JP4744750B2 - プラスチック成形品及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、全体的若しくは部分的にメッキが施してある回路基板、コネクター、電磁波シールド部品等のプラスチック成形品及びその製造方法に関する。詳しくは、特定状態の成形品の樹脂表面に、直接、無電解メッキ用触媒含有塗料を塗布、乾燥した後、無電解メッキを行うプラスチック成形品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリアリーレンサルファイド等の結晶性熱可塑性樹脂材料は、その優れた耐薬品性、耐熱性、電気的特性、機械的特性等から、電気・電子分野や自動車分野等を中心として、幅広い産業分野で使用されている。
しかし、例えば、ポリアリーレンサルファイドは、その優れた耐薬品性ゆえに成形品樹脂表面がエッチングされ難く、一般的にはメッキ加工に対して不適である。
そこで、ポリアリーレンサルファイド樹脂材料のメッキを可能にするためには、予め、材料コンパウンド時に、炭酸カルシウム等、硫酸や塩酸等の化学薬品に浸蝕され易い物質を多量に添加した上、化学処理を行う必要がある。ところが、前記のような物質をポリアリーレンサルファイド樹脂材料に多量に添加した場合、ポリアリーレンサルファイド樹脂材料が本来有する優れた機械的特性を大幅に低下させるという問題を生じる。特に、使用する部位が、強度や靭性等の機械的特性を要求される機構部品などの場合には問題を生じる場合が多く、使用用途が限定されてしまう。
あるいはポリアリーレンサルファイド樹脂成形品表面に対してコロナ放電処理、フレーム(火炎)処理、液体ホーニング処理等の前処理を施し、成形品表面に凹凸を形成し、機械的アンカー効果を作用させる処理では巨額の設備投資を行う必要がある。
このため、簡便で、かつ高いメッキ被膜密着性が得られる方法が求められていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ポリアリーレンサルファイド樹脂材料に関して、メッキを可能にするための過剰な添加剤を不要とし、従ってポリアリーレンサルファィド樹脂が本来有する優れた各種特性を犠牲にすることなく、全面メッキのみならず、部分的にメッキをすることを可能にならしめ、単なる装飾分野にとどまらず、電気回路機能や電磁波シールド性能を有する部品の製品化にも適用でき、しかも密着性にも優れ、冷熱衝撃サイクル試験等の過酷な環境劣化試験においても高いメッキ品質が確保でき、製品化が容易なプラスチック成形品及びその製造方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、かかる状況に鑑み、ポリアリーレンサルファイド成形品の表面にメッキ被膜を形成する際に、密着強度の優れたメッキ被膜形成を実現するため、種々の方法を検索した結果、0〜90℃の低温金型にてポリアリーレンサルファイド樹脂を成形して得られた、表面の結晶性の低い成形品を使用し、成形品の全面を露出した状態、若しくは所定のパターンが露出するようにマスキングを行った状態にて、更に活性金属粒子を含有する特定のプライマー塗料を塗装・乾燥後、メッキを行うことにより、ポリアリーレンサルファイド樹脂材料の各種特性を何ら損なうことなく、密着性に優れ、冷熱衝撃サイクル試験等の過酷な環境劣化試験においても高いメッキ品質のものが容易に製品化できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち本発明の第1は、ポリアリーレンサルファイド(A)を溶融状態で金型に充填して、冷結晶化の発熱量が、成形品のDSC測定において5.0J/g−ポリアリーレンサルファイド以上になるように固化させて得られた成形品に対して、必要に応じて樹脂表面に所定のパターンが形成されるようにマスキングを行った状態で、樹脂表面に無電解メッキ用触媒含有塗料を塗布、乾燥した後、無電解メッキを行うプラスチック成形品の製造方法を提供する。
本発明の第2は、冷結晶化の発熱量が10.0J/g−ポリアリーレンサルファイド以上である本発明の第1記載のプラスチック成形品の製造方法を提供する。
本発明の第3は、ポリアリーレンサルファイド(A)を溶融状態で0〜90℃の金型に充填して得られた成形品に対して、必要に応じて樹脂表面に所定のパターンが形成されるようにマスキングを行った状態で、樹脂表面に無電解メッキ用触媒含有塗料を塗布、乾燥した後、無電解メッキを行うプラスチック成形品の製造方法を提供する。
