JP4746192B2 - スパークプラグの製造方法及びスパークプラグ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はスパークプラグの製造方法及びスパークプラグに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のスパークプラグは、絶縁碍子の先端面から下方に突出するようにされた中心電極と、この中心電極に対向して配設され一端が主体金具に接合された平行接地電極とを備え、中心電極と平行接地電極との間の気中ギャップに火花放電させて燃料混合ガスに着火するものが一般的である。このような平行対向型スパークプラグに対し、耐汚損性を改善した内燃機関用のスパークプラグとしてセミ沿面放電型スパークプラグと呼ばれるものが知られている。これは、火花放電ギャップにて発生する火花が、常時あるいは条件により、絶縁碍子表面を経由したセミ沿面放電形態にて伝播するように構成したものである。
【0003】
例えば、セミ沿面放電型スパークプラグと称されるものは、中心貫通孔を有する絶縁碍子と、中心貫通孔に保持され絶縁碍子の先端部に配設された中心電極と、絶縁碍子の先端部を自身の先端面から突出するように保持する主体金具と、主体金具に一端が接合され他端が中心電極の側周面若しくは絶縁碍子の側周面に対向するように配設されたセミ沿面接地電極を備える。そして、沿面放電時には、セミ沿面接地電極の発火面と絶縁碍子表面との間が気中放電となる以外は、絶縁碍子先端面の表面に沿う形態にて飛火する形となる。このセミ沿面放電型のスパークプラグによれば、絶縁体表面を這う形で火花放電が生ずるため、汚損物質が絶えず焼き切られる形となり、気中放電型のスパークプラグと比べて耐汚損性が向上する。
【0004】
さらに、そのような平行対向型とセミ沿面放電型の両機能を組み合わせたハイブリッド型スパークプラグが提供され、これによると、絶縁体の先端面が汚損していない場合でもセミ沿面ギャップで飛火するように各部寸法設定を行っているため、耐汚損性を達成しつつもチャンネリングを効果的に抑制し、かつ着火性を向上することが可能となった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のような平行接地電極とセミ沿面接地電極を備えてなるハイブリッド型スパークプラグは、エンジン条件、エンジン特性等に起因して特定のギャップでの飛火割合が経時変化する可能性がある。特に、ハイブリッド型スパークプラグにおいては、各部の寸法設定を行うことによりくすぶりを生じた場合のみならずくすぶりが生じていなくともセミ沿面ギャップにて飛火することとなるが、このように中心電極側面の飛火割合の高いスパークプラグにおいてはその中心電極側面の火花消耗が問題となる。
【0006】
また、セミ沿面接地電極と中心電極の電極間の火花は絶縁碍子先端面を這うよう進行するため、例えば図11における領域Cのような、凸部頂点付近より後方側において火花の衝突する割合が高く、スパークプラグの長期使用に伴いこの領域に偏消耗が生じる可能性があることが判明した。
【0007】
本発明の解決すべき課題は、平行接地電極とセミ沿面接地電極を備えてなるハイブリッド型スパークプラグにおいて、中心電極の側周面において火花による衝撃が頻繁に生じる位置を効果的に保護し、火花消耗に対する耐久性向上を達成しうるスパークプラグの製造方法及びその製造方法により製造されるスパークプラグを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段及び作用・効果】
