JP4745481B2 - 順送り加工装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば被加工材に打抜き、曲げ絞り、切削、積層等の加工を行なう場合に、1組の装置の中で各工程の加工を行ない、順次次の工程に被加工材をピッチ送りして加工を追加して進め、最終工程で加工を完了させる順送り加工装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、鋼板等の構造材料からなる板材に打抜き、曲げ絞り、圧縮等の成形加工をすることによって、所定の形状の板金製品を製作する場合には、数工程を経由するのが通常である。このような板金製品の製作数量が多い場合には、1個の加工用金型の中で各工程若しくはステージの加工を個々に行ない、順次に次のステージへ被加工材を送って加工を追加して進め、最終ステージで加工を完了させる手段が採用されている。このような加工用金型を順送り型と称しており、例えばプレスの1スタンプ毎に1個の板金製品を得ることができるため、極めて高能率であるという利点がある。
【0003】
上記従来の順送り加工用金型においては、生産速度が高く、被加工材を投入後加工完了までの納期が短いと共に、プレス加工の途中工程における仕掛りが少なく、小人数による多量生産が可能であるという長所を有する反面において、下記のような問題点がある。すなわち1個の金型中に複数対のパンチ・ダイを組込む構造であるため、金型構造が極めて複雑となり、高精度の金型製作技術を必要とすると共に、製作期間が長大化し、製作費用が多額になる。
【0004】
また金型の部分的破損、修理、調整に際しても、金型全体を分解する必要があり、これらの作業が煩雑であるため、多大の時間と工数を必要とする。更に多品種少量生産において、被加工品の形状、寸法が若干でも異なるときに、その都度専用の金型を製作する形態を採用した場合には、金型費が割高になり、近年次第にその要請が高まってきている所謂FMS生産方式に応えることができないという問題点がある。
【0005】
このような問題点を解決するために、本出願人は、すでに構造が簡単であり、かつ部分的調整その他を容易に行ない得る順送り加工装置についての出願を行なっている(例えば特願平2−121760号、同2−121761号等)。
【0006】
図11は本発明の前提である順送り加工装置の例を示す要部斜視図である。図11において、100〜500は夫々加工ユニットであり、ベース1上に被加工材(図示せず)の送り方向に例えば2P(Pは被加工材の送りピッチ)の間隔に配設する。これらの加工ユニット100〜500には複数の加工工程に対応する夫々1対のパンチおよびダイを設けてあるが、加工ユニット100を例にとってその構成を説明する。
【0007】
101は本体であり、略U字状に形成し、下端部に鳩尾状のあり102を一体に設け、ベース1に設けたあり溝103と係合させることによって被加工材の送り方向に移動調整可能、かつ被加工材の送り方向と直角方向の移動拘束可能に形成する。104は移動調整装置、105はクランプ装置である。106は油圧シリンダであり、本体101の上端部に設ける。107は位置測定装置であり、油圧シリンダ106の側面部に設ける。
【0008】
次に108はカセットであり、略U字状に形成し、上部にパンチ若しくはダイ(何れも図示せず)を上下動可能に設けると共に、下部に上記パンチ若しくはダイと対をなすダイ若しくはパンチ(何れも図示せず)を設け、本体101に着脱可能に設ける。カセット108の位置決めは、加工ユニット300において図示するように、位置決め部材309、310との係合によって行なう。111はクランプねじである。
【0009】
すなわちカセット108を位置決め部材(図示せず、加工ユニット300における符号309、310参照)を介して本体101に装着することによって所定の位置決めを行ない得ると共に、クランプねじ111の緊締によってその位置を固定し得る構成となっている。カセット108の固定後、油圧シリンダ106の作動桿(図示せず)と前記上下動可能に設けたパンチ若しくはダイとを連結する。
【0010】
図12は被加工材の加工状態を示す要部説明図であり、(a) は平面を示し、(b) は断面を示しており、同一部分は前記図11と同一の参照符号で示す。図12において2は被加工材であり、矢印方向にピッチPで間欠的にピッチ送りされる。すなわち前記図11において、カセット108(他のカセットにおいても同様)に設けた1対のパンチとダイとの間隙をピッチ送りされる。図11および図12においては、加工ユニット100〜500は夫々パイロット孔3の加工工程、円弧状の切込み4の加工工程、第1ないし第3の絞り加工工程に対応するように形成してある。
