JP4737439B2 - 卵加工食品 - Google Patents

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Description

本発明は、工業的に製造できる卵加工食品であって、熟練したコックが焼成するオムレツのように内部にペースト状の具を有する卵加工食品及びその製造方法に関する。
熟練したコックが作るプレーンオムレツは、加熱凝固した卵の薄皮の内部に、凝固するまでに至っていないペースト状の半熟卵が包まれ、滑らかな外観を有する扁平なラグビーボール形のものである。このプレーンオムレツでは、卵の薄皮にナイフで切れ目を入れるとペースト状の半熟卵が流れ出す。オムレツには、プレーンオムレツの他に、トマトソースやクリームソースのようなペースト状の具を包み込んだものもあるが、これらも卵の薄皮に切れ目を入れるとペースト状の具が流れ出す。
このようにペースト状の具を包み込んだオムレツの製造においては、卵の薄皮にナイフで切れ目を入れるとペースト状の具が流れ出すが、皿に盛り付けただけではペースト状の具が流れ出さないように、オムレツ表面全面に卵の薄皮を均一に形成することが必要となり、そのためには、卵液を入れたフライパンを動かしながら、鍋底の曲面で形を整えながら焼成するという熟練した技術が必要となる。そのため、ペースト状の具を包み込んだオムレツは、工業的に大量生産することができず、コンビニエンスストアやスーパー等で販売する弁当のおかずや惣菜等として提供することが難しい。それ故、これら弁当あるいは惣菜向けには、卵液を焼成容器に注入し、ペースト状の具は入れることなく、容器の形状に卵液を加熱凝固させる方法がとられている。
また、オムレツを工業的に焼成容器を用いて製造する方法としては、一対の焼成容器を用意し、それぞれの焼成容器で卵液を加熱して半生状態とし、そのうちの一方に味付けライスをのせ、これらを重ね合わせて一体に成形する方法が提案されている(特許文献1)。
また、一対の焼成容器を用いて一体とした具入り焼成体を、さらに別の卵液を入れた焼成容器内に入れ、加熱成形する方法が提案されている(特許文献2)。
しかしながら、このような従来の方法では、卵の薄皮の内部にペースト状の具を保持させるのは困難である。例えば、特許文献1に記載の方法において、味付けライスに代えて、半熟卵様食品やソース類等のペースト状の具を用いると、一対の焼成容器で形成した焼成体を重ね合わせた継ぎ目からペースト状の具が流れ出し易いため、ペースト状の具を少量しか充填できないという問題がある。更に、一対の焼成体を重ね合わせることによりオムレツの側周に生じる継ぎ目が外観的に好ましくないという問題もある。
特許文献2に記載の方法によれば、かかる継ぎ目は観察されないが、焼成容器が余計に必要とされ、また、具を包み込む卵の皮を薄く形成することができないという問題がある。
特開昭60−192558号公報 特許2573846号公報
上述した従来技術の問題に対し、本発明は、熟練したコックが焼成するオムレツのように卵の薄皮の内部にペースト状の具を有し、さらには液状の具を有する場合でも、外観の優れた卵加工食品を工業的に有利に提供できるようにすることを目的とする。
本発明者等は、卵混合液を一対の容器で加熱し、その内の一方に具を入れ、双方の容器を重ね合わせることにより卵加工食品を製造するにあたり、卵混合液として特定の割合で含気させたものを用いる等により、卵混合液全体が加熱凝固する前にペースト状乃至液状の流動性を有する具を卵混合液に投入したときに、その具が卵混合液中に沈むようにすると、双方の容器を重ね合わせることによる焼成体の継ぎ目を卵加工食品の底部側に偏らせることができ、かつ内部に流動性を有する具を十分な量で保持させられること、また、加熱時に単一の容器を用いても、内部に流動性を有する具を十分な量で保持した卵加工品を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、卵混合液の加熱凝固物からなる外層の内部に一部又は全部が流動性を有する具を含んでなる卵加工食品であって、側周部に上部外層と下部外層との継ぎ目を有し、該継ぎ目が、卵加工食品の底面から、卵加工食品の1/2厚よりも底面側に位置する卵加工食品を提供する。