中心貫通孔を有する絶縁碍子と、前記中心貫通孔に保持され前記絶縁碍子の先端部に配設されるとともに、軸状の本体部を有し、その本体部の先端部に貴金属チップを有する中心電極と、前記絶縁碍子の先端部を自身の先端面から突出するように保持する主体金具と、その主体金具の前記先端面に一端が接合され他端が前記中心電極の先端面に対向して主気中ギャップを形成するように配設された平行接地電極とを備えるとともに、前記主体金具に一端が接合され他端が前記中心電極の側周面若しくは前記絶縁碍子の側周面の少なくともいずれか一方に対向してセミ沿面ギャップを形成するように配設された複数のセミ沿面接地電極を備えるスパークプラグの製造方法であって、前記中心電極の電極母材となる軸状部材において、その軸線方向における一方を前方側とした場合の側面前端又は側面前端寄りに、該軸状部材よりも耐火花消耗性の高い金属からなる耐火花消耗用金属部材を接合して接合体を形成する接合工程と、前記接合体の側面前端部に対し、前記電極母材と前記耐火花消耗用金属部材の双方に跨る形で除去加工を施して、前記中心電極の軸線と平行な仮想平面に対して投影したときにその正射影像において、軸線方向において内燃機関へ向かう側を前方側とするその軸線方向前方側に向かうにつれて段階的及び/又は連続的に径が縮径する縮径部を形成しつつ、該縮径部の軸線方向中間位置において前記仮想平面における外面外形線が外向きに凸となる凸部の凸部頂点を、前記絶縁端子の先端からの距離が0.5mm以内で前記軸線方向後方側に位置させるように前記耐火花消耗用金属部材に形成することにより前記中心電極の先端部を形成する先端部形成工程と、前記先端部の前方側に貴金属チップを接合する貴金属チップ接合工程と、を含むことを特徴とするスパークプラグの製造方法を提供する。
【0009】
上記製造方法によるスパークプラグのごとく、中心電極において絶縁碍子先端面から軸線方向後方側の位置に凸部頂点が設定されるように凸部を形成すれば、電界集中の生じやすい凸部頂点とセミ沿面接地電極との間に絶縁碍子が位置するようになるため、セミ沿面放電の火花が絶縁碍子の先端に密着しやすく、絶縁碍子表面の火花清浄作用により耐汚損性に効果がある。そして、その火花消耗の予想される凸部において耐火花消耗用金属部材を配置すれば、この部位の火花消耗が効果的に抑制されることとなるため、耐久性に優れたスパークプラグとなり、上記方法によればこのようなスパークプラグの効率的製造が可能となる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明の一例たるスパークプラグ100の部分断面図である。周知のように、アルミナ等からなる絶縁碍子1は、その後端部に沿面距離を稼ぐためのコルゲーション1Aを、先端部に内燃機関の燃焼室に曝される脚長部1Bを備え、その軸中心には中心貫通孔1Cを備えている。中心貫通孔1Cには、貴金属チップを有する場合にはインコネル(商標名)600又は601等の、鉄6〜20質量%、クロム14〜25質量%、その他の不純物3%以下、所望によりアルミニウム1〜2質量%、残部としてニッケル58質量%以上含有するニッケル系金属等からなる電極母材2nを少なくとも表層部に有する中心電極2が保持され、中心電極2は絶縁碍子1の先端面から突出するようにされている。
【0011】
中心電極2は中心貫通孔1Cの内部に設けられたセラミック抵抗3を経由して上方の端子金具4に電気的に接続されている。端子金具4には図示しない高圧ケーブルが接続され高電圧が印加される。上記絶縁碍子1は主体金具5に囲まれ保持部51及びかしめ部5Cによって支持されている。主体金具5は低炭素鋼材で形成され、スパークプラグレンチと嵌合する工具係合部(六角部5A)と、ねじの呼びが例えばM14Sのねじ部5Bとを備えている。主体金具5はそのかしめ部5Cにより絶縁碍子1にかしめられ、主体金具5と絶縁碍子1が一体にされる。かしめによる密閉を完全なものとするため、主体金具5と絶縁碍子1との間に板状のパッキング部材6とワイヤ状のシール部材7,8が介在され、シール部材7,8の間にはタルク(滑石)9の粉末が充填されている。また、ねじ部5Bの後端、即ち、主体金具5の座面52にはガスケット10が嵌挿されている。
【0012】