【0011】
まず加工ユニット100には、パイロット孔3を穿設するパンチおよびダイを備えると共に、被加工材2の送り方向下流側Pの位置に前記パイロット孔3に係合するガイド(図示せず)を備えてある。従って加工ユニット100が作動する毎にパイロット孔3が順次穿設されると共に、穿設されたパイロット孔3にガイドが係合し、このパイロット孔3を基準として以後の位置決めおよび加工が行なわれ、被加工材2の非所望な位置ずれを防止し、精度を保持することができる。
【0012】
次に加工ユニット200においては、円弧状の切込み4が加工される。そして加工ユニット300においては第1の絞り加工が行なわれ、被加工材2に椀状の突起5が形成されると共に、前記円弧状の切込み4はその幅を拡げて円弧状の溝6に変化する。更に加工ユニット400においては、第2の絞り加工とフランジ孔7の加工が行なわれ、突起5の高さが増大する。加工ユニット500においては第3の絞り加工が行なわれ、突起5の高さを所定の寸法に形成する。
【0013】
以後図示省略したが縁切り加工その他の加工を行ない、所定の椀状の板金製品が得られるのである。なお加工ユニット200〜500においても、パイロット孔3と係合するガイドを設けることにより、所定の精度を確保するための位置決めが行なわれることは勿論である。
【0014】
上記構成の順送り加工装置によれば、従来の順送り金型と比較して構造が簡単であると共に、製作も容易であり、多品種少量生産においても高能率の加工ができる利点を有するが、下記のような問題点がある。
【0015】
すなわち従来の順送り加工装置においては、被加工材は通常帯板状のものが対象であることから、曲げ、絞り、打抜き、孔抜き等の所謂板金加工工程を主とするものが多い。従って製品の一部に例えばねじ穴等の機械加工を有するものであること、順送り加工工程に含めることが困難であり、順送り加工工程完了後において、改めてねじ穴等の機械加工を行っているのが通常であり、コスト高となるという問題点がある。
【0016】
一方順送り加工によって得られる製品は、一般に小物が多く、しかも連続的に生産されるものであるため、1ロット内の数量が大であることが多い。このような大量の製品に対して改めて機械加工をすることは、専用の加工治具を必要とするのみならず、製品の取付け、取外しのための余剰の時間と工数を必要とするため、加工コストが嵩むのみならず、基準面のバラツキが影響して加工部分の寸法精度を向上させることが困難であるという問題点も併存する。
【0017】
上記問題点を解決するために、本出願人は前記構成の順送り加工装置において、任意の加工ユニットの中間部に、機械加工手段を被加工材に対して近接離脱可能に設ける、という内容の発明、および任意の加工ユニットを複数個の主軸を備えた多軸機械加工ユニットに形成し、同時に複数の機械加工を行ない得るように形成する、という内容の発明について出願している(特願平3−269833号、同6−169120号)。
【0018】
上記の構成により、製品となるべき部位が帯板状若しくはフープ状の長尺の被加工材中に存在する状態で、めねじ加工、おねじ加工を始めとして、穴あけ、皿もみ、面取り、座ぐり、かしめ、刻印等の複数の機械加工が1工程において同時に施されることになり、加工工数が低減されると共に、寸法精度を向上させることができるのである。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の装置においても、未だ若干の問題点がある。すなわち、上記の機械加工手段または多軸機械加工ユニットは、プレス加工ユニットとは別個の独自の構成であるため、加工対象が異なる場合には、その都度機械加工ユニットを準備しなければならず、装置全体としての互換性に乏しいため、順送り加工装置全体の配置替えが必要となり、取付け、取外しのための余剰の時間と工数を費消する、という問題点がある。
【0020】
また、上記機械加工ユニットにおける加工時間は、プレス加工と比較すると一般に長時間を要するため、装置全体としての加工タクトが長くなり、生産性が低下する、という問題点もある。
【0021】
一方、複数の機械加工部位を有する被加工体に対しては、複数の加工工具を備えたマシニングセンタが特に有効であるが、この場合においても、夫々の工程またはステージにおける加工時間が比較的長い場合が多く、また加工工程を複数工程に分割した場合には、高価なマシニングセンタを多数準備しなければならないため、装置全体に要する設備費が高騰する、という問題点がある。