また、本発明は、卵混合液の加熱凝固物からなる外層の内部に一部又は全部が流動性を有する具を含んでなる卵加工食品であって、外層が多孔質状組織を有する卵加工食品を提供し、その製造方法として、含気させた卵混合液を容器に注入し、卵混合液を加熱して部分凝固させ、該卵混合液内に一部又は全部が流動性を有する具を投入し、さらに卵混合液を加熱し多孔質状に凝固させる卵加工食品の製造方法を提供する。
本発明の卵加工食品は、工業的に製造することができ、かつ、熟練したコックが焼成するオムレツのように具がペースト状であっても、あるいは液状であっても、それがオムレツ表面の切れ目から流れ出すほど十分な量で保持し、側周部の焼成体の継ぎ目も目立たない。
したがって、本発明によれば、熟練したコックが焼成するような優れた外観を有し、ペースト状乃至液状の流動性を有する具を内部に有するオムレツその他の卵加工食品を、コンビニエンスストア、スーパー、外食産業等に大量に安価に提供することが可能となる。
以下、図面を参照しつつ、本発明を詳細に説明する。なお、各図中、同一符号は同一又は同等の構成要素を表している。また、特にことわりのない限り「部」は質量部を意味し、「%」は質量%を意味する。
本発明において、卵加工食品とは、卵混合液の加熱凝固物からなる外層の内部に一部又は全部が流動性を有する具を含んだ卵焼き等をいい、卵焼きの例としては、洋風のいわゆるオムレツや中華風の芙蓉蟹等が挙げられる。また、形状の点からは、図1に示すような一般的オムレツが呈するラグビーボール型の卵加工食品1A、図2に示すような直方体型の卵加工食品1B、図3に示すような半球型の卵加工食品1C等を含む。これらの図中、符号2は卵混合液が加熱凝固した外層、3はペースト状の具、4は上部外層2aと下部外層2bの継ぎ目を示している。
本発明の卵加工食品において、外層2を形成する卵混合液は、液卵を主成分とし、必要により種々の調味成分、添加剤、清水等を添加したものである。ここで、液卵としては、殻付生卵を割卵して溶きほぐして調製した生液全卵、殻付生卵を割卵して卵黄と卵白を分離してこれらをそれぞれ溶きほぐして調製した生液卵黄、生液卵白及びこれらの混合物、並びに乾燥卵を乾燥前の液卵の水分含量となるように水戻ししたもの等を使用することができる。また、本発明において液卵は、卵の調理特性である加熱凝固性能を有するものであればよく、アルコール抽出法や超臨界二酸化炭素抽出法等により脂質やコレステロールを低減処理した液卵、バッチ式殺菌タンクやプレート式熱交換機やジュール加熱装置等で殺菌処理した液卵、脱塩処理した液卵等を使用することができる。
液卵に添加する調味成分としては、例えば、牛乳やバター等の乳製品、カツオやコンブ等の動植物から抽出したエキス、醤油や食塩やグルタミン酸ナトリウム等の調味料、甘味料等をあげることができる。また、添加剤として、グアーガム、カラギーナン、キサンタンガム等の増粘多糖類やゼラチン等の増粘剤、乳蛋白分解物や大豆蛋白分解物等の蛋白分解物等をあげることができる。これにより、含気させた状態を長時間保持させることが可能となる。この他、添加剤としては、食酢やクエン酸等のpH調整剤等の品質改良剤、着色料、保存料等も適宜含有することができる。
卵混合液における液卵の含有量は、製造する卵加工食品の種類に応じて決めればよいが、適度な食感とする点から、生換算で好ましくは50〜100%、より好ましくは60〜90%である。
また、外層2が有する多孔質状組織とは、図4に示すように、孔の形状を問わず、無数の孔からなる組織をいう。なお、同図は、図1のようなオムレツ1Aを焼成後室温に1時間放置した後の品温20℃におけるオムレツ中央側周部分の外層組織の断面写真であり、ここで観察される無数の孔の大きさは、オムレツの焼成直後の熱い状態に比して縮小している。