主体金具5の先端面5Dには、少なくとも表層部をなす母材がニッケル合金からなる平行接地電極11が溶接により接合されている。平行接地電極11は中心電極2の先端面と軸方向に対向し、中心電極2と平行接地電極11とで主気中ギャップ(α)を形成している。また、例えば六角部5Aの対辺寸法は16mmであり、主体金具5の座面52から先端面5Dまでの長さは例えば19mmに設定されている。この寸法設定は、JIS:B 8031に規定されている14mm小形六角形の、A寸法が19mmのスパークプラグの基準寸法である。なお、平行接地電極11は、その先端部の温度を低減させ、火花消耗を抑えるために、内部に母材よりも熱伝導性の良好な材料(例えばCuや純Ni又はその複合材料等)からなる良熱伝導材を有していても良い。
【0013】
この実施の形態に係るスパークプラグ100では、平行接地電極11とは別に、複数のセミ沿面接地電極12を備えている。セミ沿面接地電極12は少なくとも表層部をなす母材がニッケル合金からなり、その一端が主体金具5の先端面5Dに溶接により接合され、他端の端面12Cが中心電極2の側周面2A若しくは脚長部1Bの側周面1Eに対向するように配設されている。図3の底面図に示すように、2個のセミ沿面接地電極12はそれぞれ平行接地電極11から90゜ずれた位置に配設され、セミ沿面接地電極12同士は略180゜ずれた位置に配設されている。
【0014】
また、図3は、絶縁碍子1の先端部を軸線30の方向前方側から平面視した状態を表しているが、セミ沿面接地電極12は他端の端面12Cにおいて、絶縁碍子1の中心貫通孔1Cの先端開口径よりも大きな幅を有するものとなっている。図2に示すように、各セミ沿面接地電極12の端面12Cと中心電極2の側周面2Aとの間にはセミ沿面ギャップ(β)(図1)が所定のギャップ間隔βにてそれぞれ形成され、各セミ沿面接地電極12の端面12Cと脚長部1Bの側周面1Eとの間でセミ沿面碍子ギャップ(γ)(図1)が所定のギャップ間隔γにてそれぞれ形成されている。
【0015】
また、平行接地電極11の中心電極2と対向する側面11Aと中心電極2の前方側先端面2Bとの間で主気中ギャップ(α)がギャップ間隔αにて形成され、さらに、絶縁碍子1の先端より前方側に突出する中心電極2の先端面2Bと絶縁碍子1の先端との距離H(以下、「突き出し量H」ともいう)が所定の値となるよう設定される。また、軸線方向における絶縁碍子1の先端面高さ位置とセミ沿面接地電極の端面12Cの後端側縁の高さ位置の距離が所定距離Emmとなっている。なお、これらα、β、γ、E、Hの数値は下記の関係に設定するとよい。即ち、0.7mm≦α(mm)≦(0.8(β−γ)+γ)(mm)とすると、正常時においても所定割合でセミ沿面ギャップの火花放電を起こさせることができる。なお、β、γ、E、Hについては、以下の関係、即ち、β(mm)≦2.2mm、0.4mm≦γ(mm)≦(α−0.1)(mm)、E(mm)≦0.5mm、及び1.0mm≦H(mm)≦4.0mmをそれぞれ満たすようにすると、さらに以下の効果を達成できる。
【0016】
β(mm)≦2.2mm、0.4mm≦γ(mm)≦(α−0.1)(mm)とすると、絶縁碍子の表面が「くすぶり」の状態になった時にセミ沿面接地電極と中心電極との間で、より確実に、セミ沿面放電を生じさせることができる。セミ沿面ギャップ(β)の距離βが2.2mmより大きいと、セミ沿面接地電極と中心電極との間で放電が生ぜず、中心電極と主体金具の絶縁碍子取付部付近との間で絶縁碍子の脚長部表面に沿って放電する、いわゆるフラッシュオーバーが発生する確率が高くなる。また、セミ沿面碍子ギャップ(γ)の距離γが0.4mmより小さいと、セミ沿面接地電極と絶縁碍子との間にカーボンによるブリッジが生じ放電不能になる確率が高くなる。
【0017】
一方、前記セミ沿面碍子ギャップ(γ)の距離γが主気中ギャップ(α)の距離α−0.1mmより大きくなると、「くすぶり」時においても、セミ沿面接地電極との間のセミ沿面ギャップ(γ)で放電するより、平行電極との間の主気中ギャップ(α)で放電してしまう確率が高くなる。
【0018】
