JP4737261B2 - 樹脂組成物及び樹脂成形物 - Google Patents
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Description
生分解性を具備する樹脂は、従来公知の汎用樹脂とは異なり、例えば非化石燃料を主たる原材料として製造される為に資源枯渇による原材料不足の影響が少ないことが利点として挙げられる。また、生分解性を具備する樹脂は、自然界で分解される為に廃棄物処理に関する問題の解決に寄与し得ることも利点として挙げられる。更に、生分解性を具備する樹脂は、トウモロコシ等の天然資源から製造可能であることも利点として挙げられる。また更に、生分解性を具備する樹脂は、地球温暖化の原因とされるCO2ガス発生量を抑制できること等も利点として挙げられ、今後一層注目されることが予想される材料である。
生分解性樹脂の中でも、例えば脂肪族ポリエステル、特にポリ乳酸は融点が高い(170乃至180℃)ことに加えて、透明性を有する成形品を得ることができると言った材料としての特性に優れており、広い実用性が期待されている。
生分解性樹脂は、例えば、テレビの筐体やパソコンのハウジング等のような電気製品、電子製品等への応用が検討されており、このような電気製品の筐体や構造材等の用途とすることを考慮すれば、概して80℃程度以上の耐熱性が必要であると考えられている。
尚、ここで実用面において必要とされる耐熱性とは、80℃付近での剛性(弾性率)を100MPa程度有することを意味している。
生分解性ポリエステルの耐熱性を上げるためには、例えば耐熱性を有するタルクやマイカ等の無機フィラーを添加する方法が知られている。この方法により、耐熱性の向上と共に機械的特性の改善が図られ、材料の硬度を向上させることができる。
しかしながら、樹脂に無機フィラーを添加するのみでは、実用面における充分な耐熱性を確保することは困難である。
ポリ乳酸は結晶構造を取り得る生分解性ポリエステルであるが、結晶化し難いポリマーである為、ポリ乳酸を通常の汎用樹脂と同様の方法で成形すると、成形品は非晶質若しくは非晶質の割合が多いものになってしまい、機械的強度に劣り、熱変形を生じ易い。
これに対し、成形中又は成形後に熱処理を施すことによって材料の結晶化を促進させることができ、成形品の耐熱性が向上する。
従来の汎用樹脂を用いた場合では、通常1分程度の成形サイクルにより射出成形工程が行われる。しかしながら、ポリ乳酸を用いた場合では、成形品を金型内において熱処理を施して実用上充分な機械的強度が得られる程度に結晶化を進める為には、汎用樹脂を用いた場合よりもはるかに長時間を要する。
また、生分解性ポリエステルの結晶化工程では、結晶核の自由発生頻度が極めて低い為に結晶のサイズがミクロンオーダー程度となってしまい、最終的に得られる樹脂組成物に白濁が生じ、透明性が劣化してしまう。このため、実用上の使用範囲が限定されてしまうと言う問題が生じる。
ここで核剤とは、結晶性ポリマーの一次結晶核となり結晶性ポリマーの結晶成長を促進するものであるが、広義には、結晶性ポリマーの結晶化を促進する物質、即ち、ポリマーの結晶化速度そのものを向上させる物質も核剤と称されることがある。
結晶構造を取り得る生分解性ポリエステルに核剤を添加すると、結晶の微細化の効果が顕れ、最終的に得られる樹脂組成物の剛性が向上し、さらには樹脂組成物の透明性も改善される。また、結晶構造を取り得る生分解性ポリエステルに核剤を添加すると、成形中における結晶化速度が向上することから、射出成形工程に要する時間が短縮化される。
例えば、ポリプロピレン(以下、PPとも称する。)の場合、核剤を添加することによって剛性の向上や透明性の改善が確認された。このとき用いられる核剤としては、例えばソルビトール系の物質が挙げられ、このソルビトール系の物質の三次元的なネットワークがPPの結晶化において効果的に作用していると考えられている。また、ソルビトール系の物質の他には、金属塩タイプの材料として、例えば、ヒドロキシ−ジ(t−ブチル安息香酸)アルミニウム、リン酸ビス(4−t−ブチルフェニル)ナトリウム、メチレンビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェートナトリウム塩等が挙げられる。
例えば、核剤効果が小さいタルクを核剤として用いる場合、添加量を数十%程度としなければ充分な効果が得られない為、添加量が過多となってしまう。このため、得られた樹脂組成物は機械的強度において劣り、実用上必要とされる機械的強度に満たないと言った問題がある。また、樹脂中におけるタルクの含有量が多いと白濁を生じ、透明性が劣化してしまい、実用上の使用範囲が限定されてしまうと言う問題もある。
その他の核剤添加による結晶化促進方法としては、例えば特許文献2及び3では、脂肪族ポリエステルに透明核剤を適用した技術が開示されている。この透明核剤としては、脂肪族カルボン酸アミド、脂肪族カルボン酸塩、脂肪族アルコール、及び脂肪族カルボン酸エステルからなる、40乃至300℃の融点を有する化合物群から選択された少なくとも一種を適用可能である(特許文献2参照。)。また、その他の透明核剤としては、80乃至300℃の融点又は軟化点を有し、かつ、10乃至100cal/K/molの溶融エントロピーを有する有機化合物からなる群から選択された少なくとも一種の有機化合物を適用可能である(特許文献3参照。)。
また特許文献4では、ポリ乳酸系樹脂に透明化剤として特定の構造の脂肪酸エステル類を添加する技術も開示されている。