【0022】
本発明は、上記従来技術に存在する問題点を解決し、複数個の機械加工工程を含む製品の加工コストを低減することができる順送り加工装置を提供することを課題とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、まず第1の発明においては、加工手段を備えたカセットを本体に着脱可能に設けてなる複数個の加工ユニットを、複数の加工工程に対応させて長尺状の被加工材の長手送り方向にmP(mは任意の正の整数、Pは被加工材の送りピッチ)の間隔に配設し、被加工材のピッチ送りに対して前記複数の加工工程を前記複数個の加工ユニットにより順次実施するように構成した順送り加工装置において、
本体を、基板と、この基板と所定距離を隔てて設けられた支持板と、前記基板と前記支持板との間において基板および支持板と直交する方向に移動可能に形成されたスライダと、このスライダを駆動する駆動手段とによって形成し、
加工手段を回転切削工具とし、かつこの回転切削工具をスライダの移動方向と直交する方向に移動可能に構成して、前記加工ユニットを機械加工ユニットに形成すると共に、前記スライダの移動を緩急自在に制御可能とし、被加工材に対して機械加工を連続して行ない得るように構成する、という技術的手段を採用した。
【0024】
次に第2の発明においては、加工手段を備えたカセットを本体に着脱可能に設けてなる複数個の加工ユニットを、複数の加工工程に対応させて長尺状の被加工材の長手送り方向にmP(mは任意の正の整数、Pは被加工材の送りピッチ)の間隔に配設し、被加工材のピッチ送りに対して前記複数の加工工程を前記複数個の加工ユニットにより順次実施するように構成した順送り加工装置において、
本体を、基板と、この基板と所定距離を隔てて設けられた支持板と、前記基板と前記支持板との間において基板および支持板と直交する方向に移動可能に形成されたスライダと、このスライダを駆動する駆動手段とによって形成し、
任意の加工ユニットにおける加工手段を回転切削工具とし、かつこの回転切削工具をスライダの移動方向と直交する方向に移動可能に構成して、前記加工ユニットを機械加工ユニットに形成すると共に、他の加工ユニットをプレス加工ユニットを含む加工ユニットに形成し、前記スライダの移動を緩急自在に制御可能とし、被加工材に対して機械加工を連続して行ない得るように構成する、という技術的手段を採用した。
【0025】
上記の発明において、基板と支持板とを水平面に平行に、かつスライダを垂直方向に移動可能に形成することができる。
【0026】
次に上記の発明において、駆動手段をサーボモータとねじ対偶とを含む機構によって形成することができる。この場合、ねじ対偶をボールねじで構成することができる。
【0027】
更に上記の発明において、スライダを基板と支持板との間に設けたガイドバーに沿って摺動するように形成することができる。
【0028】
また更に上記の発明において、機械加工ユニットにおけるカセットを、工具を着脱可能に保持しかつ回転させ得るホルダと、このホルダをスライダの移動方向と直交する方向に移動させ得るXYテーブルとによって形成することができる。この場合、XYテーブルの駆動手段をリニアモータによって形成することができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
図1および図2は各々本発明の実施の形態を示す要部正面図および一部断面要部側面図である。両図において、121〜125は夫々加工ユニットであり、ベース1上に長尺上の被加工材(図示せず)の長手送り方向に、例えば図1において左から順に、mP(mは正の整数、Pは被加工材の送りピッチ)の間隔(加工ユニット121〜125の加工中心線間の間隔)に配設する。
【0030】
これらの加工ユニット121〜125には、複数の加工工程に対応する加工を行ない得るような加工手段を備えたカセット11,12を着脱可能に設けてある。すなわちカセット11はプレス加工手段、カセット12は機械加工手段を各々備えており、例えば加工ユニット121,123,125はプレス加工ユニット、加工ユニット122,124は機械加工ユニットに形成される。これらの加工ユニットの設置個数およびカセットの加工手段は、要求される加工態様および加工工程により適宜に選定される。図1は3個の加工ユニット121,123,125と2個の機械加工ユニット122,124を交互に配設した例である。