また、E≦+0.5(+はセミ沿面接地電極の端面の下端縁が絶縁碍子の先端面から前方に離れる方向)とすると、セミ沿面放電の火花による絶縁碍子表面の火花清浄作用を効果的に維持することができる。Eが+0.5mmより大きいと、セミ沿面放電の火花が絶縁碍子の先端面に密着せず、絶縁碍子表面の火花清浄作用の効果が低下する。
【0019】
さらに、1.0≦H≦4.0とすると、セミ沿面放電による中心電極の電極消耗を小さく抑制することができる。さらに、平行接地電極との間の主気中ギャップαでの火花放電による着火性と、セミ沿面接地電極のセミ沿面放電による着火性との乖離を小さくすることができる。放電電極の変化に伴う着火性の変化による内燃機関のトルク変動を極力抑制することができる。中心電極の突き出し量Hが1.0mmより小さいと中心電極側周の電極消耗が大きくなる。
【0020】
一方、中心電極の突き出し量Hが4.0mmより大きいとセミ沿面放電による着火性が主気中ギャップ(α)での着火性に比べて低下し、両者の着火性が乖離して好ましくない。
【0021】
なお、図3においては、セミ沿面接地電極12の端面12Cは平面状に形成されているが、絶縁碍子2の側周面に沿って略一様な間隔のセミ沿面ギャップが形成されるよう、端面12Cを、例えば打抜加工等により絶縁碍子2の軸線30を中心とする円筒面状に形成することもできる。
【0022】
また、セミ沿面接地電極12も平行接地電極11と同様に、内部にCuや純Ni又はその複合材料等からなる良熱伝導材を有していても良い。この場合、セミ沿面接地電極12は、表層部を形成する母材と、内層部を形成するとともに母材よりも熱伝導性の良好な材料(例えばCuや純Ni又はその複合材料等)からなる良熱伝導材とを有するものとなる。
【0023】
次に図4を参照しつつ中心電極について説明する。図4には、絶縁碍子1及び中心電極2における各部分の寸法、位置関係を説明するために、それらを中心電極2の軸線と平行な仮想平面に対して投影した場合のその正射影像を示している。なお、本発明において、中心電極2の軸線を中心軸線と称し、その軸線方向を中心軸線方向と称する。そして、中心電極2は、自身の中心軸線方向において内燃機関へ向かう側(即ち、主気中ギャップに臨む側)を前方側とするその中心軸線方向前方側に段階的及び/又は連続的に径が縮径する縮径部2sが形成されるとともに、該縮径部2sの中心軸線方向における中間位置に、当該仮想平面における外面外形線が外向き(即ち、中心電極において外部側に向かう向き)に凸となる凸部2kが形成される。
【0024】
具体的には中心電極2は、絶縁碍子1の内部において後方側に形成される基部2pと、主気中ギャップに面する先端部において該基部2pよりも径小とされる径小部2qとの間において先端に向かうにつれ段階的及び/又は連続的に径が減少する移行部が形成される。そして、当該正射影像での移行部の中間位置又は基部2pと移行部に跨る位置における絶縁碍子1の開口に臨む位置に凸部2kが形成されることとなる。なお、本実施例においては貴金属チップ105が径小部2qをなす形となっており、この貴金属チップ105は、前方側に向かうにつれ縮径される電極母材2nの前端にレーザ溶接等により溶融部106を形成する形で接合されている。
【0025】
そして、中心軸線方向において中心電極2の先端に向かう側を前方側として、凸部頂点Pが絶縁碍子1の先端より中心軸線方向後方側に位置するように設定される。なお、その凸部頂点Pと絶縁碍子1の先端(図4では先端面1D)との中心軸線方向における距離L1は例えば0.5mm以内となるよう設定される。これにより耐汚損性効果が生じ、かつ着火性が良好となるようになっている。
【0026】