本発明の第4は、ポリアリーレンサルファイド(A)が充填剤を含む本発明の第1〜3のいずれかに記載のプラスチック成形品の製造方法を提供する。
本発明の第5は、無電解メッキ用触媒が、鉄、ニッケル、コバルト、銅、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスミウム、イリジウム、プラチナ及び金からなる群から選ばれる1種以上である本発明の第1〜4のいずれかに記載のプラスチック成形品の製造方法を提供する。
本発明の第6は、無電解メッキ用触媒含有塗料が、ウレタン系若しくはアクリル系塗料である本発明の第1〜5のいずれかに記載のプラスチック成形品の製造方法。
本発明の第7は、本発明の第1〜6のいずれかに記載の製造方法により得られたプラスチック成形品を提供する。
本発明の第8は、電気回路及び/又は電磁波シールド層の形成された本発明の第7に記載のプラスチック成形品を提供する。
本発明の第9は、電気・電子用コネクター、光通信用光リンク、電子制御ユニット(ECU)、放電灯昇電圧装置、携帯電話、携帯用通信端末装置に使用される本発明の第7又は8に記載のプラスチック成形品を提供する。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられるポリアリーレンサルファイド(A)は、繰返し単位としてアリーレンサルファイド基:−(Ar−S)−(但し、Arはアリーレン基を表す。)で主として構成されたものである。アリーレン基としては、例えば、p−フェニレン基、m−フェニレン基、o−フェニレン基、置換フェニレン基、p,p’−ジフェニレンスルフォン基、p,p’−ビフェニレン基、p,p’−ジフェニレンエーテル基、p,p’−ジフェニレンカルボニル基、ナフタレン基などが使用できる。
この場合、前記のアリーレン基から構成されるアリーレンサルファイド基の中で、同一の繰返し単位を用いたポリマー、すなわちホモポリマーの他に、組成物の加工性という点から、異種繰返し単位を含んだコポリマーが好ましい場合もある。
【0007】
ホモポリマーとしては、アリーレン基としてp−フェニレン基を用いた、p−フェニレンサルファイド基を繰返し単位とするものが特に好ましく用いられる。
又、コポリマーとしては、前記のアリーレンサルファイド基の中で、相異なる2種以上の組み合わせが使用できるが、中でもp−フェニレンサルファイド基とm−フェニレンサルファイド基を含む組み合わせが特に好ましく用いられる。この中で、p−フェニレンサルファイド基を70モル%以上、好ましくは80モル%以上含むものが、耐熱性、成形性、機械的特性等の物性上の点から適当である。
又、これらのポリマーの中で、2官能性ハロゲン芳香族化合物を主体とするモノマーから縮重合によって得られる実質的に直鎖状構造の高分子量ポリマーが、特に好ましく使用できるが、直鎖状構造のポリアリーレンサルファイド以外にも、縮重合させるときに、3個以上のハロゲン置換基を有するポリハロ芳香族化合物等のモノマーを少量用いて、部分的に分岐構造または架橋構造を形成させたポリマーも使用できるし、低分子量の直鎖状構造ポリマーを酸素又は酸化剤存在下、高温で加熱して、酸化架橋又は熱架橋により溶融粘度を上昇させ、成形加工性を改良したポリマーも使用可能である。
【0008】
又、本発明に用いるポリアリーレンサルファイド(A)は、前記直鎖状ポリアリーレンサルファイド(310℃、ズリ速度1200sec-1における粘度が10〜300Pa・sec)を主体(99〜70重量%、好ましくは98〜75重量%)とし、比較的高粘度(300〜3000Pa・sec、好ましくは500〜2000Pa・sec)の分岐又は架橋ポリアリーレンサルファイド樹脂を一部(1〜30重量%、好ましくは2〜25重量%)とする混合系も好適である。
【0009】
又、ポリアリーレンサルファイドは、重合後、酸洗浄、熱水洗浄、有機溶剤洗浄(或いはこれらの組合せ)を行って副生不純物等を除去精製したものが好ましい。
【0010】
ポリアリーレンサルファイドには、機械的強度、耐熱性、寸法安定性(耐変形、そり)、電気的性質等の性能改良のため各種の強化材を配合することもでき、これには目的に応じて、繊維状、粉粒状、板状の充填剤が用いられる。
繊維状強化材としては、ガラス繊維、アスベスト繊維、カーボン繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化ケイ素繊維、硼素繊維、チタン酸カリウム繊維、さらにステンレス、アルミ、チタン、銅、真鍮等金属の繊維状物などの無機質繊維状物質が挙げられる。特に代表的な繊維状充填材はガラス繊維、又はカーボン繊維である。なお、ポリアミド、フッ素樹脂、アクリル樹脂などの高融点有機質繊維物質も使用することができる。