【0031】
次に13は本体であり、基板14、基板14上に立設されたガイドバー15、ガイドバー15の上端部に設けられた支持板16、ガイドバー15に沿って上下摺動移動するスライダ17等によって構成されている。18はねじ軸であり、支持板16に正逆回転可能に設けられ、かつスライダ17に設けられたナット部材19と螺合し、ねじ対偶を形成している。このねじ対偶は通常の三角ねじまたは角ねじであってもよいが、ボールねじとすることが好ましい。
【0032】
20はモータであり、支持板16にブラケット21を介して設けられ、モータプーリ22、ねじ軸18に設けられたプーリ23およびタイミングベルト24を介してねじ軸18を正逆回転させ得るように構成する。モータ20は例えばNCサーボモータとするのが好ましい。25は取付部材であり、スライダ17の下部に設けられ、例えば水平方向に延びる1対の凸条間に、カセット11,12の上端部に設けられた取付部材26の凹溝が係合することにより、カセット11,12の着脱が可能のように形成する。27はクランプ装置であり、位置決め後のカセット11,12を所定位置に固定するためのものである。
【0033】
次にカセット11の構成について説明する。カセット11は、ダイセットを形成する上板28、下板29およびガイドバー30と、上板28を上下動させる作動部材31と、前述の取付部材26とから構成される。すなわち、上板28と下板29とには、例えば金型構成する1対の上型および下型、または打抜型を構成する1対のパンチおよびダイ等が取付けられ、所定の打抜き、曲げ絞り、圧縮その他のプレス加工を行なうことができる。
【0034】
図3および図4は各々図1および図2におけるカセット12を拡大して示す要部正面図および要部側面図であり、同一部分は前記図1および図2と同一の参照符号で示す。図3および図4において、32はXYテーブルであり、取付部材26の下部に設けられ、スライダ17の移動方向(この場合は上下方向)と直交する方向(この場合は水平方向)に移動可能に形成されている。XYテーブル32の駆動手段としては、リニアモータが有効であり、例えば移動方向にNS磁極が交互に設けられた固定子33と、この固定子33の磁界中に設けられたコイルからなる可動子34との組合せによる可動コイル型とすることができるが、逆の組合せの可動磁石型としてもよい。
【0035】
35はホルダであり、前記XYテーブル32の下部に設けられ、例えば高速スピンドルモータのようなモータ36と、このモータ36の主軸に設けられたチャック37とから構成される。38は工具であり、チャック37に着脱可能としてあり、ドリル、エンドミル、砥石その他の回転切削工具とすることができる。なおモータ36を可変速に形成すれば、リーマ、タップ等の低速回転工具の使用も可能である。
【0036】
図5は図3および図4におけるホルダ35の変形例を示す要部正面図である。図5において、ホルダ35はブラケット39を介してXYテーブル32に設けられ、モータ36の軸線が水平面と平行になるように形成されており、その主軸には支持具40を介して、例えば円板状の工具38が取付けられる。このような工具としては、フライスカッタ、溝切りカッタ、砥石等を使用できる。
【0037】
上記の構成により、例えば図1において、例えばフープ状の長尺の被加工材をピッチ送り装置(何れも図示せず)を介して加工ユニット121〜125に順にピッチ送りすると、まず加工ユニット121において、スライダ17の下降に伴ない、カセット11に設けられたパンチおよびダイ(何れも図示せず、以下同じ)により、被加工材に基準となるパイロット孔が加工される。
【0038】
次に加工ユニット122においては、被加工材に設けられたパイロット孔にガイドが係合し、すなわちパイロット孔を基準として、カセット12に設けられた機械加工手段によって所定の機械加工が行なわれる。以下同様にして加工ユニット123〜125において第1のプレス加工、第2の機械加工および第2のプレス加工が順次行なわれるのである。従って被加工材に対する加工を複数工程に分割し、特に機械加工工程を細分割し、それらの複数の加工工程を複数個の加工ユニットによって、好ましくは可能な限り加工時間を均等化することにより、加工に要する時間を短縮し、生産性を向上させ得るのである。
【0039】
