の付勢手段により上記アップシフト位置「+」およびダウンシフト位置「−」から「S」ポジションへそれぞれ自動的に戻されるようになっている。
ハイブリッド制御手段54は、基本的にはアクセル開度θACC に応じてエンジン12の出力制御を行うもので、前記電子スロットル弁や燃料噴射装置、点火装置等を制御するが、発進時には第2モータジェネレータMG2を力行制御してトルクアシストを行う一方、フットブレーキの作動時には第2モータジェネレータMG2を回生制御して車両に制動力を作用させるとともに、発生した電気エネルギーで前記蓄電装置20を充電する。したがって、前進走行時に信号待ちなどで停車した場合には、エンジン12を停止してアイドリングストップを行うとともに、発進時には第2モータジェネレータMG2を用いて速やかに発進させることができる。すなわち、ブレーキ操作のOFF(解除)、或いはアクセルのON操作に伴って直ちにエンジン12を始動して車両を発進させるが、そのエンジン12による駆動力が得られるようになるまでの応答遅れを、第2モータジェネレータMG2によって補うことことにより、優れた応答性で車両を発進させることができるのである。エンジン12が作動状態のままの停車時においても、アクセルONの発進時に第2モータジェネレータMG2がアシストトルクを発生することにより、エンジン12のみで発進する場合に比較して発進応答性が向上する。第2モータジェネレータMG2は、このように発進時等に一時的にトルクアシストを行うものであるため、比較的小型なものを採用することが可能で、且つ自動変速機16と同軸に隣接して配設して出力軸24に連結するだけで良いため、簡単且つ安価に構成できる。なお、必要に応じて、第1モータジェネレータMG1を併用してトルクアシストや回生制御を行うこともできる。
ハイブリッド制御手段54はまた、上記第2モータジェネレータMG2による発進時の応答性を一層高めるためのガタ詰め制御手段56を備えている。すなわち、第2モータジェネレータMG2から駆動輪30L、30Rまでの間には、歯車やスプライン等のバックラッシなどによるガタが存在するため、それらの駆動系のガタ詰めがなされるまではモータトルクが駆動輪30L、30Rに伝達されず、その分だけ応答遅れが生じるのである。図7は、第2モータジェネレータMG2のロータ58と出力軸24との間のスプラインのガタを説明する図で、白抜き矢印で示す右まわりに回転駆動する場合、(a) は第2モータジェネレータMG2が被駆動側にガタ詰めされた状態で、(b) は第2モータジェネレータMG2が駆動側にガタ詰めされた状態であり、(a) から(b) の状態になるまでは第2モータジェネレータMG2から駆動力が伝達されない。また、(c) は、ガタが中立の状態である。なお、出力軸24から駆動輪30L、30Rまでの間に存在する差動歯車装置28の噛合歯車部分などにもガタが存在し、応答遅れの原因になる。
上記ガタ詰め制御手段56は、シフトポジションセンサ60、MG2回転速度センサ62、SOCセンサ64からそれぞれ供給されるシフトレバー46のシフトポジションPSHを表す信号、第2モータジェネレータMG2の回転速度である第2モータ回転速度NM2を表す信号、蓄電装置20のバッテリー残量SOCを表す信号に基づいて、図8に示すフローチャートに従って信号処理を行い、発進に先立ってガタ詰めするように第2モータジェネレータMG2を駆動制御する。シフトポジションセンサ60は、例えば複数のON−OFFスイッチ等にて構成されており、MG2回転速度センサ62は、例えば回転角度を高い精度で検出できるレゾルバなどで構成されており、SOCセンサ64は電圧計などで構成されている。SOCセンサ64を設ける代わりに、蓄電装置20に対する充放電量を逐次積算してバッテリー残量SOCを算出するようにしても良い。