一方、粉粒状強化材としてはカーボンブラック、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、カオリン、タルク、クレー、珪藻土、ウォラストナイ卜のごとき珪酸塩、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナのごとき金属の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムのごとき金属の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムのごとき金属の硫酸塩、その他炭化珪素、窒化珪素、窒化硼素、各種金属粉末が挙げられる。
又、板状強化材としてはマイカ、ガラスフレーク、各種の金属箔が挙げられる。
これらの強化材は一種又は二種以上併用することができる。
これらの強化材の使用にあたっては必要ならば本発明の効果を阻害しない範囲で収束剤又は表面処理剤を使用してもかまわない。この例を示せば、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物等の官能性化合物である。これ等の化合物はあらかじめ表面処理又は収束処理を施して用いるか、又は材料調製の際同時に添加してもよい。
強化材の使用量はポリアリーレンサルファイド100重量部あたり5〜300重量部が好ましく、さらに好ましくは50〜200重量部が用いられる。
又、本発明で用いるポリアリーレンサルファイドには、本発明の効果を損なわない範囲で、バリ等を改良する目的としてシラン化合物を配合することができる。シラン化合物としては、ビニルシラン、メタクリロキシシラン、エポキシシラン、アミノシラン、メルカプトシラン等の各種タイプが含まれ、例えば、ビニルトリクロルシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどが例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0011】
ポリアリーレンサルファイドには、その目的に応じて、熱可塑性樹脂を補助的に少量併用することも可能である。熱可塑性樹脂としては、高温において安定な熱可塑性樹脂であれば、いずれのものでもよい。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の芳香族ジカルボン酸とジオールあるいはオキシカルボン酸等からなる芳香族ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ABS、ポリフェニレンオキサイド、ポリアルキルアクリレート、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、フッ素樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン共重合体、グリシジルメタクレレート/オレフィン共重合体等を挙げることができる。又、これらの熱可塑性樹脂は2種以上混合して使用することもできる。
【0012】
更に、ポリアリーレンサルファイドには、一般に熱可塑性樹脂に添加される公知の樹脂添加剤、すなわち難燃剤、染・顔料等の着色剤、潤滑剤、結晶化促進剤、結晶核剤、各種酸化防止剤、熱安定剤、耐候性安定剤等も要求性能に応じ適宜添加することができる。
【0013】
ポリアリーレンサルファイドは、必要に応じて上記強化材、熱可塑性樹脂、樹脂添加剤と共に、一般的な設備と方法により、樹脂組成物に調製される。一般的には必要な成分を混合し、1軸又は2軸の押出機を使用して溶融混練し、押出して成形用ペレットとする。
本発明では、上記強化材、熱可塑性樹脂、樹脂添加剤の配合されたポリアリーレンサルファイドもポリアリーレンサルファイド(A)と表す。
【0014】
本発明に係る成形品は、上記のごときポリアリーレンサルファイド(A)を、成形品のDSC測定において冷結晶化の発熱量が5.0J/g−ポリアリーレンサルファイド以上、好ましくは10.0J/g−ポリアリーレンサルファイド以上になるように、溶融状態で0〜95℃、好ましくは60〜95℃の金型に充填して固化させるように成形する。成形品の内部の樹脂は無定形であっても結晶型であっても、両者の混在状態であってもよい。金型温度が100℃以上では、無電解メッキ被膜の密着性の悪いものしか得られず、0℃以下では特殊な金型冷却装置が必要になるため、コストアップになり実用性の点で良くない。