上記順送り加工において、スライダ17はモータ20として例えばNCサーボモータを使用することにより制御して移動させられるから、プレス加工は勿論のこと、制御送りが要求される機械加工に対しても充分に対応ができるのである。また機械加工ユニット122,124においては、図3ないし図5に示されるように、工具38はXYテーブル32によって水平面内に移動可能であるから、スライダ17の上下動を加えて3次元的移動が可能であり、工作機械に要求される工具38の移動機能を充分に具備しているのである。
【0040】
すなわち、スライダ17はモータ20によりねじ軸18およびナット部材19を介して迅速な上下動が可能であるから、カセット11に備えられたプレス加工手段を作動させて、所定のプレス加工を行なうことができる。一方、機械加工ユニットの場合には、上記スライダ17の早送りによって、カセット12に備えられた機械加工手段を急速に被加工材の加工部位に接近させ、以後はモータ20による制御送りにより、必要あればXYテーブル32の移動も併せて行ない、所定の機械加工を行なうことができるのである。
【0041】
また加工ユニット121〜125を構成する本体の構成が基本的に共通であり、カセット11,12の交換のみで段取替が可能であるため、順送り加工の工程設定が極めて容易である。従って少量多品種の加工に対しても、段取替による休止時間を大幅に短縮させることができ、稼動効率の向上が可能である。
【0042】
上記の発明の実施の形態においては、基板14および支持板16が水平面と平行に配置され、両者を連結するガイドバー15が垂直方向に設けられたいわゆる竪型のものについて説明したが、基板14および支持板16が垂直面と平行に、およびガイドバー15が水平方向に設けられた、いわゆる横型のものに対しても本発明の適用が可能である。
【0043】
また、スライダ17の移動を案内するガイドバー15は、大型のものまたは剛性を要求されるものについては複数本とするのが好ましいが、1本のものでもよく、場合によっては柱状または梁状に形成し、その側面に沿ってスライダ17が摺動または滑動する構成としてもよい。
【0044】
更に、加工ユニットをプレス加工ユニットと機械加工ユニットとによって形成した例を示したが、プレス加工ユニットの他に、深絞り加工に必要な熱処理加工、表面改質のための表面処理加工、異形状構成部材の積層組立加工等も含め得ると共に、全体の加工ユニットを機械加工ユニットによって形成することもできる。
【0045】
【実施例】
(実施例1)
図6は本発明の順送り加工装置による加工の第1実施例を示す説明図であり、(a)は被加工品を示す斜視図、(b)は被加工材の加工状態を示す要部平面図、(c)〜(f)は夫々被加工材の要部断面図であり、同一部分は前記図12と同一の参照符号で示す。
【0046】
図6に示すように、被加工品51は例えば正方形状の台座部52の中央部に例えば正方形状の凸部53を有すると共に、台座部52の四隅には貫通穴54を有する。
【0047】
このような被加工品51を成形するには、まずフープ状の長尺の被加工材2を図6(b)に示すように矢印方向にピッチPで間欠的にピッチ送りし、第1の加工ユニット(図示せず、以下同じ)において、基準となるべきパイロット孔3を穿設し(プレス加工、機械加工の何れでもよい)、次に第2の加工ユニットにおいて、このパイロット孔3にガイド(加工ユニットに備えてある、以下同じ)を係合させた状態で、凸部53を半抜き加工する。すなわち、被加工材2の厚さ寸法tに対し、パンチにより凸部53の高さ寸法t1 (t1 <t)に相当する深さ寸法の凹部55を成形する。
【0048】
次に第3の加工ユニットにおいて、前記第2の加工ユニットにおけると同様に、パイロット孔3にガイドを係合させた状態で、台座部52を半抜き加工する。
【0049】
更に被加工材2をピッチ送りして、第4の加工ユニットである機械加工ユニットにおいて、台座部52の底面を、凹部55と同一面となるように切削加工する。この場合の切削工具としては、エンドミルを使用してもよいが、平フライスまたは正面フライスのような工具を使用することが好ましい。また、上記切削加工部分が広い場合には、加工工程を複数個に分割し、複数個の機械加工ユニットによって行なうことが、加工タクトを短縮するために好ましい。更に、切削加工を例えば荒加工、中加工、仕上加工のように分割してもよい。
【0050】
そして第5の加工ユニットにおいて、台座部52の四隅に貫通穴54をパンチとダイとによって成形し、最終の第6の加工ユニットにおいて、台座部52の外形抜き加工を行なって加工を完成させるのである。
【0051】
図6においては、台座部52および凸部53の平面への投影輪郭形状が正方形である場合の例について示したが、これに限らず、三角形、長方形、円形、楕円形その他の幾何学的形状のものであっても適用可能であることは勿論である。