図8は、車速Vが所定車速以下(例えば5km/h以下)の略車両停車時に実行される。図8のステップS1では、シフトレバー46が移動操作されたか否か、すなわち前記シフトポジションセンサ60によって検出されるシフトポジションPSHが変化したか否かを判断し、シフトレバー46が操作された場合にはステップS2以下を実行する。ステップS2では、現在のシフトポジションPSHが「D」、「S」、または「R」の走行位置であるか否か、言い換えれば今回のシフト操作がP→R、N→D(S)、或いはN→Rであるか否かを判断し、走行位置である場合にはステップS3以下を実行し、走行位置でない場合、すなわちニュートラルポジション「N」または駐車ポジション「P」の場合はステップS7を実行する。図9は、シフトレバー46がP→R→N→Dへ移動操作された場合で、図10は、逆にD→N→R→Pへ移動操作された場合であり、何れも駆動系のガタ詰め状態および第2モータジェネレータMG2のトルクの変化をシフト操作との関係で示すタイムチャートである。エンジン12は、例えばアイドル状態で作動したままである。
ステップS3では、バッテリー残量SOCが十分か否か、すなわち第2モータジェネレータMG2を力行制御できる予め定められた最低残量以上か否かを判断し、最低残量以上であればステップS4以下のガタ詰め制御を実行する。ステップS4では、前記ステップS2で検出したシフトポジションPSHに応じて前進、後退を判定し、その駆動方向のガタ詰めが為されるように第2モータジェネレータMG2を前進時には正回転方向、後退時には逆回転方向へ、それぞれ所定のアシストトルクで作動させる。この時のアシストトルクやアシスト時間、或いはアシストトルクの変化パターンなどは、実験やシミュレーション等により予め定められ、ステップS5では、ガタ詰めが完了したか否かを判断する。ガタ詰めが完了したか否かは、予め定められたパターンでアシストトルクの制御が終了したか否か、例えば上記アシスト時間が経過したか否かを判断するだけでも良いが、MG2回転速度センサ62によって検出されるロータ58の回転角度が予め定められたガタ量に達したか否か、或いは第2モータジェネレータMG2がトルク出力状態であるにも拘らずロータ58の回転が0であること、などから判断することもできる。
そして、ガタ詰めが完了したら、ステップS6を実行し、電力消費量を節減するために第2モータジェネレータMG2のトルクアシストを停止するか、またはそのアシストトルクを低減する。ガタ詰め状態が維持されるようになっておれば良く、車両が完全に停止状態であればトルクアシストを停止しても良いが、本実施例では車両が停止状態か否かに拘らず確実にガタ詰め状態が維持されるように、予め定められた小さなガタ詰め維持トルクttumeで第2モータジェネレータMG2を作動させたままに維持する。これにより、例えばエンジン12によるクリープ走行時などでも、第2モータジェネレータMG2のロータ58と出力軸24との間のガタ詰め状態が維持される。
図9の時間t1 は、P→Rのシフト操作に伴って第2モータジェネレータMG2により後退側へのアシストトルク制御が開始された時間で、実線で示すように速やかに後退側へのガタ詰めが行われ、自動変速機16の後進ギヤ段「Rev」を成立させるために油圧制御で第3クラッチC3の係合が開始され(時間t2 )、エンジン12により点線で示すように自動変速機16内のガタ詰めが行われるよりも早く、第2モータジェネレータMG2から駆動輪30L、30Rまでのガタ詰めが終了する。このため、P→Rのシフト操作に続いて直ちにアクセルが踏み込み操作されて車両を後退させる場合でも、第2モータジェネレータMG2により優れた応答性で車両を後退方向へ発進させることができる。また、所定のガタ詰め維持トルクttumeで第2モータジェネレータMG2と駆動輪30L、30Rとの間のガタ詰め状態が維持されるため、第3クラッチC3が係合して自動変速機16内のガタ詰めが終了した後にアクセルが踏み込み操作されて発進する場合でも、第2モータジェネレータMG2のロータ58と出力軸24との間のガタが無く、その第2モータジェネレータMG2のトルクが速やかに駆動輪30L、30Rに伝達され、優れた発進応答性が得られる。なお、後進ギヤ段「Rev」を成立させるため、第3クラッチC3とは別に第2ブレーキB2も係合させられる。