さらに、中心軸線方向において凸部頂点Pより後方側位置であって、かつ絶縁碍子1の中心軸線方向前方側の先端(図4の例では先端面1D)を基点とする中心軸線方向後方側0.5mm以内の中心電極2の表層部(側周面2A(図2)を含む部分)において、耐火花消耗用金属部101が形成される。さらに、耐火花消耗用金属部101により凸部2kが形成され、かつ凸部頂点Pを中心軸線方向にまたぐ構成にて耐火花消耗用金属部101が配置される。具体的には、耐火花消耗用金属部101の中心軸線方向における端縁が、凸部頂点Pに関して両側に配置される。なお、耐火花消耗用金属部101の端縁とは、貴金属又は貴金属合金により当該耐火花消耗用金属部を構成する場合にはその貴金属成分が50質量%以上である領域と50%未満である領域との境界を意味し、後述するNi含有量が90質量%以上である金属にて当該耐火花消耗用金属部を構成する場合には、その90質量%以上である領域と90%未満である領域との境界を意味する。
【0027】
また、具体的な貴金属は、例えばIr、Pt、Rh、Ru、及びReの少なくともいずれかを主成分とする金属又は該金属を主体とする複合材料にて構成することができる。また、貴金属を主成分とせずに、耐火花消耗用金属部をNi含有量が90質量%以上である金属にて構成してもよい。これらを採用することにより、耐火花消耗用金属部101を耐熱性と耐腐食性とに優れるものとでき、ひいては耐火花消耗用金属部101の消耗を抑制してスパークプラグ100(図1)の耐久性を向上させることができる。
【0028】
なお、本発明において図5のように、正射影像において凸部2kの外形線が連続的に屈曲するような形状を有するスパークプラグにおいては、凸部頂点Pを以下のごとく規定する。即ち、図5(b)の拡大図にて示されるように、その屈曲する凸部2kを挟んだ両側の直線部S1及びS2の外形線をそれぞれ延長する延長線A,Bを設定し、それら延長線A,Bの交点を凸部頂点Pとして規定する。そして、この凸部頂点Pと絶縁碍子先端の中心軸線方向における距離が上記範囲に設定されるよう形状が調整される。
【0029】
次に、上記したような耐火花消耗用金属部を備えるスパークプラグの製造方法について説明する。まず概要を述べると、本発明の製造方法は、図2のような中心電極2の電極母材2nとなる軸状部材(例えば図6の例では軸状部材201)において、その軸状部材の軸線方向における一方を前方側とした場合の側面前端又は側面前端寄りに、該軸状部材201よりも耐火花消耗性の高い金属からなる耐火花消耗用金属部材(例えば、板状チップ203:図6)を接合して接合体を形成する接合工程を含む。なお、本発明において、軸状部材の軸線を軸状部材軸線と称し、その軸線方向を軸状部材軸線方向とも称する。
【0030】
さらに、その接合工程後において軸状部材の接合体の側面前端部に対し、電極母材2n(軸状部材)と耐火花消耗用金属部材(板状チップ203等:図6)の双方に跨る形で塑性加工及び/又は除去加工を施すことにより、図2のように中心電極2の先端部において縮径部を凸部2kを有する形で形成する先端部形成工程が実施される。そして、その先端部形成工程後に先端部の前方側に貴金属チップ105(図4)を接合する貴金属チップ接合工程が行われることとなる。なお、本発明において、最終的に上記スパークプラグ100(図2)に備えられる耐火花消耗用金属部101となる部材を耐火花消耗用金属部材と称し、中心電極2の一部として最終的に形成された部位を耐火花消耗用金属部101と称しており、これらを区別して記載している。
【0031】
以下具体的な例について述べる。図6の例では、軸状部材201の側周面に耐火花消耗用金属部材としての板状チップ203を接合し、それを切削加工等の除去加工を行うことにより中心電極2の先端部を形成するといった方法について示している。なお、左側を斜視図、右側を側面断面図若しくはそれに準ずる図としている(図7以降においても同様である)。まず、図6(a)のように、軸状部材201の側周面に板状又は略板状の板状チップ203を抵抗溶接等により軸状部材201の側面上に接合する。この接合する前段階として、円柱部材の側壁の一部が除去され、先端寄りに自身の軸線(軸状部材軸線230)と平行となる側壁面を有するよう形状調整された軸状部材201を切削加工等の除去加工、或いは鍛造加工等の塑性加工により形成する。そして、その軸状部材軸線と平行に形成される側壁面の表面に板状チップ203を接合することとなる。