最終的製品としての卵加工食品の外層2の気孔率(即ち、組織全体に占める孔の容積の割合)は10〜50%とすることが好ましい。外層2の気孔率を10%以上とすることにより、卵加工食品の内部に多くの具を保持することが可能となり、また、上部外層と下部外層の継ぎ目を卵加工食品の底面側に偏らせることが可能となる。また、卵混合液の配合や加熱条件にもよるが、卵混合液の含気率が50%以下であれば、卵混合液の含気率が高くなるにつれて得られる外層の気孔率も高くなる傾向があり、卵混合液の含気率が50%を超えると、加熱凝固時に気泡が潰れたりするため、卵混合液の含気率によらず外層の気孔率は略一定となる。この場合の気孔率は、卵混合液の組成にもよるが、大凡50%以下となる。
ここで、外層2の気孔率は次のようにして測定することができる。まず、卵加工食品の外層の多孔質組織(品温20℃)を5mm角にカットしたもの約20gを、メスシリンダー(100mL容量)に入れた水60mLに投入し、水面変化から外層のカット品の容積V1を測定する。次に、外層のカット品を投入したメスシリンダーを真空乾燥機(東京理科器械社製、VOS−450D)に入れ、真空度が70mmHg以上となるまで脱気処理を行い、外層のカット品の多孔質状組織の孔内部に水を含浸させる。そして、そのときの水面変化から外層の孔の容積V2を測定し、次式
気孔率(%)=V2/V1×100
により、気孔率を求める。
なお、外層2の気孔率は、外層2を形成する卵混合液の含気率よりもやや低くなるので、卵混合液の含気率は後述するように20〜80%とすることが好ましい。
外層2が多孔質状組織を有する本発明の卵加工食品は、後述する製法により、上部外層2aと下部外層2bに継ぎ目4が観察される場合には、その継ぎ目4が卵加工食品の底面5から、卵加工食品の1/2厚までの高さ、より好ましくは1/3厚までの高さに位置し、あるいは製法によっては、継ぎ目が観察されないものとなっている。このように、卵加工食品自体には継ぎ目4が存在する場合でも、継ぎ目4の位置を底面5側に偏らせることにより、卵加工食品を皿に盛りつけた状態では継ぎ目4が目立たず、外観が向上する。
一方、一部又は全部が流動性を有する具3とは、全てがペースト状乃至液状の具や、ペースト状乃至液状の具に、肉、野菜等の小片の固体物が含まれている具である。また、具3は、この流動性を少なくとも食するに適した温度、好ましくは45〜75℃、より好ましくは55〜65℃において備えているようにする。このような具の具体例としては、特許2946503号公報に記載された半熟卵様卵加工食品、トマトソース、デミグラスソース、クリームソース、チーズソース、ミートソース等のソース類、煮物、中華あん等をあげることができる。
具3の流動性は、KO式ボストウィック粘度計(深谷精機社製)による粘度の測定値として評価することができる。具体的には、KO式ボストウィック粘度計の試料投入部に所定の温度(例えば品温60℃)の試料を満杯量充填し、仕切り板をはね上げてから、30秒後の試料流出先端までの距離を測定した値として評価できる。この測定値は、数値が大きい程、流動性があることを意味する。本発明においては、具の流動性は、好ましくは3cm以上、より好ましくは5cm以上、更に好ましくは7cm以上である。流動性が3cmを下回ると、卵加工食品の表面に切れ目を入れても具が流れ出難い。反対に、過度に流動性が大きいと消費者の嗜好に適合しなくなるので、好ましくは30cm以下である。
具全体の卵加工食品全体に占める割合は、好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上である。これにより、卵加工食品の表面に切れ目を入れると半熟卵様卵加工食品やソース類等の具が流れ出し、熟練したコックが作るオムレツと同様の美観と美味しさを呈するものとなる。なお、具の割合が多すぎると製造し難いことから、具全体の割合は、卵加工食品全体に対して、好ましくは70%以下、より好ましくは60%以下である。