図9の時間t5 は、N→Dシフト操作に伴って第2モータジェネレータMG2により前進側へのアシストトルク制御が開始された時間で、実線で示すように速やかに前進側へのガタ詰めが行われ、自動変速機16の第1速ギヤ段「1st」を成立させるために油圧制御で第1クラッチC1の係合が開始され(時間t6 )、エンジン12により点線で示すように自動変速機16内のガタ詰めが行われるよりも早く、第2モータジェネレータMG2から駆動輪30L、30Rまでのガタ詰めが終了する。また、第2モータジェネレータMG2によるガタ詰めが終了した後は、所定のガタ詰め維持トルクttumeでガタ詰め状態が維持される。これにより、前記P→Rシフト操作時と同様の作用効果が得られる。なお、第1速ギヤ段「1st」を成立させるため、第1クラッチC1とは別に第2ブレーキB2も係合させられる。
図10の時間t3 は、N→Rシフト操作に伴って第2モータジェネレータMG2により後退側へのアシストトルク制御が開始された時間で、実線で示すように速やかに後退側へのガタ詰めが行われ、自動変速機16の後進ギヤ段「Rev」を成立させるために油圧制御で第3クラッチC3の係合が開始され(時間t4 )、エンジン12により点線で示すように自動変速機16内のガタ詰めが行われるよりも早く、第2モータジェネレータMG2から駆動輪30L、30Rまでのガタ詰めが終了する。また、第2モータジェネレータMG2によるガタ詰めが終了した後は、所定のガタ詰め維持トルクttumeでガタ詰め状態が維持される。これにより、前記P→Rシフト操作時と同様の作用効果が得られる。
なお、上記図9、図10では、第2モータジェネレータMG2から駆動輪30L、30Rまでのガタ詰め量(実線)に比較して、自動変速機16内のガタ詰め量(点線)の方が大きいが、これはあくまでも例示であり、これ等のガタ詰め量の大きさは駆動装置10の種類によって相違する。
図8に戻って、前記ステップS2の判断がNO(否定)の場合に実行するステップS7では、シフトポジションPSHがニュートラルポジション「N」か否かを判断する。そして、ニュートラルポジション「N」の場合、すなわち今回のシフト操作がD(S)→N、またはR→Nの場合にはステップS8以下を実行する。ステップS8では、前記ステップS3と同様にしてバッテリー残量SOCが十分か否かを判断し、バッテリー残量SOCが十分であればステップS9以下のガタ詰め解除制御を実行する。
ステップS9では、第2モータジェネレータMG2により駆動方向へ詰められたガタ詰めを解除し、ロータ58と出力軸24との間のガタが例えば図7(c) に示す中立状態となるように、その第2モータジェネレータMG2を逆方向へ駆動する。この時のアシストトルクやアシスト時間、或いはアシストトルクの変化パターンなども、前記ステップS4と同様に実験やシミュレーション等により予め定められ、ステップS10では、ガタ詰め解除が完了したか否かを判断する。ガタ詰め解除が完了したか否かは、予め定められたパターンでアシストトルクの制御が終了したか否か、例えば上記アシスト時間が経過したか否かを判断するだけでも良いが、MG2回転速度センサ62によって検出されるロータ58の回転角度が予め定められた戻し角度に達したか否か、などから判断することもできる。そして、ガタ詰め解除が完了したら、ステップS11を実行し、第2モータジェネレータMG2のトルクアシストを停止する。
図9の時間t3 は、R→Nのシフト操作に伴って第2モータジェネレータMG2によりガタ詰め解除のトルクアシスト制御が開始された時間で、実線で示すように後退側へのガタ詰めが解除され、ガタ詰め状態が0すなわち中立状態となる。このようにガタ詰めが解除されて中立状態とされることにより、シフトレバー46がニュートラルポジション「N」を経て逆の駆動方向である前進走行ポジション「D」へ操作された場合(時間t5 )に、前記ステップS4以下を実行して前進方向のガタ詰めを行う際のガタ詰め量が小さくなり、ガタ詰めを早期に完了させることができる。なお、図9の時間t4 は、自動変速機16を後進ギヤ段「Rev」からニュートラル状態に切り換えるために、油圧制御により第3クラッチC3の解放が開始された時間であり、この解放でエンジン12からの動力伝達が遮断されることにより、自動変速機16はエンジントルクによる捩り変形から解放され、点線で示すように僅かに戻り回動させられる。