【0032】
そして、先端部形成工程において、縮径部2s(即ち径小部2q及び基部2pから径小部2qに至るまでの移行部:図4参照)として予定された部分を残す形にて、接合体210の前端部を形成する板状チップ203及び軸状部材201の一部を除去し、残された板状チップ203が凸部2kを形成するように図6(b)のごとく除去加工を行う。具体的には、接合体210を先端に向かうにつれ縮径するようテーパ状に除去加工を施し、テーパ部209の後方側端部において板状チップ203の一部にて凸部2kが形成されることとなる。
【0033】
本実施例においては、上記除去加工によりテーパ部209の前端縁に続く形にて円柱状に円柱部211が形成される。そして、図6(c)にて示されるように、その円柱部211の前方側の面において例えば円柱状又は円板上に形成される貴金属チップ105を重ね、それら円柱部211及び貴金属チップ105の側周面における接合部をレーザ溶接等により接合して最終的に図6(d)のような中心電極2が得られることとなる。軸状部材201は電極母材2nを構成し、板状チップ203は耐火花消耗用金属部201を構成することとなる。なお、図6のように、軸状部材の側周面に耐火花消耗用金属部材を接合し、得られた接合体に対し除去加工(具体的には切削加工)のみを施して先端部を形成するようにすれば、複雑な工程を採らずとも先端部形状を迅速に形成できる。
【0034】
また、次のようにしてもよい。即ち、図6(a)のような軸状部材201の側周面に板状に接合された耐火花消耗用金属部材203に対し、図7(a)のように、スエージング加工を施して、耐火花消耗用金属部材の露出面(図7の例では、板状チップが変形してなる変形部239の露出面)と軸状部材201の側周面とが連続的な曲面形状をなすように二次接合体250を形成する二次接合体形成工程を行う。そして、図6(b)の場合と同様に、縮径部2s(図4)として予定された部分を残す形にて、二次接合体250の前端部を形成する変形部239及び軸状部材201の一部を除去し、残された耐火花消耗用金属部材(変形部239)が凸部2kを形成するように除去加工を行うこととなる。このように、側周面に耐火花消耗用金属部材を接合した後に、所望の形状の二次接合体を形成するようにすれば、得られる中心電極の形状をより精度高くすることができる。また、例えば単一の軸状部材にて径の異なる複数の中心電極を製造するといったことも可能となる。
【0035】
また、図8ように、塑性加工による先端部形成方法を用いてもよい。図8の例では、以下のように接合工程を行う。即ち先端部において、径の異なる2つの円柱部が軸状部材軸線230の方向に続く形にて連続的かつ段状に一体形成される軸状部材201を用意する。この軸状部材201においては、前方側(最終的に中心電極2の前方側となる側)の円柱部201aが後方側の円柱部201bより小径となるよう同軸的に形成されている。
【0036】
そして、孔243aを有するよう環状に形成される耐火花消耗用金属部材としての環状チップ243を、その前方側の円柱部201aの外周を囲む形で接合して図8(b)のような接合体210を形成する。なお、孔243aは円柱部201aとほぼ同一径を有するよう調整し、環状チップ243の外径は軸状部材201の外径とほぼ同一となるよう調整される。そして、先端部形成工程においては、接合体210に対し型鍛造により先端部を形成することとなるが、少なくとも前方側円柱部201aの一部を環状チップ243より前方側に押し出す形で縮径部2s(図4)として予定される部分を形成し、円柱部211及びテーパ部209が形成されることとなる。一方、同図のように環状チップ243の一部が凸部2kを形成するように形状調整がなされる。このように、除去加工を用いずに塑性加工(具体的には鍛造加工)のみにて中心電極の先端部を形成するようにすれば、工程数の削減に寄与し、ひいては製造の迅速化、製造コスト削減に寄与する。なお、このようにして得られた図8(c)のような成形体に対して貴金属チップを接合する方法、即ち貴金属チップ接合工程に関しては、図6と同様とできる。