また、具全体の卵加工食品全体に占める割合は、以下の方法で計測することができる。まず、卵加工食品の上面の略中心を通るようにして、卵加工食品を切断する。次に、切断面から、内部に包み込まれている具を、外層を削りとらないように丁寧に掻き出し、得られた具の質量を計測する。そして、卵加工食品全体の質量に占める具の割合(質量%)を算出する。また、具から肉、野菜等の小片の固体物を分けて同様に計測することにより、流動性部分が卵加工食品全体に占める割合を算出する。
外層2が多孔質状組織を有する卵加工食品は、次のように製造することができる。
まず、上述した卵混合液の原料成分である液卵、調味料及び清水等を、ミキサー、ホモゲナイザー等の撹拌装置を用いて攪拌混合し、卵混合液を調製する。
次に、卵混合液に含気させる。好ましい含気量は、次式で表される含気率(卵混合液に占める気泡の容積率)として、20〜80%、より好ましくは30〜70%、さらに好ましくは30〜60%である。このような含気率とすることにより、具に対して、卵混合液の比重を小さくすることができるので、後述するように卵混合液中に具を入れた場合に、その具が卵混合液中に沈み、具の上を卵混合液が覆うようになるので、具の一部又は全部が流動性を有する場合でも卵加工食品の内部に多くの具を保持することが可能となり、また、後述するように一対の焼成用容器を用いて卵加工食品を製造する場合には上部外層と下部外層の継ぎ目を卵加工食品の底面側に偏らせることが可能となる。これに対し、含気率が高すぎると外層の強度が不足し、外層が裂けてペースト状の具が流れ出るおそれがあるので好ましくない。
卵混合液に含気させる方法には特に制限はなく、一般的な起泡方法に準じて行えばよい。例えば、ホバートミキサー、ビーター、カッティングマシーン等の攪拌機を用いて気泡を抱き込むように攪拌して気泡を含有させる方法、あるいは、気泡を吹き込むことにより気泡を含有させる方法等が挙げられる。
ここで、含気量の調整方法としては、例えば、攪拌機を用いて気泡を抱き込むように攪拌して気泡を含有させる場合、攪拌の強さや攪拌時間を変えることで調整することができる。また、気泡を吹き込むことにより気泡を含有させる場合には、気泡を吹き込む量や時間を変えることで調整することができる。
次に、含気させた卵混合液を所定の焼成用の容器に注入し、卵混合液を加熱し、卵混合液の容器との接触面では卵混合液が加熱凝固しているが内部は未凝固の状態になるように卵混合液を部分凝固させる。
ここで、容器としては、その材質、形状、大きさに特に制限は無く、卵混合液を加熱凝固させることにより成形できるものであればよい。例えば、容器の材質としては、鉄、ステンレス、セラミック等が挙げられる。また、形状は、製造する卵加工食品の形状や大きさ等に応じて決められ、例えば、ボート底型の凹部を有する容器を使用することができる。したがって、図5(a)に示すように、従来より工業的なオムレツの製造ラインで使用されている、上部外層の焼成用容器10aと下部外層の焼成用容器10bからなる一対の焼成用容器も使用することができ、それぞれに卵混合液11を注入すればよい。
容器を加熱する方法は、特に制限はなく、直火加熱、電熱線加熱、電磁調理器加熱等によることができる。加熱温度は、卵が加熱凝固する温度とし、具体的には、容器の温度を、好ましくは80〜300℃、より好ましくは100〜200℃とする。
なお、加熱の態様としては、含気させた卵混合液を予め加熱した容器に注入し、その注入後に引き続き容器を加熱するようにしてもよく、また、含気した卵混合液を容器に注入してから加熱を始めてもよい。
加熱により、卵混合液は容器との接触面から加熱凝固が始まる。そこで、卵混合液が容器と接触している面では加熱凝固しているが内部は未凝固の状態で、卵混合液中にペースト状部分を含む具3を入れる。
ここで、具3の量に関し、上述のように焼成後の卵加工食品全体に対して具全体の割合が30%〜70%になるようにするには、製造時に卵混合液に入れる具の量は、製造工程中の加熱による水分の蒸発分はあるものの、原料全体に対して30〜70%とすればよい。
卵混合液中に具を入れると、図5(b)に示すように、具3は含気した卵混合液11に比べて比重が重いため、沈みながら容器10aの底面に沿って卵混合液11の内部に配置され、未凝固の卵混合液11はその液面が上昇し、具3の上面も覆う。また、卵混合液は含気していることから、ペースト状物を含む具は卵混合液とほとんど混ざることなく卵混合液中に配置される。