【0052】
(実施例2)
図7は本発明の順送り加工装置による加工の第2実施例を示す説明図であり、(a)は被加工品を示す斜視図、(b)〜(d)は夫々被加工材の加工工程における加工状態を示す要部断面図である。図7において、被加工品61は略長方形状の外形部62の中央部に凹部63を有すると共に、四隅には貫通穴64を有する。
【0053】
上記のような被加工品61を成形するには、前記図6におけるものと同様に、被加工材2にまずパイロット孔(図示せず)を順次穿設すると共に、このパイロット孔にガイドを係合させた状態で、第1の加工ユニットにおいて、凹部63を半抜き加工する。これにより被加工材2の上面には凹部63と対応する形状の凸部65が成形される。この加工においては、凹部63を形成すべきパンチを下側に、凸部65を形成すべきダイは上側に配設して行なう。
【0054】
次に第2の加工ユニットにおいて、凸部65を切削加工して、被加工材2の上面を面一(つらいち)に形成し、被加工品61の底面を形成する。そして第3の加工ユニットにおいて、貫通穴64を打抜き成形し、最終の第4の加工ユニットにおいて、外形部62の外形抜き加工を行なって加工を完成させる。この場合、貫通穴64の打抜き成形と外形部62の外形抜き加工とを、同一の加工ユニットによって行なってもよい。
【0055】
(実施例3)
図8は本発明の順送り加工装置による被加工品の第3実施例を示す説明図であり、(a)は斜視図、(b)は縦断面図である。図8において、被加工品71は被加工材である板材から、複数工程の深絞り成形によって有底中空筒状に成形されると共に、一部に横穴72および竪穴73を設けたものである。このような被加工品71は、複数個のプレス加工ユニットと、例えば水平方向の主軸および垂直方向の主軸にドリルを備えた2個の機械加工ユニットとを組合せた順送り加工装置によって成形することができる。なお、被加工品71の軸線と同軸の竪穴73は、プレス加工ユニットにおけるパンチ・ダイによって成形してもよい。
【0056】
(実施例4)
図9は本発明の順送り加工装置による被加工品の第4実施例を示す縦断面図であり、(a)は内溝を有するもの、(b)は外溝を有するものを示す。図9において、被加工品74は複数個のプレス加工ユニットによって、有底中空筒状に成形され、内溝75または外溝76が機械加工ユニットによって形成される。
【0057】
この場合、機械加工ユニットに設けられるカセット12は、前記図3および図4において、工具38としては例えばT溝フライスを使用し、かつXYテーブル32のXY方向の制御駆動により、上記T溝フライスの軸線が被加工品74の軸線の周囲に円軌跡を描くように作動させればよい。
【0058】
(実施例5)
図10は本発明の順送り加工装置による被加工品の第5実施例を示す斜視図であり、(a)は溝を有するもの、(b)は切欠きを有するものを示す。図10において、被加工品77は前記図9に示す被加工品74と同様に複数個のプレス加工ユニットによって、有底中空筒状に成形され、機械加工ユニットにより、溝78または切欠き79が形成されるのである。
【0059】
【発明の効果】
本発明は、以上記述のような構成および作用であるから、下記のような効果を奏し得る。
【0060】
(1)被加工材の順送り加工工程において、複数個の機械加工、またはこれらの機械加工と複数個のプレス加工を含む加工とを、連続して同時に行ない得るため、加工能率が高く、コスト低減が可能である。
【0061】
(2)プレス加工を含む加工により製品とした後に残余の機械加工を行なうものと比較して、加工治具を製作する必要がないのみならず、被加工品の取付け、取外しのための余剰な時間と工数が節減できると共に、寸法精度を向上させ得る。
【0062】
(3)加工ユニットを構成する本体は、プレス加工ユニットと機械加工ユニットに共通して適用可能であり、カセットを交換するのみで段取替えができるため、装置全体の稼動効率の向上が可能である。
【0063】
(4)加工工程を複数個に分割細分化できるため、金型費を大幅に低減させ得ると共に、短時間で部品の立上げができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示す要部正面図である。
【図2】本発明の実施の形態を示す一部断面要部側面図である。
【図3】図1および図2におけるカセット12を拡大して示す要部正面図である。
【図4】図1および図2におけるカセット12を拡大して示す要部側面図である。