図10の時間t1 は、D→Nのシフト操作に伴って第2モータジェネレータMG2によりガタ詰め解除のトルクアシスト制御が開始された時間で、実線で示すように前進側へのガタ詰めが解除され、ガタ詰め状態が0すなわち中立状態となる。このようにガタ詰めが解除されて中立状態とされることにより、シフトレバー46がニュートラルポジション「N」を経て逆の駆動方向である後進走行ポジション「R」へ操作された場合(時間t3 )に、前記ステップS4以下を実行して後退方向のガタ詰めを行う際のガタ詰め量が小さくなり、ガタ詰めを早期に完了させることができる。なお、図10の時間t2 は、自動変速機16を第1速ギヤ段「1st」からニュートラル状態に切り換えるために、油圧制御により第1クラッチC1の解放が開始された時間であり、この解放でエンジン12からの動力伝達が遮断されることにより、自動変速機16はエンジントルクによる捩り変形から解放され、点線で示すように僅かに戻り回動させられる。
一方、前記ステップS7の判断がNO(否定)の場合、すなわち今回のシフト操作がR→Pの場合は、ガタ詰めに関する制御を行うことなく終了する。すなわち、後進走行ポジション「R」で、第2モータジェネレータMG2によりガタ詰め制御が行われていた場合には、R→Pシフト操作に伴ってその第2モータジェネレータMG2のトルクアシストを停止する。
図10の時間t5 は、R→Pのシフト操作に伴って第2モータジェネレータMG2によるガタ詰め制御のトルクアシストが解除された時間である。また、時間t6 は、自動変速機16を後進ギヤ段「Rev」からニュートラル状態に切り換えるために、油圧制御により第3クラッチC3の解放が開始された時間であり、この解放でエンジン12からの動力伝達が遮断されることにより、自動変速機16はエンジントルクによる捩り変形から解放され、点線で示すように僅かに戻り回動させられる。この時、出力軸34から駆動輪30L、30Rまでの間の戻り回動に伴い、第2モータジェネレータMG2のロータ58も実線で示すように僅かに戻り回動させられる。但し、特に外力が加わらない限り、後退側へのガタ詰め状態は維持される。
このように、本実施例の駆動装置10においては、シフトポジションが走行位置「D」、「S」、または「R」に切り換わったことが検出されると、ステップS4以下のガタ詰め制御が実行され、そのシフトポジションに応じた駆動方向に第2モータジェネレータMG2を駆動して駆動系のガタ詰めを行うため、アクセル操作されて第2モータジェネレータMG2により発進する際の発進応答性が向上する。すなわち、上記走行位置へのシフト操作に続いて直ちにアクセルが踏み込み操作されて車両を発進させる場合、自動変速機16が駆動状態に切り換わるまでには油圧制御の応答遅れで時間が掛かり、エンジン12のトルクが伝達されるようになるまでの応答性が悪いのに対し、本実施例では自動変速機16よりも駆動輪30L、30R側に第2モータジェネレータMG2が設けられているため、自動変速機16の変速終了を待つことなくそのモータジェネレータMG2により速やかに発進できる一方、本実施例では更ににシフト操作に伴ってガタ詰めを行うため、一層優れた応答性で駆動力を発生させることができるのである。
また、所定のガタ詰め維持トルクttumeで第2モータジェネレータMG2と駆動輪30L、30Rとの間のガタ詰め状態が維持されるため、自動変速機16の変速が終了してエンジン12のトルクが伝達状態となり、自動変速機16内のガタ詰めが終了した後にアクセルが踏み込み操作されて発進する場合でも、第2モータジェネレータMG2のロータ58と出力軸24との間のガタが無いことから、エンジン12に比べて優れた応答性が得られる第2モータジェネレータMG2により速やかに車両を発進させることができる。