加水分解の程度は、用いるポリエステルの種類や仕様環境によって異なり、また、成形品に要求される使用期間によっては、加水分解にかかる問題が必ずしも実用上の問題になるとは限らない。しかし、生分解性ポリエステルを用いる場合においては、加水分解にかかる問題は実用上の大きな問題となり得る為、今後、加水分解に対する実用上の耐久性を確保することが重要になってくる。
即ち、使用期間が短期間(短時間)である場合には、速やかに分解することが望ましいが、使用期間が長期間(長時間)である場合には、加水分解を抑制することが望ましい。
生分解性ポリエステルの長期信頼性を改善させる為の技術については従来各種提案が為されているが、上述したような樹脂の結晶性の改善と、材料としての長期信頼性の確保とを同時に解決することに対しては何れの技術も不充分であり、未だ解決されていない。
また本発明は、前記樹脂組成物を用いた樹脂成形物を提供することを目的とする。
また、前記ポリエステルが、ポリ乳酸であることが好ましい。
さらに、前記ポリ乳酸に対する加水分解抑制剤を含有することが好ましい。
また本発明の樹脂成形物は、上記樹脂組成物を用いて製造されるものであり、優れた剛性、成形性、及び耐熱性、耐久性を有する。
本発明の樹脂組成物は、結晶構造を取り得るポリエステルと、前記一般構造式(1)で表される物質とを含み、前記一般構造式(1)で表される物質が、天然物由来のα−アミノ酸の2分子が脱水縮合した構造またはその置換体構造で表されるものである。但し、前記α−アミノ酸の2分子がいずれもグリシンであるものは除く。
先ず、結晶構造を取り得るポリエステルについて説明する。
本発明における結晶構造を取り得るポリエステルには、分子鎖中にエステル結合を少なくとも一個有し、結晶構造を取り得る物性を有していれば従来公知の材料をいずれも適用可能である。
ここで、結晶構造を取り得るとは、少なくとも一部において結晶構造を構成可能なものであれば良く、必ずしも全ての分子鎖が規則正しく配列していなくても良い。
さらに、全ての分子鎖に規則性がなくても、一部の分子鎖セグメントが配向可能であれば良い。
また、結晶構造を取り得るポリエステルは、直鎖状であることが好ましいが、分岐状等であっても良い。
ポリ乳酸系脂肪族系ポリエステルとしては、例えば乳酸、リンゴ酸、グリコール酸等のオキシ酸の重合体、及びこれらの共重合体等が挙げられる。この中でもヒドロキシカルボン酸系脂肪族ポリエステルを用いることが好ましく、さらにヒドロキシカルボン酸系脂肪族ポリエステルの中でも、ポリ乳酸が最も好適である。
また、ポリ乳酸系脂肪族ポリエステルの製造工程における触媒としては、例えば錫、アンチモン、亜鉛、チタン、鉄、アルミニウム等と言った金属の化合物等が挙げられる。この中でも、錫系触媒、アルミニウム系触媒が好適であり、特にオクチル酸錫、アルミニウムアセチルアセトナートが好適である。
しかしながら、本発明においては、ポリ乳酸は必ずしもL体であることに限定されない。例えばポリ乳酸が多くのL体乳酸からなり、数パーセントD体乳酸が入っていてもよい。逆に、ポリ乳酸が多くのD体乳酸からなり、数パーセントL体乳酸が入っていてもよい。そして、ポリ乳酸がD体乳酸のみからなっていてもよい。
2種以上の生分解性樹脂を含有させる場合には、当該2種以上の生分解性樹脂は互いに共重合体を形成していても良く、混合状態であっても良い。
例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリブタジエン等の炭化水素系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリメチルメタクリレート等の極性ビニル系プラスチック、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の線状構造プラスチック、酢酸セルロース、酪酸セルロース等のセルロース系プラスチック、スチレン・ブタジエン系、ポリオレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリ塩化ビニル系等の熱可塑性エラストマー、ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ケイ素樹脂、その他、分解速度を緩和したポリ乳酸やポリブチレンサクシネート等が挙げられる。
これらは、単独で含有させても良く、複数種を混合させても良い。
例えば、セルロース、デンプン、デキストラン、キチン等の多糖誘導体;コラーゲン、カゼイン、フィブリン、ゼラチン等のペプチド;ポリアミノ酸、ポリビニルアルコール、ナイロン4、ナイロン2/ナイロン6共重合体等のポリアミド;必ずしも結晶構造を取らないとして知られているポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリコハク酸エステル、ポリシュウ酸エステル、ポリヒドロキシ酪酸、ポリジグリコール酸ブチレン、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン等のポリエステル;等が挙げられる。
これらは、単独で含有させても良く、複数種を混合させても良い。
次に、結晶構造を取り得るポリエステルの結晶化を促進させる核剤について説明する。
本発明においては、下記の一般構造式(1)で表される物質で、天然物由来のα−アミノ酸の2分子が脱水縮合した構造またはその置換体構造で表されるものが核剤として好適なものとして挙げられる。但し、前記α−アミノ酸の2分子がいずれもグリシンであるものは除く。
また、一般構造式(1)で表される物質には、立体配座が異なる配座異性体があることが知られているが、どの配座異性体を用いてもよい。エネルギー的に安定な配座のものが好ましい。
具体的なα−アミノ酸としては、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、プロリン、グルタミン酸、アスパラギン酸、グルタミン、アスパラギン、リジン、アルギニン、ヒスチジン等を挙げられる。