この状態で加熱を続け、表面に卵混合液が残っている状態で、図5(c)に示すように、卵混合液を加熱していたもう一方の容器10bと、具3を入れた方の容器10aとを重ね合わせ、例えば、具3を入れた方の容器10aと具3をいれない方の容器10bのいずれかを反転して双方の容器を重ね合わせ、卵混合液全体が多孔質状に凝固するまで加熱し、双方の容器に入っていた卵混合液を結着する。
そして図5(d)に示すように容器10aから内容物を取り出すことにより、本発明の卵加工食品1Aを得ることができる。このように卵加工食品1Aを製造すると、上部外層2aと下部外層2bとの継ぎ目4を底面5側に偏らせることが容易となる。したがって、継ぎ目4の底面5からの位置を、卵加工食品1Aの1/3厚までの高さに形成し、外観上、継ぎ目4を目立たなくすることが容易となる。また、具3が継ぎ目4からはみ出るおそれも解消する。
この他、卵加工食品の製造方法としては、図5に示したように一対の焼成用容器を使用することなく、一つの容器に卵混合液を注入して加熱し、卵混合液が部分凝固している状態で具を入れ、その後、必要に応じて卵混合液を注入し、必要に応じて蓋をし、加熱してもよい。これにより、図3に示すように、側周部に継ぎ目が観察されない卵加工食品1Cを得ることができる。
このようにして得られた本発明の卵加工食品は、0〜15℃に冷却し、必要に応じてパウチ等に容器詰めして、0〜15℃で流通させるチルド品とすることができる。また、凍結処理し、必要に応じてパウチ等に容器詰めして、冷凍品とすることができる。凍結処理は、凍結機を用い、適宜条件を調節すればよい。例えば、−60〜−15℃程度の雰囲気温度中で、風速1〜40m/sで10分〜3時間程度の凍結処理を行うことにより冷凍品とすることができる。
なお、本発明の卵加工食品の冷凍品の解凍は、容器詰めしたまま行う場合は、例えば、70〜100℃程度の熱水に浸漬するか、あるいは、70〜100℃程度のスチーマー等での加熱し、更に、電子レンジ加熱等を行えばよい。また、5〜30℃程度の流水中や室内での解凍や、冷蔵庫等での解凍も行うことができる。
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。
実施例1
(1)含気した卵混合液の製造
表1の成分をミキサーで泡立てないように混合して卵混合液を製造した。
次にこの卵混合液を、ホバートミキサー(ホバート社製)で、中速で10分間攪拌して気泡を含有させた。この含気前の卵混合液の比重は1であり、含気後の卵混合液の比重は0.5であった。したがって、含気後の卵混合液の含気率は50%である。







(2)具(半熟卵様卵加工食品)の製造
(2-1)薄膜状含水凝固卵の製造
まず、表2の成分をミキサーで泡立てないように混合して卵液を調製した。次に、水槽に95℃の清水を流速2m/分程度で流動させながら、この水槽中に上記卵液を1kg/分の速さで滴下し、約3分間経過させて凝固させ、金網にとり、水切りすることにより手作り感に富んだ薄膜状含水凝固卵を得た。得られた薄膜状含水凝固卵の大きさは、1〜5cm2程度であり、この範囲で比較的大きなサイズのものはクルクルとまるまっていた。また、厚さは、0.3mm〜1cm程度であった。
(2-2)半熟様卵加工食品の製造
一方、表3の成分を混合し、これをナイロン製の耐熱性パウチに1kgずつ充填密封し、沸騰水中に10分間浸漬して加工卵液を製した。この加工卵液を使用して表4の成分を混合し、得られた混合物を蒸気式二重釜に投入し、攪拌しながら90℃に達するまで加熱した。これにより、流動性のあるペースト状の半熟様卵加工食品を得た。






(2-3)半熟卵様卵加工食品の製造
(2-1)で製した薄膜状含水凝固卵30部と(2-2)で製した半熟様卵加工品70部を混合することにより、具として半熟卵様卵加工食品を製造した。得られた半熟卵様卵加工食品の品温60℃における粘度は、KO式ボストウィック粘度計による粘度の測定値として、10cmであった。