また、第2モータジェネレータMG2と駆動輪30L、30Rとの間の駆動系のガタ詰めが完了した場合には、ステップS6で第2モータジェネレータMG2のトルクが低減されるため、第2モータジェネレータMG2を駆動することにより消費される消費電力量を節約することができる。
また、シフトポジションがニュートラルポジション「N」に切り換わったことが検出されたときは、ステップS9以下のガタ詰め解除制御が実行されることにより、第2モータジェネレータMG2と駆動輪30L、30Rとの間の駆動系のガタ詰めが解除されて中立状態となるように、その第2モータジェネレータMG2が逆方向へ駆動されるため、ニュートラルポジション「N」を経て逆の駆動方向へ切り換えられた場合のガタ詰め量が小さくなり、ガタ詰めを早期に完了させることができる。
なお、上記実施例では前進6段、後進1段の自動変速機16が用いられていたが、これはあくまでも一例であり、例えば図11〜図13に示す自動変速機70や、図14〜図16に示す自動変速機80など、種々の自動変速機を採用できる。
図11の自動変速機70は、前記自動変速機16に比較して第1変速部72、およびその第1変速部72と第2変速部40との連結関係が相違しており、前進8段および後進2段のギヤ段が成立させられるようになっている。第1変速部72は、ダブルピニオン型の第1遊星歯車装置74を主体として構成されており、その第1遊星歯車装置74は、サンギヤS1、遊星歯車P1A およびP1B 、その遊星歯車P1A およびP1B を自転および公転可能に支持するキャリヤCA1、遊星歯車P1A およびP1B を介してサンギヤS1と噛み合うリングギヤR1を備えている。そして、サンギヤS1はケース42に一体的に固定され、キャリアCA1は入力軸22に連結されて一体的に回転駆動されるとともに、第4クラッチC4を介して第2変速部40の第1回転要素RE1(サンギヤS2)と連結されるようになっており、リングギヤR1は、第1クラッチC1を介して第2変速部40の第4回転要素RE4(サンギヤS3)と連結されるとともに、第3クラッチC3を介して第1回転要素RE1(サンギヤS2)と連結されるようになっている。上記リングギヤR1は中間出力部材として機能し、入力軸22に対して所定の減速比で減速回転させられる。
図13は、自動変速機70の第1変速部72および第2変速部40の共線図で、クラッチC1〜C4およびブレーキB1、B2の作動状態に応じて、第1速ギヤ段「1st」〜第8速ギヤ段「8th」の8つの前進ギヤ段が成立させられるとともに、第1後進ギヤ段「Rev1」、第2後進ギヤ段「Rev2」が成立させられる。図12は、各ギヤ段とクラッチC1〜C4およびブレーキB1、B2の作動状態(係合、解放)との関係をまとめて示す作動表で、各ギヤ段における変速比は、第1遊星歯車装置74、第2遊星歯車装置36、第3遊星歯車装置38の各ギヤ比ρ1、ρ2、ρ3によって適宜定められる。
図14の自動変速機80は、シングルピニオン型の第1遊星歯車装置82およびダブルピニオン型の第2遊星歯車装置84を主体として構成されている第1変速部86と、シングルピニオン型の第3遊星歯車装置88およびダブルピニオン型の第4遊星歯車装置90を主体として構成されている第2変速部92とを備えており、前進9段および後進2段のギヤ段が成立させられるようになっている。
第1変速部86を構成している第1遊星歯車装置82は、サンギヤS1、遊星歯車P1、その遊星歯車P1を自転および公転可能に支持するキャリヤCA1、遊星歯車P1を介してサンギヤS1と噛み合うリングギヤR1を備えており、第2遊星歯車装置84は、サンギヤS2、遊星歯車P2A およびP2B 、その遊星歯車P2A およびP2B を自転および公転可能に支持するキャリヤCA2、遊星歯車P2A およびP2B を介してサンギヤS2と噛み合うリングギヤR2を備えている。そして、これ等の回転要素(サンギヤS1、S2、キャリアCA1、CA2、リングギヤR1、R2)の一部は互いに連結されて4つの回転要素RE1〜RE4が構成されており、第1回転要素RE1であるリングギヤR1は、第5クラッチC5を介して第2変速部92に連結されるようになっている。