これらの中でも、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、プロリン、グルタミン、アスパラギンが、一般構造式(1)で表される物質が加水分解された際に中性を示すことから好ましい。またこれらの中でも特に、グリシン(この場合、他方のα−アミノ酸はグリシン以外である。)、アラニン、バリン、メチオニン、フェニルアラニンが好ましい。
これらの他、δ−ヒドロキシリジン、3,5−ジブロモチロシン、3,5−ジヨードチロシン、3,3,5’−トリヨードサイロニン、チロキシン、ヒドロキシプロリンなども、生体のタンパク中に存在するアミノ酸であり、本発明の一般構造式(1)で表される物質の構成要素として好適である。
また、本発明の一般構造式を合成することもできる。合成方法の具体例としては、例えば次記の3つの方法が挙げられる。なお、ここでの略記号は慣例に倣ったものである。例えば、Pheはフェニルアラニンを示している。そして、Cyclo(-Phe-Phe)はフェニルアラニン2分子からなるジケトピペラジンを表している。
Triethylamine(1.67g,16.5mmol)を加えたmethanol(50ml)にL-Phe-L-phe-OMe・HCl(1.5g,4.14mmol)を溶かし、還流下12時間攪拌する。さらにエバポレーターで溶媒を飛ばした後に、残留物は少量の cold 2-propanolで洗浄し、cyclo(-Phe-Phe)を得る。
2mmolのZ-Phe-Phe-OMe(または、Cbz-と呼ばれる。Benzylcarbonyl group)を0℃でHBrで飽和させたacetic acid(99%)50mlに溶かす。そして、30minそのままにし、溶液をエーテルで処理する。粗生成物を0℃で乾燥アンモニアを含んだメタノール中に溶かす。その溶液をメスフラスコに移し、12時間室温で放置する。反応混合物は、真空中エバポレーターで揮発成分除去する。残った結晶はメタノールで吸引濾過する。
予め80℃の湯浴で溶融させておいた10mlのフェノールにL-Phe-L-Phe(0.5g,1.6mmol)を加える。N2気流下150℃で1時間攪拌し反応させる。約180℃に昇温後、好ましくは10Torr以下にまで減圧しフェノール、反応生成水を蒸留する。得られた粗生成物を水-ethanolで洗浄し、フェノールを除去しcyclo(-Phe-Phe)を得る。
核剤の粒径は0.001μm以上10μm以下が好ましく、更には0.01μm以上1μm以下であることがより好ましい。
また、樹脂組成物中の核剤の配合量は、結晶構造を取り得るポリエステル100重量部に対して0.001重量部乃至10重量部の範囲とすることが好ましく、更には0.01重量部乃至1重量部の範囲とすることがより好ましい。
核剤の結晶粒子の粒径と含有量とは互いに影響し合う為、ポリエステルの結晶化を促進する核剤としての効力を充分発揮し得るように、粒径と含有量とを決定することが必要である。
上記一般式(1)で表される物質は、従来核剤として公知のタルクよりも、微細な粒子を形成可能であることから、樹脂組成物中に配合される配合量を抑制することができると言う利点を有している。
ここに二つの樹脂組成物があって、核剤の含有量が略同じである場合、核剤の粒径は小さい方が高い結晶化効果が得られる。これは、核剤の粒径が小さいほど、樹脂組成物中の核剤粒子数が多くなり、核の数が増して結晶を微細にさせるからである。
この場合、核剤の粒径が2分の1になると、1個の核剤粒子の体積は8分の1となるので、粒子の数は8倍になる。すなわち、粒径を2分の1にすれば添加量を8分の1にしても、同程度の作用効果が期待できるのである。
なお、同粒径の核剤が含有されている場合は、添加量を多くした方が核剤としての作用効果は高くなることは明らかである。
(1)計算の簡略化の為、結晶構造を取り得るポリマー及び核剤の密度は略同一とする。
(2)核剤の粒子は、全く凝集がなく、且つ樹脂組成物中に完全に均一に分散しているものとする、すなわち核剤が組成物中に立方格子状に存在する。
(3)結晶構造を取り得るポリマーの結晶は立方体とする。
(4)同様に核剤の粒子も立方体とする。
(5)1つの核剤から1つの樹脂結晶が生ずるものとする。
(6)結晶構造を取り得るポリマーをここでは具体的にポリ乳酸とする。
上記(1)乃至(6)に記載の事項のような仮定に基づいた場合、核剤の含有量(%)と核剤の粒径とから体積計算によって、ポリ乳酸の結晶サイズを求めることができる。
その計算結果を下記表1に示す。
一方、核剤のサイズ(1辺の長さ)を0.05μmとし、核剤の添加量を0.5%(比率として0.005)とすると、X3 ×0.005=0.053 となることから、ポリ乳酸の結晶のサイズはX=0.29μmと計算される。
実際に核剤を樹脂成形物に含有させる場合には、以上のような体積計算を参考にして目的に応じて必要な結晶サイズとなるように核剤の粒径や含有量を選択すれば良い。
120℃におけるポリ乳酸の球晶の半径(r)の成長速度(dr/dt)は、約2μm/分であることが確かめられた。
ここで、具体的に、この球晶の半径の成長速度を、以上で仮定した立方体の形状の結晶の成長速度と略同じとすると、結晶化に要する時間を計算できる。その計算結果を下記表2に示す。
樹脂組成物においては、結晶構造を取り得るポリエステル100重量部に対し、核剤が0.001重量部乃至10重量部含有されていることが好ましいことが確かめられた。
ポリエステル100重量部に対する核剤の含有量が0.001重量部未満であると、核剤の含有量が少なすぎて核剤を含有させることでポリエステルの結晶化を促進させるといった作用効果を得ることが困難になる。