【0015】
上記成形品の成形方法としては、押出成形、射出成形、圧縮成形、真空成形、吹込成形、発泡成形の何れであってもよい。
【0016】
上記成形品は、塗装膜の密着強度を向上させるための一般的な前処理を行っても、行わなくてもよい。前処理としては、化学的エッチング処理、サンドブラスト、ショットブラスト、液体ホーニング、プラズマ処理、フレーム(火炎)処理、コロナ放電処理等が挙げられる。
【0017】
得られた成形品は、そのまま、又は、必要に応じて樹脂表面に所定の電気・電子回路等のパターンが形成されるようにマスキングを行った状態で、樹脂表面に無電解メッキ用触媒含有塗料を塗布し、乾燥した後、無電解メッキを施す。
マスキングは、マスキング剤の塗布、マスキングテープの貼り付け等によって行うことができる。また、マスキングテープとしては、一般用マスキングテープが使用できる。
【0018】
無電解メッキ用触媒含有塗料は、塗装後に形成される塗膜がポリウレタン系若しくはポリアクリル系樹脂となるもので、熱可塑性と熱硬化性を問わず、又、変性ポリウレタン樹脂を塗装として形成するものをも含むものであり、2液型と1液型が存在し、その何れもが本発明に使用される。2液型塗料とはポリオールより成る塗料液と、多官能性イソシアネート化合物より成る硬化剤とを塗装時に混合して塗布し、ポリウレタン系樹脂塗膜を形成するもので、この場合塗料液中のポリオールとしては、一般にはポリメリックポリオールが用いられ、例えば主鎖にエステル結合を有するポリエステル系ポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、主鎖が−C−C−結合から成るアクリルポリオール、主鎖にエーテル結合を有するポリエーテルポリオール、エポキシ基を有するエポキシポリオール等、水酸基を有するポリマーが使用される。又、2液型の場合の硬化剤としては、多官能性のイソシアネート化合物のアダクト、ビューレット又はイソシアヌレートより成り、例えばメチレンビス(フェニルイソシアネート)(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、へキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等のジイソシアネート化合物又はこれらの多量体より成るものであり、塗装前に前記のポリオールを含む塗料液と混合して使用され、塗装後反応硬化して、ポリウレタン系樹脂の塗膜を形成するものである。
一方、1液型とは、ポリマーポリオールと多官能性イソシアネートを予め反応させて実質上ポリオールの水酸基の全てが反応してウレタン結合を形成し、なお官能性基のイソシアネート基が残存したポリウレタン系ポリマーより成るもので、1液として用い、湿気によって反応硬化してポリウレタン系樹脂塗膜を形成するものである。
本発明では上記2液型、1液型何れの塗料を用いても有効であるが特に1液型が望ましい。
【0019】
無電解メッキ用触媒としては、通常使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、鉄、ニッケル、コバルト、銅、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスミウム、イリジウム、プラチナ及び金からなる群から選ばれる1以上が使用できる。これらの活性金属触媒は微粒子状で上記塗料中に分散される。
【0020】
無電解メッキ用触媒含有塗料は、一般には有機溶媒に溶解又は懸濁分散された状態である。溶剤としては活性水素を持たないものが好ましく、上記成分の種類、溶解性、分散性、乾燥速度等によっても異なるが、芳香族系炭化水素、脂肪族系炭化水素等の炭化水素系溶剤や脂肪族系エステル等の溶剤を主とするものが好ましい。又、ソルベントナフサ、ミネラルスピリット等の石油留分も使用できる。これは必要に応じて適宜混合使用でき、混合の一例を示すとトルエン50〜90重量%、キシレン50〜10重量%である。
目的とする塗膜の性状(硬度、伸び、強度、耐熱性、耐化学薬品性等)は、使用する塗料の選択(例えば、イソシアネートの種類、ポリオールの種類、分子量、官能基密度、成分比率、溶剤の種類等)によって調節することができる。
【0021】