(3)オムレツの製造
ボート底型の凹部を有する鉄製の焼成容器(開口部の長径12cm、開口部の短径6cm、深さ2.5cm)2つがヒンジで連結した一対の焼成容器を直火で加熱し、焼成容器の温度を120℃程度に加熱した。次に前記凹部にそれぞれ食用油脂を噴霧した後、(1)で製造した、含気した卵混合液を20gずつ注入した。続いて、含気した卵混合液の上面が未凝固の状態で、一方の焼成容器に、(2)で具として製造した半熟卵様卵加工食品40gを投入した。この具は、含気した卵混合液の内部に沈殿した。
3分間焼成した後、含気した卵混合液の上面が未凝固の状態で、具を投入した焼成容器上に、他方の焼成容器を反転して閉じ合わせ、そのまま更に3分間焼成した。その後、焼成容器から取り出したところ、略楕円形のオムレツが得られた。得られたオムレツの質量は70gであった。
得られた品温60℃のオムレツを、皿に盛りつけたところ、継ぎ目からペースト状物が流れ出ることなく外観状も好ましいものであった。
次に、オムレツ上面の略中心を通るようにして、長手方向に対して直角に切断したところ、具として投入した半熟卵様卵加工食品が流れ出し、コックが作る手作り半熟オムレツと同じような状態であった。
また、前記切断面において、オムレツ表面の側周に形成される一対の焼成体の継ぎ目の位置を計測したところ、その切断面の高さを1とした場合に、底面から3分の1より下方に位置していた。
さらに、このオムレツの上面の略中心を通るようにして長手方向に切断し、切断面からスプーンで内部の具を、加熱凝固している外層を削りとらないように丁寧に掻き出した。その結果、得られた具の合計量は40gであった。したがって、具の割合はオムレツ全体に対して57%であった。また、得られた具の品温60℃における粘度は、KO式ボストウィック粘度計による測定値として、10cmであった。
比較例1
実施例1において、卵混合液を含気せずに用いた他は、同様にしてオムレツを製造した。得られたオムレツは、継ぎ目からペースト状物が流れ出し、好ましくないものであった。また、一対の焼成体の継ぎ目は、切断面の高さを1とした場合に、底面から2分の1付近の位置、つまり、高さ方向の中央部に位置していた。
比較例2
比較例1において、卵混合液と具の配合比率を卵混合液70g、具10gとした他は、同様にしてオムレツを得た。
得られたオムレツを、皿に盛りつけたところ、継ぎ目からペースト状物が流れ出ることはなかった。次に、オムレツ上面の略中心を通るように、長手方向に対して直角に切断したところ、具として投入した半熟卵様卵加工食品はほとんど流れ出なかった。
また、この切断面において、オムレツ表面の側周に形成される一対の焼成体の継ぎ目は、切断面の高さを1とした場合、底面から2分の1付近の位置、つまり、高さ方向の中央に位置していた。
試験例1
実施例1において、表5に示す含気率となるように攪拌処理時間を変えて、6種類の含気率の異なる卵混合液を得、得られた卵混合液を用いて実施例1と同様の方法で、それぞれ50個ずつのオムレツを製造し、良品の個数を調べた。
この場合、良品か否かの判定は、得られたオムレツ(品温60℃)を皿に置き、内部のペースト状物が流れ出すかどうかで判定した。また、得られたオムレツ(品温20℃)の外層の気孔率をそれぞれ測定した。結果を表5に示す。
表5より、卵混合液の含気率が、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上とすると、内部にペースト状の具を有するオムレツを安定して製造できることがわかる。また、オムレツの外層の気孔率を、好ましくは10%以上とすると内部にペースト状の具を有するオムレツを安定して製造できることがわかる。反対に、含気率が高過ぎると、外層の強度が不足することにより外層が裂け易いので、含気率は70%以下が好ましく、60%以下がより好ましいことがわかる。なお、卵混合液の含気率が50%以下の場合、含気率が高くなるにつれて得られたオムレツ外層の気孔率も高くなる傾向があり、卵混合液の含気率が50%を超えた場合は、卵混合液の含気率によらずオムレツ外層の気孔率はほぼ一定となった。