一方、ポリエステル100重量部に対する核剤の含有量が10重量部よりも多い場合には、核剤の含有量が多すぎ、最終的に得られる樹脂組成物の剛性等の機械的特性が劣化してしまうと言う問題がある。
即ち、ポリ乳酸を、射出成形機で金型温度を120℃程度に設定した金型内で結晶化させる場合、結晶化に要する時間は5分程度であると見積もられる。
ここで、樹脂は成形機のシリンダー内で高温の溶融状態で滞留するが、ポリ乳酸が熱分解してしまうおそれがあることから、金型内での滞留時間を5分以内にする必要がある。従って、ポリ乳酸に対して粒径が10μmの核剤を10重量部含有させることは、核剤の含有量の最適範囲を満たす境界の条件である。
なお、核剤の種類によっては、その粒径が0.5μmより小さくても凝集が少なくなることもあり、この場合には、その含有量をさらに低減化することもできる。あるいは、より小さいサイズの核剤を使う場合は、何らかの凝集防止剤を使うことで樹脂への核剤の分散を改善し、含有量を少なくすることもできる。
濁り具合を表すものとしてヘイズが知られている。測定方法は、日本工業規格のJIS K7136等により規定されている。具体的には、樹脂から作られた1mmの厚さの板のヘイズ値で透明性を表すことが行われている。ヘイズ値が小さい方が、透明性が高いものとされている。
例えば、ポリプロピレンにソルビトール系物質を添加した公知の樹脂組成物は透明性が高く、ポリプロピレン樹脂組成物で製造した容器はその中に入れた食品などの中身を認識できるほどの透明性を有する。この場合の、ヘイズ値は30%程度である。
光の波長より大きな粒子がポリマー中に含まれている場合、それらの屈折率が異なると、その粒子ポリマーに対して光学的な異物となり、透明性が低下してしまう。このとき、結晶構造を取り得るポリエステルと、核剤の屈折率とが近い値であることが好ましい。具体的には、互いに±約0.05以内であれば、核剤の粒子がポリエステルに対して光学的な異物となることが回避される。
仮に、結晶構造を取り得るポリエステルの屈折率と、核剤の屈折率とが互いに大きく異なっている場合には、核剤を微細化することにより、透明性を確保できる。例えば核剤を数十nm程度に微細化すれば、可視光は透過するので、優れた透明性は確保される。
このため、ポリエステルに対する核剤の含有量を多くする必要があると考えられるが、核剤の含有量としては樹脂組成物の機械的特性の低下等を考慮すると1重量%程度にすることが好ましい。
従って、樹脂組成物においては、ポリエステル100重量部に対して核剤の添加量を0.01重量部乃至1重量部の範囲とすることで核剤による作用効果をさらに高めることができる。
例えば、機械的な粉砕方法、化学的方法のいずれでもよい。
機械的な粉砕方法には、ボールミルによる方法、ソルトミリングによる方法、凍結粉砕等が挙げられる。さらには、ジェットミル、エアーハンマーと呼ばれる粉砕方法も適用できる。これらの方法は、粒子を気流とともに二方向から衝突させて粉砕する方法である。
化学的な方法としては、再結晶や噴霧乾燥等が挙げられる。
核剤である上記一般構造式(1)で表される物質を所定の溶媒に溶解させ、再結晶によって微粒子を得ることもできる。
即ち、温度による溶解度の相違を利用して高温の上記一般構造式(1)で表される物質を冷却したり、溶媒を蒸発させて濃縮したり、溶液に他の適当な溶媒を加えて溶解度を減少させたりする等の方法により微粒子が得られる。
また、上記一般構造式(1)で表される物質を溶解させた溶液を噴霧させて溶媒を気化させて微粒子を得る噴霧乾燥も適用できる。
その他、従来公知の微粒子製造方法をいずれも適用できる。
凝集を抑制する方法としては従来知られている方法を用いることができる。
例えば、上記核剤へ凝集防止剤を、微粒化加工前に添加したり、微粒子加工中に添加したり、微粒子加工後に添加したりする方法が挙げられる。
凝集防止剤としては、従来公知の材料を適用でき、例えば、低分子ポリエチレン、ポリオキシエチレン系、非イオン性界面活性剤等が挙げられる。これらの中でもポリオキシエチレン系の凝集防止剤が好適である。
混合方法については後述する。
さらに、かかる目的のため、ポリマーの分解を促進する研究開発がされており、ポリエステルの場合は、加水分解を促進させる物質を添加することもある。
かかる目的を達成するためには、分解を抑制する物質を添加することが必要であり、所謂加水分解抑制剤を添加することが好ましい。これにより、成形品の使用における長期信頼性を高めることができる。
加水分解抑制剤は、ポリエステル、特に生分解性ポリエステルの加水分解を抑制することができる材料であれば、特に限定されるものではないが、生分解性樹脂中の活性水素と反応性を有する化合物等が例として挙げられる。
このような化合物を加水分解抑制剤として加えることにより、樹脂組成物では生分解性樹脂中の活性水素量が低減し、活性水素が触媒的に生分解性樹脂を構成するポリマー鎖を加水分解することを防止できる。
ここでの活性水素とは、酸素、窒素等と水素との結合(N−H結合やO−H結合)における水素のことであり、この活性水素は、炭素と水素との結合(C−H結合)における水素に比べて反応性が高い。具体的には、例えば生分解性樹脂中のカルボキシル基(−COOH)、水酸基(−OH)、アミノ基(−NH2 )、アミド結合(−NHCO−)等における水素が活性水素である。
特に、カルボジイミド化合物は、生分解性樹脂と容易に溶融混練でき、少量の添加により加水分解抑制効果が得られることから、好適な材料である。