【0037】
また、図9には、塑性加工及び除去加工を両方用いて先端部形成工程を行う例について示している。図9の例では、図8(a)と同様の軸状部材201を形成し、同図(b)と同様に環状チップ243を前方側円柱部201aの外周を囲む形で接合して接合体210を形成する。そして、先端部形成工程においては、図9(c)に示されるように、その接合体210を型鍛造等の鍛造加工にて軸状部材201の軸線方向に延伸することにより、環状チップ243を軸状部材201とともにその軸状部材軸線方向に引き伸ばす。
【0038】
そして、その引き伸ばされた成形体212において、図6の場合と同様に、縮径部2s(図4)として予定された部分を残す形にて、接合体210の前端部を形成する環状チップ243(具体的には環状チップ243が変形してなる変形部245)及び軸状部材201を除去し、図9(d)のように残された変形部245が凸部2kを形成するように除去加工を行う。本実施例では、この除去加工において図6の場合と同様にテーパ部209及び円柱部211を形成し、図6と同様に貴金属チップ接合工程を行うこととなる。このように、一旦引き伸ばし工程を行った後に除去工程により先端部を形成するようにすると、単一の軸状部材において様々な径の中心電極を製造できることとなる。
【0039】
また、図10のような方法を用いてもよい。図10(a)のように電極母材2n(図2)となるべき軸状部材201の先端部に、溝(例えば台形状断面を有するもの)220を周方向に沿って形成し、同図(b)のごとく、その溝220に線状の貴金属又は貴金属合金、具体的には線状のPt線253を周方向に巻く。さらに、同図(c)に示すように、これらを所定速度で回転させながら、レーザービームをPt線253及び溝端縁近傍に照射する。これにより、同図(c)に示すようにPt線253と軸状部材201とが溶融してPt−Ni合金部263が形成される。このように、軸状部材に201に溝を形成し、それに対してPt線を巻くようにすれば、軸状部材のみを加工により形状調整し、耐火花消耗用金属部材については汎用性のあるPt線を利用できることとなるため前段階の加工工程の簡素化を図ることができる。
【0040】
そして、同図(d)に示すように、上記Pt−Ni合金部263に基づく凸部2kが形成されるように、軸状部材201及びPt−Ni合金部263の前方側を切削加工等により除去加工を行うようにする。なお、上記のようなPt−Ni合金部等の貴金属合金に対し鍛造加工等の塑性加工を施して大幅な塑性変形を試みると、貴金属合金部分(具体的にはPt−Ni合金部263)に割れが生じる可能性があるが、本実施例のごとく、切削加工等の除去加工により先端部を形成するようにすればこれが防止でき、中心電極を高品質にて製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一例たるスパークプラグの部分断面図。
【図2】図1のスパークプラグの電極近傍を拡大して示す部分断面図。
【図3】図2のスパークプラグの底面図。
【図4】中心軸線に平行な仮想平面における正射影像について概念的に示す図。
【図5】曲面形状の凸部を有するスパークプラグについて示す要部断面図。
【図6】本発明のスパークプラグの製造方法の一例を示す説明図。
【図7】接合工程及び先端部形成工程の別例1を示す説明図
【図8】接合工程及び先端部形成工程の別例2を示す説明図。
【図9】接合工程及び先端部形成工程の別例3を示す説明図。
【図10】接合工程及び先端部形成工程の別例4を示す説明図。
【図11】火花消耗の生じる位置について説明する説明図。
【符号の説明】
1 絶縁碍子
1D 絶縁碍子の先端面
1E 絶縁碍子の側周面
2 中心電極
2k 凸部
2n 電極母材
2m 放熱促進用金属部
5 主体金具
11 平行接地電極
12 セミ沿面接地電極
30 中心軸線
100 スパークプラグ
101 耐火花消耗用金属部
201 軸状部材
203 板状チップ(耐火花消耗用金属部材)