無電解メッキ用触媒含有塗料には、更に必要に応じ、顔料、安定剤、チクソトロピー性付与剤、硬化触媒、静電塗装のための各種導電性調節剤、その他所望の特性を付与するための添加剤を配合することができる。
かかる添加剤は2液型の場合はポリオール液に添加して使用することが好ましい。本発明に使用する上記塗料の多くは市販品より選択使用することが出来、又、目的に応じ適宜調節すればよい。
【0022】
無電解メッキ用触媒含有塗料の塗装は、前述の如き塗料を用いて成形品に通常行われるような手法で、例えばハケ塗り、浸漬塗り、ローラー塗り、吹付塗り、エアレススプレー、静電塗装等、任意の方法で実施することができ、特殊な表面処理を施すことなく簡単に1回の塗装で密着強度の優れた、良好な表面状態と色調を有する塗膜が形成される。必要ならば、塗装前又は後に成形品の加熱処理、温水処理或いは特定の化合物を含有した溶液での浸漬処理或いは拭取処理、蒸気洗浄処理等を施すことも出来る。特に塗装前のアセトン、トルエン、トリクロロエチレン等での表面清浄化は本発明による効果を発現させる上で有効である。又、塗布後焼付け処理して塗膜の形成を促進してもよい。
【0023】
次に、表面に無電解メッキ用触媒を付与した成形品に、無電解メッキを施して、無電解メッキ被膜を設ける。この際、マスキングを施した場合には、マスキング部分には無電解メッキ被膜が形成されず、所望の回路が形成される。
【0024】
無電解メッキ浴としては、所望の金属の塩、錯化剤、還元剤、pH調節剤、安定剤などを含む、従来のものが使用できる。
無電解メッキ被膜の厚みは、目的により異なるが、例えば50μm以下、好ましくは5μm以下である。
無電解メッキ被膜は、必要に応じて重ねて設けることもできる。例えば、電磁波シールド用には、シールド効果の高い銅メッキを用いることができが、銅メッキ被膜は耐食性に劣るため、無電解ニッケル被膜をその上に、薄く重ねて設けてもよい。
【0025】
無電解メッキ処理の施されたプラスチック成形品は、水洗、乾燥され、マスキング層を除去し、無電解メッキ被膜を有するプラスチック成形品が得られる。水洗、乾燥工程と、マスキング除去工程は何れが先であっても構わない。
【0026】
このようにして、所望の電気回路及び/又は電磁波シールド層の形成されたプラスチック成形品が得られ、これらは、電気・電子用コネクター、光通信用光リンク、電子制御ユニット(ECU)、放電灯昇電圧装置、携帯電話、携帯用通信端末装置の部品などに使用される。
【0027】
本発明は、例えばポリフェニレンサルファイドのようなポリアリーレンサルファイド(A)を冷結晶化の発熱量が5.0J/g−ポリアリーレンサルファイド以上、さらに好ましくは10.0J/g−ポリアリーレンサルファイド以上になるように、溶融状態で0〜90℃の金型に充填して固化させて得られた成形品に、必要に応じて樹脂表面に所定のパターンが形成されるようにマスキングを行った上で、樹脂表面に無電解メッキ用触媒含有塗料を塗布、乾燥した後、無電解メッキを行うプラスチック成形品の製造方法に関するものである。
【0028】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例において、メッキ被膜密着性の評価に用いた方法は以下の通りである。
(1)冷結晶化時の発熱量
測定機器:PERKIN ELMER社製熱示差走査計DSC7
サンプル:成形品(表面より)10±1mg
測定温度範囲:50〜150℃
昇温速度:10℃/分
雰囲気:窒素
上記条件で100〜130℃の間に現れる結晶化ピークの発熱量を測定した。
測定後、発熱量はポリアリーレンサルファイド樹脂1gあたりの発熱量に換算した。(表1では単に発熱量と略記している。)
(2)初期密着性(セロハンテープ剥離テスト)
試験片のメッキ部分に市販のセロハンテープを貼り付け、その上から指で良くこすって試験片表面に密着させた後、セロハンテープの一端を指でつまんで一挙にテープを剥がして、メッキ部分の剥離状況を観察する。
結果の判定は、○(剥離せず)、△(一部に剥離)、×(著しい剥離)の評価基準を用いて行った。
(3)耐熱性試験
試験片を、100℃に設定された熱風循環槽の中に20日間放置後、取り出し、室温に1日間放置した後に、(2)記載の初期密着性試験を同様に行い、メッキ被膜の密着性を評価した。
(4)耐湿潤性試験
試験片を50℃、相対湿度95%に設定された恒温恒湿槽中に20日間放置後、取り出し、室温に1日間放置した後に、(2)記載の初期密着性試験を同様に行い、メッキ被膜の密着性を評価した。
(5)耐冷熱性試験