このカルボジイミド化合物に含まれるモノカルボジイミド化合物としては、例えばジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ナフチルカルボジイミド等が挙げられ、これらの中でも特に工業的に入手が容易であるジシクロヘキシルカルボジイミドやジイソプロピルカルボジイミドが好適である。
加水分解抑制剤においては、その種類や添加量によって樹脂組成物の生分解速度を調整することができることから、目的とする製品に応じて添加させる種類や添加量を決定すればよい。すなわち、どの程度の温度で、どの程度の湿度という環境下で、どの程度の期間を加水分解抑制させるのかによって、添加する加水分解抑制剤の種類や添加量を決定すればよい。
具体的に、加水分解抑制剤を添加する場合、その添加量は家電製品等の耐久消費材に使う場合は概して樹脂組成物の全重量に対して0.1重量%乃至5重量%、好ましくは0.5重量%乃至2重量%である。
また、本発明の樹脂組成物には無機フィラーを添加しても良い。これにより耐熱性や剛性等の向上が図られる。
無機フィラーとしては、公知の材料を適用でき、例えばタルク、アルミナ、シリカ、マグネシア、マイカ、カオリン等が挙げられ、これらのうち何れか一種を用いてもよく、複数種を組み合わせてもよい。
結晶構造を取り得るポリエステルとしてポリ乳酸を適用する場合、無機フィラーであるタルクは、本発明に用いられる一般構造式(1)で示される物質と併用しても、互いにその核剤効果を打ち消すことなく、結晶化を促進させる効果があることが確かめられた。このことから、本発明に用いられる一般構造式(1)で示される物質と無機フィラーとを併用する場合に、タルクは好ましい材料であることが確かめられた。
ここで、無機フィラーの添加量は、結晶構造を取り得るポリエステル100重量部に対して1重量部乃至50重量部とすることが好ましい。
ポリエステル100重量部に対する無機フィラーの添加量が1重量部未満であると、無機フィラーの添加量が少なすぎる為、樹脂組成物の耐熱性や剛性を高める作用効果が充分に得られなくなる。
一方、ポリエステル100重量部に対する無機フィラーの添加量が50重量部より多い場合、無機フィラーの添加量が多すぎて最終的に得られる樹脂組成物が脆弱化するおそれがある。
従って、ポリエステル100重量部に対し、無機フィラーを1重量部乃至50重量部の範囲で添加することにより、樹脂組成物の耐熱性や剛性を高める効果が得られ、かつ樹脂組成物の脆弱化を回避できる。
本発明の樹脂組成物においては、上述した核剤による結晶化の促進を著しく妨げない限りにおいて、例えば酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤、帯電防止剤、離型剤、香料、滑剤、難燃剤、充填剤、抗菌抗カビ剤等を添加しても良い。
製造方法としては、例えば原料であるポリエステルに、核剤、無機フィラー、加水分解抑制剤等を混合し、押出機を用いて溶融混練するという方法が挙げられる。
その他の方法としては、例えば溶液法等が挙げられる。
溶液法とは、各成分を分散溶解できる任意の溶媒を用いて、原料となる各成分及び溶媒を良く撹拌してスラリーを作り、溶媒を乾燥等の公知の手法でもって除去する方法である。なお、樹脂組成物を製造する方法としては、これらの方法に制限されるものではなく、これら以外の従来知られている方法を用いることもできる。
略均一に分散させるためには、従来公知の方法(混合方法)を適用できる。例えば、顔料を樹脂に分散させ着色する方法や、3本ロールを用いる方法、単純な加熱混練を複数回繰返す方法等が挙げられる。
具体的には、先ず、ポリ乳酸等の結晶構造を取り得るポリエステルからなるペレットを、例えば60℃で5時間、減圧乾燥する。次に、このポリエステルのペレット及び核剤となる化合物を所定量秤量し、ミキサー等で混合する。次に、この混合物を例えば二軸混練機等を用いて、加熱混練を行い、加熱混練後、混練物を冷却しストランドを得て、ストランドを切断してペレット化し、温風乾燥する。加熱混練の温度は、ポリ乳酸等の結晶構造を取り得るポリエステルの融点乃至融点の+50℃の温度である。しかし、場合によっては、ポリ乳酸等の結晶構造を取り得るポリエステルの分解温度の直下という、より高温で加熱混練することもある。
上述したようにして、ポリエステル中に核剤となる化合物を略均一に分散された樹脂組
成物を得ることができる。
尚、ポリ乳酸等の結晶構造を取り得るポリエステルからなるペレットに対して、減圧乾燥に限らず、例えば温度80℃で12時間の除湿乾燥または温風乾燥を行ってもよく、除湿乾燥が好ましいが、減圧乾燥を行う方がより好ましい。
上述した樹脂組成物においては、加熱工程及び充填保持工程に付すことで、樹脂成形物を製造することができる。
樹脂組成物から樹脂成形物を製造する際に行われる加熱工程は、樹脂組成物を加熱溶融できさえすればどのような工程であっても良い。加熱手段としては、例えばヒーター等を用いる公知の手段等が挙げられる。加熱温度は、通常、樹脂組成物の融点の約+10℃乃至+50℃の温度であり、好ましくは樹脂組成物の融点より約+15℃乃至+30℃程度の高い温度である。しかし、場合によっては、樹脂組成物の分解温度の直下という、より高温にすることもある。
融点は、示差走査熱量計(DSC)等により測定される値である。融点を求める方法としては、以下の方法が具体例として挙げられる。例えば結晶構造を取り得るポリマーがポリ乳酸の場合、先ず、ポリ乳酸を用いて製造された樹脂組成物3乃至4mgを切り取り、アルミパンに入れ、それを試料とする。次いで、その試料を一旦200℃まで加熱し、50℃/分の速度で温度を低下させて0℃まで冷却させた後、20℃/分の昇温速度で昇温しながらDSC測定を行うことにより、例えば160℃付近の吸熱ピークの温度が融点として求められる。