243 環状チップ(耐火花消耗用金属部材)
253 Pt線(耐火花消耗用金属部材)
230 軸状部材軸線
(α) 主気中ギャップ
(β) セミ沿面ギャップ
(γ) セミ沿面碍子ギャップ
P 凸部頂点
Claims (5)
- 中心貫通孔を有する絶縁碍子と、前記中心貫通孔に保持され前記絶縁碍子の先端部に配設されるとともに、軸状の本体部を有し、その本体部の先端部に貴金属チップを有する中心電極と、前記絶縁碍子の先端部を自身の先端面から突出するように保持する主体金具と、その主体金具の前記先端面に一端が接合され他端が前記中心電極の先端面に対向して主気中ギャップを形成するように配設された平行接地電極とを備えるとともに、前記主体金具に一端が接合され他端が前記中心電極の側周面若しくは前記絶縁碍子の側周面の少なくともいずれか一方に対向してセミ沿面ギャップを形成するように配設された複数のセミ沿面接地電極を備えるスパークプラグの製造方法であって、
前記中心電極の電極母材となる軸状部材において、その軸線方向における一方を前方側とした場合の側面前端又は側面前端寄りに、該軸状部材よりも耐火花消耗性の高い金属からなる耐火花消耗用金属部材を接合して接合体を形成する接合工程と、
前記接合体の側面前端部に対し、前記電極母材と前記耐火花消耗用金属部材の双方に跨る形で除去加工を施して、前記中心電極の軸線と平行な仮想平面に対して投影したときにその正射影像において、軸線方向において内燃機関へ向かう側を前方側とするその軸線方向前方側に向かうにつれて段階的及び/又は連続的に径が縮径する縮径部を形成しつつ、該縮径部の軸線方向中間位置において前記仮想平面における外面外形線が外向きに凸となる凸部の凸部頂点を、前記絶縁端子の先端からの距離が0.5mm以内で前記軸線方向後方側に位置させるように前記耐火花消耗用金属部材に形成することにより前記中心電極の先端部を形成する先端部形成工程と、
前記先端部の前方側に貴金属チップを接合する貴金属チップ接合工程と、
を含むことを特徴とするスパークプラグの製造方法。 - 前記接合工程は、前記軸状部材の側面前端又は側面前端寄りに前記耐火花消耗用金属部材が接合された前記接合体に対し、スエージング加工を施すことにより前記耐火花消耗用金属部材の露出面と前記軸状部材の側周面とが連続的な曲面形状をなすように円柱状又は略円柱状の二次接合体を形成する二次接合体形成工程を含む、請求項1に記載のスパークプラグの製造方法。
- 前記接合工程は、前記軸状部材の先端部において、前記軸線方向に続く径の異なる2つの円柱部を、前方側の円柱部が後方側より小径となるよう同軸的に形成するとともに、環状に形成される耐火花消耗用金属部をその前方側の円柱部の外周を囲む形で接合して接合体を形成し、
前記先端部形成工程において、その接合体を鍛造加工にて前記軸線方向に延伸することにより、前記耐火花消耗用金属部を前記軸状部材とともに軸線方向に引き伸ばし、その引き伸ばされた成形体において、前記除去加工によって前記縮径部を形成させるとともに前記耐火花消耗用金属部材によって前記凸部を形成させる請求項1に記載のスパークプラグの製造方法。 - 前記接合工程は、前記軸状部材の先端部に、軸線に関する半径方向に凹となる溝を当該軸状部材の周方向に沿って形成した後、該溝内部において該溝に沿う形にて線状又は環状の貴金属又は貴金属合金からなる貴金属電極部材を巻き、さらに、その巻かれた状態にてそれら軸状部材及び貴金属電極部材を溶接させて、側周面表層部において周方向に貴金属又は貴金属合金からなる前記耐火花消耗用金属部材が備えられた前記接合体を形成する請求項1に記載のスパークプラグの製造方法。
- 請求項1ないし4のいずれかの製造方法を用いて製造されたスパークプラグであって、前記セミ沿面接地電極と対向する前記中心電極の表面において前記凸部頂点に跨る領域に前記耐火花消耗用金属部材が備えられることを特徴とするスパークプラグ。
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