試験例2
実施例1において、卵混合液と具との配合比率を表6に示す割合に変えて、それぞれ50個ずつのオムレツを製造し、良品の個数を調べた(試験例2-1〜2-4)。同様に比較例1において、卵混合液と具の配合比率を変えて良品の個数を調べた(試験例2-5〜2-8)。なお、良品かどうかの判定は、試験例1と同様にして行った。結果を表6に示す。
表6より、含気した卵混合液を用いる実施例のオムレツは、具の配合量が多い場合であっても製造可能なことがわかる。これに対して、含気しない卵混合液を用いた比較例のオムレツは、具の配合量が多いと製造できないことがわかる。
試験例3
実施例1において、2つがヒンジで連結した一対の焼成容器(鍋1、鍋2)を直火で加熱する際に、それぞれの鍋に注入する卵混合液の量を表7に示す量に割合に変える以外は実施例1と同様にして、それぞれ50個ずつのオムレツを製造し、良品の個数を調べた(試験例3-1〜3-3)。同様に比較例1において、それぞれの鍋に注入する卵混合液の量を変えて良品の個数を調べた(試験例3-4〜3-6)。なお、良品かどうかの判定は、試験例1と同様にして行った。結果を表7に示す。
表7より、含気した卵混合液を用いる実施例のオムレツは、それぞれの鍋に注入する卵混合液の量が変わっても製造可能なことがわかる。これに対して、含気しない卵混合液を用いた比較例のオムレツは、それぞれの鍋に注入する卵混合液の量に関わらず、具の配合量が多いと製造できないことがわかる。
実施例1のオムレツの品質試験
実施例1で製造したオムレツをパウチ詰めして急速凍結し、−20℃で1週間保存した後、パウチから取り出し、電子レンジで加熱解凍して品温60℃とした。
解凍後のオムレツを皿に盛りつけたところ、継ぎ目から、具とした半熟卵様卵加工食品が流れ出ることなく、外観状も好ましかった。
次に解凍したオムレツ上面の略中心を通るように、長手方向に対して直角に切断したところ、流動性のある半熟卵様卵加工食品が流れ出した。
また、この切断面において、オムレツ表面の側周にある継ぎ目の位置を計測したところ、この切断面の高さを1とした場合に、底面から3分の1より下方に位置していた。
さらに、このオムレツの上面の略中心を通るようにして、長手方向に切断し、切断面からスプーンで内部の半熟卵様卵加工食品を、外層を削りとらないように丁寧に掻き出したところ、凍結前の実施例1と同様に、オムレツから半熟卵様卵加工食品40gを得ることができた。
また、得られた半熟卵様卵加工食品の品温60℃における粘度も、凍結前の実施例1と同様に、KO式ボストウィック粘度計による測定値として、10cmであった。
実施例2
(1)具(チーズソース)の製造
表8の成分を鍋に入れて攪拌しながら90℃まで加熱してチーズソースを得た。
得られたチーズソースの品温60℃における粘度は、KO式ボストウィック粘度計による測定値として、8cmであった。
(2)オムレツの製造
半球形型の凹部を有する鉄製の焼成鍋(開口部の直径4cm、深さ4cm)を直火で加熱し、焼成型の温度を120℃程度に加熱した。次に、焼成鍋の凹部に食用油脂を噴霧した後、実施例1と同様にして製した、含気した卵混合液を20g注入した。続いて、含気した卵混合液の上面が未凝固の状態で、チーズソース20gを投入したところ、チーズソースは含気した卵混合液中に沈み、チーズソースの上を卵混合液が覆った。その後、5分間焼成し、焼成鍋から内容物を取り出したところ、半球形のオムレツが得られた。得られたオムレツの質量は35gであった。
得られた品温60℃のオムレツを、皿に盛りつけたところ、チーズソースが流れ出ることなく、外観も好ましいものであった。
次に、オムレツ上面の略中心を通るように切断したところ、チーズソースが流れ出した。
また、このオムレツの切断面からスプーンで内部のチーズソースを外層を削りとらないように丁寧に掻き出したところ、チーズソースが20g得られた。したがって、具の割合はオムレツ全体に対して57%であった。また、得られたチーズソースの品温60℃における粘度は、KO式ボストウィック粘度計による測定値として、8cmであった。