金型は、樹脂組成物の結晶化温度の約−50乃至+30℃の温度範囲内の温度で保温された金型であればどのような金型であっても良く、金型の種類等は特に限定されない。金型の保温手段は、公知の手段であって良く、かかる保温手段としては、例えば熱水や高圧熱水あるいはオイル等の熱媒体を金型内の水管に流通させる手段、ヒーター及びサーモスタットを用いる手段等が挙げられる。
結晶化温度は、DSC測定等により測定することが可能である。結晶化温度を求める方法としては、以下の方法が具体例として挙げられる。例えば結晶構造を取り得るポリマーがポリ乳酸の場合、その樹脂組成物3乃至4mgを切り取り、アルミパンに入れ、それを試料とする。次いで、その試料を一旦200℃まで加熱し、20℃/分で0℃まで冷却させながらDSC測定を行うことにより、例えば120℃付近の発熱ピークの温度として求められる。
この場合、樹脂組成物としての融点はそれらポリマーのうちで主要なもの(含有率の一番高いポリマー)に由来の吸熱ピーク温度とし、同様に結晶化温度は主要なポリマーに由来の発熱ピーク温度とする。
充填保持工程では、金型内に樹脂組成物の溶融物が充填され、樹脂組成物の溶融物は金型の保温温度よりも高いが、時間の経過と共に保温温度に近づく。
充填手段は、金型に樹脂組成物の溶融物を充填できさえすればどのような手段であっても良く、公知の手段であって良い。例えば、圧力により溶融物を金型内に射出する手段等が挙げられる。
冷却手段は、樹脂組成物の溶融物を冷却できさえすればどのような手段であっても良く、公知の手段を適用できる。
冷却方法は、樹脂組成物の溶融物の冷却ができれば、公知の方法を適用でき、冷却時間等は特に限定されない。急冷であっても良いし、徐冷であっても良い。
冷却工程には、例えば放冷手段、急冷手段(水、氷、氷水、ドライアイス、液体窒素等を用いる)等が挙げられる。
そして、樹脂組成物の結晶化が飽和完遂され次第、成形品を金型から取り出す。また、結晶化が中途でも、成形品を金型から取り出しても良い。
ある程度結晶化が進行すれば弾性率が向上するので、樹脂組成物の成形品を変形なく金型から取り出せることもあるからである。このとき、離型後の成形品はその余熱で結晶化がさらに進行し、室温へ冷却されるまでに、結晶化がほぼ飽和完遂する。
このような成形法で樹脂成形物を形成する場合、射出成形機等の公知の成形機を用いて行うのが好適である。
先ず、公知の射出成形機を用いて樹脂組成物を樹脂組成物の融点より約+15乃至+30℃高い温度で加熱溶融する。
次に、樹脂組成物の溶融物を、樹脂組成物の結晶化温度の−50乃至+30℃の温度範囲の温度で保温された金型に射出する。
次に、射出後、金型内の溶融物に所望により圧力の印加を継続し、所謂「ひけ」を補う。
その後圧力を解除し放置する。この放置する時間を通常冷却時間と呼ぶ。樹脂組成物の溶融物を金型内に射出後から、金型内の樹脂組成物の溶融物への保持圧力の解除までの保持時間中にも、樹脂組成物から金型へ熱が次第に奪われ、金型中の樹脂組成物の温度は次第に低下している。
従って実質的には、保持時間も冷却時間に含めて考えることもある。
尚、ここでは、保持圧力を解除してからの放置時間を冷却と呼ぶことにする。
射出圧速度、射出圧力、射出時間、保持圧力、保持時間等は、樹脂組成物の樹脂の種類及び金型の形状等によって適宜設定される。
冷却時間は、金型の形状に成形された樹脂の結晶化がほぼ飽和完遂するだけの冷却時間にすれば良く、通常約1分以下であり、好ましくは約20秒乃至1分である。
また、樹脂組成物の結晶化温度の−50乃至+30℃の温度範囲の温度で保温された金型内に樹脂組成物の溶融物を充填保持することにより、結晶構造を取り得るポリマーを金型内で速やかに結晶化させることができる。この結果、成形サイクルを短縮し、生産性の向上が図られ、歩留まりを向上できる。
通常は、金型の保温温度を樹脂のTg以下の温度にするが、このような温度の金型内に樹脂組成物の溶融物を射出すると、射出された樹脂組成物の溶融物の熱が金型へ急速に奪われ、樹脂組成物の溶融物が金型中で流れにくくなる。このため、成形品にフローマークが生じたり、ウエルドが非常に目立ち易くなったりする。
また、樹脂組成物の溶融物が流れにくい為に、複雑な形状の金型で成形するときは、ゲート数を多くして、樹脂組成物の溶融物が確実に金型内へ充填されるようにしなければならない。
このため、ゲート数だけランナーが生じてしまい、樹脂組成物の溶融物がその分だけ無駄になる。
一方、上述の製造方法での金型温度は、従来技術の金型温度よりも高温である。
従って、金型内に射出された樹脂組成物の溶融物の熱の奪われ方が従来技術よりも小さく、金型中で樹脂組成物の溶融物の流れ性が従来技術よりも良好になる。
このため、フローマークやウエルドの問題が起き難くなる。
また、ゲート数を従来技術よりも少なくすることが可能であり、ランナーで無駄になる樹脂組成物の溶融物をより少なくできる。
例えば、結晶構造を取り得るポリマーがポリ乳酸である場合、そのTgの60℃以下である金型温度を例えば50℃にする等、通常の方法で成形しても良い。
この場合、耐熱性を確保するには、成形後に熱処理してポリマーを結晶化させる必要があるが、樹脂組成物では核剤により結晶化を促進できるために、従来の樹脂組成物が結晶化するのに要する熱処理時間よりも短くて済み、歩留まりを向上できる。
尚、結晶構造を取り得るポリマーの結晶化に重点を置く必要が無い場合は、熱処理をしなくても良い。
また、本発明に係る樹脂成形物は、樹脂組成物の結晶性が高いため、剛性に優れており、さらに透明性も高くできるので、剛性及び透明性等の要求の高い製品に使用して好適である。