試験片を下記冷熱サイクル条件に設定した冷熱衝撃試験槽の中に放置し、所定のサイクルが終了した時点で取り出し、室温に1日間放置した後に、(2)記載の初期密着性試験を同様に行い、メッキ被膜の密着性を評価した。
冷熱サイクル条件:−30℃×0.5h〜120℃×0.5h/サイクルを100サイクル行う。
【0029】
(実施例1)
射出成形機を用いて、ガラス繊維30重量%を含有するポリフェニレンサルファイド樹脂PPS-1を、60℃の金型に充填し、縦10cm×横10cm×厚み3mmの平板状の樹脂成形品を作成した。
樹脂成形品表面を、イソプロピルアルコールを染み込ませたウエスを使用して軽くワイピング脱脂した後、銀を含有する一液型ウレタン塗料を塗装し、熱風循環乾燥装置を使用して80℃で30分問乾燥した。この時の乾燥膜厚は10〜15μmであった。その後、無電解銅メッキを約2μm行い、上記評価を行った。
結果を表1に示す。
【0030】
(実施例2〜5及び比較例1〜3)
樹脂材料、金型温度を表1に示すように変えた他は、実施例1と同様にして評価サンプルを得て、上記評価を行った。結果を表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
PPS-1:ガラス繊維30重量%含有ポリフェニレンサルファイド樹脂
PPS-2:ガラス繊維40重量%含有ポリフェニレンサルファイド樹脂
PPS-3:ガラス繊維33重量%及び炭酸カルシウム33重量%含有ポリフェニレンサルファイド樹脂
【0033】
【発明の効果】
本発明によれば、メッキ不適合なポリアリーレンサルファイドからなるプラスチック成形品の全面を露出した状態、若しくは所定のパターンが露出するようにマスキングを行った状態で、活性金属粒子を含有する塗料を塗装・乾燥後、メッキを行うことにより、樹脂材料の各種特性を何等損なうことなく、樹脂成形品上に全面メッキあるいは所定パターンの部分メッキができるとともに、過酷な環境に曝されても優れたメッキ品質を有するので、長期に渡って信頼性の高い製品が提供可能になる。
従って、本発明の樹脂成形品は、種々の回路基板、コネクター、電磁波シールド部品、装飾メッキ部品などに好適に使用し得るものであるが、特に、電気・電子用コネクター、光通信用リンク、電子制御ユニット(ECU)、放電灯昇電圧装置、携帯電話、携帯用通信端末装置等の構成部品で、電磁波シールド性能が求められるプラスチック部品に更に好適に使用し得る。
Claims (9)
- ポリアリーレンサルファイド(A)を溶融状態で金型に充填して、冷結晶化の発熱量が、成形品のDSC測定において5.0J/g−ポリアリーレンサルファイド以上になるように固化させて得られた成形品に対して、必要に応じて樹脂表面に所定のパターンが形成されるようにマスキングを行った状態で、樹脂表面に無電解メッキ用触媒含有塗料を塗布、乾燥した後、無電解メッキを行うプラスチック成形品の製造方法。
- 冷結晶化の発熱量が10.0J/g−ポリアリーレンサルファイド以上である請求項1記載のプラスチック成形品の製造方法。
- ポリアリーレンサルファイド(A)を溶融状態で0〜90℃の金型に充填して得られた成形品に対して、必要に応じて樹脂表面に所定のパターンが形成されるようにマスキングを行った状態で、樹脂表面に無電解メッキ用触媒含有塗料を塗布、乾燥した後、無電解メッキを行うプラスチック成形品の製造方法。
- ポリアリーレンサルファイド(A)が充填剤を含む請求項1〜3のいずれかに記載のプラスチック成形品の製造方法。
- 無電解メッキ用触媒が、鉄、ニッケル、コバルト、銅、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスミウム、イリジウム、プラチナ及び金からなる群から選ばれる1種以上である請求項1〜4のいずれかに記載のプラスチック成形品の製造方法。
- 無電解メッキ用触媒含有塗料が、ウレタン系若しくはアクリル系塗料である請求項1〜5のいずれかに記載のプラスチック成形品の製造方法。
- 請求項1〜6の何れか1項記載の製造方法により得られたプラスチック成形品。
- 電気回路及び/又は電磁波シールド層の形成された請求項7に記載のプラスチック成形品。
- 電気・電子用コネクター、光通信用光リンク、電子制御ユニット(ECU)、放電灯昇電圧装置、携帯電話、携帯用通信端末装置に使用される請求項7又は8に記載のプラスチック成形品。
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