第2回転要素RE2であるキャリアCA1およびサンギヤS2は互いに一体的に連結されており、ケース42に一体的に固定されている。第3回転要素RE3であるリングギヤR2は、第1クラッチC1、第3クラッチC3を介して第2変速部92に連結されるようになっている。第4回転要素RE4であるサンギヤS1およびキャリアCA2は互いに一体的に連結されており、入力軸22に連結されて一体的に回転駆動されるとともに、第4クラッチC4を介して第2変速部92に連結されるようになっている。上記第3回転要素RE3(リングギヤR2)は、第1中間出力部材として機能し、入力軸22に対して所定の減速比で減速回転させられる。また、第1回転要素RE1(リングギヤR1)は、第2中間出力部材として機能し、入力軸22に対して逆回転方向へ所定の減速比で減速回転させられる。
第2変速部92は、第1実施例の第2変速部40と実質的に同じ構成で、第3遊星歯車装置88は、サンギヤS3、遊星歯車P3、その遊星歯車P3を自転および公転可能に支持するキャリヤCA3、遊星歯車P3を介してサンギヤS3と噛み合うリングギヤR3を備えており、第4遊星歯車装置90は、サンギヤS4、遊星歯車P4A およびP4B 、その遊星歯車P4A およびP4B を自転および公転可能に支持するキャリヤCA4、遊星歯車P4A およびP4B を介してサンギヤS4と噛み合うリングギヤR4を備えている。そして、これ等の回転要素(サンギヤS3、S4、キャリアCA3、CA4、リングギヤR3、R4)の一部は互いに連結されて4つの回転要素RE5〜RE8が構成されており、第5回転要素RE5であるサンギヤS3は、第3クラッチC3を介して前記第3回転要素RE3(リングギヤR2)に一体的に連結され、第4クラッチC4を介して前記第4回転要素RE4(サンギヤS1、キャリアCA2)に一体的に連結され、第5クラッチC5を介して前記第1回転要素RE1(リングギヤR1)に一体的に連結されるとともに、ブレーキB1を介してケース42に一体的に連結されて回転停止させられるようになっている。第6回転要素RE6であるキャリアCA3およびCA4は互いに一体的に連結されており、クラッチC2を介して前記入力軸22に連結されて回転駆動されるとともに、ブレーキB2を介してケース42に一体的に連結されて回転停止させられるようになっている。第7回転要素RE7であるリングギヤR3およびR4は互いに一体的に連結されているとともに、前記出力軸24に一体的に連結されており、変速後の回転を出力するようになっている。第8回転要素RE8であるサンギヤS4は、第1クラッチC1を介して前記第3回転要素RE3(リングギヤR2)に一体的に連結されるようになっている。なお、上記キャリアCA3およびCA4、リングギヤR3およびR4は、それぞれ一体の部材にて構成されているとともに、第4遊星歯車装置90の外側の遊星歯車P4B は第3遊星歯車装置88の遊星歯車P3を兼ねており、所謂ラビニヨ型の歯車列を構成している。
図16は、自動変速機80の第1変速部86および第2変速部92の共線図で、クラッチC1〜C5およびブレーキB1、B2の作動状態に応じて、第1速ギヤ段「1st」〜第9速ギヤ段「9th」の9つの前進ギヤ段が成立させられるとともに、第1後進ギヤ段「Rev1」、第2後進ギヤ段「Rev2」が成立させられる。図15は、各ギヤ段とクラッチC1〜C5およびブレーキB1、B2の作動状態(係合、解放)との関係をまとめて示す作動表で、各ギヤ段における変速比は、第1遊星歯車装置82、第2遊星歯車装置84、第3遊星歯車装置88、第4遊星歯車装置90の各ギヤ比ρ1、ρ2、ρ3、ρ4によって適宜定められる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
10:駆動装置 12:エンジン(動力源) 16、70、80:自動変速機 24:出力軸(回転軸) 30L、30R:駆動輪 50:電子制御装置 56:ガタ詰め制御手段 60:シフトポジションセンサ(シフトポジション検出手段) MG2:第2モータジェネレータ(電動機)