具体的に、樹脂成形物の用途としては、例えば発電機、電動機、変圧器、変流器、電圧調整器、整流器、インバーター、継電器、電力用接点、開閉器、機遮断機、ナイフスイッチ、他極ロッド、電機部品キャビネット、ライトソケット、各種端子板、プラグ又はパワーモジュール等の電気機器部品、センサー、LEDランプ、コネクター、抵抗器、リレーケース、小型スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、変成器、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、記憶装置(フロッピー(登録商標)ディスク、MOディスク等に用いる)、小型モーター、磁気ヘッドベース、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、インクジェットプリンタ又は熱転写プリンタ等のプリンタ、プリンタ用インクのケース、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ又はコンピューター関連部品等に代表される電子部品、VTR部品、テレビ部品、電気機器の筐体、電子機器(テレビ、パソコン等)の筐体、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響製品の音声機器部品、オーディオ・レーザーディスク・コンパクトディスク等の音声機器部品、照明部品、冷凍庫部品、エアコン部品、電機製品部品(家庭用であっても事務用であっても良く、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品等)、オフィスコンピューター関連部品、電話器関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、モーター部品、機械関連部品(ライター、タイプライター等)、顕微鏡、双眼鏡、光学機器(カメラ、時計等)、精密機械関連部品、オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、各種バルブ(ライトデイヤー用ポテンシオメーターベース、排気ガスバルブ等)、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボデイー、キャブレタースペサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウエアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキパッド磨耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房用風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウオーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、ディストリビューター、スタータースイッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基盤、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、自動車・車両関連部品(エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、ホイール、車輪等)、機械機構部品(歯車、歯車の回転軸、軸受け、ラック、ピニオン、カム、クランク、クランクアーム等)、包装材料等が挙げられる。
その他の樹脂成形物の用途としては、上述した電気製品等を保護する保護ケースも例示できる。例えば、防水仕様ではないデジタルカメラを収容し、水のかかる環境で仕様できるようにするマリンケースと呼ばれることのある防水ケースである。またその他の樹脂成形物の用途として、上述した電気製品等を収納保管するための収納ケース、また収納運搬するための運搬ケースも挙げられる。
さらにその他の樹脂成形物の用途としては、多種の光ディスク(レーザーディスク(登録商標)、コンパクトディスク、DVD、HD−DVD、ブルーレイディスク、ミニディスク、光磁気ディスク等)等の情報記録媒体も挙げられる。加えて、それらを収納保管するケース、所謂ジュエルケースやデジパックもあげられる。
またさらにその他の樹脂成形物の用途には、食品包装用途、すなわち、食品保管容器およびその蓋や、玩具など、従来の樹脂成形物にも使用可能である。
また、この樹脂成形物は、脂肪族ポリエステル、特にポリ乳酸を主体とすれば、使用後には生分解処理に付して廃棄すればよく、廃棄に余分なエネルギーが消費されないという利点も有している。
本発明の一般構造式(1)で表される物質が、天然物由来のアミノ酸を構成要素として成る場合、その種類によっては、微生物によって吸収分解される。また、本発明の一般構造式(1)で表される物質が廃棄後の長年で加水分解を受け環状構造では無くなり、2分子が単に連結した構造になれば、その種類によっては、微生物によって吸収分解される。そして、2分子のアミノ酸にまで加水分解を受ければ、自然界に存在するアミノ酸になるためアミノ酸の種類によらず、微生物によって吸収分解される。よって、廃棄後に余分なエネルギーが消費されないばかりか、ゴミの残留問題も引き起こさない。
つまり、樹脂組成物の全体としても生分解性となる長所を有する。
〔実施例1〕
結晶構造を取り得るポリエステルとして、三井化学株式会社製のポリ乳酸(商品名:H100J)を適用し、含有量を90重量部とした。
核剤として、Bachem AG社製のL−フェニルアラニンのジケトピペラジン(CAS番号 2862-51-3)10重量部を添加して、これを加熱温度160℃乃至180℃の範囲で加熱しながら混練した後にペレット化した。