実施例3
(1)含気した卵混合液の製造
表9の成分をミキサーで泡立てないように混合して卵混合液を製造した。なお、ゼラチンは予め配合原料中の清水の一部と混合して加熱膨潤してから添加した。
次にこの卵混合液を、ホバートミキサー(ホバート社製)で、中速で12分間攪拌して気泡を含有させた。この含気前の卵混合液の比重は1であり、含気後の卵混合液の比重は0.4であった。したがって、含気後の卵混合液の含気率は60%である。
(2)具(ミートソース)の製造
表10の成分を鍋に入れて常法により加熱してミートソースを得た。
得られたミートソースの品温60℃における粘度は、KO式ボストウィック粘度計による測定値として、15cmであった。
(3)オムレツの製造
実施例1と同様にして、ボート底型の凹部を有する鉄製の焼成容器2つがヒンジで連結した一対の焼成容器を加熱して、(1)で製造した、含気した卵混合液を20gずつ注入した後、(2)で具として製造したミートソース40gを投入し、略楕円形のオムレツを得た。得られたオムレツの質量は70gであった。
得られた品温60℃のオムレツを、皿に盛りつけたところ、継ぎ目から具が流れ出ることなく外観状も好ましいものであった。
次に、オムレツ上面の略中心を通るようにして、長手方向に対して直角に切断したところ、具として投入したミートソースが流れ出し、コックが作る手作り半熟オムレツと同じような状態であった。
また、前記切断面において、オムレツ表面の側周に形成される一対の焼成体の継ぎ目の位置を計測したところ、その切断面の高さを1とした場合に、底面から3分の1より下方に位置していた。
さらに、このオムレツの上面の略中心を通るようにして長手方向に切断し、切断面からスプーンで内部の具を、加熱凝固している外層を削りとらないように丁寧に掻き出した。その結果、得られた具の合計量は40gであった。したがって、具の割合はオムレツ全体に対して57%であった。また、得られた具の品温60℃における粘度は、KO式ボストウィック粘度計による測定値として、15cmであった。
本発明の卵加工食品及びその製造方法は、工業的にオムレツその他の卵焼きなどを製造する場合に有用であり、この卵加工食品は、コンビニエンスストア、スーパー、外食産業等で広く使用することができる。
卵加工食品の斜視図(a)、及び縦断面図(b)である。 卵加工食品の斜視図(a)、及び縦断面図(b)である。 卵加工食品の斜視図(a)、及び縦断面図(b)である。 外層の多孔質状組織の図面代用顕微鏡写真である。 卵加工食品の製造方法の説明図である。
符号の説明
1A オムレツ又は卵加工食品
1B 卵加工食品
1C 卵加工食品
2 外層
2a 上部外層
2b 下部外層
3 具
4 上部外層と下部外層の継ぎ目
5 底面
10a 容器
10b 容器
11 卵混合液

Claims (6)

  1. 卵混合液の加熱凝固物からなる外層の内部に一部又は全部が流動性を有する具を含んでなる卵加工食品であって、外層が、多孔質状組織を有し、該外層が気孔率10〜50%である卵加工食品。
  2. 側周部に上部外層と下部外層との継ぎ目を有し、該継ぎ目が、卵加工食品の底面から、卵加工食品の1/2厚よりも底面側に位置する請求項1記載の卵加工食品。
  3. 具全体が卵加工食品の30質量%以上である請求項1又は2記載の卵加工食品。
  4. 含気率が20〜80%である卵混合液を容器に注入し、卵混合液を加熱して部分凝固させ、該卵混合液内に一部又は全部が流動性を有する具を入れ、さらに卵混合液を加熱して多孔質状に凝固させる卵加工食品の製造方法。
  5. 卵混合液を第2の容器に注入し、加熱して部分凝固させ、その容器を、前記具を投入した容器と重ね合わせ、さらに加熱する請求項記載の卵加工食品の製造方法。
  6. 具全体が原料全体の30質量%以上である請求項4又は5記載の卵加工食品の製造方法。
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