【図5】図3および図4におけるホルダ35の変形例を示す要部正面図である。
【図6】本発明の順送り加工装置による加工の第1実施例を示す説明図であり、(a)は被加工品を示す斜視図、(b)は被加工材の加工状態を示す要部平面図、(c)〜(d)は夫々被加工材の要部断面図である。
【図7】本発明の順送り加工装置による加工の第2実施例を示す説明図であり、(a)は被加工品を示す斜視図、(b)〜(d)は夫々被加工材の加工工程における加工状態を示す要部断面図である。
【図8】本発明の順送り加工装置による被加工品の第3実施例を示す説明図であり、(a)は斜視図、(b)は縦断面図である。
【図9】本発明の順送り加工装置による被加工品の第4実施例を示す縦断面図であり、(a)は内溝を有するもの、(b)は外溝を有するものを示す。
【図10】本発明の順送り加工装置による被加工品の第5実施例を示す斜視図であり、(a)は溝を有するもの、(b)は切欠きを有するものを示す。
【図11】本発明の前提である順送り加工装置の例を示す要部斜視図である。
【図12】被加工材の加工状態を示す要部説明図であり、(a)は平面、(b)は断面を示す。
【符号の説明】
11,12 カセット
14 基板
16 支持板
17 スライダ
121〜125 加工ユニット
Claims (8)
- 加工手段を備えたカセットを本体に着脱可能に設けてなる複数個の加工ユニットを、複数の加工工程に対応させて長尺状の被加工材の長手送り方向にmP(mは任意の正の整数、Pは被加工材の送りピッチ)の間隔に配設し、被加工材のピッチ送りに対して前記複数の加工工程を前記複数個の加工ユニットにより順次実施するように構成した順送り加工装置において、
本体を、基板と、この基板と所定距離を隔てて設けられた支持板と、前記基板と前記支持板との間において基板および支持板と直交する方向に移動可能に形成されたスライダと、前記カセットを前記スライダに取り付けてなり、前記スライダを駆動する駆動手段とによって形成し、
加工手段を回転切削工具とし、かつこの回転切削工具を前記スライダの移動方向と直交する方向に移動可能に構成して、前記加工ユニットを機械加工ユニットに形成すると共に、前記スライダの早送り移動を可能とし、被加工材に対して機械加工を連続して行ない得るように構成したことを特徴とする順送り加工装置。 - 加工手段を備えたカセットを本体に着脱可能に設けてなる複数個の加工ユニットを、複数の加工工程に対応させて長尺状の被加工材の長手送り方向にmP(mは任意の正の整数、Pは被加工材の送りピッチ)の間隔に配設し、被加工材のピッチ送りに対して前記複数の加工工程を前記複数個の加工ユニットにより順次実施するように構成した順送り加工装置において、
本体を、基板と、この基板と所定距離を隔てて設けられた支持板と、前記基板と前記支持板との間において基板および支持板と直交する方向に移動可能に形成されたスライダと、前記カセットを前記スライダに取り付けてなり、前記スライダを駆動する駆動手段とによって形成し、
任意の加工ユニットにおける加工手段を回転切削工具とし、かつこの回転切削工具を前記スライダの移動方向と直交する方向に移動可能に構成して、前記加工ユニットを機械加工ユニットに形成すると共に、他の加工ユニットをプレス加工ユニットを含む加工ユニットに形成し、前記スライダの早送り移動を可能とし、被加工材に対して機械加工を連続して行ない得るように構成したことを特徴とする順送り加工装置。 - 基板と支持板とを水平面に平行に、かつスライダを垂直方向に移動可能に形成したことを特徴とする請求項1または2記載の順送り加工装置。
- 駆動手段をサーボモータとねじ対偶とを含む機構によって形成したことを特徴とする請求項1ないし3何れかに記載の順送り加工装置。
- ねじ対偶をボールねじで構成したことを特徴とする請求項4記載の順送り加工装置。
- スライダを基板と支持板との間に設けたガイドバーに沿って摺動するように形成したことを特徴とする請求項1ないし5何れかに記載の順送り加工装置。
- 機械加工ユニットにおけるカセットを、工具を着脱可能に保持しかつ回転させ得るホルダと、このホルダをスライダの移動方向と直交する方向に移動させ得るXYテーブルとによって形成したことを特徴とする請求項1ないし6何れかに記載の順送り加工装置。
- XYテーブルの駆動手段をリニアモータによって形成したことを特徴とする請求項7記載の順送り加工装置。
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