これを実施例1の樹脂組成物サンプルとする。
〔実施例2〕
三井化学株式会社製のポリ乳酸(商品名:H100J)87重量部に、加水分解抑制剤として、日清紡(株)製のカルボジイミド(商品名:カルボジライト)を3重量部、Bachem AG社製のL−フェニルアラニンのジケトピペラジン(CAS番号 2862-51-3)10重量部とし、実施例1に準じて実施例2の樹脂組成物サンプルを作製した。
〔実施例3〕
結晶構造を取り得るポリエステルとして、三井化学株式会社製のポリ乳酸(商品名:H100J)を適用し、含有量を99重量部とした。実施例1で用いたL−フェニルアラニンのジケトピペラジンの1重量部を添加し、その他の条件は上記実施例1と同様として実施例3の樹脂組成物サンプルを作製した。
〔実施例4〕
核剤として、Bachem AG社製のL−バリンのジケトピペラジン(CAS番号 19943-16-9)を10重量部用い、その他の条件は上記実施例1と同様として実施例4の樹脂組成物サンプルを作製した。
結晶構造を取り得るポリエステルとして、三井化学株式会社製のポリ乳酸(商品名:H100J)を適用し、この含有量を100重量部とした。
その他の条件は、上記実施例1と同様として比較例1の樹脂組成物サンプルを作製した。
〔比較例2〕
核剤として、フェニルアラニンのジケトピペラジンに代えてACROS製のフタルヒドラジドを10重量部用い、その他の条件は、上記実施例1と同様として比較例2の樹脂組成物サンプルを作製した。
〔比較例3〕
核剤として、フェニルアラニンのジケトピペラジンに代えて富士タルク社製のタルク(商品名:LMS−200)を10重量部用い、その他の条件は、上記実施例1と同様として比較例3の樹脂組成物サンプルを作製した。
〔比較例4〕
核剤として、フェニルアラニンのジケトピペラジンに代えて関東化学製のL−フェニルアラニンを10重量部用い、その他の条件は、上記実施例1と同様として比較例4の樹脂組成物サンプルを作製した。
〔比較例5〕
核剤として、フェニルアラニンのジケトピペラジンに代えて関東化学製のL−フェニルアラニンを10重量部用い、その他の条件は上記実施例2と同様として比較例5の樹脂組成物サンプルを作製した。
〔比較例6〕
核剤として、フェニルアラニンのジケトピペラジンに代えてナカライテスク社製の無水グリシン(グリシン2分子から成るジケトピペラジン、CAS番号106-57-0)を10重量部用い、その他の条件は上記実施例1と同様として比較例6の樹脂組成物サンプルを作製した。
(結晶化温度)
上述した実施例1乃至4、比較例1乃至6の樹脂組成物サンプルのそれぞれについて、結晶化温度を示差走査熱量(DSC)測定法によって測定した。
具体的には、先ず各樹脂組成物サンプルを3mg乃至4mgの量、切り取り試験片とした。この試験片をアルミパンに入れて試験試料を作製し、200℃まで加熱し、その後、1分当たり20℃温度が下がるようにして冷却し、その際の120℃付近の結晶化による発熱ピーク温度を結晶化温度として測定した。
(結晶化発熱量)
上記発熱ピークの熱量を求め、樹脂組成物としての重量で規格化した。各評価の結果を下記表3に示す。
(耐久性)
長期信頼性の評価として、高温高湿条件下で保存した後のポリ乳酸の分子量を測定した。具体的には、先ず各樹脂組成物サンプルを数gの量、温度85℃、相対湿度80%の恒温槽に入れ、8時間後と96時間後とにおける分子量を、高温高湿保存前(初期)の分子量と比較した。
分子量の測定については、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、重量平均分子量(ポリスチレン換算分子量)を測定した。
濃度が0.15重量%となるように、試料をクロロホルムに溶解させ、2時間攪拌後溶液をφ0.25μmのフィルターに通して、サンプルとした。
用いた装置を下記に示す。
装置:MILLPORE Waters600E system controller
検出器:UV(Waters484)、及びRI(Waters410)
高温高湿保存前の分子量を基準として、保存後の分子量を規格化(%表示)した。
各評価の結果を下記表3に示す。結晶化の評価及び耐久性の評価はいずれも、良いものから○、△、×の順で判定し、総合判定は、◎:非常に優れる、○:優れる、△:やや劣る、×:劣る、として判定した。
特に、ポリ乳酸に対する加水分解抑制剤であるカルボジイミドを添加した実施例2においては、高温高湿環境下において長期保存した後においても分子量保持率が高く、材料物性に関して優れた長期信頼性が確保できることが明らかになった。
また、核剤としてL−フェニルアラニンを適用した比較例5では、加水分解抑制剤であるカルボジイミドを添加しても、高温高湿環境下において長期保存性が良くはなかった。核剤がL−フェニルアラニンの場合、加水分解抑制剤の添加量をより多くすれば高温高湿環境下において長期保存性を確保できる。しかし、加水分解抑制剤の添加量を多くすることはポリ乳酸への添加物の含有率が高くなり、結果としてポリ乳酸の含有率が低くなるので、好ましくない。
また、樹脂の加水分解抑制剤を添加することにより、樹脂の物性の長期信頼性も確実に確保できることが明らかになった。これにより樹脂として特に生分解性ポリエステルを適用する場合において、最終的に目的とする成形品に応じた実用上の充分な耐久性を制御することが容易になった。
Claims (4)
- 前記α−アミノ酸が、フェニルアラニン、バリンから選ばれる一種又は二種である請求項1に記載の樹脂組成物。
- 前記ポリ乳酸に対する加水分解抑制剤を含有する請求項1に記載の樹脂組成物。
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